説明

定着部材を制御するニップ幅の自動計測用圧電センサ

【課題】動的にニップ幅を計測する。
【解決手段】内寄り端と外寄り端両方でロール内に埋設された少なくとも1個の圧電(PZT)結晶を用い、ニップ幅を検出する装置と方法であって、圧電(PZT)結晶は、荷重を受けたときと荷重を解放されたときに電荷を生成する。PZT生成信号は、機械制御部内での処理と使用の対象であるブラシ接点を用いる等してローラの端部にチャネル接続される。荷重の印加と解放の持続測度は滞留時間を示すものであり、PZT生成信号の振幅は圧力の関数となる。PZT信号の時間と振幅を較正し、ニップ幅あるいはニップ圧力に対し直接相関させ、機械制御部内で追尾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に印刷システム内の一対のローラが形成するニップ内のニップ圧力の計測に関し、詳細にはニップ形成ローラ間のニップ幅を特定することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニップ幅は、印刷物の定着に必要な熱伝達と圧力を可能にする印刷機や複写機や多機能装置等の画像生成装置における軟質定着ロールと硬質圧力ロール(ニップ形成ロール)の相互作用により生ずる被計測弧距離である。ニップ形成ロールは、製紙や製鋼やプラスチックカレンダー作成や印刷を含む多数の連続プロセス工業に用いられている。印刷空間にあっては、最適条件からのニップ幅の変動はトナーを不適切に融解し、印刷媒体に対し押圧して(定着させて)画像品質の欠陥に帰結することがある。加えて、不適切なニップ設定は定着ロール面の過剰摩耗に帰着し、そのことが容認できない光沢のばらつきを含む領域の形での画像品質の欠陥に帰着する。
【0003】
正確で一貫したニップ幅は、ロール上のエッジ摩耗を最小化することで定着ロール寿命を増大させる。内寄りから外寄りへの不均一で過剰なニップ設定がエッジ摩耗の加速に帰結することがされてきた。ニップ幅は、定着ロールを交換する度に点検され、調整されるはずである。この計測は必ずしも行なわれるとは限らず、バッチごとに著しく変動するロール硬度測定値と複合され、ロールニップ幅はしばしば不適切に設定される。加えて、定着ロールが古くなるにつれ、ゴムの柔らかさが変化し、最適には及ばないニップ幅に帰結する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印加圧力の関数としてニップ幅の不具合を見いだす方法が用いられてきた。ニップ陥凹を用いるこの種の公知の一つの方法は、ロールの停止とカーボン紙やプリスケールフィルムやフォイルや圧痕形成可能なフィルムの長片のニップ内への配置を必要とする。これには、オペレータが慎重にロールを装填し、前部と背部の両面が均一に荷重を受けるよう保証することが必要とされる。ニップ内の圧力がカーボンの圧痕を転写し、フォイルを変形させ、あるいはフィルム内のインク収容カプセルを破裂させて接触幅を指示する。これらの方法は、最高圧力あるいは最大の接触幅等の単一の事象しか提示せず、温度や湿度の変動に影響を受けやすく、印刷ごとに行なった場合、印刷プロセスに負の影響を及ぼす。
【0005】
上述の理由から、また本明細書を読んで理解するときに当業者には明らかとなる下記の理由から、ニップ幅を動的に計測することのできる装置および/または方法に対する要請が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の態様によれば、内寄り端あるいは外寄り端の両方でロールに埋設された少なくとも1個の圧電(PZT)結晶の使用によりニップ幅を検出する装置ならびに方法が提案される。圧電(PZT)結晶は、荷重を受けたときと荷重を解放されたときに電荷を生成する。PZT生成信号は、機械制御部内で処理し使用するブラシ接点等のローラの端部にチャネル接続される。荷重の印加と解放からの持続時間測度は滞留時間を示すものであり、PZT生成信号振幅は圧力の関数となる。PZT信号の時間と振幅を較正し、ニップ幅や圧力を直接相関させ、機械制御部において追尾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本開示の一つの可能な実施形態になる画像生成装置の例示線図である。
【図2】一実施形態によるPZT結晶を有する一対のニップ形成ローラを示す図である。
【図3】一実施形態によるリングコネクタに結合した荷重検出PZT結晶を示す図である。
【図4】一実施形態による圧電ニップセンサに対する信号(PZT信号)調整を行ない、タイミング信号と振幅信号とを生成する回路を示す図である。
【図5】本開示の可能な一つの実施形態に従いNIP幅特定回路網を有する画像生成装置の例示ブロック線図である。
【図6】一実施形態によるニップ幅を動的に調整する装置の側面図である。
【図7】一実施形態によるPZT信号を処理する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態は、印刷システム内のロール間に画成されるニップ幅を検出するのに有用な装置を含んでおり、この装置が、回転軸と表面とを有する第1の回動可能なローラと、第1のローラの回転軸に実質平行な回転軸を有する第2の回動可能なローラで、その表面が所定幅を有するニップにおいて第1の回転可能部材の表面に圧力を及ぼすよう配置した第2の回動可能なローラと、第2のローラに配置され、ニップの始端とニップの終端において電気信号を生成する少なくとも1個のセンサと、少なくとも1個のセンサが生成した電気信号を受け取り、タイミングパルスと第1のローラの表面に作用する圧力を示す振幅信号を生成する回路とを備える。
【0009】
本開示の実施形態はさらに装置を含んでおり、ここでは少なくとも1個のセンサが第2のローラの端部に配置され、荷重計と圧電結晶とそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0010】
本開示の実施形態はさらに一つの装置を含んでおり、ここでは少なくとも1個のセンサにより生成された電気信号が信号送信器か通信ケーブルのうちの少なくとも一方により回路に送られる。
【0011】
本開示の実施形態はさらに一つの装置を含んでおり、ここでは通信ケーブルはリング型コネクタに結合したケーブルとしてある。
【0012】
本開示の実施形態はさらに一つの装置を含んでおり、ここでは通信ケーブルをばね荷重ブラシに静止接触させてある。
【0013】
本開示の実施形態はさらに一つの装置を含んでおり、ここでは少なくとも1個のセンサからの電気信号がニップの始端とニップの終端において生成される。
【0014】
本開示の実施形態はさらに、ニップ幅とタイミングパルスからの滞留時間の少なくとも一方を特定する処理ロジックを含む。
【0015】
本開示の実施形態はさらに一つの装置を含んでおり、ここでは少なくとも1個のセンサが生成する電気信号を受け取る回路が反転増幅器と積分増幅器とを備える。
【0016】
本開示の実施形態は、印刷システム内において回転軸と表面とを有する第1のローラとこの第1のローラの回転軸に実質平行な回転軸を有する第2のローラとの間に画成されるニップ幅を検出する方法を含んでおり、これは第2のローラに少なくとも1個のセンサを配置し、ニップの始端と終端において電気信号を生成する工程と、少なくとも1個のセンサが生成する電気信号を処理し、タイミングパルスと第1のローラの表面に対する第2のローラに起因する作用圧力を示す振幅信号を生成する工程と、タイミングパルスからニップ幅と滞留時間の少なくとも一方を特定する工程とを含む。
【0017】
本開示の実施形態は、一つの装置を含んでおり、これは媒体シートを移送する構成とした媒体移送部と、媒体移送部に結合した定着部材で、媒体上に画像を定着させる構成とした定着ニップを有する定着部材と、定着部材に配置され、定着ニップの始端と定着ニップの終端において電気信号を生成する少なくとも1個のセンサと、少なくとも1個のセンサが生成する電気信号を受け取り、タイミングパルスと媒体に対する定着期間中の作用圧力を示す振幅信号を生成する回路と、回路に結合されて電気信号を受け取り、定着部材に結合したコントローラで、タイミングパルスと振幅信号とに従って定着部材のニップ幅を調整する構成としたコントローラとを備える。
【0018】
本願明細書に使用する用語「印刷媒体」は、概ね通常は可撓性で時として渦巻き、裁断給送あるいは巻き取り給送の如何によらず、用紙やプラスチックや画像用の他の適当な物理的印刷媒体基質からなる物理的シートを指す。
【0019】
本願明細書に使用する用語「回動可能部材」は、概ねローラあるいはロールを指し、これは本願明細書に用いるように、相互交換可能なベルトあるいは軸周りに回動するよう適合させた回動要素あるいはそれらの組み合わせである。
【0020】
本願明細書に使用する用語「印刷システム」は、デジタル複写機や製本機やイオノグラフィックシステムや電子写真システムや多機能機、あるいは何らかの目的に印刷出力機能を遂行することのできるもの等のあらゆる装置を包含するものである。
【0021】
用語「電子写真システム」は、電子写真受容要素上に現像する乾燥トナーを用いる画像再生機や静電写真システムや電子写真印刷機や複写機を包含することを意図するものである。
【0022】
図1は、本開示の一つの可能な実施形態による画像生成装置100の例示線図である。画像生成装置100は、例えば複写機や印刷機やファクシミリ装置や多機能装置(MFD)を含む画像再生文書(例えば、印刷文書や複写物等)を作成できる任意の装置であることができる。
【0023】
画像再生装置100には、所望の画像の作成に画像信号を用いるハードウェアを含む画像生成部120と、加えてその上に画像を印刷するシートを保存し分配するフィーダー部110と、積み重ね、折り畳み、ステープルで綴じ、結束するハードウェアを含めることのできる出力部130と、印刷プロセスに必要な他の装置と、マーキングエンジンから出力される印刷物もまた含めることができる。印刷機が複写機としても動作可能である場合、この印刷機にはさらに元々の用紙記録画像から反射された光からの信号をデジタル信号に変換し、この信号を片や処理して画像生成部120を用いて複写物を作成するよう動作する文書フィーダー140が含まれる。画像生成装置100は、その動作を制御するローカル・ユーザ・インタフェース150もまた含むが、画像データと指示の別の源泉にはネットワークを介して印刷機が接続される任意の数のコンピュータを含めることができる。
【0024】
フィーダー部110を参照するに、モジュールには任意の数のトレイを含めることができ、その各トレイには印刷媒体スタック160あるいは所定種(大きさ、重量、色、コーティング、透明度等)の印刷シート(「媒体」)を格納することができ、指示に従いその中のシートの1枚を分配するフィーダーを含む。幾つかの種の媒体は、適切に廃棄されるよう格別の処置を必要とすることがある。例えば、より重量があるかまたはより大型の媒体は、望ましくは空気ナイフや綿毛や真空グリップや印刷媒体積層体中の頂部シートあるいはシートに向けた空気圧の他のアプリケーション(図示せず)の使用により、印刷媒体積層体160から引き出すことができる。幾つかの種類の被覆媒体は、高温空気流(図示せず)等の熱の適用の使用により印刷媒体積層体160から都合よく引き出される。選択されたトレイ110上の印刷媒体積層体160から引き出した媒体シートは、そこで画像生成部120に移動させ、その上に1つ以上の画像を受容させる。
【0025】
本実施形態では、画像生成部120は単色静電写真型エンジンとして図示してあるが、多色静電写真式やイオノグラフ式やインクジェット式等の他種のエンジンを用いることもできる。図1で、画像生成部120には回転可能なベルトの形をとらせることのできる光受容体を含めることができる。光受容体は、印刷用の1つ以上の画像を一時的に保留することのできるドラムやベルト等の任意の回動可能構造を意味する「回動可能画像受容体」と呼ぶことができる。この種の画像受容体は、限定ではなく一例を挙げるに、光受容体、あるいは多色静電式やオフセット式やインクジェット式の装置等のシートに後程転写する1つ以上のマーキング材料層のための中間部材で構成することができる。
【0026】
光受容体は幾つかのローラ上に伴出され、帯電ステーションや作像ステーションや現像ステーションや転写ステーション等の静電写真技術ではよく知られた幾つかのステーションが光受容体の周囲に適切に配置してある。本実施形態では、作像ステーションは「レーザ印刷」技術ではよく知られた設計からなるレーザ準拠ラスター出力スキャナの形態をとり、ここでは幅狭のレーザビームが回動光受容体のプロセス方向に垂直に配向された連続的な走査線を走査する。レーザは、画像データに従い移動光受容体上の小領域に選択的に放射されるようオン/オフ切り換えて静電潜像を生成することができ、この潜像が現像ステーションにおいてマーキング材料を用いて現像され、転写ステーションにてシートへ転写される。
【0027】
こうして画像を受容したシートは、続いて当分野で熟知された一般的な設計の定着ロール170と加圧ロール180を含むような定着部を通過し、定着ロール170からの熱と圧力がマーキング画像をシート上に実質恒久化するようにされる。ニップ幅190は、定着ロール170の表面に接触する加圧ロール180の表面の弧に沿う距離である。ニップ幅190は、画像品質と資源の用途に対し重大な影響を有する決定的なパラメータである。本開示の実施形態は、ニップ幅検出手段として図2に示す圧電結晶を用いている。圧電結晶は、荷重を受けているときに電荷を生成し、周期的な応力に耐えることができる。用紙路外部に内寄り端と外寄り端の両方で加圧ロール180内に埋設した小型PZT結晶は、ローラの回転ごとに接触弧の圧力にさらされることになる。シートは一旦印刷されると、そこで出力部130に移動させることができ、そこで当分野で馴染みのある仕方で他の媒体シートと丁合いを取られ、ステープルで留め、折り畳んだりするなどができる。
【0028】
本発明は例示印刷システム内のローラに関連し、かつその特定の好適な実施形態として説明することにするが、本発明をその用途のみかあるいはその実施形態にのみ限定する意図のないことは理解されたい。それどころか、ローラやベルトや回動可能部材またはそれらの組み合わせを包含することが意図されている。
【0029】
図2は、一実施形態によるPZT結晶を有する一対のニップ形成ローラを示す。ローラに作用する圧力を計測するため、少なくとも1個のセンサを加圧ロール180の端部に配置し、荷重計や圧電結晶やそれらの組み合わせからなるグループから選択する。加圧ロール180は、加圧ロールの表面が所定幅を有するニップにおいて定着ロールの表面に荷重あるいは圧力を作用させるよう配置する。PZTセラミック等の圧電結晶(183,186)は加圧ロール180両端でその中に埋設され、リングブラシコネクタ189を介する電気的な接触を果す。内寄りセンサと外寄りセンサ(183,186)は、製造過程で較正し、各センサに図4のROM240等の記憶装置内の固有の不揮発性メモリ(NVM)値を割り当てる標準化装填ルーチンを介してその出力ゲインを正規化される筈である。これらNVM値は、後処理用にソフトウェア内にロードされる筈である。万が一、現場でのセンサの再較正が保証されている場合、標準的な負荷をセンサ183あるいは186に作用させることもでき、続いてセンサの出力電圧に基づいてルックアップテーブル値を調整する。内寄り信号と外寄り信号から得られる情報を機構への閉ループ式フィードバックに用い、図6に示すように内寄りおよび/または外寄りの接触力を再調整しうる。この情報はまた、ネットワーク接続あるいは他の通信手段を介してオンサイトあるいはオフサイト監視用に経過記録しうる。例示にあるのは静電写真の定着を示すものであるが、ニップ幅監視技術は回動接触ニップパラメータが機能に不可欠であるあらゆるアプリケーションに好適である。
【0030】
上記の説明は静電写真印刷に用いる定着器に向けたものであるが、本願明細書における教示と特許請求の範囲が媒体に対するマーキング材料のあらゆる処理に適用できることは理解されよう。例えば、マーキング材料は液体インクあるいはゲルインクおよび/または熱硬化もしくは放射線硬化インクで構成することができ、および/または媒体自体に首尾良き印刷用に温度等のしかるべき要件を持たせることができる。所与の実施形態において媒体上のインクを処理するのに必要な熱や圧力や他の条件は、静電写真定着に適したものとは異なるようである。
【0031】
図3は、一実施形態に従いリングコネクタに結合した荷重検出PZT結晶を示すものである。PZT結晶等のセンサ186は、ケーブル187を介してリングコネクタ189に通信する電気信号を発する。加圧ローラ180が回動すると、ケーブル187が同じ方向に回動し、その間これはリングコネクタ189に結合された状態に止まる。好適な実施形態では、PZT結晶製等のセンサ186の正電極を回転リング型コネクタ189に取り付ける。代替例にあっては、ケーブル187は静止接触状態にあり、ばね荷重ブラシを介してセンサ186との接触を果す。一方で、負電極は金属ロールへの導電接着を介するかあるいは別個の接地ケーブルを介して接地させる。
【0032】
図4は、圧電ニップセンサ(PZT信号)に対する信号調整を行ない、一実施形態に従ってタイミング信号と振幅信号を生成する回路400を示すものである。この回路の技術的な効能は、ニップに関連する機械的な圧力に対し感応する1つ以上のセンサの電気信号を処理することにある。本願明細書では特定の実施形態を例示し説明するが、同じ目的を達成するよう算段された任意の構成を図示の特定の実施形態に置き換えられることを当業者は理解するであろう。このアプリケーションは、あらゆる適合例や変形例を包含することを意図するものである。例えば、ハードウェアの用語にて説明したが、当業者はソフトウェアにてあるいは所要の機能を提供する埋設ソフトウェアを有するハードウェアを用いて実装を行なうことができることを理解されたい。
【0033】
回路400は、圧電ニップセンサ405等のセンサが生成する電気信号に対する信号調整を遂行する。この結晶は、それが押圧されたときに正の電流407を生成することになる。それが圧縮されている間、それは電流を一切生成せず、すなわち実質零である電流を生成する筈である。それが弛緩すなわち圧縮解除されると、それは負電流を生成することになる。それが弛緩状態のままである間、それは電流を一切生成しない。第2のPZT結晶がセンサ183等であるときは、第2の調整回路を用いる。荷重検出の信頼性の提供に加え、第2のセンサの別の利点はロールのミスアライメントの指示の取得にある。個々のセンサから得られる電圧を比較し、ミスアライメントを割り出すことができる。生成電流407が、抵抗410の両端に電圧(RVI)を生成する。
【0034】
第1の演算増幅段420は、結晶電流407を滞留時間の計時に用いることのできる電圧435(タイミング出力)に変換する。滞留時間とプロセス速度と合わせ、当業者には熟知されているように、ニップ幅を特定する。回路上のタイマーあるいはコントローラ400等の外部処理装置は、PZT結晶を圧縮する際の正電流パルスにて始動し、PZT結晶を弛緩させる際の負電流パルスにて停止する。これらの電気信号は、ニップの始端と終端で生成される。この構成にあっては、演算増幅器にはフィードバックが接続してあり、抵抗器(RR)430を介して閉ループ動作を生成する。
【0035】
第2の演算増幅段450は、積分器である。積分増幅器は積分の算術処理行ない、すなわち出力は経時的な入力電圧437における変化に応答し、積分増幅器は時間に対するその入力電圧437の変化に比例する電圧出力452を生成する。換言すれば、出力信号の大きさは、フィードバックループを介する電流がキャパシタ(CI)460を充電あるいは放電させる際にその入力端に所定の電圧が現れる時間長さにより決まる。この出力電圧は入力電圧の積分値に比例し、フィードバックキャパシタ460と入力抵抗器440とに基づき基準化(1/RiCf)される。積分段は電流パルスを受ける領域を示し、結晶に印加される圧縮力に相似することになる。このことは、正と負の電流パルス間で妥当する筈である。
【0036】
低域通過フィルタを用いて外部振動信号を濾波廃棄しうるが、第2の演算増幅器段450(積分器)が当然ながら低域通過フィルタであるためにこれは不要である。高域通過フィルタを用い、加熱された定着ロールが形成するニップ幅の計測時等に被加熱アプリケーションにおいて結晶中に生成する全ての熱電式電圧を剥奪することができる。
【0037】
図5は、本開示の一つの可能な実施形態に従いNIP幅特定回路網を有する画像生成装置の例示ブロック線図500である。画像生成装置100内のハードウェアには、バス210、プロセッサ220、メモリ230、読み出し専用メモリ(ROM)240、ニップ幅調整ユニット250、フィーダー部110、入力部あるいはセンサ132、ユーザインタフェース150、通信インタフェース280、画像生成部120、ニップ幅特定ユニット295を含めることができる。バス210は、画像生成デバイス100の構成要素間での通信を可能にすることができる。
【0038】
プロセッサ220には、指示を解釈し実行する少なくとも1個の従来のプロセッサあるいはマイクロプロセッサを含めることができる。メモリ230は、ランダムアクセスメモリ(RAM)あるいはプロセッサ220による実行のための情報と指示とを記憶する別種の動的記憶装置とすることができる。メモリ230には、従来のROM装置あるいはプロセッサ220用の静的な情報や指示を記憶する別種の静的記憶装置を含めることのできる読み出し専用メモリ(ROM)もまた含めることができる。
【0039】
通信インタフェース280には、ネットワークを介する通信を容易にする任意のメカニズムを含めることができる。例えば、通信インタフェース280にはモデムを含めることができる。別の選択肢として、通信インタフェース280には他のデバイスおよび/またはシステムとの通信を支援する他のメカニズムを含めることができる。
【0040】
ROM240には、従来のROM装置や、プロセッサ220用の静的情報や指示を記憶する別種の静的記憶装置を含めることができる。ROM240は、PZT結晶406からの値やロールが遭遇する圧力や荷重の値を較正するルックアップテーブル用の値と、滞留時間やニップ幅の特定に充当することのできる他のアルゴリズムを記憶させることができる。記憶装置はROMを増強することができ、例えば磁気媒体や光学記録媒体等の任意種の記憶媒体とその対応する駆動装置とを含めることができる。
【0041】
NIP荷重510は、図4を参照して説明した回路網を用いるか、あるいは回路400と同じ仕方でPZT結晶405等の荷重センサからの電気信号を処理する適当なプログラムモジュールを用いて取り込むことができる。タイマー520は、ニップの始端とニップ終端におけるPZT結晶の圧縮と圧縮解除との間の時間を示すハードウェアもしくはソフトウェアのモジュールである。NIP幅295は、タイマー520とニップ荷重510とからのデータに基づきニップ幅を算出するモジュールである。
【0042】
ユーザインタフェース150には、例えばキーボードやディスプレイやマウスやペンや音声認識デバイスやタッチパッドや釦等の画像生成ユニット100に対し、ユーザが情報を入力し、相互作用できるようにする1つ以上の従来のメカニズムを含めることができる。図1に示す出力部130には、例えば出力トレイや出力経路や仕上げ部等を含むユーザに画像生成文書を出力する1つ以上の従来のメカニズムを含めることができる。画像生成部120には、例えば画像印刷および/または複写部と、スキャナと定着器等を含めることができる。
【0043】
画像生成装置100は、例えばメモリ230等のコンピュータ可読媒体に含まれる一連の指示を実行することでプロセッサ220に応答してこの種機能を遂行することができる。この種指示は、記憶装置等の別のコンピュータ可読媒体からあるいは通信インタフェース280を介する別個のデバイスからメモリ230内に読み込むことができる。
【0044】
図5に示すハードウェアを有する図1に示した画像生成装置100は、本開示をそこに実装することのできる適当な通信ならびに処理環境の簡潔で一般的な説明を提供することを意図するものである。必須ではないが、本開示は、例えば通信サーバや通信交換機や通信ルータや汎用コンピュータ等の画像生成装置100により実行されるプログラムモジュール等のコンピュータにより実行可能な指示の一般的な文脈にして少なくとも一部説明することにする。
【0045】
図6は、一実施形態によるニップ幅を動的に調整する装置の側面図を示す。この装置は、文書フィーダーや印刷機やスキャナや多機能媒体装置や静電写真機あるいは媒体を移送する他の任意の装置とすることができる。この装置には、媒体612を移送するよう構成した媒体移送部(図示せず)を含めることができる。この装置にはまた、媒体移送部に結合した定着部材620を含めることができ、ここで定着部材620には媒体上に画像を定着させるよう構成した定着ニップ622を持たせることができる。定着部材620には、装置内に回動可能に支持する回動定着部材170と、装置内に回動可能に支持する回動加圧部材180とを含めることができる。回動部材は、ロールやベルトや装置内に回動可能に支持することのできる他の任意の部材とすることができる。回動加圧部材180は、定着ニップ622の箇所で回動定着部材170に対し圧力を作用させる構成とすることができる。
【0046】
この装置には、定着部材620の近傍に結合した出口センサ132を含めることができ、ここで出口センサ132は媒体が定着ニップ622から退出した後の印刷媒体シートの出口温度を検出する構成とすることができる。出口センサ132は、非接触熱センサとすることができる。荷重/圧力センサ(183,185)はまたセンサ132の一部を形成することができ、これらのセンサからの信号は信号チャネル607を介して振り分け、コンピュータ等により処理することができる。この装置にはさらに、出口センサ132に結合し、かつ定着部材620に結合したコントローラ605を含めることができ、ここでコントローラ605は検出された出口温度に従うか、あるいはPZT結晶405と印刷ジョブ用の所定値とを用いて算出されるニップ幅の偏差を割り出すことで、定着ニップ幅623等の定着部材設定を調整するよう構成することができる。例えば、コントローラ605はニップ幅623やニップ温度等の定着部材ニップ設定を調整することができ、定着速度等の他の定着部材設定を調整することができる。定着ニップ622は、可変カムや空気シリンダや他の動的手段等の任意の数の動的手段により荷重システムを介して動的に調整し、所望のあるいは期待されるニップ幅からのニップ幅のばらつきを補償することができる。シート温度等の他の変動は、シートが定着ニップ622を通過する際にニップ幅妨害に起因して増大することがある。1つ以上の熱センサ132を用い、媒体シート612の温度上昇を計測することができる。温度変化や温度上昇をフィードバックメカニズムとして用い、定着部材の設定を調整することができる。
【0047】
コントローラ605は、検出された媒体シートの出口温度に従って定着ニップ幅623を調整することで定着部材設定を調整するよう構成することができ、ただし定着ニップ幅623は媒体シートの移動方向に実質平行とする。コントローラ605は、検出されたシート出口温度に従い定着部材温度と定着部材回転速度の少なくとも一方を調整することで、定着部材の設定を調整するよう構成することもできる。
【0048】
2個の部材170,180の一方は硬質とし、もう一方は軟質すなわち可変形とすることができる。定着ニップ幅623は、軟質部材の硬度あるいは可変形性等の硬度測定値の関数とすることができる。残念なことに、軟質材料は時間と共に硬質化する。例えば、軟質ロールは時間と共に硬質化し、定着ニップ622はロールの硬質化に合わせしかるべく小型化し、そのことで定着効率を低下させることがある。装置は、検出された出口温度をフィードバックとして用いて部材170と180の間に圧力を生成するばねあるいは力642を調整し、適切な定着ニップ幅623を維持して媒体シート612上に画像を適切に定着させることができる。例えば、装置は部材170と180の間の力642をその一方が硬質化した場合に増大させることができる。装置はまた、定着ニップ622に印加される力642を低減し、大量の定着を必要としない媒体やジョブコンテンツに対しより小さな定着ニップ幅623を生成する。これは、定着ロール寿命等の部品寿命を増大させることができる。
【0049】
図7は、一実施形態に従ってPZT信号を処理する方法700のフローチャートである。方法700は、回転するロールの一つに少なくとも1個のセンサを配置することで、動作710を開始する。このセンサは、ローラの内寄り端あるいは外寄り端等の用紙路外部の領域に埋設し、用紙を傷つけないようにすべきである。動作720では、少なくとも1個の埋設センサから生成された信号が図4に示した回路400の説明に従って処理される。ロール圧縮信号はクロック周期の始端として取り込まれ、圧縮解除信号はクロック周期の終端となる。クロック周期値の終端と始端との間の範囲あるいは差分は、滞留時間とニップ幅とを示すものである。動作730,740は、滞留時間を割り出すべく行なう工程を示す。動作730において、ニップの始端を示す信号とニップの終端を示す信号とが生成される。動作740において、生成信号から滞留時間が割り出される。動作750において、少なくとも1個のセンサからの荷重信号が積分される。この積分が、圧縮期間中の圧力値と圧縮解除期間中の圧縮値とを生成することに、留意されたい。圧縮期間中の圧力値は、正(圧縮)と負(圧縮解除)電流パルス間で有効となる。動作760において、ニップ幅とローラ圧力が出力され、コントローラやオペレータあるいはニップ幅の動的調整装置により処理される。
【0050】
一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを遂行しあるいは特定の要約データ種を実行するルーチンプログラムやオブジェクトや構成要素やデータ構造を含む。さらに、当業者は本開示の他の実施形態がパーソナルコンピュータや手持ち式デバイスやマルチプロセッサシステムやマイクロプロセッサ準拠あるいはプログラム可能な家電機器等を含む多くの種類の通信機器やコンピュータシステム構成を有する通信ネットワーク環境において実施できることを理解しよう。
【0051】
上記に開示した様々なものやその他の特徴や機能や代替例が望ましくは他の多数のシステムやアプリケーションに複合できることが理解されたい。また、様々な現在未知のあるいは予想されていない代替例や改変例やその変形例や改善例が、しかるべく当業者により作成され、それらが下記の特許請求の範囲により包含されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システム内の回動可能部材間に画成されるニップ幅を検出する装置であって、
回転軸と表面とを有する第1の回動可能部材と、
前記第1の回動可能部材の回転軸に実質平行な回転軸を有する第2の回動可能部材であって、前記第2の回転部材の表面が所定の幅を有するニップにおいて前記第1の回転可能部材の表面に圧力を及ぼすよう配置された前記少なくとも1つの第2の回動可能部材と、
前記第2の回動可能部材に配置され、前記ニップの始端と前記ニップの終端において電気信号を生成する少なくとも1個のセンサであって、前記ニップに関連する機械的な圧力に感応する前記センサとを備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1個のセンサは、前記第2の回動可能部材の前記終端に配置され、荷重計と圧電結晶とそれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1個のセンサが生成する電気信号を信号送信器と通信ケーブルの少なくとも一方により回路に送る、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記通信ケーブルは、リング型コネクタに結合したケーブルである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記通信ケーブルは、ばね荷重ブラシに静止接触状態にある、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
印刷システム内で回転軸と表面とを有する第1の回動可能部材と前記第1の回動可能部材の前記回転軸に実質平行な回転軸を有する第2の回動可能部材との間に画成されるニップ幅を検出する方法であって、
前記第2の回動可能部材に少なくとも1個のセンサを配置し、前記ニップの始端と終端において電気信号を生成するステップであって、前記少なくとも1個のセンサが前記ニップに関連する機械的な圧力に感応するステップと、
回路を用いて前記少なくとも1個のセンサによって生成される電気信号を処理し、タイミングパルスと前記第1の回動可能部材の表面に対する第2の回動可能部材に起因する作用圧力を示す振幅信号を生成するステップと、
タイミングパルスからニップ幅と滞留時間の少なくとも一方を割り出すステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記少なくとも1個のセンサは前記第2の回動可能部材の前記終端に配置してあり、荷重計と圧電結晶とそれらの組み合わせからなるグループから選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1個のセンサが生成する電気信号を信号送信器と通信ケーブルの少なくとも一方により回路に送る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記通信ケーブルは、リング型コネクタに結合したケーブルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記通信ケーブルは、ばね荷重ブラシとの静止接触状態にある、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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