説明

定量再現性を有するレーザー脱離イオン化質量分析計

試料に含まれる検体の質量を正確に測定し、機器間でおよび単一の機器で経時的に一貫した方法で試料に存在する検体の量も測定する、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(「LDI−TOF−MS」)装置、および方法。特に、本発明は、1)レーザーパルスのエネルギーおよび照射される試料の領域(フルエンス)が、検体の脱離およびイオン化のための一貫した状況を生成するために、一貫性がありかつ制御され、2)質量分析器が再現可能な方法で機能し、そして3)検出システムが、異なる質量のイオンの到達を一貫して示す信号を生成する、LDI―TOF―MS装置および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「LASER DESORPTION AND IONIZATION MASS SPECTROMETER WITH QUANTITATIVE REPRODUCIBILITY」と題された2004年6月21日に出願された米国仮出願番号60/581,997号(これは、その全体が、本明細書によって、参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に質量分析計に関し、特にレーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計(「LDI―TOF―MS」)に関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析計は、検体の検出および区別のための優れた分析ツールとなり得る。したがって、生体分子や特にタンパク質の分析においての使用が増加している。しかしながら、質量分析計は、定量生体分子分析のツールとしては不十分であった。これは主に、質量分析計は分析間で十分な定量再現性をもって機能しないという事実によるものである。さらに、質量分析計が異なれば、実質的に同じ試料およびデータ収集プロトコルが与えられたとしても、異なる定量結果となる。
【0004】
質量分析計がタンパク質、特にそのタンパク質パターンのための分析プラットフォームとして有用であるべきならば、この欠点は克服されなければならない。例えば、科学者は、タンパク質プロファイルが、病気を発見することにおいて単一タンパク質よりも良い診断力を提供することができることを発見した。質量分析計は、罹患者と対照集団の両方のタンパク質プロファイルを生成するために使用されることが可能で、使用される質量分析計の反応が十分適合する場合、成功的診断を容易にする。特に、タンパク質プロファイルを生成するために使用される質量分析計が、実質的に同じ試料に存在する各タンパク質についての実質的に同じ質量および検出量を生成することは有利である。これらの結果が、信号対雑音比および分解などの性能指数を最大化するように高品質であることがさらに望ましい。機器が標準出力を生成するようにパラメータを調整するプロセスが、実質的に自動化されることがさらに望ましい。
【0005】
レーザー脱離飛行時間型質量分析法(TOF―MS)は、数十万ダルトンもの高い質量を有するタンパク質の検出を可能にするため、タンパク質プロファイリングに特に有用である。この方法は、表面から測定分子を脱離およびイオン化するためにレーザーを使用し、イオンを特定のエネルギーに加速し、そして検出器までの固定長の自由飛行路を移動するのに必要な時間を測定することを伴う。軽いイオンは、重いイオンより前に検出器に到達するので、到達時間の時間記録は質量スペクトルに変換されることができる。ほとんどの質量分析計と同様に、LDI―TOF―MSは、三つの主要構成要素、つまり(1)イオン源(2)質量分析器、および(3)検出装置を含む。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、試料に含まれる検体の質量を正確に測定するだけでなく、機器間および単一の機器で経時的に、一貫した方法で試料に存在する検体の量も測定する、LDI―TOF―MS装置を提供する。特に、本発明は、1)レーザーパルスのエネルギーおよび照射された試料の領域(フルエンス)が、検体の脱離およびイオン化のための一貫した状況を生成するために、一貫性がありかつ制御され、2)質量分析器が再現性のある方法で機能し、3)検出システムが異なる質量のイオンの到達を一貫して表す信号を生成する、LDI―MSを提供する。
【0007】
本発明の側面に基づいて、レーザー脱離質量分析装置が提供される。前記装置は一般的に、試料導入表面の制御可能な領域に制御可能なエネルギーを有するレーザーパルスを放出するように構成された、レーザーおよび光学素子を備える光学アセンブリを備え、前記試料導入表面に放出された前記パルスは、前記表面から測定分子を脱離およびイオン化する。前記装置はまた、一般的に、前記表面から脱離およびイオン化された測定分子を検出するように構成された、制御可能な増幅を有する検出器と、前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギーを自動的に制御するための手段と、前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域を自動的に制御するための手段と、前記検出器の前記増幅を自動的に制御するための手段とを備える。
【0008】
本発明の別の側面に基づいて、レーザー脱離質量分析装置の運動パラメータを設定するための方法が提供される。前記方法は一般的に、試料導入表面の制御可能な領域に制御可能なエネルギーを有するレーザーパルスを放出するように構成された、レーザーおよび光学素子を備える光学アセンブリを有する質量分析装置を提供するステップであって、前記試料導入表面に放出された前記パルスは、前記表面から測定分子を脱離およびイオン化するステップを含む。前記装置はまた、一般的に、前記表面から脱離およびイオン化された測定分子を検出するように構成された、制御可能な増幅を有する検出器と、前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギーを自動的に制御するための手段と、前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域を自動的に制御するための手段と、前記検出器の前記増幅を自動的に制御するための手段とを備える。前記方法はまた、一般的に、(1)前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギー、(2)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域、および(3)前記検出器の前記増幅、のうちの少なくとも一つを自動的に制御するステップも含む。
【0009】
本発明のさらに別の側面に基づいて、複合飛行時間スペクトルを生成するための方法が提供される。前記方法は一般的に、表面から脱離およびイオン化するために、エネルギーを有するレーザーパルスを試料導入表面の測定試料に放出するステップと、前記レーザーパルスの前記エネルギーを測定するステップと、脱離およびイオン化された検体を検出するステップと、前記検出された検体の飛行時間スペクトルを生成するステップとを含む。前記方法はまた、一般的に、エネルギー許容基準に基づいて前記測定されたエネルギーを評価するステップと、前記エネルギー許容基準が満たされる場合に、前記飛行時間スペクトルを複合スペクトルに含めるステップとを含む。別の側面において、前記方法は一般的に、スペクトルの許容基準に基づいて前記スペクトルを評価するステップと、前記飛行時間スペクトルと前記測定されたエネルギーの両方の前記許容基準が満たされる場合に、前記飛行時間スペクトルを複合スペクトルに含めるステップとを含む。
【0010】
本発明の性質および利点をさらに理解するために、添付図面を併用して以下の説明を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
質量分析計は、その他の分析機器と同様、同一の機器での経時的差異および異なる機器間の性能における差異を示す傾向がある。このような差異は、量的ではなく質的な情報が求められる分析的研究の中においては機器の有用性を損なわない。しかしながら、定量結果が重要であり、その結果が経時的または異なる機器間で同等であることが必要である検査にとって、単一の機器で経時的および複数の機器間で、この差異を縮小させることが非常に望ましい。単一の機器および複数の機器の両方の結果の比較に関して、単一機器または複数の機器が、実質的に同一の試料からの検査で定量的に再現性のある結果をもたらすことが望ましい。特に、医療上の決定に役立てるために定量結果が使用される臨床用途を対象とした機器にとって、その再現性は非常に必要とされる。
【0012】
機器設計および組立ならびに試料準備における十分な基礎を前提として、機器間での再現性は、機器制御パラメータを調節することによって機器を適合させる能力に依存する。同様に、単一の機器の再現性は、機器制御パラメータの経時的な変化を検出および補正する能力に依存する部分もある。LDI―TOF―MSの再現性および性能に大きな影響を及ぼし得る機器制御パラメータは、レーザーパルスエネルギー、レーザー収束、分析装置のイオン収集効率および安定性、ならびに検出システムの感度および増幅を含む。レーザーパルスエネルギーは、試料ソースに出力される光子の数を決定する。レーザー収束は、光子が出力される試料の領域を決定する。これら二つのパラメータは共に、光パルスを生成する脱離のフルエンスを決定し、特定の試料からどれくらいのイオンが生成されるかを主に決定する。試料および脱離条件に実質的に依存しない、収集効率特性を示す分析装置を組み立てる最も簡潔で恐らく唯一の方法は、ソースに生成された実質的に全てのイオンか、さらに良い場合では、運動エネルギーの既定範囲内での全てのイオンを収集し、そのイオンを検出器に送るために分析装置を設計することである。特定のイオンのための検出システムの感度は、信号がそのイオンのために生成される確率である。検出システムの増幅は、検出イオンのために生成される出力信号の程度を決定する。機器間でのこれらのパラメータの適合を改善することは、機器間の再現性を改善する。また、単一の機器における経時的である(例えば、レーザードリフトまたは検出器の経年劣化)これらのパラメータにおける変化を補正することは、単一の機器で実行される測定の再現性を改善する。
【0013】
いくつかの機器パラメータは、例えば分析装置のレーザーエネルギーおよび角度許容などの設計によって、十分に制御されることができることを正しく理解されるべきである。また、レーザーエネルギーなどのいくつかの機器パラメータは、適切な機器間の適合を達成するため、または単にさまざまな種類の試料を取り扱うために、可調または可変になり得る。さらに、機器パラメータによっては設計によって慎重に制御される場合があり、高度の正確さが求められるため、いかなる残留偏差も正確な基準に対する較正によって排除され得る。例えば、TOF―MSにおいて、飛行路および加速電圧の長さにおける機器間の差異は一般的に、既知の質量の基準を使用して質量の関数として飛行時間を較正することによって排除される。
【0014】
質量分析計において定量再現性を達成する別の側面は、複合スペクトルの信号を生成するために平均または合計された信号のうちのどれもが、検出システムの有効な信号レベルを越えることによってクリップされないことを確実にすることである。これは、1)検出システムのダイナミックレンジを拡大すること、および2)クリップされた信号が平均または合計に含まれる前に破棄すること、を含むいくつかの方法で達成されることができる。
【0015】
いくつかの既存のLDI TOF―MS機器において、ユーザーは、レーザー強度および信号増幅のランタイム制御を行なってきた。加えて、ユーザーまたは保守技術者は、手動でレーザーの収束を調整し得る。機器間または単一の機器において長時間にわたり信号強度を再現性のあるようにする試みは、少なくとも時間のかかる仕事であり、最悪の場合、非生産的である。系統的に実行されなければ、個別の機器の信号振幅に適合させるためにパラメータを調整する試みは、性能を低下させる可能性がある。これは、一定の検体のための単一の振幅を厳密に適合させるために、いずれのパラメータを調整することも、その他の検体の分離、信号対雑音比、または信号振幅の適合などのその他の性能指数に悪影響を及ぼし得るからである。例えば、ユーザーは、より良い結果がレーザー収束または検出器増幅を調整することによって達成され得る場合に、「感度の低い」機器でレーザー強度を増加することによって信号振幅を適合させることを選択することが多い。一般的に、最良の性能に近づけるためにパラメータの全てを系統的に調整し、許容可能な再現性を達成することが必要である。その制御パラメータは一般的に、ユーザーまたは制御システムによって調整可能である。一側面において、その制御パラメータは、所望の再現性を達成するために、制御システムによって自動的に調整される。別の側面において、ユーザーは、制御パラメータを所望のレベルまたは所望の範囲に手動で調整する必要性に注目し得る。
【0016】
I.レーザー脱離/イオン化質量分析計:レーザーパルスエネルギー、照射領域、および検出器増幅
本発明の実施態様は、経時的および異なる質量分析計の間の両方で、これらの分析計で実行される測定において、改善された再現性(差異を縮小された)を示すレーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計を提供する。この改善された再現性は、一側面において、試料標的に放出されるレーザーエネルギーなどの機器パラメータ、エネルギーが放出される標的の領域、および検出器増幅を自動的に制御および設定をするための手段を備える、質量分析計を提供することによってもたらされる。
【0017】
試料準備技術における最近の進歩で、例えばSELDI ProteinChip(登録商標) Arraysで、LDI TOF―MS装置の性能における差異のほとんどは、三つの変数―試料を保持するプローブ表面に放出されるレーザーエネルギー、エネルギーが放出される表面の領域、および検出器の増幅、における差異にあることが突き止められることができる。信号強度は検出器の感度に依存する。これら三つの変数の差異を縮小させることは、質量分析計で実行される測定の再現性を高める。これの高められた再現性は、例えば医学的診断のために使用される測定などの再現性が重要である測定について、質量分析計をさらに有用にする。
【0018】
分析装置の収集効率は通常は設計によって決定されるため、ならびに粒子速度の関数としての検出器の感度は通常はその材料特性によって決定されるため、実際は、質量分析装置によって生成された信号は、試料導入表面に出力された光パルスのフルエンスおよびフルエンスに反応して試料導入表面から脱離されたイオンを検出するために使用される検出器の増幅に依存する。フルエンスは、一定の時間間隔における単位領域あたりのエネルギーである。一般的なLDI―MSにおいて、レーザー光源は、光子の形でエネルギーを試料の表面に放出するために使用される。レーザー収束は、光子が出力される試料表面の領域を決定する。したがって、一般的なLDI―MSにおいて、フルエンスは、試料表面に放出される光パルスのエネルギーを変更することおよび/またはレーザーエネルギーが放出される試料表面の領域を変更することによって変動され得る。例えば、フルエンスは、光パルスのエネルギーを増加させることおよび/または光パルスによって照射される試料導入表面の領域を縮小することによって高められる。しかしながら、検出器の感度および増幅ならびにその関連の電子機器の特性が異なるため、同一の試料導入表面の同一の試料の同一の領域に放出された同一のフルエンスを有することによって、実質的に同一の質量分析計の信号を生成し得ない。検出システムの増幅は三つの部分、つまりイオン検出器の感度、イオン検出器の増幅、および検出器に関連する電子機器の増幅、に分けられ得る。特定の試料に関して、レーザーパルスエネルギーおよび収束は主に、どれくらいのイオンが生成されるかを決定する。イオン種の関数である検出器感度は、検出器に当たる特定のイオンが初期信号を生成するか否かを決定し、それらの初期信号の振幅分布を決定する。検出器の増幅は、初期信号の平均増倍を提供する。検出器とデジタイザ間の電子機器の特性も、検出イオンに対応する記録信号を影響する。よって、機器間の差異または経時的な一つの機器の差異でさえ、機器のこれらの特性のいずれかにおける差異をもたらし得る。
【0019】
したがって、本発明の一実施態様は、レーザー強度、レーザービームの収束、および検出システムの増幅を自動的に調整するために、システムモジュールと連動し、システムモジュール制御する、制御システムを備える質量分析計を提供する。
【0020】
II.定量再現性を備えるレーザー脱離/イオン化質量分析計―システム概観
図1は、本発明の一実施態様に基づいて、定量再現性を提供するためのシステムを備える、レーザー脱離イオン化飛行時間型(LDI―TOF)質量分析装置100の構成要素の概略図である。簡潔に言うと、図示されるように、質量分析装置100は、イオン光学システム120、イオン検出システム125、光学顕微鏡システム150、および制御システム170を備える。
【0021】
図示されるように、イオン光学システム120は、リペラーレンズ121、エクストラクタプレート122、および加速レンズ124を備える。マスフィルタ(図示せず)は備えられ、一般的に加速レンズ124および検出システム125の間に位置付けられ得る。図示されるように、エクストラクタ122は円錐形で、加速レンズ124は平面であるが、その他の形状、構成、またはレンズの数は要望に応じて使用され得る。例えば、エクストラクタ122と加速レンズ124の両方は平面であってもよい。エクストラクタ122と加速レンズ124の両方は、試料130を置いた後にイオンが通過する開口を有する。飛行管(図示せず)またはその他のエンクロージャは一般的に、イオン光学システム、検出システム、イオン光学システム120とイオン検出システム125の間の飛行路を含む。このエンクロージャは一般的に、イオン飛行中の不要な相互作用を防ぐように取り除かれる。
【0022】
検出システム125は、イオン検出器140およびデジタイザモジュール144を備える。イオン検出器140は、試料130から脱離されたイオンを検出し、検出されたイオンフラックスを示す信号を生成する。適切な検出素子の例は、電子増倍装置、その他の電化に基づいた検出器、およびボロメータ検出器を含む。例は、非連続および連続のダイノード電子増倍に基づいた検出器を含む。デジタイザ144は、例えばアナログ・デジタル変換器(ADC)を使用して、検出器からのアナログ信号をデジタル形式に変換する。信号がデジタル化される前に、イオン検出器140からの信号を調整するために、前置増幅器142が備えられてもよい。
【0023】
質量分析装置100はまた、光源152を有する光学顕微鏡システム150も備える。光学顕微鏡システム150は、光を生成および試料130に放出するように設計される。好適な側面において、光学システム150は、既知のエネルギーの光パルスおよび収束が試料130に放出されるように、要望に応じて光を調整、再放出、および収束し得る複数の光学素子を備える。光源152は、好ましくはレーザーを含むが、アークランプまたはフラッシュランプ(例えば、キセノン)などのその他の光を生成する素子が使用され得る。放出された光は、好ましくは、既知の持続時間、強度、および期間の一つ以上のパルスとして提供される。したがって、好適な側面において、光システム150は、パルスレーザー光線を生成し、試料130に放出する。
【0024】
適切なレーザーに基づく光源は、固体レーザー、ガスレーザー、およびその他のものを含む。一般的に、最適なレーザー光源は、特定の所望の波長によって変化され得る。通常、所望の波長は、紫外スペクトル(例えば、250nmまたはそれより短い)から可視(例えば、350nmから650nm)まで、および赤外線(例えば、1,000nm)および遠赤外スペクトルまでにおよぶ。光源は、その他のパルス生成素子を有するパルスレーザーまたは連続(cw)レーザーを含む。パルス生成素子は、光源の下流の光学顕微鏡システムにも含まれ得る。例えば、連続光源は、光が試料に衝突する直前にパルスを生成するために切断される。適切なレーザーの例としては、窒素レーザー、エキシマレーザー、Nd:YAG(例えば、二倍、三倍、四倍の周波数)レーザー、ER:YAGレーザー、二酸化炭素(CO)レーザー、HeNeレーザー、ルビーレーザー、光パラメトリック発振レーザー、波長可変色素レーザー、エキシマー、励起色素レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、および当技術分野に精通する者に容易に理解でき得るその他のものが挙げられる。
【0025】
図1に示される実施態様において、光学顕微鏡システム150は、パルス出力素子154および収束素子156も備える。さらに有用な光学素子は、ビームエクスパンダのレンズセット158、減衰器素子160、ビームスプリッタ127および一つ以上の追加のビーム分割素子162を備え得る。パルス出力素子154は、光パルス131を光源152から試料130に出力するように構成される。一側面において、光出力素子154は、パルスを試料の一つ以上の方向に沿ってラスターするように構成される反射鏡を備える。しかしながら、一つ以上の反射、回折、または屈折素子のその他の組は使用され得る。収束素子156は、光パルス131と試料130の交点で所望のスポットサイズおよび形を得るために、光パルス131の収束を調整するように機能する。例えば、収束素子156は、所望のサイズの円形スポットまたは楕円形スポットにパルスを収束し得る。一側面において、収束素子156は、制御システム170からの制御信号に反応して、スポットサイズを自動的に調整するために制御される。
【0026】
オプションのビーム拡大レンズセット158は、例えば小さいスポットサイズにビーム収束を促進するため、パルスを拡大するように提供される。ビームエクスパンダの一機能は、レーザービームの広がり角を減少させ、収束されたビームの直径をより小さくすることに役立つ。減衰器素子160もオプショナルであるが、パルスの強度またはパルスの一部を調整するために使用され得る。適切な減衰素子は、不変または可変の減光フィルター、干渉フィルター、フィルター回転、開口、および拡散素子を含む。ビームスプリッタ127は、各パルスの一部分を光学的検出素子132に提供するために備えられる。光学的検出素子132は、検出された光を電気信号に変換するために、光検出器および関連の回路を備え得る。例えば、一実施態様において、素子132は、光パルスを検出し、イオン光学システム120における抽出フィールドの生成の適切な時を決めるためなどの、タイミング目的のために制御システム170により使用される信号を生成する光ダイオードを備える。
【0027】
ビーム分割素子162は、レーザー源152の出力特性を決定するために有用である。例えば、ビームスプリッタ162は、パルスによって生成されたスペクトルが拒否されるように、レーザーパルスが異常に高いまたは低いレーザーエネルギーを有するか否かを決定するために、パルスの一部を光検出器の回路素子に提供し得る。ビームスプリッタ162(および関連の光検出器素子)は、減衰器160による調整後にパルス特性の測定を提供し得る。例えば、ビームスプリッタ素子162および162からの信号の比較は、要望に応じてパルス減衰を減少または増加させるため、あるいは要望に応じてパルスを調整するために、可変減衰器素子160を制御するための信号を生成するために使用されることができる。そのようなシステムは、光源152を制御するため、例えば、パルスレーザーによって生成されたパルスのエネルギーにおける長期ドリフトを補正するために、フィードバックを提供するためにも使用されることができる。例えば、パルス出力のエネルギーを増加させることが望ましい場合、光源152は、生成されるパルスのエネルギーを増加させるために制御され得る、または制御信号は、減衰量を減少させるために減衰素子、例えば素子160に送信され得る。
【0028】
要望に応じて光パルスを調整するために、代替または追加の光学素子が使用され得ることが理解されるべきである。光学システム150のさまざまな光学素子の代替の構成は本発明の範囲内であることも理解されるべきである。
【0029】
図1に示されるイオン光学システム120を再び参照すると、リペラー121は、好ましくは、プローブインターフェース119を受け入れるように構成される。プローブインターフェース119は、それ自体、光学顕微鏡システム150からの照射(例えば、レーザー照射)がプローブ上の試料導入表面を照射するように、プローブを嵌合させるように構成される。図1に示されるように、試料導入表面は、堆積やその他の方法で形成された試料130を含んでもよい。プローブは、一つまたは複数の試料導入表面を備えていてもよい。プローブインターフェース119は、好ましくは、プローブインターフェース119、プローブ、およびリペラー121が合わせてリペラーの機能を果たすように、リペラー121と電気接触しているように設計される。一側面において、プローブインターフェース119は、プローブ、ひいては試料導入表面を少なくとも一つの方向に沿って変換するように構成される。例えば、図1に示されるように、プローブインターフェース119は、図1の平面がxおよびy方向を示すプローブをz方向に変換するように構成されてもよい。例えば、プローブインターフェース119は、プローブを制御可能な方法で変換するように構成されたステッピングモーターまたはその他の素子を備える、またはそれらに接続されることができる。
【0030】
制御システム170は、例えば、自動的に機器制御パラメーを調節することによって、収束素子156、減速器160、光源152および検出システム125を制御するなど、自動同調機能を備える質量分析装置100の全体の操作を制御するために提供される。制御システム170は、システム170がユーザー出力を受信し、制御信号をさまざまなシステム構成要素に提供することを可能にする制御ロジックを実装する。
【0031】
制御ロジックは、そのロジックを伝達する手段、例えば、コンピュータネットワークを介して、キーボード、マウス、その他の入力装置を介して、CD、DVD、またはフロッピー(登録商標)ディスクなどのポータブル媒体上で、またはRAM、ROM、ASICなどのハードウェアに組み込まれる媒体上で、またはその他同様の装置などのいかなる手段も使用して制御システム170に提供されてもよい。制御システム170は、当技術分野に精通する者には明白であろう、マイクロプロセッサなどのスダンドアロンのコンピュータシステムおよび/または統合情報モジュール、および質量分析装置100のさまざまなシステム構成要素と連動するための関連するインターフェース回路を備えていてもよい。例えば、制御システム170は、好ましくは、光パルスの収束を調整するために収束素子156に、ならびに試料導入表面の光パルスのラスターパターンの生成を制御するためにパルス出力素子およびプルーブ変換機構に、制御信号を提供するためのインターフェース回路を備える。また、制御システム170は、好ましくは、光ダイオード素子132からトリガー信号を受信しタイミング信号を生成するため、およびタイミング制御信号をイオン光学システム(例えば、イオン抽出パルス信号)および検出システム125(例えば、ブランキング信号のために)提供するための回路を備える。
【0032】
1.自動レーザーエネルギー制御
本発明の一実施態様において、制御システム170は、試料表面に放出されるレーザービームのエネルギーレベルを制御および/または設定するために信号を提供する。制御システム170は、LEM1からの信号102、LEM2からの入力信号104、およびユーザー入力106を入力として受信する。入力信号102は、レーザー源152からの出口でレーザービームのエネルギーレベルの大きさを提供し、入力信号104は減速器160との連携後にレーザービームのエネルギーレベルの大きさを提供する。例えば、操作制御システム170は、レーザーエネルギーを所望のレベルに設定するためにユーザー入力を受信してもよい。制御システム170は次に、要求されたレーザーエネルギーを試料導入表面に放出するために、該当する場合、どの変更が必要であるかを決定するために、信号102および104と入力設定とを比較する。比較の結果に応じて、放出されたレーザーエネルギーを上下に調整するために、システムの構成要素、例えばレーザー152および/または減衰器160に信号108が提供されてもよい。一側面において、少なくとも一つのレーザーパルスのエネルギーレベルはこの方法で測定される。いくつかのまたは数百のパルスのエネルギーは、エネルギーレベルを特定値にいかに調整するかを決定するために測定されてもよい。特定値は、コンパイルされたデータに基づき、ユーザー入力に基づき、または事前に設定されることができる。一側面において、エネルギーは、少なくとも一つの目盛り付きの光学計を使用して測定され、エネルギーは、レーザーパルスが通過する減衰器を調整することによって調整される。一側面において、エネルギーは、前回のレーザーパルスまたはレーザーパルス(複数)のエネルギーの測定に基づいて各レーザーパルスの前に調整される。
【0033】
一実施態様において、制御システム170は、要求されたレーザーパルスエネルギーを試料に伝達するために、減衰器160を設定するための電子回路およびファームウェアを備える。一側面において、制御システムは、減衰器と関連するアクチュエータの位置の関数としての減衰器の特性が示される、レーザーエネルギー減衰モデルによって決定されたレーザーエネルギーの参照テーブルを実装する。所望のエネルギーを放出するのに必要とされる減衰器の特性は、入力102、104、および106のうちのいくつかから算出され、必要とされるアクチュエータの位置はテーブルに参照される。この側面において、制御システム170は参照テーブルを保存するために記憶モジュールを備える。
【0034】
一側面において、減衰器160は、装置を通過する光の可変減衰を提供する装置を備える。減衰器160は、虹彩、減光フィルター(NDF)、傾斜NDF、Fresnel減速器、または表と裏の表面の片方または両方が、光パルスの強度を入射角の関数として変更する光学干渉を生成するのに適したフィルムで覆われている、一つの透明材料を備えていてもよい。一実施態様において、円形のNDFが使用される。
【0035】
一側面において、制御システム170は、入射光または減衰を制御するアクチュエータの位置に対して、光学伝送を減衰器の位置に関連付ける参照テーブルまたは数学関数を提供するために、減衰装置160を較正するための方法を実装する。所望のレーザーエネルギーは、試料に衝突する所望のパルスエネルギーを近似的に生じるように減衰装置を設定する制御システム170に供給される。
【0036】
2.自動収束制御
本発明の別の実施態様において、制御装置170は、レーザービームの収束を設定および制御するために信号を提供する。例えば、信号は、焦点面を調整するために、ビームのパスにおけるレンズの位置を調整するために、収束レンズ156に接続されるアクチュエータに提供されてもよい。焦点面を制御することも、レーザービームによって照射される試料導入表面の領域の制御を可能にする。上に説明されたように、フルエンスは、試料表面に放出される全エネルギーの修正および照射領域の修正のうちの一つまたは両方によって変更することが可能である。例えば、フルエンスは、放出されるエネルギーを増加させることによって、またはレーザービームによって照射される試料導入表面の領域を縮小することによって、増加されることが可能である。よって、一側面において、収束素子156は、試料導入表面130上のビームのスポットサイズを拡大または縮小するために、自動的に焦点面を調整するように、制御システム170によって制御される。さらに、ビームの広がり、つまりレーザービームの収束を変更するために、ビームエクスパンダ素子158を自動的に調整するよう制御信号が提供されてもよい。
【0037】
制御システム170は、一側面において、ビームの収束を焦点位置に設定するための他に、収束を焦点位置からのさまざまなオフセットに調整するために機能する。オフセットは、事前に設定されてもよく、またはレーザービームおよび/または光学システムの測定された特性から決定されてもよい。一側面において、制御システム170は、試料導入表面の照射される領域が最小になる焦点設定を決定する。例えば、一側面において、制御システム170は、検出可能な信号を生成する最低レーザーパルスエネルギーで、測定信号が検出される収束設定を発見するために、複数の異なる収束設定およびレーザーエネルギー設定で(検出システム125経由で)測定信号をサンプリングするプロセスを実装する。別の側面において、測定信号は、検出される最大の測定信号が特定の範囲内にあることを確実にするために調整されたレーザーパルスエネルギーで、複数の異なる収束設定でサンプリングされる。焦点設定はその後、最大の測定信号に対応する収束設定を決定するために、フィッティングまたは数学的処理を使用することによって決定される。
【0038】
この収束設定は焦点設定として保存されることができる。プロセスは、事前に設定されるまたは参照テーブルに基づく、ユーザーによって入力される、またはデータベースから入手される、もしくはコンピュータネットワークを介して送信または受信される制御システムまたはコンピュータによって受信されることが可能である、調整指示を使用することができる。
【0039】
3.検出器および自動増幅制御
一実施態様において、制御システム170は、測定信号を生成するために使用される検出システム125における検出器140の増幅を自動的に設定および制御するために信号を提供する。上に説明されるように、光学顕微鏡システム150は、適切かつ可変のエネルギーおよび収束、すなわち試料を脱離し試料導入表面の近くにイオンを生成するためのフルエンスおよび領域を有する、連続またはパルスのレーザービームを放出する機能を実行する。脱離イオンは、次に、イオンの到達が検出され信号に変換される検出器140まで加速して進む。検出器140に移動する際のイオンの飛行時間は、既知である質量対電荷比(m/z)を算出するために使用される。例えば、レーザーパルスのタイミングおよび/または抽出フィールドの生成に基づいて、プロセスが開始した時間が分かる。
【0040】
検出器の増幅は一般的に、検出器に印加される電圧によって制御される。一側面において、制御システム170は、電圧ひいては増幅を調節するために、検出システム125、例えば、制御可能な電圧を検出器140に供給する電源に、調整指示の信号を提供する。印加電圧の機能である検出器の増幅は、手動でも自動でも測定されることができる。結果は、好ましくは、システムが増幅を後に所望のレベルに設定することを可能にするために(例えば、記憶装置またはバッファに)保存される。調整指示の信号は、事前に設定される、ユーザーによって入力される、もしくは参照テーブルまたはデータベース(例えば、記憶装置から)から検索されることができる。加えて、調整指示の信号は、ユーザーから直接またはコンピュータネットワーク上で制御システム170によって受信された信号に基づくことができる。
【0041】
一側面において、検出器の増幅は、単一イオンが検出器に当たる場合に生成される平均電荷(例えば、電子の数)を測定することによって測定される。これは、特定の側面においては、区別不可能なほどイオンがほぼ同時に検出器に到達することがまれであるほど少ないイオンでスペクトルを生成することによって実行される。測定は、検出器の変換表面に衝突時に最大一つの二次電子を生成すると予測されることができる高質量(すなわち遅い)イオンに限定されてもよい。この方法において、測定される検出器の増幅は、測定に使用されるイオンの質量/速度に依存しない。あるいは、測定は、対象となる特定の質量範囲において実行され、その質量範囲におけるイオンのための検出器の反応(検出器の感度と増幅の両方の機能)を固定することができる。
【0042】
一側面において、検出器の増幅は、既知のフラックスの荷電粒子の信号を検出器の入力に供給することおよびこのフラックスに対応する出力信号を測定することによって測定される。単一イオンを使用することは、統合されたフラックスが一つの粒子であるこの技術の特例である。
【0043】
好適な側面において、検出器の増幅は、検出器内の活性表面の汚染による通常の経年劣化プロセスなどの検出器の経時的な変化を補正するために、定期的に再測定される。
【0044】
III.制御システム
上に説明されたとおり、制御システム170は、光パルスのエネルギーレベル、光パルスの収束、および検出器の増幅を個別におよび自動的に設定および制御することができる。加えて、制御システム170は、三つ全てまたは三つのパラメータのうちのいずれの組み合せも同時に設定または制御することができる。単一の制御素子が説明されるが、制御システム170の制御機能は、一つ以上のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路などの複数の情報装置またはモジュールにおいて実装されてもよく、または制御システムの機能は、一般的な目的において実行されるソフトウェアプログラムとして全体または一部に実装されてもよい。制御システム170は、ファームウェアとソフトウェアの組み合せとしても実装され得る。ユーザー入力106は、例えば押しボタンまたはダイヤルを介してなどの電子機械的入力機構から、または汎用または専用のコンピュータ上のソフトウェアのユーザーインターフェースから、受信されることができる。加えて、ユーザー入力だけでなく制御信号もインターネットまたはイントラネットなどの通信ネットワーク上に提供されることができる。ユーザー入力を受信し、それに反応することに加えて、制御システム170は、完全な自動化で機能することができる。
【0045】
IV.複合飛行時間スペクトルを生成する方法
最終的に分析される飛行時間スペクトルは、一般的に、試料に当てる単一の光パルスからの信号を示さず、多数のパルスからの信号の合計を示す。測定されたスペクトルは一般的に、例えば合計または平均することによって複合される、いくつかのレーザーショットによって生成された各スペクトルの複合である。これは雑音を減少させ、ダイナミックレンジを増加させる。一実施態様に基づいて、機器の再現性をさらに改善するために、複合信号を形成するのに適切なスペクトルを限定および結合する方法が提供される。一側面において、前記方法は、スペクトル部分を複合スペクトルに含める前に、スペクトル部分を選択および/限定することを含む。本側面において、改善された測定信号は、それらを結合して複合スペクトルを形成する前に、スペクトル部分を事前に限定することによって取得されることができる。スペクトルの部分を限定することは、その部分を閾値とまたはウィンドウパラメータで比較し、その部分を他の部分と結合して結合スペクトルを形成する前に、重み係数をその部分に割り当てることを含む。重み係数は、ゼロと1の間の正規化係数であってもよい。スペクトルの質を反映するさまざまな特性指標は、重み係数を生成する場合に使用され得る。これらのスペクトルの特性指標は、信号対雑音比ならびに例えば、光パルスのエネルギーが許容エネルギーの範囲内であるか否かの測定、およびスペクトル信号が特定の質量範囲における特定信号の範囲であるか否かの測定などのその他の特性基準を含む。例えば、信号記録システムによって切り捨てられる信号を含むスペクトルは、切り捨てによってもたらされた信号のひずみが複合スペクトルに含まれないように、ゼロ重量を割り当てられ得る。特性基準の別の例は、質量範囲にわたって統合されたスペクトル信号の測定であり得る。
【0046】
本発明の一実施態様に基づいて、複合飛行時間スペクトルを生成する方法は、表面から検体を脱離およびイオン化するために、レーザーパルスを試料導入表面の測定試料に放出することを含む。前記方法は、レーザーパルスのエネルギーを測定ことおよび脱離およびイオン化された検体を検出することすることおよび検出された検体の飛行時間スペクトルを生成することも含む。次に、試料表面に放出されたエネルギーによって評価が成され、測定されたエネルギーは、エネルギー許容基準と比較される。生成されたスペクトルも、スペクトルの許容基準に基づいて評価される。評価後、重み係数が生成されたスペクトルに適用され、重み係数は複合スペクトルに含まれる。レーザーパルスエネルギーの評価は、測定が特定エネルギーの範囲内にあるか否かを決定することを含む。スペクトルの評価基準は、特定質量および/または特定飛行時間の範囲間の測定信号または時間平均の測定信号に基づく。評価後、複合スペクトルは、一側面において、同一の試料から生成される複数のスペクトルに関数を適用することによって導き出され、その関数は、飛行時間または質量の関数としてのスペクトルの強度の加重合計または平均である。
【0047】
V.定量的に再現可能なスペクトルを生成することが可能なシステム例
Ciphergen Biosystems,Inc.のProtein Chip(登録商標)System、シリーズ4000(PCS4000)は、本明細書で説明されるシステムおよび方法を実装する質量分析装置の一例である。本機器において、目盛り付きの光学計は、光源として使用されるレーザーの出力を測定するために使用される。レーザー出力の前の1000回の測定が平均化され、次回の一連のレーザー発射で試料に放出されるエネルギーが、実質的に機器のオペレータにより要求されたエネルギーであるように、可変減衰器が調整されるために使用される。この方法は、レーザーによって提供されるパルスエネルギーにおける経時的な変化を自動的に補正する。減衰器の調整には、減衰器の伝送特性およびその他の光学素子の光学特性が既知であることが必要である。減衰器を調整するために使用されるアクチュエータの位置の関数としての減衰器の伝送特性は、減衰器が初めて使用される前に機器によって自動的に測定される。測定された減衰器の特性の例は図2に示される。試料に放出される光パルスの代表試料を測定することおよびその光パルスのエネルギーを制御するために可変減衰器と組み合わせてこの測定を使用することが可能であることに留意しなければならない。この方法は、光パルスの代表試料を採るために使用される光学の光学特性のみが既知かつ不変でなければならないとう利点を有する。この方法は、光パルスの代表試料を生成するために使用されるものより先の光学素子において発生する変化を自動的に補正する。
【0048】
PCS4000において、試料においてのレーザーの収束は自動的に決定される。これは、一側面において、以下のステップで達成される。1)収束に使用される検体の試料が機器に置かれる。2)光学システムが、所望のエネルギーの光パルスを試料に放出するように設定される。3)検体のスペクトルが、収束レンズを制御するアクチュエータの異なる設定で取得される。4)検体に対応する到達時間に関して、これらのスペクトルの積分が算出される。5)これらの算出された積分の最大値が所望の範囲値内にない場合、使用される光パルスの所望のエネルギーは調整され、そしてステップ2)から5)は最大値が所望の範囲内に入るまで繰り返される。そして6)検体の最大の統合スペクトルを生成すると予測されるアクチュエータの位置がこれらの測定から推定される。このアクチュエータの位置はアクチュエータおよび収束レンズの焦点位置であるようにとられる。ステップ6)の前に、焦点位置推定の正確さを改善するために、異なる減衰器の範囲間の、減衰器の設定の異なる間隔で、別の組のスペクトルが取得され得る。焦点位置を決定するために使用されるデータおよび分析の例は、図3に示される。焦点位置に対して機能収束位置は、各特定の適用の要件によっておよび各機器の光源の特性によって決定される。これらは、特定の適用に適切な機能収束位置を達成するために、焦点位置に適用されるオフセットを規定する。より一貫性のある機器間での特性を有する光源は、光源の特性におけるオフセットの依存性を最小化または排除する。
【0049】
PCS4000において、検出器の増幅は、検出器に印加される電圧によって制御される。この電圧は一般的に、2500Vから4500Vの範囲内である。印加電圧の関数としての検出器の増幅は、検出器の使用年数に応じてならびに検出器が使用されるにつれて変化する。PCS4000において、印加電圧の関数としての検出器の増幅は定期的に測定され、この測定の結果は、実質的に既知および制御される検出器の増幅で機能を可能にするために、スペクトル取得中に使用される。増幅測定は、検出器に印加される電圧を特定の電圧に設定し、検出器の高感度領域での単一イオンの衝撃に対応する多数の信号を収集することによって実行される。これらの信号は、検出器の増幅を決定するために分析される。この手順はその後、多くの異なる印加電圧で繰り返される。生成されたデータはテーブルを作成するために使用される。スペクトルのその後の取得中に、このテーブルは、検出器が実質的に所望の増幅で機能するように、検出器に印加する電圧を決定するために使用される。自動的に測定されたデータの例およびテーブルを作成するために使用された曲線は、図4に示される。
【0050】
PCS4000において、検出器とデジタル化システムの間の電子機器は、定期的および自動的に較正される。これらの電子機器の詳細は、「NONLINEAR SIGNAL AMPLIFIERS AND USES THEROF IN A MASS SPECTROMETER DEVICE」という名称がそれぞれについている、2004年7月1日に申請された米国仮出願シリアル番号60/585,350、2004年7月15日に申請された60/588,641、および2005年6月1日に申請された60/686,680において説明されており、それぞれの内容が参照することによって本明細書に組み込まれる。この較正の例は図5に示される。
【0051】
PCS4000によって、機器間での反応における差異は、収束部分の光源依存性オフセットを適切に選択することによってごくわずかになった。これは、以下の2つの方法で実証された。(1)各機器でヒト血清の同一の試料を起用、広範囲の質量間の異なるタンパク質に対応するピークを選択、および各機器で測定されたこれらのピークの平均強度を比較する方法。2つの機器についてのそのデータの例は以下の表1に示される。表1に示されるピーク強度は、ピーク強度における差異を分り易くするために、2つの機器によって測定されたピーク強度の平均に正規化されていることを留意しなければならない。表1に示されるように、29ピークの平均ピーク高さの差異は7%未満である。(2)データが、各機器について別々にならびに単一のデータセットにプールされる両方の機器のデータについて分析された、タンパク質プロファイリング実験を実施する方法。プロファイリング実験において、試料は一般的に、特定の疾患を有する集団と健康集団の両方から採取される。実験は、患者集団と健康集団において検出された各タンパク質の量における系統的差異を求める。この種類の実験が2つのPCS4000の機器で実行された場合、両方の機器は患者集団と健康集団で明らかに違いを示し、機器による結果の明らかなグループ分けは存在しなかった。主要成分分析は、多くの場合、データセット間での系統的差異を発見するために使用される。本実験のデータの主要成分分析(PCA)は図6に示される。図6Aおよび図6Bは、各機器で個別に実行された主要成分分析を示し、図6Cは、両方の機器からプールされたデータの同一の分析を示す。試料グループ間の明確な区別は全3つのデータセットに見られる。図6Dは、2つの機器の間で区別するために色がつけられたデータ以外は、図6Cと同一のデータを示す。機器に基づいて、明らかにグループになる明確な区別は発生しない。これらの実験の両方において、同一の取得プロトコルが、機器の各々に取得状況を特定するために使用された。このプロトコルは、何よりもまず、試料に放出される各レーザーパルスのエネルギーおよび試料の各部に放出されるパルスの数を含む、異なる種類の試料に対応するために必要なパラメータを含む。現在のところPCS4000において、照射領域および検出器の増幅は、通常、使用されるプロトコルの種類によって決定され、通常はユーザー制御に基づかない。
【0052】
【表1】


パラメータ依存性の一つだけの機器で、このレベルの機器の非依存性能を達成することは無理である。パラメータ依存性の機器の必要性を排除されることが可能な、またはこのパラメータが自動的に測定されることが可能なさまざまな方法が、例えば、1)本明細書で説明された方法が、可変パラメータなしで機器の独立性能を提供するより一貫性のあるユニット間の特性で光源を使用することによって、2)光源を、その広がりを測定することにより、その状況で自動的に特性付けることによって、3)各光源を較正し(例えば、その広がりおよび/または断面強度分布を測定することによって)、機器に光源および較正を共に導入することによって、さまざまな方法が存在する。
【0053】
本発明は、実例としておよび特定の実施態様において説明されたが、本発明が開示された実施態様に限定されないことが理解されるべきである。反対に、当技術分野に精通する者にとって明らかであり得るさまざまな修正および同様の構成が範囲に含まれることを意図している。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような全ての修正および同様の構成を含むように、極めて広く解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明に基づく、LDI―MS装置の実施態様のブロック図である。
【図2】図2は、減衰器の自動較正のデータである。減衰器の透過係数は、減衰器を作動させるアクチュエータの位置に対して示される。
【図3】図3は、自動収束ルーチンのデータである。スペクトルにおける統合されたイオン電流は、収束システムの位置に対して示される。曲線(順番に)は、広範囲の収束設定での広い間隔の測定、広い間隔の測定で発見されるピークでの狭い間隔の測定、フィッティングルーチンにより使用される推測(当初見積り)、狭い間隔のデータへのファイナルフィッティング、およびフィッティングから決定された収束位置を含む。
【図4】図4は、検出器に印加される電圧の関数としての、検出器の増幅の自動測定のデータである。パルスは測定された点であり、線は機器によって使用された曲線表である。
【図5】図5は、検出器からデジタイザまで(デジタイザを含む)の電子機器の自動特性のデータである。デジタイザ出力は、入力電流(検出器により出力された電流)に対して示される。パルスは測定された点であり、線は電子機器の所望の伝達関数である。データにおけるキンクはデジタイザの構造の人為的な結果である。
【図6−1】図6は主成分分析であり、(A)は機器#1のグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(B)は機器#2のグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(C)は機器#1および#2のプールされたデータにおけるグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(D)は、データが機器によっていかに区別されないかを示すために色づけされているところ以外は図6Cと同一のデータを示す。
【図6−2】図6は主成分分析であり、(A)は機器#1のグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(B)は機器#2のグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(C)は機器#1および#2のプールされたデータにおけるグループAおよびグループBの試料の区別を示し、(D)は、データが機器によっていかに区別されないかを示すために色づけされているところ以外は図6Cと同一のデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー脱離質量分析装置であって、
(a)試料導入表面の制御可能な領域に、制御可能なエネルギーを有するレーザーパルスを放出するように構成された、レーザーおよび光学素子を備える光学アセンブリであって、前記試料導入表面に放出された前記パルスは、前記表面から測定分子を脱離およびイオン化する光学アセンブリと、
(b)前記表面から脱離およびイオン化された測定分子を検出するように構成された、制御可能な増幅を有する検出器と、
(c)前記試料導入表面に放出される、前記レーザーパルスのエネルギーを自動的に制御するための手段と、
(d)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域を自動的に制御するための手段と、
(d)前記検出器の増幅を自動的に制御するための手段と
を備える、レーザー脱離質量分析計装置。
【請求項2】
前記エネルギーを自動的に制御するための前記手段は、前記表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギーを特定値に設定するための手段を備え、
前記領域を自動的に制御するための前記手段は、前記試料導入表面の特定領域に照射する前記レーザーパルスを収束させるための手段を備え、
自動的に前記増幅を制御するための前記手段は、前記増幅を特定値に設定するための手段を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エネルギーを特定値に設定するための前記手段は、レーザーパルスエネルギーを測定するための手段と、前記測定に基づいてレーザーパルスエネルギーを調整するための手段とを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レーザーパルスを収束させるための手段のための前記手段は、前記収束を測定するための手段と、前記測定に基づいて前記収束を調整するための手段とを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記レーザーパルスを収束させるための前記手段は、前記測定を受信し、前記測定に基づいて調整指示を送信するように構成されたコンピュータを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記増幅を自動的に制御するための前記手段は、前記増幅を測定するための手段と、前記測定に基づいて前記増幅を調整するための手段とを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記増幅を自動的に制御するための前記手段は、前記測定を受信し、前記測定に基づいて調整指示を送信するように構成されたコンピュータを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記表面に放出された前記エネルギーを特定値に設定するための前記手段は、減衰器と、前記エネルギーを調整するために前記減衰器と接続されたアクチュエータとを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザーパルスを収束させるための前記手段は、レンズと、照射された前記試料導入表面の前記領域を調整するために前記レンズに接続されたアクチュエータとを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記レーザーパルスを収束させるための前記手段は、前記試料導入表面に照射された前記領域が最小になる焦点設定を決定するための手段と、前記特定領域を照射するために、前記収束をオフセットするための手段とを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項11】
前記焦点設定を決定するための手段は、
a)測定信号が最低エネルギーで検出されることが可能である収束設定を発見するために、複数の異なる収束設定およびエネルギー設定で、測定信号をサンプリングするコンピュータアルゴリズムであって、前記収束設定は前記焦点設定であるコンピュータアルゴリズム、または
b)測定信号が、最大値は特定の測定信号の範囲内にあるレーザーエネルギーに関して最大である前記収束設定を発見するために、複数の異なる収束設定で測定信号をサンプリングするコンピュータアルゴリズムであって、前記収束設定は前記焦点設定であるコンピュータアルゴリズム
のうちの一つを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記増幅を設定するための前記手段は、前記検出器に制御可能な電圧を供給する電源を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項13】
前記レーザーパルスの前記エネルギーを設定するための前記手段、前記レーザーパルスを収束させるための前記手段、および前記増幅を設定するための前記手段は、前記手段への調整指示を送信する一つ以上のコンピュータを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
前記調整指示は、事前に設定されているまたは参照テーブルに基づいている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記調整指示は、ユーザーにより入力されるまたはデータベースより入手される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記コンピュータは、コンピュータネットワークを介して前記指示を送信および受信する、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
レーザー脱離質量分析装置の運転パラメータを設定する方法であって、
(1)試料導入表面の制御可能な領域に、制御可能なエネルギーを有するレーザーパルスを放出するように構成された、レーザーおよび光学素子を備える光学アセンブリであって、前記試料導入表面に放出された前記パルスは、前記表面からの測定分子を脱離およびイオン化する、光学アセンブリと、
(2)前記表面から脱離およびイオン化された測定分子を検出するように構成された、制御可能な増幅を有する検出器と、
(3)前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギーを自動的に制御するための手段と、
(4)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域を自動的に制御するための手段と、
(5)前記検出器の前記増幅を自動的に制御するための手段と、
を備える装置を提供するステップ(a)と、
(1)前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギー、
(2)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域、および
(3)前記検出器の前記増幅
のうちの一つを自動的に制御するステップ(b)と、を含む方法。
【請求項18】
(1)前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギー、
(2)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域、および
(3)前記検出器の前記増幅
のうちの全てを自動的に制御するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エネルギーを自動的に制御するステップは、少なくとも一つのレーザーパルスの前記エネルギーを測定するステップと、前記測定に基づいて前記エネルギーを特定値に調整するステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記エネルギーは、少なくとも一つの目盛り付きの光学計を使用して測定され、前記エネルギーは、前記レーザーパルスが通過する減衰器を調整することによって調整される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
エネルギーを自動的に制御するステップは、調整指示を決定し、前記エネルギーを調整するための手段に送信するコンピュータプログラムを実行するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも100のレーザーパルスの前記エネルギーを測定するステップと、前記測定に基づいて前記エネルギーを特定値に調整するステップとを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記特定値はコンパイルされたデータに基づき、ユーザーにより入力される、または事前に設定されている、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記エネルギーは、各レーザーパルスの前に調整され、前記測定が、前回のレーザーパルスの前記エネルギーの測定を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記エネルギーを調整するための指示を生成することに使用される情報を、ネットワーク上で送信するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
照射される前記領域を自動的に制御するステップは、前記試料導入表面上で照射される前記領域が最小である焦点設定を自動的に決定するステップと、特定領域を照射するために前記収束をオフセットするステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記焦点設定を決定するステップは、
a)測定信号が最低レーザーパルスエネルギーで検出されることが可能である前記収束設定を発見するために、複数の異なる収束設定およびエネルギー設定で、測定信号をサンプリングするコンピュータアルゴリズムを実行するステップであって、前記収束設定は前記焦点設定であるステップ、または
b)測定信号が、最大値は特定の測定信号の範囲内にあるレーザーエネルギーに関して最大である前記収束設定を発見するために、複数の異なる収束設定で測定信号をサンプリングするコンピュータアルゴリズムを実行するステップであって、前記収束設定は前記焦点設定であるステップ
のうちの一つを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記領域を自動的に制御するステップは、調整指示を決定し、前記領域を調整するための手段に送信するコンピュータプログラムを実行するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記収束をオフセットするための指示を生成することにおいて使用される情報を、ネットワーク上で送信するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記増幅を自動的に制御するステップは、増幅を測定するステップと、前記測定に基づいて前記増幅を特定値に自動的に調整するステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記特定値はコンパイルされたデータに基づき、ユーザーにより入力される、または事前に設定されている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
自動的に前記増幅を制御するステップは、調整指示を決定し、前記増幅を調整するための手段に送信するコンピュータプログラムを実行するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記増幅を調整するための指示を生成することに使用される情報を、ネットワーク上で送信するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
複合飛行時間スペクトルを生成する方法であって、
表面から検体を脱離およびイオン化するために、エネルギーを有するレーザーパルスを試料導入表面の測定試料に放出するステップと、
前記レーザーパルスの前記エネルギーを測定するステップと、
脱離およびイオン化された検体を検出し、前記検出された検体の飛行時間スペクトルを生成するステップと、
i)エネルギーの許容基準に基づいて前記測定されたエネルギーを評価し、前記エネルギーの許容基準が満たされる場合に、前記飛行時間スペクトルを複合スペクトルに含めるステップ、および
ii)スペクトルの許容基準に基づいて前記スペクトルを評価し、前記飛行時間スペクトルと前記測定されたエネルギーの両方についての許容基準が満たされる場合に、前記飛行時間スペクトルを複合スペクトルに含めるステップ
のうちの一つまたは両方と、
を含む方法。
【請求項35】
前記スペクトルは、前記エネルギーまたはスペクトルの許容基準に基づく重みをもって前記複合スペクトルに含まれる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記スペクトルの許容基準は、少なくとも一つの特定強度の範囲内および少なくとも一つの特定飛行時間の範囲内の測定信号に関連する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記スペクトルの許容基準は、特定信号の範囲内および特定飛行時間の範囲内での統合された測定信号に関連する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記複合スペクトルは、同一の試料から生成された複数のスペクトルに、関数を適用することによって生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記関数は、飛行時間の関数としてのスペクトルの強度の合計または平均である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記測定されたエネルギーを評価するステップは、前記測定が特定エネルギーの範囲内にあるか否かを決定するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
レーザー脱離質量分析装置であって、
試料導入表面の制御可能な領域に、制御可能なエネルギーを有するレーザーパルスを放出するように構成された、レーザーおよび光学素子を備える光学アセンブリであって、前記試料導入表面に放出された前記パルスは、前記表面から、測定分子を脱離およびイオン化する光学アセンブリと、
前記表面から、脱離およびイオン化された測定分子を検出するように構成された、制御可能な増幅を有する検出器と、
(a)前記試料導入表面に放出される前記レーザーパルスの前記エネルギー、
(b)前記レーザーパルスによって照射される前記試料導入表面の前記領域、および
(c)前記検出器の前記増幅
のうちの一つ以上を自動的に制御するために、制御信号を前記光学アセンブリおよび前記検出器に提供するように構成された制御モジュールと、
を備える、レーザー脱離質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公表番号】特表2008−503858(P2008−503858A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516807(P2007−516807)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021584
【国際公開番号】WO2006/009904
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(501497253)ヴァーミリオン インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】