説明

定量噴射および連続噴射の切替機能を有するエアゾール製品

【課題】定量噴射と連続噴射の切り替えが確実にできるエアゾール製品を提供する。
【解決手段】定量噴射機構を有するエアゾール容器11と、前記バルブ17に取り付けられる噴射量切替機構を有する噴射部材12とからなるエアゾール製品10。バルブ17は、耐圧容器16とバルブ17とを連通するボール収納部26と、その中で移動自在に収容されるボール27とを備えている。噴射部材12は、切替可能な抵抗の異なる2つの噴射通路を備えており、噴射操作を行う前に切替操作ができる。噴射量が大きくなるように噴射通路を選択して噴射操作をすることにより、ボール27がボール収納部26の通路径を縮径し(想像線)、エアゾール組成物は定量噴射される。噴射量が小さくなるように噴射通路を選択して噴射操作をすることにより、ボール27はボール収納部26を閉鎖せず、定量噴射機能を発揮せず、エアゾール組成物は連続噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴射および連続噴射の切替機能を有するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品は、噴射操作を行うことにより内容物を連続的に噴射するものであり、噴射操作を続ければ内容物が無くなるまで噴射し続ける。そのため、使用者の意図によって、その製品を使用することになる。一方、一回の操作で一定量の内容物を噴射する定量噴射タイプのエアゾール製品も知られている。このようなエアゾール製品は、噴射操作を続けても一定量が噴射されれば噴射が停止する、あるいは、非常に微量の噴射となる。そのため、内容物が比較的人体に影響を及ぼしやすいもの、あるいは、高価なものに用いられる。
さらに、定量噴射と連続噴射の両機能を備えたエアゾール製品も知られている(特許文献1)。このエアゾール製品は、エアゾールバルブのステムの押し下げ量で、定量噴射と連続噴射を使い分けるものであり、その使用状況に応じて使用者が選択できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−42447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的にステムの可動距離が2〜3mm程度とされるエアゾール製品において、特許文献1のエアゾール製品のようにステムの押し下げ量でコントロールすることは、一般消費者には困難である。また、使用者の押し加減のみで切替が行われるため、使用者以外はどちらの噴射仕様で噴射するのかわからない。特に、特許文献1のエアゾール製品はステムの下端で定量室内に供給される孔をシールするため、定量噴射するためにはステムを完全に押し下げる必要があり、強く押し下げなくてはならず、また完全に押し下げていることがわかりにくい。
本発明は、定量噴射と連続噴射の切替が確実にできるエアゾール製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエアゾール製品は、耐圧容器およびエアゾールバルブからなるエアゾール容器と、そのエアゾール容器に取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物とを有しており、前記エアゾールバルブが、耐圧容器内のエアゾール組成物を導入する導入孔と、その導入孔からステム孔まで連通するバルブ通路と、そのバルブ通路内で移動自在に収容される可動弁とを備えており、前記噴射部材を噴射操作する前に操作することによって、噴射量を切り替えることができる噴射量切替機構を備えており、前記噴射量が大きくなるように噴射量切替機構を操作して噴射操作をすることにより、前記可動弁がバルブ通路を閉鎖またはその通路径を縮径してエアゾール組成物が定量噴射され、前記噴射量が小さくなるように噴射量切替機構を操作して噴射操作をすることにより、前記可動弁がその機能を発揮せずエアゾール組成物が連続噴射されることを特徴としている。
本発明でいう可動弁とは、ボールのように、ステム孔を開きエアゾール容器内と大気とを連通させたときに圧力差で可動する弁をいう。また、噴射量とは、単位時間当たりに噴射孔から噴射されるエアゾール組成物の量をいい、複数の噴射孔を備えている場合はその
全ての噴射孔から噴出されるエアゾール組成物の総量をいう。
さらに、噴射量を切り替えることができる噴射量切替機構として、例えば、噴射部材内の通路径の異なる通路の切り替え、噴射部材内の通路長の異なる通路の切り替え、ステム孔径の異なるステム内通路の切り替え、ステム孔の数の切り替えなどが挙げられる。
【0006】
このようなエアゾール製品であって、前記噴射部材が切り替え可能で抵抗の異なる2つの噴射通路を備えているものが好ましい。特に、前記噴射部材が、基部材と、その基部材に連結され、2つの噴射通路を備えた切替部材とからなり、前記切替部材を、基部材に対して回転させることにより、基部材と連通する噴射通路を選択できるものが好ましい。
【0007】
このようなエアゾール製品であって、前記エアゾールバルブが押し下げ量によって噴射量を切り替えることができるステムを有しており、前記噴射部材が、噴射操作する前に、ステムの押し下げ量を規制する操作ができる手段を備えているものでもよい。
さらに、前記エアゾールバルブのステムがチルト型ステムであり、ステムを真っ直ぐ押し下げる場合と、傾ける場合とで2つの噴射量に切り替え可能であり、前記噴射部材がステムの傾きを規制できるものでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアゾール製品は、噴射量が大きくなるように噴射量切替機構を操作して、噴射操作をする場合は、バルブ通路を流れるエアゾール組成物の流量が大きくなり、可動弁が作動し、バルブ通路を閉鎖またはその通路径を縮径する。そのため、エアゾール組成物の定量噴射ができる。つまり、可動弁がバルブ通路を閉鎖する場合は、定量噴射後、噴射が停止する。可動弁が通路径を縮径する場合も、定量のエアゾール組成物が噴射された後、著しく噴射量が変化するため使用者は定量のエアゾール組成物が噴射されたことを認識でき、実質的な定量噴射ができる。
一方、噴射量が小さくなるように噴射量切替機構を操作して、噴射操作する場合は、バルブ通路を流れるエアゾール組成物の流量が小さく、前記可動弁はその機能を発揮しない。そのため、その小さな噴射量で連続噴射される。このように本発明は、噴射操作を行う前に噴射部材を操作することによってエアゾール組成物の定量噴射または連続噴射の選択が確実にできる。
また、本発明のエアゾール製品の定量噴射は、噴射量が大きいため、広いエリア(たとえば、飛んでいる虫等)に勢いよく噴射できる。一方、連続噴射は、噴射量が小さいため、狭いエリア(家具の隙間等)に正確に噴射できる。さらに、ヘアスプレーなど樹脂が含まれるエアゾール組成物の場合、樹脂が噴射孔で乾燥して皮膜を形成し詰まっても、短時間で多量の内容物を噴射する定量噴射によって樹脂の皮膜を破って詰まりを解除することもできる。
【0009】
本発明のエアゾール製品であって、前記噴射部材が切り替え可能で抵抗の異なる2つの噴射通路を備えている場合、噴射量切替機構の構造が簡素であり、製造しやすい。前記噴射部材が、基部材と、その基部材に連結され、少なくとも2つの噴射通路を備えた切替部材とからなり、前記切替部材を、基部材に対して回転させることにより、基部材と連通する噴射通路を選択できる場合、噴射部材の噴射通路の切り替えが簡単であり、かつ、確実である。
【0010】
本発明のエアゾール製品であって、ステムの押し下げ量によって2つの噴射量に切り替えることができるバルブを備えており、噴射操作する前に、ステムの押し下げ量を規制する操作ができる手段を有する噴射部材を備えている場合も、その操作が簡単であり、確実である。
さらに、バルブのステムがチルト型ステムであり、ステムを真っ直ぐ押し下げる場合と、傾ける場合とで2つの噴射量に切り替え可能であって、ステムの傾きを規制する操作が
できる場合も、使用者によって操作が簡単で、確実である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図1のエアゾールバルブを示す側面断面図である。
【図3】図3a、bは、それぞれ図1の噴射部材の噴射量が小さいときの状態および噴射量が大きいときの状態を示す側面断面図である。
【図4】図1のエアゾール製品の連続噴射状態を示す側面断面図である。
【図5】図5a、bは、それぞれ本発明のエアゾール製品に用いられる噴射部材の他の実施形態の噴射量が大きいときの状態および噴射量が小さいときの状態を示す側面断面図である。
【図6】本発明のエアゾール製品に用いられるエアゾールバルブの他の実施形態を示す側面断面図である。
【図7】本発明のエアゾール製品に用いられるエアゾールバルブのさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図8】図8a、bは、本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図、平面図である。
【図9】図9a、bは、それぞれ図8aのエアゾール製品の定量噴射状態と連続噴射状態とを示す一部断面側面図である。
【図10】図10a、bは、本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図、平面図である。
【図11】図11a、bは、それぞれ図10aのエアゾール製品の定量噴射状態と連続噴射状態とを示す一部断面側面図である。
【図12】本発明のエアゾール製品に用いられる噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1のエアゾール製品10は、定量噴射機構を有するエアゾール容器11と、前記エアゾール容器のバルブに取り付けられる噴射量切替機構を有する噴射部材12とからなる。このエアゾール容器11に、内容物および噴射剤からなるエアゾール組成物Aを充填することによりエアゾール製品になる。
【0013】
エアゾール容器11は、アルミニウムやブリキなどの金属製の耐圧容器16と、その開口部に取り付けられるエアゾールバルブ17(以下、バルブ)とからなる。耐圧容器16は、筒状の胴部16aと、その胴部下端を閉じる底部16bと、その上端に形成されたテーパー状の肩部16c、その肩部の上端に設けられたビード部16dとを備えた一体成形品である。しかし、ビード部を設けず上端を円筒状に延ばし、円筒状の下部に内側に突出する環状突起を設けた容器など他の容器を用いてもよい。
【0014】
バルブ17は定量噴射機構を有するものであり、図2に示すように、筒状のハウジング21と、そのハウジング内に上下移動自在に収容されるステム22と、そのステム22を常時上向きに付勢するバネ23と、ステム22のステム孔を塞ぐステムラバー24と、ハウジング21の上部を覆い耐圧容器16に固定されるマウンティングカップ25と、ハウジングの下端に取付けられるボール収容部26と、その収容部内に上下移動自在に収容されるボール(可動弁)27と、収容部の下端に取付けられるディップチューブ28とを備えている。
【0015】
ハウジング21は、上端が開口しており、前記ステム22を収容する上筒部21aと、下端が開口しており、前記ボール収容部26に挿入される下筒部21bと、それらを隔てる隔壁21cとからなり、上筒部21aと下筒部21bとは隔壁21cの中央に形成され
る連通孔21dで連通している。また、下筒部21bの下端の一部に、切欠き21eが形成されている。
ステム22は、有底筒状のものであり、上端が開口しており、側面にステム孔22aを備えたものである。
バネ23は、ステム22の下端と、ハウジング21の隔壁21cとの間に設けられている。
ステムラバー24は、ステム孔22aを塞ぐリング状のものであり、ハウジング21の上端開口部とマウンティングカップ25との間に狭持されている。
【0016】
マウンティングカップ25は、前記ビード部に固着されるマウント部25aと、中央のハウジング保持部25bと、マウント部25aとハウジング保持部25bとを連結する連結部25cとからなり、ハウジング保持部25bの中央にはステム22の突出を許す中心孔が形成されている。中心孔には、ステム22の上下動を支持するように立上壁25dが形成されている。また、マウント部25aとビード部との間にはシール材25eを設けている。
ボール収容部26は、ハウジングの下筒部21bを受け入れるハウジング取付部26aと、ボール27を収容する収容部本体26bと、ディップチューブ28が連結される筒状の連結部26cとからなる。収容部本体26bの径は、ボール27より大きく構成されている。また、ハウジング取付部26aと連結する下筒部21bおよび連結部26cの径は、ボール27より小さく構成されており、これによりボール27をボール収容部26内で上下移動自在に保持する。
【0017】
このように構成された定量噴射用のバルブ17は、ステム22を押し下げ、ステム孔22aをステムラバー24から開放し、バルブ17内と大気とを連通させることにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物Aがディップチューブ28の開口(導入孔)28aから導入され、それと同時に収容部本体26b内のボール27がそのエアゾール組成物により上に押し上げられる。つまり、ボール27がハウジングの下筒部21bの下端開口を切欠き21eを残して閉じる(図2の想像線)。それにより、ボール収容部26からハウジング21にあるエアゾール組成物(定量のエアゾール組成物)が一度に噴射される(定量噴射状態)。それ以降も、エアゾール組成物Aは切欠き21eを通じてハウジング21内にエアゾール組成物は導入されるが、その量は微量であり、噴射量も微量となる(微量噴射状態)。そのため、噴射量の違いによって定量噴射状態から微量噴射状態に移行したことを認識でき、微量噴射となったときに噴射操作を止めれば定量のエアゾール組成物が噴射されたことになる。
【0018】
一方、噴射操作を止め、ステム22がバネ23によって上方に持ち上げられることにより、ハウジング21内は切欠き21eを残して密閉となる。切欠き21eからエアゾール組成物がハウジング21内に導入されることにより、ボール27はボール収容部26内を自重で下降する。これにより繰り返し定量噴射を行うことができる。
【0019】
次に、図3の噴射部材12は、噴射量切替機構を備えたものであり、バルブ17のマウント部25aに取り付けられるガード31と、バルブ17のステム22と連結される基部材32と、その基部材に取り付けられる切替キャップ33とからなる。
ガード31は、リング状の取付部36、その内面に形成された上下方向に延びる2本の溝37とからなる。取付部36は、内壁36aと、外壁36bと、それらを連結する天面36cとからなる下端が開口した環状凹部を呈しており、外壁の下端内面には内側に突出した環状の係止部36dが形成されている。この環状凹部がマウント部25aを覆い、係止部36dがマウント部25aと係合する。溝37は、取付部36の内面に相対するように形成されており、後述する基部材32のステム周りの回転を防止する。
【0020】
基部材32は、円板状の底部41と、その中心に上方に向かって形成された円筒状の通路部42とからなる。底部41の裏面中央は、通路部42内と連通したステム係合部41aとなっている。また、通路部42の一部上端には、上下方向に延びるスリット43が形成されている。さらに、底部41の外周には、外方に突出した突起44が2個180度離れるようにして形成されている。
切替キャップ33は、上底33aを有する円筒状のものであり、側面に形成された噴射孔46と、上底33aの中心から下方に延びる円筒状の基部材連結部47とからなる。そして、基部材連結部を介して通路部42と噴射孔46とは、水平に延びる上下二本の連通路48a、bによって連通している。噴射孔46は、噴射チップを挿入することによって構成されている。連通路48aの先端(噴射孔側)は、噴射チップの内面を沿うようにして噴射孔46まで連通している。また、噴射チップ内面に渦巻き状に形成した溝を備えたメカニカルブレークアップ機構を設けてもよい。
【0021】
この噴射部材12は、ガード31の溝37に基部材32の突起44を係合するようにして基部材32をガード31に上下動自在に連結し、さらに、基部材32の通路部42が切替キャップ33の基部材連結部47内に挿入されるように切替キャップ33を基部材32に回転自在に連結させる。このとき、通路部42の上端は、切替キャップの上下の連通路48a、bの間にくるように構成されており(通路部42と上底33aとの間に隙間が形成するように構成されている)、スリット43の下端が下の連通路48bより下にくるように構成されている。
【0022】
このように噴射部材12は構成されているため、基部材32の通路部42のスリット43と切替キャップ33の下の連通路48bとが直接連通するように切替キャップ33を基部材32に対してスライド回転させることにより(図3b、参照)、基部材32の通路部42と、切替キャップ33の噴射孔46とが上下の連通路48a、bで連通する(大噴量状態、流量大、通路抵抗小)。一方、基部材32の通路部42(上端円筒部)によって切替キャップ33の下の連通路48bが閉じるように切替キャップ33を基部材32に対して回転させることにより(図3a、参照)、基部材12の連通路42と、切替キャップの噴射孔46とが上の連通路48aのみで連通する(小噴量状態、流量小、通路抵抗大)。このとき、基部材32の突起44がガード31の溝37と係合しているため、切替キャップ33の回転に基部材32は追従しない。
【0023】
この切替操作において、切替キャップ33の位置が、大噴量状態または小噴量状態であるかを使用者が認識できるように、その切替と同時にクリック感を与えるようにしてもよい。それにより使用者は、一層確実に切り替えを行うことができる。また、切替キャップ33が基部材32に対して90度以内でその切替ができるように構成し、切替キャップ33が基部材32に対して90度以上回転できないように構成してもよい。それにより、切替キャップ33の操作が一層容易である。
一方、この噴射部材12の噴射操作は、切替キャップ33の上底を下方に押圧し、基部材32および切替キャップ33をガード31に対して下方に押し下げることにより行う。これにより基部材32と係合しているステム22が下降し、バルブ17が開かれる。
【0024】
このような定量噴射機能を備えたエアゾール容器11と、噴射量切替機構を備えた噴射部材12とを組み合わせたエアゾール製品10は、噴射部材12の噴射量が大きくなるように(通路抵抗の小さい)噴射部材12を操作して噴射操作を行う場合、収容部本体26b内を流れるエアゾール組成物の流量が十分に大きくボール27はハウジングの下筒部21bの開口を閉じる。そのため、バルブ17内の定量のエアゾール組成物Aが大きな噴射量で噴射されて、その後、微量噴射状態となる。そして、使用者は、噴射量の違いで定量のエアゾール組成物Aが噴射されたことを認識できる。
一方、噴射部材12の噴射量が小さくなるように(通路抵抗の大きい)噴射部材12を
操作して噴射操作を行う場合、耐圧容器16からバルブ17に導入されるエアゾール組成物Aの流量が小さくなる(収容部本体26b内を流れるエアゾール組成物の流量が小さくなる)ため、図4のように、ボール27はハウジングの下筒部21bの開口を閉じずに、収容部本体26b内を浮遊する。つまり、バルブ17の定量噴射機能が発揮されずにエアゾール組成物Aが小さな噴射量で噴射される。そのため、少量の噴射量でエアゾール組成物Aは連続的に噴射される。このように本発明のエアゾール製品10は、定量噴射状態と、連続噴射状態の切り替えを噴射部材12の切替キャップをスライド回転するだけでできるため、その操作が確実であり、簡単である。
【0025】
図5のエアゾール製品は、噴射部材12がノズルタイプのものであり、エアゾール容器11の耐圧容器16がスリーピース缶となっている。耐圧容器16は、その胴部16a上端(巻締部19a)に二重巻き締めにより連結される目金部19を備えた公知のスリーピース缶である。他の構成は図1のエアゾール製品10と実質的に同じである。
【0026】
噴射部材50は、バルブのステムに装着される基部材51と、その基部材に結合されるノズル52と、その基部材51を覆うようにエアゾール容器に装着されるカバー53とからなる。
基部材51は、直角に折れ曲がった円筒状のものであり、下端でステム22と係合し、先端でノズル52と係合する。
【0027】
ノズル52は、基部材51に係合される連結部材54と、その連結部材に装着されるノズル本体55とから構成されている。
連結部材54は、球状の内部空間を備えたものであり、内部空間と外部とがスリット54aによって連通している。
ノズル本体55は、半球状ないし半円柱状の基端部56と、その基端部から一方に延びるノズル部57とからなる。
基端部56は、前記連結部材54の内部空間に嵌合され、連結部材54内で90度回動できるように構成されている。また、基端部56には、基端部56を貫通し、かつ、ノズル部57と垂直な第1通路58aと、基端部56を貫通し、かつ、ノズル部57と平行な第2通路58bとが形成されている。第1通路58aと、第2通路58bとは独立しており、第2通路58bは、ノズル部57と平行な平面上を環状に迂回するように構成されている。
ノズル部57は、筒状のものであり、第2通路58bと連通している。ノズル部57の先端にさらに筒状の噴射ノズル59がその使用目的に応じて連結される。第1通路58a(噴射量大、通路抵抗小)の方が、第2通路58b(噴射量小、通路抵抗大)よりも径が大きくなっている。ただし、径が同一でも噴射ノズル59が長く抵抗が大きくすれば、それぞれの通路を通るエアゾール組成物の噴射量は異なり、噴射量切替機構となる。
【0028】
カバー53は、エアゾール容器の巻締部19aに装着される装着部62と、基部材51のほぼ全体を覆うカバー部63と、装着部の後方上端とヒンジ部64で連結され基部材52を押し下げるための操作部65とから構成されている。
【0029】
この噴射部材50は、ノズル本体55が下方に向くように回動させることにより、基部材51は噴射量が大きくなる(抵抗の小さい)第1通路58aと連通して定量噴射する(図5a)。一方、ノズル本体55が水平を向くように回動させることにより、基部材51は噴射量が小さくなる(抵抗の大きい)第2通路58bと連通して連続噴射する(図5b)。
つまり、この噴射部材50を図2のバルブを備えたエアゾール容器に取り付けることにより、定量噴射状態と連続噴射状態の切り替えが、噴射部材50のノズル本体55を回動させるだけで、図1のエアゾール製品10と同様に、確実に、かつ、簡単にできる。
【0030】
図6のバルブ70は、図1のエアゾール製品のバルブ17の代替となるものであり、定量噴射状態と、噴射停止状態とを呈する定量噴射機構を備えたバルブである。詳しくは、図2のバルブ17において、ハウジング21の下筒部21bの下端に切欠き21eが形成されていないものであり、ボール27を常時下方に付勢するバネ71をボール収容部26内に有しているものである。他の構成は、図2のバルブ17と実質的に同じものである。
【0031】
このように構成された定量噴射用のバルブ70は、噴射操作、つまり、ステム22を押し下げることにより、ハウジング21内のエアゾール組成物を一度に噴射(定量噴射状態)する。同時に、ディップチューブ28の開口から導入されるエアゾール組成物Aによりボール27が上方に押し上げられ、下筒部21bの開口を閉鎖する。このとき、このバルブ70は、図2のバルブ17のように切欠きを備えていないため、ハウジング21と耐圧容器16とが遮断される。そのため、ハウジング21内のエアゾール組成物が噴射された後は、噴射は一度停止する(噴射停止状態)。
次に、噴射操作を止めると、バネ71がボール27を下方に押し返し、ハウジング21と耐圧容器16とが再度連通する。これにより、エアゾール組成物がハウジング21内に再充填され、繰り返し定量噴射を行うことができるようになる。
【0032】
このバルブ70を備えたエアゾール容器と、噴射量切替機構を備えた図3の噴射部材12または図5の噴射部材50とを組み合わせたエアゾール製品は、噴射量が大きくなるように噴射部材12を操作して噴射操作を行うと、ボール27はハウジング下筒部21bの開口を閉じて定量噴射する。一方、噴射量が小さくなるように噴射部材12を操作して噴射操作を行うと、耐圧容器16からバルブ70に導入されるエアゾール組成物Aが小さくなるため、エアゾール組成物Aの圧力(流量)とバネ71とが釣り合い、ボール27は下筒部21bの開口を閉じずに、収容部本体26b内を浮遊する。そのため、バルブ17の定量噴射機能が発揮されずにエアゾール組成物Aが噴射され続ける。
【0033】
図7のバルブ75も、図2のバルブの代替となるものであり、図2のバルブのボール27の代わりに、板状のピストン76を用い、かつ、ピストン76を常時下方に付勢するバネ71をボール収容部26内に有しているものである。ピストン76は、上底筒状のものであり、その上底には断面積が小さい連通孔77が形成されており、側面にはその断面積が連通孔77より大きい側面連通孔78が形成されている。バネ71は、ピストン76を常時下方に付勢すると同時に、ピストン76の姿勢を保っている。
【0034】
このように構成されているため、ピストン76がハウジング21の下筒部21bを塞ぐことにより、エアゾール組成物Aの通路は連通孔77のみとなり、微量噴射状態となる。そのため、噴射量の変化により所定のエアゾール組成物Aが噴射されたことを使用者は認識できる。他の構成は、図2のバルブ17と同じである。
そのため、このバルブ75を備えたエアゾール容器に噴射量切替機構を備えた図3の噴射部材12または図5の噴射部材50を取り付けることにより、定量噴射状態と、連続噴射状態とを噴射部材の切り替えで変更することができる。
【0035】
図8のエアゾール製品80は、噴射量切替機構が図1のエアゾール製品10と異なり、バルブ81と噴射部材83とによって噴射量切替機構が構成されたものである。つまり、バルブ81のステム82の移動量(下方への移動量)によって噴射量を切り替えるものであり、かつ、そのステムの移動範囲が噴射部材83で規制されるものである。
【0036】
バルブ81は、ステム82が上下に並んで形成された2つのステム孔82a、82bを備えている。他の構成は、図2のバルブ17と実質的に同じものである。
このように構成されているため、両方のステム孔82a、82bが開放されるようにス
テム82を押し下げることにより、エアゾール組成物の噴射量は大きくなり(図9a参照)、下のステム孔82bだけ開放されるようにステム82を押し下げることにより、エアゾール組成物の噴射量は小さくなる(図9b参照)。
【0037】
一方、噴射部材83は、バルブのマウント部25aに取り付けられるガード86と、バルブのステム82に連結される押ボタン87とからなる。
ガード86は、リング状の取付部86aと、その内面に形成された上下方向に延び、相対するように設けられた一対の長溝86bと、その内面に形成された上下方向に延び、相対するように設けられた一対の短溝86cとを有している。取付部86aは、図3の取付部36と実質的に同じものであり、内壁、外壁、天面、係止部を備えている。一対の長溝86bと、一対の短溝86cとは、図8bに示すように、互いに90度となるように形成されている。しかし、その角度は特に限定されるものではない。
押ボタン87は、円柱状のものであり、下端中央に設けられたステム係合部87aと、側面に設けられた噴射孔87bと、それらを連通するボタン内通路87cとを有しており、下端側面に外方に突出するフランジ87dが一対形成されている。
【0038】
このように構成されているため、押ボタン87は、フランジ87dが長溝86bあるいは短溝86c内を沿うような位置でのみ、ガード86内に挿入される(図8b参照)。つまり、フランジ87dが長溝86bに位置するとき、押ボタン87をガード86内で深く押し下げることができ(図9a参照)、反対にフランジ87dが短溝86cに位置するとき、押ボタン87はガード86内で浅くしか押し下げれない(図9b参照)。
【0039】
エアゾール製品80は、バルブ81および噴射部材83を備えているため、フランジ87dが長溝86bに位置するように押ボタン87を配置させ、押ボタン87を押し下げることにより、2つのステム孔82a、bが開放されてエアゾール組成物の噴射量は大きくなり、バルブ81の定量噴射機構が機能し、エアゾール製品80は定量噴射状態となる(図9a参照)。一方、フランジ87dが短溝86cに位置するように押ボタン87を配置させ、押ボタン87を押し下げることにより、下のステム孔82bのみが開放されてエアゾール組成物の噴射量は小さくなり、バルブ81の定量噴射機構が機能せず、連続噴射状態となる(図9b参照)。
【0040】
図10のエアゾール製品90も、噴射量切替機構が図1のエアゾール製品10と異なり、バルブ91と噴射部材93とによって噴射量切替機構が構成されたものである。このエアゾール製品90は、噴射量が押ボタンの操作方向によって変化するものであり、噴射部材の押ボタンを下方に押すことにより定量噴射となり、押しボタンを傾けることにより連続噴射となるものである。
【0041】
エアゾール製品90のバルブ91は、チルトタイプのバルブであり、ステム94が傾動可能にハウジング21内で支持されている。詳しくは、ステム94が、円筒状のステム上部94aと、円柱状のステム下部94bと、その間に設けられ、外方に突出した環状のフランジ部94cとを備えている。また、ステム上部94aには、上下に並んだ2つのステム孔95a、bが形成されている。そして、円柱状のステム下部94bが、ハウジング21内の柱状の空間21xの内円より小さくなっており、ハウジング内で傾くことができる。しかし、ハウジング21内に挿入されるステム下部94bの断面形状がハウジング21内の断面形状の内円より小さい外円を有していれば、特にその形状は限定されない。フランジ部94cの下面でバネ23を受け、上面でステムラバー24と当接しシールしている。
【0042】
このように構成されているため、ステム94を真っ直ぐ深く押し下げることにより、2つのステム孔95a、bが開放し、噴射量が大きくなり定量噴射状態となる(図11a参
照)。一方、ステム94をいずれかの方向に傾けると下のステム孔95bのみが開放し、小さい噴射量で連続噴射状態となる(図11b参照)。
【0043】
噴射部材93は、バルブのマウント部25aに取り付けられるガード96と、バルブのステム82に連結される押ボタン97とからなる。
ガード96は、図8と同様のリング状の取付部86aと、その内面に形成された上下方向に延びる一つの溝96aとを有している(図10b参照)。
押ボタン97は、円柱状のものであり、図8の押ボタン83と同様にステム係合部、噴射孔、ボタン内通路を有しており、下端側面に外方に突出する縦長の突起97aが一つ形成されている。
このように構成されているため、突起97aが溝以外に位置するように押ボタン97を配置させると、突起97aが取付部86aの内面に支持されて、押ボタン97を下方にのみ押し下げることができる(図11a参照)。一方、突起97aを溝96a内に位置するように押ボタン97を配置させると、押ボタン97を溝96a方向に傾けることができ、フランジ側のステム孔95bのみが開放される(図11b参照)。
【0044】
つまり、エアゾール製品90は、バルブ91および噴射部材93を備えているため、突起97aが溝96aに位置しないように押ボタン97を配置させ、押ボタン97を押し下げることにより、2つのステム孔95a、bが開放され噴射量が大きくなり、バルブ91の定量噴射機構が機能し、エアゾール製品90は定量噴射状態となる(図11a参照)。一方、突起97aが溝96aに位置するように押ボタン97を配置させ、押ボタン97を溝96a方向に傾けることにより、フランジ側のステム孔95bのみが開放されて噴射量が小さくなり、バルブ91の定量噴射機構が機能せず、連続噴射状態となる(図11b参照)。この実施形態において、突起97aを複数個も設けても良い。その場合、溝96aも同じ数だけ設けられることとなる。
【0045】
図12の噴射部材100は、噴射量をフィルターで調整するものであり、ステム係合部101と、噴射孔102と、それらを連通する連通路103とを備えている。また、連通路103を塞ぐようにスリット104が上端から設けられている。このスリット104に異なる径の孔106a、106bを備えたフィルター105(図12b)を挿入し、それぞれの孔106a、106bと連通路103とをあわせるようにフィルター105をスライドさせることにより、噴射量を切り替えるものである。複数のフィルター105を挿入して噴射量を切り替えてもよい。
【0046】
これまでの実施形態では、一つの噴射部材を用いて噴射量を切り替えているが、異なる噴射量の噴射部材(例えば、噴射孔の径が異なる噴射部材など)を交互に取り換えることによって噴射量を切り替えて定量噴射と連続噴射を選択してもよい。
【符号の説明】
【0047】
A エアゾール組成物
10 エアゾール製品
11 エアゾール容器
12 噴射部材
16 金属製の耐圧容器
16a 筒状の胴部
16b 底部
16c 肩部
16d ビード部
17 エアゾールバルブ(バルブ)
19 目金部
19a 巻締部
21 筒状のハウジング
21a 上筒部
21b 下筒部
21c 隔壁
21d 連通孔
21e 切欠き
22 ステム
22a ステム孔
23 バネ
24 ステムラバー
25 マウンティングカップ
25a マウント部
25b ハウジング保持部
25c 連結部
25d 立上壁
25e シール材
26 ボール収容部
26a ハウジング取付部
26b 収容部本体
26c 連結部
27 ボール(可動弁)
28 ディップチューブ
28a 開口(導入孔)
31 ガード
32 基部材
33 切替キャップ
33a 上底
36 リング状の取付部
36a 内壁
36b 外壁
36c 天面
36d 係止部
37 溝
41 底部
41a ステム係合部
42 通路部
43 スリット
44 突起
46 噴射孔
47 基部材連結部
48a、48b 連通路
50 噴射部材
51 基部材
52 ノズル
53 カバー
54 連結部材
54a スリット
55 ノズル本体
56 基端部
57 ノズル部
58a 第1通路
58b 第2通路
59 噴射ノズル
62 装着部
63 カバー部
64 ヒンジ部
65 操作部
70 バルブ
71 バネ
75 バルブ
76 ピストン
77 連通孔
78 側面連通孔
80 エアゾール製品
81 バルブ
82 ステム
82a、b ステム孔
83 噴射部材
86 ガード
86a 取付部
86b 長溝
86c 短溝
87 押ボタン
87a ステム係合部
87b 噴射孔
87c ボタン内通路
87d フランジ
90 エアゾール製品
91 バルブ
93 噴射部材
94 ステム
94a ステム上部
94b ステム下部
94c フランジ部
95a、b ステム孔
96 ガード
96a 溝
97 押ボタン
97a 突起
100 噴射部材
101 ステム係合部
102 噴射孔
103 連通路
104 スリット
105 フィルター
106a、b 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器およびエアゾールバルブからなるエアゾール容器と、そのエアゾール容器に取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物とを有しており、
前記エアゾールバルブが、耐圧容器内のエアゾール組成物を導入する導入孔と、その導入孔からステム孔まで連通するバルブ通路と、そのバルブ通路内で移動自在に収容される可動弁とを備えており、
前記噴射部材を噴射操作する前に操作することによって、噴射量を切り替えることができる噴射量切替機構を備えており、
前記噴射量が大きくなるように噴射量切替機構を操作して噴射操作をすることにより、前記可動弁がバルブ通路を閉鎖またはその通路径を縮径してエアゾール組成物が定量噴射され、
前記噴射量が小さくなるように噴射量切替機構を操作して噴射操作をすることにより、前記可動弁がその機能を発揮せずエアゾール組成物が連続噴射される、
定量噴射および連続噴射の切替機能を有するエアゾール製品。
【請求項2】
前記噴射部材が切り替え可能で抵抗の異なる2つの噴射通路を備えている、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記噴射部材が、基部材と、その基部材に連結され、2つの噴射通路を備えた切替部材とからなり、
前記切替部材を、基部材に対して回転させることにより、基部材と連通する噴射通路を選択できる、請求項2記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記エアゾールバルブが、押し下げ量によって噴射量を切り替えることができるステムを有しており、
前記噴射部材が、噴射操作する前に、ステムの押し下げ量を規制する操作ができる手段を備えている、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記エアゾールバルブのステムがチルト型ステムであり、ステムを真っ直ぐ押し下げる場合と、傾ける場合とで2つの噴射量に切り替え可能であり、
前記噴射部材がステムの傾きを規制する操作ができる、請求項1記載のエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−246153(P2011−246153A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120042(P2010−120042)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】