説明

定量的測定および定性的測定のための使い捨て式自己充足型検定装置

この発明は、異物の物理的性質あるいは化学的性質の測定のためのセンサーが含まれているデータ入力・試料採取部分(303)と、電子的処理・記憶手段が含まれているデータ取得部分(301)とを備えてなり、これらの部分が、シート状の印字可能および折り畳み可能な材料から形成されたパッケージの一体部分であり、このパッケージが、その中に収容された部品を密閉するとともに保護するように設計されている、使い捨て式自己充足型検定・診断装置について記載されている。このパッケージには、検査を実行する必要のあるさまざまな機器が含まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料の定量的測定および定性的測定のための使い捨て式自己充足型検定装置において、その測定結果を同装置の中に記憶するとともに遠隔箇所でのさらに別の分析のために収集することができる検定装置の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超小型電子・生化学センサー技術における最近の成果によって、定量的測定および/または定性的測定に基づく健康管理における自己診断のための電子装置がかなりの範囲にわたって創り出されてきたが、患者は、潜在的な病気の検査を実行するために異なった体液を使用することができるときには、低価格の診断用具を使用して、主として定量的測定を行っている。ある人口の中で深刻な状態にある潜在的な多数の個体の検査に関係がある費用を考慮することは、一般に実際的ではなく、また、実施するのに費用効率のよいものでもない。きわめて明白な例として、主として西洋世界では、II型糖尿病の増加によって、健康管理システムに非常に大きい負担がかかり、加えて、病気に冒された個体にとって生活の質に深刻な影響が及ぶ。異なるいくつかの研究によれば、平均的な西洋の国における人口の数パーセントは後の段階で糖尿病へ進行する高い危険性を伴った危ない状況にあることが、示唆されている。糖尿病は早期に発見すれば、適切な処置が採られるときには、病気の突発を防止することができ、あるいは少なくともそれを遅らせることができる。しかしながら、これは「沈黙の病気」であるので、糖尿病は、たいていの場合、診断が遅すぎて、糖尿病の進行を食い止めるために簡単な処置を採ることのできない段階にある。この段階では、インスリンの経口投与あるいは皮下投与が唯一の治療法であり、また、その治療は余命についてのものであるのが一般的である。さらに、この病気は長年にわたって進行するので、別の病気が発生することが一般的である。
【0003】
インスリン治療が行われるII型糖尿病であると診断された患者については、インスリン用量が適正であるということを保証するためには、グルコースレベルを継続的に監視することが不可欠である。病院環境では、グルコースレベルは研究室における検査できわめて正確に定量することができる。しかしながら、このことは、家庭での毎日の投与に関しては、グルコースレベルを厳密に監視する必要があるため、実際的でない。現在、市場では、グルコースレベルの定量的測定を実施するためのいくつかの装置が知られており、これらは、電子素子と、使用後に廃棄される使い捨て型センサーストリップとからなっているのが一般的である。正確な読み取りを行うためには、使用されるセンサーについての較正データを供給する必要があるとともに、適切な温度較正を実行する必要がある。このことは、言い換えると、追加訓練が必要になり、また、誤差の原因になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、あるグループにおける多数の個体を効率的に検査するためには、上記の方法にいくつかの現実的な懸念が生じる。血液試料を中央研究施設へ送るためには、血液試料がバイオハザードであるとみなされるため、そして、それゆえ一般的には郵便で送られることがないため、特別な配達サービスが必要になるであろう。さらに、試料が紛失されたり取り違えられたりしないことを保証するためには、きわめて堅苦しい手順に従わなければならない。多数の個体を中央箇所へ回収する別の選択肢は、検査用シナリオについてはまったく高価すぎるであろう。タイミングもまた重要な因子であり、いくつかの検査では、試料が採取される時刻から分析が実行される時刻までの時間は短いことが必要である。
【0005】
上記のような市販されている電子素子は、理論上は選択可能であるが、必要な訓練とともに、関連する物流コストおよび資本コストによって、この選択肢は実施するのにほとんど実際的なものでなくなる。
【0006】
さらに、いわゆる「空腹時グルコース検査」はこの検査が朝の最初の作業として実行されることから最も正確である、ということが一般に知られている。しかしながら、実際の病院施設では、このことは実施するのにまったく実際的ではない。
【0007】
血中コレステロール、血中ヘモグロビンおよび感染症のような他の病気および/または医学的不均衡の診断および監視には、同様の実際的問題が示されている。血液試料採取検査以外では、唾液、尿、糞便、精液および汗のような他の生物試料の採取検査はすべて、診断的観点から明白な物流上かつ実際上の問題を共有している。
【0008】
隣接する問題の範囲は、工業プラントにおける化学分析、土壌分析、飲料水分析などの広範囲の用途における野外研究室検査を取り扱う。すべてに共通しているのは、試料が少なくとも1つの所要特性について分析されるということと、その検査が一般的には中央研究室で実施されるということである。
【0009】
このような検査、野外の監視および診断の特定の用途を考えると、多数の個体へ郵送することができるとともにその結果が分析のために返送される、使いやすい使い捨て式自己充足型検定装置があるのが望ましいであろう。
【0010】
ヨーロッパ特許第0972196号には、検定手段および記録手段が記載されており、その記録手段は検定手段から分離することができる。この装置は、強化プラスチックのような耐久性のある材料から製造されている。記録部分は、ミシン目手段によって、あるいは爪、掛け金、錠などを解除することによって、分離することができる。検定部分には、管路に流体連通している試料塗布用の窪みがあり、この窪みあるいは管路またはこれらの双方には、試料を採取するための材料と検査準備ずみインジケーターとが含まれており、それによって、ユーザーは試料が適切に検定された時点を決定することができる。分離可能部分には、検定部分との間でデータ通信状態にあるとともに試料に関連する情報を記憶するように構成された記録装置が含まれている。
【0011】
別の使い捨て電子検定装置がヨーロッパ特許第0722563号に記載されている。使い捨て電子検定装置には、試料受容器のためのカード状ハウジングと、処理中の検体の量に相関する信号を発生させるための試料処理手段と、その電気信号をディジタル検査結果出力値へ変換するための手段と、その検査結果出力値を表示するための手段とがある。
【0012】
従来技術についての問題は、容易に製造することができるとともにユーザーへ容易に配送することができ、また、記録ずみデータが中央ユニットによるさらに別の分析のために収集される装置の設計に関係がある。費用効率がよくて確実なデータの検査が可能になることで、応用分野と検査を実行することのできる地理的範囲の多様性とに対する大きい利点がもたらされる。
【0013】
品質保証の観点から、装置の取り扱いの間において事象の時刻および温度条件を登録することもまた重要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、異物の物理的性質あるいは化学的性質の測定のためのセンサーが含まれているデータ入力・試料採取部分と、電子的処理・記憶手段が含まれているデータ取得部分とを備えてなり、これらの部分が、シート状の印字可能および折り畳み可能な材料から形成されたパッケージの一体部分であり、このパッケージが、その中に収容された部品を密閉するとともに保護するように設計されている、使い捨て式自己充足型検定・診断装置について説明される。このパッケージには、検査を実行する必要のあるさまざまな機器が含まれていてもよい。
【0015】
便宜的観点から、すべての必要な部材を内蔵パッケージにいっしょに保持するために試料をキットとしてパックするのが好ましく、ここで、パッケージは複数の目的のために役立つ。
【0016】
この装置は、偏平な形状に実装することができるとともに、自己充足型パッケージに折り畳むことができる。このことによって、製造過程がかなり簡単になる。
【0017】
このパッケージは、行われた測定の後にパッケージの実質的部分が収集されたデータを保持するために必要でないときには、廃棄することができるように、さらに設計することができる。さらに、センサーは化学的物質および/または生物学的物質によって汚染されるため、この部分を取り外して廃棄することもまた好ましい。データ処理・記憶手段を保持する1つの部分が備わっているようにパッケージを設計することによって、測定が終了した後にパッケージの残りを引きちぎって廃棄することができる。その後、データを保持するための部分は、さらに別の分析のために保存することができる。遠隔操作することのできる通信インターフェイスが設けられているときには、情報はホストコンピュータシステムとの間で自動的に交換することができる。
【0018】
一般的なバイオセンサーは、電位差測定あるいは電流測定の応答関係によるかまたはこれらの組み合わせによるかのいずれかに依存する電気化学的(レドックス型)熱力学システムである。センサーの応答はたいてい、温度依存性が高い。それゆえ、この発明の1つの観点は、温度偏差についての記録された応答を補償することのできる温度感知手段を提供することである。さらに、正確な測定を実行するにはその温度が高すぎるかあるいは低すぎるということをユーザーに警告するために、温度センサーを使用することができる。
【0019】
さらに、凝固および/または溶融は、バイオセンサーからの結果を無効にするおそれがあるため、温度センサーの存在は、検定装置が保存および輸送の間に温度極限にさらされなかったことを補償するために、使用することもできる。
【0020】
センサーの化学的性質に左右されるが、湿度を監視するためには、湿気が読み取りの信頼性に影響を及ぼすおそれがあるので、付加的な測定値を取得する必要があるかもしれない。そこで、湿度の変動を補償するために、あるいは湿気の影響が大きすぎたときに無効状態を知らせるために、乾燥剤かあるいは湿度センサーかのいずれかを付加することができる。
【0021】
記載された実施形態には、糖尿病検査における血中グルコースの定量的測定のための診断装置が表わされているが、同一の基本構成を他の診断用途のために使用することができる。健康管理の用途では、試料は、血液、唾液、尿、汗、粘液、膿、創傷流体、精液あるいは糞便から採取されることが多いが、これらには、不快であり、潜在的に有害であり、また、物流の観点から処理することが困難である、という共通性がある。汚染された部分がデータ記憶部分から不可逆的に分離されるように分離可能な設計を行うことで、この問題は解決する。
【0022】
監査の観点からは、記録されたすべの事象およびデーターポイントがタイムスタンプされるとともに固有の同一性で一組にされる監査証跡があるときには、収集されたデータにおける信頼性が増大するとともに、最終的にいっそう確実な結果がもたらされる。データの完全性は、データが検定装置から遠隔のデータベースまで送信されるときにそれらの信憑性を保証するために検証することのできるデータ処理手段を使用して、その結果へディジタル署名を追加することにより、さらに高められる。
【0023】
いくつかの用途では、付加的な情報は、検査結果を記憶するのに先立って、収集される必要があるかもしれない。例えば米国特許第6,628,199号公報に開示されたような電子アンケート、主観、あるいは装置からの他の情報を統合することによって、ユーザーは、変換された客観的データといっしょに、収集するとともに電子形態で記憶することができる。
【0024】
さらに、いくつかの用途では、詳細な情報を得たかあるいは訓練を受けた人物だけが検査を実行することができる、試料の法律的かつ/または非拒否的な観点が存在するかもしれず、あるいは、意図された人物以外の何者かによって検査が実行されるという懸念がある。このような検査には、血液および/または尿の検査で発見される、ドーピング物質あるいは麻薬物質であるかもしれない違法物質の監視あるいは検出が含まれていてもよい。一体化されたマイクロプロセッサーおよび記憶手段が備わった自己充足型パッケージの設計によって、パッケージにおけるキーパッドの一体化が可能になり、装置自体を配送するために使用するのとは別の経路によって検査を実行するのに先立って、意図された人物が秘密コードあるいは識別用コードで詳細な情報を得て、ユーザー識別・承認計画を実施することができる。PIN入力のような入力を考慮することによって、検査を実行する人物による署名を定位置で使用することができる。
【0025】
しかしながら、一般的に言って、検定装置は、費用を最小限にするためにユーザーの相互作用機能を最小にして設計されることがあり、また、いくつかの用途では、センサー自体を除いて、どのような入力手段も備わっていない、ということを想定することができる。これに対して、ユーザーと相互作用を行うために、また、期待される一連の行為を同期させるために、付加的手段、音声要素および付加的な視覚表示器を付加することができる。検査が非臨床的環境についてのものであるときには、「正」あるいは「負」のような、検査の結果を知らせるいくつかのオンチップ診断があってもよい。一般的な可聴表示器は圧電スピーカーであってもよく、一般的な視覚表示器は発光ダイオード(LED)かあるいは印刷された電子クロムインクかのいずれかであってもよい。
【0026】
しかしながら、適用区域が健康管理の環境に制限されない、ということはかなり明白である。飲料水、工業的試料、土壌試料、食品、飲料などの生化学分析は、所望の試料採取箇所へ送ることのできる「試料キット」の簡単な配置により、訓練を受けていない職員によって行うことができる。検査が終了すると、データ搬送体は、引きちぎられて、印刷済みかつ料金支払済みの返送用封筒で次の分析のための検査センターへ返送される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は出荷前の検定装置を示している。この装置およびそのパッケージは、自己充足型であるとともにすべての部分がパッケージによって保護されるように設計されている。切欠(101)は、情報文字(103)と相まって、この装置を典型的な店舗陳列の状態に置くことができる。パッケージには、使用に先立って破断される凹所(102)がある。
【0028】
図2は使用に先立つ検定装置を示している。この装置およびそのパッケージは、凹所区域(図1では102)を破断することによって、展開された。ユーザーには、エンボス状のボタン(202)がある一組のアンケートパネル(201)と、試料区域(203)とが表示されている。試料を採取しあるいは準備するために必要なランセットおよび拭き取り具204のような付加的用品が含まれているが、これらは、感圧性接着剤によってパッケージの内側に取り付けられているのが好ましい。
【0029】
図3は試料採取が終了した検定装置を示している。データ取得部分(301)は、データ入力・試料採取部分(303)から分離されており、後者は、普通の家庭廃棄物として、付加的用品(204)といっしょに廃棄することができる。検査が終了したときに試料区域が例えば血液で汚染されているであろうから、廃棄に先立って、データ入力・試料採取部分を密封する接着剤のラインのような付加的手段が含まれていてもよい。記録されたデータはその後、データ回収のために中央箇所へ返送される。部分(301)は、普通郵便によって送ることができ、また、そこには、郵便ポストへ投函することができるように印刷済み宛名領域(302)を設けることができる。
【0030】
図4は簡易化した分解平面図に表わされた検定装置を示している。この装置には、下側シート(401)および上側シート(409)からなる積層体が備わっている。この装置には2つの部分(301,303)が備わっており、これらの部分は、ヒンジ状の凹所区域(414)と切欠区域(413)とによって隔てられており、引き裂きによって容易に分離することができる。データ取得部分(301)には、電子チップ(404)を有する電子モジュール(403)と、電池(411)の形態にある電源と、コネクター手段(412)とが備わっており、前記コネクター手段には、プリントシート(401)の上に、対応するプリント接続ポイントがある。この電子手段は、そのプリントアンテナパッチ(402)のある下側シート(401)へ、導電性接着剤を用いて接続されている。記録部分(409)にはエンボス状ボタン(406)とセンサー(418)とが備わっており、これらはすべて、電子モジュール(403)へ、導電性プリントトレース(405,417)を用いて接続されている。ボタン(406)は、下側シートにおけるプリントスイッチポイントと上側パッド(407)におけるプリント区域とによって形成されており、ここで、ボタン(406)へ加えられた機械力によって、パッド(407)どうしの間の電気的接続が創り出される。センサー(418)は酵素物質で印刷されており、ここで、接続用トレース(417)は電極として作用する。センサー(418)は、上側層(409)における切欠(図示略)を通してユーザーへ露出されている。
【0031】
電子チップは以下の機能を備えているASICであってもよい。
・アプリケーションプログラムを実行するマイクロプロセッサー
・情報の記憶のための不揮発性データメモリー
・記憶された事象およびデータへ客観的タイムスタンプを付与するためのリアルタイム クロック
・データベースの中における記録への固有装置のリンクを可能にするための工場プログ ラム済みの固有識別子
・データ取得の間における温度補償のためと、温度監視の記憶および輸送のためのオン チップ温度センサー
・前記センサーからのデータを抽出するための信号処理手段およびアナログ・ディジタ ル変換器手段
・パッケージ材料を通してこの装置を読み取ることができる無線遠隔通信インターフェ イスであって、好ましくは、ISO15693のような現存する高周波識別(RFI D)基準に合致しているか、あるいは、米国特許第6,615,023号の出願明細 書に記載された容量性システムのような代替物の費用を節減するもの
・暗号化するためにかつ/または暗号状に署名するために、情報を装置から装置へ送る ことのできる暗号サブシステム
【0032】
製造を容易にするために、この装置は2つの部分に製造される。これら2つの部分は、その後に最終製品へ組み立てられる。
【0033】
ASIC(404)のある電子モジュール(403)と電池(411)と支持用構成要素とが備わった第1部分は、薄いポリマーフィルム、例えばエッチング加工された銅があるポリエステルフィルムの上に組み立てられている。このフィルムにはファインピッチの導体が備わっており、これらの導体は、大きいパッド(412)へ広がっているが、導体のある基板へより粗いピッチで取り付けることができる。ASICは、スタッド隆起で、あるいはフィルム上の金属への従来の接合法によって、取り付けられている。
【0034】
第2部分は実際のパッケージである。このパッケージは、この業界において周知の方法および機材を用いて作られている。1枚のポリマーコーティング済みボール紙に導電性インクのトレース(417,405)が印刷されているが、これらのトレースは「使い捨て回路基板」を形成しており、また、ここで、ポリマーコーティングは、高感度測定において湿気の影響を最小限にするために使用されている。要件にもよるが、カーボングラファイトかあるいは銀かのいずれかからなる導電性インクによれば良好な成績が得られることがわかった。トレースによって、センサー(418)と感圧性プリントキー(406)とが、電子モジュール(403)への接続のための導電性パッド(412)の基材へ接続される。次いで、付加的な印刷グラフィック(103)、切断、エンボス加工および折り目付けの適用のために、最新技術の方法が用いられる。米国特許第6,628,199号の出願明細書に記載されたような感圧性薄膜キー(406)は、ポリマーコーティング済みボール紙の対向側部に導電性インク区域を適用することによって形成され、その後、積層によって薄膜に作られる。好ましいのは、遠隔操作することができる通信のために使用されるアンテナ(402,410)もポリマーコーティングの上に印刷されていることである。最終段階として、センサー(418)が、センサー化合物の厚膜印刷法を利用して適用され、ここで、導電性インク(417)はまた、センサー電極を形成している。代わりに、センサーは、第三者のできあがった構成要素として適用することができる。そのようなセンサーは一般的には、接続電極の備わったストリップとして供給される。そのような構成では、導電性接着剤がパッケージにおける導電性ラインの上に印刷される。
【0035】
この装置の組立は、導電性接着剤を用いて、電子モジュールの備わった第1部分を、プリント済み導体パッド基材(412)の箇所で第2部分の紙基板の上に適用することで、行われる。この製品は次いで、互いに折り曲げられるとともに、プリントされあるいは噴霧された加熱活性化接着剤を用いてヒートシールされる。
図5は、導電性トレース(405,407)を通る断面図を示している。この装置は下側シート(401)および上側シート(409)の積層体を備え、それぞれのシートは、防湿層(502,505)で被覆されている。下側シートは、導電性インクからなる平面形態(402,405,417)で印刷されている。最終積層体は、加熱積層段階によって均質な接合部(506)が形成された後に、上側シートと下側シートと導電性トレース(401/502,409,505,405)とを加熱活性化接着剤で被覆印刷することによって形成される。
図6は、図4におけるA−A線によって示された断面図を示しており、ここでは、電子モジュール(403)はプリントシート(409)へ接合されている。このシートは導電性インク(402,405,417)で印刷されている。最終段階では、導電性接着剤(506)がこれらのシートの上部に被覆印刷されている。リチウム電池(411)と電子チップ(404)とを備えてなる電子モジュール(403)は、柔軟性フィルム(403)の上に適用され、次に、下側層(401)に適用される。その後の加熱積層段階では、上側層(409)と下側層(401)とは、接着剤(506)によって形成された機械的接合部でいっしょになり、前記接着剤はさらに、前記フィルムの上の導電体(601,602)と導電性プリントトレース(405)とアンテナパッチ(402)の間に電気接点を形成するために使用されている。
【0036】
配置に先立って、電子モジュールは、正確な時刻供給源からの時刻とセンサーのための随意の較正データとで、初期化する必要がある。さらに、センサーの種類と化学的性質とに左右されるが、基準電圧較正段階が必要であるかもしれない。電池の電力を保存するために、ASICの電力消費は、初期化されていないときにはきわめて低い。時計および較正のデータが初期化されると、製品は使用可能になる。必要な電池容量は、使用への配置からの予想時間帯について算出すべきである。一方、この時間はセンサー化合物の保存寿命によって制限されるのが一般的である。いくつかのセンサーは、保存の際における低いかつ/または高い環境温度に対して高感度であってもよい。ASICの中における温度センサーを利用することによって、環境温度は継続的に監視することができる。センサーについての温度限界を超えると、ユーザーには、この装置が期待される結果をもたらさないということが警告されるであろう。代わりに、センサーが既知の温度プロフィールおよび/または老朽化プロフィールを有しているときには、変換時に、適切な調節および再較正を実行することができる。
【0037】
使用シナリオは次のように説明することができる。
1. 検定/診断装置キットは、必要なすべての用品と所望の検査を実行するために必 要である情報とを収めて、中央製造箇所で組み立てられる。
2. この装置は、普通郵便サービスによって患者へ供給される。そのパッケージは、 輸送および保存の間に予想される通常の誤用および湿度変動に耐えるように設計され ている。廃棄物および材料消費を最小限にするために、パッケージは、この診断装置 の一体部分として作られている。
3. ユーザーは、パッケージの密封用設計における凹所区域(102)を破断するこ とによって、封入用パッケージを物理的に開封する。開封されると、一体化された電 子部品が、その開封を検知して、作業モードを「活性」に切り換える。パッケージの 密封が破られたときに記録を維持するために、電子モジュールのメモリーにタイムス タンプが記憶される。このキットが開封された時点で、この装置は、自己診断を実行 するとともに、この装置が破損していないことと輸送および保存の間に温度極限にさ らされなかったことを検証する。
4. 所望の測定作業を明確に同期させるために、ユーザーは、パッケージ材料の中へ エンボス加工されたスタートボタンを押す。このスタートボタンが押されると、電子 モジュールのメモリーの中にタイムスタンプが記憶される。有用性の観点から、この キットの内側には、検査の実行方法についての指示が印刷されている。このため、 「スタート」ボタンには、「検査の実行方法についての指示を読み、理解したとき に、このキーを押してください。」との貼紙が貼られている。
5. 注意喚起信号および/または視覚表示器が、ユーザーに対して、実行される測定 に関連した限定数の質問(201)に応答するように促す。その入力はエンボス状ボ タン(202)において実行され、また、応答は、タイムスタンプとともに、電子モ ジュールのメモリーの中に記録されかつ記憶される。
6. 異なった注意喚起信号および/または視覚表示器が、ユーザーに対して、血液試 料をセンサー(203,418)へ露出するように促す。電子モジュールがセンサー を継続的に監視し、また、物理的性質の顕著な変化が、センサーにおける試料の存在 を表示する。試料およびセンサーの化学的性質に左右されるが、電子モジュールによ る実際の試料採取は所定時間、実行される。ユーザーの便宜のために、パッケージに は、無菌のランセットと殺菌性の清拭用綿棒とが含まれている。
7. 試料採取が終わると、ユーザーは測定が終了したことについて注意喚起される。
8. 装置のユーザーが、データ搬送体の分析箇所へ運ぶ必要のある付加的なコメント すなわち情報を有しているときには、その情報はデータ搬送体部分における書き込み パッドに書き込まれる。すべてのデータ搬送体の手動読み取りあるいは付加的な光学 式走査を回避するために、また、その情報が書き込まれたときのための客観的タイム スタンプを取得するために、書き込みパッドは、感圧性であるように作られている。 書き込みパッドがペンの圧力によって影響を受けると、このことは、データ処理・記 憶手段によって、記録されるとともにタイムスタンプ刻印される。
9. 次いで、ユーザーは、パッケージのはっきりしたしるしの付いた凹所区域(41
3)に沿ってパッケージを引き裂くかあるいは切り離し、それによって、その記憶さ れたデータがあるデータ取得部分(301)と、もはや試料を集めて変換する必要が ないその封入・他方部分(303)とを分離する。
10. 汚染されたセンサーが含まれている、使用されて今では無用である部分(303
)は、この装置のユーザーによって普通廃棄物として廃棄される。この使い捨て部分 は、互いに折り曲げることができるように、また、廃棄に先立って密封することがで きるように、さらに、使用されたランセットおよび綿棒を保持することができるよう に設計されている。
11. 「データ搬送体」には、一方側面(302)に料金支払済みスタンプと印刷され た返送用宛名とがあるので、ユーザーは、それを中央データ走査施設へ返送するため に普通郵便に投函する。
12. 中央データ走査施設では、「データ搬送体」部分(301)がRFIDスキャ ナーによって読み取られ、その結果が中央データベースへ移送される。衝突防止機能 の備わった長距離RFID法によることで、郵便袋に収納されているときでも多数の データ搬送体を高速で走査することができる。
13. データが中央データベースへ到達すると、サーバーに基づいたアプリケーション が、そのデータを解読するとともにそのディジタル署名を検証する。データは、有用 な結果へ変換するために、その後、付加的な処理が必要であるかもしれない。
14. 上記の段階6に記載されたように付加的な情報が入力されると、自動化された走 査によって、その情報が書き込みパッドの上に存在していることが検出される。この 情報を有しているデータ搬送体は、その後、手動の読み取りおよびデータ入力が必要 であるであろう。
【0038】
上記の使用シナリオでは、単一の試料の記録および変換だけが示されているが、装置を複数のセンサー箇所に目立つように配置して、長時間にわたって検査を行うようにすることができる、ということは明らかであろう。さらに、検査の要件に左右されるが、2つ以上の異物を同時に監視することは有用であろう。そのような設定では、いくつかのセンサーは、試料がすべての個別センサーにわたって均等に分布されるようにして、互いの近傍へ近接して平面状に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、組み立てられた検定装置を示している。
【図2】図2は、展開された検定装置を示している。
【図3】図3は、検定装置の分離されたデータ搬送体部分とセンサー部分とを示している。
【図4】図4は、パッケージ部分の分解図を示している。
【図5】図5は、印刷されて積層されたシートの断面図を示している。
【図6】図6は、取り付けられた電子モジュールの断面図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物の性質を測定するためのセンサー(418)が含まれているデータ入力・試料採取部分(303)と、電子的処理・記憶手段が含まれているデータ取得部分(301)とを備えてなり、データ入力・試料採取部分およびデータ取得部分は、シート状の印字可能および折り畳み可能な材料から形成されたパッケージの一体部分であり、このパッケージは、その中に収容された部品を密閉するとともに保護するように設計されている、ことを特徴とする使い捨て式自己充足型測定装置。
【請求項2】
折り畳み可能な材料は、下側シート(401)および上側シート(409)を備えた積層体からなり、電子モジュール(403)が柔軟性フィルム(605)の上に適用されて固定され、導電性トレースが下側シート(401)の上に印刷され、下側シートおよび上側シートは、導電性接着剤層(506)によって、互いの上部においていっしょに接合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
センサー(418)は、下側シート(401)の上に印刷されているとともに、電子モジュール(403)へ接続された導電性トレース(417)へ接続されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
センサー(418)は、導電性接着剤層によって、下側シート(401)へ取り付けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
この装置は、2つ以上の単一事象でいくつかの取得を実行することができるか、あるいは単一取得でいくつかの測定を実行することができる複数のセンサーを備えている、ことを特徴とする請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
下側シートおよび上側シート(401,409)は、防湿層(502,505)で被覆されている、ことを特徴とする請求項2、3、4または5に記載の装置。
【請求項7】
データ取得部分(301)は、データ入力・試料採取部分(303)から取り外し可能である、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または6に記載の装置。
【請求項8】
それぞれの取り外し可能部分は、取り外された後に異なった装置から識別することができるように固有のしるしが付けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
パッケージは、測定を実行するために必要である付加的用品(204)を収容することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
データ取得部分は、電子チップ(404)と、電源(411)と、データを交換するための通信手段(402,410)とを備えた電子モジュール(403)からなり、前記チップは、データ取得手段、データ処理手段、不揮発性データ記憶手段、および時間計測手段を備え、前記時間計測手段は、前記データ記憶手段の中に記憶された生成データへタイムスタンプを付けるために使用される、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
電子モジュール(403)は、データ入力・試料採取部分(401)におけるセンサー(418)へ接続された導電性プリントトレース(417)へこの電子モジュールを接続するための対応するプリントコネクター手段へ接続された接続ポイント(412)を備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
電子チップ(404)は、センサー(418)の近傍における温度を定量化するために、温度測定手段を有している、ことを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
温度測定手段は、その取得が行われている時間における環境温度値の定量化された値を提供し、前記温度値は、測定の結果の温度依存性を変換するときの演算子として使用される、ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
温度測定手段は、この装置の許容される温度限界が、製造から前記取得が終了した時点までのこの装置の寿命を超えたかどうか、を監視するために使用される、ことを特徴とする請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
時間計測手段は、中央時刻供給源から初期化され、かつ、時間計測手段は、前記取得が終了した時点まで電源(411)によって維持され、その後、電力を保存するためにスイッチが切られる、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
電子モジュールは、この装置のユーザーとの相互作用のために、可聴手段あるいは随意の可視手段を備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記随意の可視手段は、電子クロムインクを使用して前記下側シート表面に印刷された形態である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
この装置は、センサーによる測定の信頼性に影響を及ぼすおそれのある湿気を除去する乾燥剤のための区画を備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記乾燥剤は、データ処理手段とデータ記憶手段とによって監視されて前記乾燥剤の吸収力がなくなったときに信号を付与する手段を備えている、ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
データ通信手段は、データ処理手段とデータを受けるための外部ホストコンピュータとの間でデータを交換するために使用される、ことを特徴とする請求項10〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
前記電子チップには、前記装置を固有に識別するために利用される変更できない電子識別子が設けられている、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
暗号処理手段と少なくとも1つの暗号キーとが、データ記憶手段の中に保存されており、暗号処理手段は、データ記憶手段の中に記憶されたデータについての暗号化、解読、ディジタル署名生成、およびディジタル署名検証の少なくとも1つを実行するために使用される、ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
パッケージは、この装置をその意図された使用法によって使用するために区域(102)を覆って伸びていて破断されるのが不可避である電気回路ラインのような少なくとも1つのいたずら検知シールを有していることと、このシールの破断は、前記データ処理手段および前記データ記憶手段によって検出される、こととを特徴とする請求項1〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
パッケージは、この装置のユーザーが付加的な見解を付与することのできるアンケートパネル(201)を有する付加的部分を備えている、ことを特徴とする請求項1〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
アンケートパネル(201)は、アンケートの利用を促進するためのエンボス状ボタン(202)を備えている、ことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
アンケートパネルは、意図されたユーザーが前記取得を実行したかどうかを検証するための入力手段を備えている、ことを特徴とする請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
入力手段は、個人識別番号(PIN)を受け入れるための数字キーパッドからなっている、ことを特徴とする請求項24、25または26に記載の装置。
【請求項28】
ボタン(202)は、下側シート(401)の上に印刷された一対の導電性スイッチポイント(407)と、上側シートの上に導電性ブリント区域とによって形成され、それによって、前記ボタンへ加えられた機械力がスイッチポイント(407)の間に電気的接続を創り出す、ことを特徴とする請求項25、26または27に記載の装置。
【請求項29】
アンケートパネルを有する前記付加的部分は、前記データ入力・試料採取部分の一部である、ことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項30】
取得部分(301)は、データ入力・試料採取部分からの取り外しの後に、この装置のユーザーの付加的作業によることなく、この部分を郵送しあるいは回収することのできる印刷済み宛名領域(302)が設けられたカードの形態にある、前記データ入力・試料採取部分の一部である、ことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1つに記載の使い捨て式自己充足型測定装置の製造方法であって、電子チップ(404)と、電源(411)と、支持構成要素とを備えた電子モジュール(403)が薄いポリマーフィルムの上に組み立てられ、パッケージが、導電性インク(417,405)のトレースで印刷された一枚のポリマーコーティングされた厚紙と、導電性パッド(412)とからなり、この厚紙の上に適用されたセンサー(418)がプリントトレース(405)へ接続され、遠隔操作することのできる通信のために使用されるアンテナ(402,410)がその厚紙の上に印刷され、その後、この装置が、前記電子モジュールを備えている前記の薄いポリマーフィルムを前記シートの上へ配置することによって、導電性接着剤を使用して導電性パッド(412)の箇所で組み立てられ、印刷されるかあるいは噴霧された加熱活性化接着剤を使用してパッケージの中へいっしょに折り曲げられてヒートシールされる、ことを特徴とする製造方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−516248(P2008−516248A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536060(P2007−536060)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010879
【国際公開番号】WO2006/040106
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507119766)シパック エービー (2)
【氏名又は名称原語表記】CYPAK AB
【住所又は居所原語表記】P.O.BOX 2332,S−103 18 Stockholm,SWEDEN
【Fターム(参考)】