説明

宝飾品用Pt合金

【課題】従来の高含有Pt合金に比して経済的であって、色調、機械的特性、作業性の点で高含有Pt合金と遜色ない宝飾品用Pt合金を提供する。
【解決手段】Ptを40〜60mass%、Pdを37〜59.9mass%、Coを0.1〜3mass%含有し、又は、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜57mass%、Cuを3〜14mass%含有し、或いは、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜59.9mass%、Co及びCuを合計で0.1〜14mass%含有することを特徴とし、必要に応じてIn、Sn、Gaの少なくとも1種を0.1〜2.0mass%含有する宝飾品用Pt合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指輪やブローチ或いはネックレス等の宝飾又は装飾品に用いられるPt合金の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、Pt系の宝飾又は装飾品用の部材には、溶解・加工のし易さ及び高級感を与えるために85%以上のPtを含有する部材が使用されてきたが(特許文献1)、これらのPt合金は、その高いPt含有量のために製造コストが高く、経済性に欠けていた。
近年では、宝飾部材への価値観の多様さからPt含有量の低いPt合金の需要が出てきている。しかしながら、Pt含有量を下げることで経済的メリットが生じる一方で、Pt含有量を下げることによるデメリットとして、色調が変化したり、機械的特性が大きく変化し実用性を失う等の問題がある。
【特許文献1】特開2001−335863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願の発明の目的は、上述従来技術に基づく問題および顧客要望に鑑みてなされたもので、従来のPt又はPt合金と色調の差異のない、溶解・鋳造・加工の作業性が良い経済的な価値を損ねない宝飾品用低Pt含有量のPt合金を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、下記(1)〜(3)に記載の宝飾品用Pt合金によって達成される。
(1) Pt40〜60mass%、Co0.1〜3mass%、残部Pdとする宝飾品用Pt合金。
(2) Pt40〜60mass%、Cu3〜14mass%、残部Pdとする宝飾品用Pt合金。
(3) Pt40〜60mass%、Co及びCuの合計量が0.1〜14mass%、残部Pdとする宝飾品用
Pt合金。
なお、上記の宝飾品用Pt合金は、さらにIn、Sn、Gaの少なくとも1種を0.1〜2.0mass%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
上記特徴を有する本発明によれば、高含有Pt合金に比してPt含有量が少ないため、経済性に優れる。その上、高含有Pt合金と遜色ない光学特性(光の反射率)を有し、硬すぎず柔らか過ぎず適度な機械的特性を備え、しかも、従来どおりの溶解・鋳造・加工ができる。したがって、従来の高含有Pt合金に比して経済的であって、色調、機械的特性、作業性の点で高含有Pt合金と同等の宝飾品用Pt合金を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の宝飾品用Pt合金は、Ptを40〜60mass%、Pdを37〜59.9mass%、Coを0.1〜3mass%含有することを特徴とする。
別の実施形態に係る本発明の宝飾品用Pt合金は、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜57mass%、Cuを3〜14mass%含有することを特徴とする。
さらに別の実施形態に係る本発明の宝飾品用Pt合金は、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜59.9mass%、Co及びCuを合計で0.1〜14mass%含有することを特徴とする。この場合、Co及びCuの合計量が、3.5〜12mass%であることがより好ましい。
上述したすべての実施形態において、宝飾品用Pt合金は、さらにIn、Sn、Gaの少なくとも1種を0.1〜2.0mass%含有することが好ましい。
【0007】
本発明のPt合金を構成する金属元素のうち、Pdは、明るい色調を出すための必要元素であり、他の添加元素範囲からの残分を含有量とする。なお、Pdは比較的高価格の元素に分類されるが、Ptを高含有する従来のPt合金に比べれば経済性は高い。
【0008】
Coについては、機械的特性、加工性等を向上させる効果があるが、添加量が少なすぎると適度な硬さにならず、添加量が多すぎると熱処理後の酸化膜の状況が美観を損ねる(有色となり、また厚くなるため除去しにくくなる)ため、その添加量を0.1〜3mass%とした。
【0009】
Cuについても、機械的特性、加工性等を向上させる効果があるが、添加量が少なすぎると適度な硬さにならず、添加量が多すぎると加工性が悪化し(16.5%添加で加工できない)、また明るさ(反射率)の低下を招くため、その添加量を3〜14mass%とした。
【0010】
その他、In、Sn、Gaについても、機械的特性、加工性等を向上させる効果があるが、添加量が少なすぎると適度な硬さにならず、添加量が多すぎると加工性が悪化する(2.5%添加で加工できず)ため、その添加量を0.1〜2.0mass%とした。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の具体的実施例を示す。
【0012】
表1に示す金属元素からなるPt合金を用意し、実施例1〜12、比較例1〜5の各Pt合金について、色調、機械的特性、加工性の評価を行った。
【0013】
【表1】

【0014】
(色調の評価)
実施例1〜12、比較例1〜5の各Pt合金に対し、可視光領域(波長600nm)の光を照射し、その反射率(明るさ)をもって色調を評価した。結果は表1に示すとおりであった。なお、色調の評価にあたっては、一般的な高含有Pt合金の反射率(およそ65%以上)を評価基準とした。
この実験結果より、実施例1〜12のPt合金は反射率が65.8〜71.1%であり、従来の高含有Pt合金と遜色ない明るい色調を有することが確認できた。
一方、比較例1,2のPt合金は、一般的な高含有Pt合金の反射率を下回り、色調がやや暗く、明るさの点で高含有Pt合金に劣ることが確認された。
【0015】
(機械的特性の評価)
実施例1〜12、比較例1〜5の各Pt合金について、焼鈍後のビッカース硬さ(HV)を測定し、その機械的特性を評価した。結果は表1に示すとおりであった。
この実験結果より、実施例1〜12のPt合金は硬さが100〜155の範囲内にあり、硬すぎず柔らかすぎず適度な機械的特性を有することが確認できた。
一方、比較例3のPt合金は硬さが100未満であり、柔らかすぎて機械的特性に劣ることが確認された。また、比較例1,2,5のPt合金は硬さが155を超えており、硬すぎて宝飾品製造時の加工性に劣ることが確認された。
【0016】
(加工性の評価)
実施例1〜12、比較例1〜5の各Pt合金に対し、圧延加工を施して加工性を確認した結果、表1に示すとおりであった。
この実験結果より、実施例1〜12のPt合金は、割れることなく50%以上の圧延が可能であり、問題なく板材等に加工できることが確認された。
一方、比較例1,4,5のPt合金は、加工率30%未満で割れが発生し、加工性に問題があることが確認された。
【0017】
以上の実験結果より、Ptを40〜60mass%、Pdを37〜59.9mass%、Coを0.1〜3mass%含有し、又は、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜57mass%、Cuを3〜14mass%含有し、或いは、Ptを40〜60mass%、Pdを26〜59.9mass%、Co及びCuを合計で0.1〜14mass%含有し、必要に応じてIn、Sn、Gaの少なくとも1種を0.1〜2.0mass%含有することで、従来の高含有Pt合金に比して経済的であって、色調、機械的特性、作業性の点で高含有Pt合金と遜色ない宝飾品用Pt合金を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt40〜60mass%、Co0.1〜3mass%、残部Pdとする宝飾品用Pt合金。
【請求項2】
Pt40〜60mass%、Cu3〜14mass%、残部Pdとする宝飾品用Pt合金。
【請求項3】
Pt40〜60mass%、Co及びCuの合計量が0.1〜14mass%、残部Pdとする宝飾品用Pt合金。
【請求項4】
In、Sn、Gaの少なくとも1種を0.1〜2.0mass%加えた請求項1〜3の何れかに記載の宝飾品用Pt合金。

【公開番号】特開2010−84226(P2010−84226A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258073(P2008−258073)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000198709)石福金属興業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】