説明

実用規模の浸透グリッド・ストレージ

カスタマまたはグリッド分散に送達される電力に容易に変換され得るポテンシャル・エネルギーの貯蔵のためのシステムおよび方法が開示される。この方法は、濃縮液の中に水圧を生じさせ、発電を可能にするために、塩分濃度勾配の使用、もしくはそれらも説明されるように浸透圧勾配または2つの溶液の差の使用を含むことがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つまたは複数の態様は、一般的に浸透分離に関する。さらに詳細には、1つまたは複数の態様は、実用規模のグリッド・ストレージ用の前進浸透等の、工業用浸透プロセスを介した水力発電の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
フロー電池、リチウムイオン電池、フライホイール、圧縮空気、コンデンサ、水素貯蔵、および水貯蔵等の既存のグリッド・ストレージ・オプションはすべて、それらがグリッド・ストレージの難しい問題の実行可能な解決策となることを妨げてきた重大な欠陥を有している。さらに、長期間に渡って損失なく熱を蓄える効率的な手段がないため、電力発生の大部分は、電気がただちに作られなければならないように本来は熱による。グリッド・ストレージは、電気グリッド内の固有の非効率を明らかにし、化石資源の消費からの出力を最大限にするためのカギである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日まで、エネルギー業界には大規模な経済的な電気貯蔵オプションがない。生産と需要の差を減じる貯蔵設備を提供することによる、生産される電気エネルギーのより優れ、且つより効率的な使用に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つまたは複数の実施形態に従って、太陽、熱、光起電(PV)、風、水素、バイオマス、および潮流等の、本来、生得的に不確実である再生可能エネルギー源に電力信頼性を与えることができる実用規模のグリッド・ストレージの解決策が、本明細書に開示される。大量の低価格の電力を蓄え、要求に応じて高い料金でそれを放出できる大規模浸透電池が開示される。このようにして、再生可能ユーティリティ事業者に、1日に24時間、間断なく連続した電力生産を可能にする、グリッド・ストレージ解決策を与えることができる。さらに、開示されている実用規模のグリッド・ストレージ解決策は、任意の種類の熱発電プロセス(石炭、原子力、ガス、石油)と併せて使用することができ、それによってエネルギーの一部を要求に応じていつでも貯蔵および送達できる貯蔵コンポーネントを提供する。いくつかの態様では、効率的に貯蔵することができない熱エネルギーは、エネルギーの漏れまたは損失なしに無期限に貯蔵することができる化学ポテンシャル(浸透圧)の形を取る「貯蔵水素」の形に変換されてよい。代わりに、電気エネルギーも、化学ポテンシャル(浸透圧)の形を取る「水素」エネルギーとして貯蔵されてよい。
【0005】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透電池を操作する方法が開示される。この方法は、希釈食塩水のソースを提供することと、その希釈食塩水を分離し、濃縮液および実質的に脱イオン化された溶液を形成すること、およびその濃縮液と脱イオン化溶液の間の化学ポテンシャルの差としてエネルギーを貯蔵することを含むことがある。少なくとも1つの実施形態では、濃縮液はアンモニア−二酸化炭素溶液を含んでよい。いくつかの実施形態では、希釈食塩水を分離することが、熱放散方法に希釈食塩水を導入することを含むことがある。少なくとも1つの他の実施形態では、濃縮液が無機食塩水を含むことがある。別の実施形態では、濃縮液が、有機溶質溶液または有機溶質または無期溶質の混合物を含むことがある。
【0006】
いくつかの実施形態では、化学エネルギー・ポテンシャル差としてエネルギーを貯蔵することは、塩分濃度の差に基づいてエネルギーを貯蔵することを含むことがある。方法は、化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することをさらに備えることがある。いくつかの実施形態では、化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することは、逆電気透析プロセスを使用して実行されてよい。他の実施形態では、化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することは、浸透圧発電プロセスを使用して実行されてよい。いくつかの実施形態では、化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することは、水力発電タービンおよび発電機を使用して実行されてよい。
【0007】
浸透圧発電プロセスは、濃縮液の少なくとも一部を加圧することを含むことがある。浸透圧発電プロセスは、加圧濃縮液の少なくとも一部の体積を増加することをさらに含むことがある。体積を増加することは、膜流束によって、希釈用液の少なくとも一部を加圧濃縮液に導入することを含むことがある。また、体積を増加することは、濃縮液と希釈用液の間の浸透圧差に基づいて半透膜を使用して水圧を生成することを含むことがある。浸透圧発電プロセスは、加圧された溶液の体積の少なくとも一部の圧力を減少させ、電気を生成することをさらに含むことがある。圧力を減少させることは、タービンを通して加圧された溶液を流すことを含むことがある。方法は、減圧された溶液を分離部に導入することをさらに含むことがある。方法は、電力を生産するために発電機と併せてタービンを使用することをさらに含むことがある。分離部は、プロセスでの再利用のために希釈流れおよび再濃縮流れを生成してよい。代替実施形態では、希釈加圧延伸溶液から圧力を移し、タービンと接している別個の加圧流体を生じさせるために、圧力交換器と併せて別個の作動流体が使用されてよい。このようにして、加圧作動流体の組成は、タービンが高塩分濃度にさらされないように、たとえば所望されるタービン材料とのその互換性のために選ばれてよい。したがって、タービン流体の流れは、濃縮延伸溶液、および実質的に希釈差動溶液の組成と無関係に選択されてよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、分離部は、蒸留塔、パーベーパレーション部、または膜分離部を含むことがある。方法は、電気で分離部に電力を供給することを含むことがある。他の実施形態では、分離部は、上流部動作によって生じる低位熱または低品質熱で電力を供給されてよい。他の実施形態では、分離部は、石炭、ガス、または石油等の化石燃料を燃焼することによって生じる熱で直接的に電力を供給されてよい。他の実施形態では、分離部は、核エネルギーまたは核反応から生じる熱で直接的に電力を供給されてよい。他の実施形態では、分離部は、地熱源または太陽熱源から生じる熱で電力を供給されてよい。他の実施形態では、分離部は、原油の二次回収からの二酸化炭素だけではなく、石油および天然ガスの抽出、炭層メタン生産、ガスシェールおよび地熱資源の破砕においても生成される流体のような生成流体から生じる熱で直接的に電力を供給されてよい。他の実施形態では、分離部は、都市の暖房のために廃熱が活用されるコジェネレーション・プロセスだけではなく地域冷房システムにも使用されるもの等の加熱水および冷却水から生じる熱で直接的に電力を供給されてよい。方法は、分離部によって生成される水を工業用、灌漑、または飲料用の使用場所に提供することをさらに含むことがある。方法は、電力を使用場所に送達することをさらに含むことがある。方法は、長期間、希釈溶液および濃縮液の形でエネルギーを貯蔵し、次に電力が必要とされるときにそれを送達することをさらに含むことがある。
【0009】
いくつかの実施形態では、希釈食塩水を分離するために電気エネルギーを使用するステップが、ナノ濾過プロセス、逆浸透プロセス、または電気脱イオン(EDI)プロセスに希釈食塩水を導入することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、ポテンシャル・エネルギーから発電するプロセスは、浸透圧発電プロセスを含む。他の実施形態では、ポテンシャル・エネルギーから発電するプロセスは、逆電気透析(RED)プロセスを含む。
【0010】
1つまたは複数の実施形態では、浸透エネルギー貯蔵システムが開示される。浸透貯蔵システムは、半透膜を備える浸透圧発電部、浸透圧発電部の第1の入口に流体接続されている濃縮液のソース、浸透圧発電部の第2の入口に流体接続されている希釈溶液のソース、および浸透圧発電部の下流に流体接続されているタービンを含むことがある。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、タービンの下流に流体接続されている蒸留塔をさらに含むことがある。蒸留塔は、濃縮液ソースおよび希釈溶液ソースに流体接続されてよい。システムは、蒸留塔に熱的に接続されている熱エネルギー源をさらに備えてよい。別の実施形態では、電気エネルギー源は、希釈延伸溶液の、低溶質水および再濃縮延伸溶液への分離のためにROシステムに接続されてよい。いくつかの実施形態では、熱エネルギー源は再生可能エネルギー源を含むことがある。少なくとも1つの実施形態では、再生可能エネルギー源は、太陽熱システム、潮流パワーシステム、バイオマス・パワーシステム、水素パワーシステム、または風力パワーシステムを含むことがある。他の実施形態では、システムは蒸留塔に接続されている電源をさらに備えてよい。
【0012】
他の実施形態では、システムは、タービンの下流で流体接続されているパーベーパレーション部または膜分離部をさらに含むことがある。少なくとも1つの実施形態では、逆浸透圧部がタービンの下流に流体接続されてよい。システムは、グリッド・エネルギー供給システムからエネルギー需要を検出するように構成されたコントローラをさらに含むことがある。
【0013】
いくつかの実施形態では、システムは、蒸留塔の出口に流体接続されている工業用、灌漑、および飲料用使用場所をさらに含むことがある。システムは、タービンの下流に電気手形に接続されているグリッド・エネルギー供給システムをさらに含むことがある。ベースロード発電所は、グリッド・エネルギー供給システムに接続されてよい。少なくとも1つの実施形態では、ベースロード発電所は、石炭または天然ガスまたは原子力発電を基にしてよい。
【0014】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透電池を操作する方法は、希釈食塩水のソースを提供すること、その希釈食塩水を濃縮液および実質的に希薄な使用液から分離すること、実質的に希薄な使用液から流体隔離して濃縮液を貯蔵すること、および濃縮液と実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、濃縮液と実質的に希薄な使用液の間の化学エネルギー・ポテンシャル差としてエネルギーを貯蔵することを含むことがある。
【0015】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透エネルギー・システムは、半透膜を含む浸透圧発電部、浸透圧発電部の第1の入口に流体接続されている濃縮液のソースおよび浸透圧発電部の第2の入口に流体接続されている希釈使用液のソースを含むポテンシャル・エネルギー貯蔵部、浸透圧発電膜部の下流で流体接続されているタービン、およびタービン部に接続されている発電機を含むことがある。
【0016】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透電池を操作する方法は、希薄食塩水のソースを提供すること、希釈食塩水を分離するために電気エネルギーを使用し、濃縮液および実質的に希薄な使用液を形成すること、濃縮液および実質的に希薄な使用液を貯蔵することと、濃縮液と実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、ポテンシャル・エネルギーを利用すること、ならびに濃縮液および実質的に希薄な使用液を、電力需要に応えてポテンシャル・エネルギーから発電するプロセスに導入することを含むことがある。いくつかの実施形態では、希薄食塩水を分離するために電気エネルギーを使用するステップは、希薄食塩水を、ナノ濾過プロセス、逆浸透プロセス、または電気脱イオン(EDI)プロセスに導入することを含む。少なくとも1つの実施形態では、ポテンシャル・エネルギーから電気を生成するプロセスは、浸透圧発電プロセスを含む。他の実施形態では、ポテンシャル・エネルギーから電気を生成するプロセスは、逆電気透析(RED)プロセスを含む。
【0017】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透電池を操作する方法は、希釈食塩水を熱分離プロセスに導入し、濃縮液および実質的に希薄な使用液を形成すること、濃縮液および実質的に希薄な使用液を貯蔵すること、濃縮液と実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、ポテンシャル・エネルギーを利用すること、濃縮液および実質的に希薄な使用液を、浸透圧発電プロセスに導入し、電力の需要に応えてポテンシャル・エネルギーから電気を生成することを含むことがある。いくつかの実施形態では、熱分離プロセスは。蒸留プロセスを含む。
【0018】
1つまたは複数の実施形態では、浸透エネルギー・システムは、グリッド・エネルギー送達システム、そのグリッド・エネルギー送達システムに電気的に結合された電気化学的発電装置、ならびに電気化学的発電装置の第1の入口に流体接続されている濃縮液のソースおよび電気化学的発電装置の第2の入口に流体接続されている希釈使用液のソースを含むポテンシャル・エネルギー貯蔵部を含むことがある。いくつかの実施形態では、電気化学的発電装置は、逆電気透析(RED)部を含む。
【0019】
これらの例示的な態様および実施形態のさらに他の態様、実施形態および優位点は、以下に詳細に説明される。さらに、前記情報および以下の詳細な説明の両方とも、単に多様な態様および実施形態の例示的な例に過ぎず、請求される態様および実施形態の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを目的とすることが理解されよう。添付図面は、多様な態様および実施形態の図解およびさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。明細書の残りとともに、図面は、説明され、請求されている態様および実施形態の原理および動作を説明するために役立つ。
【0020】
少なくとも一実施形態の多様な態様が、添付図に提示される。図は、図解および説明の目的で提供され、本発明の制限の定義としては意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】1つまたは複数の態様による浸透電池の第1の実施形態を示す図である。
【図2】1つまたは複数の態様による浸透電池の第2の実施形態を示す図である。
【図3】1つまたは複数の態様による浸透電池の第3の実施形態を示す図である。
【図4】添付の例5に説明される1つまたは複数の態様によるガス・タービン結合サイクルと結合された浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法の使用を示す前進浸透システムの概略図である。
【図5A】添付の例6で説明される1つまたは複数の態様によるディーゼル発電機と結合された浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法の使用を示す、前進浸透システムの概略図である。
【図5B】添付の例6で説明される1つまたは複数の態様によるディーゼル発電機と結合された浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法の使用を示す、前進浸透システムの概略図である。
【図6A】添付の例7に説明される1つまたは複数の態様による発電所冷却プロセスと結合された浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法の使用を示す、前進浸透システムの概略図である。
【図6B】添付の例7に説明される1つまたは複数の態様による発電所冷却プロセスと結合された浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法の使用を示す、前進浸透システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1つまたは複数の実施形態に従って、電力貯蔵のためだけではなく、発電にも使用され得るシステムおよび方法が開示される。より詳細には、浸透圧発電だけではなく浸透貯蔵のためのシステムおよび方法が開示される。本明細書に説明される1つまたは複数の実施形態は、エネルギーの貯蔵および電力の生産を切り離す水力発電に関する。開示されている揚水式水力発電システムおよび方法は、水圧を生じさせるために浸透ポテンシャルを使用する。システムおよびプロセスはほとんど熱によらないため、貯蔵エネルギーの作成は発電から切り離されてよい。特定の態様は、電源だけではなく熱源からのエネルギーも貯蔵できるようにする。1つまたは複数の実施形態では、開示されている浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法は、グリッドの平滑化およびグリッド需要応答を管理する上で効果的である場合がある。1つまたは複数の実施形態に従って、浸透電池または浸透貯蔵装置は、ポテンシャル・エネルギーが長距離輸送され、電気損失を被る必要がないように、それが必要とされる場所に、電気グリッドのためのポテンシャル・エネルギーを貯蔵してよい。また、実施形態は、再生可能なエネルギー等のあまり信頼できない電力源を、石炭、原子力発電、およびガス等のベースロード・ソースと同程度に着実にするための仕組みとして機能してもよい。
【0023】
1つまたは複数の実施形態に従って、塩分濃度の差は、それによってエネルギーが貯蔵される仕組みである。エネルギーは、真水をきわめて濃縮した食塩水つまり海水から分離することによって貯蔵されてよい。貯蔵される真水の量は、要求に応じて入手できるエネルギーの量を表してよい。電力が必要とされるとき、真水と海水の浸透圧差は、水を自発的に膜を通して流れさせる高浸透圧を生じさせてよい。その結果、水の流れは、発電するためにタービンを通って向けられてよい。
【0024】
1つまたは複数の実施形態に従って、開示される浸透電池は、第1の溶液と第2の溶液の塩分濃度の差に関する化学ポテンシャルとしてエネルギーを貯蔵してよい。エネルギーは大量に貯蔵し、塩分濃度差に基づいた浸透圧発電(PRO)と呼ばれるプロセスを通して迅速に放出できる。浸透圧発電は、一般に、濃縮延伸溶液および希釈作動流体等の2つの溶液間の塩分濃度差から、浸透力または塩分勾配エネルギーを引き出すことに関することがある。いくつかの例では、延伸溶液は第1の溶液であってよく、真水またはほぼ脱イオン化された水が第2の溶液であってよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の膜モジュールは、浸透圧発電を助長するために圧力容器内に封入されてよい。浸透圧発電では、延伸溶液は膜の第1の側で圧力チャンバ内に導入されてよい。いくつかの実施形態では、延伸溶液の少なくとも一部が、延伸溶液と希釈作動流体の間の浸透圧差に基づいて加圧されてよい。希釈作動流体は、膜の第2の側に導入されてよい。希釈作動流体は、一般に、浸透を介して膜を横断し、このようにして膜の加圧延伸溶液側での体積を増加してよい。圧力が補償されると、タービンが電気を生成するために回転されてよい。いくつかの実施形態では、浸透圧発電は、約0psiと2000psiの間の圧力で操作されてよい。いくつかの限定されない浸透圧発電の実施形態は、1000と2000psiの間の圧力を含んでよい。結果として生じる希釈延伸溶液は、次に、再利用のために、分離される等、処理されてよい。いくつかの実施形態では、産業廃熱等の低温熱源が、浸透圧発電システムまたはプロセスで使用されてよい、または浸透圧発電システムまたはプロセスを促進してよい。
【0025】
開示されている浸透電池の1つの限定されない実施形態が、図1に概略で提示される。プロセスの第1のステップは、たとえば、参照することによりすべての目的のために全体で本明細書に組み込まれる、PCT出願公開公報である国際公開第2008/060435号パンフレットに説明されるもの等の浸透熱機関プロセスに類似してよい。浸透熱機関は、半透膜を使用してポテンシャル・エネルギーを機械作業に変換し、浸透圧を電力に変換してよい。いくつかの実施形態では、アンモニア−二酸化炭素延伸溶液等の濃縮延伸溶液は、水圧勾配に逆らって半透膜を通る水の流動を生じさせる高浸透圧を生じさせてよい。タービン内で増加した延伸溶液体積の減圧は電力を生産してよい。プロセスは希釈延伸溶液を、ともに浸透熱機関での再利用のために、再濃縮延伸溶液および脱イオン化水作動流体に分離することにより定常状態動作で維持されてよい。1つまたは複数の実施形態に従って、塩の希釈延伸溶液は、次に濃縮延伸溶液およびほぼ脱イオン使用溶液に分離されてよい。いくつかの実施形態では、発電プロセスまたは工業プロセスから遮断された任意の形の熱を含む廃熱が、分離作用を駆動するために使用されてよい。少なくとも1つの限定されない実施形態では、廃熱は、たとえば約200℃以下の熱等の低位熱であってよい。他の実施形態では、電力は分離プロセスを駆動してよい。結果として生じる溶液は、本質的に安定し、安全である。これらの溶液は、その化学エネルギー・ポテンシャル、つまり塩分濃度における差にエネルギーを貯蔵してよい。
【0026】
1つまたは複数の実施形態に従って、貯蔵装置のエネルギー容量は、直接的に、2つの輸液の塩分濃度の差、および貯蔵される溶液の体積に依存することがある。これらの溶液が体積において別々に増加する限り、電力は貯蔵される。電力が受取人またはグリッドによって必要とされるとき、2つの溶液の塩分濃度の差は、浸透圧発電によって電力に変換されてよい。いくつかの実施形態では、濃縮延伸溶液が2つの溶液の浸透圧差によって加圧されてよく、半透膜を横切る希釈溶液からの水の流れが、加圧溶液の体積を増加させてよい。加圧延伸溶液の増加した体積は、タービンを通る流れによって減少し、溶液圧力を削減し、電力を生産する。減圧された溶液は、次に、熱の導入によって等で処理され、再度応需電力送達のために使用できる、エネルギー貯蔵のためにそれを再び濃縮液および希釈溶液に分離してよい。この電力は、再生可能発電と関連する休止時間を相殺するために使用できる。
【0027】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透圧システムおよび方法が、グリッド・エネルギー・ストレージに使用されてよい。グリッド・エネルギー・ストレージは、一般に、電気エネルギーが、生産が消費を超えるときに、消費が生産を超える後の使用のために貯蔵される大規模エネルギー貯蔵に関する。したがって、生産は、瞬間的な消費に応えて急激に拡大、縮小するよりもきわめて一定のレベルで維持できる。グリッド・エネルギー・ストレージは、一般に、より容易且つより効率的な運用および生産を可能にする。
【0028】
本明細書に開示されている浸透グリッド・ストレージは、従来のグリッド・ストレージ・オプションに優る多くの優位点を有する。少なくともいくつかの実施形態では、電気よりも廃熱が使用され、電気損失がないため、燃費がない。システムは、マルチメガワットの貯蔵容量のために大規模な運用が可能である。急速な放電および高電力出力も可能である。開示されている貯蔵システムは、許可し、位置させるのが容易であり、特別な地形または地質を必要としない。いくつかの限定されない実施形態では、システムは75〜80%の往復電気効率で動作してよく、低エネルギー動作を含むことがある。システムは、高価な構成部品がなく、低価格である。また、塩分濃度差が恒久的な貯蔵機構であるという点でもエネルギーの漏れはない。加えて、大規模浸透貯蔵は、設計が簡略であり、少なくともいくつかの実施形態は、貯蔵タンク(標準大規模貯水)、従来の蒸留塔等の分離設備、放散塔および吸収装置、水力タービン、および浸透膜等の最小の設備を必要としてよい。
【0029】
このようにして、開示されている浸透電池はほぼどこにでも構築でき、急成長する再生可能エネルギー業界に役立つことができる。さらに、浸透電池は電気の代わりに廃熱を使用して充電され得るため、既存の発電所の効率は強化され、無価値の廃棄物は、貴重な応需ピーク電力に変換され得る。開示されている装置に貯蔵されるエネルギーは、待機電力を提供してよく、エネルギー出力を平滑化し、確実に電力プロセスに信頼性を追加してよい。さらに、発電機のカーボンフットプリントが引き下げられ、全体的な効率を高めることができ、カーボンオフセットをただちに生じさせることができる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態では、いつでも貯蔵溶液を使用して、浸透圧発電によって電力を生成できるように、低位熱は、塩分濃度が異なる貯蔵溶液に変換してよい。開示されている浸透電池およびグリッド・ストレージは、熱または電気を使用し、希釈延伸溶液を濃縮延伸溶液および希釈作動流体に分離する分離部分、およびその2つの溶液(濃縮延伸溶液および希釈作動流体)を使用し、電力を生成する発電部分に切り離されてよい。したがって、熱は、これらの溶液の使用から(2つの溶液間の浸透圧差の形を取る)化学ポテンシャル・エネルギーに変換されてよい。半透膜は、タービンで代わりに削減され、電気エネルギーを作る水圧を生じさせるために使用されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、蒸留塔を必要とするプロセス等の熱分離プロセスにおける熱の使用によって生じるポテンシャル・エネルギーは、タンク内の任意の体積まで蓄積された2つの溶液の形で貯蔵されてよい。たとえば、食塩水と希釈溶液の体積の蓄積によって、ポテンシャル・エネルギーが貯蔵され得る。2つの溶液の体積が大きくなり、その塩分濃度の差が大きくなるほど、エネルギー貯蔵は大きくなる。このようにして、開示されているシステムおよび方法は、エネルギー貯蔵に対して非同期で動作してよい。電力の生産が所望されるとき、2つの溶液は、電気エネルギーを生じさせる半透膜を通して結合されてよい。出力は、2つの溶液間の浸透圧差、延伸溶液にかかる水圧、他のパラメータの間で使用される膜面積に関係してよい。エネルギー源を提供する塩および水の分離の、浸透圧発電を使用する電力の生産からの切り離しは、特有の貯蔵特徴および優位点を提供する。
【0032】
延伸溶液は水溶液であってよい。つまり、溶媒は水である。他の実施形態では、有機溶媒等の非水溶液が使用されることがある。延伸溶液は、一般に、熱分解塩、一価塩、二価塩、有機溶質、およびその混合物等の1つまたは複数の延伸溶質を含むことがある。延伸溶液は、第1の溶液に比してより高い濃度の溶質を含有することがある。延伸溶液は、一般的に、浸透分離システム内で浸透圧を生じさせることができてよい。多岐に渡る延伸溶液が使用されてよい。いくつかの実施形態では、延伸溶液は1つまたは複数の除去可能な溶質を含むことがある。少なくともいくつかの実施形態では、熱的に除去可能な(熱分解)溶質が使用されてよい。たとえば、延伸溶液は、熱分解塩溶液を含んでよい。所望される特性は、高い浸透ポテンシャルを生じさせる能力を含むことがあり、熱的に分解可能且つ放散可能な溶質特性を有する。1つまたは複数の実施形態に従って、延伸溶液はアンモニア−二酸化炭素溶液であってよい。いくつかの実施形態では、アンモニア−二酸化炭素延伸溶液は、本明細書に開示されるグリッド・エネルギー・ストレージを促進するために脱塩を可能にする。延伸溶液は、本明細書で、濃縮液と呼ばれることがある。いくつかの限定されない実施形態では、延伸溶液は、アンモニア−二酸化炭素の濃縮液であってよい。少なくとも1つの実施形態では、使用される延伸溶質は、国際公開第2008/060435号に説明されるアンモニア−二酸化炭素延伸溶液であってよい。それぞれが全体として参照することにより本明細書に組み込まれている、McGinnisに対する米国特許出願公開番号第2005/0145568号、およびMcGinnisに対する米国特許番号第6,391,205号に開示されるもの等のアンモニアおよび二酸化炭素延伸溶液も使用されてよい。
【0033】
1つまたは複数の実施形態に従って、アンモニア対二酸化炭素の比は、一般に、延伸溶液の濃度、ならびに延伸溶質の除去および回収プロセスで使用される温度に一致しなければならない。その比が十分に高くない場合、濃縮液での再利用のために延伸溶質ガスを塩の中に完全に吸収することは不可能である場合があり、その比が高すぎる場合には、廃熱の使用がプロセスを動かすために必要な温度範囲等、所望される温度範囲で適切に液化しない延伸溶液中の過度のアンモニアがある。たとえば、いくつかの実施形態では、蒸留塔は約50℃でガスを放散することがあり、吸収塔は約20℃で動作してよい。アンモニア対二酸化炭素の比は、膜を通過する供給溶液の中へのアンモニアの通過を妨げるためにさらに検討されなければならない。比が高すぎる場合、これにより、脱イオン化アンモニアが、必要または所望されるよりも高い濃度で延伸溶液(通常、おもにアンモニア)の中に存在させる可能性がある。給水タイプ、所望される浸透圧、所望されるフラックス、膜のタイプ、および延伸溶液濃度等の他のパラメータが、好ましい延伸溶液モル比に影響を及ぼすことがある。アンモニア対二酸化炭素の比は、浸透分離プロセスにおいて監視、および制御されてよい。
【0034】
少なくとも1つの実施形態で、延伸溶液は、1:1を超えるモル比でアンモニアおよび二酸化炭素を含むことがある。限定されない実施形態では、約50℃での延伸溶液の比は、延伸溶液のモル濃度がその溶液の中の二酸化炭素のモル濃度として指定された状態で、最高1モル延伸溶液の場合、少なくとも約1.1から1、最高1.5モル延伸溶液の場合、約1.2から1、最高3モル延伸溶液の場合、約1.3から1、最高4モル延伸溶液の場合、約1.4から1、最高4.5モル延伸溶液の場合、約1.5から1、最高5モル延伸溶液の場合、約1.6から1、最高5.5モル延伸溶液の場合、約1.7から1、最高7モル延伸溶液の場合、約1.8から1、最高8モル延伸溶液の場合、約2.0から1、および最高10モル延伸溶液の場合約2.2から1となることがある。これらは、この近似温度でのこれらの濃度の溶液の安定した可溶性に必要とされるほぼ最小の比である。より低い温度では、より高い比のアンモニア対二酸化炭素が、同じ濃度に必要とされることがある。より高い温度では、より低い比が必要とされることがあるが、溶質のガスへの分解を妨げるためには、溶液のなんらかの加圧も必要とされることがある。2モル未満という総濃度でさえ1対1を超える比は、溶液の安定性を大きく高め、二酸化炭素ガスの発生、および一般に適量の熱にも応えた延伸溶液の熱分解分割およびまたは圧力の削減を妨げる。
【0035】
1つまたは複数の実施形態に従って、アンモニア対二酸化炭素の比は、実質的に、延伸溶液ガスの吸収流体の中への完全な吸収を可能にしてよい。1つまたは複数の実施形態に従って、希釈延伸溶液の一部は、蒸留塔から等、延伸溶質ガスを吸収するために使用されてよい。少なくとも1つの実施形態では、冷却および吸収剤との混合は、吸収塔で発生してよい。吸収材として働く(次いで濃縮延伸溶液になる)希釈延伸溶液の一部とのガスの混合は、容器内で発生してよい。容器は一般に、吸収剤とガスの間の相互作用を容易にするほど十分に広い面積を提供するような大きさとされてよい。いくつかの実施形態では、充填された塔が吸収装置として使用されてよい。放散蒸留塔および吸収塔は、1つまたは複数の実施形態で併せて使用されてよい。加熱は蒸留塔で発生してよい。一方、冷却および希釈延伸溶液吸収剤との接触は吸収塔で発生してよい。いくつかの実施形態では、希釈延伸溶液の第1の部分は、蒸留塔に向けられてよく、希釈延伸溶液の第2の部分は吸収剤に向けられてよい。蒸留塔を出る流れは吸収剤の中に案内され、そこで流れは、延伸溶質を前進浸透膜の延伸側に案内し直すように再来のために希釈延伸溶液と混合される。2つの溶液の間の所望される浸透圧の差が膜システムを通して維持されるように、延伸溶液の濃度、体積および流量は、一般に第1の溶液の濃度、体積および流量に一致させなければならない。これは、膜の中、およびその表面での内部と外部両方の濃度分極現象を考慮に入れる1つまたは複数の実施形態に従って計算されてよい。
【0036】
図2に関連して、塩気のない(希釈作動流体)溶液および塩分がある(濃縮延伸溶液)の貯蔵タンクが示され、これらは、それらの間の塩分濃度の差で化学ポテンシャル・エネルギーの貯蔵を達成している。タービン発電機は、希釈延伸流れを減圧することによって、加圧された延伸溶液の体積の増加を電気エネルギーに変換してよい。希釈延伸流れから濃縮延伸流れへ水圧を伝え、延伸溶液加圧部内で一定の圧力、つまり所望される範囲の動圧を維持してよい圧力交換器およびブースター・ポンプは図示されていない。一番右側のタンクは、希釈延伸溶液の濃縮流れおよび希釈流れへの分離に使用される蒸留塔を表し、蒸留塔の右にある矢印は熱の導入および遮断(より低温での遮断)を示す。不図示の第3のタンクは、(塩気のない溶液および食塩液と結合された)蒸留延伸溶液を、この溶液が熱(つまり廃熱を使用した)プロセスまたは電気プロセスを介して上述された塩気がない溶液および食塩液に分離される前の任意の期間、保持するために使用されてよい。
【0037】
1つまたは複数の実施形態に従って、閉サイクル逆浸透−浸透圧発電(RO−PRO)システムでの塩分濃度の差は、2つの溶液の化学ポテンシャルの差としての電力を、それらの間の濃度および浸透圧の差として貯蔵するために使用されてよい。この実施形態では、電気エネルギーは、半透膜の表面に沿って通過するときに、この流れの濃縮が発生し、希釈水が透過側で生成されるように塩分がある流れを加圧するために使用されてよい。濃縮液および希釈溶液は別々のタンクに貯蔵されてよく、このようにして、電気エネルギーはこの2つの溶液の間の浸透圧差でのポテンシャル・エネルギーに変換されてよい。システムのエネルギー容量は、2つの溶液の体積、およびそれらの浸透圧の差によって決定されてよい。このポテンシャル・エネルギーは、劣化することなく長期間に渡って貯蔵されてよく、貯蔵媒体は生得的に安全である。
【0038】
電気エネルギーが所望されるとき、2つの溶液は、半透膜全体で希釈溶液から水の流れを加圧された延伸溶液の中に誘発することによって、閉サイクルPROプロセスで使用され、発電する。延伸溶液の体積の増加はタービン内で減圧されてよく、発電機を使用して電力を作る。いくつかの実施形態では、このプロセスの効率は、加圧ポンプおよびタービンの効率が類似しているという点で、高度勾配(揚水水素)まで水を汲み上げる効率とほぼ同一であってよい。非効率は、配管システム、伝熱システム、および膜システムの摩擦圧力損失によってだけではなく、出ていく希釈延伸溶液と入ってくる濃縮延伸溶液の間での水圧の移動によって延伸溶液の圧力を維持するために使用される、実装された任意の圧力交換器(95〜98%の効率)、および関連するブースター・ポンプに起因する場合がある。エネルギー貯蔵の総効率は、75%を上回ることが期待される。この実施形態では、ROステップの間、溶質が透過物の中を横断する傾向がある場合があるので、希釈流れの中で溶質の低濃度を維持するための溶質ブローダウンとして、熱放散および吸収システムを使用することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、希釈溶液の周期的なブローダウンが、希釈水の再充填により、希釈流れの中で溶質の低濃度を維持するために実行できるだろう。
【0039】
代替実施形態では、RO膜よりもナノ濾過(NF)膜が、電力低減のために、PROと結合されたエネルギー貯蔵のために使用される可能性がある。延伸溶液として二価塩を使用するいくつかの実施形態では、NF膜が同じ機能を実行することがあるが、水の流動に削減された抵抗を提供することがある。
【0040】
他の実施形態では、他の溶質が、それらの除去で効果的であり、全体的な効率に大きすぎる悪影響を及ぼさない任意の分離手段によって希釈溶液(ROステップの透過物)から周期的に濃度を削減されるように使用されることがある。かかる二次分離ステップの例は、濃縮延伸溶液で、または酸および/または基剤が再充填された希釈流れ上のイオン交換樹脂システムであろう。他の延伸溶質は、それらが高い浸透圧を生じさせる場合には蓄電変形で使用でき、RO膜またはNF膜およびRPO膜によって十分に遮断される。代替実施形態では、二価塩が、それらの透過物の中への通過は非常に少ないであろうため、高い遮断RO膜およびRPO膜付きの電気変形で使用できるだろう。代わりに、低分子量充填有機分子または三価塩等の、膜によるほぼ完全な遮断がある溶質が利用できるだろう。代替実施形態では、温度変化がある沈殿を経験する溶質は、有機および/または無機溶質を含むことがある延伸溶質として使用できるだろう。これらの溶質のエネルギー貯蔵段階での分離は、膜分離ステップを使用しても、使用しなくても、希釈延伸溶液の熱操作によって完全にまたは部分的に実行できるだろう。
【0041】
いくつかの実施形態では、使用される延伸溶質は、塩化ナトリウムまたは任意の他の塩または浸透剤であってよいが、かかる従来の溶質の使用には、2つの条件の内の1つが満たされなければならない。つまり、膜は、塩の通過を遮断する上でほぼ100%(たとえばカーボン・ナノチューブまたはアクアポリン状の膜)でなければならないか、もしくは希釈溶液は周期的にブローダウンされ、塩気がない非常に塩分濃度が低い水と交換されなければならないか、または希釈作動流体中の溶質の低濃度を維持するために二次分離ステップを受けなければならない。これは、プラントのRO動作段階の透過物の中に移る延伸溶質としての、エネルギー貯蔵および送達の反復されるサイクルの間の希釈延伸溶液内で発生する塩の蓄積に起因し、PROシステムにおける望ましくない内部濃度分極を引き起こす、または逆電気透析(RED)または他の発電システムの有効性を減少させるだろう。このようにして、希釈作動流体溶液は、任意の数のサイクルを通して低塩分濃度で維持されてよい。
【0042】
他の実施形態では、使用される延伸溶質が、アンモニア−二酸化炭素熱分解塩延伸溶液浸透剤から導出されてよい等、アンモニア−二酸化炭素溶質である場合がある。かかる延伸溶質は、それぞれがすべての目的のためにその全体で参照することにより上記に組み込まれている、国際公開第2008/060435号、米国特許第6,391,205号、および米国特許公開番号第2005/0145568号を含むが、これらに限定されるものではない、前進浸透脱塩プロセスまたは浸透熱機関プロセスから生じることがある。この構成では、少量の延伸溶質が、動作のRO段階の間に希釈溶液の中に移ると予想されてよいが、これらは、すべての目的のために、その全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、PCT出願公開公報である国際公開第2007/146094号パンフレットに説明されるものだけではなく、前記に参照された前進浸透脱塩プロセスおよび浸透熱機関プロセスにも説明されるように、たとえば、蒸留塔の使用による熱の追加によって希釈溶液からの溶質の熱分離を使用することで、周期的または連続的に除去され、濃縮液にリサイクルされてよい。したがって、希釈作動流体溶液は、任意の数のサイクルの間低塩分濃度で維持されてよい。
【0043】
1つまたは複数の実施形態に従って、希釈溶液の低塩分濃度を維持し、膜構造での内部濃度分極を妨げることが重要である場合がある。1つまたは複数の実施形態に従って、アンモニア−二酸化炭延伸溶質以外の塩が使用されてよい。分離および再結合の手段が高い遮断を伴う場合に、これは特に望ましいことがある。たとえば、すべての塩のほぼ100%を遮断する膜が使用される場合には、NaClおよびMgClを含む任意の塩が使用できるだろう。
【0044】
図3に関連して、塩気がない溶液および食塩液のタンクは、それぞれ希釈作動流体および濃縮延伸溶液を保持してよい。ポンプは、濃縮液の加圧を生じさせるために使用されてよく、希釈溶液の、「塩気がない」と示された希釈用液タンクの中への半透膜を通した浸透を引き起こす。これは、食塩液を濃縮する効果を有することがある。異なる塩分濃度(浸透圧)の、任意の量の塩気のない溶液および食塩液の貯蔵によって、これらの溶液の化学ポテンシャルの差は、安定した、生得的に安全なエネルギー貯蔵手段として使用し得る。不図示の第3のタンクは、(塩気がない溶液および食塩液と結合された)希釈延伸溶液を、この溶液が、膜を通る逆浸透流を誘発するために電力を使用することによって塩気がない溶液および食塩液に分離される前の任意の期間、保持するために使用されてよい。このシステムは、2つの溶液の間の塩分濃度の差として電力を貯蔵するRO、および塩分濃度のこの違いを電力に変換するPROという2つの運転モードを有してよい。PRO動作の場合、出ていく希釈延伸溶液から入ってくる濃縮延伸溶液に水圧を移動し、この2つの溶液の塩分濃度差を電力に変換することによって、濃縮延伸溶液にかかる圧力を維持するために、図示されている圧力交換器がブースター・ポンプ(不図示)とともに使用されてよい。この電力の生産は、分離プロセスおよび浸透圧発電プロセスに関して上述されたように、加圧された、拡大する量の希釈延伸溶液が、たとえば、タービン内で減圧できるようにすることによって達成されてよい。最も左側の容器は、溶液の低塩分濃度を維持するために溶質の熱放散によって、希釈溶液から溶質を周期的にまたは連続的に除去するために使用されてよい小型蒸留塔である。代わりに、希釈溶液ブローダウンおよび再充填サイクルが、この溶液中の低塩分濃度を維持するために使用されてよい。
【0045】
利用されてよい追加の実施形態は、希釈溶液の濃縮流れおよび希釈流れへの分離のために、ROまたは蒸留塔の使用の代わりに、電気透析、イオン交換、容量脱イオン化、パーベーパレーション、膜分離、または他の分離手段の使用を含む。塩分濃度差から発電するためのREDまたは他の電気化学技法が、浸透圧発電ステップの代わりに使用されてよい。本明細書に開示される技術は、広く、分離するために熱または電力を使用する多様な手法、および電力を作るための後のまたは同時のこれらの溶液の再結合に向けられている。
【0046】
いくつかの実施形態では、開示されている1つまたは複数の浸透貯蔵装置および方法が、発電所の全体的な効率を改善するまたは高めるために実装されてよい。たとえば、開示されているシステムおよび方法は、石炭および天然ガスおよび原子力発電等のソースからの従来のベースロード発電を補足するために使用されてよい。したがって、既存のプラントは、効率、信頼性および貯蔵の強化のために1つまたは複数の実施形態に従って改良されてよい。
【0047】
いくつかの限定されない実施形態では、塩気のない溶液と濃縮延伸溶液の間の水力ポテンシャルは、約300バール、または水頭のほぼ10,000フィートであってよい。少なくともいくつかの限定されない実施形態では、総システム効率は55%から85%の範囲であってよい。少なくとも1つの実施形態では、取得可能な効率は少なくとも約75%である。
【0048】
1つまたは複数の実施形態に従って、水生成物が開示されているシステムおよび方法によって生成されてよい。水生成物は、それを多様な用途で有用にまたは望ましくする1つまたは複数の特性または質を有してよい。水生成物は処理水であってよい。少なくとも1つの実施形態では、水生成物は脱塩水であってよい。したがって、たとえば電気等の貯蔵エネルギーに加えて、水は、需要に応じて使用場所またはカスタマに提供されてよい。いくつかの限定されない実施形態では、たとえば、水生成物は、工業用用途、灌漑用途、または飲料用用途での使用に提供されてよい。水生成物は、本明細書に説明される分離プロセスを通して作られてよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、浸透貯蔵装置および方法は、本明細書に開示される廃熱によって充電されてよい。したがって、返される入力エネルギーのパーセンテージとしてのエネルギー貯蔵効率は、特定の態様では実質的に無関係となることがある。少なくとも1つの実施形態では、浸透貯蔵装置および方法は、廃熱だけを使用して充電されてよい。熱は従来の火力発電ソースから生じる場合がある。いくつかの実施形態では、石炭発電ソース、天然ガス発電ソース、原子力発電ソース、および石油圧電ソースが廃熱を提供してよい。たとえば、ボイラー、ガスタービン、および往復機関を含む、発電システムまたは熱電気複合利用(CHP)システムが廃熱を提供してよい。水蒸気発生および発熱のための工業用または商業用のボイラーが廃熱を提供してよい。また、熱は、太陽熱発電、地熱発電、地域冷暖房水、またはたとえば石油および天然ガスの抽出、破砕、および原油の二次回収事業から等の生産された流体等の非従来型のソースから生じてもよい。さらに他の実施形態では、熱は、浸透貯蔵と結合された、または実用規模の発電および浸透貯蔵と結合された分散発電を通して等、現場で廃熱利用されてよい。
【0050】
他の実施形態では、装置および方法の電気版は、上述されたように実装されてよい。生成された電気はかかる実施形態の装置に供給され、その1つまたは複数の部の動作に電力を供給してよい。かかる実施形態では、エネルギー貯蔵効率は、重大な考慮事項である場合がある。少なくとも1つの実施形態では、ハイブリッド・システムおよび方法が、電気だけではなく廃熱に依存してよい。
【0051】
1つまたは複数の実施形態による浸透グリッド・ストレージ・システムは、火力発電に使用されてよい。浸透グリッド・ストレージ装置は、廃熱を捕捉し、要望に応じた電力に変換するために任意の火力発電ソースと併せて使用されてよい。開示されている浸透グリッド・ストレージ・システムは、発電所からの廃熱で最高1日に24時間充電し、電力が必要とされ、最も高価である日の間のピーク時間で大量の水力発電を供給できる。これは、プラントの総効率を上昇させ、カーボンフットプリントを削減し、今日に存在する機能ではない総出力の一部に要望に応じた機能性も与えてよい。
【0052】
1つまたは複数の実施形態による浸透グリッド・ストレージ・システムは、太陽熱貯蔵または地熱貯蔵のためにも使用されてよい。従来の熱水ソースからまたは強化地熱システム(EGS)のどちらかによって地面から抽出される地熱は貯蔵エネルギーに変換できる。これは、地熱発電所の総効率を高め、貯蔵コンポーネントも追加する。貯蔵電力の方が高価である場合、より多くの熱またはより高温の熱が、即時の発電のためにバイナリプラントにではなく、貯蔵の増強のために浸透グリッド・ストレージ・システムに送ることができる。いくつかの実施形態では、信号グリッド・ストレージ・システムは、有機ランキンサイクル(ORC)と結合し、40℃ほど低い温度まで熱の最も効率的な使用を実現できる。
【0053】
1つまたは複数の実施形態に従って、開示されている浸透貯蔵システムは、小規模貯蔵に使用されてよい。浸透グリッド・ストレージ・システムは、分散電力貯蔵、工業用電力貯蔵、または消費者電力貯蔵の用途に、たとえば1〜20MWの範囲で小さなサイズまで縮小できる。浸透貯蔵システムは、たとえば、廃熱を捕捉し、要望に応じた電力を提供するために、小型レシプロエンジンまたは発電機と一体化できる。小型浸透グリッド・ストレージ・システムは、炉、温水暖房機、および小型ボイラー等の工業用機器からの熱も活用できる。より小規模の浸透グリッド・ストレージ・システムは、要望に応じた電力を提供するために、屋根の上にあるような単純な太陽熱収集器を活用してもよい。
【0054】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透グリッド・ストレージ・システムは、原子力貯蔵のために使用されてもよい。浸透グリッド・ストレージ・システムは、大量の要望に応じた電力を貯蔵するために核エネルギーと結合できる。核エネルギーは、炭素の影響をなしに熱を作るきわめて効率的な方法である。この熱は、直接的に、または浸透グリッド・ストレージ・システムに電力を供給するための廃棄熱の形をとるように、間接的に使用でいる。これは、原子力発電所の総効率を高めることがあり、核施設で今日存在していない貯蔵機構を提供する。
【0055】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透グリッド・ストレージ・システムは、地域冷暖房に使用されてよい。浸透グリッド・ストレージ・システムは、地域冷暖房システムから作られる熱水と結合できる。発電されると、蒸気が、熱が遮断される凝縮器を通して回収されてよい。コジェネレーション・システム等のいくつかの例では、次に、その熱は地域冷暖房に使用される。多くの場合、熱は、40〜50℃の温度範囲で街路を通ってパイプで送られる熱水の形を取る。この熱は、浸透グリッド・ストレージ・システムに電力を供給し、貯蔵電力を供給するために使用できる。
【0056】
1つまたは複数の実施形態に従って、浸透グリッド・ストレージ・システムは、浸透熱ポンプと使用できる。浸透グリッド・ストレージ・システムは、延伸溶液を回収するために必要な熱を提供するために地熱ポンプと結合できる。この例では、蒸留塔は排除することができ、代わりに延伸溶質分離を実現する地下熱ポンプで置換できる。このようにして、小規模浸透グリッド・ストレージ・システムは、住宅、商業用、および分散エネルギーの貯蔵システムを提供する妥当な地表下温度がある任意の場所に配備できる。
【0057】
1つまたは複数の実施形態に従って、グリッド・ストレージ・システムは、電気エネルギー・イン・アプローチ、電気エネルギー・アウト・アプローチを使用してよい。一例では、ROは、濃縮液と実質的に希薄な作動流体に、希釈された二価食塩水を濃縮するために使用されてよい。これらの溶液は、化学ポテンシャルとして電気を無期限に貯蔵するために貯蔵できる。電力が必要とされるとき、PROは、これらの溶液を再結合し、電力を作るために使用されてよい。いくつかの実施形態では、イオン交換方法または他の分離方法の包含等、作動流体の中での溶質の蓄積を防ぐために研磨方法が使用されてよい。このようにして、浸透グリッド・ストレージ・システムは、溶質の蓄積を妨げてよい。たとえば、弱い酸性および基剤陰イオンおよび陽イオン交換樹脂も、多価食塩水と使用されてよい。周期的なブローダウンも、本明細書に開示されるように実装されてよい。
【0058】
1つまたは複数の実施形態に従って、装置、システムおよび方法は、一般に、1つまたは複数の流量流れの特性または特徴を調整するだけではなく、バルブおよびポンプを作動すること等もあるが、これらに限定されるものではない、システムの装置または構成要素の少なくとも1つの動作パラメータを調整するまたは調節するためのコントローラを含んでよい。コントローラは、濃度、流量、pHレベル、または温度等の少なくとも1つの操作パラメータを検出するように構成された少なくとも1台のセンサと電子通信してよい。コントローラは、一般に、センサによって生成された信号に応えて1つまたは複数の操作パラメータを調整するために制御信号を生成するように構成されてよい。たとえば、コントローラは、浸透分離装置またはグリッド・ストレージ・システムの任意の流れ、構成要素、またはサブシステムの条件、特性、または状態の表記を受け取るように構成することができる。コントローラは、通常、表記、設定点等のターゲット値または所望される値のどれかの1つまたは複数に基づいている少なくとも1つの出力信号の生成を容易にするアルゴリズムを含む。1つまたは複数の特定の態様に従って、コントローラは、測定された任意の特性の表記を受け取り、システム構成要素のどれかに制御信号、駆動信号または出力信号を生成し、測定された特性のターゲット値からの任意の偏差を削減するように構成できる。
【0059】
1つまたは複数の実施形態に従って、プロセス制御システムおよび方法は、pHおよび導電率を含む検出されたパラメータに基づいてよい等の、多様な濃度レベルを監視してよい。プロセス流れ流量およびタンク・レベルも制御されてよい。温度および圧力は監視されてよい。膜の漏れは、イオン選択プローブ、pHメータ、タンク・レベルおよび流れ流量を使用して検出されてよい。また、漏れは、膜の延伸溶液側をガスで加圧し、超音波検出器および/または給水側での漏れの目視観察を使用することによって、検出されてもよい。他の操作パラメータおよび保守の問題が監視されてよい。多様なプロセス効率は、水の流量と質、熱流量、電気エネルギー消費、およびエネルギー出力を測定することによって等、監視されてよい。付着物軽減のための清掃プロトコルは、膜システムの特定の点での供給溶液および延伸溶液の流量によって決定されるフラックスの低下を測定することによって等、制御されてよい。海水の流れでのセンサは、蒸留、イオン交換、不連続点塩素処理、または類似したプロトコルによる等、処理がいつ必要となるかを示すことがある。これは、pH、イオン選択プローブ、フーリエ変換赤外(FTIR)分光または延伸溶質濃度を検出する他の手段で行われてよい。延伸溶液状態は、溶質の構成の追加および/または置換のために監視され、追跡調査されてよい。同様に、生成物水質も、従来の手段によって、またはアンモニウムまたはアンモニアプローブ等のプローブで監視されてよい。FTIRは、たとえば適切なプラントの運転を保証するために、および膜イオン交換効果等の挙動を特定するために有用であってよい情報を提供する存在する種を検出するために実装されてよい。
【0060】
1つまたは複数の実施形態に従って、システムおよび方法は、エネルギー要件を満たすために電気グリッドと一体化されてよい。システムおよび方法は、待機電力を提供し、エネルギー出力を平滑化するために使用され、電力プロセスに信頼性を追加するために、ベースロード・エネルギーと統合されてよい。いくつかの実施形態では、電力需要は監視されてよい。開示されているシステムと関連付けられたコントローラは、電力需要を示す信号を受信してよい。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される浸透圧発電プロセス等の浸透発電プロセスは、電力需要の検出に応えてオンラインで開始される、またはオンラインにされてよい。同様に、発電は、電力需要がなくても終端されてよい。濃縮液と実質的に脱イオン化された輸液の間の濃度勾配の形を取るポテンシャル・エネルギーの貯蔵のための分離プロセスは、エネルギーが製造されていないときに実行されてよい。他の実施形態では、分離プロセスは、エネルギー発生と同時に実行されてよい。
【実施例】
【0061】
これらのおよび他の実施形態の機能および優位点は、以下の限定されない例からより完全に理解される。この例は本来例示的となることが目的とされ、本明細書に説明される実施形態の範囲を制限するとして考えられるべきではない。
【0062】
(実施例1)
開示されている浸透システムおよび方法を含む多様な貯蔵技術は、比較サイズおよび操作パラメータに基づきモデル化され、効率および資本コストの点で評価された。以下の表1は、効率に関する結果を要約している。
【表1】

【0063】
示されているように、開示されている浸透システムおよび方法の効率は、特に、廃熱を使用できるという事実を鑑みると競合している。
【0064】
また、評価の結果は、本明細書に開示されている浸透システムおよび方法が、従来の貯蔵技術に比して、キロワットあたりより低い資本コストと関連付けられていることも示した。たとえば、揚水貯蔵システムは2倍から4倍高価であった。フロー電池は最高3倍高価であった。ナトリウム硫黄電池は最高2.5倍高価であった。リチウムイオン電池は最高4倍高価であった。フライホイールは約4倍高価であった。
【0065】
示された評価は、効率と資本コストの両方の点でのグリッド・ストレージに対する、開示されている浸透システムおよび方法の望ましさを示した。
【0066】
(実施例2)
本明細書に開示されている1つまたは複数の実施形態に従ってモデル化された浸透グリッド・ストレージ・システムに対してコスト分析が実行された。モデル化の元となったシステム仕様は、600MWHという総エネルギー貯蔵容量、100MWという送達電力、12時間の送達時間、150ATM圧力、および廃熱を供給するための1GW石炭プラントを含んでいた。分析は、エネルギー解決策としての浸透グリッド・ストレージの実行可能性を示す、$0.08という1キロワットあたりの推定コストを出した。
【0067】
(実施例3)
多様な実施形態による浸透グリッド・ストレージ・システムの貯蔵容量の機能としてキロワット時あたりのコストをモデル化するために分析が実行された。以下の表2に提示された結果は、MWH貯蔵容量の増加に伴ったキロワット時あたりのコストの減少を示している。貯蔵を3倍にすると、コストを半分以上削減した。30MWH貯蔵容量で推定された$0.098/KWHは、従来のグリッド・ストレージ・オプションに比べて魅力的である。
【表2】

【0068】
(実施例4)
太陽熱は、ゼロエミッションで大量の将来の電力需要を提供する能力のあるクリーンな電気の最も前途有望な新生の形の1つである。しかしながら、太陽熱技術は、それらが、太陽光がない夜の間に電力を送達できるようになんらかの形のエネルギー貯蔵を必要とする。エネルギー貯蔵がないと、それを日に24時間確実に利用できないため、太陽熱電気は制限され、市場で値引かれる。太陽熱プラントは、この問題を軽減するために約16時間の貯蔵を必要とする−これは、即座に、この規模では経済的ではない(電池のような)多くのグリッド・ストレージ・オプションを排除する。開示されている浸透グリッド・ストレージは、太陽熱プラントが存在するどこにでも建設することができ、マルチメガワットまたはマルチギガワットの規模で多くの電力時間数を貯蔵できる。さらに、太陽熱は「熱的生成」プロセスであるため、発電に寄与しない(150℃未満の)利用可能な多大な廃熱がある。プラントが全力で電気を生産している日中、プラントはプラントの総発熱率(出力)に影響を与えずに貯蔵のために廃熱を利用することもできる。夜間、浸透電池は電力を放出し、容量を維持するために電源を入れることができる。このレベルの追加の信頼性は、太陽熱発電所の収益性を大幅に改善できる。
【0069】
(実施例5)
浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法は、1つまたは複数の実施形態に従ってガスタービン結合サイクル(GTCC)と結合されてよい。図4の概略図に提示される予備的なモデル化は、530MWを超える貯蔵容量を示唆している。
【0070】
(実施例6)
浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法は、1つまたは複数の実施形態によるディーゼル発電機と組み合わされてよい。図5Aの概略図に提示されるように、浸透貯蔵は、10MWのディーゼル発電機と一体化されてよい。図5Bの概略図に提示されるように、浸透エネルギー貯蔵は、熱ガス流れから熱を回収するために熱回収蒸気発生器(HRSG)だけではなく、ディーゼル発電機と一体化されてよい。
【0071】
(実施例7)
浸透グリッド・ストレージ・システムおよび方法は、1つまたは複数の実施形態に従って発電所冷却プロセスと結合されてよい。典型的な発電所冷却プロセスは、図6Aに提示されている。図6Bは、浸透貯蔵が一体化される容易さを反映している。
【0072】
ここで本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明すると、前記が単に例示的であり、制限的ではなく、一例としてだけ提示されたことが当業者に明らかとなるべきである。多数の変形および他の実施形態が当業者の範囲内にあり、本発明の特許請求の範囲に該当すると考えられる。特に、本明細書に提示された例の多くは、方法行為またはシステム要素の特定の組み合わせを含んでいるが、それらの行為およびそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされてよいことが理解されたい。
【0073】
本明細書に説明された装置、システムおよび方法の実施形態は、以下の説明に述べられた、または添付図面に示された構成要素の構成および配列の詳細への適用において制限されないことが理解されるべきである。装置、システムおよび方法は、他の実施形態での実装、および多様な方法での実践または実行が可能である。特定の実装の例は、例示的な目的のためだけに本明細書に示され、制限的となることを目的としていない。特に、1つまたは複数の実施形態に関連して説明された行為、要素、および特徴は任意の他の実施形態での類似した役割から除外されることを意図されていない。
【0074】
当業者は、本明細書に説明されたパラメータおよび構成が例示的であること、および実際のパラメータおよび/または構成が、本発明のシステムおよび技法が使用される特定の用途に依存することを理解するべきである。また、当業者は、ただの日常の実験を使用して、本発明の特定の実施形態の同等物を認識する、または確かめることができなければならない。したがって、本明細書に説明される実施形態が例によってのみ提示されること、および添付特許請求の範囲および損同等物の範囲では、本発明が特別に説明される場合を除き実践されてよいことが理解されるべきである。
【0075】
さらに、本発明が、本明細書に説明される各特徴、システム、サブシステムまたは技法および本明細書に説明される2つ以上の特徴、システム、サブシステムまたは技法の任意の組み合わせを対象としており、かかる特徴、システム、サブシステムおよび技法が相互に矛盾していない場合に、2つ以上の特徴、システム、サブシステムおよび/または方法の任意の組み合わせがあらゆる請求項で実現される本発明の範囲内にあると見なされることも理解されるべきである。さらに、1つの実施形態とだけ関連して説明された行為、要素および特徴は、他の実施形態における類似した役割から排除されることは意図されていない。
【0076】
本明細書に使用される言い回しおよび専門用語は、説明のためであり、制限的と見なされるべきではない。本明細書に使用されるように、用語「複数」は、2つ以上の項目または構成要素を指す。用語「備える」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、および「含む」は、書面による説明においてであっても、特許請求の範囲等においてであっても、非制限用語である、つまり「を含むが、これらに限定されるものではない」を意味する。したがって、かかる用語の使用は、追加の項目だけではなく、それ以降に示される項目およびその同等物を包含することを意図されている。移行句「から成り立つ」、および「から本質的に成り立つ」だけが、それぞれ、あらゆる請求項に対して制限的または半制限的な移行句である。特許要素を修飾するための特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、それ自体、ある請求書要素の別の順序に優る優先順位、先行、または順序、あるいは方法の行為が実行される時間的な順序を暗示しておらず、単に、特定の名称を有するある請求項要素を、同じ名称を有する(が序数用語の使用のための)別の要素から区別し、特許要素を区別するための標識として使用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透電池を操作する方法であって、
希釈食塩水のソースを提供することと、
前記希釈食塩水を分離し、濃縮液および実質的に希薄な使用液を形成することと、
前記実質的に希薄な使用液から流体隔離して前記濃縮液を貯蔵することと、
前記濃縮液および実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、前記濃縮液と前記実質的に希薄な使用液の間の化学エネルギー・ポテンシャル差としてエネルギーを貯蔵することと
を含む方法。
【請求項2】
前記希釈食塩水を分離することが、前記希釈食塩水を蒸留塔に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化学エネルギー・ポテンシャル差が、電力需要の検出に応えて電力に変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することが、浸透圧発電プロセスを使用して実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記浸透圧発電プロセスが、前記濃縮液の少なくとも一部を加圧することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記浸透圧発電プロセスが、前記加圧された濃縮液の少なくとも一部の体積を増加し、体積が拡張された加圧溶液を形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記体積を増加することが、前記希釈使用液の少なくとも一部を前記加圧された濃縮液に導入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記体積を増加することが、半透膜を使用して水の流動を促進することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記浸透圧発電プロセスが、電力を生成するため、および前記希釈食塩水を生成するために、前記加圧された溶液の圧力を減少させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力を減少させることが、前記加圧された溶液をタービンを通して流すことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記希釈食塩水を分離部に導入することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記分離部が、蒸留塔、パーベーパレーション部、逆浸透膜分離部、ナノ濾過膜分離部、および電気透析装置から成るグループから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電気で前記分離部に電力を供給することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上流部動作によって生成される熱で前記分離部に電力を供給することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記分離部が、燃料源の燃焼によって生成される熱で電力を供給される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
再生可能エネルギー源の副産物として生成される熱で前記分離部に電力を供給することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記分離部によって生成される水を使用場所に提供することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記電力を使用場所に送達することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記濃縮液が熱分解塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記濃縮液が、アンモニア−二酸化炭素溶液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記濃縮液が、1対1を超えるモル比でアンモニアおよび二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記化学エネルギー・ポテンシャル差を電力に変換することが、電気化学プロセスを使用して実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
前記圧力の少なくとも一部を、前記加圧された溶液から、前記濃縮液および前記実質的に希薄な使用液から離れたタービン流体に移すことと、タービン内で前記加圧されたタービン流体流れを減圧することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
半透膜を備える浸透圧発電部と、
前記浸透圧発電部の第1の入口に流体接続される濃縮液のソース、および前記浸透圧発電部の第2の入口に流体接続される希釈使用液のソースを備えるポテンシャル・エネルギー貯蔵部と、
前記浸透圧発電膜部の下流で流体接続されるタービンと、
前記タービン部に接続される電気発電機と
を備える、浸透エネルギー・システム。
【請求項26】
前記タービンの下流で流体接続される蒸留塔をさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記蒸留塔が、前記濃縮液ソースおよび前記希釈使用液ソースと流体接続される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記蒸留塔に熱的に接続される再生利用エネルギー源をさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記蒸留塔に熱的に接続されている、工業用廃熱のソースをさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記蒸留塔に接続される電源をさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
パーベーパレーション部、二次膜分離部、または前記タービンの下流で流体接続される電気透析装置をさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記蒸留塔の出口に流体接続される、工業用、灌漑、または飲料用の水の使用場所をさらに備える請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記タービンの下流で電気的に接続されるグリッド・エネルギー供給システムをさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
前記グリッド・エネルギー供給システムに接続されるベースロード発電所をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記グリッド・エネルギー供給システムからエネルギー需要を検出するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記タービンの下流で流体接続される逆浸透部またはナノ濾過部をさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項37】
前記濃縮液が熱分解塩を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項38】
希釈食塩水のソースを提供することと、
前記希釈食塩水を分離し、濃縮液および実質的に希薄な使用液を形成するために電気エネルギーを使用することと、
前記濃縮液および前記実質的に希薄な使用液を貯蔵することと、
前記濃縮液と前記実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、ポテンシャル・エネルギーを利用することと
を含む、浸透電池を操作する方法。
【請求項39】
前記希釈食塩水を分離するために電気エネルギーを使用する前記ステップが、前記希釈食塩水を、ナノ濾過、逆浸透、または電気脱イオン(EDI)プロセスに導入することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ポテンシャル・エネルギーから電気を生成する前記プロセスが、浸透圧発電プロセスを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ポテンシャル・エネルギーから電気を生成する前記プロセスが、逆電気透析(RED)プロセスを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
浸透電池を操作する方法であって、
希釈食塩水を熱分離プロセスに導入し、濃縮液および実質的に希薄な使用液を形成することと、
前記濃縮液および前記実質的に希薄な使用液を貯蔵することと、
前記濃縮液と前記実質的に希薄な使用液の間の濃度勾配を維持し、ポテンシャル・エネルギーを利用することと、
前記濃縮液および前記実質的に希薄な使用液を浸透圧発電プロセスに導入し、電力需要に応えて前記ポテンシャル・エネルギーから電気を生成することと
を含む、方法。
【請求項43】
前記熱分離プロセスが、蒸留プロセスを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
浸透エネルギー・システムであって、
グリッド・エネルギー送達システムと、
前記グリッド・エネルギー送達システムに電気的に結合される電気化学的発電装置と、
前記電気化学的発電装置の第1の入口に流体接続される濃縮液のソースと、前記電気化学的発電装置の第2の入口に流体接続される希釈使用液のソースを備えるポテンシャル・エネルギー貯蔵部と
を備える、システム。
【請求項45】
前記電気化学的発電装置が、逆電気透析(RED)部を備える、請求項44に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−511118(P2012−511118A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539711(P2011−539711)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066658
【国際公開番号】WO2010/065791
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511133509)オアシス ウォーター,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】