説明

実習模型装置

【課題】頭部模型の顔貌をなるべく維持したまま、顎模型を容易に取外せるようにすることを目的とする。
【解決手段】顎模型90を着脱可能な実習模型装置であって、頭部模型40を有する擬似患者体30と、頭部模型40に組込まれた咬合器50と、咬合器50に対して顎模型90を固定する固定部(例えば永久磁石57A、57B)と、頭部模型40の顔面41以外の部位に設けられ、固定部による顎模型90の固定を解除する操作を受ける操作部60A、60Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科医療実習等に用いられる実習模型装置であって、特に、着脱可能な顎模型を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顎模型を着脱可能にする構成として、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1では、顎模型が磁力によって歯科咬合器に固定保持される。また、歯科咬合器を構成する上顎支持体に、上顎模型を上顎支持体から遠ざけるように移動させる離脱ピンが組込まれている。そして、離脱ピンを押すことで、上顎支持体の磁石から上顎模型の吸着板が離れて、上顎模型を容易に離脱させることができるようになっている。
【0004】
また、特許文献1では、顎模型を上顎支持体から遠ざけるように移動させる離脱手段として、上記離脱ピンを用いた構成の他、スライド体を上顎支持体と上顎模型との間にスライド移動させる構成等も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、顎模型が装着される頭部模型部分に対して、植毛を施したり、擬似皮膚のような外皮で覆ったりするといった、外観上の細工が施されることが多い。このような設計において、外観上の細工の着脱作業は、時に煩雑・困難である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、歯科咬合器近傍(顎模型近傍)で、離脱ピン或はスライド体等を動かすように操作する必要がある。このため、頭部模型部分に対して、外観上の細工をそのままの状態にして、即ち、頭部模型部分の顔貌をなるべく維持したまま、歯科咬合器近傍(顎模型近傍)で上記操作を行うことは難しい。
【0008】
しかも、近年では、頭部模型部分に対して顔面の表情を変えるための機構が組込まれることも多く、歯科咬合器周辺のスペースが圧迫されている。この点からも、歯科咬合器近傍で上記操作を行うことは難しくなってきている。
【0009】
そこで、本発明は、頭部模型の顔貌をなるべく維持したまま、顎模型を容易に取外せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様は、顎模型を着脱可能な実習模型装置であって、頭部模型を有する擬似患者体と、前記頭部模型に組込まれた咬合器と、前記咬合器に対して前記顎模型を固定する固定部と、前記頭部模型の顔面以外の部位に設けられ、前記固定部による前記顎模型の固定を解除する操作を受ける操作部とを備える。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る実習模型装置であって、前記操作部は、前記擬似患者体のうち外部に露出していない箇所に設けられている。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る実習模型装置であって、前記操作部は、前記頭部模型に設けられている。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に係る実習模型装置であって、前記操作部は、前記頭部模型の後部又はカツラで隠れる部位に設けられている。
【0014】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る実習模型装置であって、前記固定部は、永久磁石、又は、永久磁石に対して吸着可能な磁性体である。
【0015】
第6の態様は、第5の態様に係る実習模型装置であって、固定維持位置と離脱位置との間で移動可能に配設され、前記固定維持位置から前記離脱位置への移動により、前記固定部と前記顎模型とを相対的に遠ざける離脱部材と、前記操作部の動きを、前記離脱部材を前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させる力として伝達する伝達機構部とを備える。
【0016】
第7の態様は、第5の態様に係る実習模型装置であって、固定維持位置と離脱位置との間で移動可能に配設され、前記固定維持位置から前記離脱位置への移動により、前記固定部と前記顎模型とを相対的に遠ざける離脱部材と、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、前記離脱部材を、前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させる駆動機構部とを備える。
【0017】
第8の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る実習模型装置であって、前記固定部は、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、励磁状態及び非励磁状態との間で切換えられる電磁石である。
【0018】
第9の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る実習模型装置であって、前記固定部は、固定位置と固定解除位置との間で移動可能に配設され、前記固定位置で前記顎模型に係止して前記咬合器に対して前記顎模型を固定し、前記固定解除位置で前記顎模型に対する係止が解除されて前記咬合器に対して前記顎模型が取外し可能になる係止部材である。
【0019】
第10の態様は、第9の態様に係る実習模型装置であって、前記操作部の動きを、前記係止部材を前記固定位置から前記固定解除位置に移動させる力として伝達する伝達機構部とを備える。
【0020】
第11の態様は、第9の態様に係る実習模型装置であって、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、前記係止部材を、前記固定位置から前記固定解除位置に移動させる駆動機構部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様に係る実習模型装置によると、前記固定部による前記顎模型の固定を解除する操作を受ける操作部が前記頭部模型の顔面以外の部位に設けられているため、頭部模型の顔貌をなるべく維持したまま、顎模型を容易に取外せる。
【0022】
第2の態様によると、操作部を外部から視認し難い場所に設けることができる。
【0023】
第3の態様によると、咬合器と顎模型との関係を見ながら、操作部を操作できる。
【0024】
第4の態様によると、前記操作部が、前記頭部模型の後部に隠れて設けられ、或は、カツラで隠されることで、目立たなくすることができる。
【0025】
第5の態様によると、簡易な構成で顎模型を固定部に固定することができる。
【0026】
第6の態様によると、操作部を動かす力で、離脱部材を移動させて、前記固定部と前記顎模型とを相対的に遠ざけて、顎模型を取外せる状態にすることができる。
【0027】
第7の態様によると、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、駆動機構部が、前記離脱部材を、前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させるため、操作部の設置箇所の自由度に優れる。
【0028】
第8の態様によると、前記固定部は、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、励磁状態及び非励磁状態との間で切換えられる電磁石である、操作部の設置箇所の自由度に優れる。また、励磁状態では、顎模型の頑強な固定を実現でき、非励磁状態では、顎模型を容易に取外せる。
【0029】
第9の態様によると、顎模型に対する係止部材の係止によって顎模型を固定することができ、また、係止部材の係止解除によって顎模型を取外せる。
【0030】
第10の態様によると、操作部を動かす力で、係止部材を移動させてその係止を解除させて顎模型を取外せる状態にすることができる。
【0031】
第11の態様によると、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、駆動機構部が、前記係止部材を、前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させるため、操作部の設置箇所の自由度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る実習模型装置の全体構成例を示す説明図である。
【図2】頭部模型を示す概略正面図である。
【図3】頭部模型を斜め後ろから見た概略図である。
【図4】主として下顎模型を着脱可能に取付けるための構成部分を示す概略斜視図である。
【図5】主として下顎模型を着脱可能に取付けるための構成部分を示す概略正面図である。
【図6】主として上顎模型を着脱可能に取付けるための構成部分を示す概略斜視図である。
【図7】主として上顎模型を着脱可能に取付けるための構成部分を示す概略分解斜視図である。
【図8】主として上顎模型を着脱可能に取付けるための構成部分を示す概略断面図である。
【図9】第1変形例を示す説明図である。
【図10】第2変形例を示す説明図である。
【図11】第3変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
{実施形態}
以下、実施形態に係る実習模型装置について説明する。図1は実習模型装置10の全体構成例を示す説明図である。
【0034】
<全体構成>
実習模型装置10は、歯科分野の模擬的な治療実習を行うための装置であり、トレーテーブル12と、擬似患者体30と、擬似患者体30を載置・支持する診療台14と、情報処理装置20とを備えている。
【0035】
トレーテーブル12は、テーブル12aと器具ホルダー12bとを備えている。テーブル12aは、診療台14にアーム(図示省略)を介して位置変更可能に支持されたトレーテーブル12の一部として、位置変更可能とされている。器具ホルダー12bは、テーブル12a一側部(通常実習者が立つ側の側部)に取付固定されている。器具ホルダー12bは、複数の診療器具11aを収納及び取出し可能に支持できる構成とされている。器具ホルダー12bは、診療台14に設けられていてもよい。
【0036】
ここで、上記診療器具11aとしては、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジ、口腔カメラ、光重合照射器等が想定される。これらの診療器具11aは、擬似患者体に対する実習行為に供され、実習者による駆動指示又は取扱い操作等に基づいて動作する。また、必要に応じて、診療器具11aの作動状態を示す駆動情報が取得される。この駆動情報としては、例えば診療器具が歯牙切削用診療器具等の回転駆動部を有する場合には、その回転数、または、回転数に相当する電圧値もしくは電流値等が想定される。その他の駆動情報としては、診療器具作動時の、エア圧、エア流量、周波数、振動数、診療器具が擬似患者体30に接触する際に作用する抑圧力(トルク値)等が想定される。これらの駆動情報は、実習中の診療器具類の操作内容等にかかわる実習に関連する情報として、情報処理装置20において収集される。
【0037】
また、トレーテーブル12には、テーブル12aの上方に位置して表示部12cが設けられている。この表示部12cには、擬似的な患者のカルテ、実習中の診療台14や診療器具類の操作内容等の実習に関連する各種情報が表示される。
【0038】
擬似患者体30は、頭部模型40と、胴体模型32と、左右の腕模型34と、左右の脚部模型36とを備えており、全体として、人体全身を擬似的に再現した構成とされている。頭部模型40には、顎模型90(図2参照)が着脱可能に取付けられ、特に、顎模型90に対して治療が施されて各種医療実習が行われる。
【0039】
この擬似患者体30には、医療実習中に施術される処置(例えば治療)内容を検出する各種センサが取り付けられおり、当該各種センサによって取得された検出情報が上記情報処理装置20において収集される。
【0040】
また、擬似患者体30には、実際の患者に診療を行なう際に想定される患者の動作を再現する駆動部が設けられていることが好ましい。特に、頭部模型40には、眼球を動かしたりまばたきさせたりする等、患者の顔の表情或は反応等を再現する駆動機構が組込まれていることが好ましい。そのための構成例は、例えば、国際公開第2008/023464号に開示されている。そして、上記各種センサ等の出力等に基づいて或は情報処理装置20等を通じた操作指令に応じて前記駆動部を駆動させることにより、頭部模型40を苦痛の表情に変えたり、苦痛を訴えるように腕模型34を動かしたり、発声によって苦痛を訴えたりすることができるようになっている。
【0041】
もっとも、擬似患者体の構成においては、これらの各種センサ及び駆動部が省略された形態としてもよい。
【0042】
また、擬似患者体30を人体に酷似した外観にするため、擬似患者体30には、人工皮膚が被せられていることが好ましい。また、擬似患者体30には、衣服が装着されていることが望ましい。あるいは、衣服を装着しているような外観デザインに設計されていてもよい。
【0043】
診療台14は、基台15とシート部16とを備えている。基台15は床面上に設置され、シート部16を床面の上方位置で支持している。シート部16は、擬似患者体30を着座姿勢又は仰向けに寝かせた姿勢で支持する部分であり、座部シート16aと、背板シート16b、ヘッドレスト16cとを備えている。座部シート16aは、基台15の上端部に支持され、背板シート16bは、座部シート16aの一側に傾動などによる姿勢変更可動に連結されている。ヘッドレスト16cは、背板シート16bの上端部に姿勢変更及び伸縮可能に設けられている。好ましくは、基台15に昇降駆動機構が組込まれ、シート部16が昇降駆動可能とされていることが好ましい。また、好ましくは、シート部16には、背板シート16bの傾き姿勢を変更させる背板シート傾動駆動機構が組込まれ、背板シート16bの傾き姿勢の変更駆動が可能とされていることが好ましい。さらに、好ましくは、シート部16には、ヘッドレスト16cの傾き姿勢を変更させるヘッドレスト傾動駆動機構が組込まれ、ヘッドレスト16cの傾き姿勢が変更駆動可能とされていることが好ましい。これらの昇降駆動機構、背板シート傾動駆動機構及びヘッドレスト傾動駆動機構は、診療台14もしくは診療台14近傍に設けられた操作スイッチ類(フットコントローラ等を含む、図示省略)によって制御されるようにしてもよいし、トレーテーブル12に設けられ操作スイッチ類(図示省略)等によって制御されるようにしてもよい。
【0044】
上記擬似患者体30は、診療台14上に載置状に支持される。この状態で、擬似患者体30には、上記駆動部を動作させるための駆動源の供給路、各種センサからの出力を伝達するための信号線等が接続されている。これらの接続は、診療台14と擬似患者体30との接触部分(例えば、擬似患者体30の臀部相当部位と座部シート16aとの接触部分)で行われてもよいし、或は、擬似患者体30及び診療台14の外周りを経由して行われてもよいし、或は、擬似患者体30及び診療台14とは別に設けた駆動源装置(不図示)に対して接続されてもよい。
【0045】
なお、この診療台14の近傍には、口腔内を濯ぐ際等に給水する給水栓と排唾鉢とを備えるスピットン18が設けられる。また、診療台14には、診療用スタンドポール19が立設されている。診療用スタンドポール19は、途中で分岐しており、それぞれの先端部に無影灯等の照明装置19a、撮像部19b、マイク19c等が取付けられている。勿論、これらのスピットン18及び診療用スタンドポール19は、診療台14の一部や壁面などの他の箇所に設けられてもよいし、また、省略されてもよい。
【0046】
情報処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を備えた一般的なコンピューターで構成されるPC(Personal Computer)21と、液晶モニター等のディスプレイで構成される表示部22と、キーボード、マウス等の入力デバイスで構成される入力部23を備えている。そして、上記入力部23を通じた各種指令が上記PC21に与えられる。また、上記擬似患者体30で取得された各種センサの信号等が情報処理装置20に与えられる。
【0047】
情報処理装置20は、記憶部等に予め格納されたプログラムに従って、実習用の諸処理を実行する。実習用の諸処理は、例えば、上記擬似患者体30、上記診療台14、上記トレーテーブル12、上記診療器具11aなどから与えられる信号、或は、入力部23を通じて与えられる評価情報等に基づいて、評価を演算する処理、その演算処理結果を表示部22に表示する処理、及び、それら医療実習に係る一連の情報を実習の情報として記憶する処理等である。
【0048】
なお、情報処理装置20の一部又は全部が、擬似患者体30、診療台14、及びトレーテーブル12の少なくとも一つに組込まれていてもよい。
【0049】
本実施形態では、上記したように、実習模型装置10が、トレーテーブル12と、擬似患者体30と、擬似患者体30を載置、支持する診療台14と、情報処理装置20とを備える例で説明するが、実習模型装置は、上記構成を全て備えている必要はない。トレーテーブル12と擬似患者体30を載置、支持する診療台14と情報処理装置20のうちの一部又は全部が省略されていてもよい。また、擬似患者体30は、本実施例のような人体全身を擬似的に再現している構成である必要はなく、例えば、頭部を含む上半身を擬似的に再現した構成、頭部及び頸部を擬似的に再現した構成、或は、頭部を擬似的に再現した構成であってもよい。即ち、実習模型装置としては、顎模型90が着脱可能とされる頭部模型40を有する擬似患者体30を備えていればよい。
【0050】
<顎模型の着脱に係る構成>
上記頭部模型40について、顎模型90(図2参照)を着脱可能にする構成を中心に説明する。図2は頭部模型40を示す概略正面図であり、図3は頭部模型40を斜め後ろから見た概略図である。
【0051】
頭部模型40は、上記したように、人体の頭部を模した部分である。人体に酷似した外観にするため、頭部模型40に対して人工皮膚42が被せられ、また、頭髪となるカツラ43が被せられるか若しくは植毛が施されていることが好ましい。カツラ43は、カツラ43の裏面と頭部模型40の頭皮相当部分の外面とに設けられた装着部材によって頭部模型40に装着される。装着部材としては、カツラ43の自重或は頭部模型40の利用者による接触等で不用意にカツラ43がずれたり、外れたりしない程度の取付力でかつ簡単に外れる構成であればよく、ホック、或は、面ファスナー、両面テープ等を用いることができる。なお、カツラ43を用いた場合でも、人工皮膚42の一部(例えば生え際などの部位)に植毛が施されていてもよい。なお、図2では、内部構造を示すため、人工皮膚42を一部省略している。また、頭部模型40の顔面には、目部40a、眉毛部40b、鼻部40c、口部40dが設けられており、その両側方には一対の耳部40eが設けられている。もっとも、目部40a、眉毛部40b、鼻部40c、耳部40eの一部又は全部が省略されていてもよいし、また、人工皮膚42、カツラ43等が省略されていてもよい。頭部模型40は、少なくとも顎模型90が取付けられる部分を有していればよい。頭部模型の形態は、本実施例のような構成の他に、従来型の頭部模型のような樹脂等の部材で少なくとも顔面、或は顔面と頭部の一部が一体的に成形され、顔面部分が可動であるようなものでもよい。
【0052】
この実習模型装置10は、顎模型90を着脱可能に取付けるための構成として、咬合器50と、固定部としての永久磁石57A、57Bと、操作部60A、60Bとを備えている。図4及び図5は主として顎模型90の下顎模型90Aを着脱可能に取付けるための構成部分を示す図であり、図6〜図8は主として顎模型90の上顎模型90Bを着脱可能に取付けるための構成部分を示す図である。なお、以下の説明において、頭部模型40における顔面側を前、後頭部側を後ろとして説明する場合がある。
【0053】
ここで、顎模型90について説明しておくと、顎模型90は、人体の歯、歯肉等を再現した模型であり、ここでは、下顎模型90Aと、上顎模型90Bとを備えている。下顎模型90Aと上顎模型90Bとは、ヒンジ等を介して連結されていてもよいし、別体であってもよい。ここでは、下顎模型90Aと上顎模型90Bとが別体である例で説明する。下顎模型90Aは、主として歯肉部分を再現した半円板状の下顎本体部91Aと、下顎本体部91Aの周囲に弧状に埋設された複数の歯牙92Aとを備える。下顎模型90Aには、永久磁石に対して吸着可能な磁性体(例えば、鉄、ステンレスの一種等)によって形成された磁性板93Aがねじ止等によって取付けられている。ここでは、下顎本体部91Aの下面側中央部に、磁性板93Aが取付けられている。また、上顎模型90Bは、主として歯肉部分を再現した半円板状の上顎本体部91Bと、上顎本体部91Bの周囲に弧状に埋設された複数の歯牙92Bとを備える。上顎模型90Bには、永久磁石に対して吸着可能な磁性体(例えば、鉄、ステンレスの一部等)によって形成された磁性板93Bが取付けられている。ここでは、上顎本体部91Bの上面側中央部に、磁性板93Bが取付けられている。なお、磁性板93A,93Bの取り付け位置は、本実施例のような位置に限られず、少なくとも磁性板93A,93Bがそれぞれ永久磁石57A,57Bに吸着できるような、磁性板と永久磁石とが対応する位置に設けられて顎模型90A,90Bを固定できるような構成であればよい。一般的には、この顎模型90は、医療実習内容等に応じて種々の構成のものに交換される。かかる顎模型90は、実習模型装置10と共に流通する場合もあれば、実習模型装置10はとは別に流通等する場合もある。
【0054】
咬合器50は、上記頭部模型40に組込まれ、人体の顎の位置関係及び動きの少なくとも一方を再現するための部分である。本願において、咬合器とは、上下顎の空間的位置関係および各種の下顎の運動要素の少なくとも一部を再現し得る器械全般を意味し、平線咬合器だけでなく、人工歯の配列、咬合状態を合理的に調整するために用いられるその他の調節性咬合器を含む多種の機能的咬合器を含むものとする。咬合器50は、頭部模型40の一部、例えば頭部模型40の骨組みをなす枠体、に対して固定される構成であってもよいし、当該枠体などの頭部模型40の一部に一体的に構成されていてもよい。また、上顎部分と下顎部分とが相対的に可動であり、開口及び閉口動作を再現出来ることが望ましいが、これは必須ではない。上顎部分と下顎部分について、例えば、開口状態を常時再現するような形態であってもよい。
【0055】
ここでは、咬合器50は、咬合器下フレーム部52Aと、咬合器上フレーム部52Bとを備えている。
【0056】
咬合器下フレーム部52Aは、例えば、金属板等を適宜プレス加工等することによって形成された部材であり、半楕円状の下フレーム本体部53Aと、下フレーム本体部53Aの基端側の両側部に立設された一対の下フレーム側板部54Aとを備えている。下フレーム本体部53Aの一部には、単数あるいは複数の結合部(不図示)が突設され、この結合部を頭部模型40の一部である枠体に対してネジ止めすることによって、咬合器50が頭部模型40に対して固定される。ここでの固定は、嵌合、圧着固定、枠体と咬合器の一体成形構造等その他の構成であってもよく、顎模型90の取外し時に外れない程度の強度のある固定構造であればよい。
【0057】
下フレームにはベース取付部53AH(図7参照)が突設されている。下フレーム本体部53Aの上面には樹脂等によって形成されたベース部材55Aが、ネジ部材53ANで、ベース部材55Aの一部に突設したネジ部53ASにベース取付部53AHを介してネジ止めされることによって取付固定されている。これにより、咬合器50に対してベース部材55Aが固定される。このベース部材55Aの上面の中央に固定部として板状(ここでは、円板状)の永久磁石57Aがねじ止或は接着等によって固定されている。なお、永久磁石57Aは、ベース部材55Aの中央に形成された凹部内に配設され、永久磁石57Aの上面とベース部材55Aとの上面とが面一状となって、下顎模型90Aの支持面を形成している。そして、当該支持面上に下顎模型90Aの下面を接触させるようにして、永久磁石57Aの磁力によって磁性板93Aを吸着すると、下顎模型90Aが咬合器50に対して固定される。なお、上記ベース部材55Aの奥側の縁部の幅方向中間部には切欠部55Aaが形成されている。
【0058】
また、一方(図2及び図4では右側)の下フレーム側板部54Aの下端部の前側に、一対の下フレーム側板部54A間の途中であって上記切欠部55Aaの手前まで延びる下揺動支持片56Aが設けられている。この下揺動支持片56Aに後述する離脱部材64Aが揺動可能に支持される。
【0059】
咬合器上フレーム部52Bは、例えば、金属板等を適宜プレス加工等することによって形成された部材であり、半楕円状の上フレーム本体部53Bと、上フレーム本体部53Bの基端側の両側部に垂下状に設けられた一対の上フレーム側板部54Bとを備えている(図2,図7参照)。一対の上フレーム側板部54Bの下端部は、一対の下フレーム側板部54Aの上端部に支軸部59を介して揺動可能に連結されている。
【0060】
上フレームにはベース取付部53BH(図7参照)が突設されている。上フレーム本体部53Bの下面には樹脂等によって形成されたベース部材55Bが、ネジ部材53BNで、ベース部材55Bの一部に突設したネジ部53BS(図6参照)にベース取付部53BHを介してネジ止めされることによって固定されている(なお、図2では離脱部材64Bを示すため右側部分を省略してある。従って、ネジ部53BSは表れない)。これにより、咬合器50に対してベース部材55Bが固定される。このベース部材55Bの下面の中央に固定部として板状(ここでは、円板状)の永久磁石57Bがねじ止或は接着剤等によって固定されている。なお、永久磁石57Bは、ベース部材55Bの中央に形成された凹部内に配設され、永久磁石57Bの下面とベース部材55Bとの下面とが面一状となって、上顎模型90Bの支持面を形成している。そして、当該支持面下に上顎模型90Bの上面を接触させるようにして、永久磁石57Bの磁力によって磁性板93Bを吸着すると、上顎模型90Bが咬合器50に対して固定される。なお、上記ベース部材55Bの奥側の縁部の幅方向中間部には切欠部55Baが形成されている。
【0061】
また、一方(図2及び図7では右側)の上フレーム側板部54Bの上端部の前側に、一対の上フレーム側板部54B間の途中であって上記切欠部55Baの手前まで延びる上揺動支持片56Bが設けられている。この上揺動支持片56Bに後述する離脱部材64Bが揺動可能に支持される。
【0062】
操作部60A、60Bは、上記頭部模型40の顔面41以外の部位に設けられ、上記固定部としての永久磁石57A、57Bの固定を解除する操作を受けるように構成されている。
【0063】
ここでは、操作部60Aは、下顎模型90Aを固定する永久磁石57Aの固定を解除する操作を受け、操作部60Bは、上顎模型90Bを固定する永久磁石57Bの固定を解除する操作を受ける。本実施形態では、操作部60A、60Bは、頭部模型40の後部であってカツラ43で隠れる部位に設けられている。この操作部60A、60Bが設けられた部位では、頭部模型40に被せられた人工皮膚42に孔42hが形成されている。そして、カツラ43を取外して、もしくは装着させたカツラ43の上から、或は、人工皮膚42とカツラ43との間に手を潜り込ませる等して、孔42hを通じて操作部60A、60Bを操作できるようになっている。なお、人工皮膚42に孔42hが形成されていなくてもよく、人工皮膚42を介して操作部60A、60Bを操作してもよい。
【0064】
ここでは、長尺状部材、より具体的には、細長板状部材に形成された操作レバー61Aの長手方向中間部が、他方側(図2及び図4では左側)の下フレーム側板部54Aに、支持ピン62Aを介して揺動可能に支持されている。支持ピン62Aが操作レバー61Aに対して挿通される孔は、支持ピン62Aの軸部の直径に対して大きく、該ピンのヘッド部の直径に対して小さく設定され、操作レバー61Aが支持ピン62Aに対して姿勢を変更できることが好ましい。これは、操作部60Aを操作して下顎模型90Aを離脱する際に、徒に咬合器50が作用(開閉動作)してしまわないように遊びを持たせるためである。また、咬合器50を開閉動作させた際に、操作レバー61Aが動いてしまわないように遊びを持たせるためである。なお、支持ピン62Aと下フレーム側板部54Aとは螺合によって、或は下フレーム側板部54Aに支持ピン62Aが穿設されることで、相互に固定関係にある。操作レバー61Aは斜め姿勢とされており、操作レバー61Aの一端部は、下フレーム側板部54Aの後方斜め上方に延出しており、操作レバー61Aの他端部は下フレーム側板部54Aの前方斜め下方に向けて(即ち、下顎模型90Aに向けて)延出している。この操作レバー61Aの一端部が頭部模型40の後頭部であって上記孔42hの内側に向けて延出しており、その一端部の先端部に操作部60Aが設けられている。この操作部60Aを操作することによって、操作レバー61Aが上記支持ピン62Aによって支持された軸心X1を中心として揺動操作される。なお、操作レバー61Aは、咬合器上フレーム部52Bに設けられていてもよい。咬合器上フレーム部52Bに操作レバー61Aを設けるのは、咬合器下フレーム52Aに取り付けるのと同じ要領で設けることができる。また、操作レバー61Aの姿勢は本実施例のように操作部60Aを高くした斜め姿勢に限られるものではなく、水平姿勢や、操作部60Aを低くした斜め姿勢に設計してもよい。その場合、操作部を操作できるように操作部60Aの適宜な位置に孔42hを設ければよい。
【0065】
また、長尺状部材、より具体的には、細長板状部材に形成された操作レバー61Bの長手方向中間部が、他方側(図2及び図7では右側)の上フレーム側板部54Bに、支持ピン62Bを介して揺動可能に支持されている。上記と同様の理由から、支持ピン62Bが操作レバー61Bに対して挿通される孔は、支持ピン62Bの軸部の直径に対して大きく、該ピンのヘッド部の直径に対して小さく設定され、操作レバー61Bが支持ピン62Bに対して多少移動できることが好ましい。なお、支持ピン62Bと上フレーム側板部54Bとは螺合によって、或は上フレーム側板部54Bに支持ピン62Bが穿設されることで、相互に固定関係にある。操作レバー61Bは斜め姿勢とされており、操作レバー61Bの一端部は、上フレーム側板部54Bの後方斜め上方(即ち、後頭部に向けて)に延出しており、操作レバー61Bの他端部は上フレーム側板部54Bの前方斜め下方に向けて(即ち、上顎模型90Bに向けて)延出している。この操作レバー61Bの一端部が頭部模型40の後頭部であって上記孔42hの内側に向けて延出しており、この操作レバー61Bの一端部の先端部に操作部60Bが設けられている。この操作部60Bを操作することによって、操作レバー61Bが上記支持ピン62Bによって支持された軸心X3を中心として揺動操作される。なお、操作レバー61Bは、咬合器下フレーム部52Aに設けられていてもよい。咬合器下フレーム部52Aに操作レバー61Bを設けるのは、咬合器上フレーム52Bに取り付けるのと同じ要領で設けることができる。また、操作レバー61Bの姿勢は本実施例のように操作部60Bを高くした斜め姿勢に限られるものではなく、水平姿勢や、操作部60Bを低くした斜め姿勢に設計してもよい。その場合、操作部を操作できるように操作部60Bの適宜な位置に孔42hを設ければよい。
【0066】
上記操作部60A、60Bによる操作によって、固定部による下顎模型90A、上顎模型90Bの固定を解除する構成としては、機械的な構成、電気的な構成等を利用した種々の構成を想定できるが、本実施形態では、離脱部材64A、64Bと、伝達機構部66A、66Bとを備えた構成とされている。
【0067】
まず、下顎模型90Aの固定を解除する構成について説明する。離脱部材64Aは、固定部としての永久磁石57Aから下顎模型90Aを相対的に遠ざける部材である。より具体的には、離脱部材64Aは、例えば、金属板等を適宜プレス加工等することにより形成された部材であり、細長板状の離脱本体部64Aaと、離脱本体部64Aaの一側部から突設された離脱突片64Abとを備えている。離脱本体部64Aaの一端部は、下揺動支持片56Aの先端部に支軸部65Aを介して揺動可能に支持されている。離脱本体部64Aaのうち支軸部65Aが挿通される孔は、支軸部65Aの軸部の直径よりも大きく、該支軸部65Aのヘッド部の直径に対して小さく設定され、離脱部材64Aが支軸部65Aに対して姿勢を変更できることが好ましい。これは、操作部60Aを操作して下顎模型90Aを離脱する際に、徒に咬合器50が作用(開閉動作)してしまわないように遊びを持たせるためである。離脱突片64Abは、離脱本体部64Aaの一側部から上記切欠部55Aaに対応する位置に延設されている。この離脱部材64Aは、上記支軸部65Aによって支持された軸心X2を中心にして、その他端部(図2及び図4では左端部)を相対的に上下に変位させた両位置間で移動可能とされている。離脱本体部64Aaの他端部を相対的に下方に配設した状態が固定維持位置であり、離脱本体部64Aの他端部を相対的に上方に配設した状態が離脱位置である。この遊びの働きについては、後述する上額模型90Bの固定を解除する操作レバー61Bに設けた長孔61Bhの構成についても、同様である。
【0068】
この離脱部材64Aが固定維持位置にある状態では、離脱突片64Abは、切欠部55Aa内に配設され、永久磁石57Aに吸着された下顎模型90Aに対して接触した位置又は下方に離れた位置にある。また、離脱部材64Aが離脱位置にある状態では、離脱突片64Abは、切欠部55Aaから上方に移動してベース部材55Aの上面より上方に突出した位置にある。従って、離脱部材64Aが固定維持位置にある状態では、下顎模型90Aが永久磁石57Aによって吸着された状態が維持される。また、離脱部材64Aが固定維持位置から離脱位置に移動すると、離脱部材64Aの離脱突片64Abが下顎模型90Aの下面を押圧して下顎模型90Aを上方に移動させる。これにより、下顎模型90Aは永久磁石57Aから相対的に遠ざけられ、下顎模型90Aを永久磁石57Aから容易に取外せるようになる。上記押圧の力が磁力の吸着力より大になるとき、ベース部材55Aに対して下顎模型90Aが離脱する。
【0069】
伝達機構部66Aは、上記操作部60Aの動きを、離脱部材64Aを固定維持位置から離脱位置に移動させる力として伝達するように構成されている。
【0070】
より具体的には、伝達機構部66Aは、上記操作レバー61Aと、操作レバー61Aの他端部と離脱部材64Aの他端部とを連結する連結部材67Aとを備えている。連結部材67Aは、ここでは、金属線によって構成されており、その一端部が操作レバー61Aの他端部の連結孔に連結されると共に、その他端部が離脱部材64Aの他端部に形成された連結孔に連結されている。連結部材67Aと操作レバー61A及び離脱部材64Aとの連結は、遊びのある状態、換言すれば、両者の相互姿勢及び位置関係を変更可能な状態で成されていることが好ましい。ここでは、連結部材67Aの端部をC字状に曲げてこれを上記連結孔に引っ掛けることで、を当該遊びのある連結状態としている。連結部材の両末端は、いずれの連結孔からも抜け落ちないように連結孔の直径より大きくなっている。なお、本実施例では連結孔を用いて連結部材67Aを設けているが、これ以外にも、連結部材の先端を、操作レバー61A或は離脱部材64Aと板状部材とで挟み、抜け落ちない程度に板状部材を操作レバー61A或は離脱部材64Aに対してねじ止めする方法や、操作レバー61A或は離脱部材64Aと連結部材67Aとを溶接する方法等を用いてもよい。
【0071】
さて、顎模型90A,90Bの離脱を行う際には、通常、咬合器50を最大開口状態にして離脱作業が行われる。このとき、ベース部材55Aと下顎模型90Aとが固定されている状態(つまり離脱部材64Aが固定維持状態)において、連結部材67Aの長さを設計する。本実施例では、咬合器50が最大開口状態において、連結部材67Aを少し長めに設けてこの余剰分の長さを遊びとしている。操作レバー61Aと離脱部材64Aとを連結状態とする設計では、この遊びが安全機構として機能するので、好ましい。本実施例では、連結部材67Aは、遊びを設けた構成になっている。つまり、操作部60Aを押しても、遊びの働きによって、すぐに離脱部材64Aが作用しないため、例えば不用意に操作部60Aに触れた時に、下顎模型90Aが簡単に外れてしまうことがないのでよい。なお、連結部材67Aの形態は、本実施例の形態に限られず、ベース部材55Aと下顎模型90Aとが固定状態(つまり離脱部材64Aが固定維持状態)において、遊びのない設計としてもよい。この場合、操作部60Aに対する少しの操作で簡単に下顎模型90Aを離脱させ得る。
【0072】
離脱部材64Aが固定維持位置にある状態では、操作レバー61Aの他端部は連結部材67Aを介して下方に引張られた傾斜姿勢となっている(図4参照)。この状態から操作部60Aを押下げると、操作レバー61Aの他端部が上方に持上げられ、この動きが連結部材67Aを介して離脱部材64Aの他端部に伝達される。これにより、離脱部材64Aの他端部が上方に持上げられ、離脱部材64Aが離脱位置に移動するようになっている。これにより、離脱突片64Abが下顎模型90Aを上方に押上げて永久磁石57Aから遠ざける。これにより、下顎模型90Aを容易に取外せるようになる。
【0073】
また、上記状態の後、再度、下顎模型90Aを永久磁石57Aに吸着させると、下顎模型90Aが離脱部材64Aの離脱突片64Abを押下げるので、離脱部材64Aは固定維持位置に位置する状態となる。この状態では、操作レバー61Aの他端部は連結部材67Aを介して下方に引張られた傾斜姿勢に戻る(図4参照)。実習等においては、この状態が維持される。なお、操作レバー61Aの姿勢は本実施例のように操作部60Aのある一端を高くした斜め姿勢に限られるものではなく、水平姿勢や、緩やかな傾斜姿勢や、操作部60Aのある一端側を低くした傾斜姿勢に設計してもよい。
【0074】
次に、上顎模型90Bの固定を解除する構成について説明する。離脱部材64Bは、固定部としての永久磁石57Bから上顎模型90Bを相対的に遠ざける部材である。より具体的には、離脱部材64Bは、例えば、金属板等を適宜プレス加工等することにより形成された部材であり、細長板状の離脱本体部64Baと、離脱本体部64Baの一側部から突設された離脱突片64Bbとを備えている。離脱本体部64Baの長手方向中間部は、上揺動支持片56Bの先端部に支軸部65Bを介して揺動可能に支持されている。上記と同様の理由により、離脱本体部64Baのうち支軸部65Bが挿通される孔は、支軸部65Bの軸部の直径よりも大きく、該支軸部65Aのヘッド部の直径に対して小さく設定され、離脱部材64Bが支軸部65Bに対して姿勢を変更できることが好ましい。なお、支軸部65Bと上揺動支持片56Bとは螺合によって、或は上揺動支持片56Bに支軸部65Bが穿設されることで、相互に固定関係にある。離脱突片64Bbは、離脱本体部64Baの一側部から上記切欠部55Baに対応する位置に延設されている。この離脱部材64Bは、上記支軸部65Bによって支持された軸心X4を中心にして、その一端部を咬合器50の外方に向けると共にその他端部を咬合器50の内方に向けた姿勢で、揺動可能に支持されている。特に、離脱部材64Bを揺動させることにより、離脱部材64Bの一端部(図2、図6及び図7では右端部)が相対的に上下に変位する。離脱本体部64Baの一端部と他端部とを水平状態になるように配設した状態が固定維持位置であり、離脱本体部64Baの他端部を相対的に下方に配設した状態が離脱位置である。
【0075】
この離脱部材64Bが固定維持位置にある状態では、離脱突片64Bbは、切欠部55Ba内に配設され、永久磁石57Bに吸着された上顎模型90Bに対して接触した位置又はベース部材55Bが上フレーム本体部53Bと接触する面側となるやや上方位置にある。また、離脱部材64Bが離脱位置にある状態では、離脱突片64Bbは、切欠部55Baから下方に移動してベース部材55Bの下面より下方に突出した位置にある。従って、離脱部材64Bが固定維持位置にある状態では、上顎模型90Bが永久磁石57Bによって吸着された状態が維持される。また、離脱部材64Bが固定維持位置から離脱位置に移動すると、離脱部材64Bの離脱突片64Bbが上顎模型90Bの上面を押圧して上顎模型90Bを下方に移動させる。これにより、上顎模型90Bは永久磁石57Bから相対的に遠ざけられ、上顎模型90Bを永久磁石57Bから容易に取外せるようになる。上記押圧の力が磁力の吸着力より大になるとき、ベース部材55Bに対して上顎模型90Bが離脱する。
【0076】
伝達機構部66Bは、上記操作部60Bの動きを、離脱部材64Bを固定維持位置から離脱位置に移動させる力として伝達するように構成されている。
【0077】
より具体的には、伝達機構部66Bは、上記操作レバー61Bと、上記離脱部材64Bの一端部に突設された連結ピン67Bとを備えている。操作レバー61Bの他端部にはその長手方向に沿った長孔61Bhが形成されている。また、連結ピン67Bは、離脱部材64Bの一端部から外方に向けて突出する細長棒状部材に形成され、上記長孔61Bhにその長手方向に沿って移動可能に挿通できる形状に形成されている。そして、連結ピン67Bが長孔61Bhに挿通されることによって、操作レバー61Bの他端部と離脱部材64Bの一端部とが相互に傾きを伝達可能な状態で連結されている。
【0078】
離脱部材64Bが固定維持位置にある状態では、操作レバー61Bの他端部は連結ピン67Bを介して下方に押下げられた傾斜姿勢となっている(図6において実線で示す操作レバー61B参照)。この状態では連結ピン67Bは、長孔61Bh内のうち操作レバー61Bの他端部寄りに位置している。この状態から操作部60Bを押下げると、操作レバー61Bの他端部が上方に持上げられる。そして、連結ピン67Bと長孔61Bhとの連結構造によって、連結ピン67Bが長孔61Bh内を操作レバー61Bの中間寄りに移動しつつ、離脱部材64Bの一端部が上方に持上げられる(図6において一点鎖線で示す操作レバー61B参照)。これにより、離脱部材64Bが離脱位置に移動し、離脱突片64Bbが上顎模型90Bを下方に押下げて永久磁石57Bから遠ざける。これにより、上顎模型90Bを容易に取外せるようになる。なお、連結ピン67Bは、この長孔61Bh内の移動において、長孔61Bhから外れることなく上記挿通状態を維持したまま長孔61Bhに沿った移動をするような長さに設計されている。
【0079】
また、上記状態の後、再度、上顎模型90Bを永久磁石57Bに吸着させると、上顎模型90Bが離脱部材64Bの離脱突片64Bbを押上げるので、離脱部材64Bは固定維持位置に位置する状態となる。この状態では、操作レバー61Bの他端部は連結ピン67Bを介して下方に押下げられた傾斜姿勢に戻る(図6において実線で示す操作レバー61B参照)。実習等においては、この状態が維持される。
【0080】
以上のように構成された実習模型装置10によると、永久磁石57A、57Bによる下顎模型90A、上顎模型90Bの固定を解除する操作をうける操作部60A、60Bが頭部模型40の顔面以外の部位、ここでは、後頭部であってカツラ43で隠れる部位に設けられているため、頭部模型40の顔貌をなるべく維持したまま、言い換えると、カツラ、植毛、擬似皮膚などの外観上の細工を取り外すことなく、或は、従来の頭部模型のように顎模型の脱着時に顔面等の該頭部模型の一部を変位・移動させることなく、遠隔的な操作によって、下顎模型90A、上顎模型90Bを容易に取外せる。また、このように下顎模型90A、上顎模型90Bを容易に取外せる結果、頭部模型40或は下顎模型90A、上顎模型90B自体に無理な力が加わり難くなる。よって、各パーツや機構の取り扱いにおいて望ましい。
【0081】
特に、頭部模型40には、その表情或は反応等を再現する駆動機構が組込まれている構成においては、咬合器50の周辺にもそれらの駆動機構が組込まれ、永久磁石57A、57Bに対して手を差込むことが困難となりやすい。また、頭部模型40を分解等すると、分解部品の摩耗等を生じ易い。そこで、上記のように、操作部60A、60Bを頭部模型40の顔面以外の部位に設けることで、下顎模型90A、上顎模型90Bを容易に取外せるというメリットが大きい。なお、表情或は反応等を再現する駆動機構については、本願では詳述しない。図2等においても駆動機構は表されない図面内容となっている。
【0082】
しかも、操作部60A、60Bは、擬似患者体30のうち外部に露出していない箇所、より具体的には、頭部模型40の後部であって、カツラ43の内側に隠れて設けられているため、操作部60A、60Bを目立ち難く、外部から視認し難い箇所に設けることができる。これにより、実習者等による不用意な操作を抑制できる。また、擬似患者体30の外観を損ねることなく、人間に近いリアルな外観を保持できる。
【0083】
なお、操作部60A、60Bは、頭部模型40の後部又はカツラ43で隠れる部位に設けられていればよい。頭部模型40の後部とは、頭部模型40の顔面41以外の部分、即ち、後頭部及び耳の後部、盆の窪等と呼ばれる部位を含む。例えば、操作部60A、60Bは、盆の窪と呼ばれる部位等、頭部模型40の後部であってかつカツラ43で隠れない部位にあってもよい。また、操作部60A、60Bが、カツラ43が省略された頭部模型40の後頭部、耳の後ろ等に設けられていてカツラ43の毛髪が被さることで目隠しされるような形態でもよい。
【0084】
また、操作部60A、60Bは、頭部模型40に設けられているため、操作者は、咬合器50と下顎模型90A、上顎模型90Bとの関係を見ながら、操作部60A、60Bを容易に操作できる。また、操作者は、一連の医療実習の流れの前、最終、後の段階において頭部模型40の近傍に立って諸行為を行うと想定されるところ、操作部60A、60Bは各立ち位置からアクセスし易い位置に設けられているため、操作者は大きな移動を行うことなく、操作部60A、60Bの操作による下顎模型90A、上顎模型90Bの取外しを容易に行える。
【0085】
また、固定部の構成として永久磁石57A、57Bを用い、当該永久磁石57A、57Bの磁力によって下顎模型90A、上顎模型90Bの磁性板93A、93Bを吸着して固定する構成としているため、簡易な構成でかつ簡易な作業で下顎模型90A、上顎模型90Bを固定することができる。なお、固定部の別の構成として永久磁石により吸着可能な磁性体を用い、下顎模型90A、上顎模型90B側に永久磁石を設けてもよい。
【0086】
なお、操作部60A、60Bが、頭部模型40に設けられていることは必須ではなく、胴体模型32と、左右の腕模型34と、左右の脚部模型36等に設けられていてもよい。操作部をこれらの部分に設けた場合には、胴体模型32の背中、脚部模型36のふくらはぎ部分灯、シート部16で隠れる部分、或は、擬似患者体30に装着された衣服で隠れる部分等に設けることが好ましい。
【0087】
また、上記操作部60A、60Bの操作によって固定部としての永久磁石57A、57Bによる固定を解除する構成として、上記離脱部材64A、64B及び伝達機構部66A、66Bを用いた構成を採用しているため、操作部60A、60Bを動かす力によって、離脱部材64A、64Bを移動させて、永久磁石57A、57Bと下顎模型90A、上顎模型90Bとを相対的に遠ざけて、下顎模型90A、上顎模型90Bを取外せる状態にすることができる。このため、他のアクチュエータ等を組込むことなく、簡易な構成で、下顎模型90A、上顎模型90Bを取外せる構成を実現できる。
【0088】
なお、上記実施形態では、離脱部材64A、64Bによって下顎模型90A、上顎模型90Bを移動させているが、咬合器50側に固定部材を移動可能に設け、離脱部材64A、64Bによってこの固定部材を移動させるようにしてもよい。
【0089】
なお、伝達機構部としては、上記実施形態のように、金属線等のワイヤー状部材を用いた構成、連結ピン67Bと長孔61Bhとの挿通構造を用いた構成、他にも板金などの金属の板状部材を操作レバー61A,61Bと離脱部材64A,64Bとの間に介して設けて差動機構を設ける構成や、操作レバー61A,61Bと離脱部材64A,64Bとを互いに相対的に変位可能になるよう直接連設し、その際には該操作レバー61A,61Bと該離脱部材64A,64Bとの間にある程度変形し難いゴムブッシュ等のゴム材をスペーサーとして介在させて連設する構成等が想定される。ゴム材をスペーサーとして用いた構成においては、長尺状部材、より具体的には、細長板状部材に形成された操作レバーの端部に穿設された孔部に、該ゴム材を介して、離脱部材の一端部が挿通保持される。このとき離脱部材の一端部が挿通される操作レバーの孔部の内径は、離脱部材の一端部の直径に対して大きく、該一端部の先端に設けられた保持部(操作レバーの孔部に離脱部材の一端部を挿通保持するための保持部)の直径に対して小さく設定され、操作レバーが離脱部材に対して姿勢を変更できる。より、具体的には操作レバーは、離脱部材に対して揺動可能に支持されている。例えば、上記実施形態において、上記操作レバー61Bの長孔61Bhを、連結ピン67Bの径よりも大きな径の円孔に形成し、当該円孔に環状ゴム材であるゴムブッシュを装着し、このゴムブッシュ内に連結ピン67Bを嵌め込んで保持したような構成である。或は、上記操作レバー61A及び離脱部材64Aについても同様の連設、保持の方式を採用することができる。
【0090】
勿論、下顎模型90Aを取外すための構成として、連結ピン67Bと長孔61Bhとの挿通構造を用いた構成や上記その他の構成を適用してもよいし、上顎模型90Bを取外すための構成として、金属線等のワイヤー状部材を用いた構成や上記その他の構成を適用してもよい。なお、既述のワイヤー状部材は金属に限らない。顎模型90A,90Bの離脱操作に対する耐性があれば種々の紐状部材を用いてもよい。また、既述の実施例ではワイヤー状部材に遊びを設ける構成を挙げたが、この遊びは、頭部模型40の開口状態において最大伸張状態となるように設計したスプリング等のある程度伸縮するばね部材で実現することもできる。
【0091】
特に、操作部を、擬似患者体のうち頭部模型とは異なる部位である胴体模型等に設けた場合には、伝達機構部の少なくとも一部としてある程度曲げ可能なワイヤーを用い、これを擬似患者体の胴体模型に沿って配設したり、複数のリンク機構を適宜連結しつつ胴体模型部分に沿って配設したりするとよい。これにより、操作部を咬合器から離れた場所にも容易に配設できる。
【0092】
また、操作部60A、60Bは、押下げ操作される例で説明したが、押上げ操作される構成、水平方向に押したり引張ったりされる構成、左右方向に捻る等の構成であってもよい。また、操作部が複数のパーツから構成されて複数のパーツを1ケ所に集め握る等の構成であってもよい。
【0093】
また、ここでは、操作部60A、60Bは、別々の箇所に設けられているが、一箇所にまとめて設けられていてもよい。また、実施例では、操作部60A,60Bは、頭部模型40の正面向かって、それぞれ左側と右側に位置するよう設けられているが、左右逆の構成にすることもできる。
【0094】
また、永久磁石57A、57Bと磁性板93A、93Bとは直接接触した状態で相互固定されている必要はない。例えば、上記咬合器50に、口腔粘膜を再現する、口腔の周壁を形成する袋状の部材が装着され、下顎模型90A及び上顎模型90Bが当該袋状の部材を介して永久磁石57A、57Bに吸着される構成であってもよい。
【0095】
{変形例}
上記実施形態を前提として各種変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様構成部分については同一符合を付してその説明を省略する。なお、下記の各変形例では、下顎模型に関する変形例を中心に説明するが、上顎模型についても同様の変形例を採用することができる。
【0096】
まず、下顎模型90Aを固定する固定部は、上記のように永久磁石57A、57Bを用いた構成に限られない。
【0097】
例えば、図9に示す第1変形例では、固定部として、下顎模型190Aに対して係止可能な係止部材154を用いている。
【0098】
より具体的には、まず、下顎模型190Aには、磁性板93Aが省略されている。下顎模型190Aのうち歯牙92Aが設けられた側とは反対側の面に、固定突部194Aが突設されている。固定突部194Aにはその径方向に沿って係止孔部194Ahが形成されている。
【0099】
また、ベース部材155Aには、永久磁石57Aが省略されている。ベース部材155Aには、上記固定突部194Aを嵌め込み可能な嵌め込み孔部155Ahが形成されている。また、ベース部材155Aには、その外周囲から嵌め込み孔部155hを越えるように形成されたスライド支持孔部156Ahが形成されている。
【0100】
係止部材154は、上記スライド支持孔部156Ahに沿って移動可能な長尺部材であり、好ましくは、係止部材154の先端部はその先端側に向けて徐々に細くなっている。係止部材154は、スライド支持孔部156Ah内において上記嵌め込み孔部155Ahを横切るように配設された固定位置と、当該嵌め込み孔部155Ahから退避した固定解除位置との間で移動可能に配設されている。
【0101】
そして、係止部材154を嵌め込み孔部155hから退避移動させて固定解除位置に配設した状態で、固定突部194Aを嵌め込み孔部155Ahに嵌め込むように、下顎模型190Aをベース部材155A上に配設する。この状態で、係止孔部194Ahは、スライド支持孔部156Ahの延長上に位置するように形成されている。そして、係止部材154を嵌め込み孔部155Ahの奥に挿入して固定位置に移動させると、係止部材154の基端部及び先端部がスライド支持孔部156Ah内に配設された状態で、係止部材154が下顎模型90Aの固定突部194Aの係止孔部194Ahにも係止する。これにより、固定突部194Aが嵌め込み孔部155Ahに抜止め状に嵌め込まれた状態となり、下顎模型190Aが咬合器50に対して固定される。また、この状態で、係止部材154を嵌め込み孔部155hから退避移動させると、係止部材154と下顎模型90Aの固定突部194Aの係止孔部194Ahとの係止状態が解除され、固定突部194Aを嵌め込み孔部155Ahから抜いて、下顎模型90Aを取外せるようになる。つまり、本変形例では、係止部材154を閂の要領で移動させて、固定位置、固定解除位置に変位することで下顎模型90Aを固定したり取り外したりすることができる。
【0102】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、操作部の動きを、伝達機構部を介して係止部材154を固定位置と固定解除位置との間で移動させる力として伝達することによって、下顎模型190Aの固定及び取外し可能な状態にすることができる。伝達機構部としては、種々のリンク構成等を考えることができるが、例えば、上記離脱部材64Aに相当する部材に、上下方向に沿って延びかつベース部材155A側に向けて延びる作動片165Aを延設し、この作動片165Aに斜め方向に沿って延びる長孔165Ahを形成すると共に、上記係止部材154に当該長孔165Ahに移動可能に挿通する突部154aを形成し、作動片165Aが上下に変位することで、突部154aが長孔165Ahを移動することで、上記固定位置と固定解除位置との間で移動する構成等を採用することができる。
【0103】
本変形例によっても、永久磁石を用いることによる効果を除いて、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
また、操作部60A、60Bによる操作に応じて、固定部による下顎模型90Aの固定を解除する構成は、上記実施形態のように、操作部60A、60Bに対する操作力を伝達することによって解除する構成に限られない。
【0105】
例えば、図10に示す第2変形例では、上記伝達機構部66Aを省略し、代りに、離脱部材64Aを固定維持位置から離脱位置に移動させる駆動機構部266Aを備えている。駆動機構部266Aは、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁アクチュエータ等のアクチュエータであり、進退駆動可能なロッド部266Aaを有している。この駆動機構部266Aは、例えば、一方側の下フレーム側板部54Aに取付けられており、そのロッド部266Aaの先端部が上記実施形態と同様の連結部材267Aを介して離脱部材64Aの他端部に連結されている。また、この変形例では、駆動機構部266Aは駆動回路268Aによって駆動され、駆動回路268Aは操作部としてのスイッチ部269Aの操作に応じた電気信号である操作信号に基づいて、駆動機構部266Aのロッド部266Aaを進退駆動するようになっている。
【0106】
この変形例では、スイッチ部269Aを操作(例えば、オン操作)すると、スイッチ部269Aへの操作に応じた操作信号に基づいて、駆動回路268Aが駆動機構部266Aのロッド部266Aaを退避させ、離脱部材64Aの他端部を上方に持上げる。これにより、上記実施形態と同様に、離脱部材64Aが固定維持位置から離脱位置に移動し、下顎模型90Aが永久磁石57Aに対して持上げられ、当該下顎模型90Aを容易に取外せるようになる。また、スイッチ部269Aを操作(例えば、オフ操作)すると、当該操作に応じた操作信号に基づいて、駆動回路268Aが駆動機構部266Aのロッド部266Aaを進出させ、離脱部材64Aの他端部を下方に押下げる。これにより、上記実施形態と同様に、離脱部材64Aが離脱位置から固定維持位置に移動し、下顎模型90Aが永久磁石57Aに吸着固定された状態が維持されるようになっている。
【0107】
この第2変形例によると、操作部としてのスイッチ部269Aへの操作に応じた操作信号に基づいて、駆動回路268Aが、離脱部材64Aを固定維持位置から離脱位置に移動させることができる。駆動回路268Aとスイッチ部269Aとの間、或は、駆動回路268Aと駆動回路268Aとの間は、電線等の電気配線材によって接続され、かかる電気配線材は、擬似患者体30、さらには、擬似患者体30とトレーテーブル12、診療台14或は情報処理装置20との間に容易に配線することができる。また、駆動回路268Aとスイッチ部269Aとの間は、無線通信によって操作信号を伝達することもできる。従って、操作部としてのスイッチ部269Aの設置自由度に優れる。例えば、かかるスイッチ部269Aは、上記実施形態で述べたように、擬似患者体30における顔面41以外の各部の他、トレーテーブル12、診療台14或は情報処理装置20に設けることも可能である。また、スイッチ部269Aは、情報処理装置20等の制御部を介して駆動機構部266Aを駆動させるものであってもよく、この場合、情報処理装置20においてキーボード、マウス等の入力デバイスで構成される入力部23をスイッチ部として用いてもよい。
【0108】
なお、この第2変形例のように、スイッチ部の操作に応じて、アクチュエータとしての駆動機構部を駆動させて下顎模型90Aの固定を解除する構成は、上記第1変形例にも適用できる。この場合、駆動機構部は、上記係止部材154を固定位置から固定解除位置に移動させるように設ければよい。
【0109】
また、図11に示す第3変形例では、上記永久磁石57Aが省略され、ベース部材55Aに対応するベース部材355Aに、電磁石354Aが組込まれている。この電磁石354Aとしては、コア周りにコイル線が巻回された一般的な構成のものを用いることができる。電磁石354Aは、駆動回路368Aによって励磁状態及び非励磁状態に切替え駆動され、駆動回路368Aは操作部としてのスイッチ部369Aの操作に応じた電気信号である操作信号に基づいて、電磁石354Aを励磁状態及び非励磁状態に切替え駆動する。
【0110】
この第3変形例では、スイッチ部369Aを操作(例えば、オン操作)すると、電磁石354Aが励磁状態を維持し、下顎模型90Aを吸着固定する状態が維持される。また、スイッチ部369Aを操作(例えば、オフ操作)すると、電磁石354Aが非励磁状態に切り替り、下顎模型90Aを容易に取外せるようになる。
【0111】
この第3変形例によると、上記第2変形例で述べたのと同様の理由により、スイッチ部369Aの設置自由度に優れる。また、下顎模型90Aを磁力によって電磁石354Aに吸着固定することができるので、下顎模型90Aを容易に取付固定し、また、容易に取付けることができる。
【0112】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0113】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0114】
10 実習模型装置
30 擬似患者体
40 頭部模型
41 顔面
43 カツラ
50 咬合器
52A 咬合器下フレーム部
52B 咬合器上フレーム部
57A、57B 永久磁石
60A、60B 操作部
64A、64B 離脱部材
66A、66B 伝達機構部
67A 連結部材
67B 連結ピン
90 顎模型
90A 下顎模型
90B 上顎模型
93A、93B 磁性板
154 係止部材
155A ベース部材
156Ah スライド支持孔部
194A 固定突部
194Ah 係止孔部
266A 駆動機構部
269A スイッチ部
354A 電磁石
369A スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎模型を着脱可能な実習模型装置であって、
頭部模型を有する擬似患者体と、
前記頭部模型に組込まれた咬合器と、
前記咬合器に対して前記顎模型を固定する固定部と、
前記頭部模型の顔面以外の部位に設けられ、前記固定部による前記顎模型の固定を解除する操作を受ける操作部と、
を備える実習模型装置。
【請求項2】
請求項1記載の実習模型装置であって、
前記操作部は、前記擬似患者体のうち外部に露出していない箇所に設けられている、実習模型装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の実習模型装置であって、
前記操作部は、前記頭部模型に設けられている、実習模型装置。
【請求項4】
請求項3記載の実習模型装置であって、
前記操作部は、前記頭部模型の後部又はカツラで隠れる部位に設けられている、実習模型装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の実習模型装置であって、
前記固定部は、永久磁石、又は、永久磁石に対して吸着可能な磁性体である、実習模型装置。
【請求項6】
請求項5記載の実習模型装置であって、
固定維持位置と離脱位置との間で移動可能に配設され、前記固定維持位置から前記離脱位置への移動により、前記固定部と前記顎模型とを相対的に遠ざける離脱部材と、
前記操作部の動きを、前記離脱部材を前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させる力として伝達する伝達機構部と、
を備える実習模型装置。
【請求項7】
請求項5記載の実習模型装置であって、
固定維持位置と離脱位置との間で移動可能に配設され、前記固定維持位置から前記離脱位置への移動により、前記固定部と前記顎模型とを相対的に遠ざける離脱部材と、
前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、前記離脱部材を、前記固定維持位置から前記離脱位置に移動させる駆動機構部と、
を備える実習模型装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の実習模型装置であって、
前記固定部は、前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、励磁状態及び非励磁状態との間で切換えられる電磁石である、実習模型装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の実習模型装置であって、
前記固定部は、固定位置と固定解除位置との間で移動可能に配設され、前記固定位置で前記顎模型に係止して前記咬合器に対して前記顎模型を固定し、前記固定解除位置で前記顎模型に対する係止が解除されて前記咬合器に対して前記顎模型が取外し可能になる係止部材である、実習模型装置。
【請求項10】
請求項9記載の実習模型装置であって、
前記操作部の動きを、前記係止部材を前記固定位置から前記固定解除位置に移動させる力として伝達する伝達機構部と、
を備える実習模型装置。
【請求項11】
請求項9記載の実習模型装置であって、
前記操作部への操作に応じた操作信号に基づいて、前記係止部材を、前記固定位置から前記固定解除位置に移動させる駆動機構部と、
を備える実習模型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−99408(P2013−99408A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244374(P2011−244374)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、「歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ」に関する委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】