説明

実装部品付きセンサシート及びその製造方法

【課題】小型化を図ることができ、誤検出やノイズ障害の発生を抑制し、しかも、センサシートに電子部品を実装することのできる実装部品付きセンサシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】静電容量型のセンサシート1の導電部2である導電接続ライン10の末端部11にハンダを塗布し、このハンダに電子部品30のリードフレーム31を配置し、これらハンダと電子部品30のリードフレーム31との接触領域にレーザを照射することにより、基材層3のテール4における導電接続ライン10の末端部11に電子部品30をハンダ付けで直接実装する。基材層3のテール4に電子部品30を直接実装するので、テール4や導電接続ライン10の末端部11を延長して別体の電子部品30に接続したり、実装する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器、情報機器、自動車機器等に使用される実装部品付きセンサシート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、直感的な入力操作が可能で薄型化に適する静電容量型のセンサシートが開発され、製造されている。この種の静電容量型のセンサシートは、図示しないが、可撓性を有する基材層と、この基材層表面のXY方向に複数のX軸とY軸とがそれぞれ並ぶ電極パターン層と、この電極パターン層のX軸とY軸とにそれぞれ接続される複数本の導電接続ラインとを備え、電極パターン層と接触する指との間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出して入力操作を可能とする(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
基材層は、例えば絶縁性を有するポリイミド製の薄いフィルムからなり、周縁部に長い平面矩形のテールが延出形成されており、このテールが電子部品に対する接続部とされる。また、複数本の導電接続ラインは、それぞれ細長い線条に形成され、X軸やY軸の端部に先端部が接続されて基材層の周縁部に直線的あるいは屈曲して引き回されており、末端部がテールに一列に配列されて電気コネクタ等からなる電子部品にアナログ信号用の接続ラインとして電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−187854号公報
【特許文献2】特開2005−283231号公報
【特許文献3】特開2008−209384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における静電容量型のセンサシートは、以上のように構成され、基材層のテールと共に各導電接続ラインを長く延長形成して電子部品に接続しなければならないので、導電接続ライン用のスペース確保のため、小型化を図ることができず、しかも、長い導電接続ラインに指が誤って接近すると、誤検出やノイズ障害が生じるという問題がある。
【0006】
また近年、センサシートに電子部品をプリント回路板のように実装したいという要望があるが、この要望を満たすためには、センサシートの導電接続ラインにハンダペーストを塗布して電子部品を配置し、これらをハンダリフロー装置にセットしてセンサシートの導電接続ラインに電子部品を溶融したハンダにより接続固定し、その後、冷却して電子部品を実装する必要がある。しかしながら、ハンダリフロー装置にセンサシート全体をセットすると、センサシートの基材層が樹脂フィルムからなるので、基材層が熱収縮等して寸法安定性が悪化し、実用に適さないおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、小型化を図ることができ、誤検出やノイズ障害の発生を抑制し、しかも、センサシートに電子部品を実装することのできる実装部品付きセンサシート及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、静電容量型のセンサシートの導電部にハンダを塗布し、このハンダに電子部品の接続部を接触させ、これらハンダと電子部品の接続部との接触領域にレーザを照射することにより、センサシートの導電部に電子部品を実装したことを特徴としている。
【0009】
なお、センサシートは、可撓性を有する樹脂フィルム製の基材層と、この基材層のXY方向にX軸とY軸とが並ぶ電極パターン層と、この電極パターン層のX軸とY軸とにそれぞれ接続されて基材層の周縁部に伸びる複数の導電接続ラインとを含み、この複数の導電接続ラインの一部を導電部とすることができる。
また、ハンダは、高温型でも良いが、基材層の熱収縮や熱変形等の熱の影響、取り扱いや実装作業の作業性を考慮すると、低温型が好ましい。
【0010】
また、本発明においては上記課題を解決するため、静電容量型のセンサシートの導電部にハンダを塗布し、その後、ハンダに電子部品の接続部を配置し、これらハンダと電子部品の接続部との接触領域にレーザを照射することにより、センサシートの導電部に電子部品を実装することを特徴としている。
なお、レーザを照射する際、電子部品に所定の圧力を作用させてセンサシートに押し下げるようにすることが好ましい。
【0011】
ここで、特許請求の範囲におけるセンサシートの基材層、電極パターン層、導電接続ラインには、必要に応じて光透過性等を付与することができる。このセンサシートには、基材層と電極パターン層の少なくともいずれかに積層されて電極パターン層を被覆する保護層を含むことができる。保護層には、加飾、模様、光透過性等を付与することが可能である。また、導電部には、少なくとも電極パターン層や複数の導電接続ラインの一部が単数複数含まれる。電子部品としては、少なくともLSI、ICチップ、FET、接続用の電気コネクタ等からなる表面実装部品、抵抗素子、キャパシタ素子等が用いられる。
【0012】
本発明によれば、センサシートの導電部に電子部品を実装する場合には、導電部にハンダを塗布し、このハンダに電子部品のリードフレームやリード線等からなる接続部を接触させ、これらハンダと電子部品の接続部との接触領域にレーザを照射する。このレーザ照射により、ハンダが溶融し、導電部に電子部品が強固に実装される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサシートの小型化を図ることができ、誤検出やノイズ障害の発生を抑制し、しかも、センサシートに電子部品を実装することができるという効果がある。
【0014】
また、請求項2記載の発明によれば、レーザの部分的な照射により、導電部のみに電子部品を実装することができるので、ハンダリフロー装置にセンサシートの全体をセットする必要がない。したがって、センサシートの基材層等が加熱により収縮、変色し、寸法安定性が悪化するのを防ぐことができる。また、ハンダリフロー装置にセンサシートを通す必要がないので、熱による基材層の劣化を最小限に抑制することができる。したがって、基材層として、耐熱性に優れるポリイミド製のフィルムではなく、耐熱性には劣るが透明性に富む安価なポリエチレンテレフタレート製のフィルムを使用することができる。
【0015】
さらに、複数の導電接続ラインの一部を導電部として電子部品をハンダ付けして実装することができるので、電子部品に接続するために導電接続ラインを延長する必要がなく、導電接続ラインの短縮化が期待できる。したがって、長い導電接続ラインに指等の導体が誤って接近することにより、センサシートに誤検出やノイズ障害が生じるのを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実装部品付きセンサシート及びその製造方法の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る実装部品付きセンサシート及びその製造方法の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における実装部品付きセンサシートは、図1や図2に示すように、静電容量型のセンサシート1の導電部2である導電接続ライン10の一部にハンダ20を塗布し、このハンダ20上に電子部品30を配置し、これらハンダ20と電子部品30との接触領域にレーザ照射装置からレーザを照射することにより、センサシート1の導電接続ライン10に電子部品30を直接実装するようにしている。
【0018】
静電容量型のセンサシート1は、図1に示すように、例えば可撓性や絶縁性を有する樹脂フィルム製の基材層3と、この基材層3の表面XY方向に複数本のX軸6とY軸8とが並ぶ電極パターン層5と、この電極パターン層5のX軸6とY軸8とにそれぞれ接続されて基材層3の周縁部に伸長する複数本の導電接続ライン10と、基材層3の表面に積層されて電極パターン層5と複数本の導電接続ライン10の大部分とを被覆する保護層12とを多層構造に備え、複数本の導電接続ライン10の保護層12から露出した一部が導電部2とされる。
【0019】
基材層3は、例えば強度や寸法安定性等に優れる平面矩形の薄いポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、周縁部に平面矩形のテール4が突出形成されており、このテール4に複数本の導電接続ライン10の一部が集約して配列される。また、電極パターン層5は、導電性の各種材料を使用して形成される。具体的には、スクリーン印刷法に適す銀粒子含有の導電性インクや導電性ポリマー、エッチング法に適す銅箔等が使用される。
【0020】
電極パターン層5のX軸6は、基材層3の表面Y方向に複数本が所定のピッチで配列され、軸方向に複数のX電極7が所定のピッチで配列されており、各X電極7が平面菱形に形成されて指のタッチ操作の対象となる。また、Y軸8は、基材層3の表面X方向に複数本が所定のピッチで配列され、軸方向に複数のY電極9が所定のピッチで配列されており、各Y電極9がX電極7に僅かな間隙をおいて隣接する平面菱形に形成されて指のタッチ操作の対象となる。X軸6とY軸8との交差部は、短絡防止の観点からジャンパー構造に形成される。
【0021】
複数本の導電接続ライン10は、電極パターン層5と同様、導電性の材料を使用して形成される。各導電接続ライン10は、細い線条に形成され、X電極7やY電極9の端部に先端部が接続されて基材層3の周縁部に直線的あるいは屈曲して引き回されており、短い末端部11がテール4の表面に配列されて電子部品30にアナログ信号用の接続ラインとして電気的に接続される。この導電接続ライン10の末端部11は、図2に示すように、導電部2としてハンダ20がスクリーン印刷法等により塗布される。
【0022】
保護層12は、例えばポリエチレンテレフタレートやABS樹脂製の透明フィルムからなり、電極パターン層5と各導電接続ライン10の末端部11以外とを被覆し、これらに対する指の接触で損傷が生じるのを有効に防止する。
ハンダ20は、特に限定されるものではないが、例えばBi、Sn、Pb、Cd、Inを含有するタイプがあげられる。このハンダ20は、電子部品30等に対する熱の悪影響を考慮すると、融点が200℃以下、好ましくは融点が140℃以下の低温型の採用が最適である。
【0023】
電子部品30は、図1や図2に示すように、例えば表面実装型のICチップからなり、複数のリードフレーム31が複数本の導電接続ライン10の末端部11にハンダ20を介しそれぞれ実装固定される。この電子部品30は、図示しない外部の電子回路にリード32を介して電気的に接続される。
レーザ照射装置は、限定されるものではないが、例えば少ないエネルギーで加工可能なYAGレーザ、高エネルギー密度が得られる安価なCO2レーザ、半導体レーザ等を照射する装置を使用することができる。
【0024】
上記構成において、センサシート1の導電接続ライン10に電子部品30を実装する場合には、基材層3のテール4における導電接続ライン10の末端部11にハンダ20を塗布した後、このハンダ20上に電子部品30のリードフレーム31を配置し、これらハンダ20と電子部品30のリードフレーム31との接触領域にレーザ照射装置から矢印で示すレーザを直接照射する。
【0025】
この際、高温型のハンダではなく、例えば140℃以下の熱で溶融する低温型のハンダ20を塗布すれば、センサシート1や電子部品30が高温で損傷するのを有効に防止することができる。また図2に示すように、レーザの照射時に電子部品30の表面中央部付近に昇降可能な押圧ロッド40を適宜接触させ、電子部品30が損傷しないよう圧下すれば、溶融したハンダ20に対する一部のリードフレーム31の沈下で電子部品30が傾くのを抑制することができ、ハンダ20に対する電子部品30全体の姿勢を安定させることができる。
【0026】
ハンダ20と電子部品30のリードフレーム31との接触領域にレーザが照射されると、ハンダ20が溶融するとともに、周囲に熱を伝導し、導電接続ライン10の末端部11に電子部品30が強固に実装される。
【0027】
上記構成によれば、基材層3のテール4に電子部品30を直接実装するので、基材層3のテール4や導電接続ライン10の末端部11を延長して別体の電子部品30に接続したり、実装する必要が全くない。したがって、テール4を延長して導電接続ライン10用のスペースを確保する必要がなく、センサシート1の小型化を図ることができる。また、導電接続ライン10の短縮に伴い、導電接続ライン10の末端部11に指が誤って接近することにより、誤検出やノイズ障害が生じるのを有効に抑制することができる。
【0028】
また、係る構成にすることにより、電子部品30の外部電子回路に対するリード32の本数を従来よりも削減(例えば、5本から3本)することができるので、構成の簡素化が期待できる。また、レーザのスポット溶接により、導電接続ライン10のみに電子部品30を短時間で実装することができるので、ハンダリフロー装置にセンサシート1の全体をセットする手間を省くことが可能になる。したがって、センサシート1の基材層3等が加熱により収縮、変色し、寸法安定性が悪化するのを有効に防止することが可能になる。
【0029】
さらに、ハンダリフロー装置にセンサシート1を通す必要がないので、熱による基材層3の劣化を最小限に抑制することが可能になる。したがって、基材層3として、耐熱性に優れるポリイミド製のフィルムではなく、耐熱性には劣るものの、透明性等に優れる低コストのポリエチレンテレフタレート製のフィルムを活用することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では導電部2として、導電接続ライン10の末端部11を示したが、何ら限定されるものではなく、X軸6やY軸8の一部、あるいは導電接続ライン10の末端部11以外の部分でも良い。また、X電極7やY電極9は、平面円形、矩形、多角形等でも良い。また、上記実施形態では基材層3の表面に電極パターン層5を積層したが、基材層3の表面や表裏面に上下一対の積層フィルムを積層し、一の積層フィルムに複数本のX軸6を配列形成し、他の一の積層フィルムに複数本のY軸8を配列形成しても良い。
【0031】
さらに、ハンダ20に電子部品30のリードフレーム31を配置した後、ハンダ20と電子部品30のリードフレーム31との接触領域にレーザを照射しても良いが、ハンダ20にリードフレーム31を配置すると同時に、ハンダ20とリードフレーム31との接触領域にレーザを照射することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る実装部品付きセンサシート及びその製造方法は、家電製品、携帯機器、ゲーム機器、情報機器、コンピュータ機器、自動車機器、ディスプレイ装置等の分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 センサシート
2 導電部
3 基材層
4 テール
5 電極パターン層
6 X軸
7 X電極
8 Y軸
9 Y電極
10 導電接続ライン
11 末端部(導電部)
20 ハンダ
30 電子部品
31 リードフレーム(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型のセンサシートの導電部にハンダを塗布し、このハンダに電子部品の接続部を接触させ、これらハンダと電子部品の接続部との接触領域にレーザを照射することにより、センサシートの導電部に電子部品を実装したことを特徴とする実装部品付きセンサシート。
【請求項2】
センサシートは、可撓性を有する樹脂フィルム製の基材層と、この基材層のXY方向にX軸とY軸とが並ぶ電極パターン層と、この電極パターン層のX軸とY軸とにそれぞれ接続されて基材層の周縁部に伸びる複数の導電接続ラインとを含み、この複数の導電接続ラインの一部を導電部とした請求項1記載の実装部品付きセンサシート。
【請求項3】
静電容量型のセンサシートの導電部にハンダを塗布し、その後、ハンダに電子部品の接続部を配置し、これらハンダと電子部品の接続部との接触領域にレーザを照射することにより、センサシートの導電部に電子部品を実装することを特徴とする実装部品付きセンサシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−33625(P2012−33625A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170783(P2010−170783)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】