説明

実装部品

【課題】基板接続部が小型化された際にもメッキ状態の半田接触面をより大きくでき、半田接続後の保持力低下を抑えることができる実装部品を提供する。
【解決手段】シールドコネクタは、メッキ処理が施された金属板を折り曲げてなり、回路基板55に形成された接続孔63に挿入されて、回路基板55に半田接続される基板接続部61を有するシェル15を備える。基板接続部61が、金属板を板厚方向に重ね合わせた面に半田が溜まる貫通空間65を形成するように構成されている。貫通空間65は、回路基板55の基板面67に対して平行に形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に半田付けされる実装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属板を折り曲げてなるシェルと、シェルの内側に包囲して配置される端子金具と、端子金具及びシェルが組み付けられる絶縁ハウジングとを備えたコネクタが知られている。このコネクタは、導電性の金属板を箱型に折り曲げてなるシェルを備え、このシェルが、プリント回路基板に形成された接続孔に挿入されて半田接続される脚片状の基板接続部を有する。
ところで、シェルを構成する金属板にはメッキ処理が施されているが、プレスによって打ち抜かれる際に、無メッキ状態の破断面が余儀なく露出されるという事情がある。しかし、かかる無メッキ状態の破断面には半田が付着し難いため、接続信頼性が低下する。
【0003】
この不具合を解消するため、図8に示すように、シェル509に設けられる基板接続部511が、側板部513の下端に連なりその板面に沿って垂下される首部515と、首部515の下端に連なり所定形状に折り曲げられる折り曲げ部517とを備えているコネクタが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
この折り曲げ部517は、首部515と同軸で連続して垂下する基板部519と、基板部519の前後方向の両端から内側へ向けて略直角に折り曲げられる一対の突出板部521と、両突出板部の曲げ端(内端)から内側へ向けて略直角に折り曲げられ、その曲げ端同士を基板接続部511の前後方向中央にて互いに突き合わせる一対の対向板部523とから一体に構成され、全体として4角が丸みを帯びた略角筒状に形成されている。
【0005】
折り曲げ部517の内部は、断面方形状の中空部525とされている。このように、基板接続部511は、金属板の破断面が隠れるように折り曲げられた形状をなしている。これにより、無メッキ状態であるために半田濡れ性が悪い金属板の破断面同士を突き合わせて露出させないようにして、半田付け部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−61849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、電子機器の小型化、軽量化、薄型化に伴い、回路基板に半田付けされる実装部品を小型化するにあたり、基板接続部も小さくする要請が高まっている。そのため、上述したコネクタの小型化に伴い図8に示した基板接続部511を小さくすると、半田が付着する基板接続部511の表面積が狭くなって半田接触面が小さくなるので、半田接続後の保持力が低下して接続信頼性が確保し難いという問題が生じた。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、基板接続部が小型化された際にもメッキ状態の半田接触面をより大きくでき、半田接続後の保持力低下を抑えることができる実装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) メッキ処理が施された金属板を折り曲げてなり、回路基板に形成された接続孔に挿入されて、前記回路基板に半田接続される基板接続部を有するシェルを備えた実装部品であって、前記基板接続部が、前記金属板を板厚方向に重ね合わせた面に半田が溜まる貫通空間を形成するように構成されていることを特徴とする実装部品。
【0010】
上記(1)の構成の実装部品によれば、基板接続部に形成される貫通空間は、メッキ処理の施された金属板メッキ面に包囲されて形成される。即ち、貫通空間の空間内壁面は、全て半田濡れ性が良好な金属板メッキ面となる。
そこで、回路基板の接続孔に挿入された基板接続部に半田付けを行う際、溶融半田は基板接続部の外表面に付着するとともに、半田濡れ性が良好な貫通空間に吸い込まれて溜まることとなり、基板接続部が小型化された際にもメッキ状態の半田接触面を大きくして半田接続後の保持力を向上できる。
【0011】
(2) 上記(1)の実装部品であって、前記貫通空間が前記回路基板の基板面に対して平行に形成されていることを特徴とする実装部品。
【0012】
上記(2)の構成の実装部品によれば、回路基板の接続孔内及び下面(半田付け面)に付着して固化した半田は、基板接続部の貫通空間を貫通して固着する。即ち、基板接続部が、貫通空間を貫通した閂状半田によって回路基板に固定されることにより、基板面の直交方向における基板接続部の半田付け強度がさらに向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る実装部品によれば、基板接続部が小型化された際にもメッキ状態の半田接触面をより大きくでき、半田接続後の保持力低下を抑えることができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る実装部品の分解斜視図である。
【図2】図1に示した実装部品の組立体を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】(a)は長手方向中間部で折り返す基板接続部の展開例を示す斜視図、(b)は幅方向中間部で折り返す基板接続部の展開例を示す斜視図、(c)は二片からなる基板接続部の例を示す斜視図である。
【図5】図1に示した実装部品を回路基板に装着した状態を示す側面図である。
【図6】図5のB−B断面矢視図である。
【図7】図6のC部拡大図である。
【図8】金属板の破断面が隠れるように折り曲げた基板接続部をシェルに設けた従来コネクタの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る実装部品を詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る実装部品としてのシールドコネクタ11は、例えばデジタルカメラや携帯電話のレセプタクルコネクタとして好適に用いることができる。
図1及び図2に示すように、シールドコネクタ11は、絶縁ハウジング13(インシュレータとも呼ばれる)と、シェル15と、レセプタクル側コンタクト17と、を備える。このレセプタクル側コンタクト17は、ロアー端子19と、アッパー端子21とからなる。
【0017】
上記シールドコネクタ11は、図示しない導電性のシェルを有するプラグコネクタと接続される。シールドコネクタ11とプラグコネクタが接続されると、レセプタクル側コンタクト17がプラグコネクタのプラグ側コンタクトと電気的に接続され、これらがEMI(電磁妨害雑音)対策として、導電性のシールドコネクタ11のシェル15とプラグコネクタのシェルとによって覆われる。
【0018】
絶縁ハウジング13は、合成樹脂材により一体成形されてなり、基部18から前方に向かって端子支持部20が突出される。端子支持部20は、上下両面にアッパー端子21及びロアー端子19を整列配置する。シールドコネクタ11は、シェル15と絶縁ハウジング13とによってコネクタ嵌合空間23を形成すると共に、シェル15の端部がプラグ挿入口25となる。
【0019】
シェル15は、シェル本体27と、係合支持部材29と、をからなる。シェル本体27は、導電材料である金属板を板金加工して製作され、図1に示すように、前部をプラグ挿入口25として開口させた扁平な角筒状に形成される。なお、このシェル15を打ち抜き、折り曲げ加工する金属板には、半田の濡れ性を向上させるメッキ処理が予め施されている。
シェル本体27の本体側板部31には前後に長い係止穴33が形成される。係止穴33の前方には係止爪35が形成される。これら係止穴33、係止爪35は、係合支持部材29をシェル本体27に係合するためのものとなる。
【0020】
係合支持部材29は、両側の本体側板部31のそれぞれから後方へ突出され、これらを前方へ180°折り曲げられて配置される。これにより、係合支持部材29は、シェル本体27の両側面に設けられる。それぞれの係合支持部材29には、コ字状に打ち抜いた枠状部37の内側に、弾性係合板39が形成される。弾性係合板39は、シェル本体27の係止穴33から内方に配置され、プラグ挿入口25から進入するプラグコネクタの両側面を挟持する。枠状部37の前部には、シェル本体27に設けられた係止爪35が係止する係止縁部41が形成される。
【0021】
なお、シェル本体27には誤嵌合防止部43が設けられている。誤嵌合防止部43は、シェル本体27の後部から前方に180°折り返されて前方側に延びるアーム45を幅方向の両側に有する。前方側に延びるアーム45の自由端部は、シェル本体27の外部からシェル本体27の上壁47に穿設された孔49を介してシェル本体27のコネクタ嵌合空間23に突出する。自由端部には、図示しない非正規プラグが挿入されたときに非正規プラグと接するストッパ壁51が形成される。また、アーム45には、このストッパ壁51に並列に一体形成されてコネクタ嵌合空間23に突出し正規のプラグコネクタが挿入されたときに、このプラグコネクタと接するプラグ拾い部53とが設けられている。
【0022】
係合支持部材29には、下方に延びた垂下先端に打抜穴を有して回路基板55(図5参照)に半田接合される基板接続脚57が垂設される。打抜穴は半田を取り込むことで、半田との接触面積を増大させる。係合支持部材29には、基板接続脚57の後方に基板接続部61が垂設されている。この基板接続部61も、後に詳述するように、回路基板55に半田接合される。
【0023】
本実施形態に係る基板接続脚57と基板接続部61とは、係合支持部材29を介して間接的に設けられることで、シェル本体27に直接設ける必要がない。これにより、シェル本体27の底面に切り起こしによって基板接続脚57や基板接続部61を形成した場合の切り起こし開口が形成されないので、シェル本体27内への半田やフラックスの入り込みを防止することができる。
【0024】
基板接続部61は、金属板を折り曲げてなることで、回路基板55に形成された接続孔63(図6参照)に挿入されて、回路基板55に半田接続される。図3に示すように、基板接続部61は、金属板を板厚方向に重ね合わせた面に、半田が溜まる貫通空間65を形成するように構成されている。この貫通空間65は、回路基板55の基板面67に対して平行に形成されている。
【0025】
図4(a)は長手方向中間部で折り返す基板接続部61の展開例を示す斜視図、図4(b)は幅方向中間部で折り返す基板接続部61の展開例を示す斜視図、図4(c)は二片からなる基板接続部61の例を示す斜視図である。
本実施形態の基板接続部61は、係合支持部材29のプレス成形時に、展開形状を素板に設けておくことで、後に折り曲げ加工により形成することができる。例えば図4(a)に示すように、基板接続部61の展開片部69に、薄肉化加工によって二箇所の薄肉部71を形成しておく。この薄肉化加工は、メッキ処理を損ねないことが条件となる。この薄肉部71が貫通空間65として合わさるように、展開片部69の長手方向中間部を折り曲げ線73で折り曲げることで、図3に示した金属板メッキ面75に挟まれる貫通空間65を有した基板接続部61が形成される。
【0026】
この他、基板接続部61は、図4(b)に示すように、展開片部77を基板接続部61の倍の幅で形成し、上記同様の薄肉部71を幅方向に渡って形成し、幅方向中央の折り曲げ線79で左右を重ねることによっても、金属板メッキ面75に挟まれる貫通空間65を有した基板接続部61の形成が可能となる。なお、この場合には、展開片部77の幅方向中央部に、貫通空間65の一方の開口穴81を穿設しておく必要がある。
【0027】
さらに、基板接続部61は、図4(c)に示すように、プレス加工によって合わせられる2つの展開片部83及び展開片部85を形成し、その一方の展開片部85の先端に折曲部87を設けることでも形成できる。この場合、折曲部87の厚み分を離間させた金属板メッキ面75に挟まれる貫通空間65が基板接続部61に形成される。
【0028】
次に、図5乃至図7を参照しながら上記構成を有する実装部品としてのシールドコネクタ11の作用を説明する。
本実施形態のシールドコネクタ11では、シェル15の係合支持部材29に形成される基板接続部61に貫通空間65が形成されている。この貫通空間65は、メッキ処理が施された金属板メッキ面75に包囲されて形成される。即ち、貫通空間65の空間内壁面89は、全て半田濡れ性が良く、半田の付着が良好な金属板メッキ面75となっている(図7参照)。
【0029】
そこで、回路基板55の接続孔63に挿入された基板接続部61に半田付けを行う際、溶融半田は基板接続部61の外表面に付着するとともに、半田濡れ性が良好な貫通空間65に吸い込まれて留まることとなり、基板接続部61が小型化された際にもメッキ状態の半田接触面を大きくして半田接続後の保持力を向上できる。
【0030】
また、接続孔63内において、金属板メッキ面75によって包囲されて形成された貫通空間65は、基板面67に平行に配置されている。このため、回路基板55の接続孔63内及び半田付け面である下面68に付着して固化した半田は、基板接続部61の貫通空間65を貫通して固着する。即ち、基板接続部61が、貫通空間65を貫通した閂状半田によって回路基板55に固定されることにより、基板面67の直交方向における基板接続部61の半田付け強度がさらに向上する。
【0031】
従って、上述した本実施形態のシールドコネクタ11によれば、基板接続部61が小型化された際にも、基板接続部61の外表面及び貫通空間65の空間内壁面89に半田濡れ性が良好な金属板メッキ面75を配置することでメッキ状態の半田接触面をより大きくでき、半田接続後の保持力低下を抑えることができる。勿論、基板接続部61を小型化しない場合には、従来の基板接続部に比べて半田接続後の保持力を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0033】
11…シールドコネクタ(実装部品)
15…シェル
55…回路基板
61…基板接続部
63…接続孔
65…貫通空間
67…基板面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ処理が施された金属板を折り曲げてなり、回路基板に形成された接続孔に挿入されて、前記回路基板に半田接続される基板接続部を有するシェルを備えた実装部品であって、
前記基板接続部が、前記金属板を板厚方向に重ね合わせた面に半田が溜まる貫通空間を形成するように構成されていることを特徴とする実装部品。
【請求項2】
請求項1記載の実装部品であって、
前記貫通空間が前記回路基板の基板面に対して平行に形成されていることを特徴とする実装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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