説明

実質的に亜鉛非含有のプライマーを有することが可能な粉末コーティング組成物

自動車のコイルスプリング等の高張力の鋼鉄コンポーネントのための耐腐食性および耐チップ性のコーティングは、エポキシ樹脂が約860から約930のEEWを有しないという条件のエポキシ樹脂、約200から約500のHEWを有するポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤、および板状充填剤を有するプライマーを含むコーティング組成物から形成され得る。プライマーは、20wt%未満の亜鉛を含有する。トップコートは、約450から約1400のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂、約1000から約1600のエポキシ当量を有するエラストマー変性エポキシ樹脂、起泡剤、および強化用繊維を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のスプリング等の強い応力が加えられる鋼鉄のために用いられ得る、耐腐食性および耐チップ性のコーティング組成物、およびそのコーティング組成物でコーティングされた強い応力が加えられる鋼鉄に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼鉄をコーティングするための組成物は、一般に、当技術分野において周知である。
【0003】
米国特許第5334631号には、エポキシ樹脂、硬化剤、層状亜鉛、および亜鉛の粉塵を含むコーティング組成物が開示されている。バインダーとしてのポリエステル樹脂、ならびに硬化剤としてのトリスグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ基含有成分をベースとする粉末コーティング組成物等の第2の層を、トップコートのコーティングとして塗布することができる。このコーティングについて言及されている用途は、鉄、鋼鉄、銅およびアルミニウム等の金属であり、例としてガスタンクの外部上での使用が示されている。
【0004】
米国特許第7018716号には、単一のコートとして、または亜鉛を含有せず、繊維の添加により、および/もしくはそれを多孔質にする起泡剤により強化されたトップコートを伴う、プライマーのコートのいずれかとして、亜鉛を含有するエポキシ樹脂を含むコーティングが開示されている。このコーティングについて言及されている用途には、コイルスプリング等の高引張応力の鋼鉄が挙げられる。
【0005】
米国特許第4804581号には、エラストマー変性エポキシ含有コーティングのプライマー、ならびにトップコートとしてカルボキシル官能性ポリエステル樹脂等のカルボキシル官能性材料でコーティングされた金属基材が開示されている。そのコーティング組成物は、所望の耐チップの保護を提供するための自動車の用途において有用であると言われているが、例として、スプリング等の強い応力が加えられる鋼鉄の物品でなく、地面に置かれた鋼鉄パネル上での使用が示されている。
【0006】
高引張強さのスプリングの保護のために、より初期のコーティング系には、最も好ましくは、格別な耐腐食性のための亜鉛リッチなエポキシ熱硬化性プライマーの、優れた耐チップ性を提供するために厚い膜厚で塗布された熱可塑性のトップコートの上塗りコーティングとの組合せが用いられていた(米国特許第5981086号)。いくつかの場合において、エポキシ系電着コートが、亜鉛リッチなプライマーの代わりに用いられていた。
【0007】
一般に、耐チップ性、および低温の物理的特性についてより乏しいが、米国特許第7018716には、低減されたコストの熱可塑性トップコートと相反する性能をもつエポキシ系熱硬化性トップコートが報告されている。亜鉛金属についての需要増と、関連するより高い価格とに関する市場の変化により、亜鉛含有コーティングはより魅力的でなくなってきた。亜鉛含有コーティングの塗布コストは、コーティングされる面積に関するより多い材料の使用と同等である、それらの比較的高い密度によっても損なわれてきた。したがって、強い応力が加えられる鋼鉄等の用途のための実質的に亜鉛非含有のコーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エポキシ熱硬化性プライマーにより主に耐腐食性が提供され、エポキシ熱硬化性トップコートにより主に耐チップ性が提供される、耐腐食性および耐チップ性の二重コートの粉末コーティング系に関する。本発明は、エポキシ熱硬化性プライマーがトップコートなしに塗布される、単一コートの粉末コーティング系にも関する。いくつかの実施形態において、コーティング系は、自動車のサスペンションスプリング等の高張力の鋼鉄合金のために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態において、コーティング組成物は、
(I)
(i)エポキシ樹脂、
(ii)約200から約500のHEWを有するポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤、および
(iii)板状充填剤
を含むエポキシ熱硬化性プライマーを含み、上記のエポキシ熱硬化性プライマーは、20wt%未満の亜鉛を含有する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、コーティング組成物は、エポキシ樹脂が約860から約930のエポキシ当量(EEW)を有しないという条件で、エポキシ樹脂を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、コーティング組成物は、
(i)約520から約1300のEEWを有するエポキシ樹脂、
(ii)約1000から約1600のEEWを有するエラストマー変性エポキシ樹脂、
(iii)起泡剤、および
(iV)強化用繊維
を含むエポキシ熱硬化性トップコートをさらに含む。
【0012】
本発明の他の実施形態には、高張力の鋼鉄合金にコーティング組成物を塗布する方法、および組成物でコーティングされたスプリング等の高張力の鋼鉄合金が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述の実施形態、および本開示の他の実施形態、および本明細書に記載される特許請求の範囲において用いられるときに、本発明の利益が、以下の用語の意味に対してより幅広い意味を推論することにより得られる場合において、以下の用語は、一般に、示される通りの意味を有するが、これらの意味は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0014】
操作の実施例以外において、または別に示された場合において、本明細書および特許請求の範囲において用いられる、成分の量、および反応条件等を表すすべての数は、すべての場合において「約」の用語により修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されなければ、以下の明細書、および添付の特許請求の範囲に示される数のパラメーターは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変化することができる近似である。最低でも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、それぞれの数のパラメーターは、有効数字、および通常の丸めの手法に照らして解釈されるべきである。本発明の幅広い範囲を示す数の範囲およびパラメーターは近似であるが、具体例において示される数値はできる限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それらのそれぞれの試験の測定において認められる標準偏差に必ず起因する特定の誤差を本質的に含有する。別に言及されなければ、本明細書におけるすべてのパーセンテージ、比率および割合は、重量によるものであり、特に、別に具体的に言及されなければ、記載される組成物中の成分の割合は、これらの成分の混合物の全質量に関連してパーセンテージで示される。
【0015】
また、本明細書において、端点による数の範囲の説明には、その範囲内に包含されるすべての数が包含される(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等が包含される。)。
【0016】
また、本明細書において、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」は、互換的に用いられる。
【0017】
また、本明細書において、「含む(comprise)」の用語、およびその変形は、これらの用語が本明細書および特許請求の範囲において現れた場合に、限定する意味を有しない。
【0018】
本願、および特許請求の範囲を通じて開示される、「例えば(for example)」等の用語、ならびに例示的な化合物、範囲およびパラメーター等は、非限定的な方法で本発明の実施形態を確認することを意図したものである。他の化合物、範囲およびパラメーター等が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者により用いられ得る。
【0019】
燃料節約を助けるための、設計の配慮、およびコンポーネント重量の軽量化に駆られ、自動車製造者は、彼らの車両設計において、より軽い重量、高引張強さのサスペンションスプリングをますます用いつつある。これらのスプリングは、それらの金属の質量はより少なく、他の加工の態様とともに用いられる特定の鋼鉄合金の組合せにより、よりしっかりしたスプリングの強度を達成している。
【0020】
利点のいくつかを相殺して、これらのスプリングの高度に設計された特性が、破損についてのそれら全体の潜在力の観点から、若干のコストで達成される。一般に、そのようなスプリングは、はるかにより硬く、はるかにより強い内部応力で作動するので、腐食ピットにより生じる比較的少ない金属の質量減少により、例えば、スプリングの破損が引き起こされることがある。車両のサスペンションは極めて腐食性の環境、特に、様々な道路用塩の使用を伴う北の気候に置かれることがあるので、飛んでくる砂利に対する格別な耐チップ性と、耐腐食性とをもつ保護コーティングを用いて、高引張強さのスプリングを徹底的に保護しなければならない。
【0021】
従来の粉末コーティング系は、耐腐食性を提供するために50wt%を超える量の亜鉛を一般に含有するプライマーを包含している。本発明のプライマーは、自動車産業の耐腐食性および耐チップ性の基準を満たすが、そのプライマーは、20wt%未満の亜鉛を含有することがある。本発明のいくつかの実施形態において、プライマーは、20wt%未満の量の亜鉛を含有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、約15wt%未満の量の亜鉛を含有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、約10wt%未満の量の亜鉛を含有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、約5wt%未満の量の亜鉛を含有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、実質的に亜鉛不含である。いくつかの実施形態において、プライマーは亜鉛を含有しない。そのような実施形態において、亜鉛含有量には、板状充填剤を含むことがある、亜鉛の任意の量が挙げられる。20wt%未満の亜鉛、約15wt%未満の亜鉛、約10wt%未満の亜鉛、または約5wt%未満の亜鉛を含有するプライマーには、実質的に亜鉛不含であるプライマーが挙げられ、亜鉛を含有しないプライマーも挙げられる。本発明のトップコートは、亜鉛を含有することができ、約50wt%未満の量の亜鉛を含有することができ、約25wt%未満の量の亜鉛を含有することができ、約5wt%未満の量の亜鉛を含有することができ、実質的に亜鉛不含であることができ、または亜鉛を含有しないことができる。同様に、約50wt%未満の亜鉛、約25wt%未満の亜鉛、または約5wt%未満の亜鉛を含有するトップコートには、実質的に亜鉛不含であるトップコート、および亜鉛を含有しないトップコートが挙げられる。
【0022】
本発明のプライマーおよびトップコートの使用は、強い応力が加えられる鋼鉄、特に高引張強さのサスペンションスプリングのための、より低コストの保護コーティングに関するニーズを満たすが、耐腐食性および耐チップ性というやや相反する特性のために、別個のプライマーおよびトップコートが選択されることがある。良好な耐腐食性を有するプライマーおよびトップコートが、常に最良の耐チップ性を有するとは限らず、逆もまた同様である。
【0023】
リン酸亜鉛で前処理された鋼鉄の上に塗布することができる、本発明のプライマーの主な機能の1つは、耐腐食性を提供することである。また、理想的な厚さより薄いトップコートが用いられる場合に対応するために、多少の耐チップ性が、プライマーにより与えられ得る。したがって、本発明のプライマーは、エポキシ樹脂、約200から約500のヒドロキシル当量(HEW)を有するポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤、および板状充填剤を含有することにより、耐腐食性および耐チップ性を提供する。
【0024】
本発明における使用のためのエポキシ樹脂は、Dow Chemical Companyから入手し得るし、それらのEEWの範囲により同定され得る。いくつかのエポキシ樹脂は、重なり合うEEWの範囲を有することがあるが、それにもかかわらず区別可能である。例えば、Dow Chemical Companyは、約475から約550のEEWを有するエポキシ樹脂D.E.R.(商標)671、および約450から約560のEEWを有するエポキシ樹脂D.E.R.(商標)661を供給している。
【0025】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂は、EEWが約730の下限から約1400の上限の間であるように選択される。いくつかの実施形態において、プライマーは、エポキシ樹脂が約860から約930のEEWを有しないという条件で、エポキシ樹脂を含む。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂が約860から約930のEEWを有しないという条件で、EEWが約730の下限から約1400の上限の間であるように選択される。約860から約930のEEWを有するエポキシ樹脂は、D.E.R.(商標)664UEとしてDow Chemical Companyから入手可能である。非限定的な例として、約1250から約1400のEEWを有するD.E.R.(商標)6155等のエポキシ樹脂は、約730の下限から約1400の上限の間のEEWを有するエポキシ樹脂の例である。また、非限定的な例として、Dow Chemical Companyから入手可能で、約780から約900のEEWを有するエポキシ樹脂D.E.R.(商標)6330−A10は、EEWの範囲が重なり合うが、約860から約930のEEWを有するエポキシ樹脂であるとみなされない。
【0026】
エポキシ樹脂は、非限定的な例として、約730から約820のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約1250から約1400のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約780から約900のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約750から約850のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約730から約840のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約1150から約1300のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、またはそれらの組み合わせであることができる。そのようなエポキシ樹脂は、D.E.R.(商標)663U、D.E.R.(商標)6155、D.E.R.(商標)6330−A10およびD.E.R.(商標)672UとしてDow Chemical Companyから、ならびにKD213およびKD214MとしてKukdo Chemical Companyから、それぞれ入手可能である。
【0027】
本明細書において用いられ、実施例においてさらに例証されるときに、「有効量」のエポキシ樹脂、「有効量」のポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤、および「有効量」の充填剤材料の用語は、それぞれ、高張力のサスペンションスプリング、GM仕様のGMW14656の場合等の、意図された用途のための工業的に許容できる耐腐食性の基準を満たすプライマーに寄与する量のエポキシ樹脂、ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤および充填剤材料を表す。
【0028】
いくつかの実施形態において、非限定的な例として、約80℃から約125℃の間の軟化点を有する2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェノール)−プロパン系エポキシ樹脂が挙げられる、本発明のプライマーにおける使用のための有効量のエポキシ樹脂が用いられる。非限定的な例として、軟化点は、約90℃から約115℃の間である。エポキシ樹脂は、限定されないが、エピクロロヒドリンまたはポリグリシジルエーテルと、限定されないがビスフェノール、例えばビスフェノールA等の芳香族ポリオールとの反応により生成されるもの等の、コーティング粉末のために有用な様々なエポキシ樹脂から選択され得る。エポキシ樹脂は、1.0を超える、あるいは1.9を超えるエポキシ官能価を有することができる。
【0029】
そのようなエポキシ樹脂は、非限定的な例として、限定されないが苛性ソーダ等の、アルカリの存在下において、芳香族または脂肪族のポリオールと、エピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンとの間のエーテル化反応により生成され得る。芳香族ポリオールは、非限定的な例として、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、または1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリシジルエーテル、またはジオールの縮合グリシジルエーテルであることができる。本発明によるプライマーにおいてエポキシ樹脂として用いられ得るオキシラン基含有ポリマーには、限定されないがポリグリシジル官能性アクリル系ポリマーまたはエポキシノボラック樹脂が挙げられる。
【0030】
プライマーにおける使用のための他のエポキシ樹脂には、非限定的な例として、約80℃から約125℃の間の軟化点を有するエポキシ化されたフェノール−ノボラック樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態において、軟化点は、約90℃から約115℃の間である。いくつかの実施形態において、ビスフェノール−A(DGEBA)ノボラック変性エポキシ樹脂のジグリシジルエーテルが用いられる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、ビスフェノールAエポキシ樹脂は、非限定的な例として、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンとの縮合重合から得られる。限定されないが、ジシアンジアミンにより硬化された、またはカルボキシ官能性ポリエステルと共反応した(ハイブリッド)ビスフェノールAエポキシ樹脂等の、他の樹脂の化学物質が用いられ得る。
【0032】
プライマー中における、エポキシ樹脂の量、またはエポキシ樹脂の組合せは、添加剤および充填剤の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、樹脂および硬化剤の合計が、100部に設定される。それで、配合物中における全エポキシ樹脂のパーセントは、添加剤および充填剤のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂、またはエポキシ樹脂の組合せは、有効な(available)100部の約35から約95部の量で存在する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、プライマーは、有効量のポリヒドロキシル系のフェノール系硬化剤を含有する。ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤は、2−メチルイミダゾールを含有することができる。いくつかの実施形態において、ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤は、約200から約500のヒドロキシル当量(HEW)を有する。ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤は、ビスフェノールA末端のビスフェノールAの低分子量ジグリシジルエーテルから形成され得る。いくつかの実施形態において、硬化剤は、約240から約270のHEWを有するフェノール系硬化剤であり、約2%の2−メチルイミダゾールの硬化促進剤を含有する。
【0034】
硬化剤の量、または硬化剤の組合せは、添加剤および充填剤の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、樹脂および硬化剤の合計が、100部に設定される。それで、配合物中における全硬化剤のパーセントは、添加剤および充填剤のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、硬化剤、または硬化剤の組合せは、有効な100部の約5から約65部の量で存在する。
【0035】
本発明のプライマーは、有効量の板状充填剤材料も含有する。本発明における使用のための板状充填剤材料には、非限定的な例として、メジアン粒径約10から約35μmの複合アルミノケイ酸塩(白雲母のマイカ)、メジアン粒径約10から約35μmのケイ酸マグネシウム(タルク)、メジアン粒径約150から約200μmのC変性組成のガラスフレーク、およびそれらの組合せが挙げられる。これらの充填剤は、板状粒子の形状を有し、改善されたバリア性により耐腐食性を改善するプライマーコーティング層に対して平行になる傾向がある。白雲母のマイカ、タルク、およびガラスフレークについてのメジアン粒径は、sedigraph(沈降分析)により確証されており、いくつかの実施形態において約10から約40phr(パーツパーハンドレッドオブレジン)で用いられる。いくつかの実施形態において、板状充填剤は、20wt%未満の量の層状亜鉛を含むことができる。上述のように、そのような実施形態において、20wt%未満の亜鉛含有物は、板状充填剤を含むことができる任意の量の亜鉛を含有する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、プライマーは、限定されないが複合アルミノケイ酸塩(白雲母のマイカ)、メタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、ケイ酸マグネシウム微粉末(タルク)、酸化亜鉛粉末、亜鉛粉、石英粉末、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、ガラスフレーク、C変性組成のガラスフレーク、およびそれらの組合せ等の充填剤を含有することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、メジアン粒径約2から約15μmのメタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、および/またはメジアン粒径約0.5から約3.0μmのケイ酸マグネシウム微粉末(タルク)を包含する。これらの充填剤が機能して、pH調節および吸湿性の組合せにより耐腐食性が改善される。ウォラストナイトおよびタルク微粉末についてのメジアン粒径は、レーザー回折技術により確証されてきており、いくつかの実施形態において、それぞれ、約10から約40phr、および約1から約8phrで用いられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、トップコートは、約520から約1300のEEWを有する有効量のエポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂は、非限定的な例として、約730から約820のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約860から約930のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約520から約560のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、約730から約840のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂、または約1150から約1300のEEWを有するビスフェノールAエポキシ樹脂であることができる。そのようなエポキシ樹脂は、Dow Chemical Companyから、およびKukdo Chemical Companyから入手可能である。
【0039】
本明細書において用いられる場合、「有効量」のエポキシ樹脂、「有効量」のエラストマー変性エポキシ樹脂、「有効量」のカルボキシル官能性ポリエステル樹脂、「有効量」の起泡剤、および「有効量」の強化用繊維の用語は、それぞれ、高張力のサスペンションスプリング、GM仕様のGMW14656の場合等の、意図された用途のための工業的に許容できる基準を満たすトップコートに寄与する量のエポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂、カルボキシル官能性ポリエステル樹脂、起泡剤および強化用繊維を表す。トップコートにおける使用のためのエポキシ樹脂の非限定的な例には、約80℃から約125℃の間の軟化点を有する2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェノール)−プロパン系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0040】
トップコートにおける、エポキシ樹脂の量、またはエポキシ樹脂の組合せは、添加剤および強化用繊維の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、エポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂、および場合によりカルボキシル官能性ポリエステル樹脂の総量が、100部に設定される。それで、配合物中における全エポキシ樹脂のパーセントは、添加剤および強化用繊維のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂、またはエポキシ樹脂の組合せは、有効な100部の約10から約85部の量で存在する。
【0041】
エポキシ樹脂は、限定されないが、エピクロロヒドリンまたはポリグリシジルエーテルと、限定されないがビスフェノール、例えばビスフェノールA等の芳香族ポリオールとの反応により生成されるもの等の、コーティング粉末のために有用な様々なエポキシ樹脂から選択され得る。エポキシ樹脂は、1.0を超える、あるいは1.9を超えるエポキシ官能価を有することができる。一般に、エポキシ当量は、約450から約1400、あるいは約520から約1300であることができる。
【0042】
エポキシ樹脂は、非限定的な例として、限定されないが苛性ソーダ等の、アルカリの存在下において、芳香族または脂肪族のポリオールと、エピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンとの間のエーテル化反応により生成され得る。芳香族ポリオールは、非限定的な例として、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、または1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリシジルエーテル、またはジオールの縮合グリシジルエーテルであることができる。本発明によるトップコートにおいてエポキシ樹脂として用いられ得るオキシラン基含有ポリマーには、限定されないがポリグリシジル官能性アクリル系ポリマーまたはエポキシノボラック樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態において、ビスフェノール−A(DGEBA)ノボラック変性エポキシ樹脂のジグリシジルエーテルが用いられる。
【0043】
トップコートは、約1000から約1600のEEWを有する有効量のエラストマー変性エポキシ樹脂を含有する。本発明のいくつかの実施形態において、エラストマー変性エポキシ樹脂は、約1250から約1500g/eq、または約1100から約1300g/eqのEEWを有する複合樹脂を生成するCTBN(カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル)ゴムが付加されているビスフェノールAエポキシ樹脂である。いくつかの実施形態において、Tgは、約30から約50℃である。Tgは、非晶質材料が「ガラス質」から「ゴム質」の状態にその挙動を変化させる臨界温度であるガラス転移温度である。この文脈における「ガラス質」は、硬く脆い(したがって、比較的壊れやすい)ことを意味する一方で、「ゴム質」は、弾性があり柔軟であることを意味する。
【0044】
トップコートにおける、エラストマー変性エポキシ樹脂の量、またはエラストマー変性エポキシ樹脂の組合せは、添加剤および強化用繊維の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、エポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂およびカルボキシル官能性ポリエステル樹脂の合計が、100部に設定される。それで、配合物における全エラストマー変性エポキシ樹脂のパーセントは、添加剤および強化用繊維のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、エラストマー変性エポキシ樹脂、またはエラストマー変性エポキシ樹脂の組合せは、有効な100部の約5から約35部の量で存在する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、トップコートは、向上された耐チップ性のために、約25から約85mgKOH/g、または約45から約75mgKOH/gの酸価をもつ有効量のカルボキシ官能性ポリエステル樹脂も含有する。
【0046】
トップコートにおける、カルボキシ官能性ポリエステル樹脂の量、またはカルボキシ官能性ポリエステル樹脂の組合せは、添加剤および強化用繊維の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、エポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂およびカルボキシル官能性ポリエステル樹脂の合計が、100部に設定される。それで、配合物における全カルボキシ官能性ポリエステル樹脂のパーセントは、添加剤および強化用繊維のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、カルボキシ官能性ポリエステル樹脂、またはカルボキシ官能性ポリエステル樹脂の組合せは、有効な100部の約30から約85部の量で存在する。
【0047】
カルボキシル官能性ポリエステル樹脂は、非限定的な例として、脂肪族の二価もしくは多価のアルコールと、脂環式、非環式もしくは脂肪族の二価もしくは多価のカルボン酸またはそれらの酸無水物との間、あるいは脂肪族の二価アルコールと、芳香族の二価もしくは多価のカルボン酸またはそれらの酸無水物との間の縮合反応等の、任意の一般に公知の方法により調製され得る。非限定的な例として、カルボキシル官能性ポリエステル樹脂は、限定されないがエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール(すなわち、ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコール等の、脂肪族の二価または多価のアルコール、特に低級脂肪族ジオールから調製され得る。限定されないがトリメチロールプロパン等の、ポリオールは、カルボキシル官能性ポリエステルを調製するためにも用いられ得る。適切な二価または多価のカルボン酸および酸無水物の例には、限定されないがフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびマレイン酸、ならびにそのような酸の酸無水物が挙げられる。いくつかの実施形態において、カルボキシル官能性ポリエステル樹脂は、芳香族含有ポリエステル、非限定的な例として、限定されないがフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸等の、芳香族カルボン酸と、限定されないがネオペンチルグリコール等の、ポリオールとから調製されるポリエステルである。
【0048】
有効量の起泡剤/発泡剤の添加剤は、トップコート中に存在して、コーティング膜中の多孔質構造を確立する。多孔質構造により、破壊されずに衝撃エネルギーを吸収する能力等の物理的特性がコーティングに与えられる。
【0049】
本発明の他の実施形態において、高張力のサスペンションスプリングのための商業的に望ましい多孔性は、硬化済のトップコートが、多孔性のない理論的なトップコートの密度のそれから、約15%から約50%の密度の減少を示す場合に達成される。硬化済のトップコートの密度は、コーティング済のパネル上で測定されたコーティングの重量の、同じパネル上におけるコーティングの体積に対する比率から計算される。コーティング済のパネル上におけるコーティングの体積は、細分化したパネルを横切って行われる多数の測定により平均のコーティングの厚さを得て、それをパネルの面積と掛け合わせることにより、統合的な様式で到達される。いくつかの実施形態において、起泡剤および発泡剤は、約0.2から約2.0phr(パーツパーハンドレッドオブレジン)で用いられる。p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)および活性化アゾジカルボンアミド系組成物を含む起泡剤が、いくつかの実施形態において用いられる。他の起泡剤には、限定されないがp−トルエンスルホニルヒドラジド系起泡剤が挙げられる。
【0050】
有効量の強化用繊維は、トップコート中に存在して、起泡剤/発泡剤の存在により引き起こされる強度の任意の減少を回復する。非限定的な例として、アルミノケイ酸塩のガラス繊維、または天然採掘のメタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)の繊維の種類が用いられ得る。約3から約15μmの平均直径、および約5から約20の平均アスペクト比(コーティングの充填剤という文脈内において、アスペクト比は、充填剤粒子の最大直径のその最小直径に対する比率として定義される)が、いくつかの実施形態において用いられる。限定されないがアラミドおよび炭素等の、他の強化用繊維が、同様に用いられ得る。約20から約70phrの量の強化用繊維が、本発明のいくつかの実施形態において用いられる。いくつかの実施形態において、強化用繊維は、Fibertecから市販されている、16ミクロンの直径、および150ミクロンの長さを有する、Eガラスのシラン処理ガラス繊維である。
【0051】
プライマーおよびトップコートは、限定されないが顔料、触媒/硬化剤、脱気剤、流れ調整剤および抗酸化剤等の添加剤を含有することもできる。
【0052】
本発明のプライマーおよびトップコートの組成物における使用のための顔料には、非限定的な例として、二酸化チタン、酸化鉄(黄色、褐色、赤色、黒色)、カーボンブラックおよび有機顔料が挙げられる。これらの顔料は、当業者に公知の従来的な量で添加され得る。
【0053】
プライマー中に存在する上述のフェノール系硬化剤の他に、コーティング組成物には、非限定的な例として、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、ホスフィン、イミダゾール、金属塩、およびそれらの組合せ等の、触媒/硬化剤の添加剤が挙げられ得る。そのような添加剤の例には、限定されないが塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムまたはヨウ化テトラブチルアンモニウム、酢酸エチルトリフェニルホスホニウム、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、ジラウリン酸ジブチル錫、およびそれらの組合せが挙げられる。触媒/硬化剤は、いくつかの実施形態において用いられるときに、コーティング組成物の総重量に基づいて、約0から約5重量パーセントの間、あるいは、約0.2から約2重量パーセントの量で組成物中に存在する。
【0054】
トップコートは、本発明のいくつかの実施形態において、有効量の硬化剤を含有することができる。硬化剤は、2−メチルイミダゾールを含有するポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤であることができる。いくつかの実施形態において、ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤は、約200から約500のヒドロキシル当量(HEW)を有する。ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤は、ビスフェノールA末端のビスフェノールAの低分子量ジグリシジルエーテルから形成され得る。いくつかの実施形態において、硬化剤は、約230から約260のHEWを有するフェノール系硬化剤であり、2−メチルイミダゾールの硬化促進剤を含有する。
【0055】
硬化剤の量、または硬化剤の組合せは、添加剤および強化用繊維の量に関連して変化することができる。非限定的な例として、phr(パーツパーハンドレッドレジン)の配合の取決めにより、エラストマー変性エポキシ樹脂およびカルボキシル官能性ポリエステル樹脂の合計が、100部に設定される。それで、配合物中における全硬化剤のパーセントは、添加剤および強化用繊維のphrレベルの関数として変化する。いくつかの実施形態において、硬化剤、または硬化剤の組合せは、有効な100部の約5から約65部の量で存在する。
【0056】
脱気剤は、存在する任意の揮発性材料を、焼成中に膜から離脱させるために、組成物に添加され得る。ベンゾインは脱気剤であり、いくつかの実施形態において用いられるときに、粉末コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.5から約3.0重量パーセントの量で存在することができる。
【0057】
流れ調整剤には、限定されないがより低分子量のアクリル系ポリマー、非限定的な例として、限定されないがポリアクリル酸ラウリル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸(2−エチルヘキシル)、ポリ(アクリル酸エチル−アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリメタクリル酸ラウリルおよびポリメタクリル酸イソデシル等の、限定されないが約1000から約50000の数平均分子量を有するアクリル系ポリマー等の、アクリル系ポリマー、ならびに限定されないが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、およびフッ素化脂肪酸のエステル等の、フッ素化ポリマーが挙げられる。約1000を超える分子量のポリマーシロキサン、非限定的な例として、ポリ(ジメチルシロキサン)またはポリ(メチルフェニル)シロキサンは、流れ調整剤としても用いられ得る。流れ調整剤は、コーティング粉末の加熱中における表面張力の減少と、凹みの形成の解消とを助けることができる。いくつかの実施形態において、流れ調整剤は、使用されるときに、粉末コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.05から約5.0重量パーセントの量で存在する。
【0058】
抗酸化剤には、限定されないがフェノール系、亜リン酸塩系、亜ホスホン酸塩系およびラクトン系の抗酸化剤、ならびにそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗酸化剤は、約0から約3wt%の量で存在する。
【0059】
本発明のコーティング組成物は、限定されないが自動車のスプリング等の、金属への塗布に特に適している。しかし、炭素、木、ガラス、ポリマー、および他の基材にコーティング組成物を塗布することも可能である。
【0060】
上述のプライマーおよびトップコートの組成物を高張力の鋼鉄に塗布することは、限定されないが以下の方法1から3等の、任意の公知技術により達成され得る。用いられる塗布技術に関係なく、高張力の鋼鉄合金上に形成される複合コーティング(プライマーおよびトップコート)は、前処理された鋼鉄の表面に接した、非限定的な例として厚さ約1.5から約4.0ミルの、別個のプライマーを含有することができる。複合コーティングのトップコートは、下にあるプライマー層に結合した、非限定的な例として厚さ約10から約35ミルの別個のトップコートを形成することもできる。コーティング組成物は、プライマーを含み、トップコートを含まないで塗布されることもある。
【0061】
塗布技術
1.方法1−鋼鉄を、より理想的な堆積のために約220から約380°Fに加熱した後に、プライマーおよびトップコートを逐次的に塗布する。次いで、コーティング済の鋼鉄を再度加熱して、複合コーティング層を作り出し、コーティング系による完全な特性の発現を達成する。
2.方法2−プライマーを、周囲温度の高張力の鋼鉄合金に塗布した後に、約220から約380°Fに加熱して、コーティングを融解する、または部分的に硬化する。トップコートを、プライマーの加熱から残った余熱を理想的に用い、熱い鋼鉄に塗布する。次いで、コーティング済の鋼鉄を再度加熱して、複合層を作り出し、コーティング系による完全な特性の発現を達成する。
3.方法3−プライマーおよびトップコートを、「ドライオンドライ」の粉末の様式で周囲温度の高張力の鋼鉄に逐次的に塗布した後に、約220から約380°Fの単一のサイクル加熱をして、複合コーティング層を作り出し、コーティング系による完全な特性の発現を達成する。
【実施例】
【0062】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照することにより、さらに説明する。これらの実施例の変形および変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によりなされ得ることを理解すべきである。
【0063】
17種のプライマーおよび9種のトップコートの組成物を、以下の成分の混合物から上記の方法1に従って調製した。
【0064】
プライマーの組成
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
1AビスフェノールAエポキシ樹脂A、B、CおよびDは、それぞれ、860〜930、730〜820、1250〜1400および780〜900のEEWを有し、Dow Chemical Companyから市販されている。
1BビスフェノールAエポキシ樹脂Hは、ノボラック変性であり、750〜850のEEWを有し、Dow Chemical Companyから市販されている。
2A46〜51mgKOH/gの酸価、および約50℃のTgを有し、Cytec Industries Inc.から市販されているカルボキシル官能性ポリエステル樹脂。
2B68〜74mgKOH/gの酸価、および約58℃のTgを有し、Cytec Industries Inc.から市販されているカルボキシル官能性ポリエステル樹脂。
240〜270のHEWを有し、2%の2−メチルイミダゾールの硬化促進剤を含有し、Dow Chemical Companyから市販されているフェノール系硬化剤。
Casamid 710は、Thomas Swan & Co., Ltd.から市販されている、置換ジシアンジアミンの硬化剤である。
Epikure P−108は、Hexion Speciality Chemicalsから市販されている、促進的なジシアンジアミンである。
ベンゾインは、Aceto Corporationから市販されている脱気剤である。
Black Pearls 800は、Cabot Corporationから市販されているカーボンブラックの顔料である。
Tiona 595は、Millennium Chemicalsから市販されている二酸化チタンの顔料である。
20μmの平均メジアン粒径を有し、Fibertec,Inc.から市販されている白雲母のマイカの充填剤。
103.5μmのメジアン粒径、および3のアスペクト比を有し、NYCO Mineralsから市販されているメタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)の充填剤。
11K−White TC720は、Tayca Corporationから市販されている、ケイ酸マグネシウム(タルク)の抗腐食顔料である。
12AZO77Hは、米国のZincから市販されている酸化亜鉛顔料である。
13Zinc dust 64は、アメリカのZinc Corporationにより製造され、Cary Companyを通して流通されている亜鉛粉である。
141.3〜2.3μmの公称の厚さを、65%が50〜300μmの間の長さであり、Glass Flake,Ltd.から市販されている、変性C組成のガラスフレーク。
1513μmのメジアン粒径、および45μmの最大粒径を有し、Rio Tinto Mineralsから市販されているケイ酸マグネシウム(タルク)の充填剤。
16Irganox 1076は、BASFから市販されているフェノール系抗酸化剤である。
【0068】
トップコートの組成
【0069】
【表3A】

【0070】
【表3B】

【0071】
ビスフェノールAエポキシ樹脂E、FおよびGは、それぞれ、730〜820、860〜930および520〜560のEEWを有し、Dow Chemical Companyから市販されている。
1250〜1500のEEWを有し、CVC Specialty Chemicals,Inc.から市販されているCTBN変性エポキシ樹脂。
46〜51mgKOH/gの酸価、および約50℃のTgを有し、Cytec Industries Inc.から市販されているカルボキシル官能性ポリエステル樹脂。
68〜74mgKOH/gの酸価、および約58℃のTgを有し、Cytec Industries Inc.から市販されているカルボキシル官能性ポリエステル樹脂。
Bentone 38は、Elementis Specialtiesから市販されている有機粘土のレオロジー調節剤である。
Lanco TF1778は、Lubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されているポリエチレン/PTFE系ワックスである。
p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)の起泡剤は、気体の収量が125cc/gであり、320°Fの分解点を有し、Chemtura Corporationを通して市販されている。
アゾジカルボンアミドの起泡剤は、気体の収量が180cc/gであり、329〜356°Fの分解点を有し、Chemtura Corporationを通して市販されている。
メタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)の繊維は、アスペクト比9で、3μmの平均粒径を有し、Fibertec,Inc.を通して市販されている。
10アルミノケイ酸塩の繊維は、シラン処理されており、125±25μmの平均長さを有し、Lapinus Fibersから市販されている。
11アトマイトは、Imerys Performance Mineralsから市販されている、炭酸カルシウムの充填剤である。
12ビスフェノールAエポキシ樹脂HおよびIは、それぞれ、730〜840および1150〜1300のEEWを有し、Kukdo Chemical Companyから市販されている。
131100〜1300のEEWを有し、Kukdo Chemical Companyから市販されているCTBN変性エポキシ樹脂。
14230〜260のHEWを有し、Kukdo Chemical Companyから市販されているフェノール系硬化剤。
15Casamid 710は、Thomas Swan & Co., Ltd.から市販されている、置換ジシアンジアミドの硬化剤である。
16BASFから市販されている。
17Estronから市販されている。
1816ミクロンの直径、および150ミクロンの長さを有し、Fibertecから市販されている、シラン処理済のガラス繊維。
192.1ミクロンの平均粒径を有し、Uniminから市販されているかすみ石閃長岩。
201.2〜1.5ミクロンの平均粒径を有する硫酸バリウム。
211.7ミクロンの平均粒径を有し、Omyaから市販されている炭酸カルシウム。
22145℃の分解点を有し、Dongjin Semichemから市販されている、p−トルエンスルホニルヒドラジンの起泡剤。
【0072】
プライマーの例 試験データおよび比較例
【0073】
【表4】

【0074】
トップコートの例 試験データ(プライマーの例4を含む)
*SAE J400に基づいて、金属へのコーティングにチッピングが生じない、高張力のサスペンションスプリングのためのFordの仕様、WSS−M2P177−B1に対する試験。チッピングの評価は10でなければならない。
【0075】
【表5】

【0076】
基材:サスペンションスプリングを模するために形成された、リン酸亜鉛で前処理された鋼鉄パネル
プライマー:例4(2.5〜3.0ミル)
二重コートの膜厚:15.0〜20.0ミル
【0077】
GMのサイクル腐食(GMW 14782)、およびGMの耐衝撃性(GMW 14700)
試験手順:GMW 14782(方法B)
評価手順:GM 15282(方法A)
要件:最大の平均クリープバックが6mm、および3mmを超えるチッピングがないこと
【0078】
【表6】

【0079】
トップコートの例、および試験データ(プライマーの例17を含む)
試験手順:二重コートのスプリングについてのGM9984164の仕様
基材:サスペンションスプリングを模するために形成された、リン酸亜鉛で前処理されたパネル
プライマー:例17
トップコート:例9
二重コートの膜厚:17〜23ミル
【0080】
【表7】

【0081】
試験手順:二重コートのスプリングについてのGM9984164の仕様
基材:サスペンションスプリングを模するために形成された、リン酸亜鉛で前処理されたパネル
プライマー:例17
トップコート:例9
二重コートの膜厚:14〜16ミル
【0082】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)約860から約930のEEWを有しないという条件のエポキシ樹脂、
(ii)約200から約500のHEWを有するポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤、および
(iii)板状充填剤
を含むエポキシ熱硬化性プライマーを含むコーティング組成物であって、前記エポキシ熱硬化性プライマーは20wt%未満の亜鉛を含有する、コーティング組成物。
【請求項2】
(i)約450から約1400のEEWを有するエポキシ樹脂、
(ii)約1000から約1600のEEWを有するエラストマー変性エポキシ樹脂、
(iii)起泡剤、および
(iV)強化用繊維
を含むエポキシ熱硬化性トップコートをさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
エポキシ系トップコートが約25から約85mgKOH/gの酸価を有するカルボキシル官能性ポリエステル樹脂をさらに含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂が約860から約930のEEWを有しないという条件で、プライマーが約730から約1400のEEWを有するエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
プライマーが、約730から約820のEEWを有するエポキシ樹脂、約1250から約1400のEEWを有するエポキシ樹脂、約780から約900のEEWを有するエポキシ樹脂、または約750から約850のEEWを有するエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシル官能性フェノール系硬化剤が2−メチルイミダゾールを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記板状充填剤が、複合アルミノケイ酸塩(マイカ)、変性C組成のガラスフレーク、ケイ酸マグネシウム(タルク)、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記複合アルミノケイ酸塩(マイカ)が、約10から約40phrの量で存在し、約10から約35ミクロンのメジアン粒径を有する、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記変性C組成のガラスフレークが、1.3〜2.3μmの公称の厚さを有し、65%が50〜300μmの間の長さである、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記ケイ酸マグネシウム(タルク)が、約10から約40phrの量で存在し、約10から約35μmのメジアン粒径を有する、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
エポキシ熱硬化性プライマーが、約10wt%未満の亜鉛を含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
エポキシ熱硬化性プライマーが、約5wt%未満の亜鉛を含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記エポキシ熱硬化性トップコート中の前記エポキシ樹脂が、有効な100部の約10から約85部の量で存在するビスフェノールAエポキシ樹脂である、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記エラストマー変性エポキシ樹脂が、有効な100部の約5から約35部の量で存在するビスフェノールAエポキシ樹脂を含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
エポキシ熱硬化性プライマーが、実質的に亜鉛を含有しない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
エポキシ熱硬化性プライマーが亜鉛を含有しない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記強化用繊維が、アルミノケイ酸塩、メタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、アラミド、炭素、またはそれらの組合せを含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のコーティング組成物によりコーティングされた高張力の鋼鉄合金。
【請求項19】
請求項2に記載のコーティング組成物によりコーティングされた高張力の鋼鉄合金。
【請求項20】
請求項3に記載のコーティング組成物によりコーティングされた高張力の鋼鉄合金。

【公表番号】特表2013−500369(P2013−500369A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522155(P2012−522155)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060907
【国際公開番号】WO2011/012627
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】