説明

実質的に四重極の電場に高次構成要素を提供するための方法およびシステム

2次元の実質的に四重極の電場を提供する。電場は、振幅A2の四重極高調波と、振幅A4の八重極高調波とを備え、A4は、A2の0.01%よりも大きく、A4は、A2の5%未満であり、電場に存在する振幅Anを有する任意の他の高次高調波について、nは、4を除く2よりも大きい任意の整数であり、A4は、Anの10倍よりも大きい。線形イオントラップの中においてイオンを処理する方法であって、該方法は、a)2次元の実質的に四重極の電場を確立し、維持することであって、該電場は、振幅A2の四重極の高調波と、振幅A4の八重極の高調波とを備え、A4は、A2の0.01%よりも大きく、A4は、A2の5%未満であり、該電場に存在する振幅Anを有する任意の他の高次高調波について、nは、4を除く2よりも大きい任意の整数であり、A4は、Anの10倍よりも大きい、ことと、b)イオンを該電場に導入することとを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本発明は、実質的に四重極の電場に高次構成要素を提供するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオントラップ質量分析計の性能は、例えば、空間電荷密度等のいくつかの異なる要因によって制限され得る。したがって、改良型質量分析計システム、ならびにこれらの制限に対処する操作の方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の別の実施形態の側面によれば、線形イオントラップの中でイオンを処理する方法が提供され、方法は、a)2次元の実質的に四重極の電場を確立し、維持するステップであって、電場は、振幅A2の四重極高調波と、振幅A4の八重極高調波とを備え、A4は、A2の0.01%よりも大きく、A4は、A2の5%未満であり、電場に存在する振幅Anを有する任意の他の高次高調波について、nは、4を除く2よりも大きい任意の整数であり、A4は、Anの10倍よりも大きい、ステップと、b)イオンを電場に導入するステップとを含む。
【0004】
本発明の実施形態の側面によれば、(a)中心軸と、(b)第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの各ロッドは、中心軸から離間しており、それに沿って延在する、第1の対のロッドと、(c)第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの各ロッドは、中心軸から離間しており、それに沿って延在する第2の対のロッドと、(d)第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中において第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置される4つの補助電極であって、4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを備える、4つの補助電極と、(e)第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続され、電圧供給とを備える、線形イオントラップシステムが提供される。RF電圧供給は、i)第1の周波数で、第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するように、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角線上に配向された1対の補助電極に双極励起AC電圧を、iii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iv)第1の周波数に等しい補助周波数で、かつ実質的に第1の位相において、4つの補助電極に補助RF電圧を提供するように動作可能であり、対角線上に配向された1対の補助電極は、相互よりも他の補助電極に近い。
【図面の簡単な説明】
【0005】
当業者は、後述される図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
【図1】図1は、本発明の実施形態の側面による、補助電極を備えるQ−トラップ、Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システムを概略図で図示する。
【図2】図2は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの変化例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
【図3a】図3aおよび3bは、充填時間が0.2msから4msに変化させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図3a)および相対強度(図3b)をそれぞれ示す。
【図3b】図3aおよび3bは、充填時間が0.2msから4msに変化させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図3a)および相対強度
【図4a】図4aおよび4bは、充填時間が0.05msから最大5msに増加させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図4a)および相対強度(図4b)を示す。
【図4b】図4aおよび4bは、充填時間が0.05msから最大5msに増加させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図4a)および相対強度(図4b)を示す。
【図5a】図5aおよび5bは、イオン集団が20倍に増加させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図5a)および相対強度(図5b)を示す。
【図5b】図5aおよび5bは、イオン集団が20倍に増加させられたときの重複LITスペクトルの実際の強度(図5a)および相対強度(図5b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1を参照すると、本発明の実施形態の側面による補助電極12を備えるQTRAP Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システム10が概略図で図示されている。質量分析計の動作中、スキマー16を通して真空チャンバ14の中へイオンを入れることができる。線形イオントラップ10は、4組の細長いロッドQ0を備え、四重極の質量分析計16、衝突セル18、および線形イオントラップ20、ロッドセットQ0の後のIQ1、四重極質量分析計16と衝突セル18との間のIQ2、および衝突セル18と線形イオントラップ20との間のIQ3であるオリフィス板を有する。付加的な1組の短く太いロッド21が、オリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供される。
【0007】
場合によっては、隣接する対のロッドセットの間の漏れ電場が、イオンの流動を歪曲する場合がある。細長いロッドセットQ1の中へイオンの流動を集中させるために、短く太いロッド21をオリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供することができる。
【0008】
イオンは、約8x10−3トールの圧力で維持され得るQ0の中において衝突冷却されることができる。四重極質量分析計16は、従来の伝送RF/DC四重極質量分析計として動作することができる。衝突セル18の中で、イオンは、より小さい質量の副産物に断片化されるために衝突ガスと衝突することができる。線形イオントラップ20はまた、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、Londry and Hagerによる Journal of the American Association of Mass Spectrometry,2003,14,1130−1147で、および米国特許第6,177,688号で、多かれ少なかれ説明されているように、質量選択的軸方向放出を有するか、または伴わない線形イオントラップとして操作することもできる。
【0009】
イオンは、四重極ロッドに印加される半径方向のRF電圧および端部開口レンズに印加される軸方向DC電圧を使用して、線形イオントラップ20の中に捕捉されることができる。加えて、示されるように、線形イオントラップ20はまた、補助電極12をも備える。
【0010】
イオン集団密度が四重極または線形イオントラップ内において増加するにつれて、空間電荷効果が質量精度を低減し得る。したがって、線形イオントラップ質量分析計の動作は、質量精度または分解能に関してトラップの分析性能に影響を及ぼすことなく分析することができる、空間電荷またはイオンの総数によって制限され得る。
【0011】
本発明の実施形態の一局面によれば、補助電極12は、線形イオントラップ20の四重極ロッドアレイによって提供される主要なRF四重極電場に加えて、八重極または非線形RFおよび静電場を生成するために線形イオントラップ20内で使用することができる。これらの電場の非調和性は、放出過程中にイオントラップの内側のイオン雲の動態を変化させることができ、質量精度を向上させるために自己誘導空間電荷の悪影響を低減することができる。これらの補助電極は、図1に示されたものとは異なる状況で使用することができ、図1の設定は、例示目的のみで示されている。例えば、そのような非線形イオントラップは、トリプル四重極、QqTOF、またはトラップTOF等のタンデムMS/MSシステムの中の前駆イオンセレクタとして、MS/MS構成のプロダクトイオン分析器として、または独立型質量分析計として使用することができる。
【0012】
図1は、線形イオントラップ20内の補助電極12の可能な軸方向位置を示す。具体的には、補助電極12は、線形イオントラップ20の抽出領域内にある。図1の実施形態等のいくつかの実施形態では、抽出領域は、線形イオントラップ20の長さの半分未満にわたって延在する。図2を参照すると、線形イオントラップ20に対する補助電極12の特定の変化例の半径方向位置が示されている。図2の変化例では、補助電極12は、線形イオントラップ20の中心軸から離間した長方形の基礎部と、長方形の基礎部から線形イオントラップ20の中心軸に向かって延在する長方形の最上部とを備えるT字形電極である。当業者に明白となるように、他の電極構成も使用することができる。例えば、限定するものではないが、T字形電極の長方形の最上部が保持される場合があるが、この長方形の最上部を載置するために、長方形の基礎部を除く何らかの他の手段を使用することができる。代替として、T字形電極は、それらの全体で、円筒電極と置換することができる。そのような実施形態では、円筒電極は、一般的には、主要なロッド26、28の半径よりも小さい半径を有する。
【0013】
図2の変化例では、主要駆動電圧供給24が、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを供給することができる。当技術分野で公知であるように、電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源を備えることができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、第1の対のロッド26に印加される第1の電圧と反対の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能な第2のRF電圧源も備えることができる。
【0014】
示されるように、電圧供給24はまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に等しくなり得るロッドオフセット電圧ROをロッドに提供する。一般的には、このロッドオフセット電圧ROは、線形イオントラップ内に閉じ込められているイオンと極性が反対のDC電圧である。
【0015】
図2に示されるように、補助電極12は、相互に電気的に結合することができ、また、第1の対のロッド26に供給されるRF電圧の大きさVに対して補助電極12に供給されるRF電圧の大きさを逓減するように、コンデンサC1を介して主要電圧供給24にも結合することができる。図2の変化例では、主要電圧源24からのロッドオフセット電圧は補助電極12に提供されていないことに留意していただきたい。代わりに、別個または独立電力供給30が、抵抗器R1を介して補助電極12に接続される。示されるように、主要電圧供給24によって補助電極12に供給されるRFは、第1の対のロッド26に提供されるRF電圧と実質的に同相となることができ、第2の対のロッド28提供されるRF電圧と実質的に位相をずらすことができる。再び、図2に示されるように、双極励起AC電圧は、例えば、米国特許第6,177,688号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するように、例えば、補助AC電圧源32によって第1の対のロッドに提供することができる。随意で、双極励起信号によって励起される選択されたイオンは、質量スペクトルを生成するように、軸方向レンズ34を越えて検出器36へと軸方向に放出することができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送することができる。例えば、分解能を高めるために、さらなる下流ロッドセットが使用される場合がある。代替として、イオンは、断片化し、下流質量分析計の中で分析することができる。当技術分野で公知であるように、補助電圧源32によって提供されるAC電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数となり得る。
【0016】
随意で、補助電極12は、主要電圧供給24に結合される必要はない。代わりに、4つの補助電極に補助RF電圧を提供するために、別個または補助RF電圧源または電力供給を、質量分析計システム10に組み込むことができる。そのような実施形態では、補助RF電圧は、第1の対のロッド26に第1のRF電圧を供給するために使用される第1のRF電圧源24aに位相ロックすることができる。つまり、上記の補助RF電圧源または電力供給によって補助電極12に供給されるRFは、第1の対のロッド26に提供されるRF電圧と同相となることができるが、プラスまたはマイナス1度、あるいはプラスまたはマイナス10度ほども、第1の対ロッド26によって提供されるRF電圧と位相をずらしてもよい。さらに随意で、双極励起AC電圧は、例えば、米国特許第7,692,143号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、第1の対のロッドの代わりに、補助電極ペア12aまたは12bとなり得る対角線上に配向された1対の補助電極に提供することができる。対角線上に配向された1対の補助電極は、相互よりも他の補助電極に近くてもよく、四重極の中心軸によって分離されてもよい。対角線上に配向された1対の補助電極の中の一方の電極が、2つの隣接するロッド26および28により近く、実質的にそれらの間にあってもよい一方で、対角線上に配向された1対の補助電極の中の他方の電極は、他の2つの隣接するロッド26および28により近く、実質的にそれらの間にある。
【0017】
ロッド26、28に対する図2に示された対称構成の補助電極12を提供することによって、有意に多数の他の高次構成要素を追加することなく、2次元の実質的に四重極の電場に有意な八重極の構成要素を提供することができる。具体的には、振幅A2の四重極の高調波と、振幅A4の八重極の高調波とを備える2次元の実質的に四重極の電場を提供することができ、A4は、A2の0.01%よりも大きく、A4は、A2の0.5%未満である。いくつかの実施形態では、A4は、実際に、A2の0.1%未満、またはA2の0.05%未満でさえあってもよい。特定の動作モードでは、A4をA2の0.035%で維持することが有利であることが分かっている。
【0018】
同時に、振幅Anを有する任意の高次高調波について、nは、電場に存在し、3であるか、または4よりも大きく、A4は、一般的には、Anよりもはるかに大きくなる。つまり、A4は、一般的には、Anの10倍よりも大きくなり、およびAnの100倍またはAnの1000倍よりも大きくなり得る。
【0019】
(対称性)
四重極および八重極の構成要素に実質的に限定されるという点において、生成することができる電場の相対的な純度は、少なくとも部分的に、補助電極12を備える抽出領域中の線形イオントラップ20の対称性の結果として生じる。つまり、図2に示されるように、図1に示された線形イオントラップ20の抽出領域の中心軸に沿った任意の点において、中心軸に対して垂直な関連面は中心軸と交差し、第1の対の関連断面において第1の対のロッド26と交差し(図2で26としてマークされる)、第2の対の関連断面において第2の対のロッド28に交差する(図2で28としてマークされる)。この第1の対の関連断面26は、中心軸を中心として実質的に対称に分布し、中心軸に対して垂直な関連面内に位置し、第1の対の断面26の中の各断面26の中心を通過する第1の軸によって二等分される。第2の対の関連断面28は、中心軸を中心として実質的に対称に分布し、中心軸に対して垂直な関連面内に位置し、第2の対の断面28の中の各断面28の中心を通過する第2の軸によって二等分される。第1の軸と第2の軸とは、実質的に直交し、中心軸において交差する。
【0020】
抽出領域中の中心軸に沿った任意の点で、中心軸に対して垂直な関連面は、第1の対の補助断面で第1の対の補助電極12aと交差し(図2で12aとマークされる)、第2の対の関連補助断面で第2の対の補助電極12bと交差する(図2で12bと指定される)。第1の対の関連補助断面12aは、中心軸を中心として実質的に対称に分布し、中心軸に対して垂直な関連面内に位置し、第1の対の補助断面12aの中の各補助断面の重心を通過する第3の軸によって二等分される。第2の対の関連補助断面12bは、中心軸を中心として実質的に対称に分布し、中心軸に対して垂直な関連面内に位置し、第2の対の補助断面12bの中の各補助断面12bの重心を通過する第4の軸によって二等分される。再度、第3の軸と第4の軸とは、実質的に直交し、中心軸において交差し、第1の軸および第2の軸から実質的に45度の角度だけオフセットされている。
【0021】
(補助電極電圧)
独立の電力供給30によって補助電極12に提供されるDC電圧がロッドオフセットRO電圧よりも低いとき、または出口レンズ34に印加される障壁電圧がROよりも高いとき、イオンは、補助電極12を含有する線形イオントラップ20の抽出領域の中に蓄積することができる。いったんイオンが線形イオントラップ20の抽出領域の中に蓄積すると、以下でより詳細に説明されるように、たとえ補助電極に印加されるDC電圧がロッドオフセット電圧以上に上昇させられても、線形イオントラップ20の中央に向かう補助電極の上流端におけるカラー電極(図示せず)に、抽出領域内にイオンを閉じ込めるための好適な障壁電圧を提供することができる。
【0022】
具体的には、補助電極12によって生成されるDC電場は、二重作用を有することができる。第1に、上記で説明されるように、このDC電場は、線形イオントラップ20の抽出領域内にイオンを誘引し、ある程度含有するように、軸方向トラップを生成することができる。加えて、補助電極によって生成されるDC電場は、イオン雲の動態を変化させることができる、半径方向の八重極静電場を半径方向に導入することができる。これらの電場の強さは、例えば、電極に印加される電圧を変化させること、またはT字形電極の長方形の最上部の奥行きを変化させることによって、変化させることができる。随意で、それらの長さに沿った異なる点において異なる電圧を提供するようにセグメントが構成されている、セグメント化された補助電極を提供すること、または、例えば、線形トラップ20の中心軸に対して補助電極を分岐または集中させることによる等の、他のアプローチも使用することができる。同様に、補助電極20によって導入される非線形RF電場の強さは、結合コンデンサC1の値を変化させること、または補助電極12のT字形外形の奥行きを変化させること、あるいはテーパ状にすることによって、調整することができる。好ましくは、容量結合C1は、第1のRF電圧の大きさに対して補助RF電圧の大きさを調整可能に低減するように調整可能である。
【0023】
補助電極12に印加される補助RF電圧の大きさが、主要ロッドに印加されるRF電圧の大きさVに対して調整されることを可能にするために、容量結合C1を調整可能にさせることが望ましくなり得る。具体的には、走査速度が増加させられるにつれて、補助電極12に提供されるRFの割合を増加させることが望ましくなり得るが、多くの実施形態では、補助電極12に印加されるより高い大きさのRFも、より低い走査速度に有効であってもよい。
【0024】
種々の実施形態では、補助電極12に提供されるDC電圧の振幅は、放出されるイオンの特定の質量範囲および/または複数の質量範囲、ならびに質量選択的な軸方向放出の走査速度に対応する事前所望範囲内になるように選択することができる。
【0025】
例えば、ロッドオフセット電圧RO−160Vであるとき、補助T字形電極12に印加されるDC電圧は、1000Da/sの走査速度で、質量対電荷比118Daのイオンについては−159V、322Daについては−170V、622Daについては−190V、および922Daについては−210Vとなり得る。
【0026】
250Da/sのより低い走査速度において、T字形電極に印加されるDC電圧は、118Daイオンについては−162V、322Daについては−165V、622Daについては−185V、および922Daイオンについては−205Vとなり得る。
【0027】
随意で、補助電極12に提供されるDC電圧の振幅が調整されることに加えて、またはその代わりに、再度、放出されるイオンの特定の質量範囲および/または複数の質量範囲に応じて、補助電極12に提供される補助RF電圧を調整することができる。その場合、本発明の実施形態の側面によれば、第1の質量対電荷比の第1のイオン群を軸方向放出に選択することができる。この第1のイオン群が軸方向に放出された後、異なる質量対電荷比m/zの第2のイオン群を軸方向放出に選択することができる。次いで、その第2のイオン群の実際のm/zに向かって、その第2のイオン群の測定されたm/zをスライドさせるように、補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整することができる。この過程は、後続のイオン群に継続することができる。つまり、異なるm/zのイオンを有する空間電荷密度効果を未然に防ぐように、異なるDCまたは補助RF電圧を補助電極に提供することができる。
【0028】
(実験データ)
3Dおよび線形イオントラップの両方では、四重極イオン電場の中のイオンの運動の周波数は、イオン数または密度が増加するにつれて、直線的に下向きに偏移することができる。イオントラップ質量スペクトルでは、この挙動は、イオン強度の増加とともに、より高い質量に向かう観察質量ピークの質量偏移に転換することができる。また、ピーク幅も増加することができる。これは、低減した質量精度に、また、ピーク幅の増加により低減した分解能につながり得るため、望ましくない可能性がある。
【0029】
図3aおよび3bを参照すると、図1および2の線形イオントラップ20を使用して生成される線形イオントラップスペクトルが示されている。図3aが、イオンの実際の強度を描画する一方で、図3bは、充填時間が0.2msから4msに変化させられる際のイオンの相対強度を描画する。
【0030】
具体的には、図3aを参照すると、スペクトル40は、4msの充填時間を使用して生成され、スペクトル42は、2msの充填時間を使用して生成され、スペクトル44は、1msの充填時間を使用して生成され、スペクトル46は、0.5msの充填時間を使用して生成され、スペクトル48は、0.2msの充填時間を使用して生成された。
【0031】
重複スペクトル40、42、44、46、および48から分かるように、m/zを表すX軸に沿った中心ピークの位置は、実質的に不変である。これはまた、スペクトル40’が4msの充填時間に対するものであり、スペクトル42’が2msの充填時間を表し、スペクトル44’が1msの充填時間を表し、スペクトル46’が0.5msの時間を表し、スペクトル48’が0.2msの充填時間を表す、図3bに示された相対強度スペクトルによっても図示される。図3aと同様に、図3bは、補助電極12を備える、図1および2の線形イオントラップ20の使用が、どのようにピーク移動を有意に低減し、それにより、質量精度を向上させることができるかを示す。
【0032】
図4aおよび4bを参照すると、図1および2の線形イオントラップ20を使用して生成された付加的な線形イオントラップスペクトルが示されている。図4aが、イオンの実際の強度を描画する一方で、図4bは、充填時間が0.05msから5msまで変化させられる際のイオンの相対強度を描画する。
【0033】
図4aを再び参照すると、スペクトル50は、5msの充填時間を使用して生成され、スペクトル52は、0.5msの充填時間を使用して生成され、スペクトル54は、0.05msの充填時間を使用して生成された。関与する低いイオン強度により、スペクトル54は、図4aの最左ピークのみにおいて明瞭である。
【0034】
図3aおよび3bのスペクトルと同様に、重複スペクトル50、52、および54から、イオン密度または空間電荷が増加させられると、m/zを表すX軸に沿った中心ピークの位置は、実質的に不変であることが分かる。これはまた、スペクトル50’が5msの充填時間を表し、スペクトル52’が0.5msの充填時間を表し、スペクトル54’が0.05msの充填時間を表す、図4bに示された相対強度スペクトルによっても示される。したがって、図4aおよび4bはまた、充填時間が100倍まで増加させられ、イオン強度が比例的に増加するときでさえ、補助電極12を備える、図1および2の線形イオントラップ20の使用が、どのようにピーク移動を有意に排除できるかを示す。
【0035】
有意な八重極の構成要素を提供するように構成される四重極ロッドセットが以前から知られている。しかしながら、これらの有意な八重極構成要素を、実質的に四重極の電場に追加するために過去に使用された方法はまた、有意な他の高次構成要素も追加することができる。対照的に、補助電極12を備える、図1および2の線形イオントラップ20は、有意な他の高次構成要素を追加することなく、実質的に四重極の電場に有意な八重極構成要素を提供するために使用することができる。以下の説明では、生成されるこの電場の特性は、それが高次八重極構成要素を伴って実質的に四重極であり、電場の純度として、他の高次構成要素がほとんど、または全く説明されていない。
【0036】
具体的には、補助電極12とともに線形イオントラップ20を使用することによってイオンを処理するために、2次元で実質的に四重極の電場を線形イオントラップ20の抽出領域中に確立し、維持することができる。上記で説明されるように、電場は、振幅A2の四重極高調波と、振幅A4の八重極高調波とを備える。多くの実施形態では、A4は、A2の0.01%よりも大きい一方で、A2の0.5%未満である。上記で説明されるように、いくつかの実施形態では、A4は、実際には、A2の0.1%未満、またはA2の0.05%未満でさえあってもよい。代替として、いくつかの実施形態では、A4は、単にA2の1%または5%未満であってもよい。
【0037】
八重極構成要素を電場に追加する際に使用される特定のアプローチの結果として、最小の他の高次複数構成要素のみが追加される必要がある。したがって、振幅Anの任意の他の高次高調波について、高次とは、振幅A2を有する四重極高調波よりも高次であることを意味し、したがって、nは、4を除く2よりも大きい任意の整数であり、A4は、Anの10倍よりも大きくなる。言い換えれば、電場内の八重極構成要素は、六重極構成要素の振幅の10倍よりも大きい振幅、または八重極よりも高次の任意の高調波を有する。いくつかの実施形態では、A4は、六重極高調波の振幅の100倍よりも大きいか、または八重極よりも高次の任意の他の高調波であってもよく、またはA4は、Anの1000倍よりも大きくてもよい。
【0038】
実質的に、四重極構成要素および高次八重極構成要素のみを備える、この比較的純粋な電場は、補助電極12を備える線形イオントラップ20を使用して、提供し、維持することができる。具体的には、上記で説明されるように、第1の周波数で、第1の位相において、第1のRF電圧を第1の対のロッド26に提供することができる一方で、第2の周波数で、第2の位相において、第2のRF電圧を第2の対のロッド28に提供することができる。第2の周波数は、第1の周波数と等しくなり得て、第2の位相は、第1の位相と反対になり得る。その結果として、第1の周波数に等しい補助周波数で、補助RF電圧を4つの補助電極12に提供することができる。補助RF電圧はまた、第1の位相にもなり得る。DC電圧も、4つの補助電極12に提供することができる。4つの補助電極12に印加される、このDC電圧は、ロッド26、28に印加されるDCオフセット電圧ROとは異なり得る。
【0039】
イオンを、この電場の中に導入することができる。次いで、選択されたm/zを有するこの電場内のイオンの選択された部分は、軸方向に伝送され、線形イオントラップ20の下流にある検出器36を使用して検出されることができる。選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を検出することによって、線形イオントラップ20内のイオン密度に応じて、選択されたm/zに必ずしも対応しない、スライディングm/z測定を生成することができる。4つの補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧を調整することによって、空間電荷の問題を考慮するか、または未然に防ぐために、実際の選択されたm/zに向かって、このスライディングm/zを変化また移動させる(したがって、「スライドする」)ことができる。実際の選択されたm/zとは対照的に、より高い空間電荷密度が、測定されるスライディングm/zを増加させることができると考慮して、選択されたm/zに向かって下向きに、測定されるスライディングm/z比をスライドさせるように、4つの補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧を調整することができる。
【0040】
図5aおよび5bを参照すると、図1および2の線形イオントラップ20を使用して生成することができる線形イオントラップスペクトルが示されている。図5aが、イオンの実際の強度を描画する一方で、図5bは、イオンの相対強度を描画する。鎖線のスペクトル60が、選択された質量対電荷比のイオンについて生成された。質量スペクトル62は、同じ選択された質量対電荷比のイオンについて生成された。しかしながら、線形イオントラップ20内のイオン集団は、イオントラップスペクトル62を生成するために使用される線形イオントラップ20内のイオン集団と比較して、質量スペクトル60を生成するために20倍高かった。したがって、他の条件が同じなら、実線のスペクトル62に対して右側への鎖線のスペクトル60の若干の移動を誘導する、空間電荷効果を期待したかもしれない。しかしながら、これらの線形イオントラップスペクトルでは、このようになるとは思われない。
【0041】
具体的には、上記で説明されるように、図5aおよび5bの線形イオントラップスペクトルを生成するように線形イオントラップ20を操作する前に、線形イオントラップ20は、線形イオントラップ20の補助電極12に提供されるDC電圧の振幅を調整することによって較正することができる。具体的には、既知の理論的m/zの線形イオントラップ内のイオンの選択された部分を選択し、質量スペクトルを生成するように検出器へと軸方向に放出することができる。次いで、この測定された質量スペクトルを理論的質量スペクトルと比較することができ、補助電極12に提供されるDC電圧または補助RF電圧は、例えば、X軸に沿って左方向に測定されたスペクトルを偏移して、それを理論的スペクトルと整合させるように、例えば、増加させることができる。いったんこれが行われると、補助電極12に提供されるDC電圧は、図5aおよび5bに示された線形イオントラップスペクトルを生成するように、実質的に一定に保つことができる。当然ながら、幅広く異なるm/zのイオンを、線形イオントラップ20から連続して軸方向に放出することができる。放出される各選択されたイオンの質量対電荷比に適度に近い質量対電荷比の検量体イオンを含む、いくつかの異なる検量体イオンを使用することが望ましくてもよい。このようにして、異なるイオンの空間電荷密度問題に対処するために好適なDCまたは補助RF電圧の特定の振幅を、少なくとも近似的に決定することができる。
【0042】
図5aが、これらのイオンの実際の強度を描画する一方で、図5bは、イオンの相対強度を描画する。図3a、3b、4a、および4bの質量スペクトルと違って、図5aおよび5bの質量スペクトルでは、いくつかの小さいピークが、大きいか、または主要なピークの左側に形成される。これは、線形イオントラップが一般的には、低い質量対電荷比からより高い質量対電荷比へと走査されるために、重要である。したがって、これらのより低い質量対電荷比のイオンが線形イオントラップから軸方向に伝送されるときに、イオンの大部分は、依然として線形イオントラップの中にあり、それに対応して、空間電荷効果はさらに有意になる。これにもかかわらず、おそらく図5bの相対質量強度スペクトルで最も良く分かるように、線形イオントラップスペクトル60’は、ピークの全てに沿って、具体的には、大きいピークの左側の2つの小さいピークに沿って、線形イオントラップスペクトル62’と整合する。
【0043】
いったん4つの補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧が、スライディングm/z比を実際または理論的m/z比と合致させるように調整されると、次いで、かなり大きい質量範囲にわたって、DC電圧または補助RF電圧のさらなる調整が必要とされなくてもよい。例えば、中間空間電荷密度レベルを、実際または理論的m/zを有する選択されたイオンの線形イオントラップの中で提供することができる。次いで、4つの補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧は、実際または理論的m/zに向かって下向きに、測定されるスライディングm/z比をスライドさせるように調整することができる。後に、図3および4に関連して以下で説明されるように、線形イオントラップは、異なる試験において、非常に低い空間電荷密度における同じm/zのイオン、ならびに非常に高いm/z空間電荷密度におけるイオンを含有してもよい。しかしながら、両方の場合において、実際に測定される、検出またはスライディングm/z比は、4つの補助電極に提供されるDC電圧または補助RF電圧のさらなる調整を伴わずに、実際または理論的m/zに密接に対応することができる。
【0044】
いくつかの実施形態のいくつかの側面では、イオンの選択された部分を軸方向に伝送する前に、イオンの選択された部分は、補助電極26、28を備える線形イオントラップ20の抽出領域の中で捕捉することができる。抽出領域の下流端では、イオンの選択された部分は、出口レンズに提供される好適な障壁電圧によって軸方向に閉じ込めることができる一方で、抽出領域の上流端では、いったんイオンの選択された部分が抽出領域内に入ると、例えば、抽出領域の上流端におけるカラー電極(図示せず)に好適な障壁電圧を提供することによって、それらをそこに格納し、線形イオントラップ20内の抽出領域から外へ上流に戻るように軸方向に移動することを防止することができる。抽出領域の中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するために、第1の対のロッド26および第2の対ロッド28に提供されるROは、4つの補助電極に提供されるDC電極よりも高く維持することができ、出口レンズに提供されるDC捕捉電圧もまた、ロッドオフセットよりも高く維持することができる。この電圧の選択は、抽出領域の中へイオンの選択された部分を移動させることができる。いったんイオンの選択された部分が抽出領域内に入り、好適な障壁電圧がカラー電極に提供されると、カラー電極が抽出領域から外へのイオンの選択された部分の上流への移動を妨げることができるので、4つの補助電極に提供されるDC電圧は、その後に変化させることができ、ROよりも高く上昇させることさえできる。
【0045】
いくつかの実施形態では、A2のA4に対する比が、4つの補助電極12の長さに沿って変動するように、補助電極に印加される補助RF電圧によって電場に提供される寄与を変化させることによって、抽出領域の長さに沿って電場を変化させることができる。これは、例えば、1)セグメント化された補助電極を提供し、RF自体が変動するように、補助電極のセグメントのそれぞれにわずかに異なるRF電圧を印加することによって、2)補助電極をT字形電極にし、次いで、これらのT字形電極の長方形の上部を変化させることによって、または3)中心軸からの距離に関して補助電極を変化させることによって、行うことができる。
【0046】
図2に示されるように、双極励起AC電圧は、イオンの選択された部分に双極励起を提供するために、電圧源32によって第1の対のロッド26に提供されることができる。一般的に、この双極励起AC電圧は、補助電極の中のロッドに提供される他のRF電圧よりもはるかに低い周波数となる。このイオンの選択された部分の半径方向の励起は、例えば、米国特許第6,177,688号でHagerによって説明されているように、イオンの軸方向放出を促進することができる。
【0047】
双極補助信号を使用して、それらの基本的な長期周波数ω=βΩ/2においてイオンを励起させることができ、Ωは、RF駆動の角周波数であり、式中、βは、マシュー安定性パラメータaおよびqの関数である。極AおよびBに印加される電圧が、それぞれRO+U−VcosΩtおよびRO−(U−VcosΩt)であるとき、パラメータaおよびqは、a=4zU/(4mΩ)q=2zV/(4mΩ)によって求められ、式中、Uは、直接電圧であり、Vは、角周波数Ωの正弦波電圧のゼロからピークまでの振幅である。上記の実験の多くは、a=0、すなわち、U=0であるときに行われたが、線形イオンストラップがa>0において操作されたときに、空間電荷公差の向上も存在したことも実験的に観察されている。
【0048】
本発明の異なる実施形態の他の変化例および修正も可能である。例えば、補助電極は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端を越えて軸方向に延在してもよい。代替として、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端の手前で終端してもよい。本発明の他の実施形態では、イオンの選択された部分は、より高い分解能でイオンの選択された部分をさらに下流に伝送するために使用することができる、下流ロッドセットへと、線形イオントラップ20から軸方向に放出することができる。全てのそのような修正または変化例は、本明細書に添付された請求項によって定義されるような本発明の分野および範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形イオントラップの中においてイオンを処理する方法であって、該方法は、
a)2次元の実質的に四重極の電場を確立し、維持することであって、該電場は、振幅A2の四重極の高調波と、振幅A4の八重極の高調波とを備え、A4は、A2の0.01%よりも大きく、A4は、A2の5%未満であり、該電場に存在する振幅Anを有する任意の他の高次高調波について、nは、4を除く2よりも大きい任意の整数であり、A4は、Anの10倍よりも大きい、ことと、
b)イオンを該電場に導入することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記電場に存在する振幅Anを有する任意の高次高調波について、A4は、Anの100倍よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電場に存在する振幅Anを有する任意の高次高調波について、A4は、Anの1000倍よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記線形イオントラップは、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および該第1の対のロッドと該第2の対のロッドとの間に間置される4つの補助電極を備え、
前記電場を確立し、維持することは、i)第1の周波数で、および第1の位相において、該第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)該第1の周波数に等しい第2の周波数で、および該第1の位相と反対の第2の位相において、該第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)該第1の周波数に等しい補助周波数で、および実質的に該第1の位相において、該4つの補助電極に補助RF電圧を、iv)該4つの補助電極にDC電圧を提供することを含み、
該方法は、
該電場から前記イオンの選択された部分を軸方向に伝送することであって、該イオンの該選択された部分は、選択されたm/zを有する、ことと、
スライディングm/z比を中心とするスライディング質量信号ピークを提供するために、該イオンの該選択された部分を検出することと、
該選択されたm/zに向かって該スライディングm/z比をスライドさせるために、該4つの補助電極に提供される該補助RF電圧および該DC電圧のうちの少なくとも1つを調整することと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記4つの補助電極に提供される前記補助RF電圧および前記DC電圧のうちの少なくとも1つは、前記選択されたm/zに向かって下向きに前記スライディングm/z比をスライドさせるように調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記線形イオントラップシステムは、出口レンズをさらに備え、前記4つの補助電極は、4つのロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域の中において前記第1の対のロッドと前記第2の対のロッドとの間に間置される、請求項4に記載の方法であって、該方法は、前記イオンの前記選択された部分を軸方向に伝送する前に、該抽出領域の中において該イオンの該選択された部分を軸方向に捕捉することをさらに含む、方法。
【請求項7】
前記イオンの前記選択された部分を軸方向に伝送する前に、前記抽出領域の中において該イオンの該選択された部分を軸方向に捕捉することは、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドにロッドオフセット電圧を提供することであって、該ロッドオフセット電圧は、前記4つの補助電極に提供される前記DC電圧よりも高い、ことと、前記出口レンズに印加されるDC捕捉電圧を提供することとを含み、該ロッドオフセット電圧は、該出口レンズに印加される該DC捕捉電圧よりも低い、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記線形イオントラップシステムは、前記第1の対のロッド、前記第2の対のロッド、および前記4つの補助電極の放出端をさらに備える、請求項4に記載の方法であって、該方法は、A2のA4に対する比が、該4つの補助電極の長さに沿って変動するように、該補助RF電圧によって提供される前記電場への寄与を変化させることをさらに含む、方法。
【請求項9】
前記電場から前記選択されたm/zを有する前記イオンの前記選択された部分を軸方向に伝送することは、該選択されたm/zを有する該イオンの該選択された部分を半径方向に励起するように、前記第1の周波数よりも低い周波数で、前記第1の対のロッドまたは対角線上に配向された対の補助電極に双極励起AC電圧を提供することを含み、該対角線上に配向された対の補助電極は、相互よりも他の補助電極に近い、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記補助RF電圧は、前記第1の位相の10度以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記補助RF電圧は、前記第1の位相の1度以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電場から前記選択されたm/zを有する前記イオンの前記選択された部分を軸方向に伝送した後に、
該電場から該イオンの第2の選択された部分を軸方向に伝送することであって、該イオンの該第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ことと、
第2のスライディングm/z比を中心とする第2のスライディング質量信号ピークを提供するために、該イオンの第2の選択された部分を検出することと、
該第2の選択されたm/zに向かって該第2のスライディングm/z比をスライドさせるために、前記4つの補助電極に提供される前記補助RF電圧および前記DC電圧のうちの少なくとも1つを調整することと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
A4は、A2の0.1%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
中心軸と、
第1の対のロッドであって、該第1の対のロッドの各ロッドは、該中心軸から離間しており、およびそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、
第2の対のロッドであって、該第2の対のロッドの各ロッドは、該中心軸から離間しており、およびそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、
該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの長さのうちの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域の中において該第1の対のロッドと該第2の対のロッドとの間に間置される4つの補助電極であって、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を備える4つの補助電極と、
該第1の対のロッド、該第2の対のロッド、および該4つの補助電極に接続される電圧供給であって、RF電圧供給は、i)第1の周波数で、第1の位相において、該第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)該選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、該第1の対のロッドまたは対角線上に配向された対の補助電極に双極励起AC電圧を、iii)該第1の周波数に等しい第2の周波数で、該第1の位相と反対の第2の位相において、該第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iv)該第1の周波数に等しい補助周波数で、実質的に該第1の位相において、該4つの補助電極に補助RF電圧を提供するように動作可能であり、対角線上に配向された対の補助電極は、相互よりも他の補助電極に近い、電圧供給と
を備える、線形イオントラップシステム。
【請求項15】
前記ロッドセットおよび前記補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように配置される検出器をさらに備える、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項16】
前記電圧供給は、前記第1の対のロッドに前記第1のRF電圧を、前記4つの補助電極に前記補助RF電圧を提供するように動作可能な第1のRF電圧源と、該第1のRF電圧の大きさに対して該補助RF電圧の大きさを低減するために、該4つの補助電極を該第1のRF電圧源に接続するための容量結合とを備える、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項17】
前記容量結合は、前記第1のRF電圧の大きさに対して前記補助RF電圧の大きさを調整可能に低減するように調整可能である、請求項16に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項18】
前記RF電圧源は、前記第1の対のロッドに前記第1のRF電圧を提供するように動作可能な第1のRF電圧源と、前記4つの補助電極に前記補助RF電圧を提供するように動作可能な補助RF電圧源であって、該第1のRF電圧源に位相ロックされる補助RF電圧源とを備える、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項19】
前記補助電極に接続されるDC電圧源をさらに備え、該DC電圧源は、前記4つの補助電極に提供される前記DC電圧を変化させるように調整可能である、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項20】
前記補助RF電圧は、前記第1の位相の10度以内である、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項21】
前記補助RF電圧は、前記第1の位相の1度以内である、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項22】
前記中心軸の前記抽出部分は、該中心軸の半分未満を備える、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項23】
前記抽出領域は、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドの放出端を備え、前記4つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの該放出端を越えて軸方向に延在する、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項24】
前記抽出領域は、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドの放出端を備え、前記4つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの該放出端の手前で終端する、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項25】
前記中心軸に沿った任意の点において、
該中心軸に対して垂直な関連面は、該中心軸と交差し、第1の対の関連断面において前記第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面において前記第2の対のロッドと交差し、
該第1の対の関連断面は、該中心軸を中心として実質的に対称に分布し、該中心軸に対して垂直な該関連面内に位置し、前記第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する第1の軸によって二等分され、
該第2の対の関連断面は、該中心軸を中心として実質的に対称に分布し、該中心軸に対して垂直な該関連面内に位置し、該第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する第2の軸によって二等分され、
該第1の軸と該第2の軸とは、実質的に直交し、該中心軸で交差し、
前記抽出領域内に位置する該中心軸の抽出部分の中の該中心軸に沿った任意の点において、
該中心軸に対して垂直な該関連面は、第1の対の補助断面において前記第1の対の補助電極と交差し、第2の対の関連補助断面において前記第2の対の補助電極と交差し、
該第1の対の関連補助断面は、該中心軸を中心として実質的に対称に分布し、該中心軸に対して垂直な該関連面内に位置し、該第1の対の補助断面の中の各補助断面の重心を通過する第3の軸によって二等分され、
該第2の対の関連補助断面は、該中心軸を中心として実質的に対称に分布し、該中心軸に対して垂直な該関連面内に位置し、該第2の対の補助断面の中の各補助断面の重心を通過する第4の軸によって二等分され、
該第3の軸と該第4の軸とは、実質的に直交し、該中心軸において交差し、該第1の軸および該第2の軸から実質的に45度の角度だけオフセットしている、請求項14に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項26】
前記第1の対の補助断面および第2の対の補助断面の中の各断面は、長方形の最上部に接続される長方形の基礎部を備えて実質的にT字形である、請求項25に記載の線形イオントラップシステム。
【請求項27】
前記抽出領域は、前記第1の対のロッド、前記第2の対のロッド、および前記4つの補助電極の放出端を備え、前記第1の対の補助断面および前記第2の対の補助断面の中の各長方形の最上部は、該4つの補助電極の長さに沿ってテーパ状になる、請求項26に記載の線形イオントラップシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2012−532427(P2012−532427A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518708(P2012−518708)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001044
【国際公開番号】WO2011/003186
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】