説明

室内用効能成分供給装置

【課題】作業者の注意を喚起する室内用効能成分供給装置を提供する。
【解決手段】室内用効能成分供給装置10は、芳香成分を含んだ空気の渦輪V1を効能領域Aに向けて発射する空気砲11と、空気の渦輪V2を効能領域Aに向けて発射する空気砲12とを備える。渦輪V1,V2の発射タイミングを制御する制御ユニットは、渦輪V1の発射間隔に比べて渦輪V2の発射間隔を短くする警告モードを備えている。この警告モードを実行することにより、渦輪V2を効能領域Aで打ち消さずに作業者Wに当てることが可能となる。作業者Wの注意力が低下している状況のもとで警告モードを実行することにより、渦輪V2を用いて作業者Wに刺激を与えることができ、作業者Wの注意を喚起することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に効能成分を供給する室内用効能成分供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の環境を良好に保つため、芳香成分や湿気成分等(以下、効能成分という)を室内に供給する供給装置が提案されている。しかしながら、室内に多量の効能成分を充満させてしまうことは、利用者に対して効果的に効能成分を供給するものではなかった。そこで、利用者に向けて発射される渦輪に対して効能成分を含めるようにした供給装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この供給装置を用いることにより、効能成分を局所的に供給することができるため、利用者に対して効果的に効能成分を供給することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−81851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、効能成分として覚醒効果を有する芳香成分を用いることにより、利用者の眠気を解消して注意喚起を促すことが可能となる。このように、利用者の注意力を高めるように供給装置を利用することも可能であるが、利用者の注意力が著しく低下している場合には、芳香成分だけで注意力を回復させることは困難であった。
【0004】
本発明の目的は、利用者の注意を喚起することが可能な室内用効能成分供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の室内用効能成分供給装置は、第1空気渦を発射する第1発射手段と、第2空気渦を発射する第2発射手段と、前記第1空気渦と前記第2空気渦との少なくともいずれか一方に効能成分を供給する成分供給手段と、前記第1空気渦と前記第2空気渦との発射タイミングを制御する発射制御手段とを有し、前記発射制御手段は、前記第1空気渦と前記第2空気渦とを互いに衝突させて効能成分を拡散させる効能モードと、前記空気渦を互いに衝突させずに前記第1空気渦と前記第2空気渦との少なくともいずれか一方を利用者に衝突させる警告モードとを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の室内用効能成分供給装置は、利用者の覚醒度を検出する覚醒検出手段を有し、前記発射制御手段は利用者の覚醒度に基づいて警告モードを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1空気渦と第2空気渦との発射タイミングを制御する発射制御手段に、空気渦を互いに衝突させずに第1空気渦と第2空気渦との少なくともいずれか一方を利用者に衝突させる警告モードを設定するようにしたので、この警告モードを用いて利用者の注意を喚起することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である室内用効能成分供給装置10(以下、供給装置という)の利用状況を示す説明図である。また、図2は供給装置10の構成を示すブロック図であり、図3(A)および(B)は供給装置10が備える空気砲11,12の内部構造を示す説明図である。
【0009】
図1に示すように、事務室や管制室等の室内に配置される机13には、作業者(利用者)Wに芳香成分を供給する供給装置10が設置されている。図2に示すように、供給装置10にはメインユニット14が設けられ、このメインユニット14には空気砲(第1発射手段)11と空気砲(第2発射手段)12とが設けられている。また、空気砲11からは芳香成分を含んだ空気の渦輪(第1空気渦)V1が発射されており、空気砲12からは空気の渦輪(第2空気渦)V2が発射されている。これらの渦輪V1,V2は、作業者Wの鼻先に設定される効能領域Aにおいて互いに衝突するように発射され、芳香成分を効能領域Aで拡散させることが可能となっている。このように、一対の渦輪V1,V2を衝突させて渦輪V1,V2を打ち消すことにより、作業者Wに対して風圧による違和感を与えずに芳香成分を供給することが可能となる。
【0010】
図3(A)および(B)に示すように、空気砲11,12は、伸縮自在となる蛇腹形状のポンプ本体11a,12aと、ポンプ本体11a,12aを伸縮させるポンプ駆動部11b,12bと、円筒形状の砲身部11c,12cとによって構成されている。また、ポンプ駆動部11b,12bには前後進駆動されるロッド部材11d,12dが組み込まれており、このロッド部材11d,12dはポンプ駆動部11b,12b内の図示しない電動モータによって駆動される。そして、図3(B)に示すように、ロッド部材11d,12dを前進移動させてポンプ本体11a,12aを急速に縮めることにより、ポンプ本体11a,12a内の空気を渦輪V1,V2として発射することが可能となる。
【0011】
これらの空気砲11,12を駆動して渦輪V1,V2を発射させるため、メインユニット14には双方のポンプ駆動部11b,12bに接続される駆動回路部15が設けられている。この駆動回路部15には後述する制御ユニット(発射制御手段)22によって演算された発射信号が入力されており、駆動回路部15は発射信号に基づいてポンプ駆動部11b,12bに対する駆動電流を制御している。そして、この駆動電流をポンプ駆動部11b,12bに供給することにより、それぞれの空気砲11,12から所定の発射タイミングで渦輪V1,V2が発射されるようになっている。
【0012】
また、空気砲11に対して効能成分としての芳香成分を供給するため、メインユニット14には、芳香成分を発生させる効能気体発生部20が設けられるとともに、芳香成分を空気砲11の砲身部11cに送り込む効能気体充填部21が設けられている。つまり、効能気体発生部20と効能気体充填部21とは成分供給手段として機能している。効能気体発生部20は、芳香成分が貯留される図示しない複数の芳香容器や、芳香容器の開閉状態を制御する図示しない電磁バルブ等によって構成されている。また、効能気体充填部21は、芳香成分を砲身部11cに向けて圧送する図示しない圧送ポンプ等によって構成されている。そして、後述する制御ユニット22からの制御信号に応じて、電磁バルブの切換制御や圧送ポンプの駆動制御を実行することにより、空気取入口23から取り込まれた空気と共に芳香成分が、空気砲11の砲身部11cに対して供給されることになる。なお、空気砲12の砲身部12cに対して効能成分を充填することにより、空気砲12から効能成分を含んだ渦輪V2を発射させるようにしても良い。
【0013】
駆動回路部15、電磁バルブ、圧送ポンプ等に対して制御信号を出力する制御ユニット22は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMには制御プログラムや各種マップデータなどが格納されており、RAMにはCPUで演算処理したデータが一時的に格納されている。また、メインユニット14には作業者Wに操作されるスイッチ24が設けられており、CPUにはI/Oポートを介してスイッチ24から操作信号が入力されている。なお、作業者Wのスイッチ操作に応じて、スイッチ24からはオンオフ信号や芳香選択信号が出力されている。スイッチ24からのオンオフ信号によって供給装置10は作動状態と停止状態とに切り換えられ、スイッチ24からの芳香選択信号によって空気砲11に充填される芳香成分の種類が切り換えられる。
【0014】
また、メインユニット14には作業者Wの覚醒度(注意力)を検出する覚醒検出手段としての作業状態検知部30が組み込まれている。ここで、図4は作業状態検知部30の構成を示すブロック図である。図4に示すように、作業状態検知部30は、作業者Wの顔画像を取り込むカメラ31と、カメラ31からの画像信号を処理する覚醒度判定部32とを備えている。また、作業状態検知部30は、作業者Wの心拍を測定する心拍センサ33と、作業者Wの体の動きを検出する体動センサ34とを備えている。図1に示すように、心拍センサ33や体動センサ34は、作業者Wが座る椅子35に対して取り付けられており、作業者Wの心拍や動作を直接的に検出することが可能となっている。図4に示すように、覚醒度判定部32は、カメラ31からの画像信号、心拍センサ33からの心拍信号、体動センサ34からの体動信号に基づいて、作業者Wの覚醒度を総合的に判定する。そして、覚醒度判定部32によって判定された覚醒度は制御ユニット22に向けて出力され、この覚醒度情報は後述する渦輪V1,V2の発射モード切換制御に使用される。
【0015】
続いて、制御ユニット22によって実行される渦輪V1,V2の発射モード切換制御について説明する。図示する供給装置10は渦輪V1,V2の発射モードとして、作業者Wの覚醒度が低下していない状況において適用される効能モードと、作業者Wの覚醒度が低下している状況において適用される警告モードとを備えている。ここで、図5は効能モードにおける渦輪V1,V2の発射状況の一例を示す説明図であり、図6は警告モードにおける渦輪V1,V2の発射状況の一例を示す説明図である。
【0016】
作業者Wの覚醒度が低下していない状況、つまり作業者Wによって事務作業や監視作業等が適切に為されている状況では、図5に示すように、渦輪V1,V2を互いに衝突させて芳香成分を拡散させる効能モードが実行される。つまり、この効能モードにおいては、ほぼ同じ発射間隔で双方の渦輪V1,V2が発射されており、全ての渦輪V1,V2が効能領域Aで衝突するように制御されるため、作業者Wに対して違和感を与えずに効能成分を供給することが可能となる。なお、渦輪V1,V2の発射タイミングや、渦輪V1に含まれる芳香成分の種類等については、作業者Wのスイッチ操作等に応じて設定されている。
【0017】
一方、作業者Wの覚醒度が低下している状況、つまり作業者Wによって事務作業や監視作業等が適切に為されていない状況では、図6に示すように、いくつかの渦輪V2を渦輪V1と衝突させずに作業者Wに当てる警告モードが実行される。この警告モードにおいては、図6(A)に示すように、渦輪V1の発射間隔に比べて渦輪V2の発射間隔が短く設定されることから、図6(B)に示すように、いくつかの渦輪V2を効能領域Aで打ち消さずに作業者Wに衝突させることが可能となっている。この警告モードを実行することにより、渦輪V2を用いて作業者Wに刺激を与えることができ、作業者Wの覚醒度を引き上げることができるため、事務作業や監視作業を適切に再開させることが可能となる。また、警告モードにおいては、拡散させる芳香成分として覚醒効果を有するミント系や柑橘系の芳香成分が採用されており、触覚だけでなく嗅覚からも作業者Wに刺激を与えて覚醒度を引き上げている。
【0018】
また、警告モードによる渦輪V1,V2の発射タイミングとしては、図6に示す発射タイミングに限られることはなく、作業者Wの覚醒度に応じて渦輪V1,V2の発射間隔や発射頻度を適宜変更することが可能である。ここで、図7(A)および(B)は警告モードにおける渦輪V1,V2の発射状況の他の例を示す説明図である。図7(A)に示すように、渦輪V1を発射することなく渦輪V2だけを発射するようにしても良く、図7(B)に示すように、渦輪V2を発射することなく渦輪V1だけを発射するようにしても良い。例えば、作業者Wの覚醒度が著しく低下している場合には、図7(A)および(B)に示すような発射タイミングを採用することにより、作業者Wに多くの刺激を与えて作業者Wを十分に覚醒させることが可能となる。
【0019】
次いで、前述した警告モードの実行手順をフローチャートに従って説明する。ここで、図8は警告モードの実行手順を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップS1では、作業状態検知部30によって作業者Wの覚醒度が検出され、続くステップS2では、作業者Wの覚醒度が所定レベルを下回るか否かが判定される。そして、ステップS2において、作業者Wの覚醒度が所定レベルを下回っており、適切な事務作業や監視作業が為されていないと判定された場合には、ステップS3に進み、警告モードによる渦輪V1,V2の発射準備が開始される。一方、ステップS2において、作業者Wの覚醒度が所定レベルを上回っており、適切な事務作業や監視作業が為されていると判定された場合には、警告モードを実行することなくルーチンを抜けることになる。
【0020】
ステップS3では、作業状態検知部30によって検出された作業者Wの覚醒度に応じて、渦輪V1,V2の発射タイミングが設定されるとともに、空気砲11に充填される芳香成分の種類が設定される。そして、制御ユニット22から効能気体発生部20や効能気体充填部21に対して制御信号が出力され、空気砲11に対して芳香成分の充填が開始される。次いで、ステップS4に進み、制御ユニット22から駆動回路部15に対して発射タイミングが入力され、それぞれの空気砲11,12から警告モード用の渦輪V1,V2が発射される。
【0021】
続くステップS5では、警告モードの実行によって作業者Wの覚醒度が回復したか否かが判定される。ステップS5において、作業者Wの覚醒度が回復したと判定された場合には、警告モードによって適切に事務作業や監視作業が再開された状況であるため、警告モードを終了してルーチンを抜ける。一方、ステップS5において、作業者Wの覚醒度が回復していないと判定された場合には、再びステップS3から、適切に事務作業や監視作業が再開される迄、作業者Wに対して渦輪V2を当てる警告モードが実行されることになる。
【0022】
なお、前述の説明では、効能成分として芳香成分を発生させるようにしているが、これに限られることはなく、効能成分として作業者Wに潤いや清涼感を与えるマイクロミスト(湿気成分,空気中に浮遊する微細な水分粒子)を発生させるようにしても良い。また、効能成分として、消臭効果を有するオゾンを発生させるようにしても良く、作業者Wの覚醒効果を有する酸素を発生させるようにしても良い。つまり、効能気体発生部20に対して、超音波振動等によりマイクロミストを発生させるミスト発生機構を設けるようにしても良く、無声放電等によりオゾン(O)を発生させるオゾン発生機構を設けるようにしても良く、酸素富化膜等により酸素濃度を高める酸素濃縮機構を設けるようにしても良い。
【0023】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前述の説明では、事務室や管制室に供給装置10を設置しているが、これに限られることはなく、様々な作業を行う環境に設置することが可能である。例えば、会議室、教室、家庭等に供給装置10を設置しても良い。また、図示する場合には、机13の上に供給装置10を設置しているが、この位置に限られることはなく、壁や天井等に供給装置10を設置することも可能である。
【0024】
また、前述の説明では、電動モータを駆動してロッド部材11d,12dを突出させることにより、空気砲11,12から渦輪V1,V2を発射させるようにしているが、この構造に限られることはなく、空気砲11,12に電磁コイルと可動鉄心とを組み込むことにより、電磁力を用いて空気砲11,12から渦輪V1,V2を発射させるようにしても良い。また、空気砲11,12は蛇腹形状のポンプ本体11a,12aを備えているが、ダイアフラムを用いて空気を押し出すようにしても良い。さらに、図示する場合には、空気砲11,12から環状の渦輪V1,V2を発射するようにしているが、第1空気渦および第2空気渦の形状としては、環状に限られることはなく、まとまった形状で所定距離を飛ばすことが可能であれば、いかなる形状の空気渦であっても良い。
【0025】
なお、図示する場合には、空気砲11,12が固定された構造となっているが、電動モータ等を用いて空気砲11,12を回動させるようにしても良い。このように、空気砲11,12を回動可能な構造とすることにより、警告モードを実行する際には、作業者Wに対してより的確に渦輪V1,V2を当てることが可能となる。さらに、効能モードを実行する場合であっても、適切に効能領域Aを設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態である室内用効能成分供給装置の利用状況を示す説明図である。
【図2】室内用効能成分供給装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)および(B)は室内用効能成分供給装置が備える空気砲の内部構造を示す説明図である。
【図4】作業状態検知部の構成を示すブロック図である。
【図5】効能モードにおける渦輪の発射状況の一例を示す説明図である。
【図6】(A)および(B)は警告モードにおける渦輪の発射状況の一例を示す説明図である。
【図7】(A)および(B)は警告モードにおける渦輪の発射状況の他の例を示す説明図である。
【図8】警告モードの実行手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
10 供給装置(室内用効能成分供給装置)
11 空気砲(第1発射手段)
12 空気砲(第2発射手段)
20 効能気体発生部(成分供給手段)
21 効能気体充填部(成分供給手段)
22 制御ユニット(発射制御手段)
30 作業状態検知部(覚醒検出手段)
V1 渦輪(第1空気渦)
V2 渦輪(第2空気渦)
W 作業者(利用者)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空気渦を発射する第1発射手段と、
第2空気渦を発射する第2発射手段と、
前記第1空気渦と前記第2空気渦との少なくともいずれか一方に効能成分を供給する成分供給手段と、
前記第1空気渦と前記第2空気渦との発射タイミングを制御する発射制御手段とを有し、
前記発射制御手段は、前記第1空気渦と前記第2空気渦とを互いに衝突させて効能成分を拡散させる効能モードと、前記空気渦を互いに衝突させずに前記第1空気渦と前記第2空気渦との少なくともいずれか一方を利用者に衝突させる警告モードとを備えることを特徴とする室内用効能成分供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の室内用効能成分供給装置において、
利用者の覚醒度を検出する覚醒検出手段を有し、前記発射制御手段は利用者の覚醒度に基づいて警告モードを実行することを特徴とする室内用効能成分供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−22578(P2010−22578A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187242(P2008−187242)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】