説明

室内空気品質向上用の多層光触媒/熱触媒

層状光触媒/熱触媒被覆は、その被覆上に吸着する汚染物質を、水、二酸化炭素および他の物質に酸化する。層状被覆は、揮発性有機化合物を酸化する二酸化チタンの光触媒外層を含む。被覆はさらに、低極性有機分子を酸化するVIII族貴金属ドープ二酸化チタンの中間層を含む。二酸化チタン上の金の内層が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。紫外光の光子が、被覆により吸収されると、反応性ヒドロキシルラジカルが形成される。汚染物質が被覆上に吸着されると、ヒドロキシルラジカルが汚染物質を酸化して、水、二酸化炭素および他の物質を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、多層光触媒/熱触媒(thermocatalyst)被覆に関し、これは、オゾンを分解し、またその光触媒表面上に吸着される揮発性有機化合物、低極性有機分子および一酸化炭素を含む気体状汚染物質を酸化して、二酸化炭素、水および他の物質を形成する。
【背景技術】
【0002】
室内空気は、一酸化炭素、オゾンならびにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、プロパナールおよびブテンその他などの揮発性有機化合物(volatile organic compound)(VOC)を含む痕跡量の汚染物質を含みうる。空気から揮発性有機化合物を除去するために、活性炭などの吸収剤空気フィルターが使用されている。空気がフィルターを通して流れる際に、フィルターは汚染物質の通過を阻止するので、汚染物質のない空気をフィルターから流すことができる。フィルターを使用することの欠点は、これらが、汚染物質の通過を単に阻止するだけであって、これらを破壊しないことである。加えて、空気フィルターは、一酸化炭素やオゾンを阻止するためには有効ではない。
【0003】
二酸化チタンは、汚染物質、特に極性有機分子を破壊するための光触媒として空気浄化装置中で使用されている。二酸チタンに紫外光が照射されると、光子が二酸化チタンに吸収され、価電子帯から伝導帯へと電子を上げる。すると、価電子帯に正孔が生じ、電子が伝導帯に付加される。上げられた電子は酸素と反応し、価電子帯に残っている正孔は水と反応して、反応性ヒドロキシルラジカルを形成する。汚染物質が、二酸化チタン触媒上に吸着すると、ヒドロキシルラジカルが攻撃し、汚染物質を、水、二酸化炭素および他の物質に酸化する。
【0004】
ドープされているか、金属酸化物処理された二酸化チタンは、二酸化チタン光触媒の有効性を高める。しかしながら、二酸化チタンおよびドープされた二酸化チタンは、一酸化炭素や低極性有機分子を酸化する際には、またオゾンを分解する際には、効果が少ないか、または有効ではない。一酸化炭素(CO)は、無色無臭の有毒ガスであり、これは、炭化水素燃料の不完全燃焼により形成される。一酸化炭素は、他の毒よりも多くの死の原因であり、室内空気中では不適切な喚起、タバコの煙により、もしくは室外空気では自動車の排気により増加しうる。一酸化炭素中毒は、長時間にわたって少量の一酸化炭素が存在する際に生じうる。脳、心臓および肺などのダメージを受けやすい臓器は、酸素不足の被害を最も被る。8時間平均でのEPA規定暴露(mandated exposure)は、30ppmと設定されている。
【0005】
オゾン(O3)は、コピー機、プリンター、スキャナーなどの職場に通常存在する機器から放出される汚染物である。オゾンは、吐き気および頭痛を誘発することがあり、長期間オゾンにさらされると、鼻粘膜がダメージを受けて、呼吸に問題が生じうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、オゾンを酸素に分解し、また光触媒表面上に吸着される一酸化炭素、低極性有機化合物および揮発性有機汚染物質を酸化して、二酸化炭素、水および他の物質を形成する多層光触媒/熱触媒被覆が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基体上の層状光触媒/熱触媒被覆は、その被覆上に吸着する任意の汚染物質を、酸素、水、二酸化炭素および他の物質に分解および酸化することにより、建物または乗り物内の空気を浄化する。
【0008】
ファンが、空気を空気浄化システム中に引込む。空気は、ハニカムの開放通路またはチャネルを通して流れる。ハニカムの表面は、層状光触媒/熱触媒被覆で被覆されている。連続するハニカムの間に配置されている紫外線光源が、被覆を活性化する。
【0009】
被覆は、揮発性有機化合物を二酸化炭素、水および他の物質に酸化する二酸化チタンまたは金属酸化物負荷二酸化チタンの光触媒外層を含む。貴金属/二酸化チタン被覆の光触媒中間層が、外層の下に配置される。中間層の下には、ハニカム上に付与される二酸化チタン上のナノ分散金の光触媒/熱触媒内層がある。
【0010】
紫外光の光子が、二酸化チタンの外層により吸収されると、反応性ヒドロキシルラジカルが形成される。揮発性有機化合物などの汚染物質が、被覆上に吸着されると、このヒドロキシルラジカルが揮発性有機化合物を攻撃して、水素原子を揮発性有機化合物から引抜き、揮発性有機化合物を、水、二酸化炭素および他の物質に酸化する。外層は、2μm未満の厚みを有し、光子に外層を透過させて、下に位置する白金/二酸化チタンの光触媒層に到達させる。
【0011】
二酸化チタンの表面上に堆積された白金は、電荷キャリアの分離を向上させ、電子および正孔の再結合速度を低下させる。白金はまた、良好な熱触媒である。白金は光触媒酸化中間体を二酸化炭素および水にさらに酸化できると考えられる。
【0012】
一酸化炭素は、多孔質層を通って拡散し、内層に到達できる。室温で、金/二酸化チタン層は一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。一酸化炭素が被覆上に吸着されると、金は、酸化触媒として作用して、一酸化炭素のエネルギー障壁を低下させて、酸素の存在下で一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。
【0013】
オゾン濃度が非常に高い環境中では、酸化マンガン/二酸化チタンの第四の層が、内層の下でハニカム上に付与される。オゾンも多孔質層を通って拡散し、内層に到達できる。オゾンが酸化マンガン/二酸化チタン被覆上に吸着されると、酸化マンガンは、室温において、または紫外光により生成される熱に起因してわずかに上昇した温度において、オゾンを分子状酸素に分解する。
【0014】
次の詳述および図面により、本発明のこれらの形態や他の形態をさらに良好に理解することができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
現在好ましい実施形態の次の詳述により、本発明の様々な形態および利点が、当業者に明らかになるであろう。詳述を伴う図面を、簡単には次のように説明することができる。
【0016】
図1は、部屋、オフィスもしくは車、列車、バスまたは航空機などの乗り物のキャビンなどの室内空間12を含む建物、乗り物または他の構造物10を概略的に示す図である。HVACシステム14が、室内空間12を暖房または冷房する。室内空間12内の空気は、通路16によって、HVACシステム14中に引込まれる。HVACシステム14は、室内空間12から引出された空気16の温度を変える。HVACシステム14が冷房モードで作動しているならば、空気は冷却される。代わって、HVACシステム14が暖房モードで作動しているならば、空気は加熱される。次いで、空気は、通路18によって室内空間12へと戻されて、室内空間12内の空気温度は変わる。
【0017】
図2は、揮発性有機化合物および半揮発性有機化合物、一酸化炭素などの汚染物質を、水、二酸化炭素および他の物質に酸化することにより、建物または乗り物10内の空気を浄化するために使用される空気浄化システム20を示す概略図である。例えば、揮発性有機化合物は、アルデヒド、ケトン、アルコール、芳香族化合物、アルケンまたはアルカンであってよい。空気浄化システム20はまた、オゾンを酸素に分解する。空気浄化システム20は、空気を浄化し、その後、これを、通路16でHVACシステム14に引き入れることもできるし、またはHVACシステム14から出た空気を浄化して、その後これを、通路18で、建物または乗り物10の室内空間12に引き入れることができる。空気浄化システム20は、HVACシステム14と共に使用されない独立ユニットであってもよい。
【0018】
ファン34は、入口22を通して、空気浄化システム20に空気を引込む。空気は、粒子フィルター24を通して流れるが、これは、埃または任意の他の大きな粒子を、これらの粒子の流れを阻止することによりフィルター除去する。次いで、空気は、ハニカムなどの基体28を通して流れる。一例では、ハニカム28は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から製造される。図3は、複数の六角形開放通路またはチャネル30を有するハニカム28の正面図を示す概略図である。複数の開放通路30の表面は、層状光触媒/熱触媒被覆40で被覆されている。
【0019】
図4に示すように、本発明の被覆40は、少なくとも三つの層を含む。好ましくは、被覆40は、ハニカム28上に約0.5〜1mg/cm2の負荷を有する。被覆40は、二酸化チタンまたは金属酸化物ドープ二酸化チタンの外層42を含む。外層42は、アルデヒド、ケトン、アルコール、芳香族化合物、アルケンまたはアルカンなどといった揮発性有機化合物および半揮発性有機化合物を酸化するのに有効である。二酸化チタンは、揮発性有機化合物を二酸化炭素、水および他の物質に酸化するのに有効な光触媒である。外層42は、有効な厚み(2μm未満)および多孔度を有する。すなわち、外層42は、低極性有機化合物、一酸化炭素およびオゾンなどといった外層42によって酸化されない他の汚染物質を、外層42を通して拡散させ、外層42の下の層上に吸着させる。
【0020】
連続するハニカム28の間に配置される光源32が、開放通路30の表面の光触媒被覆40を活性化する。図に示されているように、ハニカム28および光源32は、空気浄化システム20内に交互に存在する。即ち、各ハニカム28の間に、光源32は位置している。好ましくは、光源32は、180ナノメートルから400ナノメートルの範囲の波長を有する光を発生させる紫外線光源である。
【0021】
光源32が照射されると、ハニカム28の表面上の外層42が活性化される。紫外光の光子が、外層42により吸収されると、電子が、価電子帯から伝導帯へと上げられ、価電子帯に正孔が生成される。伝導帯へ上げられた電子は、酸素に捕獲される。価電子帯の正孔は、外層42上に吸着される水分子と反応して、反応性ヒドロキシルラジカルを生成する。
【0022】
揮発性有機化合物が、外層42上に吸着されると、ヒドロキシルラジカルが揮発性有機化合物を攻撃し、水素原子を揮発性有機化合物から引抜く。こうして、ヒドロキシルラジカルが、揮発性有機化合物を酸化し、水、二酸化炭素および他の物質を生成する。
【0023】
好ましくは、光触媒は、二酸化チタンである。一例では、二酸化チタンは、ミレニウム(Millennium)チタニア、デグッサ(Degussa)P−25または同等の二酸化チタンである。しかしながら、他の光触媒物質もしくは二酸化チタンと他の金属酸化物との組み合わせを使用することもできることは理解されるべきである。例えば、光触媒物質は、Fe23、ZnO、V25、SnO2またはFeTiO3であってよい。加えて、Fe23、ZnO、V25、SnO2、CuO、MnOx、WO3、Co34、CeO2、ZrO2、SiO2、Al23、Cr23またはNiOなどの他の金属酸化物を二酸化チタンと混合することもできる。
【0024】
さらに、外層42が、金属酸化物負荷二酸化チタンである場合は、中間層44の二酸化チタンに、WO3、ZnO、CdS、SrTiO3、Fe23、V25、SnO2、FeTiO3、PbO、Co3O4、NiO、CeO2、CuO、SiO2、Al23、Mnx2、Cr23またはZrO2などといった金属化合物を負荷することができる。
【0025】
二酸化チタン上に担持された触媒活性な金属の中間層44、あるいは高度に分散された触媒活性な金属または金属を有する二酸化チタン単層処理光触媒の中間層44が、外層42の下に付与される。好ましくは、二酸化チタンには、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、オスミウムまたは白金などのVIII族貴金属を負荷する。しかしながら、二酸化チタンには、銅、銀、ルテニウム、金および同様のものなどを負荷してもよい。より好ましくは、このような一つまたは複数の金属は、触媒が期待される基体をいくらか考慮して選択される。したがって、二つ以上の金属を使用する場合は、金属は、個々の金属を含有する非常に小さなナノ結晶として、または非常に小さな混合金属クラスターとして分散させることができる。一般に、この機能のための触媒金属は、白金である。触媒活性な金属は、金属合金または金属間化合物であってもよい。
【0026】
二酸化チタン中間層44上に担持される触媒活性な金属は、低極性有機化合物と高度に反応性である。二酸化チタンの表面上に堆積された白金は、電荷キャリアの分離を向上させ、電子および正孔の再結合速度を低下させる。白金はまた、良好な熱触媒である。白金は光触媒酸化中間体を二酸化炭素および水にさらに酸化できると考えられる。低極性有機分子は、白金に増加した親和性を有する。低極性有機化合物が白金上に吸着すると、白金は、ヒドロキシルラジカルによる酸化のために、低極性有機化合物を被覆40上に保持し、酸素の存在下で低極性有機化合物を二酸化炭素に酸化する。
【0027】
二酸化チタン上に分散された白金は、50ppmより低いなどといった低い汚染物質濃度に対して光触媒作用を示す。オゾン、エチレンおよびブタンの光触媒酸化速度は、二酸化チタン上の白金では、二酸化チタン単独よりも大きい。光触媒酸化速度は、二酸化チタン上の白金にわたるオゾンおよびブタンでは二倍に、エチレンでは2から14倍になる。エチレンの光触媒酸化速度は、水分およびエチレンの濃度に依存する。驚くべきことに、これらの汚染物質の光触媒酸化は、水蒸気の増加とともに増加する。これとは対照的に、二酸化チタン単独での汚染物質の光触媒酸化は、水分の増加とともに低下する。
【0028】
二酸化チタンの表面に位置する高度に分散された白金粒子は、電子および正孔の再結合速度を低下させ、被覆の光触媒活性を高める。好ましくは、白金粒子は、5ナノメートル未満のサイズを有しており、約1.0〜1.5ナノメートルの白金の島(island)を形成する。好ましい白金負荷は、0.1%と5.0%の間である。
【0029】
中間層44は、有効な厚みおよび多孔度を有する。すなわち、中間層44は、一酸化炭素およびオゾンなどといった中間層44によって酸化されない他の汚染物質を、中間層44を通して通過させ、中間層44の下の層上に吸着させる。
【0030】
熱触媒内層46が、中間層44の下でハニカム28の表面上に付与されかつ堆積される。内層46は、二酸化チタン上のナノ分散金、二酸化チタンを含む混合金属酸化物上の金、表面上に他の金属酸化物を負荷された二酸化チタン上の金、または混合金属クラスターを含有する金である。
【0031】
室温で、内層46は、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。一酸化炭素が被覆に吸着すると、金は、酸化触媒として作用し、一酸化炭素のエネルギー障壁を低下させて、酸素の存在下で一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。したがって、内層46は、熱触媒として作用する。
【0032】
一酸化炭素酸化は主に、金粒子の境界面で生じる。一酸化炭素は、金の表面または境界部位に吸着されて、カルボニル化学種を形成する。酸素は、金/二酸化チタン表面に吸着される。酸素は、境界面に吸着されると考えられる。境界部位のカルボニル化学種は酸素と反応して、酸素−金−一酸化炭素複合体を形成する。この複合体が、形成された二酸化炭素へと分解する。
【0033】
好ましくは、金粒子は、3ナノメートル未満のサイズを有する。熱触媒機能に関して、金粒子のサイズは、一酸化炭素酸化の活性に対しても重要であり、これは、金がナノ粒子で形成されていることに依存する。
【0034】
二酸化チタンに金属酸化物を負荷して、内層46の熱触媒有効性をさらに改善することもできる。金粒子は、二酸化チタンの表面で移動して、大きなクラスターを形成する傾向を有する。この金粒子の移動により、内層46の有効性が低減することがある。二酸化チタンの表面に金属酸化物を負荷することにより、金属酸化物が金粒子を分離して、これらが移動して、クラスターを形成することを防ぎ、それによって、内層46の有効性を増大させることができる。好ましくは、金属酸化物を使用して、金粒子を二酸化チタンの表面に固定化する。一例では、金属酸化物は、WO3、ZnO、CdS、SrTiO3、Fe23、V25、SnO2、FeTiO3、PbO、Co3O4、NiO、CeO2、CuO、SiO2、Al23、Mnx2、Cr23またはZrO2のうちの少なくとも一つである。
【0035】
これは、二酸化チタンを含んでもよいし、あるいは、3nm未満の金粒子のためのアンカー部位として機能する鉄、コバルトおよびルテニウムおよび同様のものなどといった他の金属の一個または通常は12個より少ないが複数個の酸化された原子を含有する孤立した部位で飾られた二酸化チタンを有する他の金属酸化物の単層で処理された二酸化チタンを含んでもよい。二酸化チタンまたはその処理金属単層で囲まれる表面ドーパント部位は、金の自由移動を束縛する表面エネルギーポテンシャル井戸として機能する。
【0036】
内層46は、有効な厚みおよび多孔度を有する。すなわち、内層46は、オゾンなどといった内層46によって酸化されない他の汚染物質を、内層46を通して通過させ、内層46の下にある任意の層上に吸着させることができる。
【0037】
図5に示すように、オゾン濃度が非常に高い環境中では、熱触媒の第四の層48を、内層46の下で直接ハニカム28上に付与することができる。第四の層48は、酸化マンガン/二酸化チタンオゾン破壊触媒である。室温で、第四の層48は、オゾンを酸素に分解する。
【0038】
周囲温度では、酸化マンガンは、オゾンを分解するのに有効である。酸化マンガンは、吸着表面酸素原子へのオゾンの分解を促進する。これらの酸素原子は次いでオゾンと結合して吸着過酸化物化学種を形成し、この吸着過酸化物化学種が分子状酸素として脱着される。オゾンが酸化マンガン上に吸着すると、酸化マンガンは、オゾン分解に必要なエネルギー障壁を低下させることにより、解離的オゾン吸着の部位として作用する。したがって、オゾンが単独で存在する場合には、酸化マンガンおよび促進剤ドープ酸化マンガンを含む酸化マンガンは、酸素を生成する。
【0039】
第四の層48を使用する場合は、第四の層48がハニカム28上に付与され、内層46が第四の層48上に付与され、中間層44が内層46上に付与され、外層42が中間層44上に付与される。
【0040】
ハニカム28を通過した後、次に、浄化された空気を、出口36を通して空気浄化装置から排出する。空気浄化システム20の壁38は好ましくは、反射性物質42でライニングされている。反射性物質42は、ハニカム28の開放通路30の表面へと紫外光を反射する。
【0041】
さらに、被覆プロセスの詳細な説明は、「室内空気品質向上用の酸化タングステン/二酸化チタン光触媒」という名称で2003年5月30日に出願された同時係属の特許出願である出願番号第10/449,752号、「室内空気品質向上用の二機能酸化マンガン/二酸化チタン光触媒/熱触媒」という名称で2003年6月19日に出願された特許出願である出願番号第10/464,942号、および、「室内空気品質向上用の二機能金/二酸化チタン光触媒/熱触媒」という名称で2003年6月19日に出願された係属中の特許出願である出願番号第10/465,025号に開示されており、これらの開示は、参照することによってその全部を組み込むものである。二機能酸化マンガン/二酸化チタン光触媒/熱触媒に関する関連情報も、係属中の特許出願である出願番号第10/464,942号に開示される。二機能金/二酸化チタン光触媒/熱触媒に関する関連情報も、係属中の特許出願である出願番号第10/465,024号に開示される。
【0042】
図6は、空気浄化システム50の代替の例を示す図である。この例では、空気は最初に、第一のハニカム52を通り、第二のハニカム54を通り、次いで酸化マンガン/二酸化チタン被覆を有する第三のハニカム56を通って流れる。第一のハニカム52および第二のハニカム54のうちの一方は、二酸化チタン被覆または金属酸化物ドープ二酸化チタン被覆を有する。金属酸化物は、WO3、ZnO、SrTiO3、Fe23、V25、SnO2、FeTiO3、PbO、Co3O4、NiO、CeO2、CuO、SiO2、Al23、Mnx2、Cr23またはZrO2とすることができる。金属酸化物ドープ二酸化チタン被覆は、揮発性有機化合物および半揮発性有機化合物などの汚染物質を、水および二酸化炭素に酸化する。第一のハニカム52および第二のハニカム54のうちの他方は、一酸化炭素を、水および二酸化炭素に酸化する金/二酸化チタン被覆を有する。酸化マンガン/二酸化チタン被覆は、オゾンを酸素および水に分解する。
【0043】
金属酸化物ドープ二酸化チタン被覆を有するハニカムと、金/二酸化チタン被覆を有するハニカムと、酸化マンガン/二酸化チタン被覆を有する第三のハニカム54とを使用することで、一酸化炭素、オゾン、揮発性有機化合物および半揮発性有機化合物を酸化し、破壊することができる。したがって、金属酸化物ドープ二酸化チタン被覆ハニカムと、金/二酸化チタン被覆ハニカムと、酸化マンガン/二酸化チタン被覆ハニカム60とを含む空気浄化システム50は、酸化マンガン/二酸化チタンの層48と、金/二酸化チタンの層46と、金属酸化物/二酸化チタンの層42とを有する層状被覆と同じ機能を達成できる。
【0044】
ハニカム52、54および56は、任意の順になってもよいことは理解されるべきである。しかしながら、オゾンは強い酸化剤であり、光触媒酸化過程を助けることができる。したがって、空気は、最後に金属酸化物ドープ二酸化チタンハニカム56を通って流れるのが望ましい。あるいは、空気浄化システム50は、二つ以上の第一のハニカム52、第二のハニカム54、および第三のハニカム56を含む。
【0045】
ハニカム28が描出および記載されているが、光触媒/熱触媒被覆40を任意の構造物に付与することができることは、理解されるべきである。ハニカム28の空隙は通常、形状が六角形であるが、他の空隙形状を使用することもできることは理解されるべきである。汚染物質が、光源の存在下で構造物の光触媒/熱触媒被覆40上に吸着すると、汚染物質は、水、二酸化炭素および他の物質に酸化される。
【0046】
前記記載は、本発明の原理を例示しているにすぎない。前記教示に従い、本発明の多くの変更および変化が可能である。本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者であれば、一定の変更も、本発明の範囲内であることを認めるであろう。したがって、添付の請求項の範囲内で、特に記載したとは別に、本発明を実施することもできることは理解されるであろう。このため、本発明の真の範囲および内容を決定するためには、この請求項を検討すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】屋内空間およびHVACシステムを含む建物、乗り物または他の構造物などの閉ざされた環境を示す概略図。
【図2】本発明の空気浄化システムを示す概略図。
【図3】空気浄化システムのハニカムを示す概略図。
【図4】本発明の層状光触媒の第一の例を示す概略図。
【図5】本発明の層状光触媒の第二の例を示す概略図。
【図6】空気浄化システムの代替の実施態様を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に付与されている層状触媒被覆であって、光触媒被覆の第一の層と、光触媒金属負荷金属化合物被覆の第二の層と、熱触媒被覆の第三の層とを備える層状触媒被覆と、
を備えることを特徴とする浄化システム。
【請求項2】
前記第一の層は、二酸化チタンおよび金属化合物負荷二酸化チタンの一方であることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項3】
前記第一の層は、金属化合物負荷二酸化チタン被覆であり、この金属化合物は、WO3、ZnO、CdS、SrTiO3、Fe23、V25、SnO2、FeTiO3、PbO、Co3O4、NiO、CeO2、CuO、SiO2、Al23、Mnx2、Cr23およびZrO2のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項2記載の浄化システム。
【請求項4】
前記第一の層は、2μm未満の厚みを有することを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項5】
前記第二の層は、二酸化チタン上に担持された触媒活性な金属であることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項6】
前記触媒活性な金属は、前記二酸化チタン上に担持された金属合金および金属間化合物の一方であることを特徴とする請求項5記載の浄化システム。
【請求項7】
前記触媒活性な金属は、VIII族貴金属であることを特徴とする請求項5記載の浄化システム。
【請求項8】
前記VIII族貴金属は、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、オスミウムおよび白金のうちの一つであることを特徴とする請求項7記載の浄化システム。
【請求項9】
前記触媒活性な金属は、銀およびレニウムの一方であることを特徴とする請求項5記載の浄化システム。
【請求項10】
前記第二の層は、低極性有機分子を酸化することを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項11】
前記第三の層は、金属酸化物上の金を含み、この金属酸化物は、二酸化チタン、二酸化チタンを含む混合金属酸化物、および第二の金属酸化物を負荷された二酸化チタンのうちの一つであることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項12】
前記第三の層は、一酸化炭素を酸化することを特徴とする請求項11記載の浄化システム。
【請求項13】
前記第三の層は、前記基体上に付与され、前記第二の層は、前記第三の層上に付与され、前記第一の層は、前記第二の層上に付与されていることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項14】
前記浄化システムは、前記基体上に付与されている酸化マンガン/金属酸化物層をさらに備えており、前記第三の層は、前記酸化マンガン/金属酸化物層上に付与され、前記第二の層は、前記第三の層上に付与され、前記第一の層は、前記第二の層上に付与されていることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項15】
前記酸化マンガン/金属酸化物層は、酸化マンガンおよび促進剤ドープ酸化マンガン/二酸化チタンであることを特徴とする請求項14記載の浄化システム。
【請求項16】
前記酸化マンガン/金属酸化物層は、オゾンを分解することを特徴とする請求項14記載の浄化システム。
【請求項17】
前記浄化システムは、前記層状触媒被覆を活性化する光源をさらに備えており、前記層状触媒被覆は、前記光源により活性化されると、前記層状触媒被覆上に吸着される汚染物質を酸化することを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項18】
前記光源は、紫外線光源であることを特徴とする請求項17記載の浄化システム。
【請求項19】
前記光源からの光子が、前記層状触媒被覆により吸収され、酸素および水の存在下で前記汚染物質を酸化する反応性ヒドロキシルラジカルを形成し、この反応性ヒドロキシルラジカルが、前記汚染物質を水および二酸化炭素に酸化することを特徴とする請求項17記載の浄化システム。
【請求項20】
前記汚染物質は、アルデヒド、ケトン、アルコール、芳香族化合物、アルケンおよびアルカンの少なくとも一つを含む、揮発性有機化合物および半揮発性有機化合物のうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項17記載の浄化システム。
【請求項21】
前記第一の層、前記第二の層および前記第三の層は多孔質であることを特徴とする請求項1記載の浄化システム。
【請求項22】
入口および出口を有する容器と、
前記容器内にある多孔質基体と、
流体を前記入口を通して前記容器内に引込み、前記流体を前記多孔質基体を通して流し、前記流体を前記出口を通して前記容器から放出する装置と、
前記基体上に付与されている層状触媒被覆であって、光触媒金属酸化物被覆の第一の層と、光触媒貴金属負荷金属酸化物被覆の第二の層と、熱触媒被覆の第三の層であって金/金属酸化物である第三の層とを含む層状触媒被覆と、
前記触媒被覆を活性化する紫外線光源と、
を備える流体浄化システムであって、前記紫外線光源からの光子が、前記層状触媒被覆により吸収されて、反応性ヒドロキシルラジカルを形成し、前記反応性ヒドロキシルラジカルは、前記光紫外線光源により活性化されると、前記層状触媒被覆上に吸着される前記流体中の汚染物質を、水および酸素の存在下で水および二酸化炭素に酸化することを特徴とする流体浄化システム。
【請求項23】
前記流体は、空気であることを特徴とする請求項22記載の流体浄化システム。
【請求項24】
二酸化チタンおよび金属化合物/二酸化チタンのうちの一方の第一の被覆を有する第一の基体と、
金属/二酸化チタンの第二の被覆を有する第二の基体と、
金属酸化物/二酸化チタンの第三の被覆を有する第三の基体と、
を備えることを特徴とする浄化システム。
【請求項25】
前記第一の被覆は、金属化合物/二酸化チタンであり、前記第二の被覆は、金/二酸化チタンであり、前記第三の被覆は、酸化マンガン/二酸化チタンであることを特徴とする請求項24記載の浄化システム。
【請求項26】
前記金属酸化物/二酸化チタンの金属化合物は、WO3、ZnO、SrTiO3、Fe23、V25、SnO2、FeTiO3、PbO、Co3O4、NiO、CeO2、CuO、SiO2、Al23、Mnx2、Cr23およびZrO2のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項25記載の浄化システム。
【請求項27】
前記第三の基体は、前記浄化システムの入口から遠くにあり、前記第一の基体および前記第二の基体は、前記浄化システムの前記入口の近くにあることを特徴とする請求項25記載の浄化システム。
【請求項28】
前記基体上に付与される層状触媒被覆であって、光触媒被覆の第一の層と、光触媒金属負荷金属化合物被覆の第二の層と、熱触媒被覆の第三の層とを備える層状触媒被覆を付与し、
前記層状触媒被覆を活性化し、
反応性ヒドロキシルラジカルを形成し、
前記層状触媒被覆上に汚染物質を吸着させ、
前記汚染物質を前記ヒドロキシルラジカルで酸化し、
前記金/金属酸化物被覆の前記第三の層の前記金で、一酸化炭素の酸化のエネルギー障壁を低下させ、
次いで、前記一酸化炭素を酸化する、
各ステップを含むことを特徴とする浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−513767(P2007−513767A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545787(P2006−545787)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041781
【国際公開番号】WO2005/058470
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591003493)キャリア コーポレイション (161)
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION
【Fターム(参考)】