説明

室内空調装置および室内空調方法

【課題】 室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図ることができる室内空調装置および室内空調方法を提供する。
【解決手段】室内空調装置は、人密度検知システム1および空調システム2を備えている。人密度検知システム1は、執務室R内における人密度を検知して、空調システム2に出力する。空調システム2では、出力された人密度に基づいて、執務室内における人密度が低い領域に対して、執務室内における人密度が高い領域よりも室内空調装置による空調条件を緩和する空調制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設置された複数の空調機の制御を行って室内の空調を行う室内空調装置および室内空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルの執務空間などの室内における空調を行う際には、天井内に複数の空調機を分散配置した、いわゆるビル用マルチ空冷パッケージ方式の採用が増加している。ビル用マルチ空冷パッケージ方式の空調方式では、大部屋の執務空間に対して室外機を複数系統設置し、それぞれの室外機に複数の室内機を接続して運転を行っている。従来におけるビル用マルチ空冷パッケージにおいて、複数台設置された室内機は、運用に合わせて発停される。ここで、稼動中の室内機は、空調負荷に合わせて個別に冷媒流量が制御され、サーモON/OFFを繰り返して運転されている。
【0003】
しかし、ビル用マルチ空冷パッケージ機器では、カタログ性能値と実際の運用時の機器性能に乖離が見られることも多く、十分な性能を発揮できないことがある。この問題に対して、たとえば、室内における人の在/不在に関する在/不在情報を検知し、この在/不在情報に基づいて室内機を制御するエネルギー負荷制御システムが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このエネルギー負荷制御システムでは、室内をパーソナル空間として分割した単位区画を設定し、単位区画内における人の在/不在情報、あるいは大まかな人数または一人/複数を高精度人体検知センサによって検知している。この検知した情報から、単位区画内に人が滞在する場合には、空調機などのエネルギー負荷対象領域内の機器類の出力を増大し、人が滞在する場合には、空調機などのエネルギー負荷対象領域内の機器類の出力を減少する制御を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−257611号公報(請求項6、〔0048〕、〔0076〕〜〔0077〕、〔0091〕〜〔0094〕等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検知センサによって検知するのは、単位区画内における人の在/不在情報、あるいは大まかな人数または一人/複数といった情報である。しかし、これらの情報を利用した制御については具体的に開示されていない。したがって、人の滞在状況に応じた空調制御を適切に行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図る手段が明らかでないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図ることができる室内空調装置および室内空調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明に係る室内空調装置は、室内の空調を行う空調機と、室内における人の滞在状態を検知する人検知センサと、人検知センサの検知結果に基づいて、室内における人密度を取得する人密度取得手段と、人密度取得手段によって取得された室内における人密度に基づいて、空調機の運転制御を行う空調制御装置と、を備え、空調制御装置は、室内における人密度が低い領域に対して、室内における人密度が高い領域よりも空調機における空調条件を緩和した空調制御を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る室内空調装置では、室内の負荷発生状況に合わせた空調機の運転を行う。このとき、室内の負荷発生状況は、人の滞在状態を元に判断することができ、室内に滞在する人が多い場合には室内負荷が大きいと判断することができ、室内に滞在する人が少ない場合には室内負荷が小さいと判断することができる。また、人の滞在の有無については、人検知センサを用いる。
【0010】
このような考え方の下、本発明に係る室内空調装置においては、人密度取得手段によって室内における人密度を取得し、室内における人密度が低い領域に対して、室内における人密度が高い領域よりも空調機における空調条件を緩和した空調制御を行う。このため、人密度に応じた空調制御を行うことができる。したがって、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図ることができる。
【0011】
室内を複数のエリアに分割した最小検知エリアを設定するとともに、所定数の最小検知エリアを備える検知エリアを設定しておき、人検知センサは、検知エリアに含まれる最小検知エリア内における人の滞在状態を検知し、人密度取得手段は、人検知センサによって検知された最小検知エリア内における人の滞在状態に基づいて、室内における所定エリアの人密度を取得することができる。
【0012】
このように、人検知センサが検知エリアに含まれる最小検知エリア内における人の滞在状態を検知することにより、検知エリアの数に応じた数に人検知センサの数を集約することができる。また、人密度取得手段が人検知センサによって検知された最小検知エリア内における人の滞在状態に基づいて、室内における所定エリアの人密度を取得することにより、室内における人密度を検知するエリアについて、自由度をもって設定することができる。
【0013】
また、人密度取得手段は、所定エリア内における最小検知エリアのうち、滞在状態が存在状態である最小検知エリアの数が所定値を超える場合に、所定エリアの人密度が高いと判定し、滞在状態が存在状態である最小検知エリアの数が所定値を以下の場合に、所定エリアの人密度が低いと判定することができる。
【0014】
このように、所定エリア内における最小検知エリアのうち、滞在状態が存在状態である最小検知エリアの数に応じて検知エリアの人密度を判定することにより、所定エリアの人密度を容易に取得することができる。
【0015】
さらに、人密度取得手段は、人の滞在状態の経時変化を記録する記録装置を備え、人の滞在状態の経時変化に基づいて、所定エリアの人密度を取得することができる。
【0016】
このように、人の滞在状態の経時変化に基づいて、所定エリアの人密度を取得することにより、滞在状態が短時間で変化した場合であっても、所定エリアにおける人密度の急激な変化を抑制することができる。その結果、空調機の頻繁な制御変更を防止することができ、制御における煩雑さを解消することができる。
【0017】
また、複数の最小検知エリアに対して、それぞれアドレスが付与され、空調機は、複数の最小検知エリアに対応して複数配設されており、空調制御装置は、最小検知エリアに付与されたアドレスと、複数の空調機のそれぞれに対応付けを行って、複数の空調機に対する空調制御を行うことができる。
【0018】
このように、最小検知エリアに付与されたアドレスと、複数の空調機のそれぞれに対応付けを行って複数の空調機に対する空調制御を行うことにより、最小検知エリアの特性に応じた重み付け制御を行うことができる。
【0019】
さらに、最小検知エリアの属性に基づいて、アドレスに対応付けられた空調機の制御内容に対する重み付けを行うことができる。
【0020】
このように、最小検知エリアの属性に基づいて、アドレスに対応付けられた空調機の制御内容に対する重み付けを行う。ここで、最小検知エリアの属性とは、明らかに他の最小検知エリアとは人が滞在する可能性が異なるという属性や、集中思考するためのスペースで優先的に空調を行いたいという属性である。したがって、最小検知エリアの特性に合わせた空調を行うことができる。
【0021】
また、室内における人の存在を検知する人検知手段をさらに備え、空調機として、室内の狭域に対する空調を行う複数のタスク空調機と、室内の広域に対する空調を行うアンビエント空調機と、さらに備えており、空調制御装置は、人密度取得手段で取得された室内の人密度に基づいて、複数のタスク空調機の空調制御を行い、人検知手段の検知結果に基づいて、アンビエント空調機の空調制御を行うことができる。
【0022】
このように、タスク空調とアンビエント空調を行うタスク・アンビエント空調を行う際に、タスク空調の空調制御を行うことにより、室内全体の空調をアンビエント空調で行うとともに、個々に対する空調をタスク空調によって行うことができる。したがって、快適性と省エネルギーとの両立をより好適に図ることができる。ここで、人検知手段は、人が室内に一人でもいるか、室内に人が全くいないかを検知するセンサであり、人検知センサと別個に設けることもできるし、人検知センサを併用することもできる。
【0023】
さらに、室内における人の在室継続時間を取得する在室継続時間取得手段を備えており、人の在室継続時間が所定のしきい値を超えた場合に、空調機の空調条件を緩和することができる。
【0024】
このように、人の在室継続時間が所定のしきい値を超えた場合に、空調機の空調条件を緩和することにより、通常は滞在中の人が認識しない範囲で空調機の空調条件を緩和することができる。したがって、室内の快適性を損なうことなく省エネルギー化を達成することができる。ここで、空調機の空調条件を緩和する態様として、空調機が冷房を行う際には、設定温度を高くし、暖房を行う場合には、設定温度を低くすることができる。また、送風運転を行う場合には、送風量を低減させることができる。さらに、冷房運転を送風運転に切り替えることもできる。
【0025】
また、所定のしきい値を複数設定しておき、複数のしきい値を超える毎に、空調機の空調条件を緩和することができる。
【0026】
このように、複数のしきい値を超える毎に、空調機の空調条件を緩和することにより、室内の快適性を損なうことなく、さらなる省エネルギー化を達成することができる。
【0027】
さらに、空調機が、室内機と室外機とを備え、室内機と室外機との間で冷媒を循環供給させる空調機であり、空調機の立ち上げ時に、空調制御装置による制御を開始することができる。
【0028】
従来、空調機が立ち上がる際には、室外機が最大能力で運転することが一般的であった。しかし、通常、室外機は、能力を50%程度とした方が、能力を100%とするよりも運転効率が高くなる。このため、本発明においては、空調機の立ち上げ時に、空調制御装置による制御を開始し、たとえば、室内における人が少ない場合には、室外機の能力を50%程度としている。したがって、室外機における運転効率を高めることができる。
【0029】
また、空調機が、室内機と室外機とを備え、室内機と室外機との間で冷媒を循環供給させる空調機であり、空調制御装置は、人密度取得手段で取得された室内における人密度に基づいて、室外機における冷媒の蒸発温度を設定することができる。
【0030】
このように、人密度取得手段で取得された室内における人密度に基づいて、室外機における冷媒の蒸発温度を設定することにより、室内機の要求負荷に応じて室外機の潜熱処理能力を変えて、高効率な運転を行うことができる。したがって、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立をさらに図ることができる。
【0031】
他方、上記課題を解決した本発明に係る室内空調方法は、室内における人の滞在状態を検知する人検知センサの検知結果に基づいて、室内における人密度を取得し、取得された室内における人密度に基づいて、室内の空調を行う空調機の空調制御を空調制御装置によって行うにあたり、室内における人密度が低い領域に対して、室内における人密度が高い領域よりも空調機における空調条件を緩和した空調制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る室内空調装置および室内空調方法によれば、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係る室内空調装置のブロック構成図である。
【図2】建築物における室内空調装置が設けられた室内の概念図である。
【図3】室内の最小検知エリアに付されたアドレスの説明図である。
【図4】(a)は、最小検知エリアの滞在状態を示す図、(b)は、制御対象エリアの人密度および出力信号を示す図、(c)は、空調機の制御状態を示す図である。
【図5】室内空調装置における制御手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、最小検知エリアの滞在状態を示す図、(b)は、出力信号を示す図、(c)は、空調機の制御状態を示す図、(d)は、空調機の他の制御状態を示す図である。
【図7】在室継続時間に応じた温度段階設定を行う制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】時間経過と空調機の設定温度の経時変化の例を示すグラフである。
【図9】室内における人の滞在状態の経時変化を示す図である。
【図10】在室継続時間に人密度を考慮した空調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】時間経過と空調機の設定温度の経時変化の他の例を示すグラフである。
【図12】最小検知エリアに割り当てられたアドレスと室内空調機器の制御との対応関係を示すマップである。
【図13】執務室内における最小検知エリアの重み付けの例を示す図である。
【図14】タスク・アンビエント空調が行われる執務室の概念図である。
【図15】室外空調機器の蒸発温度を調整する制御の手順を示すフローチャートである。
【図16】室外空調機器のデマンドコントロールの手順を示すフローチャートである。
【図17】室外空調機器と室内空調機器との関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。また、下記の実施形態において、温度や時間等の制御対処となる数値は、適宜設定し変更することができるものである。また、以下の実施形態においては、空調の形態として冷房を想定している。
【0035】
〔全体の制御〕
図1は、本実施形態に係る室内空調装置のブロック構成図、図2は、本発明の実施形態に係る建築物における室内空調装置が設けられた室内の概念図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る室内空調装置は、オフィスビルにおける執務室Rが形成されている。本実施形態に係る室内空調装置は、ビル用マルチ空冷パッケージ方式の室内空調装置であり、室内空調制御を行うにあたり、執務室Rを複数の制御対象エリア、本実施形態では、12の制御対象エリアに分割して考えて制御を行う。また、各制御対象エリアには、それぞれ2つの検知エリアが含まれている。さらに、検知エリアには、それぞれ4つの最小検知エリアが含まれている。このため、執務室Rには、12×2=24個の検知エリアが含まれ、12×8=96個の最小検知エリアが含まれている。執務室Rに含まれる96個の最小検知エリアには、それぞれアドレスが付与されている。
【0036】
たとえば、執務室Rの左奥側は、図3に示すように、4つの制御対象エリアE1〜E4に分割されている。また、各制御対象エリアE1〜E4は、それぞれ8つの最小検知エリアに分割されている。したがって、ここでは、4×8=32の最小検知エリアが形成されている。そのうち、1行1列目の最小検知エリアに「001」のアドレスが付与されており、2行1列目の最小検知エリアに「002」のアドレスが付与されている。こうして、1列目に「001」〜「004」、2列目に「005」〜「008」、3列目に「009」〜「012」、4列目に「013」〜「016」の各アドレスが付与されている。さらに、図示しないが左奥における分割以外の制御対象エリアにおける最小検知エリアについても、同様にアドレスが付与されている。
【0037】
また、室内空調装置は、人密度検知システム1および空調システム2を備えている。人密度検知システム1は、本発明の人密度取得手段である。この人密度検知システム1は、コントローラ10、人検知センサ11A〜11F,12A〜12F,13A〜13F,14A〜14Fを備えている。以下、説明の便宜上、人検知センサ11A〜11Fを人検知センサ11と称することがある。同様に、人検知センサ12A〜12F,人検知センサ13A〜13F,人検知センサ14A〜14Fをそれぞれ人検知センサ12,13,14と称することがある。
【0038】
空調システム2は、空調制御装置20、左室外空調機器21A、右室外空調機器21B、左室内空調機器22A〜22F、および右室内空調機器23A〜23Fを備えている。室外空調機器21A,21Bは、執務室R外であってオフィスビルの外側に設置されており、室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fは、執務室R内に設置されている。室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fについても、説明の便宜上、それぞれ室内空調機器22,室内空調機器23と称することがある。
【0039】
さらに、室内空調装置は、室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fを備えている。室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fは、執務室R内に設けられており、空調制御装置20に対して電気的に接続されている。また、コントローラ10および空調制御装置20は、相互に電気的に接続されている。室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fについても、説明の便宜上、室内温度計測機器3,室内温度計測機器4と称することがある。
【0040】
図2に示すように、左室外空調機器21Aは、左室内空調機器22A〜22Fと配管を介して接続されており、左室内空調機器22A〜22Fに対して冷媒を循環供給している。同様に、右室外空調機器21Bは、右室内空調機器23A〜23Fと配管を介して接続されており、右室内空調機器23A〜23Fに対して冷媒を循環供給している。
【0041】
左室内空調機器22A〜22Fは、執務室Rの天井における左側領域を平面視して幅方向に3分割した位置であって、奥行き方向に4分割した際の1/4の位置および3/4の位置にそれぞれ配置されている。こうして、左室内空調機器22A〜22Fは、執務室Rの左側領域の均等位置に配置されている。同様に、右室内空調機器23A〜23Fは、執務室Rの右側領域の均等位置に配置されている。また、室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fは、各制御対象エリアの中央位置に配置されており、それぞれ8つの最小検知エリアを備える制御対象エリアに対する空調を行う。このように、室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fは、各制御対象エリアに対応付けされている。
【0042】
左奥人検知センサ11A〜11Fは、左室内空調機器22A〜22Cの奥行き方向両側位置にそれぞれ配設され、左内人検知センサ12A〜12Fは、左室内空調機器22D〜22Fの奥行き方向両側位置にそれぞれ配設されている。また、右外人検知センサ13A〜13Fは、右室内空調機器23A〜23Cの奥行き方向両側位置にそれぞれ配設され、右内人検知センサ14A〜14Fは、左室内空調機器23D〜23Fの奥行き方向両側位置にそれぞれ配設されている。
【0043】
人検知センサ11〜14は、いずれも2×2列に配置された4つの最小検知エリアを含む検知エリアの中央位置に配置されており、検知エリア内の4つの最小検知エリアのそれぞれにおける人の滞在状態を存在状態または不在状態として検知する。検知エリアは、人検知センサ11〜14がそれぞれ最小検知エリアにおける人の滞在状態を検知しうるエリアである。人検知センサ11〜14は、人の滞在状態を検知するにあたり、最小検知エリアに人が一人でもいた場合に、滞在状態を「在」として検知し、一人もいない場合に「不在」として検知する。人検知センサ11〜14は、検知した全てのエリアの滞在状態をコントローラ10に送信する。
【0044】
左室内温度計測機器3A〜3Fは、左室内空調機器22A〜22Fのそれぞれ外側であって壁際に配置されている。さらに、右室内温度計測機器4A〜4Fは、右室内空調機器23A〜23Fのそれぞれ外側であって壁際に配置されている。室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fは、室内における室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fが設置された領域の近傍の温度を検知している。室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fは、検知した温度に関する温度情報を空調制御装置20に送信する。室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fは、制御対象エリア内に配置されており、各制御対象エリアに設けられた室内空調機器22,23を制御する際に用いる温度として、制御対象エリア内の温度をそれぞれ検知している。
【0045】
また、室外空調機器21A,21Bおよび室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fにおいては、空調制御装置20から送信される設定温度に応じた制御信号に基づく空調制御が行われる。
【0046】
コントローラ10は、人検知センサ11〜14から送信される滞在状態の経時変化を人検知センサ11〜14の検知結果として一定時間分記録している。コントローラ10は、記録した滞在状態に基づいて、執務室R内における各制御対象エリアの人密度を算出する。制御対象エリアにおける人密度の算出は、たとえば図4に示すように、最小検知エリアの滞在状態等に基づいて行う。制御対象エリアは、本発明の所定エリアに相当し、人密度を集計して算出する人密度算出エリアとされている。また、滞在状態に基づく人密度の検知手順については、後に説明する。これらのコントローラ10および人検知センサ11〜14によって人密度検知システム1が構成されている。また、コントローラ10は、本発明の記録装置を備えている。コントローラ10は、算出した人密度を空調制御装置20に送信する。
【0047】
空調制御装置20は、コントローラ10から送信される人密度および室内温度計測機器3A〜3F,4A〜4Fから送信される温度情報に基づいて、室外空調機器21A,21Bの蒸発温度設定および室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fの設定温度および運転モードを算出する。空調制御装置20は、算出した室外空調機器21A,21Bの蒸発温度設定に関する蒸発温度設定情報を室外空調機器21A,21Bにそれぞれ送信する。また、空調制御装置20は、算出した室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fの設定温度および運転モードに関する設定温度情報および運転モード情報をそれぞれ室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fに送信する。
【0048】
次に、本実施形態に係る室内空調装置における制御手順について説明する。図5は、本実施形態に係る室内空調装置における制御手順を示すフローチャートである。室内空調機器における制御は、複数の室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fのそれぞれに対して、同様に行われる。ここでは、室内空調機器22A〜22F,23A〜23Fを室内空調機器22と表して説明する。図5に示すように、本実施形態に係る室内空調装置においては、空調開始許可時間、本実施形態では午前8時になると、空調制御装置20による空調制御を開始する。
【0049】
空調制御を開始すると、室外空調機器21A,21Bおよび室内空調機器22が運転を開始する(S1)。また、室内機では、設定温度初期値X、たとえば26℃として運転制御を行う。次に、人密度を考慮した空調制御を開始する。そのため、コントローラ10は、人検知センサ11〜14から送信される滞在状態に基づいて人密度の検知を開始する(S2)。ここで人密度の検知手順について説明する。
【0050】
図1に示すように、コントローラ10では、人検知センサ11〜14から送信された滞在状態に基づいて、制御対象エリア内における各最小検知エリアの人の滞在状態を検知し、各最小検知エリアにおける滞在状態に関する人の在/不在情報を取得する。この最小検知エリアにおける滞在状態を図4(a)に示す。人の在/不在情報を取得したら、図4(b)に示すように、制御対象エリア内の各最小検知エリアにおける過去所定時間、たとえば15分間の人の在/不在情報を1分間毎にまとめる。この15分間の制御対象エリア内における各最小検知エリアの滞在状態から、各制御対象エリア内における人密度を検知する。
【0051】
図4(a)には、図3における第1制御対象エリアE1の人密度を検知する際に用いられる第1制御対象エリアE1における「001」〜「008」のアドレスが付された8つの各最小検知エリアにおける人の在/不在情報が表されている。第1制御対象エリアE1における最小検知エリアの人の在/不在情報は、人検知センサ11によって検知され、出力される。
【0052】
ここで、たとえば、アドレスが「001」の最小検知エリアでは、「1分〜4分」「11分〜28分」「31分〜43分」・・・に人が滞在している。また、「5分〜10分」「29分〜30分」「44分〜」・・・に人が不在となっている。同様に、「002」の最小検知エリアでは、「3分〜16分」「19分〜43分」に人が滞在し、「1分〜2分」「17分〜18分」に人が不在となっている。
【0053】
また、図4(b)には、第1制御対象エリアE1における1分間の滞在数および15分間の総滞在数が表示されている。1分間の滞在数は、第1制御対象エリアE1内の8つの最小検知エリアにおける人が滞在しているエリアの総加算数であり、図4(b)の上側に人数として表示されている。その具体的な数字として、「1分」、「2分」、「3分」「4分」「5分」「6分」「7分」「8分」「9分」「10分」「11分」「12分」「13分」「14分」「15分」・・・の順で、「1」「1」「2」「2」「1」「1」「1」「1」「2」「2」「6」「7」「7」「8」「7」・・・の数が表示されている。これらの数字が「在」の数となる。
【0054】
さらに、15分間の総滞在数は、第1制御対象エリアE1内の8つの最小検知エリアにおける人が滞在しているエリアの15分間毎の総数であり、1分間の滞在数の15分間分の総加算数である。15分間の総滞在数を求めるために、15×8=120の在/不在情報が集まることとなる。図4(b)に示す例では、総滞在数として、「1分〜15分」「2分〜16分」「3分〜17分」「4分〜18分」「5分〜19分」・・・の順で「49」「54」「58」「61」「65」の数が「在」の総数として表されている。
【0055】
また、過去所定時間内における所定範囲内の総滞在数が、所定の混雑しきい値、本実施形態では、全体の50%に相当する60以上である場合に、制御対象エリアが「在・混雑」であると判断する。ここで、過去所定時間は15分であり、所定範囲は制御対象エリアである。また、総滞在数が混雑しきい値未満であり、閑散しきい値、本実施形態では1以上であれば、制御対象エリアが「在・閑散」であると判断する。さらに、総滞在数が0である場合には、制御対象エリアが「不在」であると判断する。なお、これらの判断を行うためのしきい値は、適宜設定することができる。
【0056】
このような在/不在情報の経時変化を考慮した判断を行うことにより、たとえば、各制御対象エリアにおいて、「不在」「在・閑散」「在・混雑」に対応させて「停止」「送風」「冷房」の運転を切り替える制御を行う場合を考える。この場合、図4(c)に示すように、単純に在/不在情報の経時変化を考慮しない空調制御と比較して、室内空調機器の運転の切り替え回数を少なく済ませることができる。
【0057】
たとえば、図4(a)と同様の滞在情報が検知された図6(a)において、在/不在情報の経時変化を考慮せずに「不在」「在・閑散」「在・混雑」を出力した場合、図6(b)に示すように、「不在」「在・閑散」「在・混雑」が頻繁に出力されることとなる。その結果、図6(c)に示すように、空調機器の運転の切り替えが頻繁に行われ、室内空調機器の保護の観点から好ましくない結果となる。
【0058】
こうして、コントローラ10は、制御の対象となる制御対象エリアの人密度を算出したら、人密度が「不在」「在・閑散」「在・混雑」の間で変化したかを判断し、変化した場合には、変化後の人密度を空調制御装置20に出力する。空調制御装置20においては、コントローラ10から出力された制御対象エリアにおける人密度を記憶しておき、判断の直前に出力された人密度が「不在」「在・閑散」「在・混雑」のいずれであるかを判断する(S3)。
【0059】
その結果、制御対象エリアにおける人密度が「不在」であると判断した場合には、室内空調機器22をそのまま継続して運転する。その後、制御対象エリアにおける人密度が「不在」である状態が30分経過したか否かを判断する(S4)。その結果、制御対象エリアにおける人密度が「不在」である状態が30分経過していないと判断した場合には、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0060】
一方、制御対象エリアにおける人密度が「不在」である状態が30分経過したと判断した場合には、制御対象エリアにおける空調は必要ないと考えられる。したがって、この場合には、室内空調機器22を停止する(S5)。それから、室内空調機器22の停止時間を計測し、停止時間が30分を経過したか否かを判断する(S6)。
【0061】
その結果、停止時間が30分を経過していないと判断した場合には、停止時間が30分を経過するまで、室内空調機器22を停止した状態を継続する。また、停止時間が30分を経過したと判断した場合には、空調機器の運転を再開するか否かの判断を行う。そのために、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0062】
このように、制御対象エリアにおける人密度が「不在」である場合には、一定期間、本実施形態では30分間初期設定温度における空調を行う。また、「不在」である時間が30分を経過した時点で室内空調機器22を停止する。このため、人密度が「不在」である場合でも、ある程度の空調状態を維持することができる。
【0063】
また、人密度が「不在」である状態が30分を経過した時点で室内空調機器22を停止するため、不要な空調を行わないようにすることができ、停止状態が30分を経過した時点で、室内空調機器22の運転を再開するか否かの判断が行われる。このため、人密度が「不在」から「在」に変わった場合でも、室内における空調状態をある程度維持した状態から空調を再開することができるので、室内における快適度を適切に維持することができる。なお、ステップS4,ステップS6における「30分」の時間は、適宜設定変更できるようにすることができる。
【0064】
また、ステップS3において、コントローラ10から出力された制御対象エリアにおける人密度が「在・閑散」であった場合には、日射の影響があるか否かを判断する(S7)。その結果、日射の影響があり、日射の影響によって温度が上昇している場合には、人密度が「在・閑散」の場合であっても、室内空調機器22の設定温度を初期設定温度であるX℃に調整して、空調運転を行う(S15)。なお、人検知センサ11〜14は、最小検知エリアの背景温度についても検知可能である。このため、日射の有無については、人検知センサ11〜14等によって人の滞在状態と同時に検出することができる。
【0065】
一方、日射の影響が無いと判断した場合には、直前の制御対象エリアにおける人密度が「不在」であるか否かを判断する(S8)。その結果、直前の制御対象エリアにおける人密度が「不在」であると判断した場合には、設定温度を設定温度初期値X℃に設定して室内空調機器22の運転を行う(S9)。また、直前の制御対象エリアにおける人密度が「不在」でないと判断した場合には、室内空調機器22の状態をそのまま保持する(S10)。
【0066】
それから、制御対象エリアにおける人密度が「在・閑散」である状態が30分間継続したか否かを判断する(S11)。その結果、制御対象エリアにおける人密度が「在・閑散」である状態が30分間継続していないと判断した場合には、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0067】
一方、制御対象エリアにおける人密度が「在・閑散」である状態が30分間継続したと判断した場合には、室内空調機器22の設定温度を(X+2)℃、ここでは28℃とし、あるいは送風運転に切り替えるように、室内空調機器22の設定を変更する(S12)。その後、左室内温度計測機器3から送信される室内温度を取得し、室内温度がステップS12で設定した温度である(X+2)℃を超えるか否かを判断する(S13)。
【0068】
その結果、室内温度が(X+2)℃を超えないと判断した場合には、室内空調機器22の設定を変更してから30分が経過したか否かを判断する(S14)。その結果、30分が経過していないと判断した場合には、ステップS13に戻り、室内温度の設定温度との比較を行う。一方、30分が経過したと判断した場合には、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行い、引き続き制御を継続する。
【0069】
さらに、ステップS13において、室内温度が(X+2)℃を超えたと判断した場合には、室内空調機器22の設定温度を初期設定温度であるX℃に調整する(S15)。その後、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行い、引き続き制御を継続する。
【0070】
他方、ステップS3において、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」であると判断した場合には、室内空調機器22の設定温度を初期設定温度であるX℃に調整する(S15)。その後、ステップS2に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行い、引き続き制御を継続する。
【0071】
このように、本実施形態に係る空調制御装置においては、人密度検知システム1によって室内における人密度を取得している。このとき、室内における人密度が低い領域に対して、室内における人密度が高い領域よりも室内空調機器22による空調条件を緩和する空調制御を行う。このため、人が滞在するエリアにおける室内空調機器22を稼動させ、人が滞在しないエリアについては室内空調機器22の稼動を停止させる。こうして、室内機のファン動力を削減し、人密度に応じた空調制御を行うことができる。したがって、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立を図ることができる。
【0072】
このとき、室内における平面温度分布にはばらつきが生じると考えられる。しかし、人が滞在するエリアについては個々の室内空調機器22が設定温度となるように運転制御されることとなる、このため、室内環境を快適に保つことができる。さらには、人密度が低いエリアについては、室内発熱も小さいと考えられる。このため、設定温度を高め、あるいは送風運転によって気流感を与えることにより、快適性を維持することができる。
【0073】
また、上記実施形態においては、制御対象エリアの人密度を検知するにあたり、制御対象エリア内の複数の最小検知エリア内における人の滞在状態を用いている。このため、制御対象エリアの人密度を容易に取得することができる。
【0074】
さらに、上記実施形態では、室内空調機器22の運転変更を30分ごとに実行することとしている。このため、頻繁な運転切り替えが行われないようにすることができる。このような運転変更サイクル(最低運転保持時間)としては、30分以外の適宜の時間に設定することができる。
【0075】
また、執務室内における人の滞在状態の経時変化に基づいて、室内における人密度を取得している。具体的には、制御対象エリアの人密度を検知する際に、制御対象エリア内における15分間の最小検知エリアの滞在状態を用いている。このため、執務室内の混雑状態が短時間で変化した場合であっても、制御対象エリアにおける人密度の急激な変化を抑制することができる。その結果、室内空調機器22の頻繁な制御変更を防止することができ、制御における煩雑さを解消することができる。
【0076】
人検知センサが検知エリアに含まれる最小検知エリア内における人の滞在状態を検知することにより、検知エリアの数に応じた数に人検知センサの数を集約することができる。また、人密度取得手段が人検知センサによって検知された最小検知エリア内における人の滞在状態に基づいて、室内における所定エリアの人密度を取得することにより、室内における人密度を検知するエリアについて、自由度をもって設定することができる。
【0077】
〔在室継続時間に応じた温度段階設定〕
また、本発明に係る室内空調装置においては、室内空調機器22の設定温度を、人の在室継続時間(以下、単に「在室継続時間」という)に合わせて設定することにより、人体の温冷感に合わせた室内空調機器22の運転制御を行うことができる。在室継続時間は、本発明の在室継続時間取得手段である空調制御装置20において取得する。以下、在室継続時間を考慮した制御の例について説明する。図7は、在室継続時間に応じた温度段階設定を行う空調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
図7に示すように、在室継続時間に応じた温度段階設定を行う空調制御装置による制御においては、上記全体の制御と同様、空調開始許可時間である午前8時になると、空調制御装置20による空調制御を開始する。空調制御を開始すると、室外空調機器21A,21Bおよび室内空調機器22が運転を開始し(S21)、続いて、人密度検知システム1におけるコントローラ10において、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う(S22)。コントローラ10は、検知した人密度を空調制御装置20に出力する。
【0079】
次に、空調制御装置20において、コントローラ10から出力された人密度が、「在」「不在」のいずれであるかを判断する(S23)。ここで、人密度が「不在」であると判断した場合には、「不在」である時間が30分継続しているか否かを判断する(S24)。ここで、「不在」である時間が30分継続していないと判断した場合には、ステップS22に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0080】
一方、「不在」である時間が30分継続していると判断した場合には、室内空調機器22を停止させる(S25)。それから、室内空調機器22を停止させてから30分が経過したか否かを判断する(S26)。その結果、30分を経過していなければ、室内空調機器22の停止状態を維持し、30分を経過していれば、ステップS22に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0081】
また、ステップS23において、コントローラ10から出力された人密度が「在」であると判断した場合には、室内空調機器22の設定温度を26度に設定する(S27)。続いて、コントローラ10から出力された人密度が「在」である状態が30分間継続しているか否かを判断する(S28)。
【0082】
ここで、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続しておらず、30分が経過する前に人密度が「不在」となったと判断した場合には、新たに人密度に応じた空調制御を行う。このため、ステップS22に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。一方、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続していると判断した場合には、設定温度を27℃に上げて運転を行う(S29)。
【0083】
それから、設定温度を27℃に上げた後、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続したか否かを判断する(S30)。ここで、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続していないと判断した場合には、新たに人密度に応じた空調制御を行う。このため、ステップS22に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。一方、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続していると判断した場合には、設定温度を28℃に上げて運転を行う(S31)。
【0084】
そして、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続したか否かを判断する(S32)。その結果、出力された人密度が「在」である時間が30分間継続していると判断した場合には、ステップS32に戻り、設定温度を28℃に維持した状態で室内空調機器22の空調制御を行う。また、コントローラ10から出力された人密度が「在」である時間が30分間継続していないと判断した場合には、新たに人密度に応じた空調制御を行うために、ステップS22に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0085】
このように、在室継続時間に応じた温度段階設定を行う制御では、図8に示すように、人が滞在する時間によって室内空調機器22の設定温度を調整する制御を行う。たとえば、図9(a)に示すように、人が不在のときには、室内空調機器22を停止した状態としている。
【0086】
ここから、図9(b)に示すように、人Hが滞在した状態に変わったとする。このとき、滞在を開始した人は、違う場所から移動した直後であり、熱を帯びていることが多い。このため、人Hが滞在を開始した直後は、室内空調機器22における設定温度を低めの26℃に設定している。このため、滞在を開始した人Hの発熱を早めに収めることができ、快適な状態に導くことができる。
【0087】
また、滞在を開始してからある程度の時間が経過すると、人の発熱も徐々に収まり、室内の温度に人の体が慣れてくる。このため、在室継続時間に応じた制御では、図8に示すように、在室継続時間が30分を経過した時点で、図9(c)に示すように、室内空調機器22の運転を若干弱め、設定温度を1℃上昇させた27℃に設定する。そして、さらに30分が経過すると、さらに設定温度を1℃上昇させ、図9(d)に示すように、室内空調機器22の運転をさらに若干弱め、設定温度を1℃上昇させた28℃に設定する。
【0088】
室内に人が滞在する場合、在室継続時間が長くなるにつれて室内の設定温度を徐々に上昇させても、室内の人に対して大きな違和感を与えないようにすることができる。このため、人の在室継続時間が所定のしきい値、上記の例では30分を超えた場合に、空調機の空調条件を緩和することにより、通常は滞在中の人が認識しない範囲で空調機の空調条件を緩和することができる。したがって、室内の快適性を損なうことなく省エネルギー化を達成することができる。
【0089】
さらに、所定のしきい値を複数、上記の例では、第1のしきい値として30分、第2のしきい値としてさらに30分を追加した60分を設定し、これらのしきい値を超えるごと空調機の空調条件を緩和している。このため、室内の快適性を損なうことなく、さらなる省エネルギー化を達成することができる。
【0090】
ここで、上記の制御では、設定温度を上昇させるまでの在室継続時間を30分に設定しているが、このときの在室継続時間については30分以外の時間でもよく、適宜設定することができる。また、設定温度の上昇単位について1℃に限定されることなく、1℃未満、たとえば0.5℃とすることもできるし、1℃を超える温度、たとえば2℃とすることもできる。
【0091】
他方、このような在室継続時間に応じた制御に加えて、室内の特定エリア内における人密度によって設定温度を調整する態様とすることもできる。以下、この場合の制御について説明する。図10は、在室継続時間に人密度を考慮した空調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0092】
図10に示すように、人密度を考慮した空調制御では、図7に示す在室継続時間に応じた制御と同様、空調制御を開始すると(S41)、コントローラ10において人密度を検知し(S42)、続いて、空調制御装置20においてコントローラ10から出力された人密度が「不在」「在・閑散」「在・混雑」のいずれであるかを判断する(S43)。
【0093】
その結果、人密度が「不在」であると判断した場合には、「不在」である時間が30分継続しているか否かを判断し(S44)、「不在」である時間が30分継続していないと判断した場合には、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。また、「不在」である時間が30分継続していると判断した場合には、室内空調機器22を停止させる(S45)。それから、室内空調機器22を停止させてから30分が経過したか否かを判断し(S46)、30分を経過していなければ室内空調機器22の停止状態を維持し、30分を経過していれば、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0094】
また、ステップS43において、コントローラ10から出力された人密度が「在・閑散」であると判断した場合には、前の状態が「不在」であるか否かを判断する(S47)。その結果、前の状態が「不在」であると判断した場合には、人が他の場所から室内に移動してきたと考えられるので、室内空調機器22の設定温度を26℃とする(S48)。また、「不在」でないと判断した場合には、その状態を維持する(S49)。
【0095】
その後、コントローラ10から出力された人密度が「在・閑散」である状態が30分間継続しているか否かを判断する(S50)。その結果、人密度が「在・閑散」である状態が30分間継続しておらず、30分が経過する前に「在・閑散」でなくなったと判断した場合には、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。一方、人密度が「在・閑散」である時間が30分間継続していると判断した場合には、設定温度を28℃に上げて運転を行う(S51)。
【0096】
その後、人密度が「在・閑散」である状態が継続しているか否かを判断する(S52)。その結果、人密度が「在・閑散」である状態が継続していると判断した場合には、ステップS51に戻り、そのまま室内空調機器22の運転を継続する。一方、人密度が「在・閑散」である状態が継続しておらず、「在・閑散」でなくなったと判断した場合には、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0097】
他方、ステップS43において、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」であると判断した場合には、人が混雑することによる発熱量が多いと考えられるので、室内空調機器22の設定温度を26℃とする(S53)。続いて、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である状態が30分間継続しているか否かを判断する(S54)。
【0098】
その結果、人密度が「在・混雑」である状態が30分間継続しておらず、30分が経過する前に「在・混雑」でなくなったと判断した場合には、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。一方、人密度が「在・混雑」である時間が30分間継続していると判断した場合には、設定温度を27℃に上げて運転を行う(S55)。
【0099】
さらに、設定温度を27℃に上げた後、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である時間が30分間継続したか否かを判断する(S56)。ここで、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である時間が30分間継続していないと判断した場合には、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0100】
一方、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である時間が30分間継続していると判断した場合には、設定温度を28℃に上げて運転を行う(S57)。そして、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である時間が継続したか否かを判断する(S58)。その結果、出力された人密度が「在・混雑」である時間が継続していると判断した場合には、そのまま設定温度28℃に維持した状態で室内空調機器22の空調制御を行う。また、コントローラ10から出力された人密度が「在・混雑」である時間が継続していないと判断した場合には、新たに人密度に応じた空調制御を行うために、ステップS42に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0101】
このように、人密度を考慮した制御では、人密度が「在・閑散」である場合よりも「在・混雑」である場合の方が、設定温度を細かく調整することもできる。この場合、人密度が「在・閑散」の場合には、図11に示すように、在室継続時間が30分を経過した時点で設定温度を2℃上昇させた28℃とすることとなる。一方、人密度が「在・混雑」の場合には、複数の人の移動が想定されるものの、個々の移動を検知することが難しい。このため、温度シフトを緩やかにして在室継続時間が30分を経過した時点で設定温度を1℃上昇させた温度とする。このように、人密度が「在・閑散」である場合には、温度シフトを早め、「在・混雑」である場合には、温度シフトを緩やかにすることにより、快適性に配慮した運転を行うことができる。
【0102】
〔重み付け制御〕
次に、室内におけるエリア特性に合わせた重み付け制御について説明する。人検知センサ11〜14においては、1台のセンサで複数、本実施形態では4箇所の最小検知エリアを検知している。また、最小検知エリアには、それぞれアドレスが付与されている。さらに、コントローラ10では、人検知センサ11〜14と、人検知センサ11〜14が滞在状態の検知を行う最小検知エリアとの対応付けを記憶している。このため、コントローラ10は、滞在状態を発信した人検知センサ11〜14に応じて、最小検知エリアのアドレスを取得する。たとえば、図3に示す制御対象エリアE1〜E4について、図12に示すような制御を行う。ここでは、「空調機1」に相当する室内空調機器22Aが、第1制御対象エリアE1に対する空調を主に行う。
【0103】
同様に、「空調機2」に相当する室内空調機器22Bが、第2制御対象エリアE2に対する空調を主に行い、「空調機3」に相当する室内空調機器22Cが、第3制御対象エリアE3に対する空調を主に行う。さらに、「空調機4」に相当する室内空調機器23Aが、第4制御対象エリアE4に対する空調を主に行う。
【0104】
ここで、各最小検知エリアには、その最小検知エリアの特性に応じた重み付けが行われている。具体的には、「001」〜「012」、「019」〜「020」、「023」〜「032」の最小検知エリアに対しては通常の制御を行う重み付けがされ、「017」、「018」、「021」「022」の最小検知エリアに対しては、制御内容を変更した制御を行う重み付けがされている。制御内容の変更としては、ここでは通常より大きい重み付けがされている。さらに、「013」〜「016」の最小検知エリアに対しては、空調制御を行わない重み付けがされている。
【0105】
このような重み付けは、室内環境等の最小検知エリアの属性に応じて予め定めておくことができる。たとえば、図13に示すように、執務室RAを6行×16列の最小検知エリアに分割した例について説明する。執務室RAは、1行1〜3列目、7〜16列目、2行15〜16列目、3行15〜16列目の最小検知エリアが、コピー機や書架などが配置された共用スペースなどの人が長時間滞在することが少ないスペースであり、人密度を検知しない不検知エリアR1とされている。
【0106】
また、1行4〜6列目、6行13〜16列目の最小検知エリアは、会議室などの人が集中思考を行うことが多いスペースであり、重み付けが2倍とされる多重付エリアR2とされている。さらに、4行16列目、5行13〜14列目、16列目、6行1〜3列目、7列目〜9列目、13列目が、人が着座する座席が無く、人が密集する割合が低く、重み付けが1/2とされている軽重付エリアR3とされている。そして、その他の最小検知エリアが、通常の重み付けである通常重付エリアR4とされている。
【0107】
このように、最小検知エリアの属性に応じて空調に重み付けを行うことにより、明らかに他のエリアとは人が滞在する可能性が異なるエリアや、集中思考するためのスペースで優先的に空調を行いたいエリアなど、エリアの特性に合わせた空調を行うことができる。また、分割スペースにアドレスを付与して、最小検知エリアごとの制御を行うことにより、たとえば、最小検知エリアを利用する人の寒暑に対する嗜好に応じた制御などをすることもできる。また、こうした重み付けは図示しない外部入力手段により適宜修正可能である。
【0108】
〔タスク・アンビエント空調〕
また、本発明に係る室内空調装置においては、タスク・アンビエント空調を利用した制御を行うこともできる。たとえば、図14に示すように、室内空調機器として、タスク空調機であるタスク室内空調機器31〜33を設けるとともに、アンビエント空調機であるアンビエント室内空調機器40を設けることができる。タスク室内空調機器31〜33は、室内における狭い領域の空調を行う。また、アンビエント室内空調機器40は、複数の吹出口41を備えるとともに、これらの吹出口41に空調空気を供給する配管42を備えており、室内全体の空調を行う。
【0109】
タスク・アンビエント空調を行う際には、タスク室内空調機器31〜33において、たとえば上記の図5に示すブローチャートに沿った制御を行う。ここで、執務室内に人が一人でも存在する場合には、アンビエント室内空調機器40をONにし、執務室内に人がいない場合には、アンビエント室内空調機器40をOFFとすることができる。
【0110】
執務室内に人がいるか否かの判断を行う人検知手段としては、人密度検知システムを用いることもできるし、別途執務室内等に設けられる他の人検知手段などを用いることもできる。ここでの他の人検知手段としては、最初の入室者がスイッチをON/OFFするものを用いることもできるし、人感センサなどを用いることもできる。
【0111】
また、図14に示すように、タスク室内空調機器31〜33の下方に、それぞれデスクD1〜D3が存在するとする。このとき、第1デスクD1の周囲に人が存在しない場合には、第1デスクD1の上方に配置された第1タスク室内空調機器31をOFFにする。また、第2デスクD2の周囲に多くの人が集まっている場合には、第2デスクD2の上方に配置された第2タスク室内空調機器32をONにするとともに、設定温度を初期値の低い26℃に設定した冷房運転を行う。さらに、第3デスクD3の周囲に人が一人座っている場合には、第3デスクD3の上方に配置された第3タスク室内空調機器33をONにするとともに、設定温度を初期値+2℃の28℃に設定した冷房運転、あるいは送風運転を行う。
【0112】
このように、タスク・アンビエント空調を行うことにより、通常の空調条件より室内温度設定を緩和したベースとなる空調を行い、そこに上記の全体制御を行うタスク空調システムを行うことにより、省エネルギー運用を行うことができる。また、アンビエント空調の温度設定を緩和していても、タスク空調があることで快適感が維持される。そのため、人員密度が低いエリアを送風運転に切り替えた場合でも、気流感があることで快適さを維持しながら省エネルギー運用を行うことができる。
【0113】
〔室外空調機器蒸発温度設定制御〕
また、本発明に係る室内空調装置においては、室外空調機器21A,21Bの制御を行うこともできる。ここでの室外空調機器21A,21Bの制御としては、室外空調機器21A,21Bの蒸発温度設定を変更する制御が可能である。以下、その制御の例について説明する。図15は、室外空調機器の蒸発温度設定を調整する制御の手順を示すフローチャートである。
【0114】
図15に示すように、室外空調機器の蒸発温度設定を調整する制御においては、まず、空調制御を開始すると(S61)、コントローラ10において人密度を検知し(S62)、続いて、空調制御装置20においてコントローラ10から出力された人密度が「不在」「在・閑散」「在・混雑」のいずれであるかを判断する(S63)。
【0115】
その結果、人密度が「不在」であると判断した場合には、蒸発温度設定の調整を行うことなく、ステップS62に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。また、人密度が「在・閑散」であると判断した場合には、室外空調機器21A,21Bにおける蒸発温度設定を「高」に設定する(S64)。それから、ステップS62に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。
【0116】
さらに、ステップS63において、人密度が「在・混雑」であると判断した場合には、人密度が「在・混雑」である状態が30分間継続しているか否かを判断する(S65)。ここで、人密度が「在・混雑」である状態が30分間継続していないと判断した場合には、ステップS62に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。一方、人密度が「在・混雑」である状態が30分間継続していると判断した場合には、蒸発温度設定を「低」に設定する(S66)
【0117】
それから、混雑状態が継続しているか否かを判断する(S67)。その結果、混雑状態が継続していると判断した場合には、ステップS66に戻って、蒸発温度設定を「低」のままとして、運転を継続する。一方、混雑状態が継続していないと判断した場合には、ステップS62に戻り、制御対象エリアにおける人密度の検知を行う。以後、同様の制御を繰り返して行う。
【0118】
室外空調機器21A,21Bの運転効率は、冷媒の蒸発温度設定が高い方が高くなる。その一方で、室内の人密度が高い場合には、蒸発温度設定が低いと、十分な冷却効果、特に除湿効果を得ることができなくなることがある。このため、ここでは、人密度が「在・閑散」である場合には、室外空調機器21A,21Bの運転効率を優先して、蒸発温度設定を高く設定する一方で、人密度が「在・混雑」である場合には、冷却効果を優先して蒸発温度設定を低く設定する。このため、室内の人密度に応じて室外空調機器21A,21Bの運転を行うことができる。したがって、室内における人の滞在状態に応じた適切な空調制御を行い、室内の快適性の維持と省エネルギーとの両立をさらに図ることができる。
【0119】
〔室外機デマンドコントロール〕
また、室外空調機器21A,21Bの制御としては、室内空調装置を立ち上げる際に、室外空調機器21A,21Bのデマンドコントロールを行うこともできる。以下、その手順について説明する。図16は、室外空調機器のデマンドコントロールの手順を示すフローチャートである。ここでのフローチャートは、室内空調装置を立ち上げる際に行われる制御であり、この手順が済んだ後、たとえば図5に示すフローチャートのステップS3に移行する。
【0120】
図16に示すように、室外空調機器のデマンドコントロールを行う際には、まず、空調制御を開始すると(S71)、コントローラ10において人密度を検知し(S72)、続いて、空調制御装置20においてコントローラ10から出力された人密度が「不在」または「在・閑散」であるか「在・混雑」であるかを判断する(S73)。
【0121】
その結果、人密度が「不在」または「在・閑散」であると判断した場合には、室外空調機器21A,21Bの最大容量を50%に設定する(S74)。次に、人密度が「在・混雑」となっているか否かを判断する(S75)。ここで、人密度が「在・混雑」となっていないと判断した場合には、室内空調装置の運転を開始してから所定の設定時間、たとえば1時間が経過したか否かを判断する(S76)。
【0122】
ここで、1時間が経過してないと判断した場合には、室内空調装置の立ち上げ運転を行っている状態である。このときには、ステップS75に戻り、同様の処理を繰り返す。また、ステップS73において人密度が「在・混雑」であると判断した場合、ステップS75において人密度が「在・混雑」であると判断した場合、およびステップS76で一定時間である1時間が経過したと判断した場合には、執務室内の空調の要求が高まっている。この場合には、室外空調機器21A,21Bの最大容量を100%に設定する(S77)。そして、図5に示すステップS3に移行する。
【0123】
たとえば、執務室Rの空調を行うにあたり執務室Rに利用開始時間、たとえば執務室Rを利用する会社の始業時間が決まっていたとしても、出社時間には個人ごとにばらつきが生じる。ここで、通常、立ち上げ時は、室外空調機器21A,21Bは、最大能力で運転を行うことが多い。したがって、この場合には、人密度が低い状況であるにもかかわらず、室外空調機器21A,21Bを最大容量である100%で運転することとなり、機器効率が低い状態で室内空調装置を運転することとなってしまう。
【0124】
そこで、図16に示すフローでは、室内空調装置の立ち上げ時に室外空調機器21A,21Bの制御対象となるエリア全体の人密度を検知し、人密度が低い場合には、室外空調機器21A,21Bのデマンドコントロールを行う。具体的に、人密度が「不在」または「在・閑散」である場合には、室外空調機器21A,21Bの最大能力を50%程度に強制的に下げ、運転効率のよい50%程度の能力でゆっくりと立ち上げ運転を行う。
【0125】
そして、立ち上げ運転を行う一定時間、たとえば1時間が経過した後に、室外空調機器21A,21Bの容量の上限設定を100%に変更し、通常の制御を開始する。また、立ち上げ運転を行う一定時間が経過する前であっても、人密度が「在・混雑」となった場合には、室外空調機器21A,21Bの容量の上限設定を100%に変更して通常の制御を開始する。このような制御を行うことにより、室外空調機器21A,21Bにおける運転効率に配慮した運転を行うことができる。
【0126】
また、デマンドコントロールは、室外空調機器21A,21Bごとに行われる。このため、執務室R内における人密度状況によっては、図17に示す室内空調機器22に冷媒を供給する左室外空調機器21Aの最大能力を50%程度の効率のよいところに設定して運転を行い、室内空調機器23に冷媒を供給する右室外空調機器21Bを最大能力として運転を行うこともできる。
【0127】
なお、デマンドコントロールを行うにあたっては、最大能力を制御するだけでなく、消費電力を制御対象とすることもできる。この場合には、運転電力量の上限が定格消費電力の所定割合となるように制御することとなる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、空調を行う対象がオフィスビルにおける執務室であるが、その他の部屋とすることもできる。空調を行う対象の他の例としては、会議室、ホール、サーバ室などとすることができる。
【0129】
また、上記実施形態では、人検知システムにおいて、最小検知エリアにアドレスを付与した制御を行っているが、検知エリア自体にアドレスを付与することもできるし、アドレスを付与することなく制御を行うこともできる。さらに、上記実施形態においては、制御対象エリアに2つの検知エリアを設定しているが、制御対象エリアに2以上の複数の検知エリアを設定することもできるし、制御対象エリアと検知エリアとを同一のエリアとすることもできる。また、1つの検知エリア内に2つまたはそれ以上の制御対象エリアを設定することもできる。さらには、1つの検知エリアが複数の制御対象エリアに含まれるように設定することもできる。また、上記実施形態では、所定エリアは制御対象エリアと一致しているが、所定エリアは、制御対象エリアと相違するものとすることもできる。この場合、たとえば所定エリアにおける人密度を算出し、算出した人密度に演算処理を施した結果などに基づいて制御対象エリアにおける空調機の制御を行うことができる。他方、上記実施形態では、全体の制御において、日射の影響を考慮した制御を行っているが、日射の影響については考慮することなく制御を行うこともできる。また、上記実施形態では単一の人検知センサで複数の最小検知エリアを検知する形態としたが、単一の最小検知エリアのみ検知させる形態としてもよい。
【0130】
また、上記実施形態においては、ビル用マルチ空冷パッケージ方式を採用しているが、他の方式でもよい。たとえば、ファンコイルユニットや空調機を利用した方式でもよい。また、ビル用マルチ以外のパッケージ方式でもよい。さらに、上記実施形態においては、コントローラ10と空調制御装置20とを別の装置として設けているが、コントローラ10と空調制御装置20とを一体とし、コントローラ10および空調制御装置20における制御をまとめて行うようにすることもできる。
【符号の説明】
【0131】
1…人密度検知システム
2…空調システム
3A〜3F,4A〜4F…室内温度計測機器
10…コントローラ
11A〜11F,12A〜12F,13A〜13F,14A〜14F…人検知センサ
20…空調制御装置
21A,21B…室外空調機器
22A〜22F…左室内空調機器
23A〜23F…右室内空調機器
31〜33…タスク室内空調機器
31…第1タスク室内空調機器
32…第2タスク室内空調機器
33…第3タスク室内空調機器
40…アンビエント室内空調機器
41…吹出口
42…配管
D1〜D3…デスク
E1〜E4…制御対象エリア
H…人
R,RA…執務室
R1…不検知エリア
R2…多重付エリア
R3…軽重付エリア
R4…通常重付エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空調を行う空調機と、
室内における人の滞在状態を検知する人検知センサと、
前記人検知センサの検知結果に基づいて、前記室内における人密度を取得する人密度取得手段と、
前記人密度取得手段によって取得された前記室内における人密度に基づいて、前記空調機の運転制御を行う空調制御装置と、を備え、
前記空調制御装置は、前記室内における人密度が低い領域に対して、前記室内における人密度が高い領域よりも前記空調機における空調条件を緩和した空調制御を行うことを特徴とする室内空調装置。
【請求項2】
前記室内を複数のエリアに分割した最小検知エリアを設定するとともに、
所定数の前記最小検知エリアを備える検知エリアを設定しておき、
前記人検知センサは、前記検知エリアに含まれる前記最小検知エリア内における人の滞在状態を検知し、
前記人密度取得手段は、前記人検知センサによって検知された前記最小検知エリア内における人の滞在状態に基づいて、前記室内における所定エリアの人密度を取得する請求項1に記載の室内空調装置。
【請求項3】
前記人密度取得手段は、前記所定エリア内における前記最小検知エリアのうち、滞在状態が存在状態である最小検知エリアの数が所定値を超える場合に、前記所定エリアの前記人密度が高いと判定し、滞在状態が存在状態である最小検知エリアの数が所定値を以下の場合に、前記所定エリアの人密度が低いと判定する請求項2に記載の室内空調装置。
【請求項4】
前記人密度取得手段は、前記人の滞在状態の経時変化を記録する記録装置を備え、
前記人の滞在状態の経時変化に基づいて、前記所定エリアの人密度を取得する請求項2または請求項3に記載の室内空調装置。
【請求項5】
複数の前記最小検知エリアに対して、それぞれアドレスが付与され、
前記空調機は、複数の前記最小検知エリアに対応して複数配設されており、
前記空調制御装置は、前記最小検知エリアに付与されたアドレスと、複数の前記空調機のそれぞれに対応付けを行って、複数の前記空調機に対する空調制御を行う請求項2〜4のうちのいずれか1項に記載の室内空調装置。
【請求項6】
前記最小検知エリアの属性に基づいて、前記アドレスに対応付けられた前記空調機の制御内容に対する重み付けを行う請求項5に記載の室内空調装置。
【請求項7】
前記室内における人の存在を検知する人検知手段をさらに備え、
前記空調機として、室内の狭域に対する空調を行う複数のタスク空調機と、室内の広域に対する空調を行うアンビエント空調機と、さらに備えており、
前記空調制御装置は、前記人密度取得手段で取得された前記室内の人密度に基づいて、複数の前記タスク空調機の空調制御を行い、
前記人検知手段の検知結果に基づいて、前記アンビエント空調機の空調制御を行う請求項2〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の室内空調装置。
【請求項8】
前記室内における人の在室継続時間を取得する在室継続時間取得手段を備えており、
前記人の在室継続時間が所定のしきい値を超えた場合に、前記空調機の空調条件を緩和する請求項2〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の室内空調装置。
【請求項9】
前記所定のしきい値を複数設定しておき、
複数の前記しきい値を超える毎に、前記空調機の空調条件を緩和する請求項8に記載の室内空調装置。
【請求項10】
前記空調機が、室内機と室外機とを備え、前記室内機と前記室外機との間で冷媒を循環供給させる空調機であり、
前記空調機の立ち上げ時に、前記空調制御装置による制御を開始する請求項1〜請求項9のうちのいずれか1項に記載の室内空調装置。
【請求項11】
前記空調機が、室内機と室外機とを備え、前記室内機と前記室外機との間で冷媒を循環供給させる空調機であり、
前記空調制御装置は、人密度取得手段で取得された前記室内における人密度に基づいて、前記室外機における冷媒の蒸発温度を設定する請求項1〜請求項10のうちのいずれか1項に記載の室内空調装置。
【請求項12】
室内における人の滞在状態を検知する人検知センサの検知結果に基づいて、前記室内における人密度を取得し、
取得された前記室内における人密度に基づいて、室内の空調を行う空調機の空調制御を空調制御装置によって行うにあたり、
前記室内における人密度が低い領域に対して、前記室内における人密度が高い領域よりも前記空調機における空調条件を緩和した空調制御を行うことを特徴とする室内空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−40693(P2013−40693A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176004(P2011−176004)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】