説明

室内芳香方法

【課題】錠剤組成物を水に溶解させたときに水面で発生する泡立ちを制御し、細かい飛沫を多量に発生させることで、香気の揮散を促進する室内芳香方法及びそれに用いる室内芳香用錠剤組成物を提供する。
【解決手段】有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有する室内芳香用錠剤組成物を、開口部を有する容器内で水に溶解させて用いる室内芳香方法であって、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と香料の含有量との質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300であり、室内芳香用錠剤組成物を特定条件下で容器内に配置し、且つ、特定条件とするように、容器内の水に水没させて室内芳香用錠剤組成物を溶解させる、室内芳香方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内芳香方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水を加えて有機酸と炭酸塩とを反応させ、炭酸ガスを発生させることで香気を漂わせることのできる芳香剤が知られている。例えば、香料0.5〜30.0重量%と、炭酸塩5.0〜60.0重量%と、有機酸5.0〜60.0重量%と、液状油分0.5〜30.0重量%と、粉末5.0〜70.0重量%とを含有させ、水を加えることで瞬時に発泡して香りが拡散する芳香剤が知られている(特許文献1)。また、有機酸、炭酸アルカリ並びに芳香成分又は防臭剤を含み、水溶性賦型剤および錠剤結合剤により成る防臭芳香組成物が、トイレ等に瞬時に芳香を充満せしめることも知られている(特許文献2)。更に、炭酸塩及び/又は重炭酸塩、有機酸、及び水分を含有し、25℃における水分活性値が0.54以下であることを特徴とする錠剤組成物に、香料成分を含有させ、室内芳香用とすることで、香りを一時的に強く出すことができることも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−286430号公報
【特許文献2】特開昭49−41548号公報
【特許文献3】特開2001−170153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら芳香剤は、いずれも香りを急速に空間に付与できる点に着目するものであり、その香り立ちの持続性については、依然、検討の余地がある。
【0005】
従って、本発明の課題は、斯かる実情に鑑み、瞬時に香りを充満せしめるのみならず、その香り立ちの持続性が高い室内芳香方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討した結果、有機酸及び炭酸塩を含有し、かつ特定量の非イオン界面活性剤と香料とを含有する錠剤組成物を、特定条件で用いることで、錠剤組成物を水に溶解させたときに細かい飛沫を一定時間持続的に発生させることができ、その結果、香気の揮散が促進されて効果的に香り立ちを持続させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有する室内芳香用錠剤組成物を、開口部を有する容器内で水に溶解させて用いる室内芳香方法であって、
室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と香料の含有量との質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300であり、
室内芳香用錠剤組成物を容器の側面内壁から離間するように容器内に配置し、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)を1×10-6〜95×10-6とし、且つ、
室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とするように、容器内の水に水没させて室内芳香用錠剤組成物を溶解させる、室内芳香方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有し、開口部を有する容器内で水に溶解させて用いる室内芳香用錠剤組成物であって、
室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と香料の含有量との質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300であり、
容器の側面内壁から離間するように容器内に配置され、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)を1×10-6〜95×10-6とされ、且つ、
室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とするように容器内の水に水没されて用いる、室内芳香用錠剤組成物を提供するものである。
【0009】
さらに、本発明は、上記室内芳香用錠剤組成物と、
開口部、側面及び底面を有する、室内芳香用錠剤組成物を水に溶解させるための容器とを含み、
容器が、該側面の内壁から離間するように室内芳香用錠剤組成物を配置することができ、且つ、室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とする量の水を充填することができる内容量を有するものである、室内芳香用キットを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、室内芳香用錠剤組成物を水に溶解させたときに、香料が充分に揮散され、持続性の高い香り立ちを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の室内芳香用錠剤組成物及び容器の縦断面図を示す概略図であり、図1(b)は、図1(a)の室内芳香用錠剤組成物の水平投影面の上面図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる室内芳香用錠剤組成物は、有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有するものである。
【0013】
有機酸としては、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸等の室温(25℃)で固体のものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。なかでも、水中での適度な溶解性及び香り立ちの持続性の点から、溶解度が1g/100g(60℃・水)以上であり、且つ10g/100g以下(20℃・水)の有機酸を含有すると好ましい。具体的には、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸が好ましく、中でもフマル酸が好ましい。
有機酸の含有量は、適度な炭酸ガス発生量を確保する点から、室内芳香用錠剤組成物全量中、20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0014】
炭酸塩としては、炭酸ジアルカリ金属塩である炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等;炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム等;二価以上の金属の炭酸塩である炭酸カルシウム等が挙げられる。炭酸ジアルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウムが特に好ましく、炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
炭酸塩の含有量は、適度な炭酸ガス発生量を確保する点から、室内芳香用錠剤組成物全量中に、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは20〜50質量%であり、さらに好ましくは25〜45質量%である。
【0016】
香料としては、所望の香気を漂わせるべく適宜選択することができる。具体的には、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、合成ムスク、含窒素・硫黄化合物が挙げられる。
【0017】
上記香料は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。香料の含有量は、効果的な香気作用及びその持続性の点から、室内芳香用錠剤組成物全量中に、好ましくは0.5〜5.0質量%であり、より好ましくは1.0〜4.5質量%であり、さらに好ましくは1.5〜4.0質量%である。
なかでも、室内芳香用錠剤組成物の保存安定性の点等から、室内芳香用錠剤組成物中の香料の含有量に対する炭酸ジアルカリ金属塩の含有量の質量比(炭酸ジアルカリ金属塩/香料)が2〜120が好ましく、5〜20が更に好ましい。
【0018】
非イオン界面活性剤としては、水中での香料成分の溶解性と香り立ちの持続性のバランスの点から、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いることにより、上記効果をさらに向上させることができるため好ましい。
【0019】
なかでも、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0020】
特に、上記効果をさらに向上させることができるため、HLB10〜15の非イオン界面活性剤が好ましく、HLB11〜14の非イオン界面活性剤が更に好ましい。ここで、HLBはGriffinの式により求められるものである。
【0021】
本発明では、室内芳香用錠剤組成物中の非イオン界面活性剤の含有量に対する香料の含有量の質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300である。これらの含有量が上記範囲内の質量比であると、後述する所定の条件に適合するように容器内に室内芳香用錠剤組成物を水没させて使用したときに、細かい飛沫が多量に発生し、良好に香料を揮散させることが可能であり、持続性の高い香り立ちを実現することができる。上記質量比は、好ましくは、50〜250であり、より好ましくは70〜210である。
【0022】
なお、本発明で用いる室内芳香用錠剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記以外の成分を適宜配合することができる。このような成分としては、水溶性高分子、油性成分、賦形剤、消泡剤、酸化防止剤、防菌・防黴剤、色素、生薬類等が挙げられる。
【0023】
水溶性高分子としては、数平均分子量200〜20000のポリエチレングリコール、デキストリン、炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル及び/又はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜5のスルホアルキルで修飾された多糖類、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、及びメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等の水溶性非イオン性セルロースエーテル、カチオン化セルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のイオン性セルロース、グアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、メチルグアーガム、エチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、メチルスターチ、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルスターチ及びヒドロキシプロピルメチルスターチが挙げられる。このうち、香料の香りの持続性や保存安定性の点で、数平均分子量800〜20,000のポリエチレングリコールが好ましく、2,000〜13,000のポリエチレングリコールが更に好ましく、4,000〜9,000のポリエチレングリコールが特に好ましい。なお、ポリエチレングリコールの数平均分子量を測定する場合には、溶媒として水/エタノールを用い、ポリスチレンを標準としたGPC法を用いる。
【0024】
これらの水溶性高分子の室内芳香用錠剤組成物中の含有量は1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。
【0025】
本発明では、上記室内芳香用錠剤組成物を容器の側面内壁から離間するように容器内に配置して用いる。このように配置することで、錠剤組成物が水に溶解したときに発生する炭酸ガスによって水中に生じる対流が錠剤組成物の周囲に適度な勢いで流動を続けるため、水面で必要以上に非イオン界面活性剤が泡立つことを回避することができ、泡中に香料が封じ込まれて香料の揮散が阻害されるのを防止することが可能である。
【0026】
好ましくは、室内芳香用錠剤組成物を容器の横断面の略中央部に位置するように配置して用いる。このように配置することで、容器の壁面から錠剤組成物までの各距離をほぼ均等とし、錠剤組成物が水に溶解したときに発生する炭酸ガスによって水中に生じる対流が容器内で偏在することがなく、錠剤組成物の周囲に殊更良好に流動が持続するため、香料の揮散が阻害されるのを防止することが可能で優れた香り立ちを持続することができる。
【0027】
本発明では、上述のように容器内に室内芳香用錠剤組成物を配置し、水没させて錠剤組成物を溶解させる。この場合、図1(a)の縦断面図に示すように、室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、配置された錠剤組成物2の最頂部Pから水面3までの距離Xと、配置された錠剤組成物2の水平投影面4における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とする。ここで、錠剤組成物2の最頂部Pとは、錠剤組成物2を配置したときに、錠剤組成物2の底面から最も高い位置又は最も水面に近い位置を示す錠剤組成物2の端部を意味し、距離Xはかかる最頂部Pから水面3までの最短距離を意味する。また、錠剤組成物2の水平投影面4における最長幅Yとは、図1(b)の上面図に示すように、水平面に錠剤組成物2を投影したときの水平投影面4上で、最も長い幅Yを意味する。
【0028】
なお、室内芳香用錠剤組成物を容器内で所定の位置となるように配置した後、容器内に水を充填して錠剤組成物を水没させてもよく、或いは容器内に水を充填し、次いで錠剤組成物を配置して水没させてもよい。
【0029】
上記X/Yの値は、好ましくは0.2〜5.2であり、より好ましくは0.5〜5.0である。X/Yの値が上記範囲内であると、錠剤組成物2の最頂部Pと水面3との間が適度な距離を有するため、錠剤組成物2が水中で溶解するときに、水中において錠剤組成物2の側面近傍のみならず錠剤組成物2の最頂部Pと水面3との間に良好な対流が発生しつつ発泡が生じるため、水面で必要以上に非イオン界面活性剤が泡立つことを回避することができ、細かい飛沫が持続的に発生して香料を良好に揮散させることができる。
【0030】
また、本発明では、図1(a)の縦断面図に示すように、室内芳香用錠剤組成物2の溶解開始時において、水面面積Sと、配置された錠剤組成物2の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とする。上記S/Tの値は、好ましくは3.0〜11.0であり、より好ましくは4.0〜10.0である。S/Tの値が上記範囲内であると、錠剤組成物2の側面と容器1の壁面とが適度な距離で離間し、室内芳香用錠剤組成物2が水中で溶解したときに発生する対流を適度な勢いにすることができるため、水面で必要以上に非イオン界面活性剤が泡立つことを回避することができ、細かい飛沫を持続的に発生することで香気の揮散が促進される。
【0031】
このように、X/Yの値を上記範囲内としつつ、S/Tの値を上記範囲内とすることで、上記室内芳香用錠剤組成物が容器内の水に溶解したときに、水中で適度な対流を持続的に引き起こし、水面で過剰な泡立ちが発生するのを制御して好適な飛沫を持続的に発生させることができ、香料が非常に良好に揮散され、優れた香り立ちを持続させることができる。
【0032】
本発明では、上記室内芳香用錠剤組成物を容器に水没させる際に、X/Yの値及びS/Tの値を上記範囲内となるように、容器内で水の量を調整して、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)が1×10-6〜95×10-6となるようにする。非イオン界面活性剤と水との比率が上記範囲内であると、水面における泡立ちを抑制しつつ、水面での香料の浮きを抑制することも可能であるため、細かい飛沫が持続的に発生するため香料が良好に揮散されて香り立ちを持続させることができる。
【0033】
本発明で用いる室内芳香用錠剤組成物は、上述のように容器に水没させて用いるため、その形状は、容器の底面の形状と略同一の形状であるのが好ましく、容器の形状をグラスや手桶等の円柱状のものを想定した場合、室内芳香用組成物の具体的な形状としては、例えば、略円盤状であってもよく、略球状であってもよい。また、容器の形状を石鹸箱等の楕円形や矩形や多角形のものを想定した場合、室内芳香用組成物の具体的な形状としては、例えば横断面が略楕円形又は矩形や多角形を呈していてもよい。また、室内芳香用錠剤組成物の表面は平滑面であってもよく、中央部に窪みが形成された凹凸面を有していてもよいが、水中での安定性を考慮すると表面に平滑面を有する形状、例えば、表面に平滑面を有する略円盤状が好ましい。
【0034】
室内芳香用錠剤組成物の重量は、容器のサイズや容器内の水の量等によっても変動し得るが、好ましくは10〜35g、より好ましくは12〜25gである。
【0035】
容器内の水の温度は、有機酸等の溶解性及び香料の揮発性等の点から、通常15〜55℃が好ましく、更に好ましくは30〜50℃が好ましく、特に35〜45℃が好ましい。
【0036】
本発明の室内芳香用キットは、上記室内芳香用錠剤組成物と、開口部、側面及び底面を有する容器とを含む。この場合、容器の開口部が容器の上部に存在すると、香料の揮散性の点で好ましく、更に、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積よりも大きい開口部であると、錠剤組成物の配置時の利便性や、香りの揮散性の点で好ましい。容器の側面の内壁面は、水中で適度な対流を持続的に引き起こし、水面で過剰な泡立ちが発生するのを制御して好適な飛沫を持続的に発生させる点から、垂直に立ち上がっている又は上部に広がる形状に沿って直線的に立ち上がっていることが好ましい。
【0037】
容器の底面は、錠剤を配置した時に自然に中央部に錠剤が静置される点で、中央部が凹形状であるのが好ましい。容器の内壁面は、水中で適度な対流を持続的に引き起こし、水面で過剰な泡立ちが発生するのを制御して好適な飛沫を持続的に発生させる点から、平滑面であることが好ましい。また、容器内の水の保温性を考慮して、容器の底面外側に糸底を有してもよい。また、室内芳香用錠剤組成物に合わせ、所定の位置に水を充填すればよいように、容器の壁面に印等をつけてもよい。このような容器を含むキットを用いれば、室内に効果的な芳香作用をもたらすことができる。
【0038】
上記容器は、さらに、容器の横断面の略中央部に位置するように室内芳香用錠剤組成物を配置したときに、上記X/Yの値が0.1〜5.5となり、かつ上記S/Tの値が2.5〜12.0となるように、室内芳香用錠剤組成物を水没させることができる内容量を有する容器であればよい。したがって、かかる容器の形状は特に制限されず、円柱状であっても角柱状であってもよく、底面から開口部に向けて徐々に断面積が大きくなっている形状、例えば逆円錐台状や逆角錐台状であってもよく、底面の一部に球面を含むような形状であってもよく、例えば、錠剤組成物を安定に配置できるよう、錠剤組成物の形状に追随した底面形状を有していてもよい。
【0039】
具体的には、例えば、図1(a)に示すような錠剤組成物2と容器1とのキットである場合、仮に錠剤組成物2の重量が20g、水平投影面積が9.6cm2であるとすると、容器1の内容量は160mLであり、容器底面から開口部を有する上面までの高さhは5cmであるのがよい。この場合、容器1の内容量は100〜300mLであってもよく、130〜200mLであってもよい。また高さhは3.5〜9.0cmであってもよく、4.5〜7.0cmであってもよい。この際、容器1の底面と錠剤組成物2との間に、錠剤組成物2を安定に配置するための台座を配置して高さhを調整してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
表1に示す配合に従って作製した錠剤(直径3.5cm、厚み1.5cm、重量20g)を内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に配置し、水面直径が7.5cm、水面面積Sが44.2cm2、及び錠剤最頂部から水面までの距離Xが2cmとなるように水(40℃、140g)を充填した。錠剤の水平投影面積Tは9.6cm2、水平投影面における最長幅Yは3.5cm、X/Yは0.57、S/Yは4.6であった。
次いで、以下の方法に従って各評価及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0042】
《香り評価》
内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に40℃の湯を充填してから、2分経過後と6分経過後の香りについて、下記基準に従って評価を行った。
○:香り立ちがよい。
×:香り立ちが悪い。
【0043】
《滴揮散量の測定》
定量分析用濾紙(5種A、125mm径)を、水面から3cmの高さに水面に対して水平になるように配置し、直径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に40℃の湯を充填してから2分経過後まで、及び2分経過時点から6分経過までの各々について、水面から飛散する滴量を吸着させた。
次いで、40℃の湯を充填してから2分経過後の濾紙の重量と測定前の濾紙の重量との差、及び40℃の湯を充填してから6分経過後の濾紙の重量と2分経過後の濾紙の重量との差を求めて、各々の時間が経過した時点での滴揮散量(g)とした。
【0044】
《水面の香料の浮き》
直径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に40℃の湯を充填してから、10分経過後に、水面における香料の浮きの有無を目視により確認した。
○:水面における香料の浮きは確認されなかった。
×:水面における香料の浮きが確認された。
【0045】
【表1】

【0046】
表1によれば、実施例1〜2では、錠剤組成物の周囲に良好に対流が生じて細かい飛沫が多量に発生し、香料が充分に揮散され、持続性の高い香り立ちを実現することができた。一方、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)が95×10-6を超える比較例1〜2は、水面における泡立ちが多く、かかる泡が滴の飛散を妨げて香り立ちが悪くなり、芳香が持続しないことがわかった。また、非イオン界面活性剤を含有しない比較例3は、水面上に香料が浮いてしまい、香りを充分に放つことができないことがわかった。また、実施例1〜2の室内芳香用錠剤組成物は、打錠後アルミピローで密封包装し、室温にて30日保存した後でも包材の膨らみ等が見られず保存安定性が良好であった。
【0047】
[実施例3〜12、比較例4〜7]
実施例1で用いた錠剤と同じ処方で同じサイズの錠剤(錠剤の水平投影面積T=9.6cm2、水平投影面における最長幅Y=3.5cm)を用い、表2に示す各容器を用いて錠剤の最頂部から水面までの距離X(cm)と水面面積(cm2)を調整して、容器内に水を充填してから6分経過後の香りについて、下記基準に従って評価を行った。結果を表2に示す。
◎:香り立ちがよい。
○:香り立ちがまあまあよい。
×:香り立ちが悪い。
【0048】
【表2】

【0049】
表2によれば、実施例3〜12では、錠剤組成物の周囲に良好に対流が生じて細かい飛沫が多量に発生し、香料が充分に揮散され、持続性の高い香り立ちを実現することができた。一方、X/Yが0である比較例4は、水中で充分な対流が発生せず、錠剤周辺のみで発泡が発現してしまい、香り立ちが弱まり持続しないことがわかった。また、X/Yが上記範囲内であってもS/Tが12.0を超える比較例5は、泡立ちの勢いが非常に悪く香り立ちも弱まり持続せず、またS/Tが2.5未満である比較例6は、水面に多くの泡が発生し、香り立ちが弱まり持続しないことがわかった。さらに、S/Tが上記範囲内であってもX/Yが5.5を超える比較例7も、水面に多くの泡が発生し、香り立ちが弱まり持続しないことがわかった。
【0050】
[実施例13〜16、比較例8〜10]
実施例1で用いた錠剤と同じ処方で別のサイズの錠剤(直径4.8cm、厚み0.8cm、重量20g、錠剤の水平投影面積T=18.1cm2、水平投影面における最長幅Y=4.8cm、)を用い、表3に示す各容器を用いて錠剤の最頂部から水面までの距離X(cm)と水面面積(cm2)を調整して、実施例3と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3によれば、実施例13〜16では、香料が充分に揮散され、持続性の高い香り立ちを実現することができた。一方、X/Yが上記範囲内であってもS/Tが2.5未満である比較例8は、水面に多くの泡が発生し、香り立ちが弱まることがわかった。また、S/Tが上記範囲内であってもX/Yが0である比較例9は、水中で充分な対流が発生せず、錠剤周辺のみで発泡が発現してしまい、香り立ちが弱まることがわかった。さらに、S/Tが上記範囲内であってもX/Yが5.5を超える比較例10も、水面に多くの泡が発生し、香り立ちが弱まることがわかった。
【0053】
[実施例17、比較例11]
実施例17として、実施例1で作製した錠剤(直径3.5cm、厚み1.5cm、重量20g)を用い、これを内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラスに配置し、水面直径が7.5cm、水面面積Sが44.2cm2、及び錠剤最頂部から水面までの距離Xが2cmとなるように水(40℃、140g)を充填した。錠剤の水平投影面積Tは9.6cm2、水平投影面における最長幅Yは3.5cm、X/Yは0.57、S/Yは4.6であった。一方、比較例11として、表4に示す配合に従って作製した粉末(重量20g)を用い、これを内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラスに配置し、水面直径が7.5cm、水面面積Sが44.2cm2となるように水(40℃、140g)を充填した。
次いで、以下の方法に従って評価及を行った。結果を表4に示す。
【0054】
《飛沫発生時間》
内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に40℃の湯を充填してから、水面における飛沫発生が終了するまでの時間を目視により確認した。
【0055】
《香り評価》
内径7.5cmの底面が凹形状で円柱形状のグラス内に40℃の湯を充填してから、2分経過後と6分経過後の香りについて、下記基準に従って評価を行った。
○:香り立ちがよい。
×:香り立ちが悪い。
【0056】
【表4】

【0057】
表4によれば、実施例17では、香料が充分に揮散され、持続性の高い香り立ちを実現することができたが、剤型が粉末である比較例11は飛沫発生時間が短く対流も生じないため、香りを持続的に放つことができず、香りの揮散度合いが著しく低いことがわかった。
【符号の説明】
【0058】
1: 容器
2: 室内芳香用錠剤組成物
3: 水面
4: 室内芳香用錠剤組成物の水平投影面
P: 室内芳香用錠剤組成物の最頂部
X: 室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離
Y: 室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有する室内芳香用錠剤組成物を、開口部を有する容器内で水に溶解させて用いる室内芳香方法であって、
室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と香料の含有量との質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300であり、
室内芳香用錠剤組成物を容器の側面内壁から離間するように容器内に配置し、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)を1×10-6〜95×10-6とし、且つ、
室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とするように、容器内の水に水没させて室内芳香用錠剤組成物を溶解させる、室内芳香方法。
【請求項2】
有機酸、炭酸塩、香料及び非イオン界面活性剤を含有し、開口部を有する容器内で水に溶解させて用いる室内芳香用錠剤組成物であって、
室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と香料の含有量との質量比(香料/非イオン界面活性剤)が30〜300であり、
容器の側面内壁から離間するように容器内に配置され、室内芳香用錠剤組成物中における非イオン界面活性剤の含有量と容器内の水全量との質量比(非イオン界面活性剤/水)を1×10-6〜95×10-6とされ、且つ、
室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とするように容器内の水に水没されて用いる、室内芳香用錠剤組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の室内芳香用錠剤組成物と、
開口部、側面及び底面を有する、室内芳香用錠剤組成物を水に溶解させるための容器とを含み、
容器が、該側面の内壁から離間するように室内芳香用錠剤組成物を配置することができ、且つ、室内芳香用錠剤組成物の溶解開始時において、室内芳香用錠剤組成物の最頂部から水面までの距離Xと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面における最長幅Yとの比(X/Y)を0.1〜5.5とし、水面面積Sと、室内芳香用錠剤組成物の水平投影面積Tとの比(S/T)を2.5〜12.0とする量の水を充填することができる内容量を有するものである、室内芳香用キット。

【図1】
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【公開番号】特開2012−135402(P2012−135402A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289188(P2010−289188)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】