説明

室外機

【課題】圧縮機の側面を覆う防音材を備えた室外機において、防音材が吸水することに起因する吸音性能の低下を防止する。
【解決手段】室外機10は、冷媒回路中の冷媒を圧縮する圧縮機22と、圧縮機22の側面を覆う防音材3Aと、圧縮機22が設置される底板フレーム16とを備えている。防音材3Aは、遮音材42と、遮音材42の内側で圧縮機22の側面を覆い、吸水性を有する吸音材41とを含む。遮音材42の下端面は、底板フレーム16の底板17aに当接している。吸音材41の下端面S1は、第1の部位S11と、底板17aに溜まる水が吸音材41に吸水されるのを抑制するために第1の部位S11よりも上方に位置する第2の部位S12とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の側面を覆う防音材を備えた室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機、冷蔵機、冷凍機、ヒートポンプ給湯機などのように冷媒回路を備えた冷凍装置が知られている。この冷凍装置の室外機は、圧縮機と、この圧縮機の運転時に生じる騒音を低減するために圧縮機を覆う筒状の防音材と、これらを収容するケーシングとを備えている。防音材は、例えばゴムなどの遮音性に優れた材料により形成された遮音材と、吸音性に優れた材料により形成された吸音材とが積層された構造を有している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
吸音材の材料としては、例えばフェルトなどのように、内部に連続した空隙が形成されているものが用いられる。吸音材に音波が入射すると、空隙に存在する空気が振動し、この空気の振動が繊維の摩擦により熱エネルギーに変換され、結果として吸音現象が生じる。このように内部に連続した空隙が形成された吸音材は、高い吸水性も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−163479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、室外機のケーシング内には、例えば熱交換器、アキュムレータなどが配設されており、これらの表面において生じた凝縮水が流下してケーシングの底板上に溜まることがある。底板上に溜まった水は、吸音材の下端部に接触すると毛細管現象により吸音材に吸い上げられ、吸音材の空隙に保水される。しかし、このように吸音材が保水すると、空気の上記振動が妨げられ、その結果、吸音材の吸音性能が低下する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、圧縮機の側面を覆う防音材を備えた室外機において、防音材が吸水することに起因する吸音性能の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の室外機は、冷媒回路中の冷媒を圧縮する圧縮機(22)と、前記圧縮機(22)の側面を覆う防音材(3A)と、前記圧縮機(22)が設置される底板フレーム(16)と、を備えている。前記防音材(3A)は、遮音材(42)と、前記遮音材(42)の内側で前記圧縮機(22)の側面を覆い、吸水性を有する吸音材(41)と、を含む。前記遮音材(42)の下端面は、前記底板フレーム(16)の底板(17a)に当接している。前記吸音材(41)の下端面(S1)は、第1の部位(S11)と、前記底板(17a)に溜まる水が吸音材(41)に吸水されるのを抑制するために前記第1の部位(S11)よりも上方に位置する第2の部位(S12)とを含む。
【0008】
この構成では、吸音材(41)の下端面(S1)には第2の部位(S12)が設けられているので、吸音材(41)の下端面(S1)全体が第1の部位(S11)と同じ高さである場合に比べると、吸音材(41)の下端面(S1)と、底板フレーム(16)に溜まる水との接触面積が小さくなり、底板(17a)に溜まる水が吸音材(41)に吸水されるのを抑制することができる。その結果、吸音材(41)の保水量が低減されるので、吸音材の吸音性能の低下が抑制される。また、仮に、吸音材(41)の下端面(S1)全体が第2の部位(S12)と同じ高さである場合には、吸音材(41)の下端面(S1)と底板(17a)との隙間から音漏れがしやすくなるが、本構成では、第1の部位(S11)が設けられているので前記音漏れを抑制することができる。
【0009】
前記室外機において、前記第2の部位(S12)は、前記第1の部位(S11)よりも前記圧縮機(22)側に位置しているのが好ましい。
【0010】
この構成では、第2の部位(S12)は、第1の部位(S11)よりも上方に位置し、かつ圧縮機(22)側に位置しているので、吸水材(41)は、圧縮機(22)側において特に保水が抑制される。その結果、圧縮機(22)の周辺が湿潤状態となるのが抑制されるので、圧縮機の表面の腐食が抑制される。
【0011】
具体的には、前記第1の部位(S11)及び前記第2の部位(S12)が、前記圧縮機(22)側に向かうほど上方に位置するように傾斜した傾斜面である形態、前記第2の部位(S12)が前記第1の部位(S11)との間に段差を介して設けられている形態が例示できる。前者の傾斜した形態の場合には、後者の段差を有する形態に比べて加工しやすく生産性に優れるというメリットがある。
【0012】
また、前記室外機において、前記第2の部位(S12)が前記第1の部位(S11)よりも前記圧縮機(22)側に位置している場合に、前記防音材(3A)は、前記吸音材(41)の前記下端面(S1)から前記吸音材(41)の内部を上方に延びる遮水シート(43)をさらに含んでいるのが好ましい。
【0013】
この構成では、仮に、吸音材(41)の下端面(S1)における遮音材(42)側の部位から水が吸い上げられた場合であっても、この水は、遮水シート(43)によって圧縮機(22)側に浸透するのが抑制される。よって、吸音材の吸音性能の低下がさらに抑制される。しかも、圧縮機(22)の周辺が湿潤状態となるのが抑制されるので、圧縮機の表面の腐食が抑制される。
【0014】
また、前記吸音材(41)は、前記遮水シート(43)よりも前記遮音材(42)側に位置する第1吸音材と、前記遮水シート(43)よりも前記圧縮機(22)側に位置する第2吸音材とを含み、前記第2吸音材の吸水性は、前記第1吸音材の吸水性よりも低い場合には、仮に、第1吸音材の下端面(S1)から水が吸い上げられた場合であっても、この水は、吸音材41全体が第1吸音材により構成されている場合に比べると、第2吸音材へ浸透しにくくなる。よって、吸音性能の低下がさらに抑制される。
【0015】
さらに、前記遮水シート(43)の下端(43a)は、前記底板フレーム(16)に溜まる水の高さに基づいて予め定められた高さに位置しているのが好ましい。具体的には、例えば底板フレーム(16)に溜まり得る水の最大高さよりも遮水シート(43)の下端(43a)を高くするという形態が挙げられる。このように遮水シート(43)の下端(43a)を予め定められた高さに配置しておくことにより、遮水シート(43)の下端(43a)及びこれよりも圧縮機(22)側に位置する吸音材(41)の下端面(S1)に底板フレーム(16)の水が接触するのを防止できる。
【0016】
前記室外機において、前記防音材(3A)は、前記圧縮機(22)に筒状に巻き付けられており、前記吸音材(41)の下端面(S1)は、前記第1の部位(S11)と前記第2の部位(S12)とが前記防音材(3A)の周方向に交互に並ぶことにより上下方向の凹凸が形成された波形状を有している形態であってもよい。
【0017】
この構成では、前記吸音材(41)の下端面(S1)が波形状を有しているので、吸音材(41)の下端面(S1)と底板フレーム(16)に溜まる水との接触面積を小さくしつつ、吸音材(41)の下端面(S1)と底板フレーム(16)との隙間が大きくなりすぎるのを抑制できる。これにより、吸音特性の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の室外機によれば、防音材が吸水することに起因する吸音性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る室外機を備えた空気調和装置の構成を示す配管系統図である。
【図2】第1実施形態に係る室外機における圧縮機とこれを覆う防音材とを示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る室外機における底板フレームと、これに設置された圧縮機及び防音材とを示す断面図である。
【図4】図3の一部を拡大した断面図である。
【図5】第2実施形態に係る室外機の一部を示す断面図であり、底板フレームと、これに設置された圧縮機及び防音材とを示している。
【図6】第3実施形態に係る室外機の一部を示す断面図であり、底板フレームと、これに設置された圧縮機及び防音材とを示している。
【図7】第4実施形態に係る室外機の一部を示す断面図であり、底板フレームと、これに設置された圧縮機及び防音材とを示している。
【図8】(A)は、第5実施形態に係る室外機の一部を示す斜視図であり、底板フレームと、これに設置された圧縮機及び防音材とを示している。(B)は、(A)において前記防音材から遮音材を外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る室外機10を備えた空気調和装置を配管系統図で示している。この図に示す空気調和装置1は、室外に設置される室外機10と、室内に設定される室内機12とを備えており、これらの間で冷媒を循環させながら冷房運転と暖房運転とを行う。
【0022】
室外機10は、圧縮機22、アキュムレータ24、四方切替弁26、室外熱交換器28、膨張弁30及びこれら圧縮機22等が収容されるケーシング11を備える。一方、室内機12は、室内熱交換器32及びこれが収容されるケーシング13を備える。
【0023】
圧縮機22、アキュムレータ24、四方切替弁26、室外熱交換器28、膨張弁30及び室内熱交換器32は配管で接続されており、これにより冷媒を循環させながら冷凍サイクルを実効するための冷媒回路20が構成されている。
【0024】
具体的に説明すると、圧縮機22は冷媒の吸入ポート及び吐出ポートを備える。吐出ポートは吐出管2aを介して四方切替弁26の第1ポート27aに接続され、吸入ポートは吸入管2bを介して四方切替弁26の第3ポート27cに接続されている。これにより圧縮機22は、吸入管2bを通じて冷媒を吸入、圧縮しながら当該圧縮された冷媒を吐出管2aに吐出する。この圧縮機22としては、例えば全密閉型の高圧ドーム型スクロール圧縮機が適用される。
【0025】
アキュムレータ24は、吸入管2bの途中に介設されており、圧縮機22に吸入される冷媒中から液体成分を分離する。このアキュムレータ24は、圧縮機22に形成された取付部に固定されることで圧縮機22に一体に組み付けられている(図2参照)。この圧縮機22には、防音対策として防音部材3が取付けられている。この防音部材3については後に詳述する。
【0026】
室外熱交換器28は、二つの入出力ポートを備える。一方側の入出力ポートはガス管2cを介して四方切替弁26の第2ポート27bに接続され、他方側の入出力ポートは液管2dを介して膨張弁30に接続されている。この室外熱交換器28には室外ファン29が付設されており、室外熱交換器28は、入出力ポートから導入される冷媒と前記室外ファン29により取り込まれる室外空気とを熱交換させる。室内熱交換器32も室外熱交換器28と同様に二つの入出力ポートを備える。一方側の入出力ポートはガス管2eを介して四方切替弁26の第4ポート27dに接続され、他方側の入出力ポートは液管2fを介して膨張弁30に接続されている。この室内熱交換器32には室内ファン33が付設されており、室内熱交換器32は、入出力ポートから導入される冷媒を、室内ファン33により取り込まれる室内空気と熱交換させる。これら室外熱交換器28及び室内熱交換器32としては、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ型熱交換器が適用される。
【0027】
膨張弁30は、室外熱交換器28から液管2dを通じて、又は室内熱交換器32から液管2fを通じて流入する冷媒を膨張させることで、冷媒を所定圧力に減圧させる。この膨張弁30としては、例えば開度可変の電子膨張弁が適用される。
【0028】
四方切替弁26は、第1ポート27aと第2ポート27bとが連通しかつ第3ポート27cと第4ポート27dが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート27aと第4ポート27dとが連通しかつ第2ポート27bと第3ポート27cとが連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り替え可能に構成され、図略の制御装置により切り替え制御される。
【0029】
以上のように冷媒回路20が構成されることで、冷房運転時には、四方切替弁26が第1状態に制御されることで、冷媒が図1に実線矢印で示す方向に循環し、その結果、室外熱交換器28が凝縮器(放熱器)として、室内熱交換器32が蒸発器としてそれぞれ機能する。すなわち、冷房運転では、圧縮機22から吐出された高温高圧の冷媒は、室外熱交換器28へ流れ、室外空気へ放熱することにより凝縮する。この凝縮した冷媒は、膨張弁30で減圧された後、室内熱交換器32へ流れ、室内空気から吸熱して蒸発する。そして、この蒸発した冷媒がアキュムレータ24を通って圧縮機22へ吸入される。
【0030】
一方、暖房運転時には、四方切替弁26が第2状態に制御されることで、冷媒が図1に破線矢印で示す方向に循環し、その結果、室外熱交換器28が蒸発器として、室内熱交換器32が凝縮器(放熱器)としてそれぞれ機能する。すなわち、暖房運転では、圧縮機22から吐出された高温高圧の冷媒は、室内熱交換器32へ流れ、室内空気へ放熱することにより凝縮する。この凝縮した冷媒は、膨張弁30で減圧された後、室外熱交換器28へ流れ、室外空気から吸熱して蒸発する。そして、この蒸発した冷媒が、アキュムレータ24を通って圧縮機22へ吸入されることになる。
【0031】
次に、圧縮機22、アキュムレータ24及びこれらに取付けられる防音部材3について説明する。図3に示すように、圧縮機22は、略円柱状の縦長の本体部22aとその下端部に繋がる複数の脚部22bとを備えている。底板フレーム16は、底板17aとその周縁に沿って立設される側板17bとを有しており、圧縮機22は、底板17a上に載置された状態で室外機10内に収容されている。
【0032】
アキュムレータ24は、圧縮機22の本体部22aよりも小径かつ短寸の略円柱状をなし、本体部22aの側面部分に固定されている。圧縮機22及びアキュムレータ24には、防音部材3が取り付けられている。
【0033】
防音部材3は、圧縮機22及びアキュムレータ24の側面を一体に覆う第1防音材3Aと、圧縮機22及びアキュムレータ24の上面を覆う第2防音材3Bとを含む。
【0034】
第1防音材3Aは、長方形のシート状をなす防音材本体40と、圧縮機22及びアキュムレータ24(以下、圧縮機22等と略す)に巻き付けられた防音材本体40をその巻き付け状態に保つための固定具45とを含む。
【0035】
防音材本体40は、一端部を他端部に重ね合わせた状態で圧縮機22等に巻き付けることが可能となるように、巻き付け方向の長さ寸法が設定されている。また、上下方向については、防音材本体40は、圧縮機22の全体を覆うことが可能な長さ寸法を有する。防音材本体40は、その下端部を底板17aの上面に当接させた状態で、圧縮機22の脚部22bの下端から本体部22aのほぼ上端までを覆っている。
【0036】
防音材本体40は、吸音材41および遮音材42が互いに厚み方向に積層、接着された構造を有している。図2及び図3に示すように、防音材本体40は、圧縮機22等の側面に吸音材41が接触し、かつ、下端部が底板17aの上面に当接するように圧縮機22等に巻き付けられている。そして、この巻き付け状態で、固定具45により防音材本体40の両端が繋ぎ止められることで、防音材本体40が圧縮機22等に取り付けられている。
【0037】
固定具45としては、文化鋲を備えている。文化鋲は、防音材本体40のうち、巻き付け方向の一端部に固定される円盤状の係止ボタン45aと、他端部に設けられる係止紐45bとからなり、係止紐45bが係止ボタン45aに巻き付けられることで防音材本体40の両端部を互いに繋ぎ止める。なお、文化鋲(係止ボタン45a、係止紐45b)は、遮音材42の外側面に設けられている。
【0038】
第2防音材3Bは、圧縮機22等の上面を一体的に覆うことが可能な形状、例えば卵形のシート状を有する。この第2防音材3Bも、図3に示すように、吸音材47と遮音材48とが互いに厚み方向に積層、接着された構造を有する。
【0039】
第2防音材3Bは、吸音材47が下側(圧縮機22等の側)に位置するように圧縮機22等の上面に被せられている。第2防音材3Bは、図2及び図3に示すように、その厚み方向に貫通する一対の貫通孔50、52と、これら貫通孔50、52と第2防音材3Bの周縁とをそれぞれ結ぶスリット状の切込み部51、53とを備えており、これら切込み部51、53を通じて貫通孔50、52内に吐出管2a及び吸入管2bが挿入された状態で圧縮機22等の上面に被せられている。
【0040】
上記のような防音部材3が圧縮機22等に取り付けられることで、圧縮機22等の側面が吸音材41及び遮音材42を含む第1防音材3Aにより覆われるとともに、圧縮機22等の上面が同じく吸音材47及び遮音材48を含む第2防音材3Bにより覆われ、これら防音材3A,3Bによる遮音及び吸音の各作用により圧縮機22の防音効果が発揮される。
【0041】
第1実施形態における吸音材41,47は、内部に多数の連続した空隙を有する繊維質により形成されており、略0.4〜3.5μmのガラス繊維が絡み合ったガラス繊維製のシート状の吸音材である。一方、遮音材42,48は、遮音性に加え防水性を有する材料により形成されている。第1実施形態ではゴムにより形成されたシート状の遮音材が適用されている。
【0042】
次に、第1防音材3Aの下端部の構成について詳細に説明する。図4に示すように、第1防音材3Aは、底板17aの上面に載置されている。
【0043】
遮音材42の下端面42aは、遮音性を向上させるために底板17aの上面に当接している。遮音材42の下端面42aは、周方向の全体にわたって底板17aの上面に当接しているのが好ましいが、底板17aの上面に形成される凹凸に起因して底板17aの上面との間に多少の隙間が生じていてもよい。
【0044】
吸音材41は、底板17aの上面に対して少なくとも一部が離隔している下端面S1を有している。吸音材41の下端面S1は、第1の部位S11と、底板17aに溜まる水が吸音材41に吸水されるのを抑制するために第1の部位S11よりも上方に位置する第2の部位S12とを含む。
【0045】
第1の部位S11は、下端面S1における遮音材42側に位置しており、第2の部位S12は、下端面S1における圧縮機22側に位置し、かつ第1の部位S11よりも上方に位置している。第1の部位S11及び第2の部位S12は、圧縮機22側に向かうほど上方に位置するように傾斜した傾斜面をそれぞれ有している。これらの傾斜面は、滑らかに連続している。すなわち、下端面S1の全体が一つの傾斜面であり、この傾斜面は、下端面S1の周方向全体にわたって設けられている。そして、この傾斜面において、吸音材41の中間部位よりも遮音材42側の部位が第1の部位S11として機能し、前記中間部位よりも圧縮機22側の部位が第2の部位S12として機能する。
【0046】
圧縮機22の本体部22aのケースは、円筒状の胴部221と、胴部221の下部開口を塞ぐ底部222とを含む。吸音材41の下端面S1における圧縮機22側の内周縁部41E(吸音材41の下端面S1と内側面S2との稜線41E)は、胴部221と底部222の境界部分(溶接部分)とほぼ同じ高さに位置しており、底部222の下面よりも高い位置にある。吸音材41の下端面S1における遮音材42側の外周縁部は、底板17aの上面に当接又は近接している。
【0047】
内周縁部41Eの高さH1は、底板フレーム16の側板17bの上端よりも高い。底板フレーム16に溜まり得る水の水面の最高位置は側板17bの上端に等しい高さであるので、内周縁部41Eが側板17bの上端よりも高い位置に設けられていることにより、底板フレーム16に溜まる水が内周縁部41Eに達することはない。
【0048】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る室外機10の一部を示す断面図であり、底板フレーム16と、これに設置された圧縮機22及び第1防音材3Aとを示している。以下では、主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
第2実施形態では、吸音材41の下端部は、階段状の構造を有している。下端面S1は、遮音材42側に位置する第1の部位(第1下端面)S11と、圧縮機22側に位置する第2の部位(第2下端面)S12とを含む。第2下端面S12は、第1下端面S11よりも圧縮機22側でかつ上方に位置している。第1下端面S11及び第2下端面S12は、底板17aの上面にほぼ平行であり、第2下端面S12は、第1下端面S11との間に段差を介して設けられている。第1下端面S11及び第2下端面S12は、下端面S1の周方向全体にわたって設けられている。
【0050】
第1下端面S11は、底板17aの上面に当接又は近接している。第2下端面S12の高さH1は、底板フレーム16の側板17bの上端よりも高い。第2下端面S12及び下端面S1の内周縁部41Eは、胴部221と底部222の境界部分(溶接部分)とほぼ同じ高さに位置している。
【0051】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る室外機10の一部を示す断面図であり、底板フレーム16と、これに設置された圧縮機22及び第1防音材3Aとを示している。以下では、主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、第3実施形態に係る室外機10は、吸音材41の下端部が傾斜面を有している点で第1実施形態と共通しており、第1防音材3Aが遮水シート43をさらに有している点で第1実施形態と異なっている。遮水シート43は、吸音材41の下端面S1から吸音材41の内部を上方に延びている。
【0053】
吸音材41は、遮水シート43よりも遮音材42側に位置する第1吸音材61と、遮水シート43よりも圧縮機22側に位置する第2吸音材62とを含む。第1吸音材61、遮水シート43及び第2吸音材62は、厚み方向にこの順に積層されて一体化されている。
【0054】
遮水シート43は、遮水性を有する金属、合成樹脂などの材料により形成されている。具体的に、遮水シート43としては、例えばアルミニウムなどの金属により形成された金属シート(金属箔)などが挙げられる。
【0055】
第1吸音材61と第2吸音材62としては、上述したガラス繊維製の吸音材、フェルト製の吸音材などを用いることができる。第1吸音材61と第2吸音材62としては、同じ吸音材(例えばガラス繊維製の吸音材)を用いてもよく、互いに異なる吸音材を用いてもよい。
【0056】
第2吸音材62の吸水性は、第1吸音材61の吸水性よりも低く設定されていてもよい。ここで、第1吸音材61の吸水性と第2吸音材62の吸水性との比較は、次のようにして行うことができる。例えば、第1吸音材61の下端部及び第2吸音材62の下端部を水に浸漬し、第1吸音材61の下端部から一定時間に吸い上げられる水の高さと、第2吸音材62の下端部から一定時間に吸い上げられる水の高さとを比較すればよい。そして、第2の部位S12における吸水高さが第1の部位S11における吸水高さよりも小さくなるように、第1吸音材61と第2吸音材62として用いる吸音材をそれぞれ選定すればよい。第1吸音材61と第2吸音材62の組合せの一例としては、第1吸音材61としてガラス繊維製の吸音材を用い、第2吸音材62としてフェルト製の吸音材を用いる場合が挙げられる。
【0057】
第3実施形態における吸音材41の下端面S1は、第1実施形態と同様に、圧縮機22側に向かうほど上方に位置するように傾斜した傾斜面であり、第1吸音材61の下端面(第1の部位)S11と、第2吸音材62の下端面(第2の部位)S12とを含む。
【0058】
遮水シート43の上端は、必ずしも吸音材41の上端と同じ高さに位置している必要はない。具体的に、遮水シート43は、例えば、吸音材41の上部に比べて保水状態になる可能性の高い吸音材41の下部にのみ設けられていてもよい。ただし、第1吸音材61に吸水された水が第2吸音材62に浸透するのを確実に防止するという観点では、遮水シート43は、吸音材41の下端面S1から上端まで延びているのが好ましい。
【0059】
吸音材41の下端面S1における内周縁部41Eは、胴部221と底部222の境界部分(溶接部分)とほぼ同じ高さに位置している。吸音材41の下端面S1における遮音材42側の外周縁部は、底板17aの上面に当接又は近接している。
【0060】
内周縁部41Eの高さH1は、底板フレーム16の側板17bの上端よりも高い。遮水シートの下端の高さH2は、側板17bの上端と同じ高さ、又は側板17bの上端よりも高い。
【0061】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係る室外機10の一部を示す断面図であり、底板フレーム16と、これに設置された圧縮機22及び第1防音材3Aとを示している。以下では、主に第1実施形態〜第3実施形態との相違点を説明し、これらの実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、第4実施形態に係る室外機10は、吸音材41の下端部が第2実施形態と同様に階段状の構造を有している点で第2実施形態と共通しており、第1防音材3Aが遮水シート43をさらに有している点で第2実施形態と異なっている。
【0063】
遮水シート43は、吸音材41の下端面S1から吸音材41の内部を上方に延びている。第1吸音材61、遮水シート43及び第2吸音材62は、厚み方向にこの順に積層されて一体化されている。
【0064】
第1吸音材61の第1下端面(第1の部位)S11は、底板17aの上面に当接又は近接している。内周縁部41E、第2吸音材62の第2下端面(第2の部位)S12及び遮水シート43の下端は、胴部221と底部222の境界部分(溶接部分)とほぼ同じ高さにある。これらの高さH1は、底板フレーム16の側板17bの上端よりも高い。
【0065】
第1吸音材61と第2吸音材62としては、上述したガラス繊維製の吸音材、フェルト製の吸音材などを用いることができる。第1吸音材61と第2吸音材62としては、同じ吸音材(例えばガラス繊維製の吸音材)を用いてもよく、互いに異なる吸音材を用いてもよい。第2吸音材62の吸水性は、第1吸音材61の吸水性よりも低く設定されていてもよい。
【0066】
<第5実施形態>
図8(A)は、第5実施形態に係る室外機10の一部を示す斜視図であり、底板フレーム16と、これに設置された圧縮機22及び防音材40とを示している。図8(B)は、吸音材41の形状を説明するために、図8(A)において防音材40から遮音材42を外した状態を示す斜視図である。以下では、主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
図8(A),(B)に示すように、第5実施形態では、吸音材41の下端面S1は、第1の部位S11と第2の部位S12とが第1防音材3Aの周方向に交互に並ぶことにより上下方向の凹凸が形成された波形状を有している。つまり、第1の部位S11における下端と第2の部位S12の上端との間の中間部位を境界として第1の部位S11と第2の部位S12とが周方向に隣り合っている。下端面S1の波形状は、下端面S1の全周にわたって形成されている。
【0068】
下端面S1の波形状としては、例えば図8(B)に示すように、側面視で三角波状が挙げられるが、これに限定されない。下端面S1は、例えば側面視で正弦波状の波形状を有していてもよい。正弦波状の場合、下端面S1は、上方に凹む円弧状の凹面と、下方に凸の円弧状の凸面とが周方向に交互に並ぶことによって波形状が形成される。また、下端面S1は、例えば矩形波状の波形状を有していてもよい。矩形波状の場合、下端面S1は、矩形状に上方に凹む凹面と、矩形状に下方に凸の凸面とが周方向に交互に並ぶことによって波形状が形成される。
【0069】
第2の部位S12の上端は、底板フレーム16の側板17bの上端よりも上方にあるのが好ましい。また、この第5実施形態においても第1防音材3Aが上述したような遮水シート43を有していてもよい。遮音材42の下端面42aは、吸音材41と同じ波形状であってもよいが、底板17aの上面に当接する領域を多くして遮音性を向上させる点では平らな形状であるのが好ましい。
【0070】
以上説明したように、各実施形態では、吸音材41の下端面S1には第2の部位S12が設けられているので、吸音材41の下端面S1全体が第1の部位S11と同じ高さである場合に比べると、吸音材41の下端面S1と、底板フレーム16に溜まる水との接触面積が小さくなり、底板17aに溜まる水が吸音材41に吸水されるのを抑制することができる。その結果、吸音材41の保水量が低減されるので、吸音材41の吸音性能の低下が抑制される。また、仮に、吸音材41の下端面S1全体が第2の部位S12と同じ高さである場合には、吸音材41の下端面S1と底板17aとの隙間から音漏れがしやすくなるが、各実施形態では、第1の部位S11が設けられているので音漏れを抑制することができる。また、仮に吸音材41が保水した場合であっても、底板フレーム16に溜まる水と接触していない圧縮機22側の部位においてこの部位を通じた水はけが良好になるので、吸音材41の乾燥が促進される。
【0071】
第1〜第4実施形態では、第2の部位S12は、第1の部位S11よりも上方に位置し、かつ圧縮機22側に位置しているので、吸水材41は、圧縮機22側において特に保水が抑制される。その結果、圧縮機22の周辺が湿潤状態となるのが抑制されるので、圧縮機の表面の腐食が抑制される。
【0072】
第3実施形態及び第4実施形態では、第1防音材3Aは、吸音材41の下端面S1から吸音材41の内部を上方に延びる遮水シート43をさらに含んでいるので、仮に、吸音材41の下端面S1における遮音材42側の部位から水が吸い上げられた場合であっても、この水は、遮水シート43によって圧縮機22側に浸透するのが抑制される。よって、吸音材41の吸音性能の低下がさらに抑制される。しかも、圧縮機22の周辺が湿潤状態となるのが抑制されるので、圧縮機の表面の腐食が抑制される。
【0073】
また、第3実施形態及び第4実施形態では、吸音材41は、遮水シート43よりも遮音材42側に位置する第1吸音材61と、遮水シート43よりも圧縮機22側に位置する第2吸音材62とを含み、第2吸音材62の吸水性は、第1吸音材61の吸水性よりも低い場合には、仮に、第1吸音材61の下端面S1から水が吸い上げられた場合であっても、この水は、吸音材41全体が第1吸音材61により構成されている場合に比べると、第2吸音材62へ浸透しにくくなる。よって、吸音性能の低下がさらに抑制される。
【0074】
さらに、第3実施形態及び第4実施形態では、底板フレーム16に溜まり得る水の最大高さよりも遮水シート43の下端43aを高くしているので、遮水シート43の下端43a及びこれよりも圧縮機22側に位置する吸音材41の下端面S1に底板フレーム16の水が接触するのを防止できる。
【0075】
第5実施形態では、吸音材41の下端面S1が波形状を有しているので、吸音材41の下端面S1と底板フレーム16に溜まる水との接触面積を小さくしつつ、吸音材41の下端面S1と底板フレーム16との隙間が大きくなりすぎるのを抑制できる。これにより、吸音特性の低下が抑制される。
【0076】
また、各実施形態における第1防音材3Aでは、吸音材41はガラス繊維製である。このようなガラス繊維製の吸音材は、連続する超微細な空隙が多数内部に存在するため高い吸音効果を発揮する反面、毛管現象により底板フレーム16に溜まった水を吸い上げ易いという性質があるが、各実施形態の構成であれば上述したように吸音材41の吸水が抑制されるため、吸音材41が吸水することに起因する当該吸音材41の吸音性能の低下を未然に防止することができる。その結果、ガラス繊維を素材とする吸音材41が有する高い吸音効果を良好に享受できる。
【0077】
具体的に、例えば0.4〜3.5μmのガラス繊維が絡み合ったガラス繊維製の吸音材では、その下端部を10分の間、水に浸漬した場合、吸音材の下端から22mm程度の高さまで吸水した。
【0078】
加えて、この第1防音材3Aでは、上記のように吸音材41が底板フレーム16上の水を吸水することが抑制されるため、吸音材41が吸水した水が圧縮機22の本体部22aに長期的に触れて壁面を腐食させるといった不都合が生じることを未然に防止することができるという利点もある。
【0079】
なお、上述した室外機10は、本発明に係る室外機の実施形態の例示であって、室外機10の具体的な構成や、圧縮機22に取付けられる防音部材3の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成も適用可能である。
【0080】
各実施形態では、圧縮機22(本体部22a)の側面にアキュムレータ24が固定されているため、第1防音材3Aは、圧縮機22及びアキュムレータ24に一体的に巻き付けられている。しかし、圧縮機22とアキュムレータ24とが離れている場合には、第1防音材3Aは、圧縮機22にのみ巻き付けられるものであればよい。
【0081】
第1実施形態及び第3実施形態では、吸音材41の下端面S1の全体が傾斜面である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、下端面S1において、第1の部位S11及び第2の部位S12の一方が底板17aの上面に平行な面であってもよい。
【0082】
各実施形態では、吸音材41の下端面S1における圧縮機22側の内周縁部41Eが、胴部221と底部222の境界部分(溶接部分)とほぼ同じ高さに位置している場合を例示したが、これに限定されない。
【0083】
各実施形態では、内周縁部41Eの高さH1が底板フレーム16の側板17bの上端よりも高い場合を例示したが、底板フレーム16に溜まる水の量が比較的少ないと見込まれる場合には、高さH1を側板17bの上端よりも低くすることもできる。
【0084】
各実施形態では、防音材本体40の吸音材41がガラス繊維製であるが、フェルト等のようなガラス繊維以外の材質からなる吸音材であってもよい。
【0085】
各実施形態では、本発明を空気調和機に適用した例について説明したが、本発明は、冷蔵機、冷凍機、ヒートポンプ給湯器などのような空気調和機以外の冷凍装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
3 防音部材
3A 第1防音材
3B 第2防音材
16 底板フレーム
17a 底板
17b 側板
22 圧縮機
22a 本体部
22b 脚部
40 防音材本体
41 吸音材
42 遮音材
43 遮水シート
61 第1吸音材
62 第2吸音材
S1 吸音材の下端面
S11 下端面における第1の部位
S12 下端面における第2の部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路中の冷媒を圧縮する圧縮機(22)と、前記圧縮機(22)の側面を覆う防音材(3A)と、前記圧縮機(22)が設置される底板フレーム(16)と、を備え、
前記防音材(3A)は、遮音材(42)と、前記遮音材(42)の内側で前記圧縮機(22)の側面を覆い、吸水性を有する吸音材(41)と、を含み、
前記遮音材(42)の下端面は、前記底板フレーム(16)の底板(17a)に当接しており、
前記吸音材(41)の下端面(S1)は、第1の部位(S11)と、前記底板(17a)に溜まる水が吸音材(41)に吸水されるのを抑制するために前記第1の部位(S11)よりも上方に位置する第2の部位(S12)とを含む、室外機。
【請求項2】
前記第2の部位(S12)は、前記第1の部位(S11)よりも前記圧縮機(22)側に位置している、請求項1に記載の室外機。
【請求項3】
前記第1の部位(S11)及び前記第2の部位(S12)は、前記圧縮機(22)側に向かうほど上方に位置するように傾斜した傾斜面である、請求項2に記載の室外機。
【請求項4】
前記第2の部位(S12)は、前記第1の部位(S11)との間に段差を介して設けられている、請求項2に記載の室外機。
【請求項5】
前記防音材(3A)は、前記吸音材(41)の前記下端面(S1)から前記吸音材(41)の内部を上方に延びる遮水シート(43)をさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の室外機。
【請求項6】
前記吸音材(41)は、前記遮水シート(43)よりも前記遮音材(42)側に位置する第1吸音材と、前記遮水シート(43)よりも前記圧縮機(22)側に位置する第2吸音材とを含み、
前記第2吸音材の吸水性は、前記第1吸音材の吸水性よりも低い、請求項5に記載の室外機。
【請求項7】
前記遮水シート(43)の下端(43a)は、前記底板フレーム(16)に溜まる水の高さに基づいて予め定められた高さに位置している、請求項5又は6に記載の室外機。
【請求項8】
前記防音材(3A)は、前記圧縮機(22)に筒状に巻き付けられており、
前記吸音材(41)の下端面(S1)は、前記第1の部位(S11)と前記第2の部位(S12)とが前記防音材(3A)の周方向に交互に並ぶことにより上下方向の凹凸が形成された波形状を有している、請求項1に記載の室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104608(P2013−104608A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248442(P2011−248442)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)