説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【解決手段】(A)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基又はアルコキシアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物 0.5〜100質量部、
(C)硬化触媒 0.001〜20質量部
を含んでなることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【効果】本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物によれば、硬化速度が速く、フロートガラスなどの表面が活性な被着体への接着性に優れ、かつ温水浸漬などの苛酷な環境下でも長期間の接着性、高いモジュラスを維持するシリコーンゴムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で硬化してシリコーンゴムとなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に係り、更に詳しくは速硬化性に優れ、硬化後はガラス、熱線反射ガラス、金属、プラスチックなどへの接着性に優れ、苛酷な環境下でも接着性、ゴム物性を維持する耐久性に優れた硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子鎖末端にシラノール基やアルコキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサン、アルコキシシラン、アミノアルキル基含有アルコキシシラン及び硬化触媒からなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は知られている。しかしながら、この組成物は硬化後、速やかに被着体に接着するが、長期間水中に浸漬されると、特にフロートガラス、型板ガラスなどの表面が活性な被着体では、該被着体から剥離してしまうという問題があった。そのため、長期間の接着信頼性、耐荷重性が求められるSSG構法、SAG構法に代表される構造接着構法用の構造シール材や、複層ガラスの2次シール材として使用することはできなかった。
フロートガラスなどの表面が活性な被着体に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を接着させ、長期間の接着信頼性を得る方法としては、被着体を機械的又は化学的に処理する方法があるが、この方法は処理に手間及びコストがかかる、又は処理が困難な被着体が存在したり、処理により所望の意匠性が得られなくなるなどの問題があった。
【0003】
従来から、オルガノポリシロキサン組成物にエポキシアルキルアルコキシシランを添加すると、温水浸漬時の接着耐久性が向上することが知られており、接着性、接着信頼性向上のために、アミノアルキルアルコキシシランとエポキシアルキルアルコキシシランの反応物又は混合物を配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献1:特公昭52−08854号公報、特許文献2:特公昭63−23226号公報参照)。
しかしながら、これらの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させたシリコーンゴムは、耐水接着性に劣り、特にフロートガラス類に対して、温水浸漬などの苛酷な環境下で接着力が大幅に低下するという欠点があった。また、硬化の速さの目安であるゴムの硬さの発現性が十分ではなかった。
【0004】
更に、被着体に対する浸水接着性を向上させるために、ジオルガノポリシロキサンに4官能性のアルコキシシランと3官能性のアルコキシシラン、及びアミノ基含有シランをそれぞれ配合した室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物も提案されている(例えば、特許文献3:特許第2914838号公報)。
しかしながら、特許第2914838号公報(特許文献3)に記載されたオルガノポリシロキサン組成物も、フロートガラスなどの表面が活性な被着体に対する温水浸漬後の接着性が十分ではなかった。
【0005】
温水浸漬後の接着力低下を抑制するために、オルガノポリシロキサン組成物に、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンや1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のジシラアルカン化合物を用い、接着付与剤としてカルバシラトラン化合物を配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献4:特公昭64−60656号公報、特許文献5:特開2003−221506号公報参照)。
しかしながら、特公昭64−60656号公報(特許文献4)で具体的に使用されたり、例示されているジシラアルカン化合物は、分子量が小さく、揮発性が高く、特異な臭気を発するため、組成物の調製時や硬化時に作業環境を悪化させるなどの問題点があった。また、特開2003−221506号公報(特許文献5)で提案されているアルキレン基の炭素原子数が4〜10のジシラアルカン化合物は、原料であるジエン化合物の希少価値が高いことから、工業的に使用する場合にはコスト上の不利益も避けられないために現実的でなく、使用が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭52−08854号公報
【特許文献2】特公昭63−23226号公報
【特許文献3】特許第2914838号公報
【特許文献4】特公昭64−60656号公報
【特許文献5】特開2003−221506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、硬化速度が速く、フロートガラスなどの表面が活性な被着体への接着性に優れ、かつ温水浸漬などの苛酷な環境下でも長期間の接着信頼性が得られ、特に温水浸漬後のモジュラス低下が小さい硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、本発明に到達したもので、本発明は下記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、特に高いモジュラスが要求される複層ガラスの2次シール材、構造接着用シール材などの用途に好適である。
請求項1:
(A)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基又はアルコキシアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物 0.5〜100質量部、
(C)硬化触媒 0.001〜20質量部
を含んでなることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項2:
(A)成分のジオルガノポリシロキサンが、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基であり、R2は互いに同じ又は異なる一価炭化水素基、ハロゲン化一価炭化水素基及びシアノアルキル基から選択される炭素原子数1〜10の基である。aはR1が水素原子の場合は2であり、R1が炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基の場合は0又は1である。Yは酸素原子、炭素原子数1〜6の二価炭化水素基又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R2は上記の通り、Zは炭素原子数1〜6の二価炭化水素基である。)
で示される基である。nはこのジオルガノポリシロキサンの25℃の粘度を20〜1,000,000mPa・sとする数である。)
で示されるものである請求項1記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項3:
(B)成分が、下記一般式(3)
【化3】

及び/又は下記一般式(4)
【化4】

{式中、R2は請求項2に記載した通りの意味を示し、Xは下記一般式(5)
【化5】

(式中、Z及びR2は請求項2に記載した通りの意味を示し、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基であり、bはそれぞれ0又は1である。)で表されるアルコキシシリルアルキル基であり、R3はR2もしくはXであり、c及びeは3以上100以下の整数、d及びfは0以上1000未満の整数であり、かつ、このオルガノシロキサン化合物の25℃の粘度を5〜1,000,000mPa・sとする数である。}
で表されるオルガノシロキサン化合物である請求項1又は2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項4:
(B)成分が、環状シロキサン化合物である請求項1又は2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項5:
更に、(D)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項6:
シランカップリング剤がアミノ基を分子内に少なくとも1つ含むものである請求項5記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
請求項7:
更に、(E)炭酸カルシウムを含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物によれば、硬化速度が速く、フロートガラスなどの表面が活性な被着体への接着性に優れ、かつ温水浸漬などの苛酷な環境下でも長期間の接着性、高いモジュラスを維持するシリコーンゴムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】合成例1で得られた化合物の1H−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基又はアルコキシアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物 0.5〜100質量部、
(C)硬化触媒 0.001〜20質量部
を少なくとも含んでなることを特徴とする。
【0012】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、本組成物の主成分であり、これは分子鎖両末端がヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基もしくはアルコキシアルコキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンである。また、その粘度は低すぎると硬化後のゴム弾性が乏しくなり、高すぎると作業性が低下するので、25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sの範囲内にあることが必要であり、100〜100,000mPa・sの範囲内にあることが好ましい。このオルガノポリシロキサンの分子構造は、実質的に直鎖状であるが、分子鎖の一部が少し分岐していてもよい。なお、この粘度は回転粘度計による測定値である。
【0013】
好ましい(A)成分は、下記一般式(1):
【化6】

で表されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基等の炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基から選択される基であり、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。R2は一価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基及びシアノアルキル基から選ばれる炭素原子数1〜10の基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。なお、R1がアルキル基又はアルコキシアルキル基である場合は、aは0又は1であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。
【0014】
Yは酸素原子、炭素原子数1〜6の二価炭化水素基、又は下記一般式(2):
【化7】

(式中、R2は前記の通り、Zは炭素原子数1〜6の二価炭化水素基である。)
で示される基である。
【0015】
二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基等の炭素原子数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、特にエチレン基が好ましい。アルキレン基の水素原子はメチル基等の一価炭化水素基により置換されていてもよい。nは25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sとなるような数である。(A)成分は周知の方法により製造することができる。
【0016】
(B)成分は、一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物であり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に速硬化性と各種被着体に対する接着性を付与し、本組成物と被着体とを接着させた部材を温水に浸漬した後の接着性の低下を抑制し、特には硬化物のモジュラスの低下を抑制する働きをする。
【0017】
(B)成分は、環状または直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましく、アルコキシシリルアルキル基は、側鎖のみに有していても側鎖と末端に有していてもよいが、少なくとも側鎖に3個以上有することが好ましい。
更に詳しくは(B)成分は下記一般式(3)
【化8】

及び/又は下記一般式(4)
【化9】

{式中、R2は互いに同じ又は異なる一価炭化水素基、ハロゲン化一価炭化水素基及びシアノアルキル基から選択される炭素原子数1〜10の基である。Xは下記一般式(5)
【化10】

(式中、Z及びR2は前記の通りの意味を示し、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基であり、bはそれぞれ0又は1である。)で表されるアルコキシシリルアルキル基であり、R3はR2又はXと同じ意味を示し、c及びeは3以上100以下の整数、d及びfは0以上1,000未満の整数であり、かつ、c+d,e+fは、このオルガノシロキサン化合物の25℃の粘度を5〜1,000,000mPa・s、好ましくは10〜100,000mPa・s、特に好ましくは20〜10,000mPa・sとする数である。}
で表されるオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。
【0018】
ここで、bは0又は1であり、0であることが好ましい。R3は前記した通り、R2で表される基か、Xで表される基であるが、前者の場合ではメチル基であることが好ましく、後者の場合は、bは0又は1であり、0であることが好ましく、R4はメチル基、エチル基であることが好ましい。また、cは3〜10、特に3〜5が好ましく、dは0〜10、特に0〜5が好ましく、c+dは3〜20、特に4〜6が好ましい。一方、eは3〜20、特に3〜10が好ましく、fは0〜80、特に0〜50が好ましく、e+fは3〜100、特に3〜20が好ましい。
【0019】
(B)成分の具体例としては、式(3)のものとして、下記の環状シロキサン化合物が挙げられる。
【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
一方、式(4)のものとして、下記の直鎖状のシロキサン類が例示される。
【0023】
【化13】

【0024】
【化14】

【0025】
本発明では(B)成分は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。製造上の容易さと組成物の作業性を良好にする理由から、環状シロキサン化合物であることがより好ましい。
【0026】
ここで例示された一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物は、白金化合物やロジウム化合物等の一般的によく知られているヒドロシリル化反応触媒の存在下でSi−H基を含有するオルガノシロキサン化合物にビニル基含有アルコキシシラン、アリル基含有アルコキシシラン等の脂肪族不飽和基含有アルコキシシラン化合物を反応させることにより容易に合成できる。生成物は付加異性体を含んでいることが一般的で、殆どの場合、異性体をそれぞれ単離することは困難である。これら異性体については、いずれも本発明の目的を阻害するものではなく、コスト的な理由からも、互いに分離することなくそのまま使用することが好ましい。
【0027】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜100質量部、好ましくは1〜20質量部であるが、(A)成分を示す一般式(1)中、R1が水素原子である場合は、(B)成分中のアルコキシ基のモル数が(A)成分中のヒドロキシル基のモル数を上回るような量とすることが好ましい。
【0028】
(C)成分の硬化促進触媒としては、錫、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド;有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物が例示され、より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートエステル、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジネオデカノエート、スタナスオクトエート等の錫化合物;テトラブチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタン化合物、ジブチルアミン、ラウリルアミン、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物及びその塩等が例示される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、有機錫化合物を添加することが好ましく、中でも、ジアルキル錫ジアルコキサイド、ジアルキル錫ジカルボン酸塩であることが好ましく、更に、安全性の面からジメチル錫ジカルボン酸塩、ジオクチル錫ジカルボン酸塩等であることが好ましい。その添加量は、(A)成分100質量部に対して、0.001〜20質量部であり、0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
【0029】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、前記した(A)〜(C)成分に加えて、(D)シランカップリング剤を配合することが、本組成物の硬化速度や各種被着体への接着性を更に向上させる点から好ましい。(D)成分としては、当該技術分野で公知のものが好適に使用される。特には加水分解性基として、アルコキシシリル基又はアルケノキシシリル基を有するものが好ましく、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、(メタ)アクリルシランとアミノシランの反応物、エポキシシランとアミノシランの反応物等、アミノシランとハロゲン化アルキル基含有シランとの反応物等が例示される。特にはアミノ基を分子内に少なくとも1つ含むシランカップリング剤の使用が好ましい。
【0030】
このシランカップリング剤の配合量は、(A)成分100質量部当たり好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部使用される。少なすぎると十分な接着性向上効果が得られず、多すぎると価格的に不利となるばかりか耐温水接着性の低下を招く場合がある。
【0031】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、前記した(A)〜(C)成分、又は(A)〜(D)成分に加えて、(E)炭酸カルシウムを配合することが好ましい。(E)成分は、本組成物の深部硬化性を更に向上し、本組成物の硬化物に良好な機械的特性を付与する働きをすると共に、特に温水浸漬などの苛酷な条件下での接着性能を付与する働きをするものである。この(E)成分は、重質(又は粉砕法)炭酸カルシウム、コロイダル(又は沈降法)炭酸カルシウム、これらの炭酸カルシウムを脂肪酸や樹脂酸等の有機酸、有機酸アルカリ金属塩、有機酸エステル等で表面処理した粉末が例示され、好ましくは、コロイダル炭酸カルシウムであり、特に好ましくは、脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理したコロイダル炭酸カルシウム微粉末である。(E)成分のBET法比表面積は特に限定されないが、好ましくは5〜50m2/gであり、特に好ましくは10〜40m2/gである。
【0032】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは10〜400質量部であり、より好ましくは30〜200質量部の範囲内である。これは、(E)成分の配合量が少なすぎると、所望の特性が向上しないことがあり、一方、多すぎると、本組成物の取り扱い作業性が損なわれたりすることがある。
【0033】
[その他の成分]
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、前記した成分以外に一般に知られている添加剤を使用しても差し支えない。添加剤としては、乾式法シリカ、湿式法シリカ、石英微粉末、二酸化チタン粉末、ケイソウ土粉末、水酸化アルミニウム粉末、微粒子状アルミナ、マグネシア粉末、酸化亜鉛粉末、及びこれらをシラン類、シラザン類、低重合度ポリシロキサン類等で表面処理した微粉末状の無機質充填剤が挙げられる。このような無機質充填剤の添加量は(A)成分100質量部に対して通常1〜400質量部であり、好ましくは5〜200質量部である。また、その他の添加剤としては、硬化後のシリコーンゴムを低モジュラスにするための成分であるジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、イソパラフィン等、難燃剤としての白金化合物、炭酸亜鉛粉末、必要に応じてチクソ性向上剤としてのポリエーテル、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、ベンガラ及び酸化セリウム等の耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、防錆剤、防かび剤、抗菌剤等が挙げられる。また、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加され得る。
【0034】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、速硬化性に優れる。ここで速硬化とは、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメーターによる硬化物の硬さが最終的な硬さの50%に達するまでに要する時間が、23℃,50%相対湿度の環境下において4時間以内であることを意味し、実用的には3時間後に硬さが15以上得られるものが好ましい。
【0035】
以上のように、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化速度が速く、フロートガラスなどの表面が活性な被着体への接着性に優れ、かつ温水浸漬などの苛酷な環境下でも長期間の接着信頼性が得られる。従って、本組成物は、かかる特性の要求される用途、例えば、建築土木用途での防水シール材や構造接着用シーリング材、複層ガラスの2次シール用シーリング材として好適に使用される。
【実施例】
【0036】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の粘度は25℃における値であり、部はいずれも質量部を意味する。また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性、耐温水接着性の評価は次に示す方法に従って実施した。
【0037】
[合成例1]
還流冷却管、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備えて窒素置換を十分に行った四つ口フラスコ中に、窒素シールした状態にて、下記式
【化15】

で表される1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン241g及びジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体の50質量%トルエン溶液0.3gを仕込んで混合物とした。次いで70〜80℃に昇温後、攪拌しつつビニルトリメトキシシラン626gを滴下漏斗より上記混合物に滴下していった。滴下速度は混合物の温度が80〜120℃となるよう調整した。4時間の滴下の後、全てのビニルトリメトキシシランの滴下が終了した。このとき、内温は120℃であった。更に、そのままの温度を維持しながら3時間の熟成を行い、反応を終了した。更に、反応器内を120℃,5mmHg以下の減圧状態とし、余剰のビニルトリメトキシシランを2時間かけて除去した。生成物を1H−NMRにより分析したところ、図1に示されるチャートが得られ、下記式
【化16】

で表される1,3,5,7−テトラキス[(トリメトキシシリル)エチル]−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが主成分であることを確認した。回収した生成物を合成物Iとし、以下に示す実施例において使用した。
【0038】
[合成例2]
還流冷却管、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備えて窒素置換を十分に行った四つ口フラスコ中に、窒素シールした状態にて、下記平均構造式
【化17】

で表されるメチルハイドロジェンシロキサンを461g及びジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体の50質量%トルエン溶液0.3gを仕込んで混合物とした。次いで70〜80℃に昇温後、攪拌しつつビニルトリメトキシシラン430gを滴下漏斗より上記混合物に滴下していった。滴下速度は混合物の温度が70〜120℃となるよう調整した。1時間の滴下の後、全てのビニルトリメトキシシランの滴下が終了した。このとき、内温は71℃であった。更に、そのままの温度を維持しながら6時間の熟成を行い、反応を終了した。更に、反応器内を120℃,5mmHg以下の減圧状態とし、余剰のビニルトリメトキシシランを2時間かけて除去した。生成物を少量抜き取り、ソジウムメトキサイドの10質量%ノルマルブタノール溶液と混合して3分間放置しても水素ガスの発生がなかったことから、反応は完全に進行しており、下記平均構造式
【化18】

の化合物が生成していることが推定された。回収した生成物を合成物IIとし、以下に示す実施例において使用した。
【0039】
[実施例1]
粘度5,000mPa・sの両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン100部にコロイダル炭酸カルシウム粉末(カーレックス300:丸尾カルシウム株式会社製)100部を加えて3本ロールを用いて均一に混合し、これを主剤とした。
一方、粘度5,000mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン25部にカーボンブラック10部、合成例1で得られた合成物Iを30部、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3部、ジメチル錫ジネオデカノエート0.1部を混合し、これを硬化剤とした。そして、主剤と硬化剤を質量比10:1の割合で混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0040】
[比較例1]
合成物Iのかわりにビス[(トリメトキシシリル)エチル]ジメチルシランを使用した以外は実施例1と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0041】
[比較例2]
合成物Iのかわりにノルマルプロピルオルソシリケートを使用した以外は実施例1と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0042】
[比較例3]
合成物Iのかわりにメチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(重合度2〜8のオリゴマーの混合物)を使用した以外は実施例1と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0043】
[実施例2]
N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3部のかわりに、3−(N−アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン3部、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン2部を使用した以外は実施例1と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0044】
[実施例3]
合成物Iのかわりに合成例2で得られた合成物IIを使用した以外は実施例2と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0045】
[比較例4]
合成物Iのかわりにビス[(トリメトキシシリル)エチル]ジメチルシランを使用した以外は実施例2と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0046】
[実施例4]
N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3部のかわりにN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン3部、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン2部を使用し、ジメチル錫ジネオデカノエート0.1部のかわりに0.05部を使用した以外は実施例1と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0047】
[実施例5]
合成物Iのかわりに合成例2で得られた合成物IIを使用した以外は実施例4と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0048】
[比較例5]
合成物Iのかわりにビス[(トリメトキシシリル)エチル]ジメチルシランを使用した以外は実施例4と同様にして、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0049】
[硬化性試験]
得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を約6mmの厚さに打設し、打設後温度23℃,湿度50%RHの条件下に放置し、組成物を調製完了した時間から3時間後及び7日後にJIS K6253に規定されるタイプAデュロメーターを用いて硬さを測定することで、硬化性を評価した。
【0050】
[耐温水接着性試験]
得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物と被着体としてのフロートガラスを用い、JIS A1439に準拠してH型ブロックを作製した。このH型ブロックを23℃,50%RHの雰囲気下に7日間放置し、次いで50℃に調温された乾燥機中で7日放置した。このH型ブロックについて、引張接着性試験を実施し、10%伸張時モジュラス(M10)、最大引張応力、接着性(凝集破壊率)を測定し、合わせてシリコーンゴムの破断状態を目視で観察して評価した。これを初期データとした。次いで、長期間の接着耐水性の評価のための加速劣化試験として、残りのH型ブロックを80℃の温水中に28日間浸漬した後、取り出し、10%伸張時モジュラス(M10)、最大引張応力、接着性(凝集破壊率)を測定し、合わせてシリコーンゴムの破断状態を目視で観察して評価した。これを温水浸漬後データとした。シリコーンゴムの破断状態は、破断面において、シリコーンゴムの凝集破壊が認められる面積の割合を目視で観察して凝集破壊率として評価した。即ち、破断面全体がシリコーンゴムの凝集破壊である場合は凝集破壊率100%であり、接着性が良好であると判断される。破断面全体が界面剥離である場合は、凝集破壊率は0%であり、接着性が不良であると判断される。また、温水浸漬後の10%伸張時モジュラスが0.2N/mm2以上である場合、モジュラスの低下を抑制する効果が十分に得られたと判断した。0.2N/mm2未満であった場合はモジュラスの低下を抑制する効果が不十分であったと判断した。
【0051】
実施例1〜5、比較例1〜5で得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性試験、耐温水接着性試験の結果をそれぞれ表1,2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1,2から分かるように、実施例1〜5で得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は硬化性及び接着性に優れ、とりわけ温水浸漬のような苛酷な環境下に一定時間置かれた後も接着性がほとんど低下せず、10%伸張時モジュラスが0.20N/mm2以上の高いモジュラスを維持することから、建築土木用途の防水シール材や構造接着用シーラント、複層ガラスの2次シール用シーリング材等のガラスやアルミニウムのシーリング材として有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基又はアルコキシアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子内にケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を少なくとも3個以上有するオルガノシロキサン化合物 0.5〜100質量部、
(C)硬化触媒 0.001〜20質量部
を含んでなることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンが、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基であり、R2は互いに同じ又は異なる一価炭化水素基、ハロゲン化一価炭化水素基及びシアノアルキル基から選択される炭素原子数1〜10の基である。aはR1が水素原子の場合は2であり、R1が炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基の場合は0又は1である。Yは酸素原子、炭素原子数1〜6の二価炭化水素基又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R2は上記の通り、Zは炭素原子数1〜6の二価炭化水素基である。)
で示される基である。nはこのジオルガノポリシロキサンの25℃の粘度を20〜1,000,000mPa・sとする数である。)
で示されるものである請求項1記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式(3)
【化3】

及び/又は下記一般式(4)
【化4】

{式中、R2は請求項2に記載した通りの意味を示し、Xは下記一般式(5)
【化5】

(式中、Z及びR2は請求項2に記載した通りの意味を示し、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルコキシアルキル基であり、bはそれぞれ0又は1である。)で表されるアルコキシシリルアルキル基であり、R3はR2と同一もしくはXと同一であり、c及びeは3以上100以下の整数、d及びfは0以上1000未満の整数であり、かつ、このオルガノシロキサン化合物の25℃の粘度を5〜1,000,000mPa・sとする数である。}
で表されるオルガノシロキサン化合物である請求項1又は2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(B)成分が、環状シロキサン化合物である請求項1又は2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
更に、(D)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
シランカップリング剤がアミノ基を分子内に少なくとも1つ含むものである請求項5記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
更に、(E)炭酸カルシウムを含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−99070(P2011−99070A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255932(P2009−255932)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】