説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【解決手段】(A)分子中に少なくとも一般式(1)で表される基を2個以上有するジオルガノポリシロキサンを主成分とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。


(Xは−R’d−NH−又は−R’d−S−であり、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R’は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、bは2又は3、dは0又は1である。)
【効果】本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、特に室温硬化性に優れ、また耐湿性に優れた硬化物を与え、更に例えば6ヶ月間の貯蔵後でも、空気中に曝すと速やかに硬化して、優れた物性を示す。この組成物は、硬化性、耐水性、耐湿性が必要な箇所の接着、シール材として有用であり、とりわけ、耐スチーム性、耐水性が必要な建築用途、電気・電子用の接着剤用途として有効に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関するものであり、特に硬化性及び保存安定性が改善され、同時に耐湿性、耐水性に優れた硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の水分と接触することにより室温でエラストマー状に硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、種々のタイプのものが公知であるが、とりわけアルコールを放出して硬化するタイプのものは不快臭がないこと、金属類を腐食しないことが特徴となって、電気・電子機器等のシーリング用、接着用、コーティング用に好んで使用されている。
【0003】
かかるタイプの代表例としては、特公昭39−27643号公報(特許文献1)に記載のものが挙げられ、これには水酸基末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランと有機チタン化合物からなる組成物が開示されている。また、特開昭55−43119号公報(特許文献2)には、アルコキシシリル末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。特公平7−39547号公報(特許文献3)には、シルエチレン基を含むアルコキシシリル末端封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。更に、特開平7−331076号公報(特許文献4)には、水酸基末端封鎖オルガノポリシロキサン又はアルコキシ基末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシ−α−シリルエステル化合物からなる組成物が開示されている。
【0004】
これらの組成物は、ある程度の保存安定性、耐水性、耐湿性が得られているが、特に硬化性は未だ不十分であり、これら問題を完全に解決するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭39−27643号公報
【特許文献2】特開昭55−43119号公報
【特許文献3】特公平7−39547号公報
【特許文献4】特開平7−331076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、とりわけ室温硬化性及び保存安定性に優れ、同時に耐水性、耐湿性にも優れた硬化物を与える室温硬化性のオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記式(1)で示されるシルメチレン骨格を有する構造が加水分解性能を飛躍的に向上させることを知見し、この基を有するポリマーを適用することで、とりわけ室温硬化性及び保存安定性に優れ、同時に耐水性、耐湿性に優れた硬化物を与える室温硬化性のオルガノポリシロキサン組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、(A)分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される基を2個以上有するジオルガノポリシロキサンを主成分とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【化1】

(式中、Xは−R’d−NH−又は−R’d−S−であり、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R’は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、bは2又は3、dは0又は1である。)
また、本発明の組成物には、(A)成分に加えて、(B)1分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、(C)充填剤、(D)有機金属触媒を配合することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、特に室温硬化性に優れ、また耐湿性に優れた硬化物を与え、更に例えば6ヶ月間の貯蔵後でも、空気中に曝すと速やかに硬化して、優れた物性を示す。この組成物は、硬化性、耐水性、耐湿性が必要な箇所の接着、シール材として有用であり、とりわけ、耐スチーム性、耐水性が必要な建築用途、電気・電子用の接着剤用途として有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される基を2個以上有するジオルガノポリシロキサンを主成分とし、
【化2】

(式中、Xは−R’d−NH−又は−R’d−S−であり、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R’は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、bは2又は3、dは0又は1である。)
更に好ましくは、
(B)1分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、
(C)充填剤、
(D)有機金属触媒
を含有する。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分であるジオルガノポリシロキサンは、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)であり、本発明の主目的である室温硬化性向上に重要な成分である。分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、メチレン基を介し、ポリマーを封鎖している。従来は、シロキサン(酸素原子)、あるいはエチレン基を介し、水酸基又は加水分解性基を有したポリマーが用いられてきたが、予想外にもメチレン基を介することで、飛躍的に室温硬化性が向上することを知見した。このようなジオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記一般式(2)で表されるジオルガノポリシロキサンが用いられる。
【0012】
【化3】

(式中、R、R’、Y、b、dは前記と同様である。なお、dが1の場合、XのR’が珪素原子と結合する。mはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である。)
【0013】
上記式中、Rの置換又は非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、α−,β−ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基、また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0014】
Xは、−R’d−NH−又は−R’d−S−で表され、R’はメチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。dは0又は1である。具体的には、−NH−、−S−、−NH−CH2−、−NH−C24−、−S−CH2−、−S−C24−、−S−C36−等が挙げられる。隣接するメチレン基を含めた構造を示すと、例えば、−CH2−NH−、−CH2−S−、−CH2−NH−C36−、−CH2−S−C24−等となり、−CH2−NH−、−CH2−NH−C24−が好ましい。
【0015】
Yは、上記ジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端における加水分解性基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基が特に好ましく、アルコキシ基の中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0016】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sが好ましく、より好ましくは300〜500,000mPa・s、特に好ましくは500〜100,000mPa・s、とりわけ1,000〜80,000mPa・sである。上記ジオルガノポリシロキサンの粘度が100mPa・s未満であると、物理的・機械的強度に優れたコーティング塗膜を得ることが困難となる場合があり、1,000,000mPa・sを超えると組成物の粘度が高くなりすぎて使用時における作業性が悪くなる場合がある。ここで、粘度は回転粘度計による数値である。
【0017】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、下記(a)〜(f)で示されるものが挙げられる。下記式中Meはメチル基、Etはエチル基を示す。mは前記と同様である。
【化4】

【0018】
なお、上記(a)〜(c)タイプの化合物は、例えば両末端に塩素原子を有するジメチルポリシロキサンとアミノメチルトリアルコキシシラン等を脱塩酸反応させることにより得ることができる。(d)、(e)タイプの化合物は、例えば両末端にビニル基を有するジメチルポリシロキサンとアミノメチルトリアルコキシシラン等を反応させることにより得ることができる。(f)タイプの化合物は、例えば両末端にビニル基を有するジメチルポリシロキサンとメルカプトメチルトリアルコキシシラン等を光付加反応させることにより得ることができる。
【0019】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、1種単独でも構造や分子量の異なる2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0020】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、硬化剤を含まなくても硬化するが、より速く硬化させるためには(B)成分の硬化剤を含有することが好ましい。
【0021】
[(B)成分]
(B)1分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、本発明の組成物を硬化させるための成分であって、1分子中に珪素原子に結合する加水分解可能な基を少なくとも2個有することが必要とされ、下記一般式(3)で表されるシラン及び/又はその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
1cSiY4-c (3)
(式中、R1は独立に置換又は非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、Yは独立に加水分解性基であり、cは0〜2の整数である。)
【0022】
上記加水分解性基(Y)としては、上記(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子鎖末端における水酸基以外の加水分解性基として挙げたものが同様に例示されるが、アルコキシ基、ケトキシム基、イソプロペノキシ基が好ましい。
【0023】
この(B)成分であるシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、その分子中に前記したような加水分解可能な基を少なくとも2個有することが必須である他には特に制限はないが、好適には加水分解可能な基を3個以上有することが好ましく、また、珪素原子には加水分解可能な基以外の基が結合していてもよく、更に、その分子構造はシラン又はシロキサン構造のいずれであってもよい。特に、シロキサン構造のものにあっては直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
【0024】
上記の加水分解可能な基以外の基(R1)は、置換又は非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0025】
本発明の(B)成分であるシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の具体例としては、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、プロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、3−クロロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジメチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(メチルイソプロピルケトキシム)シラン、トリ(シクロへキサノキシム)シラン等及びこれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0026】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して通常0〜20質量部であるが、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。前記配合量が0.1質量部未満であると(B)成分による架橋促進効果が十分発揮されないことがあり、また、逆に20質量部を超えると硬化物が硬くなりすぎたり、経済的に不利となるという問題が発生する場合がある。
【0027】
[(C)成分]
(C)成分は充填剤であり、この組成物から形成される硬化物に十分な機械的強度を与えるために使用される。この充填剤としては公知のものを使用することができ、例えば微粉末シリカ、煙霧質シリカ、シリカエアロゲル、沈降シリカ、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物、あるいはこれらの表面をシラン処理したもの、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの金属炭酸塩、アスベスト、ガラスウール、カーボンブラック、微粉マイカ、溶融シリカ粉末、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成樹脂粉末等が使用される。
【0028】
この充填剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して1〜400質量部、特に5〜200質量部とすることが好ましい。1質量部未満ではこの組成物から得られる硬化物が十分な機械的強度を示さないものとなる傾向があり、また400質量部よりも多量に使用すると、組成物の粘度が増大して作業性が悪くなるばかりでなく、硬化後のゴム強度が低下してゴム弾性が得難くなる傾向がある。
【0029】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、硬化触媒を含有しなくても硬化するが、硬化を促進させるために硬化触媒を配合することが好ましい。硬化触媒は縮合触媒であればよいが、特には(D)有機金属触媒を用いることが好ましい。
【0030】
[(D)成分]
(D)成分はこの組成物を硬化させるために使用される。有機金属触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)等の有機金属化合物が挙げられる。
【0031】
また、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0032】
なお、これら硬化触媒の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して通常0〜20質量部であり、0.001〜15質量部が好ましく、特に0.01〜5質量部が好ましい。
【0033】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、添加剤として、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤など公知の添加剤を配合することができる。更に、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、防かび剤、抗菌剤、接着助剤を配合することもできる。
【0034】
接着助剤としては、特に3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、イソシアネートシラン等を配合することが好ましい。これら接着助剤は、上記(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.2〜10質量部が好ましい。
【0035】
本発明の上記オルガノポリシロキサン組成物は、上記各成分、更にはこれに上記各種添加剤の所定量を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。
【0036】
また、上記オルガノポリシロキサン組成物は、室温で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができる。
【0037】
かくして得られる本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、空気中の湿気により、室温で速やかに硬化して耐熱性、耐候性、低温特性、各種基材、特に金属に対する接着性に優れたゴム弾性体硬化物を形成する。また、この組成物は、特に保存安定性、硬化性に優れ、例えば6ヶ月間の貯蔵後も空気中に曝すと速やかに硬化して、上述のように優れた物性を持つ硬化物を与える。特に硬化時に毒性あるいは腐食性のガスを放出せず、この組成物を施した面に錆を生じさせることもない。特にこの組成物は、電気・電子部品の接点障害を生じさせることがないので、電気・電子部品用絶縁材や接着剤として有用であるほか、各種基材に対するシール剤、コーキング剤、被覆剤、離型処理剤として、また繊維処理剤としても広く使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の具体例において、「部」は「質量部」を意味し、また粘度は25℃での回転粘度計による測定値を示したものである。また、Meはメチル基を示す。
【0039】
[実施例1]
下記式(I)で表される粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100部とジブチル錫ジラウレート1部を湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【化5】

【0040】
[実施例2]
下記式(II)で表される粘度31,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100部とジブチル錫ジラウレート1部を湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【化6】

【0041】
[実施例3]
式(I)で表される粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン90部と、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ10部を均一に混合し、これにメチルトリメトキシシラン5部、ジブチル錫ジラウレート0.3部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0042】
[比較例1]
実施例1において、式(I)で表されるジメチルポリシロキサン100部の代わりに下記式(III)で表されるジメチルポリシロキサン100部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【化7】

【0043】
[比較例2]
実施例1において、式(I)で表されるジメチルポリシロキサン100部の代わりに下記式(IV)で表されるジメチルポリシロキサン100部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【化8】

【0044】
[比較例3]
実施例3において、式(I)で表されるジメチルポリシロキサン100部の代わりに式(III)で表されるジメチルポリシロキサン100部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【0045】
次に、各実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を厚さ2mmのシート状に押し出し、23℃,50%RHの空気に曝し、1時間後の硬化性を確認した。
また、該シートを同じ雰囲気下に7日間放置して得た硬化物の物性(初期物性)を、JIS K−6249に準拠して測定した。なお、硬さは、JIS K−6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
更に、この硬化物を85℃,85%RHの恒温恒湿器に100時間保管したものを同様にして測定した。また、各実施例及び比較例で調製された調製直後の各組成物を密閉容器に入れて、70℃の温度で7日間放置したもの、及び23℃で6ヶ月間放置したものから作った厚さ2mmのシートについても同様の測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される基を2個以上有するジオルガノポリシロキサンを主成分とすることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

(式中、Xは−R’d−NH−又は−R’d−S−であり、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R’は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、bは2又は3、dは0又は1である。)
【請求項2】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化2】

(式中、X、R、Y、bは前記と同様である。mはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である。)
【請求項3】
更に、(B)1分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含有してなる請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
更に、(C)充填剤を含有してなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
更に、(D)有機金属触媒を含有してなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物で施工された構造体。

【公開番号】特開2012−233040(P2012−233040A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101233(P2011−101233)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】