説明

室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物

【課題】本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物によれば、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れ、かつ室温下での硬化特性に優れた室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物:100質量部、及び(b)1分子中にアミノ基を少なくとも3個含有するシロキサンポリマー:(b)成分中のアミノ基の合計量/(a)成分中のエステル基の合計量=1.0〜5.0(モル比)となる量を含有してなることを特徴とする室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド架橋タイプの室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物に関するものであり、詳しくは、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた硬化物を与え、かつ室温下での硬化特性に優れた室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等の性質がバランスよく、優れた特性を有するため、自動車産業を中心に幅広い分野で応用されている(特許文献1:特開2001−192546号公報、特許文献2:特開2000−248166号公報、及び特許文献3:特開2002−20615号公報)。しかし、硬化物を得るためには加熱が必要となるため、加熱炉に入らない様な大型部品や加熱不可部品への応用等に課題を有している。
これに対し、縮合硬化タイプの室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、硬化物を得るために加熱が不要であり、しかも得られる硬化物が耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れることから、様々な分野で応用が期待されている(特許文献4:特開平9−077944号公報、特許文献5:特開平9−137027号公報、特許文献6:特開平9−263639号公報、及び特許文献7:特開平9−263640号公報)。しかし、従来公知の脱アルコール型縮合硬化タイプの室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、ベースポリマーの合成経路が煩雑であり、またポリマー鎖の両末端に加水分解性基を有するため、経時において徐々に加水分解が進行しベースポリマー自身の増粘が起ってしまう、つまりベースポリマーの保存安定性が良くないという課題を有している。
一方、特開平9−151171号公報(特許文献8)に記載の両末端にエステル基を有する有機フッ素化合物は比較的合成が簡便であり、保存安定性に優れるという利点を有する。しかし、同文献(特許文献8)に記載のアミン化合物を使用すれば、硬化物は得られるが、硬化が遅いため実用性に難点がある。そのため耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた硬化物を与え、かつ室温下での硬化特性(硬化速度)に優れた組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−192546号公報
【特許文献2】特開2000−248166号公報
【特許文献3】特開2002−20615号公報
【特許文献4】特開平9−077944号公報
【特許文献5】特開平9−137027号公報
【特許文献6】特開平9−263639号公報
【特許文献7】特開平9−263640号公報
【特許文献8】特開平9−151171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた硬化物を与え、かつ室温下での硬化特性に優れた室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物:100質量部、及び(b)1分子中にアミノ基を少なくとも3個含有するシロキサンポリマー:(b)成分中のアミノ基の合計量/(a)成分中のエステル基の合計量=1.0〜5.0(モル比)となる量を含有してなることを特徴とする室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた硬化物を与え、かつ室温下での硬化特性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供する。
請求項1:
(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物: 100質量部、
及び
(b)1分子中にアミノ基を少なくとも3個含有するシロキサンポリマー:
(b)成分中のアミノ基の合計量/(a)成分中のエステル基の合計量=1.0〜5.0(モル比)となる量
を含有してなることを特徴とする室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
請求項2:
(a)成分が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
請求項3:
請求項1又は2記載の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させることにより得られることを特徴とする硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた硬化物を与え、かつ室温下での硬化特性に優れた室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1〜3及び比較例1の各種組成物による室温硬化性の評価に関する図である。
【図2】実施例1の組成物より得られる硬化物の耐熱性の評価(重量変化率)に関する図である。
【図3】実施例1の組成物より得られる硬化物の耐熱性の評価(硬さ)に関する図である。
【図4】実施例1の組成物より得られる硬化物の耐熱性の評価(引張強さ)に関する図である。
【図5】実施例1の組成物より得られる硬化物の耐熱性の評価(切断時伸び)に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、(a)直鎖状フルオロポリエーテル化合物、及び(b)アミノ基含有シロキサンポリマーを必須成分として含有する。
【0010】
(a)直鎖状フルオロポリエーテル化合物
(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の主成分ポリマーであり、1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量が3,000〜100,000の範囲のものである。
【0011】
かかる(a)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【0012】
ここで、2価のパーフルオロアルキルエーテル構造として、例えば下記一般式(i)、(ii)、(iii)で表される構造を挙げることができる。
【0013】
【化1】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は、2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【0014】
【化2】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0015】
【化3】

(式中、xは1〜200の整数、yは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0016】
この(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物における置換又は非置換の1価炭化水素基R,R’としては、炭素数1〜8、特に1〜3のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基等が好ましい。
【0017】
上記(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、ゲルパーミエーションクロマトフラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量が3,000〜100,000、特に3,000〜50,000であることが望ましい。数平均分子量が3,000未満では、機械的強度に劣る場合があり、数平均分子量が100,000超えると、作業性に劣る場合があるので好ましくない。
【0018】
一般式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0019】
【化4】

(式中、m及びnはそれぞれ0〜600,m+n=20〜600、h、i、j及びkはh+i+j+k=20〜1,000を満足する整数を示す。)
【0020】
(b)アミノ基含有シロキサンポリマー
(b)成分のアミノ基含有シロキサンポリマーは、上記(a)成分の架橋剤、鎖長延長剤として作用するものである。1分子中にアミノ基を少なくとも3個以上含有するシロキサンポリマーであれば特に制限されるものではない。
【0021】
また、上記シロキサンポリマーの(a)成分への分散性を向上させる意味で、必要に応じて1分子中に1個以上のフッ素変性基を導入してもよい。ここでのフッ素変性基とは、例えば1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロアルキルエーテル基等がこれに該当し、分子構造は鎖状、分岐状の何れでもよい。その代表例としては下記一般式で示される基を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
【化5】

(式中、gは1〜6、好ましくは4〜6の整数である。)
【0023】
【化6】

(式中、fは2〜200、好ましくは2〜100、hは1〜3の整数である。)
【0024】
【化7】

(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0025】
これらパーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキルエーテル基は、下記末端エステル化合物とし、特開平7−18079号に従いアミノ基含有シロキサンポリマーに導入することができる。ただし、末端エステル化合物としては以下に限定されるものではない。
【0026】
【化8】

(式中、gは1〜6、好ましくは4〜6の整数である。)
【0027】
【化9】

(式中、fは2〜200、好ましくは2〜100、hは1〜3の整数である。)
【0028】
【化10】

(但し、d及びeはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0029】
(b)成分のアミノ基含有シロキサンポリマーのアミノ基は、1級アミンが好ましく、またこのシロキサンポリマーにおける分子中のアミノ基の数は特に制限されないが、通常3〜50、特に3〜20程度が好ましい。
【0030】
この様なアミノ基含有シロキサンポリマーとしては、例えば下記のような化合物が挙げられ、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
【化11】

(式中、nは3〜50、好ましくは3〜30の整数である。)
【0032】
【化12】

(式中、nは3〜50、好ましくは3〜30の整数である。)
【0033】
【化13】

(式中、aは3〜50、好ましくは3〜20、bは1〜50、好ましくは1〜10、a+b=4〜100、cは0〜100、好ましくは1〜30を満足する整数である。)
【0034】
【化14】

(式中、aは3〜50、好ましくは3〜20、bは1〜50、好ましくは1〜10、a+b=4〜100、nは1〜10、好ましくは1〜6を満足する整数である。)
【0035】
(b)成分の配合量は、通常(a)成分中に含まれる例えばメチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基等のエステル基の合計量に対する(b)成分中のアミノ基の合計量の比が好ましくは1.0〜5.0(モル比)、より好ましくは2.0〜4.0(モル比)を供給する量が好適である。かかるモル比が1.0よりも少ないと架橋度合いが不十分となり、機械的強度に劣る場合があり、5.0よりも多いと鎖長延長が優先し硬化が不十分で、満足する硬化物物性が得られない場合がある。また、この(b)成分は1種単独で使用してもいいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0036】
その他の成分
本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物には、上記(a)、(b)成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の各種充填剤、添加剤を配合することができる。このような成分として、具体的にはヒュームドシリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤や、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック等の顔料、着色剤、染料、酸化防止剤、また粘度調整剤として一部又はすべてがフッ素変性されたオイル状化合物等が挙げられる。
【0037】
使用方法
本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、上記(a)、(b)成分等を従来公知の方法で均一に混合することによって得られるが、(a)成分と(b)成分とで別々に分けた2液タイプとして構成しておき、使用にあたってこれらを混合してもよい。
【0038】
また、このような室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を溶解希釈して用いることも可能である。このような溶剤としては、(a)成分を溶解させ得るものが好ましく、例えばC410、C818、C49OCH3、C49OC25、2−n−ノナフルオロブチル−テトラフルオロフラン、メタキシレンヘキサフルオライド、パラキシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド等のフッ素化溶剤などが挙げられる。
【0039】
本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、室温(例えば5〜35℃)にて3日以上放置することにより、表面タックが低減した十分な硬化物が得られる。
【0040】
用途
本発明の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れ、かつ室温下での硬化特性に優れているので、特に、耐熱性等が要求され、また、加熱炉に入らない様な大型部品や加熱不可部品への用途に有用である。
例えば、耐油性を要求される自動車用ゴム部品、具体的には、自動車用ダイヤフラム類、バルブ類、或いはシール材等;化学プラント用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット、タンク配管補修用シール材等のシール材等;インクジェットプリンタ用ゴム部品;半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には、薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、パッキン、ガスケット等のシール材等、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ等;分析、理化学機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(パッキン等);医療機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ、バルブ、ジョイント等;また、テント膜材料;シーラント;成型部品;押し出し部品;被覆材;複写機ロール材料;電気用防湿コーティング材;センサー用ポッティング材;燃料電池用シール材;工作機器用シール材;積層ゴム布等に有用である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し本発明について具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
室温硬化性組成物用ベースコンパウンドの製造
下記式(2)で表されるポリマー(粘度7.8Pa・s、数平均分子量15,700)100質量部に充填剤としてフュームドシリカ(品名 AEROSIL R972:日本アエロジル(株)製商品名)を10質量部の配合比でプラネタリーミキサーに投入後、1時間混練りを行った。次いで、150℃で1時間混合減圧(−65〜−75cmHg)熱処理し、冷却後3本ロールにて分散処理してベースコンパウンドの製造を行った。
【0043】
【化15】

(m+n≒90)
【0044】
室温硬化性組成物の調製
[実施例1]
上記ベースコンパウンド110質量部に対し、下記式(3)で示されるフッ素変性アミノ基含有シロキサンポリマー11.2質量部(アミノ基/メチルエステル基=3.0(モル比)となる量)を加え均一に混合し硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得た。
【0045】
【化16】

【0046】
[実施例2]
上記ベースコンパウンド110質量部に対し、下記式(4)で示されるフッ素変性アミノ基含有シロキサンポリマー11.7質量部(アミノ基/メチルエステル基=3.0(モル比)となる量)を加え均一に混合し硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得た。
【0047】
【化17】

【0048】
[実施例3]
上記ベースコンパウンド110質量部に対し、下記式(5)で示されるフッ素変性アミノ基含有シロキサンポリマー9.6質量部(アミノ基/メチルエステル基=3.0(モル比)となる量)を加え均一に混合し硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得た。
【0049】
【化18】

【0050】
[比較例1]
上記ベースコンパウンド110質量部に対し、特開平9−151171号公報に開示されている下記式(6)で示されるフッ素変性多官能アミン化合物57.1質量部(アミノ基/メチルエステル基=3.0(モル比)となる量)を加え均一に混合し硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得た。
【0051】
【化19】

(a+b≒5)
【0052】
室温硬化性の評価
上記実施例1〜3及び比較例1の各種組成物の硬化性について、室温中(23.5℃)における粘度の経時変化を測定することにより見積もった。尚、粘度測定に関してはJIS K7117に準拠し試験を行った。結果を図1に示す。
【0053】
図1に示された結果より、実施例1〜3で用いたアミノ基含有シロキサンポリマーを架橋剤に用いることで、経時的に粘度上昇が急峻になることが確認される。
このことから、実施例1〜3で用いたアミノ基含有シロキサンポリマーを架橋剤に用いることで、硬化性に優れた硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を与えることが確認された。
【0054】
硬化物の物性評価
上記実施例1〜3及び比較例1の各種組成物を深さ2mmの型に流し込み、室温中(23.5℃)で1週間静置し硬化物サンプルの作製を行った。この硬化物サンプルを使用し、JIS K6250、6251、6253に準じてゴム物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示された結果より、実施例1〜3は十分なゴム物性を有することが確認される。
【0057】
硬化物の耐熱性評価
上記実施例1の組成物より得られる硬化物を用い、JIS K6257に準じて150℃における耐熱試験を行った。結果を図2〜5に示す。
【0058】
図2〜5に示された結果より、実施例1の組成物より得られる硬化物は、加熱の初期段階(168hr)は、架橋反応の促進により重量減少、硬さ増加、引張強さ低下、及び切断時伸びの低下が起るものの、その後、それらの各物性値が安定に推移していることが確認される。
このことから、実施例1の組成物より得られる硬化物は、150℃において優れた耐熱性を有することが確認された。
尚、実施例2、3についても、同評価において同様な結果が得られ、150℃において優れた耐熱性を有することが確認された。
【0059】
硬化物の低温性評価
実施例1の組成物より得られる硬化物を用い、DSCによりガラス転移点(Tg)を測定した。その結果、Tg=−54℃であることが確認され、このことから実施例1の組成物により得られる硬化物が低温特性に優れることを確認した。
尚、実施例2、3についても、同様にTgを測定し、その結果、それぞれTg=−53℃、Tg=−54℃であることが確認され、同様にそれぞれの組成物から得られる硬化物が低温特性に優れることを確認した。
【0060】
硬化物の耐溶剤性評価
実施例1より得られる硬化物を用い、JIS K6258に準じて各種有機溶剤に対する浸漬試験を実施し体積変化率(%)を測定し、耐溶剤膨潤性を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示された結果より、実施例1より得られる硬化物は耐溶剤膨潤性に優れていることが確認される。
尚、実施例2、3についても、同評価において同様な結果が得られ、それぞれの硬化物は耐溶剤膨潤性に優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物: 100質量部、
及び
(b)1分子中にアミノ基を少なくとも3個含有するシロキサンポリマー:
(b)成分中のアミノ基の合計量/(a)成分中のエステル基の合計量=1.0〜5.0(モル比)となる量
を含有してなることを特徴とする室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項2】
(a)成分が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【請求項3】
請求項1又は2記載の室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させることにより得られることを特徴とする硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−57809(P2011−57809A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207623(P2009−207623)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】