説明

室温硬化性組成物収納用の複合構造容器およびその使用方法

【課題】シーリング材等の室温硬化性組成物を収納する容器において、内容物を消費した後に廃棄する部分を可能な限り少なくし、その大部分を繰り返し使用することができる容器を提供する。
【解決手段】室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器であって、外装容器と内装容器とからなり、該外装容器および該内装容器がそれぞれ本体と蓋とからなり、該外装容器の本体は側壁の厚みが0.3mm以上であり、該内装容器の本体は側壁の厚みが0.1mm以下であるか、あるいは、該内装容器の質量が該外装容器の質量の1/3以下である、ことを特徴とする複合構造容器。内容物を消費した後、前記外装容器の本体と前記内装容器の本体とを分離し、分離した該内装容器は廃棄等により処理する一方、分離した該外装容器は繰り返し使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材等の室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤、塗料、シーリング材等を収納して貯蔵ないし保管する容器として、プラスチック製の容器や、ブリキや鉄等の金属で形成されたペール缶、角型缶、ドラム缶等が使用されている。これらの容器にはシーリング材等の内容物が直接収納されているため、使用後の容器内壁には内容物の残渣がこびりついている。こびりついた残渣は一部硬化も始まっていて容易に除去できないことから、使用後の容器は再使用せず、その都度、管理型の廃棄物処理場に廃棄するか、あるいは焼却処理しているのが現状である。このような状況は、リデュース、リユース、リサイクルのいわゆる3Rを進めて地球環境の保全を図るという近年の大きな流れに反し、資源の無駄使い、廃棄物による土壌汚染や廃棄物に含まれる溶剤等の揮発による大気汚染、廃棄物の焼却による大気汚染や焼却残渣の廃棄による土壌汚染といった問題を引き起こし、環境に対する大きな負荷となっている。
【0003】
使用済み容器の廃棄の際の溶剤等の揮発による悪臭の発生を防止して環境公害問題を解決する手段としては、従来より、例えばアルミ箔の両面に熱可塑性プラスチック層を有する積層フィルムから形成された特定構造の円筒形の内袋を円筒形の外容器内に適合嵌挿した液体収納用内袋付き容器が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、水分の浸入により内袋内面に湿気硬化型材料の硬化物が生成しても、そうした硬化物を内袋内面に強固に付着させることにより湿気硬化型材料と一緒に排出させないようにして、施工性の低下を防ぐ技術として、金属フィルムの両面に樹脂フィルムを積層した積層フィルムの表面をコロナ放電処理したものからなる内袋を介して、容器本体内に湿気硬化型材料を充填する容器も提案されている(特許文献2)。
【0005】
さらに、水分の浸入による硬化を抑制して貯蔵安定性を向上させる目的で、一液型シーリング材を容器本体内に内袋を介して充填する包装容器において、内袋と上部シートを接合する技術も提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−142797号公報
【特許文献2】特開2001−247164号公報
【特許文献3】特開2006−290372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された容器では、外容器の再利用(リサイクル)が考慮されてはいるが、外容器を再使用(リユース)するという発想がない。一方、特許文献2に記載された容器や特許文献3に記載された容器では、使用後の容器の再利用も再使用も考慮されてはいない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、シーリング材等の室温硬化性組成物を収納する容器において、内容物を消費した後に廃棄する部分を可能な限り少なく(リデュース)し、その大部分を繰り返し使用(リユース)することができる容器を提供することで、資源の無駄使いをなくし、地球環境の保全に寄与することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器であって、外装容器と内装容器とからなり、該外装容器および該内装容器がそれぞれ本体と蓋とからなり、該外装容器の本体は側壁の厚みが0.3mm以上であり、該内装容器の本体は側壁の厚みが0.1mm以下である、ことを特徴とする複合構造容器を提供し、これにより上記課題を解決する。
【0009】
あるいは本発明は、室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器であって、外装容器と内装容器とからなり、該外装容器および該内装容器がそれぞれ本体と蓋とからなり、該内装容器の質量が該外装容器の質量の1/3以下である、ことを特徴とする複合構造容器を提供し、これにより上記課題を解決する。
【0010】
前記外装容器の本体および前記内装容器の本体がそれぞれ有底円筒形のカップ形状をなすことが好ましく、その有底円筒形のカップ形状は底から上端の開口部に向かって開く形状であることが好ましい。
【0011】
前記外装容器の本体に前記内装容器の本体が固定されていることが好ましい。その固定は軟接着または嵌合によることが好ましい。嵌合により固定される場合には、前記内装容器の本体の外側に設けられたリング状補強物が前記外装容器の本体の内側に設けられたリング状引掛部に嵌合するようになっていることが好ましい。
【0012】
前記内装容器の本体が内容物として室温硬化性組成物を収納しており、該内装容器の本体の開口部付近の内周端部と該内装容器の蓋の外周端部とが熱融着されていることが好ましい。
【0013】
前記内装容器の本体が防湿性膜で形成されることが好ましく、防湿性膜としてはアルミニウム箔の両側に熱可塑性樹脂を積層したフィルムが好ましい。また、前記内装容器の蓋がリング状部材と防湿性膜とで形成されていることが好ましい。
【0014】
前記外装容器が合成樹脂で形成されていることが好ましい。
【0015】
前記外装容器の本体と前記内装容器の本体との間に挟まれた帯状物を有することが好ましい。
【0016】
前記外装容器がシュリンクフィルム包装されていることが好ましく、シュリンクフィルム包装は手提げ用バンド付きであることが好ましい。
【0017】
本発明の複合構造容器に収納する室温硬化性組成物としては、室温硬化性シーリング材が好ましい。
【0018】
また本発明は、前記複合構造容器の使用方法を提供するものでもあり、それにより前記課題を解決する。本発明の使用方法によれば、前記複合構造容器に内容物として収納された室温硬化性組成物を消費した後、前記外装容器と前記内装容器とを分離し、分離した該内装容器は廃棄等により処理する一方、分離した該外装容器は繰り返し使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、外装容器内に薄くて軽い内装容器を挿入し、この内装容器にシーリング材等の室温硬化性組成物を収納して保管し、施工に際して内容物である室温硬化性組成物を使いきった後、空になった内装容器を外装容器から外し、内容物の残渣が付着して汚れた内装容器のみを廃棄する等して処理し、外装容器は繰り返し使用(リユース)することにより、廃棄する容器の量を最大限減量(リデュース)し、資源の無駄使いを防止して、地球環境の保全に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施形態を図面を用いて説明するが、本発明はそれらの形態に限定されるものではない。はじめに図1〜図7を参照して、本発明の室温硬化性組成物収納用の複合構造容器の構成を説明する。
【0021】
図1は、外装容器と内装容器とからなる、本発明の複合構造容器1の第1の例を示す断面斜視図である。外装容器は本体2と蓋3とからなり、内装容器は本体4と蓋5とからなる。図2は、内装容器本体4に室温硬化性組成物19を収納した後、蓋5を挿入する様子を外装容器本体2を省略して示す斜視図であり、図3は、取付部9aの近傍を示す斜視図である。
【0022】
外装容器本体2は、円筒形をなす胴部の上端に開口部を有し、下端に平らな円板状の底部8を有する、有底円筒形のカップ形状をなす。円筒形の胴部は底部の直径と開口部の直径が同じであるような直円筒であってもよいが、底部の直径より開口部の直径の方が大きい、底部から開口部に向かって開いた形状であると、空の容器を積み重ね易く、また、内装容器本体4を外装容器本体2に出し入れする作業がしやすい点で好ましい。外装容器の蓋3は円板状でその周囲に凹部6を有し、外装容器本体2の開口端をたとえば外側にカールさせた凸部7と嵌合して開口部を閉じるように形成されていることが好ましい。
【0023】
また、図1および図3に示すように、外装容器本体2には、手で持ち運びやすいように、その外側上部の対向する位置にある取付部9aおよび9bを介して、グリップ12を備えた取っ手11が取り付けられている。なお後述するように、外装容器全体をシュリンクフィルムで包装しやすくするため、取付部9aおよび9bには、それぞれ引掛穴10aおよび10bが設けられ、取っ手11が自由に着脱できるような構造になっている。
【0024】
一方、内装容器本体4は、外装容器本体2と同様に、円筒形の胴部の上端に開口部14を有し、下端に平らな円板状の底部15を有する、有底円筒形のカップ形状をなす。内装容器本体4の形状は、基本的に、外装容器本体2に適合するような形状を有するべきである。もっとも、内装容器本体4においても、円筒形の胴部は、底部の直径と開口部の直径が同じであるような直円筒であるよりも、底部の直径より開口部の直径の方が大きい、底部から開口部に向かって開いた形状である方が、室温硬化性組成物を詰めたり取り出したりする際の作業がしやすい点で好ましい。
【0025】
図1および図2に示すように、内装容器の蓋5は円板状でその周囲にリング状の立ち上がり部13を有している。したがって、外装容器本体2に内装容器本体4を挿入し、内装容器本体4に室温硬化性組成物19を詰めた後、内装容器の蓋5を内装容器本体4に挿入し、蓋5の立ち上がり部13の外周面と容器本体4の上端開口部14付近の内周面を接着して、湿気や空気が侵入しないように密封すると、内装容器の内部に閉じた空間が形成され、こうして形成された空間に室温硬化性組成物19が収納(貯蔵)されることになる。なお、図1において記号16で示す部分は接着している状態を示しているが、蓋5の立ち上がり部13の外周面と本体上端開口部14付近の内周面とを接着する手段としては、接着剤による接着や高周波による熱融着などが挙げられるが、作業性が良好な点で熱融着が好ましい。
【0026】
また、図1に示すように、内装容器本体4は外装容器本体2に固定手段により固定されており、外力が働いても内装容器本体4が外装容器本体2に対して簡単にズレないようになっている。これは、作業者がガンやヘラを用いて内装容器本体4から室温硬化性組成物19を取り出す際、室温硬化性組成物19の粘度が高いことにより、内装容器本体4が室温硬化性組成物と一緒に動いてしまい、作業性が低下するのを防止するためである。この固定手段としては、図1に示すように、内装容器本体4の外側と外装容器本体2の内側を接着剤17a〜17dで軟接着する方法が挙げられる。ここで「軟接着する」とは、内装容器本体4と外装容器本体2とを強固に接着する必要はなく、作業者が室温硬化性組成物19を取り出す際に加わる外力により、内装容器本体4が外装容器本体2に対してズレない程度の接着強度があればよいという意味である。その程度の接着強度であれば、収納された室温硬化性組成物を使いきった後で、内装容器本体4を外装容器本体2から分離するのも容易なので好都合である。軟接着する手段としては、接着力の小さなホットメルトや両面テープなどが挙げられる。
【0027】
また、外装容器本体2に内装容器本体4を挿入する際、予めテープ18を外装容器本体2の内側に配置しておき、その上に内装容器本体4を置いてテープ18を外装容器本体2と内装容器本体4の間に挟みこんでおけば、使用後に内装容器本体4を外装容器本体2から分離する際、テープ18の両端をもって引き上げれば容易に分離することができるので便利である。
【0028】
図4〜図6は、本発明の複合構造容器の第2の例を示す。図4〜図6に示すように、内装容器本体24は、外装容器本体22に嵌合することにより固定される。図4では、本発明の複合構造容器21は、外装容器の蓋を除いた状態が断面斜視図で示されているが、外装容器の蓋は図1に示される蓋3と同様のものが使用できる。図5は、外装容器本体22を示す断面斜視図である。図6は、図4に示す内装容器本体24に室温硬化性組成物19を収納した後、蓋25を挿入する様子を外装容器本体22を省略して示す斜視図である。
【0029】
図7〜図8は、本発明の複合構造容器の第3の例を示す。図7では、本発明の複合構造容器35は、外装容器の蓋を除いた状態が断面斜視図で示されているが、外装容器の蓋は図1に示される蓋3と同様のものが使用できる。図8は、図7に示す内装容器本体24に室温硬化性組成物19を収納した後、蓋36を挿入する様子を外装容器本体22を省略して示す斜視図である。図7において、外装容器本体22と内装容器本体24は図4に示すものと同様であるが、内装容器の蓋36は図4に示される内装容器の蓋25と構造が異なっている。
【0030】
図4および図7に示す本発明の複合構造容器の第2および第3の例における外装容器本体22は、円筒形胴部の底面に近い内側周囲にリング状の引掛部23が設けられている点を除き、図1に示す第1の例における外装容器本体2と同様の構造である。また、第2および第3の例では、図4および図6〜図8に示すように、内装容器本体24の底部34に近い側壁外周部に、断面L字形のリング状の第1補強部材27が接着固定されている。この第1補強部材は断面がI字形であってもよいが、断面L字形の方が内装容器本体24に接着固定する際の作業が容易となり好ましい。さらに、図4および図6〜図8に示すように、第2および第3の例では、内装容器本体24の上端開口部31に近い側壁外周にやはりリング状の第2補強部材28が接着固定されている。この場合、図4および図7に示すように、内装容器本体24の上端を外側に折り曲げてツバ32を形成しておくと、リング状の第2補強部材28を上端開口部31近くの外周に接着固定する作業が容易になる。リング状の第1補強部材27および第2補強部材28を設けることにより、内装容器本体24の自立性能が高まり、またつぶれにくくなるため、内装容器本体24を外装容器本体22に対して挿入ないし分離する作業が容易になる。また、図7に示す第3の例では、内蓋36に立ち上がり部37を設け、この内周部に断面L字形のリング状第3補強部材38を接着している。こうすることにより、内蓋36の挿入や取り外しが容易となる。リング状第3補強部材は断面I字形であってもよいが、L字形の方が立ち上がり部37に接着しやすいので好ましい。
【0031】
内装容器本体24を外装容器本体22に挿入し、リング状引掛部23に内装容器本体24の第1補強部材27を嵌合させれば、内装容器本体24は外装容器本体22に固定される。一方、内装容器の内容物である室温硬化性組成物19を使いきった後、内装容器本体24の上端開口部31付近を手で持って引き上げれば、内装容器本体24を固定していた嵌合は容易に外れるので、簡単に内装容器本体24を外装容器本体22から分離することができる。あるいは、図1に示したテープ18と同様なものを外装容器本体22と内装容器本体24の間に挟んでおいてもよい。この場合には、テープを持って引き上げることにより、さらに簡単に内装容器本体24を外装容器本体22から分離することができる。
【0032】
次に、本発明の複合構造容器を構成する外装容器本体側壁の厚みと内装容器本体側壁の厚みとの間の関係、あるいは外装容器の質量と内装容器の質量との間の関係を、図1を用いて説明する。
【0033】
図1において、外装容器本体2の側壁の厚みt1は0.3mm以上、さらには0.5〜5.0mm、特に1.0〜3.0mmであることが好ましい。一方、内装容器本体4の厚みt2は0.1mm以下、さらには0.01〜0.05mmであることが好ましい。あるいは、内装容器の(本体と蓋を合わせた)質量は外装容器の(本体と蓋を合わせた)質量の1/3以下、さらには1/5以下、特に1/5〜1/50であることが好ましい。外装容器本体側壁の厚みt1が0.3mm未満であると、外装容器本体の剛性が低下して輸送や使用の途中で破損するおそれが生じ、外装容器を繰り返し使用(リユース)するという本発明の趣旨が没却されることになる。一方、内装容器本体側壁の厚みt2が0.1mmを超えるか、または内装容器の質量が外装容器の質量の1/3を超えると、内装容器の質量が必要以上に大きくなり、使用の都度廃棄される内装容器の量が増大し、容器の廃棄量の削減(リデュース)を通じて地球環境の保全に寄与するという本発明の趣旨が没却されるため好ましくない。
【0034】
この資源の節約について、外装容器の質量と内装容器の質量の比を用いてさらに具体的に説明する。仮に、外装容器の質量をa、内装容器の質量をa/n、外装容器を繰り返し使用する回数をX回とする。本発明の複合構造容器では、外装容器は使用後でも内容物が付着していないため、これをX回繰り返して使用(リユース)した後に回収して再資源化(リサイクル)することとし、一方、内装容器は使用の都度廃棄することとする。この場合、外装容器の損失はゼロとすることができ、資源の損失は内装容器のみとなるため、本発明における資源の損失量W1は次式(1)で表される。
【数1】

これに対し、従来は外装容器のみを使用しており、内容物が付着した外装容器の回収再資源化は困難であることから、これを使用の都度廃棄することとすると、従来における資源の損失量W2は次式(2)で表される。
【数2】

したがって、従来の資源損失量に対する、本発明の複合構造容器を使用した場合の資源損失量の比W1/W2は次式(3)で表される。
【数3】

【0035】
以上のことから、質量比nをできるだけ大きく、すなわち内装容器の質量を外装容器の質量に対して小さくすればするほど、従来の容器を使用した場合に比べて、本発明の複合構造容器を使用した場合の資源損失量の低減を図ることができる。たとえば質量比nを10とすると、従来に比べて資源損失量を1/10にすることができる。なお、繰り返し使用の回数Xは、繰り返し使用による外装容器の外観、性能等の品質の低下を考慮して、5回以上、特に10〜20回が好ましい。
【0036】
なお、前記室温硬化性組成物が付着した内装容器の廃棄等の処理には、単純に管理型の廃棄物処理場に廃棄することや焼却処理すること以外に、コストはかかるが、汚れた内装容器の樹脂や金属材料を回収して再資源化することも含まれる。再資源化すれば、さらに資源の節約に寄与することができる。
【0037】
前記複合構造容器を構成する外装容器の本体および蓋部分を形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン等の熱可塑性樹脂、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などの合成樹脂材料;厚紙、ダンボール紙等の紙材料;鉄、ブリキ、アルミニウム等の金属材料などが挙げられる。これらのうちでは、成形が容易な上に繰り返し使用しても変形し難い点で、合成樹脂材料が好ましく、さらに熱可塑性樹脂が好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。外装容器の本体と蓋は同じ材料であっても、あるいは異なる材料であってもよいが、作製し易い点で同一材料が好ましい。
【0038】
一方、内装容器の本体および蓋部分を形成する材料としては、内容物である室温硬化性組成物が透湿により増粘してしまうのを防止するため、防湿性の膜で形成されているのが好ましい。防湿性膜としては、アルミニウム等の金属フィルムの両面に樹脂フィルムを積層した複合積層フィルムが挙げられる。外層を構成する樹脂フィルムとしては、内装容器本体の内面と蓋の立ち上がり部の外面を熱融着できるように、熱可塑性樹脂のフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、前記外装容器の材料として挙げたものと同様のものが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられるが、防湿性が良好な点でポリプロピレン、特に2軸延伸したポリプロピレン(OPP)が好ましい。内装容器の本体と蓋部は同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよいが、作製し易い点で同一材料が好ましい。また、内装容器の本体内面と蓋の立ち上がり部の接着性を向上させるため、複合構造フィルムの表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の物理的処理を施したものも使用できる。また、内層を構成する金属フィルムとしては、金属箔あるいは樹脂フィルムの表面に金属を蒸着させた金属蒸着フィルムが挙げられる。防湿性が優れている点で金属箔が好ましく、特に、成形加工性に優れ、低コストである点で、アルミニウム箔が好ましい。
【0039】
内装容器の本体24に設けるリング状第1補強部材27や第2補強部材28、あるいは蓋36に設けるリング状第3補強部材38を形成する材料としては、外装容器の本体および蓋を形成する材料として挙げたものと同様の合成樹脂材料が挙げられる。このうち、成形加工性が良好な点で熱可塑性樹脂が好ましく、特にポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。
【0040】
なお、本発明の複合構造容器の収納容量は、特に限定されないが、流通や作業のしやすさから1〜200L(リットル)程度であることが好ましく、さらには3〜30L程度であることが好ましい。
【0041】
次に、図9および図10を参照して、シュリンクフィルム包装された本発明の複合構造容器について説明する。図9は、本発明の複合構造容器の第4の例として、図1に示す複合構造容器1がシュリンクフィルムで包装されている包装容器全体41を示す正面図である。図10は、本発明の複合構造容器の第5の例として、手提げバンド付きでシュリンクフィルム包装されている包装容器全体42を示す斜視図である。なお、図10では、取付部9aおよび9bは省略されている。
【0042】
図9および図10に示すように、図1に示す内装容器と外装容器とからなる複合構造容器1全体を、室温硬化性組成物が収納された状態で、シュリンクフィルム43または手提げバンド45が付いたシュリンクフィルム44で覆い、加熱してシュリンク(収縮)包装をする。こうすることにより、複合構造容器の密閉度が向上し、透湿や酸素透過を防止することができ、収納された室温硬化性組成物の貯蔵安定性がさらに向上する。また、輸送中に複合構造容器1が傷つくのを防止することもできる。シュリンクフィルムの材料としては、前述の外装容器の本体を形成する材料として挙げたものと同様の熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられる。
【0043】
シュリンクフィルム包装をする際には、取っ手11を外しておいた方が、シュリンク包装し易いので好ましい。取っ手11は、シュリンク包装した容器41または42に添えて作業者に搬送するか、あるいは予め作業者に渡しておけばよい。作業者は、作業の際に外装容器本体2に取っ手11を取り付けるようにすれば、本発明の複合構造容器を支障なく持ち運ぶことができる。
【0044】
なお、図10に示すように、シュリンクフィルム44にシュリンクフィルム44と同様の材料でできた手提げ用バンド45を取り付けておけば、取っ手11を使用しなくても、シュリンク包装した容器42を持ち運びできて便利である。この場合、図1の取付部9aと9bおよび取っ手11は必要なくなるため、部品を削減することができてコストダウンにつながる。手提げ用バンド45はシュリンク包装の前に、予めシュリンクフィルムに取り付けておいてもよいし、またシュリンク包装の後で取り付けてもよい。なお、手提げ用バンド45のシュリンクフィルムへの取り付けには、接着剤を用いてもよいし、また、熱融着を用いてもよい。
【0045】
さらに、シュリンクフィルム43または44の表面に、識別のための製品名や会社名を記載した表示ラベル46が貼付されていれば、外装容器本体2の表面への貼付は必要なくなり、外装容器本体2をリユースする際、古い表示ラベルを剥がす手間がなくなるため、リユースしやすくなるという利点がある。シュリンクフィルム43または44は室温硬化性組成物19の施工使用に際して取り除かれるが、これは回収して再資源化するようにすれば、さらに資源を節約することができる。
【0046】
次に、本発明の複合構造容器に収納される室温硬化性組成物19について説明する。室温硬化性組成物は、その中に含まれる硬化成分樹脂が、大気中の水分(湿気)や酸素などとの反応や硬化剤との反応、あるいはラジカル発生剤によるラジカル重合などにより室温で反応硬化することにより、組成物全体が硬化するものである。硬化様式としては、湿気や酸素による硬化を利用する1液湿気硬化型や1液酸素硬化型などの1液硬化型のものと、硬化成分樹脂を主剤としアミン化合物、ポリオール化合物、ラジカル発生剤等を硬化剤とする2液硬化型あるいは多液硬化型のものとがある。主剤と硬化剤とを混合する手間がなく作業性が良好な点および本発明の複合構造容器の効果を最大限に発揮できる点で、1液室温硬化型が好ましく、さらに1液湿気硬化型が好ましい。
【0047】
硬化成分樹脂としては、水分や硬化剤との反応により硬化するものとしてウレタン系樹脂、変成シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられ、ラジカル重合により硬化するものとしてポリサルファイド系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのうち、接着性や作業性が良好な点で、ウレタン系樹脂または変成シリコーン系樹脂が好ましい。
【0048】
室温硬化性組成物19の用途としては、建築用または土木用のシーリング材、接着剤、塗膜防水剤、あるいは塗料などがあるが、本発明の複合構造容器は、建築用または土木用の室温硬化性シーリング材を収納する容器として用いた場合に、その効果を最も有効に発揮することができる。特に好ましいのは、1液湿気硬化型のウレタン系シーリング材または変成シリコーン系シーリング材を収納する容器として用いることである。
【0049】
次に、本発明のもう一つの態様である、複合構造容器の使用方法について、図4〜図6を用いて具体的に説明する。先ず、容器本体22と外蓋(図1に示す蓋3と同様のもの)からなる外装容器および容器本体24と蓋25からなる内装容器を準備し、外装容器本体22に内装容器本体24を挿入し、嵌合固定する。次いで、予め製造しておいた室温硬化性組成物19を内装容器本体24に詰め(収納し)た後、その上に蓋25を挿入して被せる。次いで、内装容器本体24の内面開口部31付近と蓋25の立ち上がり部33の外周面とを高周波等で熱融着するか、または接着剤で接着することにより接着部16で密封する。この際、蓋25を上から押し付けることにより、内容物である室温硬化性組成物19を少しはみ出させ、このはみ出した内容物を接着剤の代わりにしてもよい。その後、外装容器本体22に外蓋をかぶせて密封し、室温硬化性組成物19が収納された複合構造容器21を作製する。
【0050】
以上のようにして作製した複合構造容器21を建築工事等の作業者のもとに輸送し、作業者は輸送された複合構造容器から外蓋および蓋25を取り外す。この際、蓋25をしたまま、その円形平面を、立ち上がり部33の内周に沿って円形にカッターで切り取り、切り取った円形平面を剥がして取り外してもよい。次いで、室温硬化性組成物19をヘラや吸引吐出ガン等の道具を用いて取り出し、建築外壁やその目地等の施工対象物に塗布や充填等の施工をする。この取り出しの際には、内容物である室温硬化性組成物19が外装容器本体22の内面に付着しないように注意することが必要である。施工後、内容物を消費して空になった内装容器本体24を外装容器本体22から分離し、内装容器本体24と蓋25、ならびに外装容器本体22と外蓋を回収する。回収された外装容器本体22と外蓋は内容物が付着していないので、埃等の汚れを水洗等で清掃した後、再使用(リユース)することができる。こうして、外装容器本体22と外蓋とからなる外装容器は繰り返し使用することができる。内容物19が付着して汚れた内装容器本体24と蓋25は、廃棄等により処理される。こうして、廃棄する容器の量を最大限減量(リデュース)し、資源の無駄使いを防止して地球環境の保全に寄与することができる。
【0051】
以下に本発明の実施例を記述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
図4に示す形に形成した、ポリプロピレン製の容器本体と外蓋とからなる外装容器A−1(外装容器本体の側壁部分の厚さt1=1.5mm、外装容器の本体と蓋の合計の質量750g)および内装容器本体と内蓋とからなる内装容器B−1(内容量6L、容器本体の側壁部分の厚さt2=0.05mm、内装容器の本体と蓋の合計の質量85g、アルミニウム箔の両面に2軸延伸ポリプロピレンを積層した複合積層フィルム製、内装容器本体のリング状部材はポリエチレン製)を準備した。なお外装容器A−1の外蓋は図1に示す形に形成した。
【0053】
外装容器本体に内装容器本体を挿入して嵌合固定した後、この内装容器本体中に1液湿気硬化型のウレタン系シーリング材(オート化学工業社製、オートンシーラーNS)を6L詰めた。次いで、内装容器B−1の蓋を容器本体に挿入し、容器本体の開口部付近の内壁と蓋の立ち上がり部の外面が接触する部分を加熱融着により密封し、さらに外装容器本体に外蓋をしてシーリング材を収納した複合構造容器を作製した。この作製場所をE地点とする。
【0054】
次いで、このシーリング材を収納した複合構造容器を約600km離れた場所(F地点とする)にトラックで輸送し、外蓋と内蓋を開けて内容物を取り除いた後、外装容器A−1の本体と内装容器B−1の本体とを分離し、外装容器A−1の本体と蓋並びに内装容器B−1の本体と蓋をトラックでE地点まで戻した後、外装容器A−1の本体と蓋を軽く水洗して乾燥したものを再使用し、上述と同様の操作を行った。この操作を10回繰り返した後、戻ってきた外装容器A−1の本体と蓋を目視により観察した結果、傷つきや破損は認められず、さらに使用可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の例の複合構造容器を示す断面斜視図である。
【図2】室温硬化性組成物が収納された第1の例の内装容器本体に、蓋を挿入する様子を示す斜視図である。
【図3】図1の複合構造容器の取っ手の取付部近傍を示す図である。
【図4】本発明の第2の例の複合構造容器を示す断面斜視図である。
【図5】図4の複合構造容器の外装容器本体を示す断面斜視図である。
【図6】室温硬化性組成物が収納された第2の例の内装容器本体に、蓋を挿入する様子を示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の例の複合構造容器を示す断面斜視図である。
【図8】室温硬化性組成物が収納された第3の例の内装容器本体に、蓋を挿入する様子を示す斜視図である。
【図9】シュリンクフィルム包装された本発明の複合構造容器を示す正面図である。
【図10】手提げ用バンド付きシュリンクフィルム包装された本発明の複合構造容器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 第1の例の複合構造容器
2 第1の例の外装容器本体
3 外装容器の蓋
4 第1の例の内装容器本体
5 第1の例の内装容器の蓋
6 外装容器の蓋の凹部
7 外装容器本体の凸部
8 外装容器本体の底部
9a 取付部
9b 取付部
10a 引掛穴
10b 引掛穴
11 取っ手
12 グリップ
13 第1の例の内装容器の蓋の立ち上がり部
14 第1の例の内装容器本体の開口部
15 第1の例の内装容器本体の底部
16 接着部
17a 第1の例の固定手段(接着剤)
17b 第1の例の固定手段(接着剤)
17c 第1の例の固定手段(接着剤)
17d 第1の例の固定手段(接着剤)
18 テープ
19 室温硬化性組成物
21 第2の例の複合構造容器
22 第2および第3の例の外装容器本体
23 第2および第3の例のリング状引掛部
24 第2および第3の例の内装容器本体
25 第2の例の内装容器の蓋
27 第2および第3の例のリング状第1補強部材
28 第2および第3の例のリング状第2補強部材
31 第2および第3の例の内装容器本体の開口部
32 第2および第3の例の内装容器本体開口部のツバ
33 第2の例の内装容器の蓋の立ち上がり部
34 第2および第3の例の内装容器本体の底部
35 第3の例の複合構造容器
36 第3の例の内装容器の蓋
37 第3の例の内装容器の蓋の立ち上がり部
38 第3の例のリング状第3補強部材
41 シュリンクフィルム包装された複合構造容器
42 手提げ用バンド付きでシュリンクフィルム包装された複合構造容器
43 シュリンクフィルム
44 シュリンクフィルム(手提げ用バンド付き)
45 手提げ用バンド
46 表示ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器であって、
外装容器と内装容器とからなり、
該外装容器および該内装容器がそれぞれ本体と蓋とからなり、
該外装容器の本体は側壁の厚みが0.3mm以上であり、該内装容器の本体は側壁の厚みが0.1mm以下である、ことを特徴とする複合構造容器。
【請求項2】
室温硬化性組成物を収納するための複合構造容器であって、
外装容器と内装容器とからなり、
該外装容器および該内装容器がそれぞれ本体と蓋とからなり、
該内装容器の質量が該外装容器の質量の1/3以下である、ことを特徴とする複合構造容器。
【請求項3】
前記外装容器の本体および前記内装容器の本体がそれぞれ有底円筒形のカップ形状をなす、請求項1または2に記載の複合構造容器。
【請求項4】
前記有底円筒形のカップ形状は、底から上端の開口部に向かって開く形状である、請求項3に記載の複合構造容器。
【請求項5】
前記外装容器の本体に前記内装容器の本体が固定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項6】
前記内装容器の本体が前記外装容器の本体に軟接着して固定されている、請求項5に記載の複合構造容器。
【請求項7】
前記内装容器の本体が前記外装容器の本体に嵌合して固定されている、請求項5に記載の複合構造容器。
【請求項8】
前記内装容器の本体の外側に設けられたリング状補強物が前記外装容器の本体の内側に設けられたリング状引掛部に嵌合する、請求項7に記載の複合構造容器。
【請求項9】
前記内装容器の本体が内容物として室温硬化性組成物を収納しており、該内装容器の本体の開口部付近の内周端部と該内装容器の蓋の外周端部とが熱融着されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項10】
前記内装容器が防湿性膜で形成された、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項11】
前記防湿性膜が、アルミニウム箔の両側に熱可塑性樹脂を積層したフィルムである、請求項10に記載の複合構造容器。
【請求項12】
前記内装容器の蓋がリング状部材と防湿性膜とで形成された、請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項13】
前記外装容器が合成樹脂で形成された、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項14】
前記外装容器の本体と前記内装容器の本体との間に挟まれた帯状物を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項15】
シュリンクフィルム包装されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項16】
前記シュリンクフィルム包装が手提げ用バンド付きである、請求項15に記載の複合構造容器。
【請求項17】
前記室温硬化性組成物が室温硬化性シーリング材である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の複合構造容器。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の複合構造容器の使用方法であって、内容物を消費した後、前記外装容器の本体と前記内装容器の本体とを分離し、分離した該内装容器は廃棄等により処理する一方、分離した該外装容器は繰り返し使用することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−220870(P2009−220870A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69121(P2008−69121)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】