説明

室間気流制御システム

【課題】制御対象室の室圧を風量制御によって厳密かつ適切に制御しながら、当該制御対象室に対する差圧を保持すべき風量補償室の室圧を合理的に制御することができ、全体としてのエネルギロスの抑制が可能であるとともに、設備コストを低減することが可能な室間気流制御システムを提供する。
【解決手段】風量を直接制御する風量制御弁1,2によって給排気系3による給排気が個別に制御される複数の制御対象室4の室圧Paを維持すべく、これら制御対象室内の風量変動を抑制する気流Sを、これら制御対象室に接続した風量補償室5との間で一方向流れに制御するために、これら制御対象室と風量補償室相互間に差圧を保持するようにした室間気流制御システムにおいて、風量補償室へ給排気する副給排気系6を、外気圧Pに対し差圧制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象室の室圧を風量制御によって厳密かつ適切に制御しながら、当該制御対象室に対する差圧を保持すべき風量補償室の室圧を合理的に制御することができ、全体としてのエネルギロスの抑制が可能であるとともに、設備コストを低減することが可能な室間気流制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、複数の動物飼育室と動物飼育室に付属する支援室から成り、支援室を含めて全動物飼育室の風量制御装置を全て、風量を直接制御することが可能な可変風量型定風量装置で構成し、各可変風量型定風量装置の稼働に連動させて給気ファンと排気ファンを制御するファン制御装置を設けることで、各動物飼育室と支援室間の空気の流れを一方向に維持しながら、可変風量型定風量装置の稼働制御に追随させて給・排気ファンを制御するようにした「高度安全施設とその制御方法」を提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1にあっては、制御対象室である複数の動物飼育室それぞれへの給排気および各動物飼育室の風量を保証してその変動を抑制する風量補償室となる支援室への給排気のいずれも、風量を直接制御できる可変風量型定風量装置で制御することを前提とし、この可変風量型定風量装置による給・排気風量制御によって、結果的に所望の室圧が各室それぞれに得られるようにし、そしてこれら動物飼育室および支援室の室圧のいずれをも、外部の気圧(例えば、大気圧)より高く維持し、かつ動物飼育室と支援室との間の空気の流れが一方向になるように、これら動物飼育室と支援室相互間に相当の差圧を保持するようにしていた。要するに、風量制御によって、外部と支援室との間、並びに支援室と動物飼育室との間に、差圧を確保するようにしていた。
【0004】
ところで、風量制御では上述したように、室への給気風量と室からの排気風量に応じ、当該給排気の結果として、必要な室圧が得られることになる。すなわち、室圧は、給排気風量の多少、ひいては風速にかかわらず、室内に相当の空気量を確保した状態で安定に給排気することで保証されるものであることから、比較的少ない風量であっても、あるいはきわめて大きな風量レベルであっても、同じ室圧が得られる。このため、場合によっては、風量がきわめて大きな状態で室圧が得られている状況もあり、このような場合は、室内に不必要に大きなエネルギで気流が流れていることになり、そしてまたこのために、若干の風量バランスの崩れでも室圧が激変し、室内の内装材が剥離するなどの障害が発生するおそれもある。
【0005】
また、風量制御では、室への給気風量と室からの排気風量をともに制御することでスムーズな一定の室圧が保証されるもので、給気風量のみ、あるいは排気風量のみを変化させると室圧が急激に変動するという特性を有することから、給気側および排気側双方で風量制御を行う必要があり、従って支援室および動物飼育室いずれに対しても給気側と排気側の双方に、可変風量型定風量装置を設備しなければならず、設備コストが嵩むとともに、制御も複雑であるという課題もあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、制御対象室の室圧を風量制御によって厳密かつ適切に制御しながら、当該制御対象室に対する差圧を保持すべき風量補償室の室圧を合理的に制御することができ、全体としてのエネルギロスの抑制が可能であるとともに、設備コストを低減することが可能な室間気流制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる室間気流制御システムは、風量を直接制御する風量制御弁によって給排気系による給排気が個別に制御される複数の制御対象室の室圧を維持すべく、これら制御対象室内の風量変動を抑制する気流を、これら制御対象室に接続した風量補償室との間で一方向流れに制御するために、これら制御対象室と該風量補償室相互間に差圧を保持するようにした室間気流制御システムにおいて、上記風量補償室へ給排気する副給排気系を、外気圧に対し差圧制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる室間気流制御システムにあっては、制御対象室の室圧を風量制御によって厳密かつ適切に制御しながら、当該制御対象室に対する差圧を保持すべき風量補償室の室圧を合理的に制御することができ、全体としてのエネルギロスを抑制できるとともに、設備コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる室間気流制御システムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる室間気流制御システムは基本的には、図1に示すように、風量を直接制御する風量制御弁1,2によって給排気系3による給排気が個別に制御される複数の制御対象室4の室圧Paを維持すべく、これら制御対象室4内の風量変動を抑制する気流Sを、これら制御対象室4に接続した風量補償室5との間で一方向流れに制御するために、これら制御対象室4と風量補償室5相互間に差圧を保持するようにした室間気流制御システムにおいて、風量補償室5へ給排気する副給排気系6を、外気圧Pに対し差圧制御するように構成される。この室間気流制御システムは、例えば高清浄度の維持が求められるクリーンルームや、また汚染物質拡散防止が求められる動物飼育室等を制御対象室4とする高度安全施設などに適用される。
【0010】
複数の制御対象室4、図示例にあっては4つの制御対象室4には、それら室内に給気を供給する給気系3aと、それら室内から排気を排出する排気系3bとが設けられる。給気系3aは、主給気ファン7と、主給気ファン7に接続された主給気ダクト8と、主給気ダクト8から各制御対象室4それぞれに向けて分岐された4つの給気用分岐ダクト9と、これら給気用分岐ダクト9それぞれに設けられ、各制御対象室4への給気を個別に制御する給気側風量制御弁1とから構成される。
【0011】
また、排気系3bは、主排気ファン10と、主排気ファン10に接続された主排気ダクト11と、主排気ダクト11から各制御対象室4それぞれに向けて分岐された4つの排気用分岐ダクト12と、これら排気用分岐ダクト12それぞれに設けられ、各制御対象室4からの排気を個別に制御する排気側風量制御弁2とから構成される。給気側および排気側のいずれの風量制御弁1,2もコントローラ13に接続され、従来の可変風量型定風量装置と同様に、風量を直接制御するようになっている。
【0012】
本実施形態にあっては、給気側風量制御弁1として2段階可変高速風量バルブが用いられるとともに、排気側風量制御弁2として無段階可変高速風量バルブが用いられ、これにより、各制御対象室4に対して、停止・低風量・高風量のいずれかで給気制御を行う一方で、排気制御が給気制御に対する風量の安定化、ひいては室圧Paの安定化のために無段階で行われ、これによって制御対象室4への風量が、その室圧Paを安定に維持しつつ、2段階で制御されるようになっている。給気側風量制御弁1として2段階可変高速風量バルブを用いて制御対象室4の給気量を2段階で制御したのは、実験中と非実験中との給排気量を変えることにより、施設のランニングコストの低減を図ったものである。給気用として、2段階可変高速風量バルブに代えて、無段階可変高速風量バルブを用いるようにしてもよく、このようにすれば、制御対象室4の風量を、その室圧Paを安定に維持しつつ、無段階に制御することができる。これら風量制御弁1,2の風量制御動作は、コントローラ13によって行われる。
【0013】
これら複数の制御対象室4は各々、それぞれの風量制御弁1,2によって給排気量が個別に制御され、従って各制御対象室4は室圧Paが維持されながら、給排気量が増加されたり減少され、また他方で、給排気が停止される場合がある。このような各制御対象室4における給排気量の変動は、主給気ダクト8および主排気ダクト11に給排気を送り込む主給気ファン7および主排気ファン10の総給気量および総排気量を、図示しない制御装置によって制御することで吸収できるようになっている。
【0014】
そして、これら複数の制御対象室4には、それぞれ接続ダクト14を介して、少なくとも一つの風量補償室5が接続される。制御対象室4からは僅かながら隣接する制御対象室4相互間などで出入りする風量があることから、この風量変動を抑制するために風量補償室5が設けられる。すなわち、この風量補償室5は、後述する副給排気系6を介して、外気圧Pよりも高くかつ各制御対象室4との間に差圧が保たれるように給排気制御されるもので、これにより、高清浄度の維持や汚染物質拡散防止が求められる制御対象室4の室圧Paを維持すべく、制御対象室4内の風量変動を抑制する気流Sを、これら風量補償室5と制御対象室4との間で一方向流れに制御できるようになっている。
【0015】
差圧の設定は、風量補償室5の室圧Pbを制御対象室4の室圧Paよりも高くして、風量補償室5から制御対象室4への一方向流れを常時維持したり、あるいは反対に、風量補償室5を制御対象室4よりも低くして、制御対象室4から風量補償室5への一方向流れを常時維持したりするようになっている。図示例にあっては、前者の状態が示されている。
【0016】
そしてこの風量補償室5には、当該風量補償室5の室圧Pbと外気圧Pとの差圧に基づいて給排気制御する副給排気系6が設けられる。副給排気系6は、風量補償室5内に給気を供給する副給気系6aと、風量補償室5内から排気を排出する副排気系6bとから構成される。副給気系6aは、副給気ファン15と、副給気ファン15に接続された副給気ダクト16と、副給気ダクト16に設けられた定風量弁17とから構成され、定風量弁17により風量補償室5には一定風量の給気が供給される。副排気系6bは、副排気ファン18と、副排気ファン18に接続された副排気ダクト19と、副排気ダクト19に設けられた可変風量弁20とから構成される。
【0017】
さらに、風量補償室5には、外気圧P、例えば大気圧と風量補償室5の室圧Pbの差圧を検出して検出値を出力する差圧検出器21が接続され、差圧検出器21には当該差圧検出器21から検出値が入力される差圧コントローラ22が接続され、この差圧コントローラ22が副排気系6bの可変風量弁20と接続される。差圧コントローラ22には、風量補償室5の設定室圧が設定される。この設定室圧としては、図示例のように、一方向流れを風量補償室5から制御対象室4へ制御する場合には、外気圧Pに対しこれよりも高くかつ制御対象室4の室圧Paよりも高く設定される。他方、制御対象室4から風量補償室5へ制御する場合には、外気圧Pに対しこれよりも高くかつ制御対象室4の室圧Paよりも低く設定される。そして差圧コントローラ22は、差圧検出器21による検出値が設定室圧に合致するように、可変風量弁20を制御する。
【0018】
これにより、副給排気系6は、副給気系6aによる一定の給気風量に対し、副排気系6bによる排気風量の増減制御で、外気圧Pに対する差圧制御が行われる。そしてこの差圧制御で風量補償室5の室圧Pbが設定室圧に保持されることにより、風量制御弁1,2のみによって給排気が制御される複数の制御対象室4それぞれに対する差圧が、間接的に保証されるようになっている。また、風量補償室5からも、外部へ向かって僅かながら洩れ出す風量があるが、このような風量変動も、外気圧Pに対して風量補償室5の室圧Pbを設定室圧に保持する差圧制御によって吸収することができる。
【0019】
副給排気系6は差圧制御されることから、副排気系6bの可変風量弁20としては特段速度の速いものである必要はなく、本実施形態にあっては、無段階可変低速風量バルブが用いられ、これにより風量補償室5の室圧Pbが、安定的にかつ無段階で制御されるようになっている。また、可変風量弁20の制御には、PID制御などを採用することができる。これにより、差圧制御に基づく風量補償室5の給排気制御を自動制御で安定的に行うことができる。可変風量弁20としては、差圧コントローラ22からの出力を人的に監視する場合には、手動式のものを採用してもよい。
【0020】
次に、本実施形態にかかる室間気流制御システムの作用について説明すると、給気系3aおよび排気系3bの主給気ファン7および主排気ファン10の運転と、給気用分岐ダクト9および排気用分岐ダクト12の各風量制御弁1,2のコントローラ13による制御により、各制御対象室4は風量制御によって個別に室圧Paが維持される。具体的には、給排気操作によって各制御対象室4の室圧Paが所望の圧力まで昇圧され、その後も、給気風量と排気風量の差が同じとなるように給気側と排気側の風量制御弁1,2を制御することによって、各制御対象室4が所望の室圧Paに維持される。
【0021】
他方、副給排気系6の副給気ファン15および副排気ファン18の運転と、副給気ダクト16の定風量弁17による給気に対する副排気ダクト19の可変風量弁20の差圧コントローラ22による差圧制御により、風量補償室5は、差圧検出器21で検出される外気圧Pに対して、設定室圧に維持される。そしてこの設定室圧は、図示例にあっては、風量補償室5から各制御対象室4への一方向流れの気流Sが得られるように、風量補償室5の室圧Pbが各制御対象室4の室圧Paよりも高く設定される。この設定室圧により、各制御対象室4の室圧Paを維持すべく、これら制御対象室4内の風量変動を抑制する気流Sを、制御対象室4と風量補償室5との間で一方向流れに制御するために、各制御対象室4と風量補償室5相互間で保持すべき差圧が確保されることになる。
【0022】
そして、制御対象室4へと流れ出す気流Sによって常に室圧Pbが変動し得る、殊に室圧Pbが低くなる方向に変動する風量補償室5は、可変風量弁20を有する副排気系6bが外気圧Pを基準として差圧制御されることによって、その室圧Pbが設定室圧となるように制御される。また、各制御対象室4で風量変更があった場合には、各制御対象室4それぞれの風量制御弁1,2によって室圧Paを維持するように制御がなされるが、この風量変更に伴って生じ得る風量変動も、風量補償室5からの気流Sによって安定化されるようになっている。
【0023】
ところで、本実施形態にかかる室間気流制御システムでは、制御対象室4の室圧Paを、風量を直接制御する風量制御弁1,2によって厳密かつ適切に制御する一方で、制御対象室4の室圧Paを維持すべくそれらの風量変動を抑制する気流Sを一方向流れに制御するためにこれら制御対象室4に対して差圧が保持される風量補償室5の副給排気系6を、差圧検出器21や差圧コントローラ22からなる差圧制御系を用いて、外気圧Pに対し差圧制御するようにしたので、厳密な制御は必要がない風量補償室5に関しては、副給気ファン15および定風量弁17による給気量範囲での給排気制御とするようにして、適当な精度での合理的な室圧コントロールを確保できるとともに、過大な風量で室圧Pbが制御され得るというエネルギロスの発生を完全に防止することができる。
【0024】
また、差圧制御、すなわち圧力制御であることから副給排気系6の一方は定風量弁17で装置構成できるので、高価な風量制御弁を給気側および排気側双方に用いる風量制御と異なり、制御が容易であるとともに、設備コストも安価にすることができる。
【0025】
そしてこのような室間気流制御システムを、例えば高清浄度の維持が求められるクリーンルームや、また汚染物質拡散防止が求められる動物飼育室等を制御対象室4とする高度安全施設などに適用することで、当該施設を安全に稼働することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる室間気流制御システムの好適な一実施形態を説明するための構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1,2 風量制御弁
3 給排気系
4 制御対象室
5 風量補償室
6 副給排気系
P 外気圧
Pa 制御対象室の室圧
S 気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風量を直接制御する風量制御弁によって給排気系による給排気が個別に制御される複数の制御対象室の室圧を維持すべく、これら制御対象室内の風量変動を抑制する気流を、これら制御対象室に接続した風量補償室との間で一方向流れに制御するために、これら制御対象室と該風量補償室相互間に差圧を保持するようにした室間気流制御システムにおいて、
上記風量補償室へ給排気する副給排気系を、外気圧に対し差圧制御するようにしたことを特徴とする室間気流制御システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−52883(P2006−52883A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233940(P2004−233940)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】