説明

害虫防除用組成物、害虫防除器具、並びに、害虫防除方法

【課題】害虫の侵入路等への塗布が容易で且つ長期間にわたって害虫防除・忌避効果が持続可能な害虫防除用組成物等を提供する。
【解決手段】害虫防除用組成物7は、(A)グリコール類又はトリオール類、及び(B)増粘剤、を主たる成分として含有する粘調性かつ水性の基剤と、当該基剤に保持された殺虫成分とを有するものであり、ゲル状或いは粘調性の性状を有している。害虫防除用具の吐出部5から吐出された害虫防除用組成物7は畝状又は棒状の形状を保っており、盛った状態で塗布可能である。害虫防除用組成物7は塗布した場所から流れ出したり、塗布した場所に染みこんだりすることなく、少なくとも数週間は畝状又は棒状の状態を保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除用組成物、害虫防除器具、並びに、害虫防除方法に関し、さらに詳細には、害虫の侵入路等への塗布が容易で且つ長期間にわたって効果が持続可能な害虫防除用組成物、当該組成物を有する害虫防除器具、並びに、当該組成物を利用した害虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫の防除を目的として、各種の害虫防除剤や害虫防除用具が開発されている(例えば、特許文献1〜3)。ベランダ等の屋外から屋内に害虫が侵入することを阻止する手段としては、ベランダ等と屋内との境界に、害虫防除剤を塗布する方法がある。例えば、水性の液体害虫防除剤を害虫の侵入路となる前記境界に塗布し、害虫の侵入を阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110958号公報
【特許文献2】特開2006−89467号公報
【特許文献3】特開2004−290144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、コンクリート製のベランダ等に水性の液体害虫防除剤を塗布すると、塗布した場所に害虫防除剤が染み込むこととなる。そのため、コンクリート表面に残存する害虫防除剤の量が少なくなり、害虫防除効果が十分に発揮できないおそれがある。また、塗布した場所に染み込まない場合でも、塗布した場所から流れ出してしまうおそれがある。一方、油性の害虫防除剤は、使用後に跡や染みが残りやすいので、家屋を汚してしまう問題がある。さらに、油性の害虫防除剤はべた付きやすく、使いにくいという問題もある。さらに、粉剤の場合も使用後に残留することから、家屋を汚してしまう問題がある。
【0005】
上記した現状に鑑み、本発明は、害虫の侵入路等への塗布が容易で且つ長期間にわたって害虫防除・忌避効果が持続可能な害虫防除用組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、
(A)グリコール類又はトリオール類、及び
(B)増粘剤、
を主たる成分として含有する粘調性かつ水性の基剤と、当該基剤に保持された殺虫成分とを有することを特徴とする害虫防除用組成物である。
【0007】
本発明は害虫防除用組成物に係るものであり、グリコール類又はトリオール類と増粘剤とを主たる成分として含有する粘調性かつ水性の基剤に、殺虫成分が保持されたものである。本発明の害虫防除用組成物においては、基剤がグリコール類又はトリオール類を主たる成分として含むので、液体成分の蒸発が極めて緩やかである。そのため、塗布後に基剤が短時間で減少・収縮してしまうおそれがなく、塗布した場所に長期間にわたって湿状態のまま存在することができる。その結果、害虫防除・忌避効果を長期間にわたって持続することができる。また、基剤が増粘剤を含むので、粘調性を有すると共にある程度の保形性を備えている。そのため、通常の液状の殺虫用組成物とは異なり、所望場所に盛るように塗布することができ、塗布場所への定着性がよい。その結果、塗布した場所から流れ出たり、塗布した場所に染みこむことがなく、害虫防除・忌避効果を安定的に持続することができる。さらに、基剤がグリコール類又はトリオール類を主たる成分とするので、使用終了後(完全蒸発後)に痕跡(固形物等)が残りにくく、建物等を不要に汚すことがない。
【0008】
(A)グリコール類又はトリオール類は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種が、好ましく採用される(請求項2)。
【0009】
増粘剤として、合成ポリマー又は増粘多糖類が、好ましく採用される(請求項3)。
【0010】
(A)グリコール類又はトリオール類の含量は、5〜80重量%であることが好ましい(請求項4)。
【0011】
増粘剤の含量は、0.05〜5.0重量%であることが好ましい(請求項5)。
【0012】
25℃における粘度が5〜700Pa・sであることが好ましい(請求項6)。
【0013】
殺虫成分として、ピレスロイド系化合物が好ましく採用される(請求項7)。
【0014】
ピレスロイド系化合物は、フェノトリンであることが好ましい(請求項8)。
【0015】
請求項9に記載の発明は、容器本体と当該容器本体に連通する吐出口とを備えた容器に、請求項1〜8のいずれかに記載の害虫防除用組成物が充填されてなり、前記害虫防除用組成物を吐出口から圧出して所望の場所に塗布可能であることを特徴とする害虫防除器具である。
【0016】
本発明は害虫防除器具に係るものであり、容器本体と当該容器本体に連通する吐出口とを備えた容器に、本発明の害虫防除用組成物が充填されている。そして、当該害虫防除用組成物を吐出口から圧出して所望の場所に塗布可能である。本発明の害虫防除器具によれば、吐出口から害虫防除用組成物を圧出して所望の場所に塗布できるので、害虫防除用組成物を容易かつ確実に塗布することができる。また、塗布作業時において害虫防除用組成物に直接触れる可能性が低く、取扱い上の安全性も高い。
【0017】
請求項10に記載の発明は、容器本体は可撓性であり、容器本体を押圧することにより前記害虫防除用組成物を圧出させるものであることを特徴とする請求項9に記載の害虫防除器具である。
【0018】
本発明の害虫防除器具は、可撓性の容器本体を押圧することにより、害虫防除用組成物を圧出させるものである。かかる構成により、害虫防除用組成物をさらに容易かつ確実に塗布することができる。さらに、取扱い上の安全性もより高い。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の害虫防除用組成物を、害虫の侵入場所に塗布することを特徴とする害虫防除方法である。
【0020】
また請求項12に記載の発明は、請求項9又は10に記載の害虫防除器具を用いて、前記害虫防除用組成物を害虫の侵入場所に塗布することを特徴とする害虫防除方法である。
【0021】
本発明は害虫防除方法に係るものであり、本発明の害虫防除用組成物を害虫の侵入場所に塗布することを特徴とする。本発明の害虫防除方法によれば、長期間にわたって安定的に害虫防除を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の害虫防除用組成物によれば、塗布後に基剤が短時間で減少・縮小してしまうおそれがなく、また、塗布した場所への定着性がよいので、害虫防除・忌避効果を安定的に持続できる。さらに、使用終了後に固形物等の痕跡が残りにくく、建物等を不要に汚すことがない。
【0023】
本発明の害虫防除器具によれば、害虫防除用組成物を容易かつ確実に塗布することができ、取扱い上の安全性も高い。
【0024】
本発明の害虫防除方法によれば、長期間にわたって安定的に害虫防除を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る害虫防除器具を示す斜視図である。
【図2】図1の害虫防除器具の使用方法を説明する斜視図である。
【図3】実施例で行った試験の実施方法を説明する説明図であり、(a)は樹脂性容器に2つの誘引源を設置した状態を示す説明図、(b)は誘引源の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の害虫防除用組成物は、
(A)グリコール類又はトリオール類、及び
(B)増粘剤、
を主たる成分として含有する粘調性かつ水性の基剤と、当該基剤に保持された殺虫成分とを有するものである。
【0027】
本発明の害虫防除用組成物は、(A)グリコール類又はトリオール類、を主たる成分の1つとする。グリコール類又はトリオール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール類又はトリオール類は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。グリコール類又はトリオール類の含量としては特に限定はないが、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。
【0028】
本発明の害虫防除用組成物は、(B)増粘剤、を主たる成分の1つとする。増粘剤としては、例えば、医薬品、食品、化粧品等の分野で一般的に用いられているものを採用することができる。具体例としては、カルボキシビニルポリマー、アクリレーツ/アクリル酸クロスポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成ポリマーや、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム等の増粘多糖類、などを挙げることができる。これらの増粘剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また本発明の害虫防除用組成物における増粘剤の含量としては、用いる増粘剤の種類等によって適宜選択すればよく、特に限定はないが、通常0.05〜5.0%、好ましくは0.05〜3.0重量%、より好ましくは0.1〜2.0重量%である。
【0029】
本発明の害虫防除用組成物には、必要に応じて水性の溶媒が用いられる。当該溶媒はグリコール類又はトリオール類と任意に混和するものであればよく、その代表例は水である。他の例としては、エタノール、プロパノールが挙げられる。
【0030】
本発明の害虫防除用組成物に採用される殺虫成分としては、防除対象とする害虫の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ピレスロイド系化合物が好ましく採用される。ピレスロイド系化合物の具体例としては、天然ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、シフェノトリン、プラレトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、トラロメトリン、トランスフルスリン、エントペントリン、イミプロトリン等が挙げられる。また、殺虫成分は蒸散性と非蒸散性のいずれのものでもよい。なお、非蒸散性のものの場合には、害虫防除用組成物に害虫が接触することにより、害虫の防除・忌避が達成される。
殺虫成分の含量は、殺虫成分の種類によって適宜選択すればよいが、通常は0.001〜2.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%である。
なお、油性の殺虫成分の場合には、乳化剤を用いることにより、本発明の害虫防除用組成物の殺虫成分として採用することができる。乳化剤としては、アニオン系やノニオン系の界面活性剤を用いることができる。
【0031】
本発明の害虫防除用組成物には、必要に応じて、殺虫効果補強剤を含有させてもよい。殺虫効果補強剤の例としては、ジノテフラン、クロチアニジン、等が挙げられる。殺虫効果補強剤の含量としては、例えば、0.005〜1.0重量%の範囲とすることができる。
【0032】
本発明の害虫防除用組成物には、必要に応じて、忌避効果補強剤を含有させてもよい。殺虫効果補強剤の例としては、ディート(ジエチルトルアミド)、ヒノキチオール、レモンユーカリ等が挙げられる。忌避効果補強剤の含量としては、例えば、0.005〜1.0重量%の範囲とすることができる。
【0033】
本発明の害虫防除用組成物には、必要に応じて、さらにpH調節剤、金属カチオン、着色剤、紫外線吸収剤、安定化剤(酸化防止剤)、誤飲防止剤、防腐・防カビ剤等を含有させてもよい。
【0034】
pH調節剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ;トリエタノールアミン等の有機アミン、が挙げられる。なお、pH調節剤は、本発明の害虫防除用組成物が弱酸性〜中性付近となるように、適宜添加される。
【0035】
金属カチオンの例としては、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が挙げられる。本発明の害虫防除用組成物には、これらの塩がゲル化開始剤、ゲル化促進剤として適宜添加される。
【0036】
着色剤としては、水性のものが適宜使用される。着色剤の含量としては、例えば、0.001〜1.0重量%とすることができる。
【0037】
紫外線吸収剤の例としては、サリチル酸フェニル;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチル−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンズトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート化合物、等が挙げられる。紫外線吸収剤の含量としては、例えば、0.1〜2.0重量%とすることができる。
【0038】
安定化剤(酸化防止剤)の例としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(TBMTBP)、トリフェニルホスファイト、等が挙げられる。酸化防止剤の含量としては、例えば、0.01〜2.0重量%とすることができる。
【0039】
誤飲防止剤の例としては、安息香酸デナトニウムが挙げられる。誤飲防止剤の含量としては、例えば、0.01〜10ppmとすることができる。
【0040】
防腐・防カビ剤の例としては、パラベン類、オルトフェニルフェノール(OPP)、ノルビン酸塩、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(商品名:プロキセル、特にプロキセルGXL,プロキセルLVなど)等が挙げられる。防腐・防カビ剤の含量としては、例えば、0.005〜1.0重量%とすることができる。
【0041】
本発明の害虫防除用組成物の粘度(25℃)は、5〜700Pa・s(パスカル・秒)であることが好ましい。特に、壁等の垂直面に塗布した場合でも容易に落下することのない定着性を発揮させるために、10〜500Pa・sがより好ましく、100〜500Pa・sがさらに好ましい。
【0042】
本発明の害虫防除用組成物を製造する方法としては、(A)グリコール類又はトリオール類と、(B)増粘剤と、殺虫成分とを混和するだけでよく、必要に応じて、水等の溶媒やpH調整剤等の他の成分を添加してもよい。
【0043】
本発明の害虫防除用組成物は、例えば、チューブなどの内容物の押し出しが可能な容器に充填し、害虫の侵入を阻止したい場所(害虫の侵入路など)に塗布して使用することができる。例えば、非揮発性の殺虫成分を含有した本発明の害虫防除用組成物を、屋外と屋内の境界部分に帯状に塗布する。すると、屋内への侵入を試みる害虫は、帯状に盛り上がった前記害虫防除用組成物に接触して死亡又は退散するか、予め接触を回避する。結果として、害虫の屋内への侵入が阻止される。なお、後述する本発明の害虫防除器具を用いると、害虫防除用組成物の塗布作業を容易かつ確実に行うことができ、また取扱い上の安全性も高い。
【0044】
本発明の害虫防除用組成物の使用場所(塗布場所)としては、害虫の侵入路となり得る場所全てが対象となる。例えば、屋外(ベランダ、軒先等)と屋内の境界部分に塗布して使用することができる。なお上述したように、本発明の害虫防除用組成物は塗布場所への定着性がよく、ベランダ等に塗布しても流れ出たり染みこんだりすることなく、盛った状態で存在することができる。
【0045】
本発明の害虫防除用組成物による防除・忌避の対象となる害虫の例としては、ゴキブリ類、アリ類、カメムシ類、ダンゴムシ類、クモ類、ヤスデ類、ムカデ類、ゲジ類、燐翅目の幼虫(毛虫)、等が挙げられる。
【0046】
次に、本発明の害虫防除器具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0047】
図1に示す害虫防除器具1は、容器2に本発明の害虫防除用組成物7が充填されてなるものである。容器2は、透明又は半透明の容器本体3と、吐出部5とを有する。容器本体3はポリエチレン等の柔軟性の素材からなり、可撓性である。容器本体3の容量は200〜400mL程度である。
【0048】
吐出部5は容器本体3の開口部分に設けられている。吐出部5は管状又は中空円錐状であり、容器本体3と連通している。そして、容器本体3の胴部を押圧することにより、容器本体3に充填されている害虫防除用組成物7を吐出部5の開口6から圧出させることができる。開口6の形状は直径3〜8mm程度の円形であるが、その大きさや形状は、使用場所や使用量に応じて適宜設定することができる。害虫防除器具1の非使用時には、吐出部5の開口6は図示しない蓋で密閉されている。
【0049】
害虫防除器具1を使用する場合には、まず、害虫防除用組成物7を塗布したい場所(例えば、ベランダと屋内との境界部分)に吐出部5の先端(開口6)を軽く当てる。次に、容器本体3の腹部を押圧して害虫防除用組成物7を開口6から圧出させながら、害虫防除器具1をゆっくり移動させる。例えば、ベランダと屋内との境界部分に塗布する場合には、境界線に沿ってゆっくり移動させる。これにより、図2に示すように、開口6から吐出された害虫防除用組成物7が畝状又は棒状の形状を保って、換言すれば「盛った」状態で、所望場所(図2の例では角部)に塗布される。このとき、害虫防除用組成物7はゲル状或いは粘調性の性状を有しているので、塗布した場所から流れ出したり、塗布した場所に染みこんだりすることなく、少なくとも数週間は「盛った」状態を保持する。
【0050】
図1に示した実施形態では、可撓性の容器本体3の胴部を押圧して害虫防除用組成物7を圧出させる構成を示したが、他の構成を採用してもよい。例えば、筒状の部材で容器本体3を作製し、筒の底部から害虫防除用組成物7を押して、吐出部5から押し出す構成としてもよい。
【0051】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
以下の実施例において、「%」は特に断らない限り「重量%」を指す。
【0053】
〔実施例1〕
以下の組成からなる害虫防除用組成物[1]を調製した。
グリセリン 50%
カルボキシビニルポリマー 0.5%
フェノトリン 0.1%
乳化剤 0.3%
防腐剤 0.1%
水酸化ナトリウム 少量
脱イオン水 残部
【0054】
調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて移動しながら圧出すると、図2のような畝状又は棒状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0055】
〔実施例2〕
フェノトリンを0.01%、乳化剤を0.03%とする以外は実施例1と同様にして、害虫防除用組成物[2]を調製した。調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて圧出すると、図2のような畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0056】
〔実施例3〕
以下の組成からなる害虫防除用組成物[3]を調製した。
グリセリン 50%
カルボキシビニルポリマー 0.4%
キサンタンガム 0.2%
フェノトリン 0.1%
乳化剤 0.3%
防腐剤 0.1%
水酸化ナトリウム 少量
脱イオン水 残部
【0057】
調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて移動しながら圧出すると、畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0058】
〔実施例4〕
カルボキシビニルポリマー0.5%に代えて、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー0.5%とする以外は実施例1と同様にして、害虫防除用組成物[4]を調製した。調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて圧出すると、図2のような畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0059】
〔評価試験〕
クロヤマアリ(供試虫)約20頭を、図3(a)に示す樹脂性容器10(縦:約60cm、横:約37cm、深さ:約8cm)内に放飼し、水を含ませた脱脂綿を与えて管理した。なお、樹脂性容器の側面には、供試虫の逃亡防止のため、樹脂粉末を塗布した。24時間後、樹脂性容器10内の2箇所(A区,B区)に、供試虫の誘引源16を設置した。供試虫の誘引源16としては、図3(b)に示すように、ポリカップのフタ(直径約9mm)からなる皿の上に、紙シェルター11、動物用固形飼料12、及び、水を含ませた脱脂綿15を置いたものを用いた。
【0060】
図3(a)に示すように、害虫防除用組成物7を、B区の誘引源16の周囲を囲むように塗布し、約25℃の条件で管理した。害虫防除用組成物7として、害虫防除用組成物[1](実施例1)又は害虫防除用組成物[2](実施例2)を用いた。放飼7日後に、A区とB区の誘引源16に寄生した供試虫の数を調査した。その結果、A区には大半の供試虫が寄生したが、B区に寄生した供試虫の数は害虫防除用組成物[1],[2]のいずれの場合もゼロであった。
【0061】
〔実施例5〕
以下の組成からなる害虫防除用組成物[5]を調製した。
グリセリン 30%
カルボキシビニルポリマー 0.5%
フェノトリン 0.1%
水酸化ナトリウム 少量
脱イオン水 残部
【0062】
調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて移動しながら圧出すると、畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0063】
〔実施例6〕
グリセリン50%に代えてエチレングリコール30%とする以外は実施例1と同様にして、害虫防除用組成物[6]を調製した。調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて圧出すると、図2のような畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0064】
〔実施例7〕
グリセリン50%に代えてポリエチレングリコール(平均分子量:200)30%とする以外は実施例1と同様にして、害虫防除用組成物[7]を調製した。調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて圧出すると、図2のような畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0065】
〔実施例8〕
グリセリン50%に代えてジプロピレングリコール30%とする以外は実施例1と同様にして、害虫防除用組成物[7]を調製した。調製した組成物は無色透明のゲル状であった。また、図1に示す容器を用いて圧出すると、図2のような畝状の形状を保ち、流れ出したりその場に染みこんだりすることはなかった。さらに、畝状又は棒状の形状は少なくとも数週間保持されていた。
【0066】
〔粘度の測定〕
B型粘度計(東機産業株式会社製,RB85L型)を用い、25℃にて、実施例1の害虫防除用組成物[1]の粘度を測定した。その結果、粘度は458Pa・sであった。
【符号の説明】
【0067】
1 害虫防除器具
2 容器
3 容器本体
5 吐出部
7 害虫防除用組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリコール類又はトリオール類、及び
(B)増粘剤、
を主たる成分として含有する粘調性かつ水性の基剤と、当該基剤に保持された殺虫成分とを有することを特徴とする害虫防除用組成物。
【請求項2】
(A)グリコール類又はトリオール類は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除用組成物。
【請求項3】
(B)増粘剤は、合成ポリマー又は増粘多糖類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫防除用組成物。
【請求項4】
(A)グリコール類又はトリオール類の含量は、5〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の害虫防除用組成物。
【請求項5】
(B)増粘剤の含量は、0.05〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の害虫防除用組成物。
【請求項6】
25℃における粘度が5〜700Pa・sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の害虫防除用組成物。
【請求項7】
殺虫成分は、ピレスロイド系化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の害虫防除用組成物。
【請求項8】
ピレスロイド系化合物は、フェノトリンであることを特徴とする請求項7に記載の害虫防除用組成物。
【請求項9】
容器本体と当該容器本体に連通する吐出口とを備えた容器に、請求項1〜8のいずれかに記載の害虫防除用組成物が充填されてなり、前記害虫防除用組成物を吐出口から圧出して所望の場所に塗布可能であることを特徴とする害虫防除器具。
【請求項10】
容器本体は可撓性であり、容器本体を押圧することにより前記害虫防除用組成物を圧出させるものであることを特徴とする請求項9に記載の害虫防除器具。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の害虫防除用組成物を、害虫の侵入場所に塗布することを特徴とする害虫防除方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の害虫防除器具を用いて、前記害虫防除用組成物を害虫の侵入場所に塗布することを特徴とする害虫防除方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−42638(P2011−42638A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193104(P2009−193104)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【Fターム(参考)】