説明

害虫駆除用エアゾール組成物

【課題】引火事故や製品のコストに対してより配慮された成分を用い、かつ十分な害虫駆除効果を発揮できる害虫駆除用エアゾール組成物を提供すること、並びにかかる害虫駆除用エアゾール組成物を用いた害虫駆除方法を提供すること。
【解決手段】害虫駆除薬剤及び液化石油ガスを含有してなる害虫駆除用エアゾール組成物であって、害虫駆除薬剤を含む薬液の体積と液化石油ガスの体積との比〔(薬液の体積)/(液化石油ガスの体積)〕が70/230〜0.001/299.999である、害虫駆除用エアゾール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射剤として液化石油ガス(LPG)を用い、LPGの比率を高めることによる害虫の冷却効果、及び害虫駆除薬剤の濃度の増加による害虫の駆除効果により、害虫の効果的な駆除を実現した害虫駆除用エアゾール組成物に関する。さらに本発明は、かかるエアゾール組成物を用いる害虫駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より公知の害虫防除用エアゾール組成物であって、噴射した塗布面上で噴射物が氷結/凝固するエアゾール組成物の技術としては、例えば以下の文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−286805号公報
【特許文献2】特開2004−168948号公報
【0004】
特許文献1では、使用時に害虫に急激なショックを与えて弱らせ、害虫を動けないようにして害虫を薬剤の適用場所に止めて、特定量以上の液化ペンタン若しくは薬剤を有効作用させることにより速効性、致死性が高い害虫防除用エアゾール組成物の技術が開示されている。
【0005】
特許文献2では、DME(ジメチルエーテル)及び水を含有し、DME中に水が溶解しており、かつ均一相を形成するエアゾール組成物であって、DMEの気化熱により水とDMEとの凍結体を形成するエアゾール組成物の技術が開示されている。
【0006】
冷却機能を有する害虫用エアゾール組成物は、特許文献1のごとく、相対的に引火性の高いイソペンタン等が使用されており、室内使用時には特に危険を伴うといった課題がある。近年、室内使用における引火事故が発生し、安全対策が最優先の課題となっている。
【0007】
特許文献2では、相対的に引火性の弱いDMEが使用されているが、水による溶解を必要とする。そのために、容器内面に酸化防止用のコーティングを施す必要があり、結果的にコストアップにつながる。さらにエアゾール組成物の容器内の圧力が比較的高いため、特に小型で軽量の害虫に対して噴射した時には、害虫が吹き飛ばされることにより、薬剤が害虫に十分に付着しないおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、引火事故や製品のコストに対してより配慮された成分を用い、かつ十分な害虫駆除効果を発揮できる害虫駆除用エアゾール組成物を提供することにある。さらに本発明の課題は、小型で軽量の害虫に対しても十分な害虫駆除効果を発揮できる、害虫駆除用エアゾール組成物を用いた害虫駆除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは上記課題を解決すべく、従来より噴射剤として使用されている、イソペンタンよりも安全性が高いLPGを用いて多種多様な要素について検討した。その結果、本発明者らは、噴射剤としてのLPGと、害虫駆除薬剤及び溶剤等の液体成分との関係に着目し、両成分の比率を特定の割合の範囲とすることで、意外にも、駆除対象の害虫を冷却する作用が奏されるだけではなく、エアゾール組成物における害虫駆除薬剤の量を低減できることや、エアゾール容器内の内圧を低くできることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 害虫駆除薬剤及び液化石油ガスを含有してなる害虫駆除用エアゾール組成物であって、害虫駆除薬剤を含む薬液の体積と液化石油ガスの体積との比〔(薬液の体積)/(液化石油ガスの体積)〕が70/230〜0.001/299.999である、害虫駆除用エアゾール組成物;並びに
〔2〕 前記〔1〕に記載の害虫駆除用エアゾール組成物が駆除すべき害虫に付着するように噴射する、害虫駆除方法;に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の害虫駆除用エアゾール組成物は、より安全性が高く、害虫駆除薬剤の量の低減が可能で、冷却による害虫の駆除もできるという効果を奏する。さらに本発明の害虫駆除方法は、小型で軽量の害虫に対しても、それらの吹き飛びが少ない駆除方法が提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、液ガス比とKT50値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<害虫駆除用エアゾール組成物>
本発明の害虫駆除用エアゾール組成物は、害虫駆除薬剤及び液化石油ガスを含有してなる。
【0014】
本発明における害虫駆除薬剤としては、ジョチュウギクの抽出成分である天然ピレトリンが好ましい。天然ピレトリンは各種のアリに対する駆除効果及び忌避効果を有すると共に、人畜に対する安全性が高く、しかもマイルドな芳香を示すため、好ましい。さらにはネオピナミン、ピナミンフォルテ等のピレスロイド系の薬剤、プロポクサー、カルバリル等のカーバメイト系の薬剤、及びフェニトロチン、DDVP等の有機リン系の薬剤等も本発明における害虫駆除薬剤に包含される。これらの成分を単独で又は2種以上を混合して害虫駆除薬剤として用いることができる。
【0015】
害虫駆除用エアゾール組成物における害虫駆除薬剤の含有量としては、エアゾール組成物100mL中0.001〜10.0gが好ましく、0.01〜1.0gがより好ましく、0.05〜0.5gがさらに好ましい。
【0016】
本発明においては、害虫駆除薬剤をより均一に噴射する観点から、薬液として溶剤を用いてもよい。溶剤としては、例えばヘキサン、3,3,4−トリメチルノナン、シクロヘキサン、灯油(ケロシン)、ナフサ、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン等の石油系溶剤;ジクロロエタン、トリクロロエタン等の塩化炭化水素;エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類及びエーテル誘導体等が挙げられる。これらの成分を単独で又は2種以上を混合して溶剤として用いることができる。
【0017】
本発明においては、ピペロニルブトキサイド等の本発明の技術分野で用いられる公知の共力剤;シダーウッドオイル等の本発明の技術分野で用いられる公知の忌避剤;本発明の技術分野で用いられる公知の酸化防止剤等をエアゾール組成物に配合してもよい。
【0018】
共力剤、忌避剤、酸化防止剤等の「その他の成分」の含有量としては、エアゾール組成物100mL中0.01〜10.0gが好ましく、0.05〜5.0gがより好ましく、0.1〜1.0gがさらに好ましい。
【0019】
本明細書において、薬液とは、害虫駆除薬剤を含む液体をいい、必要に応じて配合されてもよい溶剤又は「その他の成分」を含み得る。
【0020】
そして、本発明の特徴の一つとして、エアゾール組成物の噴射剤としてLPGを用いることである。本明細書において、LPGはプロパン、イソプロパン、ノルマルブタン等の低級炭化水素を主成分とし、いわゆる液化石油ガスの他に液化天然ガスも包含する。本発明において、LPGは噴射剤として用いられる。LPGの引火性は比較的低いため、安全性の観点から好ましい。本発明においては、イソペンタン等の比較的引火性が強い噴射剤を一切使用する必要がない。
【0021】
本発明においては、LPGを噴射剤として作用するだけではない。LPGの比率を高めること(例えば、害虫駆除薬剤等の量を変更せずに固定し、溶剤の量を低減し、LPGの量を増加させること)により、噴射後のエアゾール組成物が害虫に付着した際に、その気化熱により付着面を瞬時に冷却(−30〜−20℃程度)する冷却剤としても作用する。
【0022】
薬液及びLPGの量としては、害虫駆除薬剤を含む薬液の体積とLPGの体積との比〔(薬液の体積)/(液化石油ガスの体積):「液ガス比」と略記する〕が70/230〜0.001/299.999を満たす量とし、好ましくは70/230〜2.4/297.6を満たす量とし、より好ましくは70/230〜10/290を満たす量とし、さらに好ましくは70/230〜20/280を満たす量とし、より好ましくは45/255〜20/280を満たす量とする。かかる範囲の液ガス比とすることで、害虫を凍結させて駆除する効果(凍殺効果)及び害虫駆除薬剤により害虫を駆除する効果(薬剤による駆除効果)の両者を効果的に両立させることができる。即ち、凍殺効果を発揮させる観点からは、液化石油ガスの体積の比率が230以上であることが好ましく、薬剤による駆除効果を発揮させる観点からは、液化石油ガスの体積の比率が299.999以下であることが好ましい。液ガス比の薬液の体積に関して、本発明における薬液としては、害虫駆除薬剤単独からなる態様、害虫駆除薬剤及び溶剤から構成される態様、害虫駆除薬剤及び共力剤等の「その他の成分」から構成される態様、さらには害虫駆除薬剤、溶剤及び共力剤等の「その他の成分」から構成される態様等が挙げられるが、これらのいずれの態様においても、液ガス比が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0023】
LPGの比率を高めることにより、十分なる冷却(−30℃程度)効果を生じさせ、かつ薬剤濃度((薬剤の量)/(薬剤+溶剤+共力剤+忌避剤の量))が実質的に上昇する。その結果、少量の薬剤であっても害虫に対する駆除効果を維持でき、しいてはコストダウンを図ることができる。さらには、溶剤はLPGよりも一般に高価であることから、溶剤の量を減らすことができる。この観点からも、エアゾール組成物の商品としての全体的なコストの削減を図ることができる。さらには溶剤の量を従来のエアゾール組成物よりも低減できるため、噴射後の溶剤による床面、壁面等の汚れの発生も軽減できる。
【0024】
LPGの気化熱による冷却作用によって、全面的に噴射剤が付着した害虫を瞬時に冷却致死至らしめることができるが、部分的に噴射剤が付着し、凍殺できない害虫においても、冷却作用により冷却麻痺した状態で薬剤が作用していく。このことから、本発明は従来の技術と比較しても、速効性、致死率共に高い。LPGの比率を高めることにより、冷却作用による凍殺効果の実現と薬剤濃度の上昇によって、薬剤の量を増やすことなくアリの殺虫効果を維持することが可能となる。
【0025】
LPG自体も他の噴射剤として使用されているDME等と比較して相対的に安価であることから、本発明の構成を採用することにより、コストダウンを達成することができる。
【0026】
本明細書において、駆除対象害虫とは特に限定されるものではないが、ムカデ、カメムシ等の不快害虫や、より小型で軽量のアリが挙げられる。本発明においては、エアゾール容器内の圧力が小さいことから駆除対象の害虫の吹き飛びが抑制され、その結果より確実に害虫駆除薬剤を害虫に付着させることができる。そのため、小型で軽量の害虫に対して特に有効である。従って、対象害虫としてはアリがより好ましい。アリとしては特に限定されないが、例えばアミメアリ、クロアリ、アルゼンチンアリが挙げられる。
【0027】
本発明のエアゾール組成物の噴射の際の吐出形態として、霧状、泡状、液滴状等特に限定されないが、これらのなかでも、駆除対象の害虫への付着量の観点から、霧状又は液滴状が好ましい。
【0028】
本発明に用いられるエアゾール容器としては、本発明分野で公知の容器を用いることができる。本発明の害虫駆除用エアゾール組成物では水を用いる必要がないので、容器内部に酸化防止用のコーティングを施す必要はない。
【0029】
本発明においては、害虫の駆除効果を弱めることなく従来のエアゾール組成物DMEよりも圧力を低くすることができるため、噴射時に小型で軽量な害虫の吹き飛びを抑制することができるため、害虫に対してより確実に害虫駆除薬剤を付着させることができる。その結果、駆除効果を高めることができる。
【0030】
本発明のエアゾール組成物は、例えば次のような方法で製造することができる。即ち、害虫駆除薬剤及び必要に応じて配合される「その他の成分」を溶剤で溶解させて原液を調製し、その原液をエアゾール容器内に充填する。次いでLPGを充填することによって、本発明のエアゾール組成物が製造される。
【0031】
<害虫駆除方法>
本発明の害虫駆除方法は、本発明の害虫駆除用エアゾール組成物が駆除すべき害虫に付着するように噴射する方法である。噴射時間としては特に限定されないが、例えば0.1〜5.0秒間が好ましい。害虫とエアゾール容器の吐出部との間隔としては特に限定されないが、例えば1〜80cmが好ましい。本発明の害虫駆除方法によれば、害虫に対する駆除効果が高いだけではなく、特にアリを吹き飛ばすことなく駆除することができ、しかも床面や壁面等への溶剤による汚れを軽減することができる。
【実施例】
【0032】
実施例及び比較例
ガラス製試験用エアゾール容器に、表1に記載の量の害虫駆除薬剤及び溶剤を入れ、バルブ(ステム孔径φ0.5mm−アンダータップ径1.5mm−ベーパータップ径0.3mm)をこの容器に取り付けた。次いで、この容器にバルブを通してLPGを充填し、全量を75mLとした。さらに、ノズル径0.8mmのキャップをこの容器に取り付け、表1に示す20種類の処方の害虫防除用エアゾール組成物を得た。表1において、処方1〜3、処方9〜11及び処方15〜17が比較例であり、処方4〜8、処方12〜14及び処方18〜20が実施例であった。それぞれのエアゾール組成物におけるエアゾール容器内の圧力を25℃にて測定したところ、いずれもほぼ0.27MPaであった。表1に、使用した害虫駆除薬剤、溶剤及びLPGの量、液ガス比(液体/LPG)並びに薬剤濃度を記載した。これらの処方において、害虫駆除薬剤としては天然ピレトリンを、溶剤としてはノルマルパラフィン(商品名:ネオチオゾール;中央化成株式会社製)を用い、共力剤としてはピペロニルブトキサイド、忌避剤としてはシダーウッドオイルを用いた。
【0033】
【表1】

【0034】
試験例1<薬剤による駆除効果の確認>
次の試験によって、各処方のエアゾール組成物における薬剤による駆除効果を確認した。
【0035】
直径約11cmの円形のろ紙を用意し、ろ紙のほぼ中央部に直径6cm、高さ6cmのガラスリングを置いた。次いで10匹のアミメアリをガラスリング内に投入した。次いで、上記のエアゾール組成物を、ろ紙上面から30cm上方に設置した。設置後、ガラスリングを取り去り、直ちにエアゾール容器のキャップのボタンを一定時間(1秒間)押し込むことにより、一定量のエアゾール組成物をアリ群に対して噴射し、噴射後のアリの様子を観察した。1種類の処方のエアゾール組成物について、3回試験を行った。
【0036】
薬剤(ピレトリン)による駆除効果の指標として、KT50の値〔秒〕を採用した。本明細書において、KT50値とは、噴射後の時間経過に伴うアリのノックダウン数に基づく値であり、半数のアリがノックダウンするまでの時間(秒)とした。アリのノックダウン状態とは、基本的にアリがひっくり返った状態又は痙攣静止となった状態とした。結果を表1に示す。さらに図1に、表1の結果に基づく液ガス比とKT50値との関係を表すグラフを示す。
【0037】
試験例2<凍殺効果の確認>
次の試験によって、各処方のエアゾール組成物による凍殺効果を確認した。
約27×27cmの正方形のコンクリート板と、上記の処方16及び処方18〜20のエアゾール組成物を用意した。次いで、1匹のアミメアリをコンクリート板の中央部に放ち、表2に記載の距離を隔てた上方から、噴射の中心にアリが入るように1.5秒間エアゾール組成物を噴射した。噴射後のアリの様子を観察し、さらには噴射直後のアリ近傍のコンクリート面の温度も測定した。1種類の処方のエアゾール組成物について、5回試験を行った。なお、試験時のコンクリート面の温度を31.0℃に設定した。
【0038】
凍殺効果の指標として、噴射直後の即死数を採用した。凍殺効果による即死状態とは、アリの動作が完全に停止した状態とした。結果を表2に示す。表2において、アリの即死数の表示は(即死したアリの数)/(試験したアリの数)とした。
【0039】
床面の種類を上記のコンクリート板に代えて、27×27cmの正方形の容器に深さ約5cmのマサ土を入れた土面を用いた以外は同様の操作によって、土面上での凍殺効果を確認した。なお、試験時の土面の温度を26.3℃に設定した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
試験例3<噴射後の溶剤による汚れの発生の確認>
処方5及び処方6のエアゾール組成物と、市販のエアゾール組成物について、噴射後の溶剤による床面への汚れの程度を確認した。
【0042】
プラスチック製の黒板に白色の紙を貼り付け、白色の紙に向けて30cmの距離から1秒間エアゾール組成物を噴射した。1分後に白色の紙を観察したところ、処方5及び処方6のエアゾール組成物においては、溶剤によるシミ等の汚れはほとんど無かった。一方、市販のエアゾール組成物においては、溶剤量が多いため、シミ等の汚れが確認できた。
【0043】
試験例1及び試験例2から、次のことが分かった。
表1のKT50値の結果から、液ガス比のLPGの比率が230以上である実施例の処方(4〜7、12〜14及び18〜20)では、LPGの比率が高くなるほどKT50値が小さくなることが分かった。特に、害虫駆除薬剤の量が少ない処方15〜20においては、図1にも示されるように、液ガス比のLPGの比率が230以上である処方18〜20におけるKT50値の減少が顕著であった。即ち、エアゾール組成物における害虫駆除薬剤の量が同じであっても、液ガス比を本発明の範囲に特定することにより、駆除効果をより高くすることができることが分かった。さらに言えば、処方18〜20の結果から、処方4〜7の半分の害虫駆除薬剤であっても、液ガス比を本発明の範囲に特定することにより、処方4〜7とほぼ同等の駆除効果を発揮させることができることが分かった。
【0044】
一方、表1の処方8(溶剤量は0にて、薬剤、共力剤、忌避剤からなる薬液は0.6mLの条件)においては、KT50は処方4より低く、駆除効果に優れていたことが分かったが、LPG比率が高いため、長時間の使用ではノズル部分が凍り、液だれが生じる傾向が見られた。
【0045】
さらに表2からは、液ガス比のLPGの比率が本発明の範囲よりも低い処方16では、噴射距離が20cmの場合のアリの即死数が低下し、冷却による床面の低温化も不十分であったことから、凍殺効果が十分ではないことが分かった。
【0046】
また、試験例1のいずれの処方においても、噴射によりアリがろ紙の外に吹き飛ぶことはなかった。このことは、本発明において噴射剤及び冷却剤としてLPGを利用することにより、エアゾール容器内の圧力をより低く、具体的には0.27MPa程度とすることができたことによるものと考えられる。即ち、本発明の構成により、エアゾール組成物の噴射による対象害虫の吹き飛び、特により小型で軽量なアリ等の吹き飛びを防止できることが可能となった。その結果、対象害虫に対して確実に害虫駆除薬剤を付着させることができ、高い駆除効果を実現することができた。
【0047】
さらに試験例3からは、本発明のエアゾール組成物は、従来品よりも溶剤の量を低減することができるため、溶剤による床面や壁面等への汚れを軽減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の害虫駆除用エアゾール組成物及び害虫駆除方法は、害虫、特に小型で軽量のアリの駆除に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫駆除薬剤及び液化石油ガスを含有してなる害虫駆除用エアゾール組成物であって、害虫駆除薬剤を含む薬液の体積と液化石油ガスの体積との比〔(薬液の体積)/(液化石油ガスの体積)〕が70/230〜0.001/299.999である、害虫駆除用エアゾール組成物。
【請求項2】
〔(薬液の体積)/(液化石油ガスの体積)〕が70/230〜2.4/297.6である、請求項1に記載の害虫駆除用エアゾール組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の害虫駆除用エアゾール組成物が駆除すべき害虫に付着するように噴射する、害虫駆除方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163399(P2010−163399A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8118(P2009−8118)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】