説明

家具類の転倒防止具

【目的】 家具や柱、壁または天井などにきずを付けることなく確実且つ簡単に家具を固定することができ、しかも、家具と家屋天井との間の隙間を収納スペースとして有効利用することができる。
【構成】 家屋の天井に接する天板12と家具類の天板外面に載置される底板13と側板14および背板15とを有して前面が開口した樹脂製箱体11と、前記底板外面に上下動可能に螺着された脚20とよりなる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は家具類の転倒防止具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、地震などで家具類が転倒することによる二次的災害を防ぐため、種々の転倒防止具が提案されている。
前記転倒防止具は、家具を部屋の壁や柱、床または天井に固定してその転倒を防ぐものが一般的である。
たとえば、前記転倒防止具として、断面L字形に形成された金具がある。この転倒防止具は、家具の天板と壁や柱、あるいは家具の側板と壁や柱に沿わせて配しビスなどで固定するようになっている。また、鎖などにより壁や柱と家具の天井とを連結し固定するものもある。
【0003】
さらに、出入り可能に摺接する二本の筒部材の内部にバネなどの弾性体を設け、該二本の筒部材を弾性的に連結したものも知られている。
この転倒防止具は前記家具の天板と天井との間の隙間にその筒を立てた状態で配置し、付勢された二本の筒部材を固定することにより、前記天板と天井を押圧して転倒を防ぐ。
【0004】
しかしながら、前記第一の転倒防止具にあっては、金具または鎖を固定するためのビス止めが必要で、家具や壁あるいは柱にきずがつくという問題がある。また、前記金具や鎖が外から見えるため見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
また、第二の転倒防止具にあっては、家具や壁などにきずをつけるという問題は解決されるが、外観上の問題がいまだ解消されないばかりか、前者の金具類と比較して構造が複雑であるので高価になるおそれがある。
【0006】
ところで、家屋の天井高さは部屋の造りなどにより異なっていることが多く、また家具の高さもその種類によって種々に異なることが多い。
そのため、家具の天板と天井との間には中途半端な空間が形成されることがある。このような空間には物などを置きにくくまた埃なども被りやすいため、無用のデッドスペースとなりがちであった。
また、前記空間に物品を置いても、地震などで家具上から滑り落ちて新たな災害の原因となることも考えられる。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
この考案はこのような問題をことごとく解決するために提案されたものであって、家具や柱、壁または天井などにきずを付けることなく確実且つ簡単に家具を固定することができ、しかも、家具と家屋天井との間の隙間を収納スペースとして有効利用することのできる二つの転倒防止具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、第一の考案は、家屋の天井に接する天板と家具類の天板外面に載置される底板と側板および背板とを有して前面が開口した樹脂製箱体と、前記底板外面に上下動可能に取り付けられた脚とよりなることを特徴とする家具類の転倒防止具に係る。
【0009】
前記脚は底板に上下動可能に螺着されたものとすることができる。また、前記樹脂製箱体の天板と底板間には棚板を設けることが望ましく、さらには、その棚板は、固定された棚板に代えてあるいは加えて、前記底板を覆う脱着可能なものを設けるのが望ましい。
【0010】
一方、第二の考案は、家具類の天板外面に載置される本体と、該本体上に所要数積み重ねられて最上位置のものが家屋の天井に接する補助体とよりなって、前記本体は、天板、底板、側板および背板を有して前面が開口した樹脂製箱体と、前記底板外面に上下動可能に取り付けられた脚とよりなり、前記補助体は、天板、底板、側板および背板を有して前面が開口した樹脂製箱体よりなることを特徴とする家具類の転倒防止具に係る。
【0011】
前記脚は底板に上下動可能に螺着されたものとすることができる。また、前記本体は、天板外面に凸部または凹部からなる連結位置決めを有し、一方、前記補助体は、天板外面および底板外面の前記本体天板の連結位置決めと対応する位置に、凸部または凹部からなる連結位置決めを有するのが好ましい。さらに、前記本体の天板と底板間には棚板を有し、またその棚板は、固定された棚板に代えてあるいは加えて、前記底板を覆う脱着可能なものを設けるのが望ましい。
【0012】
【作用】
第一の考案において、転倒防止具は前面の開口部を手前にして、家屋の天井と家具の天板板に載置される。その際、転倒防止具の脚を上下させることにより、転倒防止具の天板が家屋の天井に接する状態か、あるいは転倒防止具が家具の天板と家屋の天井を僅かに押圧するようにされる。それにより、地震などの揺れにより前記家具が転倒するのが防止される。
【0013】
また、前記転倒防止具内には前面の開口から物品を収納することができるため、家具と天井との間の空間を有効に利用できる。さらに、転倒防止具内に棚がある場合には、その棚によってより効率よく物品を有能できる。加えて、前記転倒防止具の底板を覆う脱着可能な棚板を設ければ、前記脚の端部が転倒防止具の底板から転倒防止具内に突出する場合でも、その脚端部を棚板が覆うことができるため、脚端部に邪魔されることなく物品を転倒防止具内に収納できる。しかも、脚が転倒防止具の底板に螺着され、転倒防止具内に突出する脚の端部を回して脚の上下を調節するような場合には、前記棚板を外して脚を転倒防止具内から回すことができるため、脚の上下調節が容易となる。
【0014】
第二の考案においては、家具の天板上に本体と補助体が積み重ねられて使用される。そのため、家具の天板と天井間の隙間が大なる場合でも、本体に積み重ねる補助体の数を調節することにより対応できる。さらに、本体の天板および補助体の底板と天板に、凸部または凹部からなる連結位置決めを有する場合には、本体と補助体、さらには補助体同士の位置決めおよび固定を正確に行なえるため、地震による家具の転倒防止のみならず、転倒防止具自体のずれも防止できる。なお、棚板および脱着可能な棚板の作用は、第一の考案と同様である。
【0015】
【実施例】
以下添付の図面に従ってこの考案を詳細に説明する。
図1は第一の考案の一実施例を示す斜視図、図2は図1の断面図、図3はその脚部分の作動を示す断面図、図4は本考案の転倒防止具の使用例を示す断面図、図5は本考案の他の例を示す斜視図、図6は第二の考案の一実施例を示す断面図である。
【0016】
図1および図2に示されるように、この考案の家具類の転倒防止具10は、前面が開口した樹脂製箱体11と脚20とからなり、家具類の天板上に天井と接するようにして載置される。
【0017】
樹脂製箱体11は、天板12と底板13と側板14と背板15とによって前面すなわち、家具などの正面側が開口した箱形状に形成されている。符号16はその開口部である。前記転倒防止具10を構成するに好適な樹脂としては、塩化ビニール、ABS樹脂など一般的な汎用樹脂が挙げられ、特に好ましくは前記樹脂内にガラス繊維などを添加混合してなる繊維強化プラスチックである。
【0018】
本実施例の転倒防止具10において、樹脂製箱体11の天板12と底板13間には棚板17が設けられている。この棚板17は前記樹脂製箱体11内部を水平に分割しており、樹脂製箱体11を収納ボックスとして使用する際の仕切りとして好適に用いられる。また、本例では、天板12と底板13との間で樹脂製箱体11内部を垂直に仕切る仕切り板18が設けられている。この仕切り板18は前記棚板17同様に、収納ボックスとしての仕切りとしても有効であるだけでなく、前記樹脂製箱体11の強度を高めるのに有効である。
【0019】
前記棚板17および仕切り板18は、樹脂製箱体11の大きさや要求される強度に応じて適当な数を設けることができる。さらに、本実施例において、前記棚板17の開口部側端縁19は、棚板17表面より高くなっており、樹脂製箱体11内に収納した物品が転落するのを防ぐようになっている。
【0020】
この樹脂製箱体11は、底板13の面積を家具の天板と略同一とするかあるいは樹脂製箱体11の複数個を並べて配置することにより家具天板と略同一の大きさとなるように構成すれば、家具の天板上のスペースが有効に利用でき外観的にも良いものとなる。前記樹脂製箱体11の底板13の外面には脚20が取り付けられている。
【0021】
脚20は、ボルト部21とナット部22とからなり、底板13の所定位置に設けられたネジ孔13aに、頭部23が家具の天板側となるようにして上下動可能にボルト部21で螺着されている。図3に示すように、前記頭部23を適当に回動させて底板13外面から突出する脚20の長さを増減し、前記底板13を貫通して箱体11内に突出したボルト部21のネジ24部をナット部22によって固定することにより転倒防止具10の高さを調節する。その調節は、前記底板13を貫通して箱体11内に突出したボルト部21を直接回転させることにより行なってもよい。なお、前記底板13にナット部材を埋設してもよい。
【0022】
この考案の転倒防止具10は、図4に示されるように、家具70の天板71上に載置される。そして、前記転倒防止具10の脚20の長さを調節してその天板12が天井72に接した状態あるいは天井72を僅かに押圧した状態とする。それによって、地震などが生じても前記家具70の転倒およびこの転倒防止具10が家具天板上から滑り落ちるのを防ぐ。
また、前記開口部16から前記樹脂製箱体11内に布団や玩具類などを入れることができるので、家具70と天井72との間に形成される隙間を有効な収納スペースとして利用することができる。
【0023】
図5は本考案の他の例を示したもので、樹脂製箱体内に底板を覆う脱着可能な棚板を設けたものである。符号30は転倒防止具、31は樹脂製箱体、32は脚、33は棚板、34は仕切り板である。前記樹脂製箱体31の側板35内側、および対応する仕切り板34の所定の高さ位置には、支持部36,36が設けられている。棚板33は、前記支持部36,36上に架け渡されており、図のように所望により脱着可能とされる。また、この棚板33を底板37を覆うように取り付けることにより、樹脂製箱体31内に突出した脚32のボルト部38を前記棚板33で覆うことができるため、前記箱体31内に突出した脚32のボルト部38に邪魔されることなく物品を箱体31内に収納でき、箱体31内の収納スペースを有効に利用することができる。
【0024】
さらに、家具の天板上にこの転倒防止具を載置した後に脚32の上下微調整を行なう際には、前記脱着可能な棚板33を外した状態にすれば、前記箱体31内に突出した脚32のボルト部38を箱体31内から容易に回動操作でき、狭い底板37と家具の天板間の隙間を介して脚32を回転させる必要がなく、きわめて作業性がよい。なお、この脱着可能な棚板33を、前記図1に示した固定棚板17とは別に、その固定棚板17と底板13間に設けてもよい。
【0025】
図6は第二の考案の一実施例を示したものである。この転倒防止具50は、本体51と補助体60とからなり、本体51を家具の天板外面に載置し、補助体60を前記本体51上に一または複数個積み重ねて用いるようになっている。そして、最上位置にある補助体60の天板が家屋の天井に接することにより、家具の天板と天井との間の隙間を塞ぎ、地震などによる家具の転倒を防ぐ。
【0026】
本体51は、天板52と底板53と側板54と背板55とを有して前面が開口した樹脂製箱体と、前記底板53外面に上下動可能に螺着された脚56とからなり、前記第一の考案の転倒防止具と同一の構造を有しているため詳しい説明は省略する。なお、符号57は前記本体51内に設けられた棚板である。また、前記棚板57を、前記底板53を覆う脱着可能な構造としたり、その棚板57と底板53間に前記脱着可能な棚板を別個に設けることも好ましいことである。
【0027】
天板52の外面には連結位置決め58が形成されている、この連結位置決め58は、次に述べる補助体60と本体51との位置決めを行なうためのもので、適当な大きさの凸部よりなり、前記天板52の四方の角近傍に一つづつ突設されている。
【0028】
補助体60は、本体51だけでは、その天板が家屋の天井に接する状態で家具の天板外面と天井との間の隙間に配置することができない場合に、前記本体51上に所要数積み重ねて転倒防止具50全体の高さを調節するためのものである。
この補助体60は、天板62と底板63と側板64と背板65とを有する前面が開口した樹脂製箱体よりなる。
【0029】
本例において前記底板63の外面には、前記本体51の連結位置決め58に対応する位置に、前記本体51との連結位置決め68が設けられている。両連結位置決め58,68は図のような凸部と凹部とからなり、本体51上に補助体60を重ねて置いた場合に互いに嵌合し、両者の位置を固定するものである。本実施例では、本体51側の連結位置決め58を凸部により、補助体60側の連結位置決め68を凹部により構成したが、本体と補助体とを重ねた時に嵌合する構造であればどちらに凹部または凸部が設けられていてもよい。さらに、補助体60の天板62の外面にも、補助体60を複数積み重ねる場合における補助体同士の連結位置決め69が形成されている。
【0030】
この補助体60は、高さを適当に変えたものを用意し、前記本体51の上に所望の数を積み重ねるようにすれば、家具天板と天井との間に形成される隙間の大きさに確実に対応することができる。
【0031】
【考案の効果】
以上図示し説明したように、この考案の家具類の転倒防止具によれば、家具天板外面に、天井と接するように載置するだけなので、ボルトや釘などで家具や家屋に傷をつけずに、簡単かつ確実に家具を家屋に固定することができる。
しかも、家具と家屋天井との間に形成される空間を、収納用スペースとして有効に利用することができる。
また、本体と補助体とからなる転倒防止具を用いれば、前記補助体の積み重ね個数を増減することにより家具と天井間の隙間の大小に確実に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の考案の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】その脚部分の作動を示す断面図である。
【図4】本考案の転倒防止具の使用例を示す断面図である。
【図5】本考案の他の例を示す斜視図である。
【図6】第二の考案の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 転倒防止具
11 樹脂製箱体
12 天板
13 底板
14 側板
15 背板
16 開口部
17 棚板
20 脚
51 本体
58 連結位置決め
60 補助体
68 連結位置決め
69 連結位置決め

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 家屋の天井に接する天板と家具類の天板外面に載置される底板と側板および背板とを有して前面が開口した樹脂製箱体と、前記底板外面に上下動可能に取り付けられた脚とよりなることを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項2】 請求項1において、脚が底板に上下動可能に螺着されていることを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項3】 請求項1または2において、樹脂製箱体の天板と底板間に棚板を有することを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、樹脂製箱体内に底板を覆う脱着可能な棚板を有することを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項5】 家具類の天板外面に載置される本体と、該本体上に所要数積み重ねられて最上位置のものが家屋の天井に接する補助体とよりなって、前記本体は、天板、底板、側板および背板を有して前面が開口した樹脂製箱体と、前記底板外面に上下動可能に取り付けられた脚とよりなり、前記補助体は、天板、底板、側板および背板を有して前面が開口した樹脂製箱体よりなることを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項6】 請求項5において、脚が底板に上下動可能に螺着されていることを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項7】 請求項5または6において、本体は、天板外面に凸部または凹部からなる連結位置決めを有し、一方、補助体は、天板外面および底板外面の前記本体天板の連結位置決めと対応する位置に、凸部または凹部からなる連結位置決めを有することを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項8】 請求項5ないし7のいずれかにおいて、本体の天板と底板間に棚板を有することを特徴とする家具類の転倒防止具。
【請求項9】 請求項5ないし8のいずれかにおいて、本体内に底板を覆う脱着可能な棚板を有することを特徴とする家具類の転倒防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3019012号
【登録日】平成7年(1995)9月27日
【発行日】平成7年(1995)12月5日
【考案の名称】家具類の転倒防止具
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−6502
【出願日】平成7年(1995)6月5日
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)