説明

家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法及び外皮内の安全性を確保する方法

【課題】 家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量を目標値に保持する家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法及び外皮内の安全性の確保に関する方法を提供する。
【解決手段】 家屋を構成する屋根1,外壁2,床3の構成部材や窓4,ドア5のU値を所定の目標値を満足するものとし、照明等の家電や換気装置を所定の目標値を満足するものとして結果として従来より大巾に年間冷・暖房エネルギー消費量を低減及び外皮内の安全性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋における構成部材や換気装置や照明等を工夫して冷暖房負荷を所定値に保持するためコンピュータのシミュレーションにより目標の年間冷・暖房エネルギー消費量を確保して実建築時の基礎とする家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法及び屋根や壁の外皮内の構成部材を工夫してその湿気性状を所定値に保持するようコンピュータのシミュレーションにより目標値を確保して外皮内におけるカビや腐敗をなくして安全性を確保する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋におけるエネルギー消費量を低減させることはCO等の低減に直接関連することになり、環境改善の大きな手段として最近着目されている。また、外皮内の湿気性状を確認し、カビや腐敗に関する安全性を確保する技術が日本の蒸暑化の気候においても必要不可欠であるがこれに関する適切な処理が行われていないのが現実である。そのための手段としては各種のものがあるが、本発明のように具体的な冷・暖房負荷や湿気性状を決めて目標値を達成するようにした方法は見当らない。なお、関連する先行技術として「特許文献1」が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30720号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家屋におけるエネルギー消費率を低減する方法をシミュレートするには、気象データと、室内の最高及び最低温度や相対湿度及び居住人員数等を予め決めておくことが必要であるが、屋根,外壁,床の構成部材や窓,ドア等のU値を使用する換気装置の熱回収率や内部熱,湿気,CO負荷等としてどのような物を使用するかが重要な課題となる。
【0005】
本発明は以上の各所要素の課題やその構成を具体的に工夫して所望の冷・暖房エネルギー消費量を保持する家屋を作成するようにした家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法及び外皮内の安全性を確保する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、居住人員及び換気装置を収納する家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量を目標値以下に低減するためのエネルギー消費量低減方法であって、当該方法は、家屋の屋根,外壁,床の構成部材や窓,ドアの熱貫流率(U値)を夫々所定値以下に低減する手段と、前記換気装置の熱回収率を所定値以下にする手段と、照明としてのLED等の発熱負荷家電を採用して実建築前のシミュレーションにより前記目標値の保持を確認することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記目標値が、次世代省エネルギー住宅(平成11年基準住宅)における値よりも少なくとも1/4以下のものからなり、窓及びドアのU値が1.23W/m・K及び1.74W/m・Kより性能値のよいものを用い、屋根,外壁,床はその積層構成は可変透湿シートと断熱層等の構成部材とし、前記換気装置の熱回収率を80%以上のものを採用し、室内の照明をすべてLED等の家電とすることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、前記1/4以下の値が冷房及び暖房の夫々のエネルギー消費量について15KWh/m・年以下であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、前記シミュレーションが、前記屋根,外壁,床の構成部材,窓,ドアのU値と前記換気装置の熱回収率とLED等の家電の発熱量及び年間の気象データとを用いてWufiなるソフトを用いてコンピュータにより行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、屋根及び壁の外皮はカビや腐敗等の生じない湿気性状を保持する構成部材の組合せとし、シミュレーションにより相対湿度が長時間所定値(80%以下)に保持するものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法によれば、屋根,外壁,床の構成部材や窓,ドアのU値を所定値にすることと、換気装置の熱回収率を所定値にすること及び照明等の室内発熱の工夫により本発明の目標値としての冷・暖房エネルギー消費率の低減をシミュレーションによって確認することができる。
【0012】
また、本発明の請求項2の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法によれば、請求項1の内容が具体的に示され、目標の冷・暖房エネルギー消費量の低減が具体的に保持される効果が上げられる。
【0013】
また、本発明の請求項3の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法によれば、冷・暖房エネルギー消費量の低減の目標値が明示され、本発明の差別化を明確にすることができる。
【0014】
また、本発明の請求項4の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法によれば、シミュレーションのやり方が明確化され、本発明の効果の確実度の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明の請求項5の外皮内の安全性を確保する方法によれば、外皮内の湿気性状を所定値に保持することができるため外皮内のカビや腐敗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法を示すブロック図。
【図2】本発明の外皮内の安全性を確保する方法を示すブロック図。
【図3】本発明における屋根(a)や外壁(b)の構造を示す断面図。
【図4】本発明における床の構造を示す断面図。
【図5】従来の屋根や外壁の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法及び外皮内の安全性を確保する実施の形態を図面を参照して詳述する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法についての実施の内容とその順番を示すブロック図である。
この方法を実施するための家屋の構成部分としては図示のように屋根1,外壁2,床3,窓4,ドア5の各部と、発生熱負荷6と、発生水蒸気量7と、発生CO2量8と、家屋内で使用される換気装置9と、冷・暖房装置17の年間の気象データ10と、家屋の最高室温と最低室温及び相対湿度11及び家屋に居住人員12等が挙げられる。
【0019】
1つの実施例として屋根1,外壁2,床3の構成部材と窓4,ドア5のU値(熱貫流率)は1.23W/m・K,1.74W/m・Kが採用され、発生熱負荷6,発生水蒸気量7,発生CO量8は居住環境により設定スケジュール化し、換気装置9としては熱回収率80%以上のものが採用され、年間の気象データ10としては気象庁データが採用され、室内の最高温度としては27℃,最低温度としては18℃,相当湿度としては40〜70%が採用され、居住人員としては相当人数例えば2名を採用された。図1に示すようにこれ等のすべての値をコンピュータに入力し、例えば、Wufiの如きソフトを用いてシミュレーションを行うことにより目標の年間冷・暖房エネルギー消費量を算出することができる。
なお、次世代基準としての現在採用されている屋根1,外壁2,床3,窓4,ドア5のU値としては0.35W/m・K,0.53W/m・K,0.24W/m・K,4.65W/m・K,4.65W/m・Kが用いられており、電球としてはLEDではなく蛍光灯が用いられている。これ等と本発明とのデータを比較するとエネルギー消費量が大巾に低減されていることがわかる。なお、1つの他の条件として夏季には日射遮蔽設備を使用する場合もある。また、外皮構成により外皮内の全体含水率が年々上昇せず、主要構造部分において長時間80%以上にならないようにすることができる。
【0020】
以上の各構成部材の値を採用することにより暖房エネルギー消費量は15KWh/m・年以下となり、冷房エネルギー消費量は15KWh/m・年以下となり、いずれも15KWh/m・年の値を下廻値となる。なお、この計算についてはノウハウ的のものであり、ここでは詳細説明を省略する。
【0021】
図2は屋根1と外壁2との外皮における安全性を確保するための方法についての実施の内容を示すブロック図である。屋根1や外壁2の構成部材の状態や気象データ10及び家屋の温度条件等がコンピュータに入力されシミュレーションされることにより目標の湿度性状を求めることができる。
【0022】
次に、前記の構成部材やU値を満足するための具体的な構造を次に説明する。なお、窓4とドア5については既存な市場製品として前記のU値を満足するものがあり、換気装置9についても既存のものを採用することによりその値を満足することができる。よって、以下では屋根1,外壁2及び床3についての構造を説明する。
【0023】
まず、本発明における屋根1との構造を図3により説明し、床3については図4により説明する。その説明に先立って従来(現行)の屋根1Aや外壁2Aの構造を図5により説明する。
【0024】
従来の屋根1Aの構造としては最上面に屋根板27があり、その下に防水シート13があり、ボード14を介してグラスウール等の断熱材15が設けられ透湿シート25が設けられ、次に、屋根の下地16(木材)が設けられ、通気層19を介してボード18が最下面に設けらている。
【0025】
図3(a)は本発明の屋根1の構造を示す。最上部には屋根板27があり、その下には防水シート13,ボード14,通気層19があり、その下には断熱材15があり次にボード14,断熱材15が設けられ、可変透湿防水シート20,通気層19を有する下地16を介して最下面にボード18が配置される。なお、前記可変透湿防水シート20についての内容はノウハウであり、ここでは説明を省略する。
【0026】
図3(b)は本発明の外壁2の構造を示す。最上部に仕上材26があり順次断熱材23,防水材13,ボード14,断熱材15,可変透湿防水シート20,下地16(木材)が設けられ通気槽19を介して最下面にボード18が配置される。
【0027】
次に、本発明における床3の構造を図4により説明する。コンクリート21の上には柱22が立設して設けられ、柱22の周りには外壁2が設けられている。コンクリート21の下面にはEPSやXPSの材料からなる断熱層23が配置され、コンクリート21と断熱層23は地面24内に埋設される。
【0028】
本発明は、以上の説明の内容のものからなるが、その内容は以上のものに限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、家屋に適用されるものであるが、その種類は限定するものではなく、すべての建物にも適用可能でありその利用範囲は極めて広い。
【符号の説明】
【0030】
1 屋根
2 外壁
3 床
4 窓
5 ドア
6 発生熱負荷
7 発生水蒸気量
8 発生CO2量
9 換気装置
10 気象データ
11 最高室温と最低室温及び相対湿度等の家屋内の温度湿度
12 居住人員
13 防水材
14 ボード
15 断熱材
16 下地
17 冷・暖房装置
18 ボード
19 通気層
20 可変透湿防水シート
21 コンクリート
22 柱
23 断熱層
24 地面
25 透湿シート
26 仕上材
27 屋根板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住人員及び換気装置を収納する家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量を目標値以下に低減するためのエネルギー消費量低減方法であって、当該方法は、家屋の屋根,外壁,床の構成部材や窓,ドアの熱貫流率(U値)を夫々所定値以下に低減する手段と、前記換気装置の熱回収率を所定値以下にする手段と、照明としてのLED等の発熱負荷家電を採用して実建築前のシミュレーションにより前記目標値の保持を確認することを特徴とする家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法。
【請求項2】
前記目標値が、次世代省エネルギー住宅(平成11年基準住宅)における値よりも少なくとも1/4以下のものからなり、窓及びドアのU値が1.23W/m・K及び1.74W/m・Kより性能値のよいものを用い、屋根,外壁,床はその積層構成は可変透湿シートと断熱槽等の構成部材とし、前記換気装置の熱回収率を80%以上のものを採用し、室内の照明をすべてLED等の家電とすることを特徴とする請求項1に記載の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法。
【請求項3】
前記1/4以下の値が冷房及び暖房の夫々のエネルギー消費量において15KWh/m・年以下であることを特徴とする請求項2に記載の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法。
【請求項4】
前記シミュレーションが、前記屋根,外壁,床の構成部材,窓,ドアのU値と前記換気装置の熱回収率とLED等の家電の発熱量及び年間の気象データとを用いてWufiなるソフトを用いてコンピュータにより行うことを特徴とする請求項1に記載の家屋における年間冷・暖房エネルギー消費量低減方法。
【請求項5】
屋根及び壁の外皮はカビや腐敗等の生じない湿気性状を保持する構成部材の組合せとし、シミュレーションにより相対湿度が長時間所定値(80%以下)に保持するものからなることを特徴とする外皮内の安全性を確保する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286204(P2010−286204A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141773(P2009−141773)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(508116665)ハイシマ工業株式会社 (1)
【出願人】(509169468)
【Fターム(参考)】