説明

家庭用ラップフィルム

【課題】耐熱性、密着性、引出し性、カット性を改善した家庭用ラップフィルムを提供する。
【解決手段】メルトインデックスが10〜25g/10minのホモポリプロピレン樹脂100質量部に、石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂3〜15質量部、並びに融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステル0.5〜10質量%を配合した樹脂組成物を、Tダイから押出成形してなる単層の家庭用ラップフィルムである。この樹脂組成物に、更に、造核剤を配合してもよい。前記の多価アルコールのエステルは、トリグリセリドが好ましい。また、前記の家庭用ラップフィルムは、ロール状捲回物にして、切断刃を備えた箱内に収納するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の包装や覆いに用いる家庭用ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用ラップフィルムには、その用途上種々の性能が要求される。すなわち、包装したときにフィルム同士及び容器に良く密着すること(密着性)、透明性、光沢性が良いこと(透明性)、ロール状に巻かれたフィルムを、ロールから巻戻して引出すときに引出し易いこと(引出し性)、歯形刃などのカッターで切りやすいこと(カット性)などが要求される。ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルムは上記の性質を備えており、従来家庭用ラップフィルムには、主に、ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルムが用いられてきた。
【0003】
ところが、ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルムは、廃棄後の焼却時に塩化水素ガスを発生すること、また含有されている可塑剤に環境ホルモン問題があると言われていることなどのため、ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルムに替えて低密度ポリエチレンフィルムなどのポリエチレン系樹脂フィルムを用いることも行なわれている(特許文献1)。しかし、これらポリエチレン系樹脂フィルムの家庭用ラップフィルムは密着性、引出し性、カット性などを全て十分に満足させるのは難しい。また、ポリエチレン系樹脂は、融点が比較的低いため、耐熱性も十分とはいえない。
【特許文献1】特開2002−80059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、ホモポリプロピレン樹脂を用いた、耐熱性、密着性、引出し性、カット性を改善した単層の家庭用ラップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、メルトインデックスが10〜25g/10minのホモポリプロピレン樹脂100質量部に、石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂3〜15質量部、並びに融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステル0.5〜10質量%を配合した樹脂組成物を、Tダイから押出成形してなる単層の家庭用ラップフィルムである。この樹脂組成物に、更に、造核剤を配合してもよい。前記の多価アルコールのエステルは、トリグリセリドが好ましい。また、前記の家庭用ラップフィルムは、ロール状捲回物にして、切断刃を備えた箱内に収納するのが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の家庭用ラップフィルムは、耐熱性に優れている。しかも、容器に被せたときの容器との密着性及びフィルム同士の密着性が良い。そして、ロール状に巻いた捲回物からフィルムを引出すときの引出し性が良い。また、使用時の切断刃によるカット性が良い。したがって、本発明の家庭用ラップフィルムは、側面に切断刃を備えた箱に収納して使用する家庭用のラップフィルムに最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いるホモポリプロピレン樹脂は、プロピレン単位のみからなるポリマーである。本発明では、メルトインデックスが10〜25g/10min、好ましくは、15〜20g/10minのホモポリプロピレン樹脂を用いる。メルトインデックス(MI)は、一定の温度及び圧力で、規定の直径及び長さのオリフィスから押し出される熱可塑性樹脂の流出速度であり、本発明におけるホモポリプロピレン樹脂のメルトインデックスは、ISO 1133 にしたがって測定した値(測定条件:230℃、21.18N)である。
【0008】
本発明では、家庭用のラップフィルムについて、より耐熱性を向上させるべく、ホモポリプロピレン樹脂を素材にしている。ホモポリプロピレン樹脂をフィルムに成形するには、Tダイを用いた押出成形が採用されている。この押出成形では、従来、通常、メルトインデックスが1〜5g/10minのホモポリプロピレン樹脂が用いられている。ところが、このメルトインデックス1〜5g/10minのホモポリプロピレン樹脂で製造した家庭用ラップは、使用時のカット性が劣ることが判明した。そこで、カット性を良くするために、種々実験した結果、メルトインデックスが10g/10min以上のホモポリプロピレン樹脂を用い、且つ石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂を配合することによって、カット性を向上させ得ることを知った。本発明において、ホモポリプロピレン樹脂のメルトインデックスの値は、かかる見地から定めたものである。
【0009】
本発明では、石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂を配合する。石油樹脂としては、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂が用いられる。これらの樹脂を配合することによって、前記のとおり、ラップフィルムのカット性が向上する。また、これらの樹脂を配合によって、ラップフィルムの密着性を向上させることができる。これらの樹脂の配合量は、ホモポリプロピレン樹脂に対し3〜15質量%、好ましくは5〜8質量%である。この配合量が3質量%未満ではカット性が十分改善されなく、また密着性の向上が見られない。15質量%を越えるとブロッキングを起こしやすくなり、透明度も劣り、またロール状捲回物からの引出し性が悪くなる。
【0010】
本発明で用いる融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステルについて説明する。従来、多価アルコールの脂肪酸エステルを防曇剤として配合した家庭用ラップフィルムは知られている。本発明においては、融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステルを用いる。これによって、ホモポリプロピレン樹脂フィルムに密着性を付与できる。また、家庭用ラップフィルムにおいて、フィルムの密着性とロール状捲回物からの引出し性とは相反する性質であるので、密着性を付与すると引出し性が悪くなるが、融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステルを配合した場合は、密着性は向上するが、引出し性が悪化しない利点がある。
【0011】
本発明で用いる1価又は多価アルコールのエステルは融点10℃未満、好ましくは融点−5℃以下、特に好ましくは−20℃以下のものである。この1価又は多価アルコールのエステルはグリセリドが好ましく、モノグリセリド、ジグリセリドでもよいが、特にトリグリセリドが好ましい。エステルの原料のカルボン酸としては脂肪酸が好適であるが、トリグリセリドの場合に融点を10℃未満にするためには、長鎖の脂肪酸は好ましくない。好ましい脂肪酸は、飽和脂肪酸の場合は炭素数(カルボン酸の炭素も加えた数)10以下、不飽和脂肪酸の場合は炭素数18以下の脂肪酸である。これらの脂肪酸エステルは、例えば、カプロイン酸(炭素数6の飽和脂肪酸)のトリグリセリド(融点−25℃)、カプリリン酸(炭素数8の飽和脂肪酸)のトリグリセリド(融点−11℃)、ノナノイン酸(炭素数9の飽和脂肪酸)のトリグリセリド(融点8.7℃)、オレイン酸(炭素数18の不飽和脂肪酸)のトリグリセリド(融点−40℃)、炭素数8の飽和脂肪酸と炭素数10の飽和脂肪酸のトリグリセリド(融点−15℃)、ソルビタントリオレート(融点−20℃)などである。ジグリセリド、トリグリセリドの場合、置換される脂肪酸は同一であっても、異なっていてもよい。1価又は多価アルコールのエステルの配合量は、ホモポリプロピレン樹脂に対し0.5〜10質量%、好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは3〜6質量%である。この配合量が0.5質量%未満では密着性が十分改善されず、また10質量%を越えるとブリードが生じ、フィルム表面にべたつき感が生じる。
【0012】
また、本発明では、更に必要に応じて、造核剤を配合してもよい。造核剤としては、ソルビタン系の造核剤、リン系の造核剤などが用いられる。造核剤を配合することによって、カット性を改良できる。造核剤の配合量は、ホモポリプロピレン樹脂に対して好ましくは、0.005〜0.2質量%、より好ましくは0.08〜0.15質量%である。
【0013】
本発明の家庭用ラップフィルムは、ホモポリプロピレン樹脂に、石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂、並びに融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステル、更に必要に応じて造核剤を混合した樹脂組成物を成形したものであるが、その際、常用されている防曇剤、抗菌剤、滑剤などの添加剤を更に配合してもよい。防曇剤としては、常用されている融点10℃以上のモノ又はジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、或はこれらのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンエーテルなどが用いられる。抗菌剤としては銀系無機抗菌剤などが、滑剤としてはステアリン酸、スエアリルアルコール、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪酸系滑剤、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤などが用いられる。
【0014】
本発明の家庭用ラップフィルムの成形は、例えば次のようにする。すなわち、前記した各成分を、V−ブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダーなどで良く混合し、ニーダー、バンバリミキサーなどで混練し、ペレット化して、Tダイを備えた押出し機を用いてフィルムに成形する。Tダイを備えた押出し機を用いて成形すると、カット性の良い家庭用ラップフィルムが得られる。フィルムの厚さは8〜20μm、好ましくは10〜15μmである。本発明の家庭用ラップフィルムは、多層にしなくても単層で十分に家庭用ラップフィルムとしての性能を有する。
【0015】
本発明のラップフィルムは、耐熱性があり、フィルム同士や容器との密着性が良い上に、引出し性、カット性が良いので、ロール状に巻いて、側面に切断刃を備えた箱に収納して使用する家庭用ラップフィルムに最適である。
【0016】
実施例1〜6、比較例1〜9
表1の実施例1〜6及び比較例1〜9で示す組成割合の樹脂組成物を、Tダイを備えた押出し機から押出成形し、厚さ10μmのラップフィルムを成形した。
表1において、ホモポリプロピレン樹脂(MI=20)は、メルトインデックスが20g/10minのホモポリプロピレン樹脂であり、株式会社プライムポリマー社製の2000GVを用いた。ホモポリプロピレン樹脂(MI=13)は、メルトインデックスが13g/10minのホモポリプロピレン樹脂であり、株式会社プライムポリマー社製のJ903GPを用いた。ホモポリプロピレン樹脂(MI=2.2)は、メルトインデックスが2.5g/10minのホモポリプロピレン樹脂であり、住友化学工業株式会社製のFS2011DG3を用いた。ホモポリプロピレン樹脂(MI=7.5)は、メルトインデックスが7.5g/10minのホモポリプロピレン樹脂であり、住友化学工業株式会社製のFLX80ESを用いた。また、低密度ポリエチレンは、住友化学工業株式会社製のCE3506を用いた。脂環族系石油樹脂にはアルコンP−125(商標名;荒川化学工業株式会社製、軟化点125℃、分子量820の脂環族飽和炭化水素樹脂)を用いた。エステルは、理研ビタミン株式会社製のM−2(カプリル酸とトリグリセリンのエステル、融点−12℃)、ココナードMT(商標名:花王株式会社製、炭素数8の飽和脂肪酸と炭素数10の飽和脂肪酸のトリグリセライド、融点−15℃)、レオドールSP-L10(商標名:花王株式会社製、ソルビタンモノラウレート、融点13〜14℃)、エマノーン1112(商標名:花王株式会社製、ポリエチレングリコールモノラウレート、融点10〜13℃)を用いた。造核剤は理研ビタミン株式会社製の造核剤10Rを用いた。
【0017】
上記成形した実施例1〜6及び比較例1〜9の各フィルムについて、透明度、カット性、密着性、引出し性を試験した。その結果も併せて表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1において、透明度は、ヘイズメーターで調べた。○は2.0以下、△は2.0を超え5.0未満、×は5.0以上、を示す。
カット性は、側面に歯形刃を備えた箱に収納したロール状家庭用ラップフィルムを、箱から引き出してカットし、カットの良否(カット性)を調べた。○はカット性良好、△はカット性やや劣る、×はカット性劣る、を示す。
密着性は、各家庭用ラップフィルムでポリカーボネート製の容器を被い、その時のフィルムと容器の密着性を調べた。○は密着性が良好、△は密着性がやや劣る、×は密着性が悪い、を示す。
引出し性は、側面に歯形刃を備えた箱に収納したロール状のラップフィルムを、箱から引き出し、そのときの引出し易さ(引出し性)を調べた。○は引出ししやすい。△はやや劣る、を示す。
【0020】
表1から分かるように、本願発明の要件を満たす実施例1〜6は、「透明度」、「カット性」、「密着性」及び「引出し性」の評価が、優れている。これに対し、メルトインデックスが10〜25g/10minのホモポリプロピレン樹脂に代えて低密度ポリエチレンを用いた比較例1は、「透明度」、「カット性」、「密着性」及び「引出し性」は優れているものの、耐熱温度が110℃と低かった。また、メルトインデックスが2.5g/10min又は7.5g/10minのホモポリプロピレン樹脂を用いた比較例2,3は、カット性、密着性が著しく悪かった。また、20g/10minのホモポリプロピレン樹脂のみの比較例4のラップフィルムは、密着性が悪かった。また、石油樹脂を配合しない比較例5は、カット性、密着性が著しく悪かった。また、石油樹脂を多量に配合した比較例6は、透明度、引出し性が著しく劣った。1価又は多価アルコールのエステルを配合しない比較例7は、密着性が悪かった。また、融点が高いエステルを用いた比較例8、9も密着性が劣った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスが10〜25g/10minのホモポリプロピレン樹脂100質量部に、石油樹脂、ロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの誘導体から選ばれた1種又は2種以上の樹脂3〜15質量部、並びに融点10℃未満の1価又は多価アルコールのエステル0.5〜10質量%を配合した樹脂組成物を、Tダイから押出成形してなる単層の家庭用ラップフィルム。
【請求項2】
更に、造核剤を配合した樹脂組成物をTダイから押出成形してなる請求項1記載の単層の家庭用ラップフィルム。
【請求項3】
多価アルコールのエステルがトリグリセリドである請求項1又は2記載の単層の家庭用ラップフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の単層の家庭用ラップフィルムのロール状捲回物を、切断刃を備えた箱内に収納してなる家庭用ラップフィルム。

【公開番号】特開2009−96499(P2009−96499A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268609(P2007−268609)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】