説明

家畜の自動給餌装置

【課題】家畜飼育実験においては被験家畜への給餌を実験計画に従って正確な時間間隔で行なう必要がある。飼育実験は長期にわたるので給餌の自動化が要望されているが、同時に自動給餌を可能とする装置は実験への使用である特殊性を考慮して、簡単かつ短時間に設置可能で有り、運転準備の調整が簡単でしかも低コストであることが要求される。従来の自動給餌装置はベルトコンベヤを使用した大掛かりでコストの高いものが多かった。本発明は実験用としての要求に見合った設置簡単で低コストの自動給餌装置の提供を目的とする。
【解決手段】底部にヒンジで取り付けた開閉蓋を有する複数容器を、無人で給餌する期間における給餌回数と給餌間隔に対応した個数を架台上設置し、前記底部の蓋を閉状態に保持して餌貯留容器に餌を充填する。その後、駆動手段を有する底部蓋を開状態にする機構を始動し、設定時間に個々の容器の底面蓋が開いて充填されていた餌が容器下方に設置されたシュウートを経て餌箱に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の飼育実験に使用する自動給餌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜を所定の飼育条件において飼育する試験の実施においては飼育対象家畜に餌を与える条件、特に給餌の量と給餌タイミングを適正に管理する必要がある。対象家畜への給餌は昼夜なく行なわれ、それが長期にわたることが多いから、給餌作業者の負担を軽減することが望まれる。そのために適当な時期に給餌準備を行なえばその後の一定期間(たとえば1日の間)給餌が自動で行なわれるように自動給餌設備が設置される。家畜の試験飼育設備としての特有な自動給餌装置は従来多くの例を見ないが、畜産農家において家畜の自動給餌を行う装置に関しては例えば特許文献1に示す例がある。
【0003】
特許文献1には、多数の飼育する家畜に自動識別タグをあらかじめ取り付けておき、給餌場所には前記タグを読み取り給餌場所に入って来た家畜を特定するとともに、該特定された家畜の餌としてプログラムされた餌をベルトコンベヤにより給餌場所に自動的に供給する技術が開示されている。このような技術は多数の家畜を飼育する大規模な恒久的畜産設備における設備としては適用可能でも、試験飼育のような実験費用が制限され且つ極めて短期間の準備で実施しなければならない場合や、実験施設として短期間使用するための仮設備である場合などでは、コンベヤを使用する大規模設備は費用面からも、設置期間的にも適用が難しい。またコンベヤを使用する装置では給餌開始指令が発せられた時点からコンベヤで輸送された飼料が給餌場所まで到達するまでの時間遅れが生じ、給餌タイミングが遅れることになる。従ってコンベヤによる飼料供給の遅れ時間によって次回の給餌タイミングを遅らせる必要が生じることもあり、給餌サイクルの制約を受ける問題点もある。
【0004】
他の自動的に給餌する装置に応用できる技術は例えば特許文献2に開示されたものである。この場合は複数の容器であって、底部に開閉可能な払い出し蓋を有する貯留容器を備え、あらかじめ該貯留容器に餌(特許文献2は微粉体取り扱い装置の記載であるが、家畜飼料取り扱い装置にも関連する技術である)を満たしておき、前記底部の蓋を開いて餌を給餌場所に排出する技術である。特許文献2は複数貯留容器の底部蓋を同時に開放するものであり、本発明におけるように複数貯留容器にあらかじめ貯留された家畜飼料を設定時間に応じて払い出すニーズに対しては適用できない。
【0005】
上述のように、本発明の対象は家畜の飼育実験において自動的給餌を可能とすることを目的とする装置を提供することにあり、その目的にかなう自動給餌装置は、容易にかつ短時間に設置でき、仮設設備としての簡単な据付、撤去が可能であるように配慮するとともに、専門家による特別なスタートアップ調整を不要とするものであることが要求される。従って装置は部品点数が少なく、コンパクトであり、簡素に構成されることが必須である。また実験装置として費用削減も必要であり、簡素な構成であることが要求され、コンベヤなどを使用する従来の技術では充分な対応ができない場合があった。
【特許文献1】特開平7−59482号公報
【特許文献2】特開平2−48504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
家畜飼育試験に使用する自動給餌装置として最適な構成、構造、機構簡単でコンパクトかつ安価な装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の容器に餌をあらかじめ入れて給餌の準備を行なった後は、該容器の底部に設けた蓋をあらかじめ設定した時間間隔で自動的に開けて飼育対象家畜の餌供給場所へ排出して自動的に給餌する機能を一体化したコンパクトな低コストの装置を構成することにより、上記課題を解決する家畜飼育試験に適した装置を実現することができる。すなわち人手を要せず対象家畜に餌を与えることのできる期間とその間の給餌間隔により個数が決まる複数の前記容器(以下餌貯留容器または単に容器と呼ぶ)と、前記餌給餌容器の底部底面に設けた開閉可能な蓋であって、該蓋を閉めて餌貯留容器に餌を貯めておけるように該容器底面に蓋をし、または同貯めた餌を底部に排出するために該蓋を開き、底面を開放するように構成した自動開閉機構を一体に架台に設置したものであり、本発明の目的とする家畜飼育試験用の自動給餌装置として、コンパクトで簡素な構成であって、据付簡単、低コストの装置の実現を可能とする。
【0008】
請求項1に記載の発明は、複数の餌貯留容器であって、該容器の底面にはヒンジで取り付けられ、上下に動いて前記容器の底面を閉じ、または開放する板状部材である底面蓋を有し、さらに該底面蓋には弾性体により該蓋の周縁から突出するように取り付けられた棒状部材であり、同部材の該周縁から突出した部分の先端に外力を加えると、前記棒状部材は前記蓋の面と略平行方向に移動して、前記突出する部分が底面蓋周縁方向に引っ込むよう構成したもの(以下蓋ストッパーと呼ぶ)を架台に配置する。加えて架台には、前記蓋周縁に突出している前記蓋ストッパーの突出部を押して底面蓋周縁方向に移動し引っ込むように力を加えるアクチュエータを取り付ける。前記蓋ストッパーの棒状部材は通常状態においてその長手方向の一部が弾性体により貯留容器底面蓋の周縁から突出する位置に保持され、同ストッパーの突出部先端に外力が加わることにより前記弾性端に抗して貯留容器底面蓋の周縁に向って引っ込むものである。これにより蓋ストッパー突出部をストッパー保持材で下方から支持して前記容器底面の蓋を閉じた状態に保持し、または前記保持材からストッパー突出部を外し底面蓋の片側(ヒンジ取付部と対向する側)を落下させ、該蓋を開き、餌貯留容器内に貯めた餌を放出することができる。
【0009】
請求項1記載の発明では、複数の餌貯留容器は図1に示すように、前記底面蓋ストッパーの突出部先端が略水平な直線をなすように架台上に配列することを特徴とする。ここで突出部先端を略水平な直線をなすように配列するとは、一の直線運動をするアクチュエータが複数の餌貯留容器のいずれの底面蓋ストッパー突出部を底面蓋の周縁方向に押し込み、各貯留容器に取り付けた蓋ストッパーが蓋ストッパー保持材から外れて対応する貯留容器の底面を開放できる範囲に蓋ストッパー突出部の先端が並ぶように貯留容器を配列することであり、また突出部先端が位置する直線は貯留容器下方のシュートに餌を払い出せる程度に水平である必要がある。
【0010】
図1において、蓋ストッパー下側を保持して底部蓋を貯留容器底面が閉まった状態に保持する位置に蓋ストッパー保持材を取り付ける。前記保持材は複数の底面蓋ストッパーを支持する共通の桟状の部材を架台に取り付けたものでもよく、または容器個々に設けることでもよい。いずれにしても該保持材は蓋ストッパーが突出状態では蓋ストッパーを保持し、同ストッパーが一定量押し込まれた状態において保持材から外れるような寸法と位置関係で設置されることを要する。直線アクチュエータは図5に示すように、周方向に回転する駆動手段により軸の周りに回転するおねじを有する棒状部材(以下スクリュウローッドと呼ぶ)と、該おねじ付き棒状部材に対応するめねじを有するナットであって、ナットには前記スクリュウロッドの軸方向には移動自由であるが、同スクリュウロッド軸回りの回転は抑制する機構、例えばナットがスライドするガイドレールあるいはナットに設けた穴を貫通しロッドと平行に取り付けられた棒状部材、その他類似のものが付加され、スクリュウロッドを回転駆動することにより前記ナットは同ロッドの軸方向に移動する。前記ナットは、前記の底面蓋ストッパーの突出部を押して蓋ストッパーを保持材から外すために必要な横方向への張り出し部分を有する直線アクチュエータとして構成される。
【0011】
図1に示すように架台に配列した複数の餌貯留容器に対して一個の直線アクチュエータを、同アクチュエータの移動方向と複数貯留容器の蓋ストッパー先端のなす直線が平行となり、かつアクチュエータといずれかの蓋ストッパーの突出部が接触した時、同ストッパーが同ストッパー保持機構から外れ、相当する貯留容器底面が開くような位置関係に取り付ける。複数の餌貯留容器の下方には同貯留容器の何れかから排出される餌を受け止め、外部に排出するシュートが設けられる。シュートは複数貯留容器の下方をカバーする投影面積を有する傾斜した板材でなり、その終端は通常家畜の餌箱に繋がる。図1に示す装置の使用は、先ず自動給餌の準備として、貯留容器の蓋を閉めるように、蓋ストッパー突出部を蓋ストッパー保持材に掛ける。その後必要に応じて貯留容器内に餌を供給し、スクリュウロッド駆動手段をスタートさせる。スクリュウロッドの回転によりアクチュエータが移動し順次貯留容器の蓋ストッパー突出部を押して容器の底面蓋を開放し餌をシュートに放出する。スクリュウロッドの駆動装置の回転数を一定に保持した場合には餌貯留容器の配置間隔、言い換えれば同複数の容器の蓋ストッパー配置間隔によって決定される時間間隔で餌が放出される。
【0012】
上記のように1のアクチュエータにより餌放出時間間隔を制御して自動的に給餌できるので、個々の貯留容器に蓋開閉制御手段やアクチュエータを設ける場合に比較し、コンパクトで簡素な装置を構成可能であり、かつ極めて低コストのものを実現できる。本発明の自動給餌装置の制御方法として下記の方法を適用すればさらに柔軟な使用が可能となる。すなわちアクチュエータが個々の貯留容器の底面蓋ストッパー付近に接近したことを検出するセンサーを設置し、スクリュウロッドを駆動してアクチュエータを移動させ、前記センサーが一つの容器用蓋ストッパーへのアクチュエータの接近を検出した時にアクチュエータの移動を一旦停止し、時間カウント手段の時間カウントを開始する。前記時間カウント手段が給餌時間の到来をカウントした時に再度スクリュウロッドの回転をスタートさせて、引き続き次の隣接する貯留容器への接近をセンサーが検知するまでスクリュウロッドの駆動、即ちアクチュエータの移動を継続し、同センサーがアクチュエータの次の隣接貯留容器の蓋ストッパー位置に接近したことを検出した時停止させる。前記アクチュエータ停止と同時に再び時間カウントを開始し、時間カウントが次の容器からの餌放出時間間隔に到達したときアクチュエータを更に次の隣接する容器に向って始動する。アクチュエータは一つ貯留容器に接近して停止した後、時間カウントが餌放出時間間隔に達して移動を再開し、次の容器に接近して再度停止するまでの間に、前記最初に接近していた容器の底面蓋を開いて餌の放出を行なう。以下同様に相続く貯留容器について次々に同様の動作を行なわせる。スクリュウロッドを連続的に一定速度で回転するような運転を行なう場合、給餌時間間隔はスクリュウロッドの速度と容器の配列間隔で決定されて自由度が低下する。前記のようにアクチュエータ接近センサーとタイムカウントによる制御を行なうことにより給餌時間間隔をスクリュウロッドの回転速度と関係なく自由に設定する効果があり、本発明の自動給餌装置の効用をさらに高める。
【0013】
図2は請求項2に記載した発明の概要構成を示す配置図である。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載したと同様の餌貯留容器を同請求項記載の底面蓋ストッパー突出部先端を略円周上に位置するよう架台に配列し、前記円周に沿って回転するカム機構が前記蓋ストッパーを同円周の中心から離れる方向へ押し込むことにより、蓋ストッパーを蓋ストッパー保持材から外し、貯留容器の底面蓋を開放することを特徴とする。なお蓋ストッパー突出部先端が略円周上に位置し、回転するカムが略円周上を回転するとは、回転するカムと蓋ストッパー突出部先端が相互に接触し、カムが突出部先端を押して蓋ストッパーを保持材から外すことができるような位置関係であることを言う。
【0014】
なお請求項2において、略円周上に配置した餌貯留容器全体を、前記円周の中心に回転軸を有する台に載せ、回転駆動手段によりそれら餌貯留容器を回転可能とし、他方カムを蓋ストッパー突出部先端がなす円周上に固定してなるように構成することも可能である。このような配置では回転駆動手段により回転して移動中の貯留容器が同カムに接近したとき、該貯留容器の蓋ストッパー突出部先端がカムに当たって容器底面蓋が開放される。しかし一般的には貯留容器を固定しカムを回転させる構成が駆動部の小型化、回転部のコンパクト化の観点から望ましい。請求項2の発明では蓋ストッパー保持材も蓋ストッパー突出部の先端との配置に対応した円周上に配置されるべきである。
【0015】
図3には請求項3に記載した発明の概略構成を示す。請求項3の発明は複数の餌貯留容器であって、その底部にヒンジによって取り付けた上下開閉可能な略平面板状の容器底面蓋を有するものを、架台上の1点を中心とする略水平な円周上に配置し、かつ該配置した複数の容器を回転駆動手段により架台上の前記点を中心に該架台に対して回転するよう構成する。さらに前記回転する容器の下方には、前記容器底面蓋を閉じた状態の該容器が回転した際に前記底面蓋の描く帯状円環の軌跡の一部を切り取った開口であって、前記底面蓋が該開口上に位置した場合に、同開口の範囲においてヒンジを中心に該蓋が下方に開ける形状と面積ならびに前記帯状円環に関する相対位置を有するもの(以下遮蔽板に設けた開口又は単に開口と呼ぶ)を設け、前記開口以外の範囲で少なくとも前記容器の底面蓋が回転して作る円環の範囲については底面蓋が開くことのできる大きさの開口を有しない遮蔽板で覆う。なお、遮蔽板と餌貯留容器底面の蓋(ヒンジ部も含む)は相互の接触面における摩擦力を軽減するように、適当な隙間を付けるか、相互に摩擦の少ない材料(例えば蓋を金属板、遮蔽板を高分子材料とし、あるいは蓋と遮蔽板の接触部分のみ摩擦の少ない材質とする等)を採用するか、相互の接触面を潤滑するか、あるいは蓋又は遮蔽板間にローラを挿入する等適切な手段を講ずる。
【0016】
回転する複数の餌貯留容器が前記遮蔽板に設けた開口の上を通過するとき、それの底面を覆う蓋は自重によりヒンジを中心に下方に開き餌を排出する。前記容器の架台上における回転の際に描く円の接線方向と前記開口における底面蓋の上下開閉運動の方向が略平行になるよう、前記ヒンジの取付け位置を選択する。即ち、前記容器底面の外周であって、同底面の回転運動の進行方向先端部付近に該ヒンジを取り付けることが望ましい。前記のようにヒンジを配置することにより貯留容器が前記開口上を通過中に同容器の蓋が開口内へ落下して開き、その後回転進行とともに蓋は進行方向の開口部縁に再度接触し、一旦開いた蓋が自動的に閉じられる。ヒンジを前記した位置と異なる位置に設けた時は、開口部通過後に蓋を閉めるためのガイド等が別に必要である。前記開口の下方に相当する位置には餌貯留容器底部から排出される餌を受け、餌箱へ供給するシュートが設けられる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、図4に示すように、請求項3と同様な餌貯留容器(ヒンジ蓋付き底面を有する複数容器)と遮蔽板との配置有するものであるが、餌貯留容器を架台33に対して固定し、遮蔽板38を回転台34により回転可能にした点が相違する。略円周状に配置された複数容器はその下方を遮蔽板が回転可能な様架台との間に隙間を保つように、あるいは適当な摩擦減少手段を介して台上に取り付けられる。遮蔽板は容器底面の下方において架台に対して回転駆動手段により回転可能なように配置される。遮蔽板には請求項3に記載したと同様の配置と構成を有する開口と、閉鎖部(充分小さい開口のみ持つか又は板状のもの)により構成され、遮蔽板が回転して請求項3記載の開口がいずれかの容器底面を通過するとき、蓋が開いて餌を放出する。前記以外の構成は請求項3と同様である。
【0018】
請求項5に記載した発明を図8に示す。請求項3又は請求項4に記載した発明において餌貯留容器の底面の蓋を取り払ったものである。請求項3、または4に記載した遮蔽板と餌貯留容器対面を、それらが相互に接するか、あるいは両者が十分小さい間隙をもって配置することにより、遮蔽板の閉鎖部を蓋として機能させるものである。遮蔽板の開口部以外では容器の底部を閉ざし、蓋と同様に容器内の餌を保持できるので、蓋を排除してより簡単な構成で同様の機能を実現できる。なお、容器底部と遮蔽板の相対運動による餌のこぼれ落ちを防ぐため、容器底部に柔らかい材質(例えばゴム、プラスティックなど)でなるシール材45を付加して遮蔽板表面との低い摩擦抵抗を維持し、且つ餌の漏れ出しを防止する配慮が必要な場合がある。その他の構成については請求項3または請求項4と同様である。
【発明の効果】
【0019】
極めて簡素かつ設置容易なコンパクトな家畜用自動給餌装置を提供できる発明であり、特に設置時間、費用に制限の大きい家畜飼育実験の準備期間を短縮し実験費用を節減する効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は請求項1の発明を実施する最良の形態である。図1では架台1の上方に6個の餌貯留容器2が1列に3個宛直線状に2列並べて配置される。餌貯留容器の数は適宜用途によって決定する。本図の数は一例である。架台1の脚内で餌貯留容器2の下方には傾斜板からなるシュート3が設けられ、シュート3の先端には必要により餌箱5が置かれ、餌貯留容器2から排出されて同箱5の中に投入された餌を家畜が食べられるように配置する。2列に配置した容器2の間にはアクチュエータ装置4が架台に取り付けられる。餌貯留容器2の形状は図1では矩形底面の筒形状を選択しているが円筒その他の形状でも問題ない。
【0021】
餌貯留容器2の底面6に取り付ける蓋7は容器2の底面6とほぼ同一かやや大きい面積の板状部材であり、一端にヒンジ8を有し、同ヒンジを介して底面6の一部に取り付けられるものである。蓋7のヒンジ取付け部と略対向する位置には、通常状態において弾性体により蓋7の周縁から突き出す突出部9を有する略水平に移動できる棒状の部材を含む蓋ストッパー10が取り付けられる。蓋ストッパー10の一例は図5に示すような機構であって、バネ11を介して蓋ストッパーの部品である突出部9を蓋7に結合し、図5に示すようにバネ11が変形していない状態では突出部9を蓋7の周縁からヒンジ8と逆方向に突出させる。突出部9の先端から蓋7の周縁部に向う力を加えると、バネ11が伸び方向に変形し、突出部9は蓋7の周縁に向って引っ込む。バネ11には突出部9の位置調整のための調整ネジ12が設けられ、同ネジ12の位置を調整してバネ11の長さ、即ち突出部9の位置を調整し、後述の直線アクチュエータ4との当り位置を調整できる。
【0022】
図1に示すように、餌貯留容器2を架台1に配置する場合には蓋ストッパー10の突出部がほぼ水平な直線をなすようにする。通常状態において蓋7の周縁から突出した突出部9を下方から保持して蓋7がほぼ水平になり容器2の底面6を閉じる蓋ストッパー保持材13を架台に取り付ける。図1においてストッパー保持材13は直線的に配置された1列の容器2に平行し、水平に架台に取り付けられた桟であり、1列に配置された容器2群の蓋ストッパー10の突出部9を前記桟上に載せることにより蓋を閉じた状態に保持する。前記蓋ストッパー保持材13である桟の幅(突出部9の運動方向寸法)は、突出部9の横方向の運動可能範囲において突出部9を外部から押し込んだ場合に該桟から外れる寸法とする。
【0023】
図6には直線アクチュエータ4の構成の一例を示す。同アクチュエータ4はおねじを設けた棒状部材(スクリュウロッド)15、スクリュウロッド15と対応するめねじを有するナット16を同ロッド15に嵌め込んでなる。またナットに連結してスクリュウロド軸方向の垂直方向に延長したアクチュエータ部17を設ける。ナット16はロッド15の軸方向の移動は自由であるが、軸回りの回転を抑止するガイドレール20を設ける。スクリュウロッド15は駆動手段18により回転することが出来る。駆動手段18は電動機(必要の応じて減速機を含む)が通常使用される。駆動手段18を運転しスクリュウロッド15を回転するとかみ合ったナットがロッド軸方向に移動する。なお本実施形態においてはガイドレール20と蓋ストッパー保持材13は同一の部材であって両機能を兼用する構成である。
【0024】
直線アクチュエータ4を図1に示すように、そのスクリュウロッド軸が、列をなすように配置した貯留容器2の蓋ストッパー突出部9が形成する直線に略平行となるよう架台に取り付けられる。直線アクチュエータ4のアクチュエータ部17は容器2の蓋ストッパー突出部9の先端に接触し、突出部9を横方向に移動させ、蓋ストッパー保持材13から外れるまで押し込む幅(アクチュエータ部17の先端部のスクリュウロッド15の軸方向と垂直な方向への張り出し量)を有する。なお、図1では容器2が3個ずつ2列にならび、蓋ストッパー10は容器2の列間に向かい合うように配置し、直線アクチュエータ4は列間に取り付けられ、両列の蓋ストッパー10をアクチュエータ部17で外せるように配置している。なお、2列以外にも必要な列数配置し、又は各列の容器の数は任意に選択することが可能である。容器の配列の変化に対応して直線アクチュエータの数、配置も変更される必要があることは言うまでもない。
【0025】
上述のように構成した自動給餌装置の蓋ストッパー突出部9を同保持材13によって支えて貯留容器2の底面6を閉じ、貯留容器2に飼料を補充した後、直線アクチュエータ4の駆動手段18を始動させれば、アクチュエータ部17が移動し、順次蓋ストッパー10を外して容器2の底面を開き、内部の餌をシュートに放出する。
【0026】
なお、図1において蓋ストッパー保持材13はガイドレール20と兼用の桟状の部材を使用したが、個別の容器に単独な部材を取り付けても同様な機能を与えることが可能である。蓋ストッパー突出部9を移動させる手段としてはバネ以外にゴム、板バネ等の弾性体を使用できる。また弾性体の個数は具体的な適用により他の構成を採用できることは言うまでもない。
【0027】
図1に示すスクリュウロッド15の駆動手段18の制御方法としては、貯留容器2に餌を充填後、同駆動手段を連続して運転し、それに応じて、アクチュエータ部17がスクリュウロッド15に沿って連続的に移動して蓋ストッパーの突出部9を順次押すことにより対応する容器2内の餌を排出するようにすることが基本である。しかしこのような制御の場合には、餌貯留容器2の底面蓋を開放して餌を放出するタイミングは駆動手段18の速度で決定されその変更は容易でない欠点がある。このような欠点を解消する制御方法として、アクチュエータ部17がいずれかの蓋ストッパー近傍に達したことを検出するセンサー19を各容器2について設け、同センサー信号を制御手段に接続して次のように制御することにより任意のタイミングで餌の放出を行なうことを可能とする。貯留容器2に餌を充填後、直線アクチュエータ4の駆動手段18を始動するとともに時間カウント手段のカウントを開始する。なお時間カウント手段は餌放出タイミングをあらかじめ設定しておき、設定タイミング毎に駆動手段18の始動信号を出すよう構成する。駆動手段18の始動によりアクチュエータ部17が移動する。前記センサー19によりアクチュエータ部17が何れかの容器2に接近したことを検出した時、制御手段に同検出信号を送信する。制御手段は同接近信号に対応して駆動手段18を停止させる。駆動手段18が前記のように停止中にも前記時間カウント手段により時間カウントが行なわれ、あらかじめ設定した餌放出タイミングへの到達を検知して制御手段に送信し、制御手段は駆動手段18を始動させる。再度の駆動手段18の始動後は、前述したと同様にアクチュエータ部17が次の隣接位置に配列された容器2へ接近し接近検出センサー19がそれを検知したとき駆動手段を停止する。前記時間カウント手段が次の餌放出タイミングの到来を検知すると再び駆動手段18を始動し、以下同様に駆動手段18の運転、停止を順次行なえばあらかじめ設定したタイミングで餌を放出できる。なお、時間カウント手段に設定するタイミングを自由に選択できるように構成することは容易であり、従って餌放出タイミングもそれに対応して任意に選択することが可能である。
【実施例1】
【0028】
図2は請求項2に記載した発明の実施例を示す。図2において、複数の餌貯留容器2は架台1の上の点を中心とする円周上に配置される。同容器2の円周上への配置は後述する回転カム機構が容器2の蓋ストッパー突出部9を該ストッパー保持材13から外れる位置まで押すことができる位置精度範囲にあるよう配慮する必要がある。図2の餌貯留容器2の構造は図2中のA−A視図2aに示す通り、図1に示すものとほぼ同じであって容器2の底面にはヒンジ8により上下開閉する蓋7が取り付けられ、餌貯留中は蓋ストッパー10の先端突出部9をストッパー支持材13で支えて蓋7を閉状態にする。カム21がストッパーの突出部9を押して保持材13から外して蓋7はヒンジ8を支点にして落下、容器底部開状態にする。図2aは実施例の一例であり他の構成でも同様に機能するものが適用可能である。蓋ストッパー保持機構13は容器2が円周上に配置されることに対応して略円周をなすように配置される。
【0029】
図2において回転カム機構22は、前記した架台上の点を回転軸として円周上を移動するカム21を有し、カム21は容器2の蓋ストッパー突出部9を保持機構13から外すことのできる位置を巡る円運動をする機構である。回転カム機構21は駆動手段18と制御手段を有する。回転カム機構22の回転によりカム21が蓋ストッパー9を保持機構から外し対応する容器の餌を排出する。容器2が円周上に配置されること、直線アクチュエータに替えて回転カム機構を備えること以外は図1と同様に構成される。図2に示すようにセンサー19をいずれかの支持材13へのカム21の接近を検出するように配置し、カム駆動手段18を前出段落0027に記載したと同様に制御することが可能である。
【実施例2】
【0030】
図3は請求項3に記載した発明の実施例である。餌貯留容器30は複数の円筒形状の容器からなり、容器底面31にはヒンジ37を用いて容器30の底部に結合された板状部材の上下開閉可能な蓋32によって覆われまたは開放される。前記複数の容器30は架台33上に、架台33上の点を中心として回転する回転台34上に略円周に底面が略同一水平面をなすよう取付られ、容器30の底面は架台に対して該周上を水平に回転移動する。回転台34には回転駆動手段35が設置されて容器32の回転運動を可能とする。図3のB−B視図である図7中の図7bに示すように架台33上の前記容器底面の通過する範囲の一部には、開口を設ける36。前記開口の、容器30が回転して描く帯状円周の半径方向寸法は前記蓋32の幅(前記円周に対する垂直方向の蓋32の最大長さ)より広く、かつその面積は底面蓋32の面積にヒンジ部分37の面積を加えたものより大きいものとする。図3では餌貯留容器を円筒としたがこれは一例であって必ずしも円筒に限られない。また容器の数を6としたが他の個数でもよいことは言うまでもない。
【0031】
ヒンジ37の取付部は容器2の底部の、回転台34の回転方向に対して最先端部に取付ける。このようにヒンジを配置すると、回転台34上で回転する容器30の底面蓋32が前記開口36の面積に含まれる位置に来たとき、ヒンジによって該蓋32が下方に開き容器2内の餌が放出される。さらに回転台が進行するとヒンジ37は開口36から脱し、さらにヒンジに続く蓋32の部分が開口36の回転方向前方の縁に接触してヒンジを支点とするモーメントにより蓋32が上方に移動し閉まる。
【0032】
なお、架台33上の前記開口36を設けた以外のスペースであって、容器2が回転して描く帯状部分は閉鎖するか、あるいは蓋が落下して開かない程度の大きさの穴のみが許容される。このような閉鎖区域を遮蔽板38と呼ぶ。開口36の下方の架台にはシュート39を設置する。図3のA−A視図である図7中の図7a及び同B−B視図である図7bに示すように開口36上を通過中に下方に開いた蓋32を、開口エリアから脱するに従って再度閉状態にする蓋閉ガイド40を遮蔽板又は類似の架台に固定された部材に取付け、開いている状態の蓋32を閉方向に押してスムーズに閉状態にするよう配置している。また蓋32の底面には遮蔽板との相対運動を滑らかにするために、例えば高分子の材質である突起41を設けて、直接蓋32の表面と遮蔽板38が直接接触することを防止する。但し蓋32と遮蔽板の直接接触が問題にならなければ突起41は必ずしも必要としない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
家畜の飼育実験を迅速かつ低コストで行なうに要求に応える有効性の高いものであり、産業上の利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】請求項1に記載の発明の構成を示す図である。
【図2】請求項2に記載の発明の構成を示す図である。
【図3】請求項3に記載の発明の構成を示す図である。
【図4】請求項4に記載の発明の構成を示す図である。
【図5】請求項1に記載の発明における蓋ストッパーの構成の例を示す図である。
【図6】請求項1に記載の発明における直線アクチュエータの構成の例を示す図である。
【図7】図3のA―A視図及びB−B視図により、請求項3に記載の発明における容器底面蓋の機構の一例を示す説明図である。
【図8】請求項5に記載の発明の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 架台
2 餌貯留容器
3 シュート
4 直線アクチュエータ
5 餌箱
6 餌貯留容器底面
7 蓋
8 ヒンジ
9 蓋ストッパー突出部
10 蓋ストッパー
11 バネ
12 調整ねじ
13 蓋ストッパー支持材
15 スクリューロッド
16 ナット
17 アクチュエータ部
18 駆動手段
19 センサー
20 ガイドレール
21 カム
21 ドラム
22 回転カム機構
30 餌貯留容器
31 容器底面
32 蓋
33 架台
34 回転台
35 回転駆動手段
36 開口
37 ヒンジ
38 遮蔽板
39 シュート
40 蓋閉ガイド
41 突起
45 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に記載の構成でなることを特徴とする家畜自動給餌装置。
(1)容器であって、ヒンジにより該容器底部に取り付けられて上下に開閉可能な略平面の蓋でなる底面を有し、該蓋には同蓋の面と略平行方向に移動する棒状部材であって、同部材の長手方向の一部は通常状態では弾性体により該蓋の周縁から外部に突出し、前記突出する部分の先端に外部から力を加えた場合には前記弾性体に抗して引っ込むように運動する蓋ストッパーが取り付けられた複数の餌貯留容器と、
(2)架台であって、該架台上方には前記の複数の餌貯留容器を、前記弾性体により通常状態に保持された前記蓋ストッパーの突出する部分の先端が略直線にならぶように配置し、また、同配置した餌貯留容器の下方には該全ての容器の底面を覆う広さを有するシュートが配置された給餌装置架台と、
(3)前記蓋ストッパーが前記弾性体により通常位置に維持されている時は該ストッパーの突出した部分を保持して前記餌貯留容器の底面の蓋を閉状態に保ち、該ストッパー突出部が外力で押されて蓋底面と略平行方向に所定量引っ込んだ場合には、該突出した部分が外れて前記容器底面の蓋を開状態にするよう配置した蓋ストッパー保持材と、
(4)駆動手段により軸回りに回転するおねじを有するねじ棒に、前記おねじに対応するめねじを有するナットを嵌め込み、さらに該ナットのねじ棒軸方向の運動は自由であるが同ねじ棒周方向の運動は拘束する手段を設けて前記駆動手段による前記ねじ棒の回転運動を、該ナットの直線運動に変換するアクチュエータとして構成し、該ナットがねじ棒軸方向に運動する際に前記蓋ストッパーの突出した部分に接触して、該蓋ストッパーの突出部を押し込み、該突出した部分を前記蓋ストッパー保持材から外して、前記餌貯留容器底面蓋を開くように配置してなる直線アクチュエータにより構成される、家畜餌自動給餌装置。
【請求項2】
請求項1に記載した架台に複数の餌貯留容器を配置する際、請求項1に記載の蓋ストッパーの先端部が略円周上にならぶように配置し、かつ駆動手段によって円周上を回転するカムを設置し、該カム駆動手段により回転移動するカムが請求項1に記載の餌貯留容器底面の蓋ストッパーの突出した部分に接触して該蓋ストッパーを請求項1に記載した蓋ストッパー保持材から外すように配置してなる、請求項1に記載の家畜餌自動給餌装置。
【請求項3】
下記に記載の構成でなることを特徴とする家畜自動給餌装置。
(1)容器であって、ヒンジにより該容器底部に取り付けられて上下に開閉可能な略平面の蓋でなる底面を有する複数の餌貯留容器と、
(2)駆動手段を有する回転機構であって、前記複数の餌貯留容器を該回転機構の回転軸を中心とする略同一円周に、前記容器底面をなす蓋の下面が略同一水平面上に位置するように取り付けた回転台と、
(3)架台であって、該架台上方には前記の複数の餌貯留容器を配置した回転台をその回転面が略水平面になるように取付け、さらに前記貯留容器の下方には該複数容器の底面を覆う遮蔽板を架台に固定して配置するとともに、同遮蔽板には貯留容器が回転する軌跡である円環上に、前記底面の蓋が通過できる形状及び面積を有する一箇の開口を設け、また前記遮蔽板の下方であって前記開口に相当する位置にはシュートを取り付けた給餌装置架台とからなる、家畜餌自動給餌装置。
【請求項4】
請求項3に記載した複数の餌貯留容器を略同一円周上に、該容器底面が略同一水平面上に位置するように架台に固定し、前記架台上の前記容器の下方には前記複数の容器を配列してなる円周の中心を回転軸として請求項3に記載した開口を有する遮蔽板を略水平に回転させる回転手段に取付け、さらに請求項3に記載のシュートは該複数の餌貯留容器底面全体をカバーするように設置したことを特徴とする請求項3に記載の家畜餌自動給餌装置。
【請求項5】
請求項3、又は請求項4に記載した複数の餌貯留容器は底面に蓋を有さず開放されていることを特徴とする請求項3、又は同4に記載の家畜自動給餌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−89648(P2009−89648A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263132(P2007−263132)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)