説明

家畜・家禽用飼料

【課題】 抗生物質その他の薬剤等の使用による残留薬物の恐れや、薬剤耐性の生起の恐れの無い安全な飼料添加物を用いて家畜・家禽の排泄物量、排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料を提供することを課題とする。
【解決手段】 ストレスを受けていない正常状態の家畜・家禽に対して、ダッタンソバを含有する飼料を給与することによって、家畜・家禽の排泄物量、排泄物水分量を顕著に低減出来る。糞中の水分含量の低減は、臭気や衛生上の問題についても有利な効果をもたらし、更には、このような排泄物は肥料化に際しても低公害の効果がある。
【添付図】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家畜・家禽用飼料に関する。さらに詳しくは、家畜・家禽の糞排泄量及び排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養畜、養家禽業者にとって、家畜、家禽が排泄する糞尿はその再生、処理技術が充分でなく、そのため臭い、を含めて大きな公害問題を引き起こしている。このような背景を踏まえて、家畜・家禽農場においても排泄物を適正に処理、管理することが法的にも求められている。そこで、家畜・家禽農場における鶏糞排泄量を少なくする試みが各種提案されている。その一つは、単純に給餌量を減らす、制限給餌方法(養鶏の友、2002年2月号46頁)であり、採卵鶏に乳酸菌を投与して飼料養分の消化・吸収性を向上させ、糞排泄量を低減する試み(養鶏の友、2003年2月号64頁)や、炭水化物分解酵素を飼料に添加して食物繊維の消化・吸収を向上させる試み(養鶏の友、2003年6月号64頁)など、各種の方法が試みられているが、何れも未だその効果は充分ではない。
又、多頭・多数羽飼育環境下に発生する家畜・家禽のストレス或いはウイルス又は病原性に由来する疾病の予防・治療に有効で、その病原性細菌等が原因となる炎症作用を軽減する方法としてダッタンソバ酵素処理物を家畜・家禽に給与することが知られている(特開2001−292706公報)。
【特許文献1】特開2001−292706公報
【非特許文献1】養鶏の友、2002年2月号46頁
【非特許文献2】養鶏の友、2003年2月号64頁
【非特許文献3】養鶏の友、2003年6月号64頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、抗生物質その他の薬剤等の使用による残留薬物の恐れや、薬剤耐性の生起の恐れの無い、人及びその他の動物にとって安全、無公害の飼料添加物を用いて家畜・家禽の排泄物量、排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、本課題の解決について鋭意研究の結果、ストレスを受けていない正常状態の家畜・家禽に対して、ダッタンソバを含有する飼料を給与することによって、家畜・家禽の排泄物量、排泄物水分量を顕著に低減出来ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。即ち、本発明は、ストレスを受けていない正常状態の家畜・家禽であって、ダッタンソバを含有する鶏の排泄物量、排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料である。
【発明の効果】
【0005】
人及びその他の動物に対して極めて安全な飼料を給して、家畜・家禽の排泄物量、排泄物水分量を顕著に低減出来る。又、糞中の水分含量の低減は、臭気や衛生上の問題についても有利な効果をもたらし、更には、このような排泄物は肥料化に際しても低公害の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の方法を実施するに当たっては、特にストレス等の異常状態にない、正常状態の家畜・家禽に、通常の飼料にダッタンソバを添加した飼料を給与する。ダッタンソバの使用量は、通常飼料に対し0.001〜7.5重量%、更に好ましくは、0.01〜2.5%混和して給与する。或いはダッタンソバを通常飼料に添加されるビタミン混合物、ビタミン・ミネラル混合物等と共に混和した、飼料添加物のような形で配合してもよい。
本発明においては、牛、豚、山羊、羊等の家畜、鶏、アヒル等の家禽に広く適用可能であり、なかでも、鶏に対しては特に本発明の効果が優れている。
【0007】
使用するダッタンソバは、日本国内産、中国産、雲南地方産等何れであってもよい。このとき、通常のソバを含んでいても良い。又、給与する形態は、乾燥したダッタンソバの実そのままでも良く、荒引きした顆粒状であっても良い。
【実施例】
【0008】
以下に本発明の実施例を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
8日齢雄ブロイラーを45cm×80cmのケージに2羽宛収容、1区10羽宛とした。ダッタンソバ給与区はトウモロコシおよび大豆粕を主体とする表1に示した基礎飼料に1.0%量になるようダッタンソバ粉(株式会社イナサワ商店)を添加した飼料を給与して、10日間飼育した。対照区は基礎飼料に1.0%量になるようトウモロコシを添加した飼料を給与した。
【0009】
【表1】

【0010】
注:※印は、ジャーナル・オブ・ニュートリション、108巻、739−748ページ、1978年(J.Nutr.108,739−748、1978)に記載のビタミン組成及びミネラル組成に拠った。
【0011】
飼育期間中、飼育成績としては10日間の増体量及び飼料摂取量を、排泄物に関しては後半の4日間に糞重量及び糞中水分含量を、並びに飲水摂取量を毎日測定した。飼育成績を表2に、排泄物量、その水分量及び飲水量を表3に示した。
尚、各表において統計処理は、SASハッケージを用いた。2元配置の分散分析を行なった後、t-テスト又はダンカンの多重検定で平均値間の比較を行なった。
【0012】
【表2】

【0013】
【表3】

【0014】
表2に示した如く、飼育成績、飼料効率には格別変化は認められなかったが、表3に示した如く、排泄物量及び排泄物水分含量は、ダッタンソバ給与区において対照区に比し大幅に低減し、有意な差が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレスを受けていない正常状態の家畜・家禽であって、ダッタンソバを含有する家畜・家禽の排泄物量及び又は排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料。
【請求項2】
家畜・家禽が鶏である請求項1に記載の家畜・家禽用飼料。
【請求項3】
ダッタンソバ含有量が飼料重量当り0.001〜7.5%である請求項1又は請求項2に記載の家畜・家禽の排泄物量及び又は排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料。
【請求項4】
ダッタンソバ含有量が飼料重量当り0.01〜2.5%である請求項1〜3の何れかに記載の鶏の排泄物量、排泄物水分量を低減する家畜・家禽用飼料。