説明

家畜用飼料組成物

【課題】低コストで製造可能な糞臭抑制、成長促進、糞量低減又は糞中水分含量低減の効果を有する家畜用飼料組成物を提供する。
【解決手段】油脂の精製工程で使用され、油分を15〜50質量%含む廃白土を含有する家畜用、特に家禽用の飼料組成物を家畜に給餌することにより、糞臭抑制、成長促進、糞量低減又は糞中水分含量低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用飼料組成物に関し、特に、家畜の糞臭抑制等の効果を有する、廃白土を含有した家畜用飼料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産事業において、家畜の排泄物を源とする悪臭の発生は、特に都市近郊の生産現場における重要な課題であり、これを従来よりも抑制し得る、低コストで優れた技術の開発が望まれている。
【0003】
また、畜産事業において、発育不良個体を減らし、かつ通常の飼育期間でも、低コストで高い成長を促す飼料の開発は産業上の大きな課題である。
【0004】
さらに、畜産事業において、糞尿処理が占めるコストは大きく、生産効率を維持したまま、糞尿処理に必要な費用、労力を低減させることは重要な課題となっており、糞量を低減させることのできる飼料の開発が望まれている。
【0005】
このような飼料として、例えば、酸性白土及びベントナイト及び/または天然ゼオライトより成る動物用飼料組成物(特許文献1参照)や、油脂精製に使用後、殺菌するとともに含有油分を取り除いてなる飼料添加物(特許文献2参照)が知られている。
【0006】
特許文献1には、当該動物用飼料組成物を動物に経口投与することにより軟便予防効果、消臭効果、及び発育促進効果が得られることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、当該飼料添加物により家畜の食欲を増進させる効果があるほか、牛の体内のガスや臭いを吸収し、糞の臭いを弱める効果があることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−52126号公報
【特許文献2】特開昭61−5748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の動物用飼料組成物は、酸性白土、すなわち油脂精製工程に用いられていない白土を使用しており、本来、油脂精製工程中に用いられる白土を家畜飼料に用いるには経済的負担が大きいという問題がある。
【0009】
また、特許文献2の飼料添加物においても、含有油分を取り除く処理等を行わなければならず、処理に要する費用コストの問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、低コストで製造可能な糞臭抑制、成長促進、糞量低減又は糞中水分含量低減の効果を有する家畜用飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、油分を15〜50質量%含む廃白土を含有することを特徴とする家畜用飼料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、低コストで製造可能な糞臭抑制、成長促進、糞量低減又は糞中水分含量低減の効果を有する家畜用飼料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔本発明の実施の形態に係る家畜用飼料組成物〕
本発明の実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、油脂の精製工程で15〜50質量%の油分を含んだ廃白土を含有する。
【0014】
(白土)
ここで言う白土とは、モンモリロナイトを主体とする粘土のことをいう。なお、特に限定されるものではないが、食品の製造工程においては通常、酸性白土を用いる場合が多い。また酸性白土は活性化処理を施されている場合もあり、これを活性白土という場合もある。本発明における白土とは、酸性白土、活性白土、いずれも含む。
【0015】
(廃白土)
本発明で用いられる廃白土は、油脂の精製工程で使用した後の白土である。本発明に使用される廃白土は、油分を15〜50質量%含むものであることが好ましく、20〜45質量%含むものであることがより好ましく、30〜40質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0016】
油脂としては、特に限定されるものではなく、液状油、固形脂いずれでもよい。特に限定されるものではないが、植物油が好ましく、例えば大豆油、ナタネ油、ヤシ油、パーム油及びそれらの混合油の精製に用いた廃白土を1種又は2種以上用いることができる。特にナタネ油の精製工程で用いられた廃白土を含有することが好ましい。
【0017】
(家畜)
本実施の形態に係る飼料組成物は、家畜用であり、ここで、家畜とは、鶏などの鳥類の家畜(家禽)及び牛、豚などの哺乳類の家畜をいう。中でも、鶏、豚、牛などの、糞臭や糞の水分が問題になる一般畜産動物に好適に用いることができる。また、愛玩用として飼育される犬、猫、小鳥に用いてもよい。特に、実施例に示すように家禽に用いた場合に糞臭抑制効果等が高い。
【0018】
(糞臭抑制効果)
本実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、糞臭抑制効果を有する。糞臭の主成分はアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素等であり、その他多くの成分も関与し、糞臭となる。特に、糞臭における重要な臭い成分のひとつがアンモニアであり、この揮散量を抑制することは糞臭抑制のために重要であり、本実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、この揮散量を抑制することができる。
【0019】
(成長促進効果)
本実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、成長促進効果を有する。成長促進とは、同一条件、同一期間で、飼育した場合に、当該組成物を飼料に添加あるいは混合することによって、増体重量もしくは飼料効率が比較対照よりも優れている状態を示す。
【0020】
(糞量低減効果又は糞中水分含量低減効果)
本実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、糞量低減効果又は糞中水分含量低減効果を有する。糞量が低減することで、処理コストが低減できる。また、糞中水分含量が低減することで、その扱いが容易になり、かつ、好気性のバクテリアが繁殖しやすくなるため堆肥化が進みやすくなる。
【0021】
(家畜用飼料組成物中の廃白土の含有量)
本実施の形態に係る家畜用飼料組成物は、糞臭抑制効果、糞量低減効果又は糞中水分含量低減効果を目的とする場合には、廃白土を0.5〜20質量%含有することが好ましい。また、成長促進効果を目的とする場合には、廃白土を0.5〜10質量%含有することが好ましく、0.5〜2.5質量%含有することがより好ましい。
【0022】
(家畜用飼料組成物中のその他の組成)
家畜用飼料組成物中のその他の組成(基本飼料組成)としては、特に制限は無く、鶏、豚、牛などの飼料として市販されている各飼料や、通常飼料原料として用いられているものを適宜配合して調製したものを用いることができる。具体的には、トウモロコシ、小麦、フスマ、胚芽、マイロ等の炭水化物、大豆粕やその他各種ミールの蛋白源、大豆油やナタネ油等の脂肪源、あるいは繊維源、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、クロロフィル類、さらには、油脂精製工程に使っていない白土や圧力、燃焼、溶剤、比重等によって油分の除去処理を行った廃白土を含有しても良い。
【0023】
また、形状や成型方法においても特に制限はなく、粉末状、ペレット状のもの等を用いることができる。
【0024】
(家畜用飼料組成物の製造方法)
基本飼料の原料を1種もしくは2種以上、混合した後、廃白土を添加、混合することにより製造できる。廃白土の添加、混合の方法及び工程に特に制限は無く、飼料成形時に廃白土を添加混合しても良い。また、給餌前あるいは給餌中に添加、混合しても良い。
【0025】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)家畜、特に家禽の糞臭抑制、成長促進、糞量低減又は糞中水分含量低減が可能となる。
(2)油脂の精製工程で生じた廃白土を使用するため、簡便に低コストで製造できる。
(3)多くは有効な用途が無いままに産業廃棄物として処理されていた廃白土を再利用するため、低コストで製造でき、かつ、廃棄処理コストの節減及び環境負荷の低減ができる。
【実施例】
【0026】
〔各種廃白土を含有する家畜用飼料組成物の糞臭抑制、成長促進及び糞量低減効果〕
大豆油、ナタネ油、ヤシ油及びパーム油の精製工程で使用した白土、すなわち、大豆油廃白土、ナタネ油廃白土、ヤシ油廃白土及びパーム油廃白土を含有する家畜用飼料組成物について、以下の方法により、糞臭抑制、成長促進及び糞量低減効果の試験を行った。なお、この実施例における未使用白土とは、油脂精製に用いられていない状態の白土を指すものである。
【0027】
(家畜用飼料組成物の製造例1)
油脂精製工程で常法に従い白土を使用した後、大豆油廃白土、ナタネ油廃白土、ヤシ油廃白土及びパーム油廃白土を表1に示す組成の基本飼料100に対し、1(質量比)となるように添加して実施例1〜4の家畜用飼料組成物を得た。それぞれの廃白土の脂質含量は表2に示す通りであった。
なお、油脂精製工程で用いた白土は水澤化学工業社製を使用した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
(試験方法)
供試鶏数:50羽
(対照区:10羽、実施例1〜4及び比較例:各8羽)
平均初期体重:約105g
投与期間:3週間
給餌方法:自由給餌、自由飲水
【0031】
対照区としては上記基本飼料のみからなる家畜用飼料組成物を用い、比較例としては油脂精製工程に使用していない未使用白土を上記基本飼料100に対し、1(質量比)となるように添加した家畜用飼料組成物を用いた。
【0032】
(糞臭抑制効果試験)
投与期間中の糞をすべて採取し、各試験区、2羽の投与期間1週間分の糞を全量50Lビニール袋に入れ、ポンプにより袋中の空気を充満し密閉する。その袋を23℃で24時間放置した後、(株)ガステックのアンモニア用ガス検知管No. 3L(0〜30ppm用)にて吸引測定を行いアンモニア揮散量を測定した。試験結果を図1に示す。
【0033】
図1より、実施例1〜4のすべてにおいて対照区よりもアンモニア揮散量が抑制されていることが分かった。また、実施例2,4において比較例よりもアンモニア揮散量が抑制されていることが分かった。
【0034】
(成長促進効果試験)
3週間(投与期間)飼育後の体重を比較した。試験結果を図2に示す。飼料効率(%)は、以下の式により求めた。
〔(3週間飼育後の体重−試験前の体重)/食餌量〕×100(%)
【0035】
図2より、実施例1〜4のすべてにおいて比較例よりも飼料効率が高まっていることが分かった。
【0036】
(糞量低減効果試験)
投与期間中の糞をすべて採取し、重量を測定した。試験結果を図3に示す。
【0037】
図3より、実施例1〜4のすべてにおいて対照区よりも糞の量が低減していることが分かった。
【0038】
〔各種配合率でナタネ油廃白土を含有する家畜用飼料組成物の成長促進及び糞中水分含量低減効果〕
各種配合率でナタネ油廃白土を含有する家畜用飼料組成物について、以下の方法により、成長促進及び糞中水分含量低減効果の試験を行った。
【0039】
(家畜用飼料組成物の製造例2)
油脂精製工程で使用後、未処理のナタネ油廃白土を表1に示す組成の基本飼料100に対し、1,2,5,10(質量比)となるように添加して実施例5〜8の家畜用飼料組成物を得た。ナタネ油廃白土の脂質含量は34.1%であった。なお、油脂精製工程で用いた白土は水澤化学工業社製を使用した。
【0040】
(試験方法)
供試鶏数:40羽
(対照区及び実施例5〜8:各8羽)
平均初期体重:約106g
投与期間:25日間
給餌方法:自由給餌、自由飲水
【0041】
対照区としては上記基本飼料のみからなる家畜用飼料組成物を用いた。
【0042】
(成長促進効果試験)
25日間飼育後の体重を比較した。試験結果を図4,5に示す。飼料効率(%)は、以下の式により求めた。
〔(25日間飼育後の体重−試験開始時の体重)/食餌量〕×100(%)
【0043】
図4,5より、実施例5〜8のすべてにおいて対照区よりも体重が増加し、飼料効率が高まっていることが分かった。
【0044】
(糞中水分含量低減効果試験)
投与期間中の糞をすべて採取し、糞中水分含量を測定した。試験結果を図6に示す。
【0045】
図6より、実施例5〜8のすべてにおいて対照区よりも糞中水分含量が低減していることが分かった。
【0046】
〔低配合率及び高配合率でナタネ油廃白土を含有する家畜用飼料組成物の糞臭抑制、成長促進及び糞中水分含量低減効果〕
低配合率及び高配合率でナタネ油廃白土を含有する家畜用飼料組成物について、以下の方法により、糞臭抑制、成長促進及び糞中水分含量低減効果の試験を行った。
【0047】
(家畜用飼料組成物の製造例3)
油脂精製工程で使用後、未処理のナタネ油廃白土を表1に示す組成の基本飼料(但し、植物油は市販大豆油に代えて市販キャノーラサラダ油を用いた)100に対し、0.5,20(質量比)となるように添加して実施例9〜10の家畜用飼料組成物を得た。ナタネ油廃白土の脂質含量は34.0%であった。なお、油脂精製工程で用いた白土は水澤化学工業社製を使用した。
【0048】
(試験方法)
供試鶏数:26羽
(対照区:10羽、実施例9〜10:各8羽)
平均初期体重:約59.3g
投与期間:7週間
給餌方法:自由給餌、自由飲水
【0049】
対照区としては上記基本飼料のみからなる家畜用飼料組成物を用いた。
【0050】
(糞臭抑制効果試験)
飼育45〜49日目の糞をすべて採取し、(文献:日本畜産学会報,73 (4), p.503−508, 2002)に記載の方法を用いてアンモニア揮散量を測定した。試験結果を図7に示す。
【0051】
図7より、実施例9,10において対照区よりもアンモニア揮散量が抑制されていることが分かった。
【0052】
(成長促進効果試験)
7週間飼育後の体重を比較した。試験結果を図8に示す。
【0053】
図8より、実施例9において対照区よりも体重が増加していることが分かった。
【0054】
(糞中水分含量低減効果試験)
飼育39〜43日目の糞をすべて採取し、糞中水分含量を測定した。試験結果を図9に示す。
【0055】
図9より、実施例9,10において対照区よりも糞中水分含量が低減していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1〜4の糞臭抑制効果試験結果を示す図である。
【図2】実施例1〜4の成長促進効果試験結果を示す図である。
【図3】実施例1〜4の糞量低減効果試験結果を示す図である。
【図4】実施例5〜8の成長促進効果試験結果を示す図である。
【図5】実施例5〜8の成長促進効果試験結果を示す図である。
【図6】実施例5〜8の糞中水分含量低減効果試験結果を示す図である。
【図7】実施例9〜10の糞臭抑制効果試験結果を示す図である。
【図8】実施例9〜10の成長促進効果試験結果を示す図である。
【図9】実施例9〜10の糞中水分含量低減効果試験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分を15〜50質量%含む廃白土を含有することを特徴とする家畜用飼料組成物。
【請求項2】
前記油分が、ナタネ油の精製工程で含まれた油分であることを特徴とする請求項1に記載の家畜用飼料組成物。
【請求項3】
前記家畜が、家禽であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の家畜用飼料組成物。
【請求項4】
前記廃白土を0.5〜20質量%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の家畜用飼料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−237153(P2008−237153A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84827(P2007−84827)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】