説明

容 器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品の容器などに使用するのに適した単層又は多層フィルムと、発泡シ−トとの積層発泡シ−トよりなる容器に関する。
【0002】
【従来の技術】発泡ポリスチレン、発泡ポリエステル、発泡ポリオレフィン等の合成樹脂よりなる発泡体のトレ−及び容器等(以下、トレ−と表現することもある)は低廉で且つ純白で清潔感があるので野菜類や肉類或いは魚類をはじめとしてすでに調理済みの食品に至るまでの種々の食品用容器として広く使用されている。
【0003】しかし、最近これらのトレ−を使用後、回収、再使用が叫ばれている。しかし、これらのトレ−の内面は洗浄しにくく、例えば調理済みの食品を収納したトレ−が、食品を残したまま廃棄されると極めて不衛生で時には悪臭を発生する場合があり、又生麺、ハム等の食品を収納する場合には日持を長くするため、発泡シ−トとは異質のフィルムを貼り合わせて使用している。そのため、このトレ−の回収、再使用は種々の問題があった。
【0004】これら回収方法の一つとしてトレ−内面を洗浄する代わりにポリオレフィンフィルムを貼着し、使用後このポリオレフィンフィルムを剥離してトレ−を再使用することが考えられている(実開平4−38942号公報参照)。しかし、異種のフィルムを貼り合わせたトレ−の回収、再使用については、いまだ良い提案がなされていない。
【0005】ところで、従来、トレ−本体にフィルムを貼着する方法としては、フィルム形成性重合体溶液をトレ−内面に塗布して被覆層を設けたり、或いは、接着剤で内面フィルムを貼着したりしているが、これらの方法によって得られたフィルムは、接着性が安定しないため、ある場合はフィルムが弱いために剥離中に切断したり、また、接着力が弱いために使用中に剥がれたり、更に、接着力が大きいときには使用後も剥離できない等の種々の問題があった。又、積層発泡シ−トで容器を形成する場合、発生する不要な部分(容器の打抜き残)の回収も材質の異なるフィルムと発泡シ−トを使用した場合分離しなければならず、分離の為に高価な設備が必要である。従ってやむえず焼却や埋立ての方法での処理も一部行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記の欠点を改良し、フイルムが破れることなく容易に発泡シ−トより剥離できる積層発泡シ−トについて種々検討した結果、本発明を完成したもので、本発明の目的はフィルムを発泡シ−トより破れること無く容易に剥離できる食品のトレ−に適した積層発泡シ−トを提供するものであり、且つ、トレ−の成形時に不要な部分(容器の打抜き残)も連続して、単層フィルム又は、積層フィルムと発泡シ−トが分離でき、それらが容易に回収出来ると同時に、機能上問題ないトレ−を提供するのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、発泡シ−トの少なくとも片面に単層フィルム又は積層フィルム(以後、フィルムと言うこともある)が積層された積層発泡シ−トから成形され、開口部周辺に鍔部を有する容器において、鍔部における前記フィルムと発泡シ−トとの剥離強度が100g/25mm巾〜400g/25mm巾であり、鍔部以外の容器本体における前記フィルムと発泡シ−トとの剥離強度が5g/25mm巾〜200g/25mm巾であることを特徴とする容器である。即ち、本発明においては、容器を構成する発泡シ−トの少なくとも片面に積層された単層又は積層フィルムの発泡シ−トとの剥離強度を容器本体を構成する部分と蓋体をシ−ルする鍔部を構成する部分とに差を持たせ、前者の剥離強度を後者の剥離強度より小さくすると共に、後者の剥離強度は100g/25mm巾〜400g/25mm巾とし、この部分も易剥離性を具備させたものである。
【0008】本発明について詳細に述べる。本発明で使用する発泡シ−トとしては、発泡ポリスチレン系シ−ト(以下、PSPということもある)、発泡ポリオレフィンシ−ト、或いは発泡ポリエステルシ−ト等であり、これら発泡シ−トは、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、或いはポリエステル系樹脂等を押出機内に供給し、加熱混練して溶融し、溶融状態の樹脂中に発泡剤を添加して製造する。本発明において使用するポリスチレン系樹脂とはスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン等のスチレン系ビニルモノマ−を主構成単位とする重合体を示すもので、この発明で使用する発泡ポリスチレン系シ−トとしてはスチレン系モノマ−を50重量%以上含有する共重合体もしくはポリスチレンホモ重合体で構成されている発泡シ−トであり、スチレン系モノマ−と共重合しうるモノマ−としてはアクリル酸、メタクリル酸もしくはこれらのエステル、アクリロニトリル、アクリルアシド、メタクリルニトリル、無水マレイン等である。
【0009】また、ポリオレフィン系樹脂としては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−カルボン酸エステル共重合体、エチレン−カルボン酸金属塩共重合体、結晶性プロピレンホモポリマ−、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性プロピレン−エチレン−ジエン三元共重合体であり、ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−トエラストマ−、結晶性ポリエステル、ポリシクロヘキサンテレフタレ−ト等を挙げることができる。
【0010】発泡剤としては、炭化水素、例えばプロパン、i−ブタン、n−ブタン、i−ペンタン、n−ペンタン、あるいはこれらの混合物、そしてN2、CO2、N2/CO2、水、水と−OH、−COOH、−CN、−NH3、−OSO3H、−NH、CO、NH2、−CONH2、−COOR、−CHSO3H、−SO3H、−COON4、−COONH4、の基を持つものとの混合物である。また、有機系発泡剤としてアゾジカルボン酸アミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、4、4’オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の発泡剤を挙げることができる。更に、重炭酸ナトリウム、クエン酸の如き有機酸若しくはその塩と重炭酸塩との組合せなども使用することができる。或いは、例えば重炭酸ナトリウムクエン酸のごとき有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との組合せやクエン酸エステル類等も使用できるが、これらは低分子オレフィン、流パラ牛脂油等でコ−ティングして使用できる。その他、これらの混合物である。
【0011】そして、その発泡倍率としては1.5〜20倍程度である。この発泡シ−トを形成するに当たっては、樹脂中には通常使用されている配合剤、例えば気泡調整剤、顔料等を添加しても良い。本発明における発泡シ−トの厚みについては特に規定はないが、通常この種のトレ−を構成する発泡シ−トの有する厚みを有しておればよい。
【0012】本発明で使用する発泡シ−トのフィルムを積層する側の表面のセルサイズは、0.5mm以下で、且つ、表面平滑性Rmaxが450μm以下にコントロ−ルされていることが好ましく、このような条件を具備することによって接着力の安定性を図ることができる。
【0013】本発明において、表面のセルサイズは、発泡シ−トの表面に積層されているフィルムを剥離し、短径気泡側の1直線10mm上にかかる気泡数を測定し、気泡の平均直径(d)を次式で算出した値である。
d=10/気泡数但し、高密度品等で表面全体を気泡が満してない場合は式の分子の10mmから気泡の出来てない全長を差し引いて計算する。
【0014】本願発明では、この方法によって測定したセルサイズの値を0.5mm以下とするのが好ましく、0.5mm以上の場合には、熱ロ−ル処理等を行っても表面平滑性を450μm以下にすることが難しく、(一般に熱ロ−ルの温度を上げると、発泡してさらに悪くなる)又、安定接着もしなくなり目的に沿い難い。この値は配合、金型、スリット、エヤ−冷却等の方法によってコントロ−ルすることができる。気泡を0.5mm以下にすると、発泡シ−トに菊模様が発生する。これを少なくする為に冷却エヤ−を5〜40℃で0.01m3/m2〜0.4m3/m2の量でコントロ−ルする。
【0015】また、発泡シ−トの表面平滑性は表面形状解析装置(明伸工機(株)製 SAS−2010)で測定した値の最大値をRmaxとし、この値を450μm以下にする。表面平滑性がRmaxで450μmを越えると、接着力をコントロ−ルするのが難しく、手で容易に剥離する状態に接着すると、成形時熱により部分的なデラミ(内部からの気体が膨張し、バブルになる)が発生し、目的に沿わない。この表面平滑性を調整するには気泡サイズ(現在の所気泡最小のものは5μmまで出来ている)エア−量、熱ロ−ル等の手段による。
【0016】発泡シ−トに積層されるフィルム層としては単層フィルム又は積層フィルムの何れでも良い。積層される単層フィルム又は積層フィルムを構成するポリマ−としては、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレンホモポリマ−、エチレン・プロピレンランダムポリマ−、エチレン・プロピレンブロックポリマ−、エチレン・プロピレン−ブテン−タ−ポリマ−、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体(例えば、エチレン−メチルメタクリレ−ト共重合体)、エチレン−不飽和カルボン酸金属塩共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸マグネシウム(又は亜鉛)共重合体)、プロピレン−塩化ビニルコポリマ−、プロピレン−ブテンコポリマ−、プロピレン−無水マレイン酸コポリマ−、プロピレン−オレフィン共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体)ポリエチレン又はポリプロピレンの不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸)変性物、エチレン−プロピレンゴム、アタクチックポリプロピレン等が挙げられ、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体があげられ、これらポリマ−の一種または二種以上の混合物等からなるフィルムが使用できる。
【0017】フィルム層として単層フィルムがガスバリヤ特性を有するフィルムを用いても良く、また、積層フィルムの場合、少なくともその一層がガスバリヤ特性を有するフィルムを積層しても良く、その場合、熱により積層するか、或いはバインダ−(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体及びスチレン・ブタジエン(ブロック)共重合エラストマ−、又はこれらの混合物等)を用いて積層しておいても良い。更にフィルム層としてアルミ箔やステンレス箔等の金属箔も使用できる。
【0018】上記結晶性ポリプロピレン系樹脂としては結晶性プロピレンホモポリマ−が好適であるが、それ以外に結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性エチレン−プロピレン−ジェン三元共重合体等のポリプロピレンを主とする重合体が挙げられる。その厚さとしては5〜500μm程度である。発泡シ−トに積層されるフィルムの厚みは5〜500μmであって、フィルム厚み5μm未満のフィルム単体を押出した場合、ピンホ−ル等を発生しやすい。又、5μm未満のフィルム単体を共押出しにより本発明の積層発泡シ−トを製造した場合、フィルムが破れ穴があく場合が生じることがあり、また、500μm以上では経済性が悪く、熱積層ラミ等の場合、フィルムの熱容量が大き過ぎて発泡シ−トが熱におかされる。また、成形時発泡シ−トと分離する場合があるため成形が困難である。
【0019】発泡シ−トとフィルムとの積層は、圧着ロ−ルや熱ロ−ルによる圧着の外、共押出し方法によって行っても良い。その理由は安定性、作業性、経済性の理由からである。共押出し方法において発泡シ−トとフィルム間に接着剤を介在させてもよく、その際、使用できる接着剤としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体、メタアクリル酸メチル重合体等である。そして、上記以外に発泡シ−トとフィルムとの積層に際しては、接着剤を使用して積層しても良い。接着剤としては一般の熱可塑性樹脂系、ゴム系、複合系が使用できるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体エラストマ−(タフプレン、タフデック)等が使い易い。また、本発明における積層発泡シ−トにおいて、フィルムは発泡層の片面のみならず、両面に積層しても良い。
【0020】発泡体シ−トに積層するガスバリヤ性フィルムとしては、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリビニルアルコ−ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン系・アクリロニトリル共重合体、アクリルニトリル系メチルメタアクリレ−ト・ブタジジエン共重合体、ナイロン6、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−ト、二軸延伸ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、アイオノマ−樹脂(例えば、登録商標サ−リン)等のフィルム、或は、金属蒸着フィルムの単独、もしくは、これら重合体の組み合わせたフィルムが用いられる。更に、本発明においては、例えば内容物の日持ちを長引かせるために発泡シ−トに予め抗菌剤、例えば銀イオン、ワサビ注出液等をねり込んだフィルムやガスバリヤ性フィルム等の異質の樹脂を貼り合わせ更にその上にフィルムを積層し容器を成形し、使用後これを分離することも出来る。
【0021】本発明において、成形した容器の容器本体部分の発泡シ−トと単層又は積層フィルムとの剥離強度については5g/25mm巾〜200g/25mm巾の範囲とする。5グラム/25mm未満では容器として使用中に剥離してしまい、他方、200グラム/25mmを越えると成形時不要となった部分が連続して剥離しにくくなり、従って成形時の作業性が良くない。この剥離強度とは、Orientec Corporation RTM−500を使用し、毎分200mmのスピ−ドで180度剥離したときの測定値である。
【0022】本発明において、発泡体シ−トとガスバリヤ−性フィルムとの積層にあっては、接着剤による積層、或いは熱ロ−ルによる積層、コ・エクストル−ジョンによる積層等何れでも良い。使用しうる接着剤としては熱可塑性樹脂系接着剤、熱可塑性エラストマ−系接着剤、感圧型接着剤、ホットメルト型接着剤、ゴム系接着剤等の何れでも良い。熱圧着の場合には、熱ロ−ルで接合面の反対側より加熱、圧着する。この場合、加熱、圧着するロ−ルの表面は、クロムメッキ又はテフロンコ−ティングを行い、加熱されたフィルムとの接着を防止している。本発明においては、熱ロ−ルによる加熱圧着と共に、接合面を加熱装置によって加熱することが好ましい。
【0023】このような積層発泡シ−トを用いて容器を成形する場合は、ガスバリヤフイルムを容器の内側に積層しないと効果が少ない。従って、このフイルム上に蓋体を軽くシ−ルすることになる。この場合、フィルムと発泡シ−トとの剥離強度が約100g/25mm巾未満だと容器を使用するために蓋体をはがすとフィルムもはがれることもあり問題となり、好ましくは、200g/25mm巾以上である方が良い。また、400g/25mm巾を超える場合は剥離が容易でない。
【0024】本発明の発泡シ−トとフィルムとの剥離強度を調整するには、例えばポリスチレン樹脂を押出機に供給し、溶融したポリスチレン樹脂に発泡剤を添加し、押出発泡後、熱ロ−ル処理して捲取るか、或いは、発泡体の表面気泡を0.5mm以下とし、菊模様の発生をおさえるため、空気を吹きかけながらロ−ルで圧着、捲取る方法で製作した発泡シ−トに、単層また積層フィルムを熱ロ−ル等で貼り合せ、2秒以内に冷却することで可能である。
【0025】蓋体の部分の剥離強度は金型の加工形状や、成形プレス圧や金型クリアランスにも関係するので、蓋体をシ−ルする部分とその他の部分との間に発泡体とフィルムとの剥離強度の差を持たせる方法としては、成形型の蓋体をシ−ルする位置に凸凹のスジを付けたり、ロ−レット加工、ナシジ加工又はリング状に容器の鍔部にそって溝をつけたりしておくと、成形時の型プレスでプレスされた部分だけ剥離強度が20〜200%以上あがり、問題が解決できる。
【0026】例えば、丼容器等を成形した場合、鍔部を強くプレスすることにより容器の機能を満足させ、容器打抜き後の不要な部分は材質の異なるフィルムと発泡シ−トを分離でき回収した樹脂を再利用できる。同様な効果はバインダ−を発泡させたり、バインダ−にフィラ−を混合すればより顕著になり、鍔部の強度と不要な部分の剥離強度の差が大きくなり、剥離しやすくなる。(鍔部を強くプレスした部分はより強くなり、不良な部分の剥離はより弱くなる。)
【0027】次に本発明の容器を製造するための金型を図1に示す。図1に示すように金型1の内部には温度調節用の配管2が配管されており、鍔部に対応する部分3が突出している。そして、図2〜4に鍔部の蓋体をシ−ルする形状を示すと、図2は鍔にそって溝を付けたもの、図3はロ−レット加工、図4はナシジ加工となるがこれらの形状は限定されるものではない。
【0028】
【実施例】次に実施例をもって、更に本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1MIが4.1のポリスチレン樹脂(デンカ製HRM−5)100重量部に気泡調整材としてタルク微粉末0.5重量部とハイドロセロ−ルCF0.2重量部を添加、これを内径が90mmの押出機に供給し、225℃で溶融し、これに発泡剤としてブタンガスを加え、押出量90Kg/H押出機先端部の金型から押出した。そして、引取機のSロ−ル(温調ロ−ル)温度を130℃にし引取った。発泡シ−トの厚さは2.35mm、坪量285g/m2、表面粗さのRmaxは135μmであった。このシ−トにEVA(VAC含量11%)/NA/EVOH/PSよりなる積層フィルム110μmを熱ロ−ル170℃、スピ−ド7m/minで融着、約3秒後に21℃に設定した冷却ロ−ルで冷却した。得られた積層発泡シ−トの発泡シ−トとフィルムとの剥離強度を5回測定した。平均剥離強度は86gで、バラッキ(最大−最小)/平均×100=10.5%であった。(剥離強度はサンプル巾25mmとし、テンシロンRTM−500にて200mm/minのスピ−ドで180度剥離した時の測定値である。)
【0029】成形用金型(丼容器172mm径×52H)のプラグで容器に成形したときフタをシ−ルする部分にあたるプラグの部分(鍔と言う)をロ−レット加工(溝ピッチ2mm、深さ1mm)した成形用金型を用いこの積層シ−トをヒ−タ温度約395℃5.5sec/サイクルで丼容器に成形し連続して打抜いた。容器の打抜き残は、フィルムと発泡体に剥離しながら分離出来た。成形した容器の蓋とのシ−ル部(鍔)の積層フィルムと発泡体との剥離強度は165g/25mm巾であり他の部分の剥離強度は92g/25mm巾であり打抜残(耳部と言う)の剥離強度は88g/25mm巾であった。この時成形機内での成形直前の発泡厚みは約4.8mmであり成形用金型のフタをシ−ルする部分のツバの所の型クリアランスは2.5mmであった。この容器にフタをシ−ル後、フタを剥がしても積層フィルムの剥離はなかった。
比較例1実施例1の積層シ−トを成形用金型のフタをシ−ルする部分のツバの所の型のクリアランスを3.5mmとして実施例1と同条件で成形した所、フタシ−ル部(リブ)の剥離強度は99g/25mm巾であり、フタをシ−ル後、剥がした所、積層フィルムも同時に剥離した。
【0030】実施例2MIが4.1のポリスチレン樹脂(デンカ製HRM−5)100重量部に気泡調整材としてタルク微粉末5重量部を添加、これを内径が90mmの押出機に供給し、235℃で溶融し、これに発泡剤としてブタンガス(イソ/ノルマル=68/32)を加え、押出機先端部の金型から押出した。そして、引取機のSロ−ル(温調ロ−ル)温度を130℃にし、引取った。発泡シ−トの厚さは1.95mm、坪量370g/m2、表面粗さのRmaxは67μmであった。このシ−トにEVA(VAC含量11%)/PSよりなる積層フィルム約105μmを熱ロ−ル220℃、熱風温度90℃でスピ−ド4m/minで融着、約5秒後に22℃に設定した冷却ロ−ルで冷却した。得られた積層発泡シ−トの発泡シ−トとフィルムとの剥離強度を5回測定した。平均剥離強度は163gで、バラッキ(最大−最小)/平均×100=5.3%であった。(剥離強度はサンプル巾25mmとし、テンシロンRTM−500にて200mm/minのスピ−ドで180度剥離した時の測定値である。)この積層発泡シ−トを実施例1と同じ成形用金型を有する成形機で丼容器をヒ−タ−温度約405℃で5.6sec/サイクルで成形し連続して打抜いた。この時打抜残(耳部)をロ−ル状に捲取って置き、1日後、容器の打抜残(耳部)をフィルムと発泡体に剥離した所分離出来た。成形した容器の蓋とのシ−ル部の積層フィルムと発泡体との剥離強度は261g/25mm巾であり他部分は196g/25mm巾であった。耳部の剥離は184g/25mmであり、成形金型のフタをシ−ルする部分のリブの所の型のクリアランスは1.9mmでありその時の積層シ−トの成形直前の2次厚みは3.7mmであった。この容器に蓋をシ−ル後剥がしても積層フィルムの剥離はなかった。
【0031】比較例2実施例2の積層フィルムと発泡シ−トのラミ条件で熱風温度を約105℃に上げた所、耳部の剥離強度が平均水準で218g/25mm巾となり耳部の巾が約5mm以下となった所でフィルムの切断が一部発生した。
【0032】実施例3市場から集めた使用ずみポリスチレン製トレ−を洗浄粉砕し、回収機でペレット化した。このペレットのM1は6.7(JIS−K6870の方法で測定)でゴム分として粒径約1〜6μmのブタジエンがサラミ構造状として、0.1%混っていた。このペレットには粒径約1μmのタルク0.5部とステアリン酸カルシュウム0.2を加え、気泡調製し90mm押出機(L/D=40)に供給し最高温度220℃で溶融後発泡剤としてノルマルブタン/イソブタン=4/6の比率で2.5%加え、発泡適正温度にした後、押出機先端の金型より押し出し発泡するとほぼ同時にエア−を0.12Nm3/m2加え、熱ロ−ル使用せず引取った。発泡シ−トの厚さは1.15mm、坪量335g/m2で表面のRmaxは235μmであった。このシ−トを1日放置後このシ−トに481μmの厚みのHI(耐衝撃性樹脂ゴム分約6%)フィルムを、熱ロ−ル185℃、熱風155℃で5m/minのスピ−ドにて加熱融着した後すぐに21℃の冷却水を流したロ−ルにタッチさせてフィルム側を冷却した。得られた積層発泡シ−トの発泡シ−トとフィルムの剥離強度を5回測定した。平均剥離強度は55g/25mm巾でバラツキは15.6%であった。この積層発泡シ−トを鍔部をロ−レット加工(溝ピッチ2mm深さ1.5mm)したグラタン容器の型155L×125W×31Hを有する成形機でヒ−タ−温度約410℃で7.8sec/サイクルで成形した。同時に容器の打抜残(耳部)をフィルムと発泡体に剥離した所問題なくスム−スに出来た。成形した容器のフタシ−ル部の剥離強度は平均で108g/25mm巾であった。鍔の所の型のクリアランスは1.2mmであり、積層シ−トの成形直前の2次厚みは2.1mmであった。この容器に蓋をシ−ル後蓋を剥がしても積層フィルムの剥離はなかった。
【0033】実施例4ホモポリプロピレン(ハイモント製)XPF−814に、気泡調整剤ハイドロセロ−ル(大日精化販売)0.2部を加え、90φ押出機でシリンダ−温度230℃〜245℃でi−ブタンを加え、71Kg/Hrの押出量で押出金型に流入し、一方、65φの押出機よりPS/HI(ブタジエン6%)=1/1で、フィルム用樹脂として230℃で溶融して22Kg/Hrの押出量で押出金型に流入し、又、45φよりEVA(VA6%)を、押出量7Kg/Hrとし押出金型に流入し共押出して、積層シ−トを得た。表面のRmaxは410μmであった。この積層発泡シ−トは、厚さ1.41mmで、坪量420g/m2、フィルムを剥がした所、剥離強度は86gで、バラツキは27%であった。この積層発泡シ−トを鍔部に図のAの様な筋(溝ピッチ2mm深さ1.0mm)を入れた丼容器172mm×52Hを成形機で420℃12sec/サイクルで成形した。同時に容器を打抜、打抜残(耳部)をフィルムと発泡体に分離した所問題はなかった。成形した容器のリブ部の剥離強度は平均で151g/25mm巾であった。鍔部の型のクリアランスは0.5mmであり、積層シ−トの成形直前の2次厚みは1.52mmであった。この容器に蓋をシ−ル後、蓋を剥がしても積層フィルムの剥離はなかった。
【0034】実施例5実施例4と同タイプのコ・エクストル−ジョン設備で発泡使用の押出機として口径115mmとした装置で、実施例3と同配合の原料をシリンダ−温度180〜225℃でi−ブタンを注入し冷却後146Kg/Hで押出金型に流入し、一部65φの押出機にPS/HI(ブタジエン6%)=1/1を投入しシリンダ−温度約200℃としi−ブタンを0.5%注入し冷却し押出量17Kg/Hで押出金型に流入し、又、45φ押出機でEVA(VA11%)を加熱冷却し、押出金型に押出量9Kg/Hで流入し、積層発泡シ−トを作成した。積層発泡シ−トの厚さは1.55mmで坪量436g/m2でフィルムを剥がした所剥離強度144g/25mm巾であった。この積層発泡シ−トを実施例3と同金型で395℃で5.5secで成形した所発泡体とPS/HIシ−トの分離は問題なかった。成形容器のリブ部の剥離強度は平均で275g/25mm巾であり、容器の鍔外の剥離強度は平均で186g/25mm巾であった。なお、成形直前の2次厚みは3.05mmであり、耳部の剥離強度は平均179g/25mm巾であった。
【0035】比較例3実施例1の発泡シ−トに90φ押出機から約240℃に加熱溶融した、HIPS樹脂(VA量6%)を押出し約60μmとし、且つ、空冷しながら実施例1と同フィルムをはさみ圧着した。発泡体フィルムの剥離強度は226g/25mm巾となり、実施例1と同金型でリブ部のクリアランス3.1mmとし成形した所、発泡体とフィルムとの分離時、切断が発生した。この時、耳部の平均剥離強度は239g/25mm巾であった。又、形成容器の鍔の剥離強度は平均で294g/25mm巾であり容器の鍔外の剥離強度は平均で272g/25mm巾であった。尚、積層発泡シ−トの厚みの平均は2.46であり成形直前の発泡厚みは約5.2mmであった。
【0036】以上の実施例及び比較例の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】
【表3】


【0040】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、発泡シ−トの少なくとも片面に単層フィルム又は積層フィルムが積層された積層発泡シ−トから成形され、開口部周辺に鍔部を有する容器において、鍔部における前記フィルムと発泡シ−トとの剥離強度と、鍔部以外の容器本体における前記フィルムと発泡シ−トとの剥離強度に差を持たせ、しかも、鍔部における前記フィルムと発泡シ−トとの剥離強度を100g/25mm巾〜400g/25mm巾に規定したことによって容易にフィルムを剥離することができるが、容器の蓋体を取り開封するときには何等の支障を生せず、また、容器本体部分の剥離強度を5g/25mm巾〜200g/25mm巾と規定したことによって、フィルムは極めて容易に剥離できると共に、容器を成形しトリミング後の耳部の部分も容易に剥離できるので作業性は良好で、剥離した後の発泡シ−トは再使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】a 本発明の容器を製造するための金型の側面図。
b 本発明の容器の鍔部に対応する部分の金型表面を3実施例で示した部分詳細図。
【図2】a 図1におけるA部の部分拡大図。
b 図2aのA−A’線における断面図。
【図3】a 図1におけるB部の部分拡大図。
b 図3aのB−B’線における断面図。
【図4】a 図1におけるC部の部分拡大図。b 図4aのC−C’線における断面図。
【符号の説明】
1 金型 2 温度調節用管 3 鍔部に相当する突出部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発泡シートの少なくとも片面に単層フィルム又は積層フィルムが積層された積層発泡シートから成形され、開口部周辺に鍔部を有する容器において、泡シートのフィルムを積層する側の表面のセルサイズを0.5mm以下とし、且つ、容器の鍔部における前記フィルムと発泡シートとの剥離強度が100g/25mm巾〜400g/25mm巾であり、鍔部以外の容器本体における前記フィルムと発泡シートとの剥離強度が5g/25mm巾〜200g/25mm巾であることを特徴とする容器。
【請求項2】 発泡シ−トが使用済後の回収品を再使用したものである請求項第1項記載の容器。
【請求項3】 単層フィルムがガスバリヤ特性を有するフィルム又は積層フィルムの少なくとも一つがガスバリヤ特性を有する積層フイルムであることを特徴とする請求項第1項及び第2項記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2896841号
【登録日】平成11年(1999)3月12日
【発行日】平成11年(1999)5月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−336700
【出願日】平成5年(1993)12月28日
【公開番号】特開平7−187192
【公開日】平成7年(1995)7月25日
【審査請求日】平成9年(1997)4月28日
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【参考文献】
【文献】実開 平4−112028(JP,U)
【文献】実開 昭61−59589(JP,U)
【文献】実開 平5−29914(JP,U)
【文献】実開 平6−37138(JP,U)