説明

容器の内蓋及びこの内蓋を有する容器の蓋

【課題】 用済み後に乾燥剤を容易に分離回収して分別廃棄し得るようにした内蓋を提供する。
【解決手段】 内部に乾燥剤4を収容した状態で内蓋5を外蓋3に内嵌させて装着する。用済み後は摘み片531を掴んで引くことにより内周フランジ53を弱化部55に沿って引き千切って内蓋の周壁51から分離する。外蓋を傾ければ乾燥剤は落下する。使用状態では、内周フランジにより乾燥剤が落下しないように乾燥剤の下面周縁部を支持させる。下側開口部512に通気性のあるメッシュ部材を設けるようにしてもよい。内蓋自体を外す必要がないため、乾燥剤の分離作業は容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に乾燥剤を収容した状態で外蓋に対し装着される内蓋であって、かかる内蓋を装着した状態の外蓋で容器の口部を閉栓することにより容器内の雰囲気を防湿又は調湿された状態に維持するために用いられる、乾燥剤を収容するための内蓋、及び、この内蓋を有する蓋に関する。特に、用済み後に乾燥剤を容易に分別廃棄し得るようにするための技術、あるいは、使用中は容器の口部におけるシール機能を担保して容器の気密性を向上させる一方、用済み後は上記の如き容易に分別廃棄し得るようにするための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に湿気を嫌う例えば薬剤等を収納する場合には、容器の口部を開閉可能に閉止するための蓋体に乾燥剤を収容させて、その乾燥剤の吸湿機能又は調湿機能により容器内の雰囲気を所定の状態に保持させるという防湿が行われている。
【0003】
このような防湿を実現させるために、外蓋の内側に有底円筒状の内蓋を着脱可能に装着し、この内蓋の内部に乾燥剤を収容したものが知られている。このものでは、内蓋の底板部に貫通させた通気孔を通して容器内の雰囲気と乾燥剤とを接触させて、乾燥剤に容器内の雰囲気に含まれる水分を吸湿させて防湿を図るようにしている。
【0004】
そして、容器内に収納していた薬剤等の全てが消費されて廃棄される段階に至れば、特に乾燥剤を分別廃棄するために内蓋を外蓋から取り外して内部の乾燥剤を取り出す必要がある。このときの内蓋の取り外し作業を容易にするための技術として、例えば特許文献1では、内蓋の底板部に円形の窓孔を貫通形成し、この窓孔を横切るブリッジのように配置した帯状部を内蓋と一体に合成樹脂成形して連結したものが提案されている。又、例えば特許文献2では、有底円筒状の内蓋の底板部に指で引き起こし可能な操作部を一体に形成したものが提案されている。
【0005】
又、これら特許文献1又は特許文献2で提案されたものでは、内蓋として、上端縁から外周側にフランジが突出したもので構成し、外蓋を容器の口部に外嵌させてねじ込むことにより、上記フランジを外蓋の頂壁の内下面と、容器の口部の先端面との間で挟み込んで、閉栓させるようにしている(例えば特許文献1の図1又は特許文献2の図4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−326656号公報
【特許文献2】特開2005−41526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の従来提案されている技術は、いずれも内蓋を外蓋から取り外すための技術であり、これを実現させるために、取り外すための操作力を内蓋に加えるためのブリッジ状の帯状部や引き起こし操作部を底板部に一体に形成しておくというものではあるが、現実には乾燥剤を容易に取り出し得るというものではない。すなわち、容器内の薬剤等を使用する場合には外蓋を開け、薬剤の取り出しが終われば外蓋を容器の口部にねじ込んで閉栓する必要があり、この開閉操作の際に内蓋が外蓋から脱落してはならないため、内蓋は外蓋に対し強固に装着されている必要がある。このように強固に装着されているからこそ、上記のブリッジ状の帯状部や引き起こし操作部を形成して相応の操作力を加え易くする必要が生じるのである。
【0008】
しかしながら、外蓋に対する内蓋の装着は合成樹脂素材の弾性もしくは変形容易性を利用した嵌合もしくは圧入という手段が通常用いられているため、その装着を強固にすることと、外蓋から内蓋を取り外すための操作力を軽くすることとは、相容れない要求であり、双方を共に満足させることは極めて困難となる。このため、上記提案の技術では、容器が用済み段階になったときの乾燥剤の分離回収や分別廃棄を十分に現実のものとして普及させることはできない。
【0009】
又、特許文献1に開示のものでは、収納皿の底壁の一部を切取部とし、この切り取りを分離可能とするための分離線として、通気孔と兼用し得る程度に完全に開口した状態の隙間を形成しているが、これでは、乾燥剤の脱落を招くおそれがある。すなわち、乾燥剤を収容させた状態で収納皿をキャップに組み立てた後の工程(例えばパーツフィーダでの搬送段階や、輸送段階等)において、落下等により衝撃が加わると、内部に収容した乾燥剤の自重によって分離線で破断してしまい、これにより、乾燥剤が脱落するおそれもある。
【0010】
更に、上記の従来提案されている蓋では、容器内と容器外との間を遮断して容器内を気密に保持するというシール機能が十分ではないおそれがある。すなわち、図25に示すように、従来からのシール機能担保のためのシール対象とされている容器101の口部102先端面とフランジ103下面との間の境界を通しての漏洩経路aの他に、内蓋104の通気孔105、内部の収容空間106及びフランジ103上面と外蓋107の内下面との間の境界を通しての漏洩経路bの存在も考えられ、この漏洩経路bによりシール機能が損なわれるおそれがある。又、外蓋107を容器101の口部102に外嵌させて両者をねじ締結させることにより、外蓋107の内下面と容器101の口部102の先端面との間に内蓋104のフランジ103の上下面を挟み付けるようにしたとしても、面と面との接触に基づくシール機能の発揮であるため、局所的なへたり・傾き・ずれに起因してシール機能が損なわれ易くなるおそれもある。以上の結果、容器101の気密性が損なわれ易くなってしまうことになる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用済み後の廃棄時等における乾燥剤の分離回収や分別廃棄を容易に実現させ得る内蓋を提供することにある。又、このような分離回収や分別廃棄の容易さの実現に加え、乾燥剤等を収容させるための内蓋と外蓋とからなる容器の蓋において、容器内外間のシール機能を十分に担保して容器の気密性を向上し得るようにすることも併せて実現し得るようにすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、容器の内蓋に係る発明では、上下方向に開口し内部が乾燥剤の収容空間とされた周壁と、この周壁の下端縁から径方向内方に突出して内部の乾燥剤が脱落しないように支持する内周フランジとを備えたものとし、上記内周フランジを、引き千切り可能な程度に弱められた線状の弱化部を介して上記周壁と一体に形成し、上記弱化部を、上記周壁と内周フランジとの両者間の境界位置に沿って全周に亘り形成することとした(請求項1)。
【0013】
この発明の場合、内蓋の周壁内の収容空間に乾燥剤を収容した状態で容器の口部を閉栓すれば、周壁の下側開口部となる内周フランジの内周縁により区画される開口部を通して乾燥剤が容器内の雰囲気と接触し、これにより、容器内が所定の乾燥状態に維持されることになる。そして、用済みになれば、内周フランジを弱化部に沿って引き千切れば周壁の下端側が収容空間と同等の開口に拡大されるため、乾燥剤を外部に落下させれば分離回収し得ることになる。この際、乾燥剤の分離回収のために内蓋自身を外蓋から取り外す必要がなく、内周フランジを引き千切るだけでよいため、乾燥剤の分別廃棄を容易に実現させ得ることになる。
【0014】
上記発明においては、以下の如く特定事項をより具体化したり、更なる特定事項を追加したりすることにより、更なる作用が得られることになる。すなわち、上記発明における内周フランジとして、その周方向一部に摘み片を備え、この摘み片を引くことにより摘み片を始端として内周フランジが上記弱化部に沿って引き千切られる構成とすることができる(請求項2)。このようにすることにより、用済み時には、摘み片を掴んで引っ張るだけで内周フランジが摘み片を始端として引き千切られていくことになる。これにより、内周フランジを引き千切る作業の一層の容易化が図られる結果、乾燥剤の分別廃棄の実現性もより一層高め得ることになる。
【0015】
上記発明において、上記内周フランジの内周縁側同士を互いに連結して補強する補強部材をさらに備えるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、内周フランジの自由端縁となる内周縁が補強部材により連結されて剛性が高まり、乾燥剤の支持機能も確実化させる得ることになる。
【0016】
又、上記内周フランジの内周縁側の開口部を覆うように接合された、通気性を有するメッシュ部材をさらに備えるようにすることができる(請求項4)。このようにすることにより、容器内の乾燥対象が粉粒状等の形態のものであっても、メッシュ部材により区画されるため、周壁内の収容空間側に入り込むことを抑制させ得ることになる。
【0017】
さらに、上記発明における弱化部として、上記収容空間の内面側に開口する微小幅の凹溝により構成することもできる(請求項5)。このようにすることにより、内周フランジを外側から引き千切ろうとする力がせん断力として上記凹溝の開口側から即座に作用することになる。このため、弱化部を破断させるきっかけを与えるとになり、これにより、内周フランジを確実にその弱化部で引き千切ることが可能となる。又、上記のメッシュ部材をたとえ内周フランジの内面側に溶着又は接着等により設けるようにした場合であっても、そのメッシュ部材が覆うのは開口側であり、内周フランジの引き千切る際の抵抗を可及的に小さくして、内周フランジを確実に引き千切ることが可能となる。
【0018】
一方、容器の蓋に係る発明では、以上の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の容器の内蓋と、頂壁及び周壁を有し容器の口部に対しねじ込まれる外蓋とからなり、上記内蓋にはその周壁の上端開口縁から径方向外方に全周に亘り突出し閉栓状態では上記外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになる外周フランジが一体に形成されているようにする。そして、上記外周フランジは、上記閉栓状態において下面側に上記容器の口部の先端から上向きの押圧を受けて弾性変形することになる外周フランジ本体部と、この外周フランジ本体部の内周側位置から上方に突出する内周側の環状凸部と、上記外周フランジ本体部の外周側位置から上方に突出する外周側の環状凸部とを備えて構成し、上記内外周の環状凸部の内、少なくとも内周側の環状凸部を、その突出端が上記外蓋の内下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状を有しかつ全周に亘り無端状態に形成することとした(請求項6)。
【0019】
この容器の蓋に係る発明の場合、閉栓状態において外周フランジ本体部がその下面側から容器の口部の先端から押圧を受けて弾性変形し、その弾性復元力が容器の口部の先端と、外蓋の内下面との間で作用した状態となる。この弾性復元力によって、内周側の環状凸部と外周側の環状凸部とが外蓋の内下面に対し上向きに押し付けられると同時に、外周フランジ本体部の下面が容器の口部の先端に対し下向きに押し付けられることになる。これにより、外周フランジと容器の口部との間の境界を通しての漏洩経路も、外周フランジと外蓋との間の境界を通しての漏洩経路も、共に確実に遮断して容器と蓋との間のシール機能を担保して、容器の気密性を向上させ得ることになる。しかも、上記の弾性復元力に基づき押し付けられる環状凸部は線接触での接触から密着に至るため、面と面との接触に比べ、漏洩経路の遮断性を増強して、シール機能の担保をより確実なものとなし得ることになる。又、上記の如く環状凸部の突出端が外蓋の内下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状とされているため、内蓋が外蓋に対し心ずれした状態で装着されていたとしても、閉栓操作時の締め込みの際に環状凸部の突出端が外蓋の内下面に沿って滑り易くなり、締め込みの際の周方向への回転操作力を受けて内蓋が周方向に相対変位を引き起こす結果、内蓋が外蓋に対し自動的に心ずれを修正して同心(同軸)配置になるように再配置されることになる。そして、このような調心機能を発揮することにより、内蓋が外蓋に対し確実に同心位置に装着されることになり、これに伴い、上記のシール機能の担保をより一層確実なものとなし得る。
【0020】
又、容器の蓋に係る他の発明では、上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の容器の内蓋と、頂壁及び周壁を有し容器の口部に対しねじ込まれる外蓋とからなり、上記内蓋にはその周壁の上端開口縁から径方向外方に全周に亘り突出し閉栓状態では上記外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになる外周フランジが一体に形成されているようにする。これに対し、上記外周フランジと外蓋の内下面との間に配設され、上記閉栓状態では上記外周フランジと共に外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになるシート状パッキンをさらに備えて、容器の蓋を構成することとする。そして、上記外周フランジとして、上記閉栓状態において下面側に上記容器の口部の先端から上向きの押圧を受けて弾性変形することになる外周フランジ本体部と、この外周フランジ本体部の内周側位置から上方に突出する内周側の環状凸部と、上記外周フランジ本体部の外周側位置から上方に突出する外周側の環状凸部とを備えて構成し、上記内外周の環状凸部の内、少なくとも内周側の環状凸部を、その突出端が上記シート状パッキンの下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状を有しかつ全周に亘り無端状態に形成することとした(請求項7)。
【0021】
この容器の蓋に係る発明の場合、閉栓状態において外周フランジ本体部がその下面側から容器の口部の先端から押圧を受けて弾性変形し、その弾性復元力が容器の口部の先端と、シート状パッキンの下面との間で作用した状態となる。この弾性復元力によって、内周側の環状凸部と外周側の環状凸部とがシート状パッキンの下面に対し上向きに押し付けられると同時に、外周フランジ本体部の下面が容器の口部の先端に対し下向きに押し付けられることになる。これにより、外周フランジと容器の口部との間の境界を通しての漏洩経路も、外周フランジとシート状パッキンとの間の境界を通しての漏洩経路も、共に確実に遮断して容器と蓋との間のシール機能を担保して、容器の気密性を向上させ得ることになる。しかも、上記の弾性復元力に基づき押し付けられる環状凸部は線接触での接触から密着に至るため、面と面との接触に比べ、漏洩経路の遮断性を増強して、シール機能の担保をより確実なものとなし得ることになる。さらに、請求項6の発明の場合と同様に、環状凸部の突出端がシート状パッキンの下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状とされているため、内蓋が外蓋に対し心ずれした状態で装着されていたとしても、閉栓操作時の締め込みの際に環状凸部の突出端がシート状パッキンに沿って滑り易くなり、締め込みの際の周方向への回転操作力を受けて内蓋が周方向に相対変位を引き起こす結果、内蓋が外蓋に対し自動的に心ずれを修正して同心(同軸)配置になるように再配置されることになる。そして、このような調心機能を発揮することにより、内蓋が外蓋に対し確実に同心位置に装着されることになり、これに伴い、上記のシール機能の担保をより一層確実なものとなし得る。
【0022】
この請求項7に係る発明におけるシート状パッキンとして、閉栓状態において上記内周側の環状凸部の突出端が食い込む程度に軟質合成樹脂により形成することができる(請求項8)。このようにすることにより、閉栓状態では、上記の外周フランジ本体部の弾性復元力を受けて内周側の環状凸部が全周に亘りシート状パッキンの下面に食い込んだ状態に密着させ得るため、外周フランジとシート状パッキンとの間の境界を通しての漏洩経路の遮断性をより確実なものとして、シール機能をより完璧なものとなし得るようになる。
【0023】
又、以上の容器の蓋において、上記内周側の環状凸部の突出端として、外周フランジ本体部に容器の口部が当接する前の状態において、外周側の環状凸部の突出端よりも上位に位置付けられるように設定することもできる(請求項9)。このようにすることにより、閉栓状態で外周フランジ本体部からの弾性復元力を受けた際に、内周側の環状凸部の方が外周側の環状凸部よりも強く押し付けられることになり、内外周の双方の環状凸部に均等に作用させる場合よりも、密着度が高まり、漏洩経路の遮断性能もより高めて、シール機能をより一層高め得ることになる。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように、請求項1〜請求項5のいずれかの容器の内蓋によれば、使用時においては、内蓋の周壁内の収容空間に乾燥剤を収容した状態で容器の口部を閉栓すれば、内周フランジにより乾燥剤を容器内に脱落しないように支持することができる一方、内周フランジの内周縁により区画される周壁下端側の開口部を通して乾燥剤と容器内の雰囲気とを接触させて容器内を所定の乾燥状態に維持することができる。そして、用済み時においては、内周フランジを弱化部に沿って引き千切れば周壁の下端側を収容空間と同等の開口に拡大させることができ、乾燥剤を分離回収することができるようになる。その際、乾燥剤の分離回収のために内蓋自身を外蓋から取り外す必要がないため、乾燥剤の分別廃棄を容易に実現させることができるようになる。
【0025】
特に、請求項2によれば、用済み時には、摘み片を掴んで引っ張るだけで、摘み片を始端として内周フランジを周壁から引き千切ることができる。これにより、内周フランジを引き千切る作業の一層の容易化を図ることができる結果、乾燥剤の分別廃棄の実現性もより一層高めることができるようになる。
【0026】
請求項3によれば、内周フランジの自由端縁となる内周縁を補強部材により連結して剛性を高めることができ、乾燥剤の支持機能の確実化を図ることができる。
【0027】
請求項4によれば、内周フランジの内周縁側の開口部を、通気性を有するメッシュ部材で覆うようにしているため、容器内に収納された乾燥対象が粉粒状等の形態のものであっても、周壁内の収容空間側に入り込むことを抑制することができることになる。
【0028】
請求項5によれば、内周フランジを外側から引き千切ろうとする力がせん断力として上記凹溝の開口側から即座に作用させることができ、弱化部を破断させるきっかけを与えることができる。これにより、内周フランジを確実にその弱化部で引き千切ることができるようになる。特に、メッシュ部材をたとえ内周フランジの内面側に溶着又は接着等により設けるようにした場合であっても、内周フランジの引き千切る際の抵抗を可及的に小さくして、内周フランジを確実に引き千切ることができるようになる。
【0029】
一方、請求項6又は請求項9の容器の蓋によれば、閉栓状態において外周フランジ本体部によって容器の口部の先端と、外蓋の内下面との間で弾性復元力を作用させた状態にすることができ、この弾性復元力によって、内周側の環状凸部と外周側の環状凸部とを外蓋の内下面に対し上向きに押し付けると同時に、外周フランジ本体部の下面を容器の口部の先端に対し下向きに押し付けることができる。これにより、外周フランジと容器の口部との間の境界を通しての漏洩経路も、外周フランジと外蓋との間の境界を通しての漏洩経路も、共に確実に遮断することができ、この結果、容器と蓋との間のシール機能を担保することができ、容器の気密性を向上させることができるようになる。しかも、上記の弾性復元力に基づき押し付けられる環状凸部を線接触での接触から密着に至るようにすることができ、面と面との接触に比べ、漏洩経路の遮断性を増強して、シール機能の担保をより確実なものとすることができる。加えて、環状凸部の突出端を外蓋の内下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状としているため、内蓋が外蓋に対し心ずれした状態で装着されていたとしても、閉栓操作時の締め込みの際に環状凸部の突出端が外蓋の内下面に沿って滑り易くなり、締め込みの際の周方向への回転操作力を受けて内蓋が周方向に相対変位を引き起こす結果、内蓋が外蓋に対し自動的に心ずれを修正して同心(同軸)配置になるように再配置されるというような調心機能を発揮させることができる。この結果、内蓋が外蓋に対し確実に同心位置に装着されることになり、これに伴い、上記のシール機能の担保をより一層確実なものとすることができるようになる。
【0030】
又、請求項7〜請求項9のいずれかの容器の蓋によれば、閉栓状態において外周フランジ本体部によって容器の口部の先端と、シート状パッキンの下面との間で弾性復元力を作用させた状態にすることができ、この弾性復元力によって、内周側の環状凸部と外周側の環状凸部とをシート状パッキンの下面に対し上向きに押し付けると同時に、外周フランジ本体部の下面を容器の口部の先端に対し下向きに押し付けることができる。これにより、外周フランジと容器の口部との間の境界を通しての漏洩経路も、外周フランジとシート状パッキンとの間の境界を通しての漏洩経路も、共に確実に遮断することができ、この結果、容器と蓋との間のシール機能を担保することができ、容器の気密性を向上させることができるようになる。しかも、上記の弾性復元力に基づき押し付けられる環状凸部を線接触での接触から密着に至るようにすることができ、面と面との接触に比べ、漏洩経路の遮断性を増強して、シール機能の担保をより確実なものとすることができる。加えて、環状凸部の突出端をシート状パッキン外蓋の下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状としているため、内蓋が外蓋に対し心ずれした状態で装着されていたとしても、閉栓操作時の締め込みの際に環状凸部の突出端がシート状パッキンに沿って滑り易くなり、締め込みの際の周方向への回転操作力を受けて内蓋が周方向に相対変位を引き起こす結果、内蓋が外蓋に対し自動的に心ずれを修正して同心(同軸)配置になるように再配置されるというような調心機能を発揮させることができる。この結果、内蓋が外蓋に対し確実に同心位置に装着されることになり、これに伴い、上記のシール機能の担保をより一層確実なものとすることができるようになる。
【0031】
特に、請求項8によれば、閉栓状態において、上記の外周フランジ本体部の弾性復元力を受けて内周側の環状凸部を全周に亘りシート状パッキンの下面に食い込んだ状態に密着させることができる。これにより、外周フランジとシート状パッキンとの間の境界を通しての漏洩経路の遮断性をより確実なものとすることができ、シール機能をより完璧なものとすることができるようになる。
【0032】
又、請求項9によれば、閉栓状態において外周フランジ本体部からの弾性復元力を受けた際に、内周側の環状凸部を外周側の環状凸部よりも強く押し付けることができ、内外周の双方の環状凸部に均等に作用させる場合よりも、密着度を高めることができる。これにより、漏洩経路の遮断性能もより高めることができ、シール機能をより一層高めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る内蓋を適用した例を示し、符号2は容器、3はこの容器2の口部21を開栓又は閉栓するための外蓋、4は扁平な円柱形状に成形された乾燥剤(例えばシリカゲル)、5はこの乾燥剤4(図2も併せて参照)を内部に収容して外蓋3に装着するための内蓋である。図1は外蓋3が容器2の口部21にねじ込まれて閉栓状態にされて乾燥剤4による防湿機能を発揮させている通常使用状態を示している。上記の閉栓状態では内蓋が口部21の径方向内方側に入り込んだ状態に位置付けられるようになっている。
【0035】
上記容器2は、合成樹脂製ボトル又はガラス瓶等により口部21の中心軸Xを筒軸とする有底の筒状容器として構成されたものであり、例えばカプセル,錠剤,顆粒状等の経口薬剤、又は粉状,粒状等の栄養補助食品等の湿気を嫌うものを収容するために用いられるものである。そして、上記口部21の外周面には外蓋3を閉栓させるためのネジ部211が形成されている。なお、本発明が適用される容器としては、特にその形状が限定されるものではなく、本体部分が円筒状もしくは角筒状であっても、外蓋3により閉栓される円筒形状の口部21を有するものであればよい。以下の説明では上記中心軸Xが延びる方向を上下方向とし、図1の上を「上」、図1の下を「下」として説明する。
【0036】
上記外蓋3は、下端が開口された周壁31と、この周壁31の上端側を覆う頂壁32とが合成樹脂成形により一体に形成されたものであり、周壁31の内周面には上記口部21のネジ部211に嵌合するネジ部311が一体に形成されている。又、周壁31の頂壁32寄りの最奥部の位置には内蓋5を装着して保持するための係合部312が形成されている。この係合部312は例えば三角形状等の凸形状の凸条により構成されている。なお、上記の外蓋3と口部21との閉栓のための手段は、上記のネジ部211,311による締結手段の他に、例えば外蓋を口部に被せて押し込むことにより凹凸係合する係合手段等の他の手段を用いてもよく、これらに対しても本発明を適用することができる(以下の各実施形態において同じ)。
【0037】
上記内蓋5は、図3及び図4にも示すように、上下両側が上側開口部511及び下側開口部512により開口された周壁51と、この周壁51の上端開口縁から外周側に対し全周に亘り突出する外周フランジ52と、周壁51の下端縁から内周側に対し突出する内周フランジ53とが合成樹脂成形により一体に形成されたものである。上記周壁51の内周側の空間が乾燥剤4の収容空間54とされている。つまり、周壁51のサイズ(特に内径と上下寸法)は乾燥剤4のサイズ(外径と高さ)に応じて設定されている。
【0038】
外周フランジ52は、閉栓状態では外蓋3の頂壁32と、容器2の口部21の先端との間に挟み込まれることによりシール機能を果たすと同時に、その周囲から外方に突出された複数の係合片522,522,…によって外蓋3に対する装着機能をも果たすようになっている。各係合片522は外周フランジ52の周方向の所定間隔毎の位置から舌状に突出され、先端側にかけて徐々に薄肉になるように形成されて湾曲し易いようにされている。そして、各係合片522は、外蓋3の上記の係合部312を下から上に(下端開口から頂壁32の側に)乗り越えて係合状態となり、内蓋5を外蓋3に対し装着された状態に保持するようになっている。
【0039】
又、内周フランジ53は、収容空間54に収容された乾燥剤4(図1参照)が下方(容器2内)に落ちてしまわないように乾燥剤4を下から支持する役割と、用済み時には周壁51から切り離して乾燥剤4を分離させる役割(後述の引き千切り片としての役割)とを果たすようになっている。上記の支持する役割を達成する上で、内周フランジ53の径方向幅は、その内周フランジ53の内周縁により構成される下側開口部の内径が、乾燥剤4の外径よりも少なくとも小さくなる程度の極狭いものでもよい。要するに、内周フランジ53としては、周壁51の下端周縁位置から僅かに径方向内方に張り出す(突出する)程度の幅を有していればよい。そして、上記の分離させる役割を達成するために、内周フランジ53の最外周部と、周壁51の下端部との境界位置には全周に亘って弱化部55が形成される一方、内周フランジ53の一部から摘み片531が下側開口部512の側に突出して形成されている。
【0040】
弱化部55は、図4〜図6に示すように、摘み片531を切り取るために内周フランジ53を斜めに横切る誘導弱化部551と、この誘導弱化部551から引き続いて全周に亘り形成される円周弱化部552とからなる。これら弱化部55は、特に図6に示すように外面側から断面形状が略Vの字形で狭幅の凹溝を形成したものである。特に、円周弱化部552は周壁51の外周面から肉厚分だけ径方向内側の位置に沿って無端状に形成されたものであり、後述の如く弱化部55に沿って引き千切ることにより下側開口部512が周壁51の内径とほぼ同等の大きさに拡大するようになっている。要するに、摘み片531を始端とすると、誘導弱化部552が円周弱化部551に対し鋭角に交わって区画される尖端を終端532とするような帯状の引き千切り片が、内蓋5としての使用状態にあるときには乾燥剤4を脱落しないよう支持する内周フランジ53として弱化部55を介して周壁51と一体に形成されているとも言える。なお、摘み片531はその全体が下側開口部512の側に突出しているが、これに限らず、その一部が下側開口部512の側に突出していればよい。外部から引き起こすためのきっかけとなる部分だけ突出していれば、摘むための役割を果たし得るからである。
【0041】
上記の内蓋5は、容器2の密封性と弱化部55の引き千切り容易性との観点から、合成樹脂成形により形成すればよく、例えばPE−LD(低密度ポリエチレン),PE−LLD(リニア低密度ポリエチレン),PE−MD(中密度ポリエチレン)等のオレフィン系の素材を単独で使用したり、あるいは、これらのいずれかの素材に対しPE−HD(高密度ポリエチレン),EVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)もしくはエラストマー等をブレンドしたものを使用したり、すればよい。
【0042】
以上の内蓋5は、上側開口部511から乾燥剤4を収容空間54に入れ、乾燥剤4を内部に収容させた状態で外蓋3の下端開口から内側に押し込んでいくと、外周フランジ52の係合片522,522,…が係合部312を乗り越えて外周フランジ52が頂壁32の内面に突き当たった状態で保持され、これにより、装着された状態となる(図1参照)。この状態の外蓋3を容器2の口部21に対しねじ込んでいくと、口部21の先端が内蓋5の外周フランジ52に突き当たって、外周フランジ52を外蓋3の頂壁32の内面に押し付けた状態で締結が終わる。これにより、容器2は閉栓された状態となり、乾燥剤4は容器2内に対し下側開口部512を通して臨んだ状態となる。これにより、乾燥剤4が容器2内の雰囲気と接触し、その容器2内の雰囲気が防湿又は調湿された状態に維持されることになる。
【0043】
容器2内の充填物(例えば薬剤)が消費されて用済みになったときには、容器2の口部21から外蓋3を取り外し、図7に例示するように摘み片531を例えば親指と人差し指とで摘んで手前に引き起こすように引っ張ることで、摘み片531が誘導弱化部551から千切れてくる(図8(a)参照)。さらに、摘み片531を手前に引くとこで内周フランジ53が円周弱化部552に沿って引き千切れ(図8(b)参照)、ついには内周フランジ53の全てが内蓋5から引き千切られ(図9参照)、内蓋5の下端側は円周弱化部552の大きさで開放されて乾燥剤4の全体が外部に露出することになる。これにより、内蓋5の下端側が下方に向くように外蓋3の全体を傾ければ、乾燥剤4は重力落下により落下するため、乾燥剤4を内蓋5の収容空間54から外部に取り出すことができる。
【0044】
以上の内蓋5の場合、通常使用時の状態、すなわち乾燥剤4を内部に収容した状態で外蓋3に装着し、内蓋5を装着した外蓋3で容器2の口部21を閉栓した状態においては、乾燥剤4が内蓋5内から脱落しないように内周フランジ53がストッパとなって乾燥剤4を確実に支持する一方、下側開口部512を通して乾燥剤4と容器2内の雰囲気との接触を良好に維持して容器2内の雰囲気を所定の乾燥状態に維持させることができる。容器2内の薬剤等が全て消費されるなどして容器2が用済みになれば、摘み片531を摘んで引くことにより内周フランジ53の全体を弱化部55に沿って引き千切ることができ、これにより、周壁51の下端側を全開放状態に開口させることができる。これにより、外蓋3を傾けるだけで乾燥剤4を落下させて外部に取り出すことにより極めて容易に分離回収することができ、乾燥剤4の分別廃棄を行うことができるようになる。この場合、乾燥剤4の分離回収のための作業としては、内周フランジ53を弱化部55に沿って引き千切るだけで済み、内蓋5を外蓋3から取り外す必要が全くないため、極めて容易な作業だけで乾燥剤4の分別廃棄を実現させることができる。又、内蓋5を取り外す必要がないため、従来の如く内蓋の取り外し時の作業性を考慮したり着脱可能な装着手段を採用したりする必要もなく、内蓋5と外蓋3との装着を強固にするという要求を十分に満たすような装着手段を採用することもできる。
【0045】
<第2実施形態>
以下、第1実施形態以外の各実施形態について、以上の第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して重複した説明を省略しつつ、異なる点について以下説明する。以下の各実施形態の内蓋5a,5b,5cも、乾燥剤4を周壁51内の収容空間54に収容した状態で外蓋3(図1参照)に装着され、この状態で容器2の口部21にねじ込まれて閉栓され、又、用済み時には摘み片531を引くことにより弱化部55に沿って引き千切ることにより内部の乾燥剤4を分別廃棄させる点については、以上説明した第1実施形態の内蓋5と同じである。
【0046】
第2実施形態の内蓋5aとしては、例えば図10に示すように、構成要素としてメッシュ部材56を追加し、上述の内蓋5の下側開口部512をメッシュ部材56で覆うようにしたものである。メッシュ部材56としては通気性を有するものであればいずれの材質により形成されたものでも採用することができ、例えば合成樹脂製ネット素材や、合成樹脂製不織布を用いることができる。不織布としては、例えば連続性極細ポリエチレン繊維に高熱を加えて結合させて通気性を有する極薄シート状に形成したものが挙げられる。このようなメッシュ部材56は内周フランジ53に対し、例えば図10に符号561で示すように全周に亘る溶着ラインを形成することにより、接合させるようにすればよい。その際の溶着は、超音波溶着や、熱溶着等の手段を採用することができ、又、溶着以外にも、インサート成形によりメッシュ部材56を内蓋5と一体形成するようにしてもよい。図10の実施形態は容器2内に収納する対象が例えば顆粒状又は粉粒状等の薬品又は食品等である場合に、容器2を倒したり傾けたりすることにより、その薬品等が乾燥剤4の収容空間の側に入り込むことを防止することができる。容器2内への収納対象が錠剤又はカプセル等であれば下側開口部512を開放状態のままが好ましい。
【0047】
そして、この第2実施形態の場合には、容器2内の乾燥・調湿の対象が粉粒状等の形態のものであっても、メッシュ部材56により容器2内と乾燥剤4の収容空間54とが互いに区画されて仕切られるため、上記の乾燥・調湿の対象物が周壁51内の収容空間54側に入り込むことを抑制し得ることになる。又、メッシュ部材56がインサート成形により内周フランジ53の内面(収容空間54側の面)に対し内周フランジ53と一体に結合されている場合であっても、弱化部55が内周フランジ53の内面に開口する凹溝によって構成されているため、メッシュ部材56の外周縁がその凹溝をたとえ覆う位置まで存在していても、その結合は弱くなり、弱化部55位置での引き千切りによる内周フランジ53の切断・分離を支障なく行うことができる。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態の内蓋5bとして、図11及び図12に示すものが挙げられる。図11及び図12に例示するものは、図2〜図4等の内周フランジ53の内周縁同士を、放射方向に延びる桟部材又は互いに交差する方向に延びる交差部材等により一体連結したものに相当する。要するに、内周フランジ53の自由端縁となる内周縁側同士を補強部材によって連結して強度を高めるようにしたものに相当し、上記の桟部材又は交差部材、あるいは、具体例としての下記の交差部材53bは補強部材を構成することになる。なお、かかる観点からは、図10に示すようなメッシュ部材56も上述の補強部材を兼ねることになる。
【0049】
すなわち、第3実施形態は、周壁51の下端側に、一部に摘み部531が形成された内周フランジ53aと、この内周フランジ53aの内周側位置において放射方向及び周方向にそれぞれ延びて互いに交差して内周フランジ53aの内周縁同士を連結する骨組み状の交差部材53bとが一体に形成された底壁57を配設したものである。そして、この底壁57の外周囲を、周壁51の下端側の周縁に対し、弱化部55を介して一体に連設するようにしたものである。摘み部531は、誘導弱化部551と、補助的に形成された補助弱化部553とで区画される延設片533を除き、その周囲に沿って延びる分離孔571(図13も併せて参照)により他と分離されている。又、上記交差部材53bにもその骨組み部分により区切られた部分がそれぞれ貫通孔572,572,…として開口されており、これら各貫通孔572が周壁51の下側開口部を構成することになる。
【0050】
なお、この図11及び図12に示す第3実施形態の内蓋5bに対しても、第2実施形態の内蓋5a(図10参照)と同様の通気性を有するメッシュ部材56を、上記貫通孔572,572,…あるいはこれらに加えて分離孔571等を覆うように接合させるようにしてもよい。
【0051】
<第4実施形態>
第4実施形態の内蓋5cは使用中の気密性(シール性)を高めたものであり、図14に示すように内蓋5cと、シート状パッキン6との組み合わせにより気密性を高めたものである。この第4実施形態では、外蓋3と、内蓋5cと、シート状パッキン6とにより、容器の蓋が構成されている。
【0052】
上記外蓋3の周壁31の内周面には容器2の口部21のネジ部211に嵌合するネジ部311が一体に形成されており、これらネジ部211,311により閉栓状態に維持する締結手段が構成されている。又、周壁31の頂壁32寄りの最奥部の位置には、内蓋5cの後述の外周フランジ58(詳しくは外周フランジ58の係止片584)を装着して保持するための係合部312が形成されている。この係合部312は例えば三角形状等の凸形状の凸条により構成されている。
【0053】
上記内蓋5cには、図15及び図16にも示すように、周壁51の上端開口縁から外周側に対し全周に亘り突出する外周フランジ58が合成樹脂成形により一体形成されている。この外周フランジ58は、閉栓状態では外蓋3の頂壁32の下側に配置されたシート状パッキン6の下面と、容器2の口部21の先端212(図17参照)との間に挟み込まれることによりシール機能を果たすと共に、外蓋3に対する装着機能をも果たすようになっている。すなわち、外周フランジ58は、周壁51の上側開口部511を構成する開口端面513よりも所定量下側位置から外周側に全周に亘り所定長さだけ張り出した外周フランジ本体部581と、この外周フランジ本体部581の内周側位置から上方に突出する内周側の環状凸部582と、外周フランジ本体部581の外周側位置から上方に突出する外周側の環状凸部583と、外周フランジ本体部581の外周端面から外周側に突出する複数の係合片584,584,…とを備えて構成されている。
【0054】
外周フランジ本体部581は、内周側と外周側との両環状凸部582,583間の長さ(径方向間隔)、詳細には両環状凸部582,583を除いた両者間の径方向間隔が、容器2の口部21の先端面(先端)212の幅(径方向幅)よりも長くなるように設定されている。
【0055】
内周側の環状凸部582は、周方向に連続して無端の環状に配置され、先端がそれよりも上方位置に相対向する平面(シート状パッキン6の下面61)があればその平面に対し線接触で接触するように突起状の横断面形状を有している。例えば三角形や、図17に図示するような凸カーブ(凸アール)形の横断面形状に設定されている。又、内周側の環状凸部582の先端(突出端)が外周側の環状凸部583の先端(突出端)よりも上位に位置するように、その突出量が設定されている。本実施形態では、内周側環状凸部582を周壁51の上側開口部511を構成する開口端面513の一部に上向きに突出するように形成しているが、これに限らず、開口端面513とは別に周壁51よりも外周側位置に形成するようにしてもよい。この場合には、環状凸部582の先端が開口端面513よりも上位に位置付けられるように突出させる。
【0056】
外周側の環状凸部583は、先端(突出端)が凸カーブ(凸アール)形の横断面形状を有して滑らかな面になるように形成され、又、外力が作用していない状態では、内周側の環状凸部582よりも下位に位置するように上方への突出寸法が設定されている。この環状凸部583の先端面を凸カーブの滑らかな曲面に設定したのは、後述の如く、外周フランジ本体部581の中央位置に対し、容器2の口部21の先端面212から上向きの力が作用した際に、シート状パッキン6の下面に当接した後に外周側に滑り易くして外周フランジ58の弾性復元力を伴ったシート状パッキン6に対する密着性を高めるようにしたためである。
【0057】
又、各係合片584は外周フランジ58の外周端面において周方向の所定間隔毎の位置から舌状に突出され、先端側にかけて徐々に薄肉になるように形成されて湾曲し易いようにされている。そして、各係合片584は、外蓋3の上記の係合部312を図面の下から上に(下端開口から頂壁32の側に)乗り越えて係合状態となり、内蓋5cを外蓋3に対し装着された状態に保持するようになっている。
【0058】
シート状パッキン6は、比較的薄肉厚(例えば0.5mm厚)で外蓋3の内径とほぼ同様の外径を有する円板形状に形成されたものであり、特に下面が平坦面になるように形成されている。このシート状パッキン6は、内蓋5cを装着する前の外蓋3の内奥に押し込まれ、つまり上記の係合部312を図面の下から上に乗り越えるように押し込まれ、その後に、内蓋5cが装着されることにより、内蓋5cと外蓋3との間に挟み付けられた状態で保持されるようになっている。上記の係合部312を乗り越え易くするために、シート状パッキン6の外周縁60の特に上側に面取り部を形成する等によって先端にかけて徐々に薄肉になるように形成されている。
【0059】
以上の特に蓋を構成する外蓋3、内蓋5c及びシート状パッキン6の各構成要素の素材としては、第1実施形態の項で記載したように各種の合成樹脂成形材料を採用することが可能であるが、特に容器2を医薬品包装材料の分野で使用する場合には、次のようにすることが好ましい。すなわち、固形製材用プラスチックボトルの標準化の要請(「固形製材用プラスチックボトルの標準化」医薬品包装材料標準化委員会 篠田晃 PHARM TECH JAPAN Vol.17 No.7 2001 p27-p39)に従えば、容器2及び外蓋3を共に高密度ポリエチレンにより形成し、シート状パッキン6を発泡ポリエチレンシート又は低密度ポリエチレンライナーにより形成する。又、内蓋5は低密度ポリエチレンを主体にして形成する。例えばPE−LD(低密度ポリエチレン),PE−LLD(リニア低密度ポリエチレン),PE−MD(中密度ポリエチレン)等のオレフィン系の素材を単独で使用したり、あるいは、これらのいずれかの素材に対しPE−HD(高密度ポリエチレン),EVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)もしくはエラストマー等をブレンドしたものを使用したり、すればよい。特に、外蓋3が高密度ポリエチレンあるいはABS樹脂を用いて硬質に形成されている場合には、シート状パッキン6を上記の発泡ポリエチレン等で形成し、内蓋5cを低密度ポリエチレン等で形成するというように、シート状パッキン6及び内蓋5を共に軟質に形成することで、上記の標準化の要請に従いつつも、シール機能を高めることができる。
【0060】
又、シート状パッキン6としては、上記の他に、1.5〜3.0倍に発泡させた独立気泡構造発泡体である発泡ポリエチレンシート又は低密度ポリエチレンライナーの片面(内蓋5c側の片面)又は両面に対し、PP(ポリプロピレン),PE,4フッ化エチレン等の各種フィルムを一体に貼り合わせて、二層構造又は三層構造にしてもよい。このようにすることにより、内蓋5cを装着した外蓋3を容器2に対し後述の如くねじ込んで閉栓する際に、シート状パッキン6と、外周フランジ58の内周側の環状凸部582,583とが周方向に接触滑りを起こすことにより閉栓トルクの安定化が図られ、又、逆に開栓時の開栓トルクの安定化も図られることになる。
【0061】
以上において、蓋を組み付けるには、まず、シート状パッキン6を外蓋3の下端開口から内側に押し込んでいき、その外周縁60が係合部312を乗り越えて頂壁32の内面位置まで押し入れる。次いで、内蓋5cの上側開口部511から乾燥剤4を収容空間54に入れ、乾燥剤4を内部に収容させた状態の内蓋5cを外蓋3の下端開口から内側に押し込んでいくと、外周フランジ58の係合片584,584,…が係合部312を乗り越えた状態で保持され、これにより、装着された状態となる(図17参照)。この状態では、外周フランジ58の内周側の環状凸部582がシート状パッキン6の下面61に突き当たって接触した状態になり、このような装着状態で、シート状パッキン6及び内蓋5cが外蓋3に対し一体に組み付けられることになる。この状態の外蓋3を容器2の口部21に対しネジ部211,311によってねじ込んでいくと、口部21の先端面212が外周フランジ58の外周フランジ本体部581のほぼ中央位置に突き当たり、外蓋3を所定の抵抗が生じる程度までねじ込んで停止させることにより、図18のように先端面212が外周フランジ本体部581を上向きに押し付けて僅かに撓ませた状態で閉栓状態に至る。
【0062】
この際、上記の装着操作おいて内蓋5cが外蓋3に対し同軸配置(同心円配置)ではなくて多少心ずれした状態で装着されてしまっていたとしても、閉栓操作によって自動的に条軸配置に再配置されて閉栓状態に至ることになる。すなわち、係止片584,584,…の肉厚・寸法にばらつきがあると、内蓋5は外蓋3に対し心ずれした状態で装置されてしまうおそれがある。ところが、この心ずれした状態に装着されていたとしても、容器2の口部21にねじ込んで行って、先端面212が外周フランジ本体部581の外周側位置又は内周側位置というように径方向に心ずれした位置に接触し始めて、相対回転力が外周フランジ58に作用するようになると、シート状パッキン6に対し凸カーブの曲面によって当接している環状凸部582,583がそのシート状パッキン6に対し滑りを起こし周方向に相対変位するようになる。そして、さらに外蓋3をねじ込んで閉栓トルク(締めトルク)を強めていくと、外周フランジ本体部581が最も変形(撓み)を生じ易い径方向中央位置に上記の先端面212が位置するように、内蓋5cが周方向への相対変位を引き起こし、これにより、内蓋5cの外蓋3に対する相対的な配置が同軸位置になるように再配置されることになる。つまり、外周フランジ本体部581と両側の環状凸部582,583とによって、閉栓操作により内蓋5cの心ずれを修正して同軸に自動的に再配置する、という調心機能も発揮されることになる。
【0063】
そして、この閉栓状態では、乾燥剤4は容器2内に対し下側開口部512を通して臨んだ状態となり、これにより、乾燥剤4が容器2内の雰囲気と接触し、その容器2内の雰囲気が防湿又は調湿された状態に維持されることになるが、容器2と外部とを高度に遮断し得るという高い気密性を発揮することになる。
【0064】
すなわち、上記閉栓状態について図18を参照しつつ詳細に見ると、閉栓状態に至る前に口部21の先端面212がまず外周フランジ本体部581の下面に突き当たり、さらに外蓋3をねじ込むと先端面212が外周フランジ本体部581を相対的に上方に押し付けることになり、これにより、外周フランジ本体部581の外周側が押し上げられて外周側の環状凸部583がシート状パッキン6の下面に当接することになる。そして、あと僅かに外蓋3がねじ込まれると、外周フランジ本体部581がその中央部位を上向きに湾曲するように弾性変形し、これにより、外蓋3のねじ込みに対する抵抗が急激に増大するため、この増大によりねじ込みが停止されて閉栓状態に至ることになる。なお、もしも上記の如く心ずれが生じていれば、この過程で内蓋5cが僅かに周方向に相対変位しつつ同軸位置に再配置されて先端面212が外周フランジ本体部581の中央部位を押圧することになる。この閉栓状態では、外蓋3と容器2の口部21とがネジ部211,311の係合によって上下方向に対する相対位置関係が固定された状態に維持されるため、外周フランジ本体部581の弾性復元力が口部21の先端面212と、上記パッキン6の下面61との間で上下方向それぞれに作用した状態に維持されることになる。この弾性復元力によって、両環状凸部582,583がシート状パッキン6の下面61に対し上向きに押し付けられて密着すると同時に、外周フランジ本体部581の下面が口部21の先端面212に対し下向きに押し付けられて密着した状態に維持されることになる。
【0065】
以上により、口部21の先端面212と外周フランジ58との間の境界を通した漏洩経路a(図25参照)も、内蓋5cの外周フランジ58とシート状パッキン6との間の境界を通した漏洩経路bの双方の経路を共に完全に遮断することができ、外蓋3、内蓋5c及びシート状パッキン6からなる蓋と、容器2の口部21との間のシール機能を確実に担保することができる。これにより、容器2内を気密状態に維持する気密性を向上させることができる。又、外周フランジ58の特に内周側の環状凸部582又は内・外周側の両環状凸部582,583を密着させる対象を、硬質素材により形成された外蓋3の頂壁32内下面ではなくて、比較的軟質素材により形成されたシート状パッキン6の下面61としているため、上記外周フランジ本体部581からの弾性復元力を受けた特に内周側の環状凸部582をシート状パッキン61の下面61に食い込むようにして密着させることができ、シール機能の担保をより一層確実なものとすることができ、これによる容器3の気密性向上をより長期に亘り維持させることができるようになる。
【0066】
しかも、内周側の環状凸部582はシート状パッキン6の下面61に対し、面と面とで接触して密着するのではなくて、線接触した後に食い込むように密着することになるため、上記の弾性復元力を受けた密着圧力が線接触部分を最大にしてシート状パッキン6の下面61に作用することになり、これにより、密着による遮断機能をより高めてシール機能をより確実に発揮させることができるようになる。その際、シート状パッキン6のみならず、環状凸部582を含む外周フランジ58部分も軟質合成樹脂により形成することにより、環状凸部582が下面61に対し線接触により密着した後に弾性変形した状態で密着することになり、より高い遮断機能を発揮させ得ることになる。その上に、内周側の環状凸部582の突出端が外周側の環状凸部583の突出端よりも上位に位置付けられているため、弾性復元力を受けて内周側の環状凸部582の方がシート状パッキン6の下面61に対しより強く押し付けられて食い込むことになり、上記の密着による遮断機能をより一層確実に達成させ得ることになる。さらに、外周側の環状凸部583の突出端が凸カーブの滑らかな面とされているため、外周フランジ本体部581が弾性変形する際に環状凸部583がシート状パッキン6の下面61に沿って外周側に僅かに滑り易くなり、これにより、外周フランジ本体部581を上記の上向き湾曲への弾性変形に確実に導いて上記の弾性復元力を確実に発生させることができるようになる。
【0067】
又、上記シート状パッキン6は、特に外蓋3のネジ部311として、とびネジ構造を採用した場合には、より高いシール性能を発揮することになる。すなわち、外蓋3の内周面に成形されるネジ部311として、成形後のネジ型の型抜きを容易にして外蓋3の成形性を向上させるために、周方向の一部に対するネジ形成を省略して間欠的にネジ山が延びるようにした、とびネジ構造が採用されることがある。このとびネジ構造を採用した場合、頂壁32の内面には、ネジ型を割る際に周壁31の内周面の相対向する両位置を結ぶように割り線が形成されてしまうことになる。かかる割り線によって微小とはいえ凹凸が形成されてしまうことになるが、シート状パッキン6によりその割り線が覆われて、微小な凹凸が吸収されることになるため、割り線の存在に起因する水蒸気の侵入を阻止して高いシール性を発揮させることができることになる。かかる意義を発揮させるには、シート状パッキン6として、シリコンゴムやエラストマー等により弾性シール体に構成することが好ましい。
【0068】
<第5実施形態>
第5実施形態は、第4実施形態のシート状パッキン6を省略して外蓋3と内蓋5cとにより容器の蓋を構成したものであり、この点で大きく異なる他は第4実施形態と同じ構成の内蓋5c等の構成要素を用いたものである。
【0069】
すなわち、第5実施形態の場合も、乾燥剤4を収容した内蓋5cが装着された状態の外蓋3を口部21に対しネジ部211,311によってねじ込んでいくと、口部21の先端面212(図19参照)が第4実施形態と同様に外周フランジ58の外周フランジ本体部581の下面に突き当たり、さらに僅かにねじ込まれて先端面212が相対的に上方位置まで進んだ状態(図19に示す状態)で閉栓状態に至ることになる。
【0070】
この閉栓状態では、外周フランジ本体部581が中央部位を上向きに湾曲するように弾性変形し、これにより、外周フランジ本体部581の弾性復元力によって、両環状凸部582,583が外蓋3の頂壁32の内下面321に対し上向きに押し付けられて密着すると同時に、外周フランジ本体部581の下面が口部21の先端面212に対し下向きに押し付けられて密着した状態に維持されることになる。
【0071】
この第5実施形態によっても、口部21の先端面212と外周フランジ58との間の境界を通した漏洩経路a(図25参照)も、内蓋5の外周フランジ58と外蓋3の頂壁32との間の境界を通した漏洩経路bの双方の経路を共に完全に遮断することができ、外蓋3及び内蓋5からなる蓋と、容器2の口部21との間のシール機能を確実に担保することができる。これにより、容器2内を気密状態に維持する気密性を向上させることができる。
【0072】
<他の実施形態>
なお、本発明は以上の各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。例えば上記各実施形態では内蓋5,5a,5b,5cと、外蓋3との装着を係合片522,584と係合部312との係合により行っているが、これに限らず、乾燥剤4を交換して内蓋5等及び外蓋3を再利用するという要求がなければ、つまり1回の使用で廃棄させる場合には、内蓋5等を外蓋3に対し着脱可能に装着させる必要はなく、接着あるいは圧着等の強固な装着手段を採用してもよい。
【0073】
又、上記各実施形態では弱化部55として、収容空間54側の面(収容空間54に臨む面)、つまり引き千切る側とは反対側の面に開口する凹溝によって構成する例を示したが、これに限らず、例えば図24(a)に示すように引き千切る側の面(同図の上側の面)に開口するような凹溝によって弱化部55′(円周弱化部552′)を構成したり、あるいは、図24(b)に示すように両側にそれぞれ開口する一対の凹溝によって弱化部55″(円周弱化部552″)を構成したりしても、もちろんよい。
【0074】
第4又は第5実施形態の内蓋5cの内周フランジ53に対し、第2実施形態の如くメッシュ部材56を接合させたり、第3実施形態の如く交差部材53等の桟部材又は交差部材により構成される補強部材を追加したり、さらには第3実施形態のものにメッシュ部材56を追加したものを適用したり、してもよい。
【0075】
第4又は第5実施形態において、内周側の環状凸部582が無端でかつ線接触となるように突起状の横断面形状を有する点は必須であるが、外周側の環状凸部583については必ずしも無端にしなくても間欠的に突出させるようにしてもよく、又、凸カーブの如き滑らかな突出端にしなくてもよい。シール機能の遮断性は内周側の環状凸部582によって実現させることができる一方、外周側の環状凸部583は外周フランジ本体部581を中央部が凸カーブになるように弾性変形させて弾性復元力を発揮させるための脚部又は支点の役割を果たせば足りるからである。又、外周側の環状凸部583の幅自体が元々微小幅であるため、上記の凸カーブの滑らかな突出端に厳密に形成しなくても、口部21の先端面212からの押圧に伴いシート状パッキン6の下面61又は頂壁32の内下面321に沿って容易に滑ることになると考えられるからである。
【0076】
第4実施形態では、シート状パッキン6として外蓋3と別体に形成したものを示したが、これに限らず、シート状パッキンが外蓋の内面に予め一体に形成されているようにしてもよい。この場合には、例えば外蓋3の内面32に対し例えば天然ゴム又は合成ゴムを用いたライニング層を予め一体形成するようにしておけばよい。つまり、シート状パッキンは、外蓋3と別体でも一体でもよいのである。
【0077】
さらに、第4実施形態では、シート状パッキン6として円板形状のものを示したが、これに限らず、シート状パッキンとしては、少なくとも外周フランジ58の環状凸部582,583と接触し得る帯状範囲に存在すればよく、つまり、ドーナッツ環形状のものでもよい。
【実施例1】
【0078】
第4実施形態の外蓋3,内蓋5c及びシート状パッキン6からなる蓋で容器2を閉栓状態にしたケースと、第5実施形態の外蓋3及び内蓋5cからなる蓋で容器2を閉栓状態にしたケースとの2種類のケースの試験体を対象にして、気密性の持続性能について調べるために実施した水蒸気透過度試験の結果を図20及び図21に示す。具体的には、各ケースにおいて、ネジ部211,311による締結度合である蓋の締めトルクを118N・cm,137N・cm,157N・cm,177N・cm,275N・cm,300N・cmの6通りに変化させることとし、容器2内にシリカゲルを封入した上で各締めトルク値毎に外蓋3を締め付け設定した20個の試験体を用意し、1ヶ月経過後のシリカゲルの重量変化に基づいて水蒸気透過度(mg/day)を調べた。両ケース共、暴露条件として40℃−RH75%の相対湿度を設定した。なお、容器2,外蓋3,内蓋5cについては、成形型に基づくバラツキの影響を排除するために、事前確認を実施した。
【0079】
第4実施形態のケースとは、要するに、外周フランジ58の構成にシート状パッキン6を組み合わせた場合のシール性能を備えたものであり、第5実施形態のケースとは、要するに、シート状パッキン6を除いた外周フランジ58の構成に基づくシール性能を備えたものである。又、締めトルクの違いは、口部21の先端面が相対的に外周フランジ本体部581を押圧する度合の違いとなって表れ、結果として外周フランジ本体部581から発揮される弾性復元力の違い、すなわちシール性能及びシール機能の持続性の違いとなって表れるものと考えられる。
【0080】
第4実施形態のケースでは、図20に示すように、上記の6通りの締めトルク値の如何に拘わらず、全ての締めトルク値において、水蒸気透過度は0.5mg/day前後かそれ以下という極めて低い値を示した。つまり、外蓋3,内蓋5c及びシート状パッキン6からなる蓋を締めトルク118N・cm程度で緩く閉栓した閉栓状態であっても、締めトルク300N・cmで強く締め付けて閉栓した閉栓状態であっても、いずれも極めて高いシール性能を発揮し、その高いシール性能を持続した、
一方、第5実施形態のケースでは、図21に示すように、外蓋3及び内蓋5cからなる蓋を締めトルク157N・cmから300N・cmまでの範囲で閉栓すれば、第4実施形態のケースとほぼ同程度の極めて低い水蒸気透過度を示し、極めて高いシール性能を発揮した。その反面、締めトルク118N・cm又は137N・cmでの閉栓では、かなりバラツキのある水蒸気透過度を示した。これによれば、第5実施形態のケースであっても、ある程度の締めトルクで蓋を締めて閉栓状態にすれば、極めて高いシール性能及び持続性を発揮させることができる、といえる。
【実施例2】
【0081】
上記の第4実施形態のケースと、第5実施形態のケースとにおいて、所定の締めトルクで閉栓状態にしたものにおける外周フランジ58部分について、その弾性変形状況をX線透視装置により確認した結果を図22及び図23に示す。
【0082】
X線透視装置として株式会社島津製作所のマイクロフォーカスX線透視装置(SMX−1000)を用い、透過条件として出力を管電圧値90kV,管電流値100μAに設定して得たX線透視像が図22(第4実施形態のケース)及び図23(第5実施形態のケース)である。
【0083】
これによると、図18又は図19で示した如き外周フランジ58が弾性変形している状況と同様の状況が確認できる。又、特に図22を見ると、内周側の環状凸部582(図18参照)の突出端がシート状パッキン6に若干食い込んでいる様子が窺える。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態の閉栓状態を示す一部省略断面図である。
【図2】図1の外蓋、乾燥剤、内蓋について装置前の分解状態を示す斜視図である。
【図3】内蓋を斜め上から見た場合の一部切欠斜視図である。
【図4】内蓋を斜め下から見た場合の斜視図である。
【図5】内蓋の底面図である。
【図6】図6(a)は図5のA−A線における一部省略拡大断面説明図であり、図6(b)は図5のB−B線における一部省略拡大断面説明図であり、図6(c)は図5のC−C線における一部省略拡大断面説明図である。
【図7】乾燥剤を内部に収容した状態で内蓋が装着された外蓋の斜視図であって、用済み時に内周フランジを引き千切る方法を説明するための斜視図である。
【図8】図8(a)は図7の状態から摘み片を少し引いた状態を示し、図8(b)は内周フランジをさらに引き千切った状態を示す。
【図9】図8(b)の状態から内周フランジを完全に引き千切って内蓋から分離した状態を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態を示す図4対応図である。
【図11】第3実施形態を示す図4対応図である。
【図12】図11の内蓋の底面図である。
【図13】図13(a)は図12のD−D線における一部省略拡大断面説明図であり、図13(b)は図12のE−E線における一部省略拡大断面説明図である。
【図14】第4実施形態の閉栓状態を示す一部省略断面図である。
【図15】図14の外蓋、シート状パッキン、乾燥剤、内蓋について装着前の分解状態を示す斜視図である。
【図16】内蓋を斜め上から見た場合の一部切欠斜視図である。
【図17】外周フランジの拡大断面説明図である。
【図18】閉栓状態にある外周フランジを中心とした拡大断面説明図である。
【図19】第5実施形態の場合の図18対応図である。
【図20】第4実施形態の場合の水蒸気透過度についての試験結果を示す図である。
【図21】第5実施形態の場合の水蒸気透過度についての試験結果を示す図である。
【図22】第4実施形態の場合の外周フランジ部分近傍のX線透視像の写真である。
【図23】第5実施形態の場合の外周フランジ部分近傍のX線透視像の写真である。
【図24】弱化部の他の形態を示し、図24(a)は図6(a)のものとは異なる形態の図6(a)対応図であり、図24(b)は図24(a)とは異なる形態の図6(a)対応図である。
【図25】従来の問題点を説明するための部分断面図である。
【符号の説明】
【0085】
2 容器
3 外蓋
4 乾燥剤
5 内蓋
6 シート状パッキン
21 口部
31 外蓋の周壁
32 外蓋の頂壁
51 内蓋の周壁
53,53a 内周フランジ
53b 補強部材
54 収容空間
55 弱化部
56 メッシュ部材(補強部材)
58 外周フランジ
61 シート状パッキンの下面
212 口部の先端面(口部の先端)
511 上側開口部
512 下側開口部
531 摘み片
581 外周フランジ本体部
582 内周側の環状凸部
583 外周側の環状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に開口し内部が乾燥剤の収容空間とされた周壁と、この周壁の下端縁から径方向内方に突出して内部の乾燥剤が脱落しないように支持する内周フランジとを備え、
上記内周フランジは、引き千切り可能な程度に弱められた線状の弱化部を介して上記周壁と一体に形成され、
上記弱化部は、上記周壁と内周フランジとの両者間の境界位置に沿って全周に亘り形成されている
ことを特徴とする容器の内蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の容器の内蓋であって、
上記内周フランジは、その周方向一部に摘み片を備え、この摘み片を引くことにより摘み片を始端として内周フランジが上記弱化部に沿って引き千切られるように構成されている、容器の内蓋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の容器の内蓋であって、
上記内周フランジの内周縁側同士を互いに連結して補強する補強部材をさらに備えている、容器の内蓋。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の容器の内蓋であって、
上記内周フランジの内周縁側の開口部を覆うように接合された、通気性を有するメッシュ部材をさらに備えている、容器の内蓋。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の容器の内蓋であって、
上記弱化部は、上記収容空間の側に開口する微小幅の凹溝により構成されている、容器の内蓋。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の容器の内蓋と、頂壁及び周壁を有し容器の口部に対しねじ込まれる外蓋とからなり、上記内蓋にはその周壁の上端開口縁から径方向外方に全周に亘り突出し閉栓状態では上記外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになる外周フランジが一体に形成されている容器の蓋であって、
上記外周フランジは、上記閉栓状態において下面側に上記容器の口部の先端から上向きの押圧を受けて弾性変形することになる外周フランジ本体部と、この外周フランジ本体部の内周側位置から上方に突出する内周側の環状凸部と、上記外周フランジ本体部の外周側位置から上方に突出する外周側の環状凸部とを備えて構成され、
上記内外周の環状凸部の内、少なくとも内周側の環状凸部は、その突出端が上記外蓋の内下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状を有しかつ全周に亘り無端状態に形成されている
ことを特徴とする容器の蓋。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の容器の内蓋と、頂壁及び周壁を有し容器の口部に対しねじ込まれる外蓋とからなり、上記内蓋にはその周壁の上端開口縁から径方向外方に全周に亘り突出し閉栓状態では上記外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになる外周フランジが一体に形成されている容器の蓋であって、
上記外周フランジと外蓋の内下面との間に配設され、上記閉栓状態では上記外周フランジと共に外蓋の内下面と上記容器の口部の先端との間に挟み込まれることになるシート状パッキンを備えてなり、
上記外周フランジは、上記閉栓状態において下面側に上記容器の口部の先端から上向きの押圧を受けて弾性変形することになる外周フランジ本体部と、この外周フランジ本体部の内周側位置から上方に突出する内周側の環状凸部と、上記外周フランジ本体部の外周側位置から上方に突出する外周側の環状凸部とを備えて構成され、
上記内外周の環状凸部の内、少なくとも内周側の環状凸部は、その突出端が上記シート状パッキンの下面に対し線接触可能な突起状の横断面形状を有しかつ全周に亘り無端状態に形成されている
ことを特徴とする容器の蓋。
【請求項8】
請求項7に記載の容器の蓋であって、
上記シート状パッキンは、閉栓状態において上記内周側の環状凸部の突出端が食い込む程度に軟質合成樹脂により形成されている、容器の蓋。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれかに記載の容器の蓋であって、
上記内周側の環状凸部の突出端は、外周フランジ本体部に容器の口部が当接する前の状態において、外周側の環状凸部の突出端よりも上位に位置付けられるように設定されている、容器の蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−40435(P2009−40435A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204930(P2007−204930)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】