説明

容器の折り畳み構造並びにこの容器を用いた食品

【課題】発泡合成樹脂材の容器の折り畳みを可能とし、省スペース化を図ることにより廃棄や回収時の効率を高めることができる新たな容器並びにその折り畳みのための構造さらには食品を提供する。
【解決手段】開口部11と底面部14と全体に傾斜状に形成された側壁部15を有する容器10において、側壁部の内壁面部16または外壁面部17のいずれか一面側に、断面V字状の上側折り溝部21(31,51)及び下側折り溝部22(32,52)が、上側折り溝部の下部傾斜面34,54と下側折り溝部の上部傾斜面35,55との合接頂部23,24を介して連続して形成され、上側折り溝部及び下側折り溝部を形成した壁面部と反対側の壁面部の合接頂部位置に対応する位置に、上側折れ溝部及び下側折れ溝部よりも浅い溝部を有する断面V字状の起動溝部27,28(37,57)を形成した折り畳み部20(30,50)を備えてなる容器の折り畳み構造Sfを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の折り畳み構造並びにこの容器を用いた食品に関し、特に容器を上下に圧迫することにより容積を縮小することができる容器とこれに組み込まれる折り畳み構造、さらにはこの容器を用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の容積を減少させる手法として、容器の胴体部分の上下方向に連続する断面W字形状の収縮変形可能な蛇腹構造が一般に知られている(図10の断面模式図の容器90参照)。例えば、写真処理用の溶液の酸化変性を抑制するため、使用に伴って容器の容積を減少することができる容器が提案されている(特許文献1参照)。あるいは、容器容積を少なくすることにより、容器の搬送や廃棄、回収時の効率を改善した飲料等の液体用のポリエチレンテレフタレート製容器も提案されている(特許文献2等参照)。通常、特許文献等に開示され図11に示す容器90は、ブロー成形により瓶形状に成形される。ブロー成形の場合、成形用の金型の構造や製法により、容器形状に図示の蛇腹構造91を取り入れることが比較的容易である。そこで、蛇腹構造は専ら液体の包装容器分野において多く提案されている。
【0003】
シリコーン樹脂製の鍋や水切り等の調理器具の場合、使用しないときの折り畳みによる収納効率の改善から、蛇腹構造が胴部分に採用される場合がある。シリコーン樹脂を用いた製品100の場合、図11の断面模式図から理解されるように、肉厚部分101と肉薄部分102が交互に設けられる。当該構造を採用することにより樹脂弾性を利用した蛇腹構造の可撓変形が可能となり折り畳み容易となる。
【0004】
ここで、惣菜類、特には麺類、丼物、さらにはスープ、シチュー等の温かい状態で提供する食品、あるいはアイスクリーム、シャーベット等の冷菓等の冷たい状態で提供する食品の包装においては、一般に、保温、保冷、及び断熱効果に優れたスチレンフォーム等の発泡合成樹脂材から形成した容器が広汎に用いられる。しかし、各特許文献や図10の容器は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製であることから、直接温かいないし熱い食品を注ぎ入れることに不向きである。また、シリコーン樹脂の場合、材料が高価であり使い捨て(ワン・ウェイ、ディスポーザブル)の用途に適さない。
【0005】
また、これらの温かいあるいは冷たい食品の包装用の容器を発泡合成樹脂材から形成する場合、持ちやすさや食べやすさを勘案すると、特許文献や図示等の蛇腹構造をそのまま採用することは難しい。単純に蛇腹構造を採用してしまうと、容器本来の形状を維持することが容易ではなく形状は不安定化する。すなわち、発泡合成樹脂材の容器において、これまで折り畳み可能な構造を組み込んだ容器はほとんど実用化されていなかった。
【0006】
このような状況から、発泡合成樹脂材の容器の折り畳みによる減容積化は未だ模索段階である。現在、容器の廃棄、回収時の効率化、減容積化は、環境問題への取り組みの上から取り組むべき喫緊の課題である。そこで、発泡合成樹脂材容器の折り畳みを可能とする新たな構造が求められるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−5664号公報
【特許文献2】特開2001−199443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、発泡合成樹脂材の容器の折り畳みを可能とし、省スペース化を図ることにより廃棄や回収時の効率を高めることができる新たな容器並びにその折り畳みのための構造、さらにこの容器を用いた食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、発泡合成樹脂材を主体とし、開口部と、前記開口部より小さい面積の底面部と、前記開口部から前記底面部に向けて全体として傾斜状に形成され上下方向に折り畳み可能な側壁部を有する容器において、前記側壁部の内壁面部または外壁面部のいずれか一面側に、当該壁面部を周回する断面V字状の上側折り溝部及び下側折り溝部が、前記上側折り溝部の下部傾斜面と前記下側折り溝部の上部傾斜面との合接頂部を介して連続して形成されているとともに、前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部を形成した壁面部と反対側の壁面部の前記合接頂部位置に対応する位置に、当該壁面部を周回する前記上側折れ溝部及び前記下側折れ溝部よりも浅い溝部を有する断面V字状の起動溝部が形成された折り畳み部を備えたことを特徴とする容器の折り畳み構造に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記折り畳み部が、容器の上下方向に第1折り畳み部及び第2折り畳み部として2組設けられ、各折り畳み部における上側折り溝部及び下側折り溝部と起動溝部が、互いに反対側の壁面部となるように形成された請求項1に記載の容器の折り畳み構造に係る。
【0011】
請求項3の発明は、前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部の溝深さが、前記側壁部の一般部の厚さの半分よりも深く形成されている請求項1または2に記載の容器の折り畳み構造に係る。
【0012】
請求項4の発明は、前記容器の横断面形状が円形状である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記容器の内表面全体に樹脂フィルムが貼着されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造に係る。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造に飲食物を入れたことを特徴とする食品に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る容器の折り畳み構造によると、発泡合成樹脂材を主体とし、開口部と、前記開口部より小さい面積の底面部と、前記開口部から前記底面部に向けて全体として傾斜状に形成され上下方向に折り畳み可能な側壁部を有する容器において、前記側壁部の内壁面部または外壁面部のいずれか一面側に、当該壁面部を周回する断面V字状の上側折り溝部及び下側折り溝部が、前記上側折り溝部の下部傾斜面と前記下側折り溝部の上部傾斜面との合接頂部を介して連続して形成されているとともに、前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部を形成した壁面部と反対側の壁面部の前記合接頂部位置に対応する位置に、当該壁面部を周回する前記上側折れ溝部及び前記下側折れ溝部よりも浅い溝部を有する断面V字状の起動溝部が形成された折り畳み部を備えたため、発泡合成樹脂材の容器の折り畳みを可能とし、省スペース化を図ることにより廃棄や回収時の効率を高めることができる新たな容器を得ることができた。
【0016】
請求項2の発明に係る容器の折り畳み構造によると、請求項1の発明において、前記折り畳み部が、容器の上下方向に第1折り畳み部及び第2折り畳み部として2組設けられ、各折り畳み部における上側折り溝部及び下側折り溝部と起動溝部が、互いに反対側の壁面部となるように形成されたため、側壁部の折れ曲がりの向きを互い違いとすることができる。また、より大きな折り畳み量を得ることができる。
【0017】
請求項3の発明に係る容器の折り畳み構造によると、請求項1または2の発明において、前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部の溝深さが、前記側壁部の一般部の厚さの半分よりも深く形成されているため、容器に加わる変形圧力により折り溝部において確実に折れ曲がり可能となる。
【0018】
請求項4の発明に係る容器の折り畳み構造によると、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記容器の横断面形状が円形状であるため、折り畳み部に加わる力を均等化し、折り畳み部に生じる折り畳み変形量のばらつきを極力抑制することができる。
【0019】
請求項5の発明に係る容器の折り畳み構造によると、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記容器の内表面全体に樹脂フィルムが貼着されているため、折り畳み変形時に発泡合成樹脂材の容器の折り畳み部の溝部を補強することができる。
【0020】
請求項6の発明に係る食品によると、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造に飲食物を入れたことを特徴とするため、喫食後に容器を折り畳むことができ、処理が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の容器の全体斜視図である。
【図2】図1の容器の全体側面図である。
【図3】折り畳み前の容器の部分縦断面図である。
【図4】側壁部の主要部拡大端面図である。
【図5】折り畳み後の容器の全体斜視図である。
【図6】折り畳み後の容器の部分縦断面図である。
【図7】折り畳み部の第1拡大断面図である。
【図8】折り畳み部の第2拡大断面図である。
【図9】折り畳み部の第3拡大断面図である。
【図10】第1従来例の容器の断面模式図である。
【図11】第2従来例の物品の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の全体斜視図及び図2の全体側面図等に基づいて、請求項1をはじめとする発明に規定する容器10とこれに備えられる折り畳み部20とその折り畳み構造Sfについて説明する。容器10は、ポリスチレンフォーム、発泡ポリプロピレン等に代表される発泡合成樹脂材を主体に発泡成形により形成される。この実施例の容器ではポリスチレンペーパー(PSP)による形成である。従って、多くの気泡が形成されるため断熱性に優れる。ゆえに、容器を握持した際に食品からの熱あるいは手からの熱が容器を介して伝導し難くなり、背景技術にて述べたように、温かいあるいは冷たい食品の包装容器として好適である。
【0023】
図1、図2から理解されるように、容器10には、開口部11と、この開口部11よりも小さな面積とする底面部14が備えられる。そして開口部11から底面部14に向けて全体として傾斜状に形成された側壁部15が備えられる。容器10の側壁部15には、側壁部15の全周囲にわたって平行に周回する断面V字状の複数の溝部から構成され、容器10の上下方向の折り畳みを可能とする折り畳み部20が形成される。折り畳み部20並びに同部にて作動する折り畳み構造Sfの詳細は後に述べる。
【0024】
容器10の開口部11の外方周囲に水平に延びる開口縁部12が形成され、同時に開口縁部12の直下に開口壁部13も形成される。当該容器10において側壁部15の内側は内壁面部16であり、その外側は外壁面部17である。容器10の側壁部15と底面部14により囲まれた空間は容器内部18である。底面部14の中央部分に底面段部14sが備えられる。
【0025】
容器10は、請求項4の発明に規定するように、容器10の側壁部15の横断面形状を円形状としている。後出の図5、図6等に示す折り畳み時において、容器10の上下から側壁部15の折り畳み部20に加わる力を均等にするためである。そして、折り畳み部20に生じる折り畳み変形量のばらつきを極力抑制するためである。なお、詳細等は後に説明する。
【0026】
実施例の容器10にあっては、ポリスチレンペーパー(PSP)による発泡合成樹脂材を主体に形成されるとともに、請求項5の発明に規定するように、当該容器10の側壁部15と底面部14により囲まれる内表面全体に樹脂フィルムが貼着されている。樹脂フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン等の適宜の可撓変形容易なポリオレフィン樹脂から製膜されるフィルムが主に用いられる。この樹脂フィルムは、ヒートシール等の熱ラミネート加工により発泡合成樹脂材側に貼着(融着)される。
【0027】
発泡合成樹脂材に屈曲に伴う収縮が蓄積する場合、容器自体の肉厚さや折り曲げ回数等によるものの、折れ曲がり部位にしわや亀裂が生じやすくなる。そこで、樹脂フィルムが発泡合成樹脂材に貼着されたことにより、折り畳み変形時に発泡合成樹脂材の容器10(折り畳み部20)に生じる折れ曲がる部位(各溝部)を補強することができる。
【0028】
図2から把握されるとおり、側壁部15の内壁面部16または外壁面部17の少なくともいずれか一面側に、当該壁面部(16または17の少なくとも一方)を周回する断面V字状の上側折り溝部21及び下側折り溝部22が形成される。特に、図示の容器10では、請求項2の発明に規定するように、側壁部15に備えられる折り畳み部20は、当該容器10の上下方向に第1折り畳み部30及び第2折り畳み部50の2組設けられる。第1折り畳み部30の上側折り溝部21及び下側折り溝部22は側壁部15の内壁面部16に形成される。第2折り畳み部50の上側折り溝部21及び下側折り溝部22は側壁部15の外壁面部17に形成される。このように互いの折り畳み部における折り溝部を反対側の壁面部とすることにより、側壁部15の折れ曲がりの向きを互い違いとすることができる。図2の符号27及び28は起動溝部である。
【0029】
加えて、図2に示し、請求項6の発明に規定するように、折り畳み部20において作動する折り畳み構造Sfを備える容器10に飲食物Fdを入れてなる食品Fpを提供することができる。容器内に入れる飲食物(入れて提供する飲食物)の種類は提供場所、用途、販売形態等により適宜である。前述のとおり、麺類、丼物、シチュー、またはスープ、ホットドリンク等の温かい状態で提供する飲食物、加えて、熱湯を注ぎ入れて温かい状態で喫食する飲食物(乾燥品等)、あるいはアイスクリーム、シャーベット、ドリンク等の冷たい状態で提供する飲食物が例示できる。そして、これらの飲食物を入れた食品(即席食品を含む)である。
【0030】
さらに図3の部分縦断面図を用い、2組の折り畳み部20を構成する第1折り畳み部30及び第2折り畳み部50の詳細を説明する。第1折り畳み部30及び第2折り畳み部50は図示のとおり、容器10の開口部11から底面部14に向かう上下の配置である。
【0031】
第1折り畳み部30において、上側折り溝部21となる第1上側折り溝部31の断面V字状の溝は第1上部傾斜面33及び第1下部傾斜面34により形成される。同じく下側折り溝部22となる第1下側折り溝部32の断面V字状の溝は第2上部傾斜面35及び第2下部傾斜面36により形成される。第1上側折り溝部31の第1下部傾斜面34と第1下側折り溝部32の第2上部傾斜面35との接合により第1合接頂部23が形成される。そして、第1上側折り溝部31及び第1下側折り溝部32は、第1合接頂部23を介して互いに連続して側壁部15の内壁面部16の全周にわたり形成される。
【0032】
また、上側折り溝部21となる第1上側折り溝部31及び下側折り溝部22となる第1下側折り溝部32が形成されている内壁面部16の反対側の外壁面部17に起動溝部27として第1起動溝部37が形成される。
【0033】
第2折り畳み部50において、上側折り溝部21となる第2上側折り溝部51の断面V字状の溝は第3上部傾斜面53及び第3下部傾斜面54により形成される。同じく下側折り溝部22となる第2下側折り溝部52の断面V字状の溝は第4上部傾斜面55及び第4下部傾斜面56により形成される。第2上側折り溝部51の第3下部傾斜面54と第2下側折り溝部52の第4上部傾斜面55との接合により第2合接頂部24が形成される。そして、第2上側折り溝部51及び第2下側折り溝部52は、第2合接頂部24を介して互いに連続して側壁部15の外壁面部17の全周にわたり形成される。
【0034】
同様に、上側折り溝部21となる第2上側折り溝部51及び下側折り溝部22となる第2下側折り溝部52が形成されている外壁面部17の反対側の内壁面部16に起動溝部28として第2起動溝部57が形成される。
【0035】
続いて、図4の主要部拡大端面図を用い折り畳み部20のより詳細な構造について言及する。前述のとおり、第1上側折り溝部31の第1下部傾斜面34と第1下側折り溝部32の第2上部傾斜面35との接合により、第1合接頂部23は内壁面部16に形成される。断面V字状の起動溝部27として第1起動溝部37は、内壁面部16の反対側となる外壁面部17であり、外壁面部17の第1合接頂部23の位置と対応する位置25、すなわち、側壁部15を対称軸に第1合接頂部23と線対称となる位置に形成される。第1起動溝部37は、内壁面部16を周回する第1上側折り溝部31及び第1下側折り溝部32の溝深さD1よりも浅い溝深さD2となる溝部として形成される。
【0036】
同じく、第2上側折り溝部51の第3下部傾斜面54と第2下側折り溝部52の第4上部傾斜面55との接合により、第2合接頂部24は外壁面部17に形成される。断面V字状の起動溝部28として第2起動溝部57は、外壁面部17の反対側となる内壁面部16であり、第2合接頂部24の位置と対応する位置26、すなわち、側壁部15を対称軸に第2合接頂部24と線対称となる位置に形成される。第2起動溝部57は、外壁面部17を周回する第2上側折り溝部51及び第2下側折り溝部52の溝深さD1よりも浅い溝深さD2となる溝部として形成される。
【0037】
容器10の折り畳み部20を構成する溝部のうち、上側折り溝部21(31,51)及び下側折り溝部22(32,52)は、折れ曲がることにより容器を変形させる役割を担う。また、起動溝部27(第1起動溝部37)及び28(第2起動溝部57)は、いったん容器に加わる変形圧力を受ける。これとともに、起動溝部27(第1起動溝部37)は上側折り溝部21(31)と下側折り溝部22(32)へ変形圧力を伝達し、起動溝部28(第2起動溝部57)は上側折り溝部21(51)と下側折り溝部22(52)へ変形圧力を伝達する役割も担うと考えられる。折り畳み部20(30,50)に含まれる3組の溝部により折り畳み構造Sfは構成される。
【0038】
図示からよくわかるように、断面V字状の第1上側折り溝部31の最底部は第1溝底部41である。以下順に第1下側折り溝部32に第2溝底部42、第2上側折り溝部51に第3溝底部43、及び第2下側折り溝部52に第4溝底部44がそれぞれ形成される。次に、第1溝底部41から側壁部15を厚さ方向に横切る部分は第1上側折り溝部31における第1変形部45(変形予定部)である。これと同様に、第1下側折り溝部32に第2変形部46、第2上側折り溝部51に第3変形部47、第2下側折り溝部52に第4変形部48がそれぞれ生じる。
【0039】
各折り溝部の溝深さについては、請求項3の発明に規定するように、上側折り溝部21(第1上側折り溝部31,第2上側折り溝部51)及び下側折り溝部22(第1下側折り溝部32,第2下側折り溝部52)の溝深さD1は、側壁部15の一般部、つまり、各種の溝部が存在しない部位の厚さTnの半分よりも深く形成される。この溝深さは、容器に加わる変形圧力により確実に当該折り溝部において折れ曲がることを踏まえ、折り畳む前の折り溝部の強度の維持と各折り溝部(各変形部)の適度な脆弱化とを両立させ、容器の材質等も考慮して算定した量である。なお、開示する実施例の容器によると、容器の最大直径は149mm、開口部直径は135mm、全高は70mmであり、側壁部の一般部の肉厚は2.5mm、上側折り溝部及び下側折り溝部の溝深さは1.5mm、起動溝部の溝深さは0.5mmである。
【0040】
図5は容器10を折り畳んだ後の全体斜視図である。第1折り畳み部30(20)に含まれる第1変形部45及び第2変形部46、同時に、第2折り畳み部50(20)に含まれる第3変形部47及び第4変形部48の計4箇所による折れ曲がりに伴い、側壁部15が折り畳まれた状態である。図1と図5との比較から把握されるように、当初の椀を模した形状の容器10は折り畳まれて容器の全高が浅く皿のようになる。
【0041】
図6の部分断面図も交えて折り畳んだ後の容器10の形状変形について説明する。図6から容易にわかるように、容器10の折り畳み変形量を多くする必要上、折り畳み部20を第1折り畳み部30及び第2折り畳み部50の2組とする。そして、第1折り畳み部30の第1変形部45及び第2折り畳み部50の第3変形部47の2箇所は当初の側壁部15の平坦状態から180°を超える変形角(θ1,θ2)を成し、容器10の断面全体で見ると概ね逆N字のジグザグ状に側壁部15は折り畳まれる。結果、容器内部18の容積は減少し減容積化が可能となる。図示しないものの、第1折り畳み部30の第1変形部45の代わりに第2変形部46が180°を超えて変形する場合もある。
【0042】
いずれの変形部が大きく折り畳まれるのかは、容器を押しつぶす際の変形圧力等による。前掲寸法に係る当該実施例の容器10では、はじめに第3変形部47と第2変形部46がほぼ同時に折り畳み変形をはじめ、側壁部15に逆N字状の変形が生じる。さらに加わる変形圧力により、第1変形部45が折れ曲がり変形しはじめる。そして、第2変形部46の180°を超える角度の折れ曲がり変形は緩和され、図6のとおり、第1変形部45及び第3変形部47が180°を超える角度域まで変形する。この結果、側壁部15により大きなジグザグ状の折り畳み変形を生じさせることができる。
【0043】
これより、図7ないし図9に示す第1折り畳み部30付近の部分拡大端面図を用い、第1折り畳み部30を代表してこれに含まれる溝部をはじめとする各部の折り畳み変形の様子を説明する。第2折り畳み部50については同様の溝部を有し表裏反対の配置関係であるため、図示並びに説明を省略する。
【0044】
図7は折り畳み変形の初期段階であり、容器10の上下方向から変形圧力が加わっている状態である。第1合接頂部23と第1起動溝部37の双方に着目すると、第1合接頂部23の上下の第1下部傾斜面34及び第2上部傾斜面35と第1起動溝部37内の上下の傾斜面37p,37qにより、ちょうど断面へ字形状となる。そこで、第1起動溝部37が側壁部15に形成されていることから、容器10の上下方向から変形圧力はいったん第1起動溝部37に集中し、各傾斜面の傾きを通じて組み合わされ第1合接頂部23の突出する向きの力(矢印F1)となる。結果、第1合接頂部23は矢印F1方向に突出する。
【0045】
次の図8は折り畳み変形の中期段階である。第1合接頂部23の矢印F1方向への突出を契機として、第1合接頂部23及び第1起動溝部37は、第1合接頂部23の上下に位置する第1上側折り溝部31の第1変形部45または第1下側折り溝部32の第2変形部46の折れ曲がり変形を誘導する。図示は第1変形部45の折れ曲がりの開示例である。第1合接頂部23の矢印F1方向への突出に連動して、第1合接頂部23側に第1下部傾斜面34及び傾斜面37pが引っ張られる。そして、矢印F1方向と逆向きとなるように、第1上側折り溝部31の第1変形部45に側壁部15の外壁面部17側へ突出する歪みが生じる。
【0046】
第1折り畳み部30の第1上側折り溝部31において、第1上部傾斜面33及び第1下部傾斜面34は内壁面部16側にのみ形成され、反対側の外壁面部17は平坦のままである。そのため、変形圧力はほぼ確実に第1溝底部41(第1変形部45)に集中する。そして、第1上側折り溝部31の第1変形部45は矢印F2方向へ折れ曲がり始める。
【0047】
続く図9は折り畳み変形の最終段階である。図8の時点よりもさらに、第1上側折り溝部31の第1変形部45が突出し(矢印F3方向参照)、第1上部傾斜面33と第1下部傾斜面34が互いに接近してV字状に折れ曲がった状態となる。図示を省略しているが、第1下側折り溝部32の第2変形部46においても開示の第1上側折り溝部31の第1変形部45と同様の折れ曲がり動作が生じる。また、第2折り畳み部50においても第2起動溝部57を契機に第2上側折り溝部51の第3溝底部43に折れ曲がり動作が生じる。
【0048】
図示とともに詳述した容器によると、折り畳み部20(30,50)に備わる折り畳み構造Sfから理解されるように、容器10は蛇腹構造に依存することなく、その側壁部15に設けられた複数の溝部の好適な組み合わせの構造により、これまでにない容器の折り畳みが可能となる。実施例の容器によると底面部14に対し側壁部15は約70°の傾斜であり、側壁部15の溝部は底面部14に近づくほど円周は小さくなる。従って、実際の折り畳みにおいては各溝部や傾斜面の円周を収縮する力も生じる。この点について、容器は発泡合成樹脂材から形成されているため内部に気泡が含まれており、円周を収縮する力を受けた収縮変形も可能である。また、容器の折り畳みが進行して発泡合成樹脂材の降伏点を超えた後は、容器の発泡合成樹脂材の弾性のみでは当初の折り畳む前の形状に安易に復帰することはない。
【0049】
本発明に係る容器並びに当該容器に組み込まれる折り畳み構造を適用することにより、使用後の発泡合成樹脂材容器の容積を極めて簡単に減少することができる。そこで、容器を廃棄、回収する際、省スペース化が進み回収効率を改善することができる。特に、折り畳んだ後の形状が一定となるため、作業性がよい。資源として使用済み容器の回収に要する経費軽減に貢献することは、環境問題への取り組みにおいて重要である。それゆえ、使用後の容器容積の減少は、小売店等の容器の使用者、購入者等の容器の利用者等に対して大きな訴求力を発揮し得る。
【0050】
また、本発明に係る容器を用い、これに飲食物を入れた食品にあっては、既述のとおり、喫食後の容器を折り畳むことができ容器の処理が簡単となる。従って、飲食物と容器は常に一緒に販売される実情から容器自体の容積軽減の利点は大きく、最終的に容器の改善によりもたらされる食品の魅力向上にもつながる。
【0051】
本発明の容器は図1等の折り畳む前の状態での提供を予定している。これに加えて、図5等の折り畳んだ後の状態で提供することも可能である。この場合、利用者の側で折り畳まれた容器を広げて使用することになる。ゆえに、場合によっては、容器における双方向の変形利用も可能である。
【0052】
なお、本発明の容器における容器の大きさ、形状、さらには折り畳み部の向きや数等は、発明の趣旨に準じる限り、人の手による押しつぶし可能な範囲内において、容器の使用目的、用途、内容物を勘案して最適に選択される。このため、図示し詳述した実施例の構成、構造のみには限定されない。例えば、容器の全高を実施例より高くして折り畳み部を互い違いの4組に増やすこと等も可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 容器
11 開口部
14 底面部
15 側壁部
16 内壁面部
17 外壁面部
20 折り畳み部
21 上側折り溝部
22 下側折り溝部
23 第1合接頂部
24 第2合接頂部
27,28 起動溝部
30 第1折り畳み部
31 第1上側折り溝部
32 第1下側折り溝部
33 第1上部傾斜面
34 第1下部傾斜面
35 第2上部傾斜面
36 第2下部傾斜面
37 第1起動溝部
50 第2折り畳み部
51 第2上側折り溝部
52 第2下側折り溝部
53 第3上部傾斜面
54 第3下部傾斜面
55 第4上部傾斜面
56 第4下部傾斜面
57 第2起動溝部
D1 上側折り溝部及び下側折り溝部の溝深さ
Tn 側壁部の一般部の厚さ
Sf 折り畳み構造
Fp 食品
Fd 飲食物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂材を主体とし、開口部と、前記開口部より小さい面積の底面部と、前記開口部から前記底面部に向けて全体として傾斜状に形成され上下方向に折り畳み可能な側壁部を有する容器において、
前記側壁部の内壁面部または外壁面部のいずれか一面側に、当該壁面部を周回する断面V字状の上側折り溝部及び下側折り溝部が、前記上側折り溝部の下部傾斜面と前記下側折り溝部の上部傾斜面との合接頂部を介して連続して形成されているとともに、
前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部を形成した壁面部と反対側の壁面部の前記合接頂部位置に対応する位置に、当該壁面部を周回する前記上側折れ溝部及び前記下側折れ溝部よりも浅い溝部を有する断面V字状の起動溝部が形成された折り畳み部を備えた
ことを特徴とする容器の折り畳み構造。
【請求項2】
前記折り畳み部が、容器の上下方向に第1折り畳み部及び第2折り畳み部として2組設けられ、各折り畳み部における上側折り溝部及び下側折り溝部と起動溝部が、互いに反対側の壁面部となるように形成された請求項1に記載の容器の折り畳み構造。
【請求項3】
前記上側折り溝部及び前記下側折り溝部の溝深さが、前記側壁部の一般部の厚さの半分よりも深く形成されている請求項1または2に記載の容器の折り畳み構造。
【請求項4】
前記容器の横断面形状が円形状である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造。
【請求項5】
前記容器の内表面全体に樹脂フィルムが貼着されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器の折り畳み構造に飲食物を入れたことを特徴とする食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28365(P2013−28365A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165552(P2011−165552)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(593215829)アテナ工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】