容器の掛留具
【課題】本発明の目的は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、狭い空間に配置された容器の場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具を提供することにある。
【解決手段】容器としてのエアクリーナケースのカバー体9の軸体6に回転自在に軸支された板状の掛留部2を設け、その掛留部2の外周面をルーローの三角形状に形成した。また、エアクリーナケースの本体8に被掛留部3を設けた。そして、掛留部2を回転させることにより、掛留部2及び被掛留部3に巻き掛けられた環状体4が弛緩状態から緊張状態へと変化するようにした。
【解決手段】容器としてのエアクリーナケースのカバー体9の軸体6に回転自在に軸支された板状の掛留部2を設け、その掛留部2の外周面をルーローの三角形状に形成した。また、エアクリーナケースの本体8に被掛留部3を設けた。そして、掛留部2を回転させることにより、掛留部2及び被掛留部3に巻き掛けられた環状体4が弛緩状態から緊張状態へと変化するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具に係り、詳しくは自動車のエアクリーナケースの本体に対してカバー体を掛留する容器の掛留具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関に清浄な外気を吸引するためのエアクリーナケースの本体にカバー体を固定するクランプ用フックとして、金属製のものが用いられている。
例えば、特許文献1に開示されている金属帯板製のクランプ用フックは、側面視C字状に湾曲した帯状鋼板からなる本体部の両端に係合部が形成されている。そして、一方の係合部がエアクリーナケースのカバー体の環状突起に係合し、その係合部とは反対側の係合部がエアクリーナケースの本体の係合凹所に係合して、エアクリーナケースの本体とカバー体とを締結している。そして、突起に係合する係合部には摘まみ片が設けられており、その摘まみ片の操作により、フックを係合状態としたり非係合状態としたりすることが可能となっている。
【特許文献1】特開2002−70815号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記フックは、その本体部に補強リブが形成されているため、摘まみ片を操作するには相応の力が必要であり、指先に対する反発力は小さくない。
また、自動車のエンジンルーム内はコンパクト化が図られており、様々な機器が限られた空間において有効に配置されている。そのため、エアクリーナケースのクランプ用フックを操作する空間も自ずと限定されている。すると、フックの摘まみ片を指先で引いて、エアクリーナケースの半径方向外方へフックを外そうとしても、狭い空間内では指先に力が入り難い場合があり、必ずしも作業性のよいものとはいえない。
【0004】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、狭い空間に配置された容器の場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために請求項1に記載の容器の掛留具の発明は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、前記容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に軸支された板状の掛留部を設け、その掛留部を設けない他方に被掛留部を設け、前記掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように前記外周面を形成すると共に、前記掛留部を回転させることにより、前記掛留部及び被掛留部に巻き掛けられた環状体が弛緩状態と緊張状態との間で変化することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器の掛留具において、前記掛留部は、前記軸体を中心に120度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の容器の掛留具において、前記掛留部に対して2個の被掛留部が相互に120度の角度を成すように配置され、前記掛留部とそれぞれの前記被掛留部に前記環状体が巻き掛けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の容器の掛留具において、前記掛留部は、前記軸体を中心に180度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記環状体は、金属又は合成樹脂を材質として、線状体又は帯状体が無端状に繋がれて形成されたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記掛留部の表面側には、その掛留部を回転させるための操作部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記容器の本体又はカバー体には、前記被掛留部に対向して配置された被掛留受部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
(作用)
本発明の容器の掛留具は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具である。その掛留具は、容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に、回転自在に軸支された板状の掛留部と、その掛留部を設けない他方に設けた被掛留部と、その掛留部と被掛留部とに巻き掛けられた環状体とで構成されている。そして、掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように、言い換えれば、前記掛留部の回転中心と同心の円形状とはならないように掛留部の外周面が形成されている。
【0013】
そして、例えば、伸縮自在な環状体を掛留部と被掛留部とに巻き掛けた状態で、軸体を中心に掛留部を回転させれば、環状体の長さは変化する。即ち、環状体が最も伸びた時の回転位置における掛留部と被掛留部との位置関係が、本発明の掛留具の掛留状態に該当する。一方、前記環状体の伸びが最も少ない時の回転位置における掛留部と被掛留部との位置関係が、本発明の掛留具の非掛留状態に該当する。環状体の張り具合としては、前者が緊張状態であり、後者が弛緩状態である。
【0014】
従って、前記掛留状態の位置関係における掛留部と被掛留部とに環状体を巻き掛けたとき、環状体の周長を環状体が所定の緊張状態となる長さとすれば、掛留部を回転させて前記非掛留状態としたときの環状体は弛緩状態となる。すると、巻き掛け状態の環状体を被掛留部から外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の掛留具においては、容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に板状の掛留部を軸支させ、その掛留部の回転により掛留部と被掛留部とに巻き掛けた環状体の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で変えられるようにした。そのため、掛留部を回転させる空間があれば、狭い空間に配置された容器の場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した掛留具1の実施形態を図1〜図5を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態においては、合成樹脂成形品であるエアクリーナケースのカバー体9に一体に形成された軸体6に板状体の掛留部2が回転自在に軸支されている。そして、エアクリーナケースの本体8に被掛留部3が形成され、掛留部2の外周面を形成する辺部2aと被掛留部3の外周面とに環状体4が弛緩状態に巻き掛けられている。この環状体4の図1に示す弛緩状態は、被掛留部3、軸体6及び角部2bがこの順に直線状に配置されることにより得られる。また、被掛留部3の対向面3aとカバー体9に形成された被掛留受部5の対向面5aとは当接状態にある。しかし、この状態は、本体8に対してカバー体9が単に閉じられているだけであり、弛緩状態にある環状体4を被掛留部3から外せば、カバー体9を開けることができる状態にあることを示している。
【0017】
掛留部2の外周面はいわゆるルーローの三角形状に形成され、辺部2aは外側に凸の円弧状面である。従って、掛留部2は、掛留部2の重心位置に穿設された軸受孔2cを中心に120度回転されれば、同一姿勢を示すことになる。三角形の角に相当する3ヶ所の角部2bのそれぞれの内側には操作部としての操作ピン7が掛留部2と一体にその表面側に立設されている。なお、角部2bの外周面は面取りされて曲面となっている。また、掛留部2とカバー体9との間にはスペーサー6bが介在されており、軸体6の先端部にクリップ6aが装着されて、掛留部2の軸体6からの脱落が防止されている。
【0018】
図3に示すように、掛留部2は、操作ピン7を操作することにより、図1に示す状態から時計回りあるいは反時計回りの方向に60度回転されて、被掛留部3、軸体6及び辺部2aの中心部がこの順に直線状に配置されている。この配置の掛留部2と被掛留部3とに巻き掛けられた環状体4は、最も緊張した状態となっており、被掛留部3を掛留部2の側へ引き付けて、対向面3aと対向面5aとを密着状態にしている。このとき、本体8とカバー体9とは締結状態となる。
【0019】
また、図3に示すような配置の掛留部2を、操作ピン7を操作することにより、左右いずれかの方向に60度回転させれば、掛留部2と被掛留部3とに緊張状態で巻き掛けられていた環状体4は弛緩状態となる。そして、本体8とカバー体9との締結状態を解除することができる。
【0020】
なお、掛留部2の辺部2aと環状体4の一部とを接着剤等により結合すれば、環状体4が掛留部2から脱落することを防止できる。このとき、環状体4と結合される辺部2aは3ヶ所のうちの1ヶ所に限定される。そして、その位置は、図3に示す環状体4の緊張状態が得られるときの配置において、図の左側に位置する2aに限られる。また、環状体4を弛緩状態にするための掛留部2の回転方向は左右いずれの方向でもよいが、再び環状体4を緊張状態にするためには、先に回転させた方向の逆方向に回転させる必要がある。
【0021】
本実施形態における、エアクリーナケースの本体8及びカバー体9は公知の合成樹脂材料、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)等を用いた成形品である。また、同様に、掛留部2及び操作ピン7もPP、PE、PA等の公知の合成樹脂材料を用いた成形品であり、射出成形により成形されている。
【0022】
また、本実施形態の環状体4は鋼製の線状体であるワイヤであるが、帯状体としてもよく、材質も他の金属又は上記公知の合成樹脂材料に替えてもよい。合成樹脂材料を用いる場合、金属製ワイヤ等で補強するようにしてもよい。
【0023】
(変形例)
基本形状が三角形であり、掛留部2の変形例である掛留部10及び掛留部11を、図4及び図5を用いて掛留部2と異なる部分を中心に説明する。
【0024】
図4(a)、(b)に示すように、掛留部10は、その外周面を形成する辺部10aが平面であるように形成され、それぞれの辺部10aは互いに60度の角度を成すように配置されている。3ヶ所の辺部10aの間のそれぞれの角部10bは、面取りが施されて曲面となっている。そのため、掛留部2と同様に、掛留部10は、その重心に穿設された軸受孔2cを中心に60度回転されることにより、図4(a)で示す弛緩状態と図4(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更できる。
【0025】
更に、図5(a)、(b)に示すように、掛留部11の辺部11aは外側に凹の湾曲面に形成され、それぞれの辺部11aは、掛留部11の重心に穿設された軸受孔2cを中心に互いに120度の回転対称となるように配置されている。そのため、掛留部2及び掛留部10と同様に、掛留部11は、軸受孔2cを中心に60度回転されることにより、図5(a)で示す弛緩状態と図5(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更できる。ただし、環状体4と掛留部11との接触面積が小さいために、環状体4が巻き掛けられた掛留部11を回転させる時、摩擦による回転抵抗は、掛留部2及び掛留部10に比べ小さくて済む。3ヶ所の辺部11aの間のそれぞれの角部11bは、円弧状の曲面となっている。なお、掛留部11では、3ヶ所の操作ピン7は円弧状に形成されている角部11bの中心と同一心に配置されている。
【0026】
従って、上記実施形態の掛留具1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、容器としてのエアクリーナケースのカバー体9に一体的に形成した軸体6に掛留部2を回転自在に外嵌して、その掛留部2とエアクリーナケースの本体8の被掛留部3とに環状体4を巻き掛けた。そして、軸体6を中心に掛留部2を回転させることにより、環状体4の張り具合を、弛緩状態と緊張状態との間で変更できるようにした。従って、3本の操作ピン7を操作して掛留部2を回転できる余地があればよいので、エンジンルームのように余分な空間のない所に配置されていても、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0027】
(2)上記実施形態では、掛留部2の外周面を、基本形状を三角形として形成した。そのため、掛留部2を60度回転させることにより、掛留部2に巻き掛けられた環状体4をその弛緩状態と緊張状態との間で変化させることができる。
【0028】
(3)上記実施形態では、掛留部2の辺部2aを外側に凸の円弧状面とし、掛留部2の外周面の形状をいわゆるルーローの三角形とした。そのため、掛留部2を均等な力で回転させることができるようになり、掛留部2に巻き掛けられた環状体4をその弛緩状態から緊張状態へと変更させる操作力が小さく、且つ操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0029】
(4)上記実施形態では、掛留部11の辺部11aを、基本形状を三角形として外側に凹の湾曲面に形成した。そして、3ヶ所の辺部11aの間のそれぞれの角部11bを、円弧状の曲面とした。そのため、環状体4と掛留部11との接触面積が小さいために、環状体4が巻き掛けられた掛留部11を回転させる時、摩擦による回転抵抗が小さいので、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0030】
(5)上記実施形態では、掛留部2を回転させるための操作ピン7を3本立設した。そのため、3本の指先で3本の操作ピン7を操作することも可能であり、3本のうちの2本の間に工具を差し込んで操作することも可能である。従って、狭い操作スペースに置かれた場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0031】
(6)上記実施形態では、被掛留部3が環状体4により掛留部2の側へ引き付けられるとき、被掛留部3の対向面3aは被掛留受部5の対向面5aに密着状態となる。そのため、本体8とカバー体9とを締結できるだけでなく、本体8とカバー体9との相互のずれ(図1の上下方向のずれ)を防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第2の実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図6及び図7を用いて説明する。
【0033】
図6及び図7に示すように、本実施形態においては、外周面がいわゆるルーローの三角形状に形成された1個の掛留部2に対し、2個の被掛留部3が対応するように配置されて一対の掛留具1を形成している。それぞれの被掛留部3は、掛留部2が軸支される軸体6に対して互いに120度の角度を成すように配置されている。このように配置された1個の掛留部2及び2個の被掛留部3に、2個の環状体4が、図6、7の紙面に垂直方向において、互いに干渉しないように巻き掛けられている。従って、掛留部2を回転させれば、2個の被掛留部3との間に巻き掛けられた2個の環状体4の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で同時に変更できる。また、2個の被掛留部3を結ぶ方向(図7の左右方向)に対して掛留部2を位置決めできる。
【0034】
図6に示す一対の掛留具1は、2個の環状体4が弛緩状態にあるときの配置であり、本体8を閉じているカバー体9を開けることが可能であると共に、カバー体9を周方向(図の左右方向)に移動することが可能な状態である。
【0035】
図7に示す一対の掛留具1は、2個の環状体4が緊張状態にあるときの配置であり、本体8に対してカバー体9が締結されると共に、カバー体9が周方向(図7の左右方向)に移動しないように位置決めされている。
【0036】
そして、この第2実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)上記実施形態では、1個の掛留部2に対して2個の被掛留部3を、それぞれの被掛留部3が軸体6に対して互いに120度の角度を成すように配置し、それぞれに環状体4を巻き掛け、互いに干渉しないように配置した。従って、1個の掛留部2を回転させれば、2個の被掛留部3との間に巻き掛けられたそれぞれの環状体4の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で同時に変更することができる。また、2個の被掛留部3を結ぶ方向(図7の左右方向)に対して掛留部2を位置決めできるので、容器本体に対してカバー体が周方向にずれることを防止することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第3の実施形態の掛留部12を、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に図8を用いて説明する。
【0038】
図8(a)、(b)に示すように、掛留部12の外周面は一対の半円状の辺部12aと、その間を連結する2ヶ所の平面状の辺部12bとにより形成されている。そのため、掛留部12を、その重心に穿設されている軸受孔2cを中心に180度回転させた時、掛留部12は同一姿勢を示す。また、半円状の辺部12aの中心よりも外方の2ヶ所に操作ピン7が立設され、操作ピン7、軸受孔2c及び操作ピン7がこの順に直線状に配置されている。従って、掛留部12を90度回転させることにより、図8(a)で示す弛緩状態と図8(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。
【0039】
本実施形態の掛留部12の形状は、半円状の辺部12aと平面状の辺部12bとから形成されるものに限らず、軸受孔2cを中心に180度回転させた時に同一姿勢を示すものであればよい。ただし、円形(真円)を除く。
【0040】
(8)上記実施形態では、掛留部12を、その重心に穿設されている軸受孔2cを中心に180度回転させた時、掛留部12が同一姿勢を示すようにした。従って、掛留部12を90度回転させることにより、弛緩状態と緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。そのため、公知のスイッチ類と同様に掛留部12を90度回転させれば、環状体4の張り具合を変更できるので、操作性に優れた容器の掛留具1を提供できる。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第4の実施形態の掛留部13を、第1、第2及び第3の実施形態と異なる部分を中心に図9を用いて説明する。
【0042】
図9(a)、(b)に示すように、掛留部13の外周面は一つの円により形成されているが、軸受孔2cは掛留部13の重心とは異なる位置に穿設されている。そのため、軸受孔2cと外周面との距離において、最も長い部分と最も短い部分とは軸受孔2cに対して互いに反対側に位置する。従って、掛留部13を180度回転させることにより、図9(a)で示す弛緩状態と図9(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。掛留部13を回転させるための操作ピン7は、3本が互いに等間隔且つ重心から等距離に立設されている。また、3本のうちの2本の操作ピン7の間に軸受孔2cが配置されている。
【0043】
本実施形態の掛留部13の形状は、外周面が円形であるものに限らず、掛留部13の重心と異なる位置に軸受孔2cが穿設されたものであれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0044】
(9)上記実施形態では、掛留部13の外周面を円形とし、重心とは異なる位置に軸受孔2cを穿設した。そのため、掛留部13を回転させるとき、その外周面に対する環状体4の巻き掛け状態は徐々に変化するので、その変化に対応して操作力も徐々に変化させることになる。従って、操作性に優れた容器の掛留具1を提供できる。
【0045】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・操作部として2本又は3本の操作ピン7を設けたが、操作ピン7の数は1本でも4本以上であってもよい。
・操作部として操作ピン7を設ける替わりに、掛留部2、10〜13の表面に穴を形成し、その穴に工具を挿して掛留部2、10〜13を回転するようにしてもよい。
・掛留部2の辺部2aに環状体4の一部を接着剤で結合するようにしたが、接着剤を用いずに辺部2a又は環状体4の一部を加熱して熱溶着してもよい。また、コ字状の留めピンを用いる等の機械的方法で環状体4の一部を辺部2aに結合してもよい。また、掛留部10〜13と環状体4との関係においても同様である。
・軸体6の先端にクリップ6aを装着して掛留部2、10〜13の脱落を防止するようにしたが、軸体6の先端部を溶融して傘状に広がるようにする熱かしめとしてもよい。
・被掛留部3が当接する被掛留受部5をカバー体9に設けたが、必ずしも設けなくてもよい。
・前記第1、2実施形態において、軸受孔2cの位置を偏心位置に設けてもよい。
・掛留部の形状を前記各実施形態とは異なる形状、例えば楕円形状、涙滴形状、三角形以外の偏心多角形状、あるいは図10及び図11に示す異形状等、各種の形状に変更してもよい。
【0046】
(他の技術的思想)
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について、その効果と共に以下に記載する。
○前記環状体は、その一部が前記掛留部に結合されていることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。このように構成した場合、前記環状体の前記掛留部からの脱落が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の掛留具の第1実施形態を模式的に示す平面図。
【図2】図1におけるAA矢視の断面図。
【図3】第1実施形態の掛留部において環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図4】本発明の掛留具の第1実施形態における掛留部の変形例を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図5】本発明の掛留具の第1実施形態における掛留部の他の変形例を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図6】本発明の掛留具の第2実施形態において環状体が弛緩状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図7】本発明の掛留具の第2実施形態において環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図8】本発明の掛留具の第3実施形態における掛留部を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図9】本発明の掛留具の第4実施形態における掛留部を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図10】本発明の掛留具の変更例を模式的に示す平面図。
【図11】本発明の掛留具の他の変更例を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0048】
1…掛留具、2,10,11,12,13…掛留部、3…被掛留部、4…環状体、5…被掛留受部、6…軸体、8…本体、9…カバー体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具に係り、詳しくは自動車のエアクリーナケースの本体に対してカバー体を掛留する容器の掛留具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関に清浄な外気を吸引するためのエアクリーナケースの本体にカバー体を固定するクランプ用フックとして、金属製のものが用いられている。
例えば、特許文献1に開示されている金属帯板製のクランプ用フックは、側面視C字状に湾曲した帯状鋼板からなる本体部の両端に係合部が形成されている。そして、一方の係合部がエアクリーナケースのカバー体の環状突起に係合し、その係合部とは反対側の係合部がエアクリーナケースの本体の係合凹所に係合して、エアクリーナケースの本体とカバー体とを締結している。そして、突起に係合する係合部には摘まみ片が設けられており、その摘まみ片の操作により、フックを係合状態としたり非係合状態としたりすることが可能となっている。
【特許文献1】特開2002−70815号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記フックは、その本体部に補強リブが形成されているため、摘まみ片を操作するには相応の力が必要であり、指先に対する反発力は小さくない。
また、自動車のエンジンルーム内はコンパクト化が図られており、様々な機器が限られた空間において有効に配置されている。そのため、エアクリーナケースのクランプ用フックを操作する空間も自ずと限定されている。すると、フックの摘まみ片を指先で引いて、エアクリーナケースの半径方向外方へフックを外そうとしても、狭い空間内では指先に力が入り難い場合があり、必ずしも作業性のよいものとはいえない。
【0004】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、狭い空間に配置された容器の場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために請求項1に記載の容器の掛留具の発明は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、前記容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に軸支された板状の掛留部を設け、その掛留部を設けない他方に被掛留部を設け、前記掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように前記外周面を形成すると共に、前記掛留部を回転させることにより、前記掛留部及び被掛留部に巻き掛けられた環状体が弛緩状態と緊張状態との間で変化することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器の掛留具において、前記掛留部は、前記軸体を中心に120度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の容器の掛留具において、前記掛留部に対して2個の被掛留部が相互に120度の角度を成すように配置され、前記掛留部とそれぞれの前記被掛留部に前記環状体が巻き掛けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の容器の掛留具において、前記掛留部は、前記軸体を中心に180度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記環状体は、金属又は合成樹脂を材質として、線状体又は帯状体が無端状に繋がれて形成されたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記掛留部の表面側には、その掛留部を回転させるための操作部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具において、前記容器の本体又はカバー体には、前記被掛留部に対向して配置された被掛留受部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
(作用)
本発明の容器の掛留具は、容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具である。その掛留具は、容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に、回転自在に軸支された板状の掛留部と、その掛留部を設けない他方に設けた被掛留部と、その掛留部と被掛留部とに巻き掛けられた環状体とで構成されている。そして、掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように、言い換えれば、前記掛留部の回転中心と同心の円形状とはならないように掛留部の外周面が形成されている。
【0013】
そして、例えば、伸縮自在な環状体を掛留部と被掛留部とに巻き掛けた状態で、軸体を中心に掛留部を回転させれば、環状体の長さは変化する。即ち、環状体が最も伸びた時の回転位置における掛留部と被掛留部との位置関係が、本発明の掛留具の掛留状態に該当する。一方、前記環状体の伸びが最も少ない時の回転位置における掛留部と被掛留部との位置関係が、本発明の掛留具の非掛留状態に該当する。環状体の張り具合としては、前者が緊張状態であり、後者が弛緩状態である。
【0014】
従って、前記掛留状態の位置関係における掛留部と被掛留部とに環状体を巻き掛けたとき、環状体の周長を環状体が所定の緊張状態となる長さとすれば、掛留部を回転させて前記非掛留状態としたときの環状体は弛緩状態となる。すると、巻き掛け状態の環状体を被掛留部から外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の掛留具においては、容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に板状の掛留部を軸支させ、その掛留部の回転により掛留部と被掛留部とに巻き掛けた環状体の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で変えられるようにした。そのため、掛留部を回転させる空間があれば、狭い空間に配置された容器の場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した掛留具1の実施形態を図1〜図5を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態においては、合成樹脂成形品であるエアクリーナケースのカバー体9に一体に形成された軸体6に板状体の掛留部2が回転自在に軸支されている。そして、エアクリーナケースの本体8に被掛留部3が形成され、掛留部2の外周面を形成する辺部2aと被掛留部3の外周面とに環状体4が弛緩状態に巻き掛けられている。この環状体4の図1に示す弛緩状態は、被掛留部3、軸体6及び角部2bがこの順に直線状に配置されることにより得られる。また、被掛留部3の対向面3aとカバー体9に形成された被掛留受部5の対向面5aとは当接状態にある。しかし、この状態は、本体8に対してカバー体9が単に閉じられているだけであり、弛緩状態にある環状体4を被掛留部3から外せば、カバー体9を開けることができる状態にあることを示している。
【0017】
掛留部2の外周面はいわゆるルーローの三角形状に形成され、辺部2aは外側に凸の円弧状面である。従って、掛留部2は、掛留部2の重心位置に穿設された軸受孔2cを中心に120度回転されれば、同一姿勢を示すことになる。三角形の角に相当する3ヶ所の角部2bのそれぞれの内側には操作部としての操作ピン7が掛留部2と一体にその表面側に立設されている。なお、角部2bの外周面は面取りされて曲面となっている。また、掛留部2とカバー体9との間にはスペーサー6bが介在されており、軸体6の先端部にクリップ6aが装着されて、掛留部2の軸体6からの脱落が防止されている。
【0018】
図3に示すように、掛留部2は、操作ピン7を操作することにより、図1に示す状態から時計回りあるいは反時計回りの方向に60度回転されて、被掛留部3、軸体6及び辺部2aの中心部がこの順に直線状に配置されている。この配置の掛留部2と被掛留部3とに巻き掛けられた環状体4は、最も緊張した状態となっており、被掛留部3を掛留部2の側へ引き付けて、対向面3aと対向面5aとを密着状態にしている。このとき、本体8とカバー体9とは締結状態となる。
【0019】
また、図3に示すような配置の掛留部2を、操作ピン7を操作することにより、左右いずれかの方向に60度回転させれば、掛留部2と被掛留部3とに緊張状態で巻き掛けられていた環状体4は弛緩状態となる。そして、本体8とカバー体9との締結状態を解除することができる。
【0020】
なお、掛留部2の辺部2aと環状体4の一部とを接着剤等により結合すれば、環状体4が掛留部2から脱落することを防止できる。このとき、環状体4と結合される辺部2aは3ヶ所のうちの1ヶ所に限定される。そして、その位置は、図3に示す環状体4の緊張状態が得られるときの配置において、図の左側に位置する2aに限られる。また、環状体4を弛緩状態にするための掛留部2の回転方向は左右いずれの方向でもよいが、再び環状体4を緊張状態にするためには、先に回転させた方向の逆方向に回転させる必要がある。
【0021】
本実施形態における、エアクリーナケースの本体8及びカバー体9は公知の合成樹脂材料、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)等を用いた成形品である。また、同様に、掛留部2及び操作ピン7もPP、PE、PA等の公知の合成樹脂材料を用いた成形品であり、射出成形により成形されている。
【0022】
また、本実施形態の環状体4は鋼製の線状体であるワイヤであるが、帯状体としてもよく、材質も他の金属又は上記公知の合成樹脂材料に替えてもよい。合成樹脂材料を用いる場合、金属製ワイヤ等で補強するようにしてもよい。
【0023】
(変形例)
基本形状が三角形であり、掛留部2の変形例である掛留部10及び掛留部11を、図4及び図5を用いて掛留部2と異なる部分を中心に説明する。
【0024】
図4(a)、(b)に示すように、掛留部10は、その外周面を形成する辺部10aが平面であるように形成され、それぞれの辺部10aは互いに60度の角度を成すように配置されている。3ヶ所の辺部10aの間のそれぞれの角部10bは、面取りが施されて曲面となっている。そのため、掛留部2と同様に、掛留部10は、その重心に穿設された軸受孔2cを中心に60度回転されることにより、図4(a)で示す弛緩状態と図4(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更できる。
【0025】
更に、図5(a)、(b)に示すように、掛留部11の辺部11aは外側に凹の湾曲面に形成され、それぞれの辺部11aは、掛留部11の重心に穿設された軸受孔2cを中心に互いに120度の回転対称となるように配置されている。そのため、掛留部2及び掛留部10と同様に、掛留部11は、軸受孔2cを中心に60度回転されることにより、図5(a)で示す弛緩状態と図5(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更できる。ただし、環状体4と掛留部11との接触面積が小さいために、環状体4が巻き掛けられた掛留部11を回転させる時、摩擦による回転抵抗は、掛留部2及び掛留部10に比べ小さくて済む。3ヶ所の辺部11aの間のそれぞれの角部11bは、円弧状の曲面となっている。なお、掛留部11では、3ヶ所の操作ピン7は円弧状に形成されている角部11bの中心と同一心に配置されている。
【0026】
従って、上記実施形態の掛留具1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、容器としてのエアクリーナケースのカバー体9に一体的に形成した軸体6に掛留部2を回転自在に外嵌して、その掛留部2とエアクリーナケースの本体8の被掛留部3とに環状体4を巻き掛けた。そして、軸体6を中心に掛留部2を回転させることにより、環状体4の張り具合を、弛緩状態と緊張状態との間で変更できるようにした。従って、3本の操作ピン7を操作して掛留部2を回転できる余地があればよいので、エンジンルームのように余分な空間のない所に配置されていても、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0027】
(2)上記実施形態では、掛留部2の外周面を、基本形状を三角形として形成した。そのため、掛留部2を60度回転させることにより、掛留部2に巻き掛けられた環状体4をその弛緩状態と緊張状態との間で変化させることができる。
【0028】
(3)上記実施形態では、掛留部2の辺部2aを外側に凸の円弧状面とし、掛留部2の外周面の形状をいわゆるルーローの三角形とした。そのため、掛留部2を均等な力で回転させることができるようになり、掛留部2に巻き掛けられた環状体4をその弛緩状態から緊張状態へと変更させる操作力が小さく、且つ操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0029】
(4)上記実施形態では、掛留部11の辺部11aを、基本形状を三角形として外側に凹の湾曲面に形成した。そして、3ヶ所の辺部11aの間のそれぞれの角部11bを、円弧状の曲面とした。そのため、環状体4と掛留部11との接触面積が小さいために、環状体4が巻き掛けられた掛留部11を回転させる時、摩擦による回転抵抗が小さいので、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0030】
(5)上記実施形態では、掛留部2を回転させるための操作ピン7を3本立設した。そのため、3本の指先で3本の操作ピン7を操作することも可能であり、3本のうちの2本の間に工具を差し込んで操作することも可能である。従って、狭い操作スペースに置かれた場合であっても、操作性に優れた容器の掛留具1を提供することができる。
【0031】
(6)上記実施形態では、被掛留部3が環状体4により掛留部2の側へ引き付けられるとき、被掛留部3の対向面3aは被掛留受部5の対向面5aに密着状態となる。そのため、本体8とカバー体9とを締結できるだけでなく、本体8とカバー体9との相互のずれ(図1の上下方向のずれ)を防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第2の実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図6及び図7を用いて説明する。
【0033】
図6及び図7に示すように、本実施形態においては、外周面がいわゆるルーローの三角形状に形成された1個の掛留部2に対し、2個の被掛留部3が対応するように配置されて一対の掛留具1を形成している。それぞれの被掛留部3は、掛留部2が軸支される軸体6に対して互いに120度の角度を成すように配置されている。このように配置された1個の掛留部2及び2個の被掛留部3に、2個の環状体4が、図6、7の紙面に垂直方向において、互いに干渉しないように巻き掛けられている。従って、掛留部2を回転させれば、2個の被掛留部3との間に巻き掛けられた2個の環状体4の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で同時に変更できる。また、2個の被掛留部3を結ぶ方向(図7の左右方向)に対して掛留部2を位置決めできる。
【0034】
図6に示す一対の掛留具1は、2個の環状体4が弛緩状態にあるときの配置であり、本体8を閉じているカバー体9を開けることが可能であると共に、カバー体9を周方向(図の左右方向)に移動することが可能な状態である。
【0035】
図7に示す一対の掛留具1は、2個の環状体4が緊張状態にあるときの配置であり、本体8に対してカバー体9が締結されると共に、カバー体9が周方向(図7の左右方向)に移動しないように位置決めされている。
【0036】
そして、この第2実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)上記実施形態では、1個の掛留部2に対して2個の被掛留部3を、それぞれの被掛留部3が軸体6に対して互いに120度の角度を成すように配置し、それぞれに環状体4を巻き掛け、互いに干渉しないように配置した。従って、1個の掛留部2を回転させれば、2個の被掛留部3との間に巻き掛けられたそれぞれの環状体4の張り具合を緊張状態と弛緩状態との間で同時に変更することができる。また、2個の被掛留部3を結ぶ方向(図7の左右方向)に対して掛留部2を位置決めできるので、容器本体に対してカバー体が周方向にずれることを防止することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第3の実施形態の掛留部12を、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に図8を用いて説明する。
【0038】
図8(a)、(b)に示すように、掛留部12の外周面は一対の半円状の辺部12aと、その間を連結する2ヶ所の平面状の辺部12bとにより形成されている。そのため、掛留部12を、その重心に穿設されている軸受孔2cを中心に180度回転させた時、掛留部12は同一姿勢を示す。また、半円状の辺部12aの中心よりも外方の2ヶ所に操作ピン7が立設され、操作ピン7、軸受孔2c及び操作ピン7がこの順に直線状に配置されている。従って、掛留部12を90度回転させることにより、図8(a)で示す弛緩状態と図8(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。
【0039】
本実施形態の掛留部12の形状は、半円状の辺部12aと平面状の辺部12bとから形成されるものに限らず、軸受孔2cを中心に180度回転させた時に同一姿勢を示すものであればよい。ただし、円形(真円)を除く。
【0040】
(8)上記実施形態では、掛留部12を、その重心に穿設されている軸受孔2cを中心に180度回転させた時、掛留部12が同一姿勢を示すようにした。従って、掛留部12を90度回転させることにより、弛緩状態と緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。そのため、公知のスイッチ類と同様に掛留部12を90度回転させれば、環状体4の張り具合を変更できるので、操作性に優れた容器の掛留具1を提供できる。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した掛留具1の第4の実施形態の掛留部13を、第1、第2及び第3の実施形態と異なる部分を中心に図9を用いて説明する。
【0042】
図9(a)、(b)に示すように、掛留部13の外周面は一つの円により形成されているが、軸受孔2cは掛留部13の重心とは異なる位置に穿設されている。そのため、軸受孔2cと外周面との距離において、最も長い部分と最も短い部分とは軸受孔2cに対して互いに反対側に位置する。従って、掛留部13を180度回転させることにより、図9(a)で示す弛緩状態と図9(b)で示す緊張状態との間で、環状体4の張り具合を変更することができる。掛留部13を回転させるための操作ピン7は、3本が互いに等間隔且つ重心から等距離に立設されている。また、3本のうちの2本の操作ピン7の間に軸受孔2cが配置されている。
【0043】
本実施形態の掛留部13の形状は、外周面が円形であるものに限らず、掛留部13の重心と異なる位置に軸受孔2cが穿設されたものであれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0044】
(9)上記実施形態では、掛留部13の外周面を円形とし、重心とは異なる位置に軸受孔2cを穿設した。そのため、掛留部13を回転させるとき、その外周面に対する環状体4の巻き掛け状態は徐々に変化するので、その変化に対応して操作力も徐々に変化させることになる。従って、操作性に優れた容器の掛留具1を提供できる。
【0045】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・操作部として2本又は3本の操作ピン7を設けたが、操作ピン7の数は1本でも4本以上であってもよい。
・操作部として操作ピン7を設ける替わりに、掛留部2、10〜13の表面に穴を形成し、その穴に工具を挿して掛留部2、10〜13を回転するようにしてもよい。
・掛留部2の辺部2aに環状体4の一部を接着剤で結合するようにしたが、接着剤を用いずに辺部2a又は環状体4の一部を加熱して熱溶着してもよい。また、コ字状の留めピンを用いる等の機械的方法で環状体4の一部を辺部2aに結合してもよい。また、掛留部10〜13と環状体4との関係においても同様である。
・軸体6の先端にクリップ6aを装着して掛留部2、10〜13の脱落を防止するようにしたが、軸体6の先端部を溶融して傘状に広がるようにする熱かしめとしてもよい。
・被掛留部3が当接する被掛留受部5をカバー体9に設けたが、必ずしも設けなくてもよい。
・前記第1、2実施形態において、軸受孔2cの位置を偏心位置に設けてもよい。
・掛留部の形状を前記各実施形態とは異なる形状、例えば楕円形状、涙滴形状、三角形以外の偏心多角形状、あるいは図10及び図11に示す異形状等、各種の形状に変更してもよい。
【0046】
(他の技術的思想)
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について、その効果と共に以下に記載する。
○前記環状体は、その一部が前記掛留部に結合されていることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。このように構成した場合、前記環状体の前記掛留部からの脱落が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の掛留具の第1実施形態を模式的に示す平面図。
【図2】図1におけるAA矢視の断面図。
【図3】第1実施形態の掛留部において環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図4】本発明の掛留具の第1実施形態における掛留部の変形例を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図5】本発明の掛留具の第1実施形態における掛留部の他の変形例を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図6】本発明の掛留具の第2実施形態において環状体が弛緩状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図7】本発明の掛留具の第2実施形態において環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図8】本発明の掛留具の第3実施形態における掛留部を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図9】本発明の掛留具の第4実施形態における掛留部を示し、(a)は環状体が弛緩状態にあり、(b)は環状体が緊張状態にあるときを模式的に示す平面図。
【図10】本発明の掛留具の変更例を模式的に示す平面図。
【図11】本発明の掛留具の他の変更例を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0048】
1…掛留具、2,10,11,12,13…掛留部、3…被掛留部、4…環状体、5…被掛留受部、6…軸体、8…本体、9…カバー体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、前記容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に軸支された板状の掛留部を設け、その掛留部を設けない他方に被掛留部を設け、前記掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように前記外周面を形成すると共に、前記掛留部を回転させることにより、前記掛留部及び被掛留部に巻き掛けられた環状体が弛緩状態と緊張状態との間で変化することを特徴とする容器の掛留具。
【請求項2】
前記掛留部は、前記軸体を中心に120度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の掛留具。
【請求項3】
前記掛留部に対して2個の被掛留部が相互に120度の角度を成すように配置され、前記掛留部とそれぞれの前記被掛留部に前記環状体が巻き掛けられていることを特徴とする請求項2に記載の容器の掛留具。
【請求項4】
前記掛留部は、前記軸体を中心に180度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の掛留具。
【請求項5】
前記環状体は、金属又は合成樹脂を材質として、線状体又は帯状体が無端状に繋がれて形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【請求項6】
前記掛留部の表面側には、その掛留部を回転させるための操作部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【請求項7】
前記容器の本体又はカバー体には、前記被掛留部に対向して配置された被掛留受部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【請求項1】
容器の本体とカバー体とを掛留する掛留具において、前記容器の本体又はカバー体のいずれか一方に形成された軸体に回転自在に軸支された板状の掛留部を設け、その掛留部を設けない他方に被掛留部を設け、前記掛留部の回転中心と外周面との距離が、その外周面の一部とその他の部分との間で異なるように前記外周面を形成すると共に、前記掛留部を回転させることにより、前記掛留部及び被掛留部に巻き掛けられた環状体が弛緩状態と緊張状態との間で変化することを特徴とする容器の掛留具。
【請求項2】
前記掛留部は、前記軸体を中心に120度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の掛留具。
【請求項3】
前記掛留部に対して2個の被掛留部が相互に120度の角度を成すように配置され、前記掛留部とそれぞれの前記被掛留部に前記環状体が巻き掛けられていることを特徴とする請求項2に記載の容器の掛留具。
【請求項4】
前記掛留部は、前記軸体を中心に180度回転したときの姿勢が同一であるように前記外周面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の掛留具。
【請求項5】
前記環状体は、金属又は合成樹脂を材質として、線状体又は帯状体が無端状に繋がれて形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【請求項6】
前記掛留部の表面側には、その掛留部を回転させるための操作部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【請求項7】
前記容器の本体又はカバー体には、前記被掛留部に対向して配置された被掛留受部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の容器の掛留具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−14227(P2010−14227A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175860(P2008−175860)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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