説明

容器の詰め物

【課題】 把持部を押し込んだ際に環状巻回部の最外層のみが膨らむことを防止することにより、緩衝機能の確保と錠剤等の不慮の散乱を防止する。
【解決手段】 伸縮性を有する筒状のネット2の軸方向一端側を径方向外側へ捲り上げつつネット2の軸方向他端に至るまで多重に巻回してなる環状巻回部3と、ネット2の軸方向他端に設けられた硬質の把持部4とを備える詰め物1において、把持部4が環状巻回部3の中心穴5に押し込まれる際に把持部4によって環状巻回部3が内側から押し広げられ、これにより環状巻回部3を構成する各層が一体として捲り上げられるように、把持部4の軸長を必要かつ十分な長さにするとともに、把持部4の最大幅Wを環状巻回部3の中心穴5の径Rよりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセル剤などの固形物を多数収容したガラス瓶又はプラスチック製瓶等の包装用容器の上部に生じる空間を充填して、これにより緩衝材として機能させるための容器の詰め物に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来の詰め物として、本願出願人らは特許文献1に記載のものを既に開示している。
【特許文献1】特開2003−40335号公報
【0003】
この従来の詰め物は、図5及び図6にも示すように、一端が開放されて他端が固結部21にされ、且つ筒状に形成された弾性を有するネット材22を、その開放端を外側へ捲り上げて環状巻き込み部23に形成し、該環状巻き込み部23を上記固結部21まで順次巻き込んでいって塊状体としたものである。この従来の詰め物の固結部は、ネットの他端部を平坦な円板状に溶着してなるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の詰め物は、容器の上部空間に入れる前は固結部21は環状巻回部23よりも上方に突出した位置にあり、この固結部21を摘んで容器内への押し込みを容易に行えるものである。しかし、容器にキャップを装着すると、図7に示すように該キャップによって固結部21が下方に押し込まれ、これに伴い最外層24のネットのみが膨らんで巻回が緩んだ状態となることがあった。このように最外層24のみが膨らんだ状態となると、容器内容物の緩衝機能が大きく低下するとともに、膨らんだ最外層24のネットの中心部に錠剤が入り込み、詰め物を取り出した際に錠剤が不慮に取り出されて床に散乱させてしまうことがあった。また、固結部21が下方に押し込まれることに伴い、最外層24のみが下方だけでなく上方にも膨らんだ場合、キャップの装着中に容器口部とキャップとの間で、膨らんだネットが噛み込むことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、環状巻回部の最外層のみが膨らむことを防止し得る詰め物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0007】
即ち、本発明の容器の詰め物は、伸縮性を有する筒状のネットの軸方向一端側を径方向外側へ捲り上げつつネットの軸方向他端に至るまで多重に巻回してなる環状巻回部と、ネットの軸方向他端に設けられた硬質の把持部とを備え、把持部の最大幅は前記環状巻回部の中心穴の径よりも大きいことを特徴とするものである。かかる本発明によれば、硬質の把持部に所要の幅と軸方向長さとを持たせたことによって、把持部が環状巻回部の中心に押し込まれる際に、把持部によって環状巻回部全体が内側から押し広げられ、これにより環状巻回部を構成する各層間の摩擦抵抗力を増し、環状巻回部全体が把持部の押し込みとともに変形して、環状巻回部がより緊密に巻回されるようになる。いわば把持部がクサビのように機能し、環状巻回部の最外層のみが膨らむことを防止する。
【0008】
本発明の詰め物において、上記把持部は、ネットの軸方向他端部の軸方向所定長さの領域を束ねて所定形状に溶着することにより形成されたものであってもよく、溶着に代えて若しくは溶着とともに接着剤を用いて接着したものであってもよく、また、ネットとは別に形成された部材をネットの軸方向他端部に取り付けたものであってもよい。把持部の硬度は、環状巻回部の弾力に抗して該環状巻回部を変形させるに足る程度であれば良い。さらに、このネットとは別に形成された部材に、吸湿機能を付与した樹脂(例えば、商標名「ドライキープ」)を用いれば、容器内の湿度を有用にコントロールすることができる。
【0009】
また、前記把持部は、断面非円形であることが好ましく、例えば、所定の幅と軸方向長さとを有する平板状、断面十字形、断面V字形、断面W字形、断面コ字形などとすることができる。これによれば、把持部が環状巻回部の中心に押し込まれた際に、環状巻回部が周方向複数箇所で歪に変形することにより、各層間の一体性が一層向上され、最外層のみが膨らむことをより確実に防止し得る。さらに、把持部の上端面がキャップの天面に面接触乃至複数点(好ましくは3点以上)で点接触するため、キャップ天面によって把持部が押し込まれる際に把持部が倒れにくくなる。
【0010】
また、前記把持部の軸長は、前記環状巻回部の軸長よりも小さくすることができる。これによれば、把持部と環状巻回部の上端が揃うまで把持部を環状巻回部の中心穴に押し込むと、環状巻回部の下端近傍の下部穴がより一層窄むようになり、該下部穴へ錠剤等が入り込むことを一層防止できる。また、把持部の軸長は環状巻回部の軸長の1/5よりも大きくするのが好ましく、より好ましくは1/4よりも大きくすることができ、さらに好ましくは1/3よりも大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、把持部が環状巻回部の中心に押し込まれても、最外層のみが膨らむことを防止することができ、その結果、緩衝機能の確保を図ることができるとともに、容器内部の錠剤等を不慮に落としてしまうことを防止できる。またクサビ効果によりさらに環状巻回部を内側に巻き込むため、最外層の膨らみやゆるみを取って、さらに締め込む効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る容器の詰め物1を示し、該詰め物1は、錠剤やカプセル剤などの固形内容物を多数収容した容器の上部空間に充填されて、多数の内容物の緩衝材として機能するものであり、その基本構成は特開2003−40335号公報に開示したものと同様である。
【0014】
本実施形態に係る詰め物1は、伸縮性並びに弾性を有する筒状のプラスチック製ネット2の軸方向一端側を径方向外側へ捲り上げつつネット2の軸方向他端に至るまで多重に巻回してなる環状巻回部3と、ネット2の軸方向他端に設けられた硬質の把持部4とを備えている。容器の上部空間に詰め込む前は、図3に示すように把持部4は環状巻回部3よりも上方に突出した位置にあり、容器内へ詰めた後に容器にキャップをすると、図1に示すようにキャップの天板によって把持部4の上端部が環状巻回部3の上端に揃うまで把持部4が環状巻回部3の中心穴5に押し込まれるようになっている。
【0015】
把持部4は、筒状ネット2の軸方向他端部(図において上端部)の軸方向所定長さの領域を所定形状並びに大きさに束ねて溶着することにより形成されており、本実施形態においては平板状に構成されている。この把持部4の軸長は、把持部4を中心穴5に押し込んでいないときの環状巻回部3の軸長の約半分程度とされ、把持部4の最大幅Wは環状巻回部3の中心穴5の径Rの1.5〜3倍とされている。なお、把持部4の軸長とは、本願発明の作用を奏するに足る硬度並びに幅を有する部分の軸長であり、また、環状巻回部3の軸長とは、環状巻回部の高さ寸法である。
【0016】
本実施形態に係る詰め物1によれば、図1に示すように、容器のキャップの天板によって把持部4が環状巻回部3の中心穴5に押し込まれる際に、把持部4の板面方向の2カ所で環状巻回部3が内側から押し広げられ、これにより環状巻回部3を構成する各層が一体として捲り上げられるようになり、最外層のみが膨らむことが防止される。さらに、把持部4は環状巻回部3の軸方向中途部までしか存在しないため、環状巻回部の下端部近傍においては環状巻回部3の各層が径方向内側に膨出するようになって、その下部穴6が一層窄むようになり、錠剤等が下部穴6に入り込むことを効果的に防止できる。
【0017】
なお、筒状ネット2の材質は、一般に用いられるプラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、エチレンビニルアセテート、或いはナイロン等が適用できるが、それらの発泡体であっても同様に利用することができる。ネットの線径や小型包装容器内で固形剤の詰め物に適用することから、直径5mm以下にすることが望ましい。また、ネットの編目の大きさは、使用時には包装容器内で圧縮されるので固形剤が編目から抜け出ることはないが、一辺が20mm以下のものを使用するのが実用的である。また、編目の形状は菱形に限らず、正方形、矩形、三角形、六角形或いは円形などに形成されていてもかまわない。
【0018】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、前記把持部は、図4に示すような断面非円形の各種構造とすることができる。これらの変形実施例に係る把持部によれば、把持部の上端面がキャップ天面に面接触するため、キャップによって把持部を押し込む際に把持部が倒れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る詰め物の使用状態の縦断面図である。
【図2】同詰め物の平面図である。
【図3】同詰め物の縦断面図である。
【図4】同詰め物の把持部の各種変形実施例(a)〜(f)を示し、上段は平面図、下段は正面図である。
【図5】従来の詰め物の平面図である。
【図6】従来の詰め物の縦断面図である。
【図7】従来の詰め物の使用状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 詰め物
2 筒状ネット
3 環状巻回部
4 把持部
5 中心穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する筒状のネット(2)の軸方向一端側を径方向外側へ捲り上げつつネット(2)の軸方向他端に至るまで多重に巻回してなる環状巻回部(3)と、ネット(2)の軸方向他端に設けられた硬質の把持部(4)とを備え、把持部(4)の最大幅は前記環状巻回部(3)の中心穴(5)の径よりも大きいことを特徴とする容器の詰め物。
【請求項2】
前記把持部(4)は、前記ネット(2)の軸方向他端部の軸方向所定長さの領域を束ねて溶着することによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の詰め物。
【請求項3】
前記把持部(4)は、軸方向から見て断面非円形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器の詰め物。
【請求項4】
前記把持部(4)の最大幅が前記環状巻回部(3)の中心穴(5)の径の1.5〜3倍であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の容器の詰め物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−197026(P2007−197026A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15326(P2006−15326)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】