説明

容器ラベル用接着剤、及び容器

【課題】離型紙を必要とせず、通常状態においてはラベルが剥離することのない接着性を有し、且つ容器からラベルを剥がす際に容易に剥がすことのできる易剥離性を有する容器ラベル用接着剤を提供すること。
【解決手段】デンプン系接着剤と、単体で2.45N以上の接着強度を有する非デンプン系接着剤とを含有しており、0.78Nより大きく、2.65N未満の接着強度を有する容器ラベル用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器ラベル用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
市販される飲食品や化粧品等の容器(例えば、ペットボトルやガラス瓶等)には、適当な容器ラベル用接着剤を介してラベルが貼付けられているものがある。そのような従来の容器ラベル用接着剤としては、例えば、水性のり剤(特許文献1参照)、感熱接着剤(特許文献2参照)、又は感圧接着剤(特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−197049号公報
【特許文献2】特開2000−284697号公報
【特許文献3】特開平5−46092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、環境問題や資源のリサイクル化などの面から、使用済みのペットボトルやガラス瓶等を回収して再利用する容器リサイクルの動きが活発化しており、回収した容器からラベルや接着剤を完全に剥がす必要がある。
しかしながら、従来の水性のり剤を介して貼付けられたラベルは、接着力が強過ぎて剥がし難く、水性のり剤やラベルの一部が容器表面に残存し得るという問題があった。
また、感熱接着剤を介して貼付けられたラベルも接着力が強く、ラベルを剥がす際に、加熱装置を必要とするため不便であった。
一方、感圧接着剤を介して貼付けられたラベルは、前記水性のり剤や感熱接着剤と比べると比較的剥がし易く、ラベルを剥がす際は便利である。しかし、ラベルに使用される感圧接着剤は、離型紙を必要とするため、ラベルを容器に貼付ける際に大量の離型紙ゴミが発生し、環境負荷の面からは好ましくない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、離型紙を必要とせず、通常状態においてはラベルが剥離することのない接着性を有し、且つ容器からラベルを剥がす際に容易に剥がすことのできる易剥離性を有する容器ラベル用接着剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
容器に接着されたラベルの易剥離性を実現するためには、容器やラベル、接着剤そのものの強度の他、特に容器と接着剤との間における接着強度と、接着剤とラベルとの間における接着強度とを検討する必要がある。この容器と接着剤との間における接着強度と、接着剤とラベルとの間における接着強度とは、容器と接着剤あるいは接着剤とラベルとの間における物理的相互作用(ファン・デル・ワールス力等の分子間力)、化学的相互作用(共有結合や水素結合などの結合力)や機械的結合(容器表面の穴や谷間に入り込んだ接着剤が固まった後、くさびとして機能する)等に左右されると考えられており、容器と接着剤との間における接着強度を、容器やラベル、接着剤そのものの強度や接着剤とラベルとの間における接着強度よりも弱めることが最低限必要である。
【0007】
また、ラベルを容器に接着するに至る工程で、容器の洗浄の他、ラベルが接着される容器の表面の乾燥状態に違いが生ずることもあり、容器とラベルとの接着性が変動することがある。このため、容器の表面に乾燥状態によらず安定した接着強度を達成することも必要である。
【0008】
本発明者は、容器と接着剤との間における接着強度を検討するに当り、特にその機械的結合に着目し、容器に対する接着性の高い接着剤に対して接着性の低い接着剤を混合することで、容器表面の穴や谷間に、接着性の高い接着剤が多量に入り込むことを阻害し、易剥離性に優れる接着剤を提供出来るのではないかと考えた。
【0009】
即ち、本発明の第1特徴構成は、デンプン系接着剤と、単体で2.45N以上の接着強度を有する非デンプン系接着剤とを含有する混合物で、その混合物の接着強度が、0.78Nより大きく、2.65N未満である容器ラベル用接着剤である点にある。
【0010】
また、本発明の第2特徴構成は、前記非デンプン系接着剤が、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤である点にある。
【0011】
また、本発明の第3特徴構成は、前記非デンプン系接着剤単体において、湿潤状態の容器に対する第1接着強度が、乾燥状態の容器に対する第2接着強度の1.06倍〜1.3倍である点にある。
【0012】
また、本発明の第4特徴構成は、前記第2接着強度が、2.45N〜2.75Nである点にある。
【0013】
また、本発明の第5特徴構成は、前記デンプン系接着剤が、その単体において0.58N以下の接着強度を有する点にある。
【0014】
また、本発明の第6特徴構成は、前記デンプン系接着剤100重量部に対して、前記非デンプン系接着剤を200重量部〜600重量部含む点にある。
【0015】
また、本発明の第7特徴構成は、前記混合物における、湿潤状態の容器に対する第3接着強度と、乾燥状態の容器に対する第4接着強度との差が0N〜0.19Nである点にある。
【0016】
また、本発明の第8特徴構成は、前記非デンプン系接着剤の粘度は、25℃において20,000〜60,000mPa・sであり、前記デンプン系接着剤の粘度は、25℃において70,000〜150,000mPa・sである点にある。
【0017】
また、本発明の第9特徴構成は、上述の第1〜8特徴構成のいずれかに記載される容器ラベル用接着剤を用いてラベルを貼った容器である点にある。
【0018】
また、本発明の第10特徴構成は、前記第9特徴構成に記載される容器が、パレット転写型ロータリーラベラーを用いてラベルを貼ったものである点にある。
【0019】
また、本発明の第11特徴構成は、前記前記第9特徴構成又は第10特徴構成に記載される容器がペットボトルである点にある。
【0020】
また、本発明の第12特徴構成は、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤と、デンプンのりとを含有する混合物である容器ラベル用接着剤である点にある。
【0021】
また、本発明の第13特徴構成は、前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤単体において、湿潤状態の容器に対する第1接着強度が、乾燥状態の容器に対する第2接着強度の1.06倍〜1.3倍である点にある。
【0022】
また、本発明の第14特徴構成は、前記第2接着強度が、2.45N〜2.75Nである点にある。
【0023】
また、本発明の第15特徴構成は、前記デンプンのりが、その単体において0.58N以下の接着強度を有する点にある。
【0024】
また、本発明の第16特徴構成は、前記デンプンのり100重量部に対して、前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤を200重量部〜600重量部含む点にある。
【0025】
また、本発明の第17特徴構成は、前記混合物における、湿潤状態の容器に対する第3接着強度と、乾燥状態の容器に対する第4接着強度との差が0N〜0.19Nである点にある。
【0026】
また、本発明の第18特徴構成は、前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤の粘度は、25℃において20,000〜60,000mPa・sであり、前記デンプンのりの粘度は、25℃において70,000〜150,000mPa・sである点にある。
【0027】
また、本発明の第19特徴構成は、上述の第12〜18特徴構成のいずれかに記載される容器ラベル用接着剤を用いてラベルを貼った容器である点にある。
【0028】
また、本発明の第20特徴構成は、前記第19特徴構成に記載される容器が、パレット転写型ロータリーラベラーを用いてラベルを貼ったものである点にある。
【0029】
また、本発明の第21特徴構成は、前記第19特徴構成又は第20特徴構成に記載される容器がペットボトルである点にある。
【0030】
また、本発明の第22特徴構成は、デンプンのり100重量部に対して、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤を200重量部〜600重量部の範囲内で増減させることを特徴とする容器ラベル用接着剤の接着強度の調整方法である点にある。
【0031】
また、本発明の第23特徴構成は、上記第22特徴構成に係る方法で調整された容器ラベル用接着剤である点にある。
【0032】
〔作用及び効果〕
本発明者は、易剥離性を有する接着剤を提供する目的で、PET容器に対する接着性の高い接着剤と、PET容器に対する接着性の低い接着剤との混合やその比率について鋭意研究を進めた結果、後述の実施例に示されるように、本発明の容器ラベル用接着剤は、非デンプン系接着剤にデンプン系接着剤を混合することによって、通常状態においてはラベルが剥離することのない接着性を有しており、尚且つ容器からラベルを剥がす際にラベルを容易に剥がすことができる易剥離性を有すると共に、容器の表面の乾燥状態によらず安定した接着強度を達成できることを明らかにした。
しかも、本発明の容器ラベル用接着剤は、離型紙を必要とせず、離型紙ゴミの発生を抑止できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施形態〕
本発明の容器ラベル用接着剤は、主剤となる後述のデンプン系接着剤及び非デンプン系接着剤を所定の割合で配合し、必要に応じて種々の添加剤を加え、公知の攪拌技術で混合して製造することができる。
また、本発明の容器ラベル用接着剤は、湿潤状態の容器に対する接着強度(第3接着強度)と、乾燥状態の容器に対する接着強度(第4接着強度)との差が0N〜0.19Nであるものが好ましい(湿潤状態の容器とは、容器表面に複数の水滴が付着して濡れている状態を意味し、乾燥状態の容器とは、容器表面に水滴が全く付着していない状態を意味する)。
尚、本明細書における接着強度とは、接着された2つの部材を引き剥がすために必要な応力を示し、例えば、後述する実施例2の接着強度試験によって測定された値を意味するものである。
【0034】
(デンプン系接着剤)
本発明におけるデンプン系接着剤とは、主成分となるデンプン(例えば、コーンスターチ、各種変性デンプン等)が、水性媒体(一般的な水、例えば、蒸留水、イオン交換水及び純水等をいうが、不可避的に混入し得る有機溶媒を含むものであっても良い)によって糊化したもので、代表的なものとしては、デンプンのりが挙げられる。
尚、本発明におけるデンプン系接着剤は、0.58N程度以下の接着強度を有するものが好ましい。また、本発明におけるデンプン系接着剤は、25℃において70,000〜150,000mPa・sの粘度を有するものが好ましく、より好ましくは、90,000〜130,000mPa・sの粘度を有するものであり、更により好ましくは、100,000〜120,000mPa・sの粘度を有するものである(尚、粘度は、粘度測定器(ビスコテスタVT-042(リオン株式会社製))を使用して測定されたものである
)。
また、本発明におけるデンプン系接着剤は、その100重量部中に、不揮発分が41重量部〜47重量部含まれるものが好ましい。
【0035】
(非デンプン系接着剤)
本発明における非デンプン系接着剤とは、主成分として、デンプン以外の高分子化合物(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂等)が、前記水性媒体中に、分散又は懸濁しているエマルジョン接着剤を意味しているが、前記高分子化合物の少なくとも一部が前記水性媒体に溶解している状態であっても良い。
本発明における非デンプン系接着剤は、公知の製造方法(例えば、適当な乳化分散剤(界面活性剤、保護コロイド等)を使用して行う乳化重合等)で製造することが可能である。
本発明における非デンプン系接着剤は、好ましくは、2.45N以上の接着強度を有するものであり、さらに好ましくは、2.45N以上の接着強度を有し、且つ非デンプン系接着剤単体において、湿潤状態の容器に対する接着強度(第1接着強度)が、乾燥状態の容器に対する接着強度(第2接着強度)の1.06倍〜1.3倍であるものであり、その第2接着強度が2.45N〜2.75Nであるものである。
また、本発明における非デンプン系接着剤は、25℃において、20,000〜60,000mPa・sの粘度を有するものが好ましく、より好ましくは30,000〜50,000mPa・sの粘度を有するものであり、さらにより好ましくは35,000〜45,000mPa・sの粘度を有するものである(尚、粘度は、粘度測定器(ビスコテスタVT-042(リオン株式会社製))を使用して測定されたものである)。
また、本発明における非デンプン系接着剤は、その100重量部中に、不揮発分が43.5重量部〜48.5重量部含まれるものが好ましい。
【0036】
(ビニル樹脂系エマルジョン接着剤)
本発明におけるビニル樹脂系エマルジョン接着剤とは、上記非デンプン系接着剤の一種であり、主成分としてビニル樹脂を含有するエマルジョン接着剤を示すものである。
尚、本発明におけるビニル樹脂とは、ビニル基を有するモノマー(塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン等)のホモ重合体、又は2種以上の前記モノマーの重合によって得られる共重合体、あるいはこれらの重合体を任意の割合で含む混合物を意味する。
本発明に適用可能なビニル樹脂系エマルジョン接着剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン(酢酸ビニルモノマーに10〜30%のエチレンモノマーを混和し高圧下で乳化重合させ、エマルジョン化した白濁水溶液)や、酢酸ビニル樹脂エマルジョン(酢酸ビニルモノマーを、ポバールなどを保護コロイドとして乳化重合させエマルジョン化した乳白色水溶液)等が挙げられる。
【0037】
(配合割合)
本発明の容器ラベル用接着剤に含まれるデンプン系接着剤と非デンプン系接着剤との配合割合は、デンプン系接着剤100重量部に対して、非デンプン系接着剤を200重量部〜600重量部となるように配合することが望ましい。尚、デンプン系接着剤100重量部に対して、非デンプン系接着剤を200重量部〜600重量部の範囲内で増減して配合することによって、本発明の容器ラベル用接着剤の接着強度を調整することも可能である。
【0038】
(その他の添加剤)
本発明の容器ラベル用接着剤には、必要に応じて、以下に記載されるような添加剤を加えることができる。使用可能な添加剤としては、例えば、水溶性の消泡剤、粘度調整剤、着色剤等が挙げられる。
【0039】
(ラベル)
本発明の容器ラベル用接着剤を適用可能なラベルとは、本発明の容器ラベル用接着剤を塗布し得、後述の容器に貼付けることができるものであれば、特に限定されるものではないが、その材質は、例えば、紙製、合成樹脂製、金属製又はこれらの積層体等である。
【0040】
(容器)
本発明の容器ラベル用接着剤を適用可能な容器としては、例えば、ガラス製、金属製、又は合成樹脂製(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)等)のビン又はボトル等が挙げられる。
【0041】
(自動ラベラー装置による貼付け)
本発明の容器ラベル用接着剤による容器へのラベル貼付けは、公知の自動ラベラー装置を用いて実施することも可能である。使用可能な自動ラベラー装置としては、バキュームドラム型ラベラーやパレット転写型ロータリーラベラー等が挙げられるが、好ましくは、パレット転写型ロータリーラベラーである。
【実施例】
【0042】
(実施例1)官能評価
ラベルは紙製であることが多く、そのためアート紙に対する後述の各種接着剤の接着性と易剥離性(剥がし易さ)とを試験者によって官能評価した。
ビニル樹脂系エマルジョン接着剤(以下、BEと略称する)と、デンプンのり(以下、DEと略称する)との配合割合がそれぞれ異なる7種類の接着剤(試料1〜7)を調製して、アート紙に対するその接着性と易剥離性(剥がし易さ)とを以下のようにして評価した。尚、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤(BE)として、トキワノールEXP−2(常磐化学工業社製)を使用し、また、デンプンのり(DE)として、トキワノール770S(常磐化学工業社製)を使用した。
〔易剥離性の官能評価方法〕
(操作1)アート紙に接着剤を塗布する(接着剤の塗布量は、アート紙1枚当り0.3g〜0.7g)。
(操作2)アート紙に糊板を押し付け、接着剤を転移させる。
(操作3)糊板をアート紙製のラベルに押し付け、接着剤をラベルに転移させる。
(操作4)1秒後に、乾燥させたポリエチレンテレフタレート(PET)製の板材(以下、PET板材と称する)をラベルに押付け10kgの重りをのせ、その上に人(70kg〜75kg)が5秒程度乗り、その後22日間放置する。
(操作5)ラベルの右端から、2cm/s程度の速度で手でゆっくりとラベル全体を剥離する。
【0043】
〔接着性の官能評価方法〕
(操作1)アート紙に接着剤を塗布する(接着剤の塗布量は、アート紙1枚当り0.3g〜0.7g)。
(操作2)アート紙に糊板を押し付け、接着剤を転移させる。
(操作3)糊板をアート紙製のラベルに押し付け、接着剤をラベルに転移させる。
(操作4)1秒後に、2.7L用のPETボトル(2.7Lの水を充填したもの)の胴部表面(胴部表面は乾燥状態)にラベルを貼り付け、その後22日間放置する。
(操作5)ラベルを貼り付けた上記PETボトルを、その底面と床との距離が50cmとなる高さから床に落とし(PETボトルの底面を床と平行にして落とす)、ラベル剥離の有無を観察する。
【0044】
官能評価の結果を以下の表1に示す。尚、官能評価については、易剥離性においては3段階の評価基準を設け(○:アート紙の基材破壊がなく、ラベル全体が剥離できる。△:アート紙の基材破壊はほとんどなく、PET板材に残存しているラベルが全体の5%以下。×:アート紙の基材破壊が起こり、5%以上ラベルが残存する。)、接着性においては2段階の評価基準(○:ラベル剥離がみられない。×:ラベル剥離がおこる。)を設けて評価した。その結果、試料3〜5において、易剥離性と接着性について良好な結果が得られた。
【0045】
【表1】

【0046】
(実施例2)接着強度試験
試験する接着剤として、上記実施例1の試料1〜7を使用して、それらの接着強度試験を以下のように実施した。但し、上記実施例1で使用したアート紙は破れ易く、正しい接着強度を測定することが困難であるため、その代替として不織布を用いて接着強度試験を実施した。
〔接着強度試験〕
(操作1)不織布に接着剤を塗布する(接着剤の塗布量は、不織布1枚当り0.48g〜0.71g)。
(操作2)不職布に糊板を押し付け、接着剤を転移させる。
(操作3)糊板を不職布製のラベルに押し付け、接着剤をラベルに転移させる。
(操作4)1秒後に、乾燥させたポリエチレンテレフタレート(PET)製の板材(以下、PET板材と称する)をラベルに押付け10kgの重りをのせ、その上に人(70kg〜75kg)が5秒程度乗り、その後22日間放置する。
(操作5)引っ張り試験機でラベルを剥がし(20mm幅)、荷重を測定し、これを接着強度とする。
尚、上記接着強度試験を、1種の接着剤(1試料)につき3回実施し(PET板材を3枚使用した)、結果を以下の表2に示した。
表2に示されるように、試料2における接着強度は0.78Nであり、試料6における接着強度の最小値が2.65Nであることから、上記実施例1(表1)に示される結果を合わせて考慮すると、0.78Nより大きく、2.65N未満の接着強度を有する接着剤が好ましいと判断された。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例3)表面の乾燥状態が異なる容器における接着強度の比較試験
ラベル(不職布製)を貼付するPET板材として、表面の乾燥状態が異なるものを使用して、接着強度の比較試験を実施した。
試験する接着剤として、上記実施例1の試料1、試料3、試料7を使用し、比較例として、従来の感圧接着剤(アクリル系エマルジョン:アートタック紙(大王製紙社製))を使用した。
また、ラベルを貼付するPET板材として、表面の乾燥状態が異なる以下の3種類のPET板材を用意した。
・乾燥PET板材(PET板剤の表面を完全に乾燥させたもの)
・湿潤PET板材1(ラベルの貼付け前に、約50cm程度の距離から水をその表面に1回噴霧したもの)
・湿潤PET板材2(ラベルの貼付け前に、約20cm程度の距離から水をその表面に1回噴霧したもの)
〔接着強度試験〕
試料1、3、7については、上記乾燥PET板材及び湿潤PET板材1を使用して、上記実施例2(操作1〜5)と同様にして接着強度試験(但し、操作(4)における放置期間は14日間)を実施し、その測定荷重を接着強度とした。
各試料(試料1、3、7)について、湿潤PET板材1に対する接着強度(第3接着強度)と、乾燥PET板材に対する接着強度(第4接着強度)をそれぞれ3回ずつ測定して(湿潤PET板材1及び乾燥PET板材をそれぞれ3枚ずつ使用した)、その平均値の差を算出した。
また、比較例については、アートタック紙を圧着ローラ(約49N/cm2)で上記3種類のPET板材(乾燥PET板材、湿潤PET板材1,2)に貼付け、所定期間(3日間及び7日間)放置した後、引っ張り試験機でアートタック紙を剥がして(18mm幅)その荷重を測定し、接着強度とした。また、測定された湿潤PET板材1,2に対する接着強度と、乾燥PET板材に対する接着強度との差を算出した。
結果を以下の表3に示す。表3に示されるように、試料3における接着強度の差は、他の試料(試料1及び7、比較例)と比べて小さいものであった。即ち、試料3の接着剤は、PET板材表面の乾燥状態によらず、安定した接着強度が得られることが判明し、上記実施例1において良好な官能評価が得られた他の試料4及び5についても同様に安定した接着強度が得られるものと推察された。
尚、試料7(ビニル樹脂系エマルジョン接着剤(BE)のみからなる接着剤)においては、湿潤PET板材1に対する接着強度(第1接着強度)が、乾燥PET板材に対する接着強度(第2接着強度)の1.06倍〜1.3倍であり、第2接着強度は2.45N〜2.75Nであった。
【0049】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン系接着剤と、単体で2.45N以上の接着強度を有する非デンプン系接着剤とを含有する混合物で、その混合物の接着強度が、0.78Nより大きく、2.65N未満である容器ラベル用接着剤。
【請求項2】
前記非デンプン系接着剤が、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤である請求項1に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項3】
前記非デンプン系接着剤単体において、湿潤状態の容器に対する第1接着強度が、乾燥状態の容器に対する第2接着強度の1.06倍〜1.3倍である請求項1又は2に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項4】
前記第2接着強度が、2.45N〜2.75Nである請求項3に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項5】
前記デンプン系接着剤が、その単体において0.58N以下の接着強度を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項6】
前記デンプン系接着剤100重量部に対して、前記非デンプン系接着剤を200重量部〜600重量部含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項7】
前記混合物における、湿潤状態の容器に対する第3接着強度と、乾燥状態の容器に対する第4接着強度との差が0N〜0.19Nである請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項8】
前記非デンプン系接着剤の粘度は、25℃において20,000〜60,000mPa・sであり、前記デンプン系接着剤の粘度は、25℃において70,000〜150,000mPa・sである請求項1〜7のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤を用いてラベルを貼った容器。
【請求項10】
パレット転写型ロータリーラベラーを用いてラベルを貼った請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記容器がペットボトルである請求項9又は10に記載の容器。
【請求項12】
ビニル樹脂系エマルジョン接着剤と、デンプンのりとを含有する混合物である容器ラベル用接着剤。
【請求項13】
前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤単体において、湿潤状態の容器に対する第1接着強度が、乾燥状態の容器に対する第2接着強度の1.06倍〜1.3倍である請求項12に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項14】
前記第2接着強度が、2.45N〜2.75Nである請求項13に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項15】
前記デンプンのりが、その単体において0.58N以下の接着強度を有する請求項12〜14のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項16】
前記デンプンのり100重量部に対して、前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤を200重量部〜600重量部含む請求項12〜15のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項17】
前記混合物における、湿潤状態の容器に対する第3接着強度と、乾燥状態の容器に対する第4接着強度との差が0N〜0.19Nである請求項12〜16のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項18】
前記ビニル樹脂系エマルジョン接着剤の粘度は、25℃において20,000〜60,000mPa・sであり、前記デンプンのりの粘度は、25℃において70,000〜150,000mPa・sである請求項12〜17のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか1項に記載の容器ラベル用接着剤を用いてラベルを貼った容器。
【請求項20】
パレット転写型ロータリーラベラーを用いてラベルを貼った請求項19に記載の容器。
【請求項21】
前記容器がペットボトルである請求項19又は20に記載の容器。
【請求項22】
デンプンのり100重量部に対して、ビニル樹脂系エマルジョン接着剤を200重量部〜600重量部の範囲内で増減させることを特徴とする容器ラベル用接着剤の接着強度の調整方法。
【請求項23】
請求項22に係る方法で調整された容器ラベル用接着剤。

【公開番号】特開2012−107254(P2012−107254A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34269(P2012−34269)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−262656(P2006−262656)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】