説明

容器体

【課題】 搭載される圧電振動素子の破損を防ぎ、また、圧電振動素子に設けられる金属材料の剥がれを防ぐ。
【解決手段】 圧電片に励振電極を設けた圧電振動素子を搭載する容器体において、前記容器体は、前記圧電振動素子を搭載する位置より低い位置が底面となる凹部を有し、この凹部に前記圧電振動素子と接触しない高さの衝撃吸収部が設けられ、前記衝撃吸収部は、前記圧電振動素子の自由端となる位置から固定端側に寄った位置に設けられており、前記圧電振動素子の自由端が前記凹部を構成する面に接触しない位置に前記衝撃吸収部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる圧電振動子や圧電発振器に用いられる容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器に用いられ圧電振動子や圧電発振器は、容器体内部に圧電振動素子を方持ちの状態で搭載して蓋体で気密封止した構造となっている。
ここで、圧電発振器は、圧電振動素子を容器体に気密封止した状態でさらに発振回路を備えた集積回路素子を搭載した構造となっている。
以後、圧電振動子について説明する。
このような圧電振動子は、例えば、凹部を有する容器体と、これに片持ちの状態で搭載される圧電振動素子と凹部を気密封止する蓋体とから構成されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−113378号公報(図4)
【特許文献2】特開2008−092112号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような構造の圧電振動子を落下させた場合、落下による衝撃が内部の圧電振動素子に伝わっている。
圧電振動素子は、長手方向の一方の端部を容器体に固定し、他方の端部を自由端としたいわゆる方持ちの状態で容器体に搭載されている。そのため、励振電極により所定のモードで振動することが可能である。しかし、圧電振動子が落下すると、その落下による慣性力や落下時の衝撃振動が圧電振動素子の自由端を振れさせてしまう。
ここで、圧電振動素子の形状が音叉形状の場合、振れるのは自由端となる振動腕部である。そのために、振動腕部の断面が平板状の断面よりも小さいために、落下時の振れる量が大きくなる傾向があった。
これにより、振動腕部が容器体と接触してしまうという問題があった。
さらに容器体が圧電振動素子よりも硬い材質で構成されている場合、圧電振動素子の自由端部が折れる場合があった。
また、自由端部の先端に金属材料を設けている場合、この落下による衝撃で自由端が容器体と接触して金属材料が剥がれるという問題もあった。
この金属材料が剥がれると、振動バランスが崩れたり、周波数が変わるといった問題もあった。
【0004】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、搭載される圧電振動素子の破損を防ぎ、また、圧電振動素子に設けられる金属材料の剥がれを防ぐ容器体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、圧電片に励振電極を設けた圧電振動素子を搭載する容器体において、前記容器体は、前記圧電振動素子を搭載する位置より低い位置が底面となる凹部を有し、この凹部に前記圧電振動素子と接触しない高さの衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記衝撃吸収部が、前記圧電振動素子の自由端となる位置から固定端側に寄った位置に設けられており、前記圧電振動素子の自由端が前記凹部を構成する面に接触しない位置に前記衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記衝撃吸収部がタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニクロム(Ni−Cr)、金(Au)のいずれかの材質からなる単一層構造又は、これらを下地層としてその表面に金(Au)を設けた二層構造又は、チタン(Ti)を下地層とし、この表面に金(Au)を設けた二層構造からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような容器体によれば、容器体に圧電振動素子を搭載する位置よりも低い位置に凹部が設けられており、この凹部内であって圧電振動素子と接触しない位置に衝撃吸収部を設けたので、落下による衝撃が生じても、圧電振動素子が容器体に接触せずに衝撃吸収部に接触するので圧電振動素子の折れや金属材料の剥がれを防ぐことができる。
【0009】
また、この衝撃吸収部が圧電振動素子の自由端となる位置から固定端側に寄った位置に設けられており、圧電振動素子の自由端が凹部を構成する面に接触しない位置に設けられているので、圧電振動素子を確実に容器体に接触させないようにすることができる。
【0010】
また、前記衝撃吸収部がタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニクロム(Ni−Cr)、金(Au)のいずれかの材質からなる単一層構造又は、これらを下地層としてその表面に金(Au)を設けた二層構造又は、チタン(Ti)を下地層とし、この表面に金(Au)を設けた二層構造からなることにより、圧電振動素子よりも柔らかい材質のため、圧電振動素子が衝撃吸収部に接触しても圧電振動素子が折れずに衝撃を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第一の実施形態)
図1(a)は、本発明の第一の実施形態に係る容器体を圧電振動子に用いた一例を示す模式図であり、(b)は圧電振動素子が衝撃吸収部に接触した状態の一例を示す模式図である。図2は本発明の第一の実施形態に係る容器体に設けた衝撃吸収部の位置を示す模式図である。図3は圧電振動素子の一例を示す斜視図である。図4は本発明の第一の実施形態に係る容器体の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る容器体10Aは、一方の主面側に第一凹部11が形成されており、その第一凹部11の中にさらに第二凹部12が形成された構造となっている。
以後、この容器体10Aが用いられる圧電振動子について説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、圧電振動子100は、容器体10Aと、圧電振動子30と、蓋体40とから主に構成されている。
図3に示すように、圧電振動素子30は、例えば、圧電材料に水晶を用いた圧電片31を音叉型に形成して用いられる。この音叉型の圧電振動素子は、固定端側を基部32とし、この基部32から平行に延出する2本一対の振動腕部33が形成された状態となっている。この振動腕部33に金属材料を設けて所定の電極膜34としている。この電極膜34のほかに、周波数を調整するための重り部35も形成されている。この重り部35や電極膜34は、自由端となる振動腕部33の先端にまで設けられている。
振動腕部33に設けられた電極膜34は、基部32の端部まで達するように形成され(図示せず)、容器体10Aから通電できるようになっている。
この圧電振動素子30は、導電性接着材Dにより容器体10Aに設けられた搭載パッドPに電気的、機械的に接合される(図1(a)参照)。
【0014】
図1(a)及び図4に示すように、容器体10Aは、平面視で矩形形状となっており、一方の主面に第一凹部11が形成されている。この第一凹部11の内部に第二凹部12が形成されている。
第二凹部12は、第一凹部11よりも小さく形成されている。したがって、第一凹部11の底面が長手方向の一方の端部側に形成されている。この底面に圧電振動素子30を搭載するための2つ一対の搭載パッドPが設けられている。つまり、第二凹部12は、圧電振動素子30を搭載する位置より低い位置が底面となっている。
また、容器体10Aの他方の主面には、図示しないマザーボードなどの配線基板に搭載するための外部端子Gが設けられている。
なお、この容器体10Aは、例えば、グリーンシート法によってセラミックスにより形成されている。
【0015】
この容器体10Aには、第二凹部12内に衝撃吸収部20が設けられている。
この衝撃吸収部20は、容器体10Aの搭載パッドPに後述する圧電振動素子30を搭載した場合に、その圧電振動素子30の自由端側であって、その先端よりも固定端側に寄った位置に設けられている。また、この衝撃吸収部20は、その高さが圧電振動素子30に接触しない程度の高さとなっている。
【0016】
衝撃吸収部20の位置は、以下のような関係を有している。
図2に示すように、圧電振動素子30の導電性接着材Dが付着しない位置から自由端の先端までの長さをa、第二凹部12から圧電振動素子30の自由端の先端までの高さをb、衝撃吸収部20の高さをc、圧電振動素子30の固定端側に近い第二凹部12の側面位置からの衝撃吸収部20の最も離れた面までの距離をxとした場合、以下の式(1)となるように設けるのが良い。
a−a×c/b<x< √(a−(b−c)) ・・・式(1)
ここで、xが(a−a×c/b)よりも小さいと、衝撃吸収部20を起点にして圧電振動素子30が撓み、自由端のさらに先端が容器体10に接触して、圧電振動素子30の振動腕部33が折れたり、金属材料が剥がれたりする恐れがある。
また、xが(√(a−(b−c)))よりも大きいと、圧電振動素子30の自由端のさらに先端が衝撃吸収部20に接触しない恐れがある。この場合、衝撃吸収部20が役割を果たさなくなる。
したがって、このように構成することにより、図1(b)に示すように、水晶振動素子30が固定端側を回転軸として自由端が振れたとしても、水晶振動素子の自由端の先端が衝撃吸収部20に接触して、容器体10への接触を防ぐことができる。
【0017】
また、衝撃吸収部20はタングステンから構成されている。
このタングステンは、圧電振動素子として水晶を用いた場合、水晶よりも柔らかい材質のため、水晶からなる圧電振動素子30が衝撃吸収部20にぶつかったとしても、圧電振動素子30が折れることはない。
なお、この衝撃吸収部20は、スクリーン印刷により、容易に第二凹部12内に形成することができる。
【0018】
また、衝撃吸収部20は、タングステン(W)のほかに、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニクロム(Ni−Cr)、金(Au)のいずれかの材質からなる単一層構造で形成しても良い。
また、衝撃吸収部20は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニクロム(Ni−Cr)、金(Au)のいずれかの材質を下地層としてその表面に金(Au)を設けた二層構造としても良い。
また、衝撃吸収部20は、チタン(Ti)を下地層とし、この表面に金(Au)を設けた二層構造としても良い。
この場合、従来周知の蒸着法やスパッタ法などを用いて衝撃吸収部20を形成しても良い。
【0019】
この衝撃吸収部20を音叉型となる圧電振動素子の自由端、つまり、振動腕部の先端側に位置するように、第二凹部12の底面に2つ一対で設けることにより、圧電振動素子30が音叉型であっても落下による衝撃で振動腕部が振れたとしても、衝撃を吸収することができる。
なお、この衝撃吸収部長さは、2つ一対で形成される振動腕部33、33の幅とこの2つの振動腕部の間の長さを足した長さとしても良い。つまり、容器体10Aに1つの衝撃吸収部が設けられて、2つの振動腕部33のそれぞれの衝撃を吸収することができるようになっていても良い。
【0020】
図1及び図2に示すように、蓋体40は、例えば、金属製の板状部材が用いられ、一方の主面に封止材Fを設けた構造となっている。この蓋体40は、例えば真空雰囲気中で、封止材Fが設けられた面を容器体10Aの第一凹部11側に向けて容器体10Aの一方の主面に載置し、封止材Fを溶融することにより容器体10Aに接合させる。これにより、蓋体40で容器体10Aの第一凹部11を気密封止することができる。なお、容器体10Aに予めメタライズ層Mを設けておくのが望ましい。
【0021】
このようにして、本発明の第一の実施形態に係る容器体10Aを構成したので、圧電振動素子30が容器体10Aに接触することがなくなり、搭載される圧電振動素子30の落下による破損を防ぎ、また、圧電振動素子30に設けられる金属材料の剥がれを防ぐことができる。
【0022】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態に係る容器体10Bについて説明する。
図5は本発明の第二の実施形態に係る容器体を圧電発振器に用いた一例を示す模式図である。
以後、圧電発振器について説明する。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図5に示すように、本発明の第二の実施形態に係る容器体10Bは、一方の主面に第一凹部11が設けられ、この第一凹部11の内部に第二凹部12が設けられ、他方の主面に第三凹部13が設けられた構造となっている点で第一の実施形態と異なる。
【0023】
このように構成される容器体10Bは、圧電発振器200として用いられる。
ここで、圧電発振器は、前記容器体10Bと、衝撃吸収部20と、圧電振動素子30と、蓋体40と、集積回路素子50とから主に構成されている。
【0024】
容器体10Bの第一凹部11の底面には圧電振動素子30を搭載するための搭載パッドPが設けられている。なお、衝撃吸収部20は、第一の実施形態と同様の位置に設けられている。この状態で蓋体40により第一凹部11を気密封止している。
この容器体10Bは、集積回路素子50を搭載するための複数の集積回路素子搭載パッドPICが設けられており、所定の集積回路素子搭載パッドPICが水晶振動素子30を搭載するための搭載パッドPと接続している。
【0025】
集積回路素子50は、少なくとも発振回路を備えて構成されており、水晶振動素子30を所定の周波数で発振できるようになっている。
この集積回路素子50は容器体10Bに設けられた第三凹部13に搭載される。
【0026】
これにより、本発明の第二の実施形態に係る容器体10Bを構成しても、圧電振動素子30が容器体10Bに接触することがなくなり、搭載される圧電振動素子30の落下による破損を防ぎ、また、圧電振動素子30に設けられる金属材料の剥がれを防ぐことができる。
【0027】
(第三の実施形態)
次に、本発明の第三の実施形態に係る容器体10Cについて説明する。
図6は本発明の第三の実施形態に係る容器体を圧電発振器に用いた他の例を示す模式図である。
図6に示すように、本発明の第三の実施形態に係る容器体10Cは、一方の主面に第一凹部11が設けられ、この第一凹部11の内部に第二凹部12が設けられ、同一主面に第三凹部14が設けられた構造となっている点で第一の実施形態と異なる。
【0028】
このように構成される容器体10Cは、圧電発振器300として用いられる。
ここで、圧電発振器300は、前記容器体10Cと、衝撃吸収部20と、圧電振動素子30と、蓋体40と、集積回路素子50とから主に構成されている。
【0029】
容器体10Cの第一凹部11の底面には圧電振動素子30を搭載するための搭載パッドPが設けられている。なお、衝撃吸収部20は、第一の実施形態と同様の位置に設けられている。この状態で蓋体40により第一凹部11を気密封止している。
この容器体10Cは、集積回路素子50を搭載するための複数の集積回路素子搭載パッドPICが設けられており、所定の集積回路素子搭載パッドPICが水晶振動素子30を搭載するための搭載パッドPと接続している。
【0030】
集積回路素子50は、少なくとも発振回路を備えて構成されており、水晶振動素子30を所定の周波数で発振できるようになっている。
この集積回路素子50は容器体10Cに設けられた第三凹部14に搭載される。
【0031】
これにより、本発明の第三の実施形態に係る容器体10Cを構成しても、圧電振動素子30が容器体10Cに接触することがなくなり、搭載される圧電振動素子30の落下による破損を防ぎ、また、圧電振動素子30に設けられる金属材料の剥がれを防ぐことができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、圧電振動素子の材質を水晶として説明したがこれに限定されるものではなく、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電効果のある材質を適宜用いることができる。
また、容器体は、前記実施形態に限定されず、水晶振動素子が搭載される位置と衝撃吸収部が設けられる位置が式(1)の関係となっていれば、どのような形状となっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明の第一の実施形態に係る容器体を圧電振動子に用いた一例を示す模式図であり、(b)は圧電振動素子が衝撃吸収部に接触した状態の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る容器体に設けた衝撃吸収部の位置を示す模式図である。
【図3】圧電振動素子の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る容器体の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る容器体を圧電発振器に用いた一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る容器体を圧電発振器に用いた他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
100 圧電振動素子
200 圧電発振器
10A、10B、10C 容器体
11 第一凹部
12 第二凹部(凹部)
13、14 第三凹部
20 衝撃吸収部
30 圧電振動素子
40 蓋体
50 集積回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片に励振電極を設けた圧電振動素子を搭載する容器体において、
前記容器体は、
前記圧電振動素子を搭載する位置より低い位置が底面となる凹部を有し、
この凹部に前記圧電振動素子と接触しない高さの衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする容器体。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、前記圧電振動素子の自由端となる位置から固定端側に寄った位置に設けられており、
前記圧電振動素子の自由端が前記凹部を構成する面に接触しない位置に前記衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の容器体。
【請求項3】
前記衝撃吸収部がタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニクロム(Ni−Cr)、金(Au)のいずれかの材質からなる単一層構造又は、これらを下地層としてその表面に金(Au)を設けた二層構造又は、チタン(Ti)を下地層とし、この表面に金(Au)を設けた二層構造からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−290777(P2009−290777A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143594(P2008−143594)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】