説明

容器保持機構およびこれを用いた剥離強度測定装置

【課題】 ラベルを剥離する場合の実使用状態に近い状態を再現できる容器保持機構とこれを用いたラベルの剥離強度測定装置を提供すること。
【解決手段】 水平方向に沿って延設されるベース部材11と、このベース部材11上を水平方向に移動自在で且つ水平面に沿って回転自在な容器保持台21とを備え、前記容器保持台21は、容器を水平方向軸線回りに回転自在に支持する容器支持部材を備えていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器保持機構およびこれを用いたラベルの剥離強度測定装置に係り、特に、ラベルが貼り付けられた容器の移動及び回転を許容しつつ容器を保持できる容器保持機構およびこれを用いた剥離強度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料用の容器Bには商品内容を表示するラベルLが表面に貼り付けられている場合がある。このラベルLは、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレンなどの材料からなるものの他、紙製などの種類が存在している。近年、容器BとラベルLとの分別ゴミ回収の流れに鑑みれば、ボトル入り飲料が市場に流通する際には、ラベルLが容器Bから剥がれ落ちることがなく、一方で購入者が飲料を飲み終えた後に、容器BからラベルLを容易に剥がすことのできる強度で、ラベルLを容器Bに接着しておく必要がある。
【0003】
ところで、容器Bに貼り付けられたラベルLを剥がす際に必要な剥離強度(剥離荷重)を適切に設計するには、その剥離強度を適切に測定する必要がある。実使用状態において、容器BからラベルLをはがす際には、図8に示すように、容器Bの表面の略法線方向に向けてラベルLの端部に引張荷重を加えて徐々に剥がしてゆく。このため、ラベルLの剥離強度を測定するためには、引張荷重の方向が常に容器Bの表面の略法線方向となるように容器Bを回転させるか、引張荷重の方向を調整する必要がある。
【0004】
このような要求の少なくとも一部を実現する手段としては、図9に示すように、容器Bを支持すると共に容器Bの長手方向中心軸に関して容器Bを回転自在に支持する容器保持台121が考えられる。具体的には、容器Bの中心軸に沿って貫通する回転軸131と、容器Bの両端で回転軸131を支持する支持部材125からなる、固定された容器保持台121である。このような容器保持台121を用いれば、ラベルLの端部を上方へ引き上げるだけでラベルLが剥離し、この剥離の進行に伴って容器Bが長手方向中心軸を中心に回転するため、常に容器Bの表面の法線方向に引張荷重が加わることとなる。
【0005】
また、剥離強度を測定するものではないが、ラベルを剥離するための装置についての先行技術はある。具体的には、容器に貼り付けられたラベルを把持機構32で吸引し、この把持機構32と捕捉領域において協働する分断部材23とで、持上げられたラベルを容器縦軸線の方向で分断して剥離するものである(特許文献1参照。)。また、搬送中の容器を加熱することによってラベルの接着剤を軟化させ、この状態において真空ドラムでラベルを吸引しながら剥離するものである(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−106150号公報
【特許文献2】特開昭57−046795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は実使用状態に近い態様で剥離強度を測定できる装置が存在せず、ラベルの剥離強度の設計は試行錯誤によって行われていたために多大な労力を要していた。また、実使用状態においては、ラベルの剥離の進行に伴って引張荷重の作用点は容器の表面を移動する。このため、剥離に応じて容器支持台の位置や姿勢を変化させる必要がある。しかし、図9で示す容器保持台については、容器保持台自体は固定されているため、容器保持台の平行移動や水平面に沿った回転などは規制される。このことは、剥離工程が実使用状態から除々に逸脱してしまうことを意味する。
【0007】
また、上記特許文献1及び2に開示される発明についても、あくまでも容器からラベルを剥離させる装置であって、ラベルの剥離強度の測定などを目的としたものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、実使用状態に近い態様で剥離工程を再現できる容器保持機構と、これを用いて剥離強度を測定することを可能とするラベルの剥離強度測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、水平方向に沿って延設されるベース部材と、このベース部材上を水平方向に移動自在で且つ水平面に沿って回転自在な容器保持台とを備え、前記容器保持台は、容器を水平方向軸線回りに回転自在に支持する容器支持部材を備える、という構成を採っている。このような構成を採ることにより、容器保持機構に保持された容器に対して剥離に伴う外力が加わった場合でも、ベース部材に対して容器保持台が自由に移動/回転し、常にラベルに対して容器の表面の法線方向に向けて引張荷重が加えられるようになる。このため、実使用状態に近い条件下でラベルの剥離工程を再現することができる。
【0010】
また、前記ベース部材と容器保持台との間には少なくとも3つの球状部材が配置されている、という構成を採っている。このような構成を採ることにより、容器保持台は常に水平状態に維持されると共に、球状部材の転がり作用により小さな抵抗で円滑に容器保持台が移動/回転する。
【0011】
また、前記容器保持台は、前記球状部材と当接する保持台本体と、この保持台本体の一方と他方において上方に突設される支持体とを備え、この支持体に前記容器支持部材が係合されている、という構成を採っている。このような構成を採ることにより、容器支持部材を介して容器が支持体に確実に支持されることとなる。
【0012】
また、前記容器支持部材は、前記各支持体に回転自在に取り付けられると共に前記容器をその両端部から狭持する回転狭持部材である、という構成を採っている。このような構成を採ることにより、容器は2つの回転狭持部材によって両端で狭持される。そして、回転狭持部材は各支持体に回転自在に取り付けられているため、ラベルに引張荷重が加わった場合にも小さな抵抗で容器が回転し、引張荷重の方向が常に容器の表面の法線方向を向くようにすることができる。
【0013】
更に、剥離強度測定装置が、上記した容器保持機構と、前記ベース部材に鉛直に固定される柱状部材と、この柱状部材に沿って昇降する昇降部材と、この昇降部材の下端に配設されて前記容器のラベルと係合される係合部材とを備えている、という構成を採っている。このような構成を採ることにより、係合部材にラベルが係合されて昇降機構が上昇することで、ラベルの剥離部が常に昇降部材の真下に位置決めされ、実使用状態に近い条件下で剥離荷重が測定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、容器保持機構の位置や姿勢について、実使用状態に近い態様を再現することができるので、実使用に沿ったラベルの剥離工程を忠実に再現することが可能である。また、ラベルの剥離強度を迅速且つ正確に測定することが可能となり、剥離強度の設計が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
[容器保持機構]
図1は、本発明の一実施形態に係る容器保持機構1の全体概要を示す図である。この図に示すように、容器保持機構1は、水平方向に沿って延設されるベース部材11と、このベース部材11上を水平方向に移動自在で且つ水平面に沿って回転自在な容器保持台21とを備え、前記容器保持台21は、容器Bを水平方向軸線回りに回転自在に支持する容器支持部材を備えている。以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0016】
[ベース部材]
先ず、容器保持機構1を構成するベース部材11について説明する。ベース部材11は、水平面に沿って配置される板状の部材である。ベース部材11の平面形状は図1(A)に示すように略矩形状であり、周囲には鉛直上方に延びる側壁13が形成されている。ベース部材11の大きさは、後述するラベルの剥離工程において容器保持台21が移動しても、この容器保持台21がベース部材11から転落しない程度の大きさが確保されている。具体的には、容器保持台21が最大限移動した場合でも、容器保持台21の重心がベース部材11から逸脱しない大きさである。
【0017】
また、側壁13で囲まれたベース部材11の表面は平滑で略水平面になっており、その表面には多数の球状部材15が配置されている。各球状部材15は、側壁13で囲まれたベース部材11上において、小さな抵抗で自由に転がることができるようにするため、各球状部材15間に所定の間隔が与えられて配置されるように所定の数量で収められている。本実施形態において用いられている球状部材15は固い金属製であり、荷重が加わっても変形しない強度を有している。球状部材15の数は容器保持台21を水平に維持するために少なくとも3つは必要であるが、容器保持台21が移動しても同様に水平に維持しなければならないので、ベース部材11の表面全体に多数の球状部材15を配置する必要があり、その場合に球状部材15はベース部材11上に均等に配置することが望ましい。
【0018】
[容器保持台]
次に、容器保持台21について説明する。容器保持台21は、上記した球状部材15と当接する板状の保持台本体23と、この保持台本体23の一方と他方において上方に突設される支持体25と、各支持体25に係合される容器支持部材(回転狭持部材31a,31b)とからなる。また、容器保持台21の重量は、ラベルLを剥離する際に加わる引張荷重よりも重くなっている。これは、剥離の際に容器保持台21が引張荷重によって浮き上がってしまうと、正確な剥離強度を測定できなくなってしまうからである。
【0019】
保持台本体23は、平面形状が矩形であり、底面がベース部材11上の球状部材15に当接する。保持台本体23は、上記したように少なくとも3つの球状部材15と当接するので、常に水平状態が維持される。
【0020】
支持体25は、保持台本体23の一方及び他方、より具体的には一端と他端近傍において、上方に向けて突設されている。支持体25の高さは、円筒状の容器Bが水平に向けて支持された場合に、少なくともその円筒状の容器の半径よりも高くなるように設定されている。このような高さに設定するのは、容器Bが支持台本体23に接触して、容器Bの回転が阻害されるのを防止するためである。また、各支持体25は、レール26aに沿って互いに近接及び離隔できるように構成されている。これは、後述するように、容器支持部材である回転狭持部材31a,31bで容器Bを支持する際に、容器Bの長さに合わせて各回転狭持部材31a,31bの相互間距離を調節するためである。具体的には、各支持体25に装備されているレバー26bを緩め、支持体25を所望の位置に移動させる。そして、各支持体25が容器Bを狭持するための適切な位置に配置されたら、レバー26bの操作によって支持体25を固定することができるようになっている。
【0021】
容器支持部材は、各支持体25に回転自在に取り付けられ、相互に対向し合って容器Bを両端から狭持する回転狭持部材31a,31bである。具体的な構造は図4に示されている。先ず、図4(A)に示される回転狭持部材31a,31bは、内部に円錐状の凹部を有する円盤状の部材であり、凹部の反対側には回転軸が突出している。そして、円錐状の凹部を形成する傾斜面によって容器Bの両端部が支持されるようになっている。このように、円錐状の傾斜面によって円形の容器端部を支持するような構造を採用することで、容器Bを回転狭持部材31a,31bで狭持する際に、容器Bの中心軸が回転狭持部材31a,31bの回転軸と一致するように位置修正がされるという利点がある。尚、図4(A)の実施形態では直径の異なる回転狭持部材31a,31b(左側の方が小さい)が用いられているが、同じ直径のものを用いるようにしてもよい。
【0022】
また、図4(B)に示す回転狭持部材は、容器Bの注ぎ口を狭持する側のみが図4(A)のものと異なっている。具体的には、円錐状の部材となっている。この円錐状の回転狭持部材31cは、蓋が取り付けられていない容器Bに適用されるものである。すなわち、図に示すように、円錐の先端部が容器B内に侵入するような向きで容器Bを狭持することとなる。このように、円錐で容器Bの注ぎ口を狭持することで、容器Bの中心軸を回転狭持部材31cの回転軸に容易に一致させることができる。
【0023】
また、図5は各支持体25に対して回転可能な回転軸31cを支持体25間に渡して、この回転軸31dに容器Bを支持するような構造にした例を示している。回転軸31dは、各支持体25の上端近傍に軸受けを介して係合されている。そして、容器Bの長手方向中心軸が回転軸31dと同心となるように容器Bが回転軸31dに取り付けられる。容器支持部材が回転軸31dで構成されることにより、容器Bに対して回転方向の外力が加わった場合には、回転軸31dを中心として容器Bが回転できるようになる。
【0024】
[剥離強度測定装置]
次に、図2に基づいて、上記した容器保持機構1を備えた、ラベルの剥離強度測定装置2について説明する。剥離強度測定装置2は、上記した容器保持機構1と、ベース部材11から鉛直上方に向けて固定される柱状部材41と、この柱状部材41に沿って昇降する昇降部材51を備えている。
【0025】
[柱状部材]
柱状部材41は、容器保持機構1に隣接した位置から鉛直上方に向けて立設されている。この柱状部材41は、昇降部材51を支持して容器BからラベルLを剥離させるのに用いるものである。このため、剥離工程においてラベルLを完全に剥離させるのに必要な昇降距離が確保できるように、その高さが設定されている。具体例で説明すると、ラベルLの形状が矩形の場合、ラベルLの対角線の長さに相当する昇降距離が最低限必要である。また、ラベルLが楕円形の場合には、その楕円の長径に相当する昇降距離が最低限必要である。従って、柱状部材41の高さは上記した最低限の昇降距離に、上下両端の付加部分を加えた値となる。もちろん、大きなラベルにも対応できるように、柱状部材41の高さに余裕を持たせるようにしてもよい。
【0026】
[昇降部材]
次に、昇降部材51について説明する。昇降部材51は、柱状部材41の側面であって、容器保持機構1の上方に位置するように設置されている。この昇降部材51は、下端に係合部材53aを備えており、この係合部材53aは接続部材53bと線状部材53cとからなる。但し、本発明は線状部材53cを取り付けただけの単純な係合部材53aに限定されるものではない。すなわち、図6に示すようなチャック54cからなる係合部材54aを用いるようにしてもよい。このチャック54cは、直接ラベルを把持することができるように構成されたものである。具体的には、昇降部材51の下端にネジ付きの接続部材54bが固定されており、このネジ付き接続部材54bにチャック54cが螺合されて固定される。チャック54cは2本の爪状部材からなり、各爪状部材は上端の係合軸で係合され、この係合軸に関して回動することで下端の先端部が互い近接又は離隔するようになっている。また、各爪状部材間には調整ネジが螺合しており、この調整ネジを回転させることで、爪状部材の先端部間の隙間を調整できるようになっている。このため、厚さの異なるラベルに対しても柔軟に対応することが可能である。尚、爪状部材の結合構造としては係合軸に限定されるものではなく、例えば、一方の爪状部材にレール状突起を形成すると共に、他方の爪状部材にレール状突起に対応するレール状凹部を形成し、これらレール状突起及び凹部の組み合わせによって互いに平行移動するように構成してもよい。
【0027】
昇降部材51を昇降させる機構として様々なものが考えられるが、例えば、柱状部材41内の上下両端の間に無端ベルト(図示略)を設置するような構造が考えられる。これは、柱状部材41の上下両端部にそれぞれ回転ローラ(図示略)を設置し、これら各回転ローラで無端ベルトを移動させるものである。そして、回転ローラの一方にはステッピングモータ(図示略)を係合し、このステッピングモータの回転により昇降機構の移動を制御するのである。また、ステッピングモータにはロータリエンコーダ(図示略)を併設し、モータの積算回転数を計測することによって昇降部材51の移動距離を算出するようになっている。但し、これはあくまでも一例であり、他の機構を用いてもよい。
【0028】
また、昇降部材51には、ラベルLの剥離工程において昇降部材51に加わる荷重を測定するための荷重測定部材(図示略)が設けられている。この荷重測定部材は、例えば歪みゲージなどの検出素子であり、荷重が加わる部分に取り付けられる。また、昇降部材51にメモリ機能付きの荷重測定装置を取り付けるようにしてもよい。こうすることで、剥離工程の終了後に荷重の変動を分析することができるからである。
【0029】
更に、剥離強度測定装置2には、昇降部材51の移動距離を測定し出力する移動距離測定部材(図示略)が設けられている。この移動距離測定部材は、昇降部材51に加わる荷重とその時の移動距離を知るためのものである。昇降部材の移動距離はラベルLの剥離工程の進行に対応しているため、結果としてラベルLの剥離工程中の引張荷重の変化を知ることができる。また、剥離強度測定装置2からは、昇降部材51の移動距離と、これに対応する時々刻々の引張荷重の値が外部出力され、電子計算機などの演算手段(図示略)に入力されるようになっている。
【0030】
[作用]
次に、図3及び図7に基づいて、本実施形態に係る容器保持機構1と、これを用いた剥離強度測定装置2の作用について説明する。ここで、図3(A)は平面図を示しているが、この図においては説明の便宜のために、昇降部材51は省略している。図は、容器保持機構1に容器Bが保持されている状態を示している。容器Bの側面には矩形のラベルLが貼り付けられている。ラベルLの貼り付けは接着剤を用いて行われている。
【0031】
剥離強度の測定に際しては、先ず、容器Bを容器保持機構1の容器支持部材である回転狭持部材31a,31bに支持させる。次に、ラベルLの端部に線状部材53cの下端部を係合する。本実施形態では矩形のラベルLであるので、ラベルLの角部に線状部材53cを係合している。線状部材53cとラベルLとの係合が完了したら、昇降部材51をゆっくりと上昇させる。昇降部材51の上昇に伴って線状部材53cを介してラベルLには上方への力が加わる。すると、容器Bは線状部材53cを係合したラベルLの部分が真上に来るように、容器保持部材である回転狭持部材31a,31bを中心に回転する。そして、ラベルLにおける線状部材53cとの係合部が上端にくる。線状部材53cの係合部が上端にくると、もはや容器Bは回転することができなくなる。
【0032】
また、容器Bを設置した時点において、線状部材53cを係合した部分は昇降部材51の真下に位置しているとは限らないが、昇降部材51の上昇に伴って線状部材53cを係合した部分が昇降部材51の真下にくるように、容器保持台21がベース部材11の表面に沿って水平方向に移動する。このとき、容器Bに対して水平面に沿った回転力が加わる場合もあるが、その場合には容器保持台21が水平面に沿って回転する。以上のように容器B自体の回転、容器保持台21の水平移動及び水平面回転が完了すると、線状部材53cが略鉛直になる。換言すると、昇降部材51によって線状部材53cを介してラベルLに引張荷重を加えることで、容器保持台21、即ち容器Bの位置や姿勢が実使用状態に近くなるということである。
【0033】
そして、更に昇降部材51が上昇すると、もはや容器Bは水平方向には移動できなくなり、線状部材53cによる引張荷重はラベルLを容器Bから剥離させるように作用する。この時点から、昇降部材51には剥離荷重が発生する。上記したように、線状部材53cはラベルLの一角部に係合されているので、昇降部材51の上昇に伴ってラベルLは角部から除々に剥離し始める。そして、ラベルLが剥離し始める時点での昇降部材51の位置が記憶される。これは、ラベルLの剥離が完了するまでの昇降部材51の移動距離を求めるためである。
【0034】
ラベルLの剥離工程の進行中においては、矩形のラベルLの場合はその対角線方向(図5参照)に沿ってラベルLが除々に剥離してゆくと考えられる。このとき、容器BにおけるラベルLの剥離位置は除々に対角線方向に変化してゆく。しかし、容器保持台21はベース部材11上を自由に移動できることから、剥離位置が常に昇降部材51の真下にくるように、容器保持台21の位置が修正される。これと同時に、ラベルLの剥離に伴って容器Bに水平面に沿った回転力が加わった場合でも、これによって容器保持台21が自由に回転する。このため、剥離工程中にラベルLには線状部材53cを介して容器Bの法線方向への引張荷重しか加わらず、剥離強度を正確に測定することが可能となる。
【0035】
図7は、昇降部材51の移動距離Dを横軸とし、測定された剥離強度(引張荷重)Fと縦軸として示したグラフである。これは、上記した外部の演算手段によって作成される。図において、適切な剥離強度の範囲をF1〜F2としている。この図に示すように、剥離強度Fは移動距離Dに対して正弦曲線のような変化を生じている。これは、剥離の初期段階は剥離長さ(容器から同時に剥がれるラベル部位の長さ)Kが短くて、小さな引張荷重でも剥離が進行してゆくが、剥離の進行に伴って剥離長さKが除々に増大してゆくからである。剥離強度Fが最大値を示す点は、ラベルの中央部付近を剥離させている時であり、剥離長さKが最大となる部位である。そして、剥離長さKが最大となる部位を通過して更に剥離が進行すると、こんどは剥離長さKが減少してゆくため、剥離強度も低下してゆく。そして、ラベルLが容器Bから完全に剥離した時点(移動距離De)で隔離強度は零となる。
【0036】
図7において、実線曲線61は適切な剥離強度を持つラベルの場合を示す。一方、一点鎖線曲線63及び二点鎖線曲線65は不適切な剥離強度を持つラベルの場合をそれぞれ示している。これらを詳しく説明すると、ラベルの剥離強度を評価する場合、様々な評価手法があるが、代表的な例としては、剥離強度の最大値を基準に評価する手法である。例えば、実線曲線61においては、剥離強度Fの最大値が適正値F1とF2の範囲内に含まれている。このため、このラベルの剥離強度は適切であると評価できる。
【0037】
一方、一点鎖線曲線63で示す例は、剥離強度Fの最大値が最大適正値F2を超えてしまっている。すなわち、剥離強度Fの最大値が大きすぎて、ラベルLを剥離させるのに必要以上に大きな引張荷重を必要とするということである。これは、飲料などの容器Bの購入者にとって、ラベルLを剥離させるのに労力を要することを意味する。また、二点鎖線曲線65で示す例は、剥離強度Fの最大値が最小適正値F1を下回ってしまっている。すなわち、剥離強度Fの最大値が小さすぎて、流通過程などにおいてラベルLが不用意に剥離してしまう可能性があるということである。このことは、飲料などを直接顧客に販売する店舗だけでなく、返品などへの対応が必要となる飲料メーカーなどにとっても問題となる。
【0038】
以上説明したように、本発明の容器保持機構および剥離強度測定装置を用いることで、ラベルLの剥離強度を迅速且つ正確に測定することが可能となる。このため、様々に条件を変えた多数の剥離強度試験を少ない労力で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、接着剤などで容器に貼り付けられたラベルの剥離強度を確認するための装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る容器保持機構であり、図1(A)は平面図を示し、図1(B)は正面図を示し、図1(C)は右側面図を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る剥離強度測定装置であり、図2(A)は平面図を示し、図2(B)は正面図を示し、図2(C)は右側面図を示す。
【図3】図2に開示した剥離強度測定装置の作用を説明するものであり、図3(A)は平面図を示し、図3(B)は正面図を示し、図3(C)は右側面図を示す。
【図4】容器支持部材を示す断面図であり、図4(A)は円錐状の凹部を有する回転狭持部材の例を示しており、図4(B)は一方が円錐状の回転狭持部材である例を示す。
【図5】容器支持部材が回転軸である場合を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る係合部材の例を示す図である。
【図7】昇降部材の移動距離(剥離進行度合い)と剥離強度との関係を示すグラフである。
【図8】手でラベルを剥離させる場合の剥離工程を説明する図である。
【図9】固定式の容器保持台であり、図9(A)は正面図を示し、図9(B)は右側面図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 容器保持機構
11 ベース部材
13 側壁
15 球状部材
21 容器保持台
23 保持台本体
25 支持体
27 軸受け
31a,31b,31c,31d 容器支持部材(回転狭持部材、回転軸)
41 柱状部材
51 昇降部材
53a,54a 係合部材
53b,54b 接続部材
53c 線状部材
54c クランプ
B 容器
L ラベル
K 剥離距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延設されるベース部材と、このベース部材上を水平方向に移動自在で且つ水平面に沿って回転自在な容器保持台とを備え、
前記容器保持台は、容器を水平方向軸線回りに回転自在に支持する容器支持部材を備えていることを特徴とする容器保持機構。
【請求項2】
前記ベース部材と容器保持台との間には少なくとも3つの球状部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の容器保持機構。
【請求項3】
前記容器保持台は、前記球状部材と当接する保持台本体と、この保持台本体の一方と他方において上方に突設される支持体とを備え、この支持体に前記容器支持部材が係合されていることを特徴とする請求項2に記載の容器保持機構。
【請求項4】
前記容器支持部材は、前記各支持体に回転自在に取り付けられると共に前記容器をその両端部から狭持する回転狭持部材であることを特徴とする請求項3に記載の容器保持機構。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の容器保持機構と、前記ベース部材に鉛直に固定される柱状部材と、この柱状部材に沿って昇降する昇降部材と、この昇降部材の下端に配設されて前記容器のラベルと係合される係合部材とを備えていることを特徴とする剥離強度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−229443(P2008−229443A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70454(P2007−70454)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】