説明

容器保持装置及びこれを備えたスターホイール式搬送装置

【課題】スターホイール上の余剰スペースを有効に活用してグリップの位置調整に必要な機構部品を容易に設置することが可能な容器保持装置を提供する。
【解決手段】周方向に並べられた状態でスターホイール4の同一のポケット6内に突出し、先端の爪部22cによりボトル2のフランジ2eを保持可能な一対のグリップ22A、22Bと、一対のグリップ22A、22Bのそれぞれをスターホイール4の回転中心線と平行な支点軸線Qの周りに回転させて爪部22cの位置を変化させる調整機構23とを容器保持装置に設ける。支点軸線Qは複数のポケット6間に挟まれた領域に設定する。周方向一方の側Saに配置される一方のグリップ22Aの支点軸線Qは周方向の他方の側Sbにてポケット6に隣接する領域に設定し、他方の側Sbに配置される他方のグリップ22Bの支点軸線Qは、一方の側Saにてポケット6に隣接する領域に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターホイールのポケット内に取り込まれる容器を保持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルのようなボトル状容器の搬送にはスターホイール式搬送装置が頻繁に用いられているが、そのスターホイールのポケットに取り込まれた容器を確実に保持するため、容器の首部を一対のグリップにて挟み込む容器保持装置が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。その他に、本発明に関連する先行技術文献として特許文献3〜6が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−29225号公報
【特許文献2】特開2005−89182号公報
【特許文献3】実開平7−15287号公報
【特許文献4】特表2002−503640号公報
【特許文献5】特開平11−314752号公報
【特許文献6】特開2003−276838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の容器保持装置では、グリップの位置を調整するための支点軸線がスターホイールのポケットに対して半径方向内側の領域に設定されている。しかしながら、ポケットよりも半径方向内側の領域は狭く、そこににはスターホイールの回転機構といった他の機構部品も配置されることから、グリップの位置を調整するための機構の設置スペースを十分に確保することが難しい。
【0005】
そこで、本発明はスターホイール上の余剰スペースを有効に活用してグリップの位置調整に必要な機構部品を容易に設置することが可能な容器保持装置及びこれを備えたスターホイール式搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容器検査装置は、スターホイール(4)の周方向に並べられた状態で該スターホイールの同一のポケット(6)内に突出し、先端の保持部(22c)により、前記ポケット内に取り込まれる容器(2)の首部(2d)のフランジ(2e)を保持可能な一対のグリップ(22A、22B)と、前記一対のグリップのそれぞれを、前記スターホイールの回転中心線(CL)と平行な支点軸線(Q)の周りに回転させて前記保持部のそれぞれの位置を変化させる調整機構(23)とを具備し、前記一対のグリップのそれぞれの支点軸線が前記周方向に関して複数のポケットに挟まれた領域に存在し、かつ、前記周方向一方の側(Sa)にて前記ポケット内に突出する一方のグリップ(22A)の支点軸線は、前記周方向の他方の側(Sb)にて前記ポケットに隣接する領域に位置し、前記他方の側にて前記ポケット内に突出する他方のグリップ(22B)の支点軸線は、前記一方の側にて前記ポケットに隣接する領域に位置する、ものとしたことにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の容器検査装置においては、一対のグリップのそれぞれを支点軸線の周りに対称的に回転させることにより、それらのグリップの保持部をポケット内において周方向に互いに接近させつつ半径方向外周側に移動させ、あるいは保持部をポケット内において周方向に互いに離間させつつ半径方向中心側に移動させることができる。これにより、首部の直径が異なる容器のそれぞれに適した位置に保持部を移動させて容器を確実に保持することができる。グリップの支点軸線がポケット間に挟まれた領域に設定されており、それらの領域は他の機構部品が配置されない余剰スペースとなっていることが多い。従って、支点軸線をポケットに対して半径方向中心側に配置する場合と比較して、支点軸線上又はその周囲に配置されるべき部品の設置スペースを容易に確保することができる。
【0008】
本発明の検査装置の一形態において、前記スターホイールの回転中心と前記ポケットの中心(CP)とを結ぶ半径方向中心線(A)に対して、前記支点軸線のそれぞれと前記ポケットの中心とを結ぶ線分(R)が略45°の角度(φ)で傾斜するように前記支点軸線が設定されてもよい。この形態によれば、グリップを比較的小さい角度で回転させる限りにおいて、グリップの保持部をスターホイールの半径方向及びこれと直交する方向に略等しい量ずつ移動させることができる。従って、首部の大小に関わりなく容器を略同一の条件で保持することが可能となる。
【0009】
上記の形態においては、前記半径方向中心線を挟んで前記グリップ及び前記支点軸線が対称的に配置されてもよい。これによれば、一対のグリップの保持部をスターホイールの半径方向及びこれと直交する方向に対称的に移動させて、容器のフランジをその首部の直径の大小に関わりなく安定的に保持することができる。
【0010】
さらに、前記一対のグリップのそれぞれの保持部間にV字状の溝が形成されるように、前記一対のグリップのそれぞれの保持部の内側に傾斜部(22d)が設けられてもよい。これによれば、グリップの保持部とフランジとの接触範囲を首部の直径の大小に関わりなく比較的大きく確保して容器をさらに安定して保持することができる。
【0011】
本発明の容器保持装置の一形態において、前記調整機構は、前記一対のグリップのそれぞれを前記支点軸線の周りに位置決めする位置決め手段(25、26)を備えてもよい。これによれば、グリップの保持部を容器の首部の直径に適した位置に移動させてその位置に拘束することができる。
【0012】
さらに、前記位置決め手段は、前記一対のグリップのそれぞれを前記保持部が互いに接近する方向に回転させる力を付与するばね手段(25)と、前記スターホイールの前記支点軸線よりも半径方向中心側にて前記周方向の外側から前記一対のグリップのそれぞれに接触し、前記ばね手段に抗して前記一対のグリップのそれぞれを定位置に保持する一対の位置決めピン(26)とを備え、前記一対の位置決めピンのそれぞれの前記グリップに対する接触部分には、前記位置決めピンの中心線の周りに非円形の輪郭を有するカム部(26a)が設けられたものとしてもよい。これによれば、位置決めピンを回転させてカム部の異なる位置をグリップと接触させることにより、グリップを支点軸線の周りに回転させて保持部の位置を首部の直径に応じた適切な位置に位置決めすることができる。
【0013】
本発明の容器保持装置の一形態においては、ポケット毎に配置される複数のグリップユニット(21)を有し、各グリップユニットに、前記一対のグリップ(22A、22B)及び調整機構(23)が設けられてもよい。これによれば、スターホイールの各ポケットに取り込まれる容器を本発明の容器保持装置によって保持することができる。
【0014】
さらに、上記の形態においては、前記周方向に隣接する一対のグリップユニット間において、一方のグリップユニットに配置された前記一方のグリップの支点軸線と、他方のグリップユニットに配置された前記他方のグリップの共通軸線とが共通であってもよい。これによれば、支点軸線上又はその周囲に配置されるべき部品を隣接するポケット間で共用し、部品点数の削減及びそれに伴う機構の簡素化を実現することができる。
【0015】
なお、本発明は、上述した容器保持装置を備えたスターホイール式搬送装置として具現化されてもよい。
【0016】
以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明したように、本発明の容器保持装置及びこれを備えたスターホイール式搬送装置によれば、一対のグリップのそれぞれの支点軸線をポケット間に挟まれた領域に設定しているため、支点軸線をポケットに対して半径方向中心側に配置する場合と比較して、スターホイール上の余剰スペースであるポケット間の領域を有効に活用して支点軸線上又はその周囲に配置されるべき機構部品を容易に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一形態に係る容器保持装置が組み込まれたスターホイール式搬送装置を示す平面図、図2は図1のII−II線に沿った断面図である。搬送装置1は、容器検査装置の一部として設けられるもので、PET樹脂等で形成されたボトル2を上下二段のスターホイール3、4のポケット5、6に1本ずつ取り込んで回転中心線CLの周りに搬送する。図2から明らかなように、下部スターホイール3のポケット5はボトル2の胴部2aを受け入れ、上部スターホイール4のポケット6はボトル2の口部2bを受け入れる。ボトル2の具体的な保持形態は後述する。
【0019】
図2に示すように、スターホイール3、4のそれぞれは円盤状のホイール本体7、8を有している。下部のホイール本体7はスターホイール3、4を回転中心線CLの周りに旋回駆動するための駆動軸9と連結され、上部のホイール本体8は複数本のリニアガイド10を介して下部のホイール本体7と連結される。リニアガイド10の案内軸10aは下部のホイール本体7に固定され、リニアガイド10のスライダ10bは上部のホイール本体8に固定される。さらに、ホイール本体7、8間にはボールねじ(不図示)が設けられる。そのボールねじを回転操作することにより、上部のスターホイール4はリニアガイド10の案内軸10aに沿って昇降する。これにより、搬送すべきボトル2の高さに合わせて上部のスターホイール4の高さを調整することができる。図2の実線は上部のスターホイール4を上端まで移動させた状態を示し、同図の想像線はスターホイール4を下端まで移動させた状態を示す。
【0020】
ホイール本体7、8の外周にはホイール型11、12がホイール本体7、8を一周するように取り付けられている。それらのホイール型11、12は固定機構13、14を利用してホイール本体7、8に同軸的かつ一体回転可能に取り付けられる。ホイール型11、12の外周に上述したポケット5、6が周方向に一定間隔で形成される。なお、上部のホイール型12は、ホイール本体8に固定される上部プレート12aから下部プレート12bを連結具12cにて吊り下げた構成であり、ポケット6は下部プレート12bに形成されている。下部のポケット5はボトル胴部2aの直径に合わせた略半円状に形成される。下部のスターホイール3の外周の一部にはベルト15が張り渡されている。そのベルト15とポケット5との間にボトル胴部2aが挟み込まれて胴部2aがポケット5内に保持される。ボトル2の底面2cは支持されず、下方に向かって開放されている。これにより、底面側からのボトル検査が可能となる。
【0021】
上部スターホイール4には容器保持装置20が設けられている。容器保持装置20は、各ポケット6に取り込まれたボトル2の首部2dのフランジ(サポートリングと呼ばれることがある。)2eを下方から支持するものである。つまり、本形態の搬送装置1は、スターホイール3、4のポケット5、6に取り込まれたボトル2のフランジ2eを容器保持装置20にて下方から支えつつ、胴部2aをポケット5とベルト15との間に挟み込むことにより、ボトル2を宙吊り状態で保持する。ボトル2には、首部2dの直径(以下、首径と呼ぶ。)の大小により2種類が存在するが、上部スターホイール4はその容器保持装置20を含めて、いずれの首径のボトル2にも共通して使用される。2種類のボトル2間で胴部2aの直径はほぼ同じである。上部のポケット6は下部のポケット5と同様の略半円形状に形成され、その曲率中心CPは下部スターホイール3のポケット5とベルト15との間に挟まれたボトル2の中心線と一致するように設定される。ポケット6の内周には、ボトル2の口部2bを覆う半円筒状の反射板16が取り付けられている。反射板16はボトル2の検査のために照射される照明光をボトル2に対して均等に入射させるために設けられている。
【0022】
図3は上部スターホイール4の外周の部分拡大図である。図3から明らかなように、容器保持装置20はポケット6毎に設けられたグリップユニット21を備えている。図4に単一のグリップユニット21を示す。各グリップユニット21は、一対のグリップ22A、22Bと、それらのグリップ22A、22Bの位置をボトル2の首径d1、d2(但しd2>d1)に応じて調整するための調整機構23とを備えている。
【0023】
図5及び図6は一方のグリップ22Aの詳細を示している。グリップ22Aは、ほぼ直線状に延びるシャンク22aとシャンク22aの基端側に形成されたベース22bとを備えている。シャンク22aはブロック状であり、ベース22bはそのシャンク22aの上面と面一に連続する平板状に形成されている。シャンク22aの先端部は下面側から切り欠かれ、それによりグリップ22Aの先端部には保持部としての爪部22cが形成されている。爪部22cの内側(図5において下側)の角部には、ボトル2のフランジ2e(図2参照)との接触範囲を確保すべく、シャンク22aの長手方向(図中の一点鎖線Aの方向)に対して所定角度θ°で傾く傾斜部22dが設けられている。角度θはおおよそ45°に設定されている。なお、図5に示した一点鎖線Aは、グリップ22Aをスターホイール4に取り付けた場合のホイール回転中心CLとポケット6の曲率中心CP(図3参照)とを結ぶ仮想的な中心線に相当する。以下、これをポケット6の半径方向中心線と呼ぶ。そして、半径方向中心線Aを境界としてポケット6の周方向一方の側(矢印Saで示した側)と他方の側(矢印Sbで示した側)とをそれぞれ定義する。
【0024】
ベース22bは、ポケット6の半径方向中心線Aを超えてシャンク22aの反対側まで延ばされており、その先端部にピン孔22eが形成されている。ベース22bの後端(図5において左端)にはばね受け部22fが下方に向かって突出するように設けられている。そのばね受け部22fには、ばね受け穴22gが形成されている。図4から明らかなように、他方のグリップ22Bは、半径方向中心線Aに関してグリップ22Aと対称的な形状を有している。従って、グリップ22Bの各部には、図5及び図6に示したグリップ22Aの各部22a〜22gと同一符号を使用し、詳細な説明は省略する。但し、グリップ22Bのベース22bは、一方のグリップ22Aのベース22bと上下方向に重ね合わせることができるように、シャンク22aの下面と面一で連続する平板状に形成されている。
【0025】
図3及び図4に戻って、調整機構23は、グリップ22A、22Bのそれぞれを上部スターホイール4、より具体的にはホイール型12の下部プレート12bに回転可能に取り付けるための一対の支点ピン24と、グリップ22A、22Bのばね受け穴22g間に介装されるばね手段としてのコイルばね25と、コイルばね25の反対側に配置されてグリップ22A、22Bを定位置に保持するための位置決めピン26とを備えている。支点ピン24の軸線(支点軸線)Qはスターホイール3、4の回転中心線CLと平行であり、かつ半径方向中心線Aに関して対称的に配置されている。コイルばね25はグリップ22A、22Bのばね受け部22fを互いに離れる方向に押し出してベース22bを位置決めピン26のカム部26aに接触させる。カム部26aの横断面の形状は楕円形状に設定されている。従って、位置決めピン26を90°の範囲で回転させてカム部26aの長径部又は短径部を選択的にベース22bと接触させることにより、グリップ22A、22Bが支点軸線Qの周りに回転し、それに伴って爪部22cの位置が変化する。
【0026】
すなわち、カム部26aの短径部をベース22bと接触させた場合には、図3及び図4に実線で示すように、ばね受け部22f間の距離が拡大し、それにより、グリップ22A、22Bの爪部22cはスターホイール4の半径方向外側に突出しつつスターホイール4の周方向に互いに接近する。一方、カム部26aの長径部をベース22bと接触させた場合には、図3及び図4に想像線で示すように、ばね受け部22f間の距離が減少し、それにより、グリップ22A、22Bの爪部22cはスターホイール4の半径方向内側に後退しつつスターホイール4の周方向に互いに離間する。なお、何れの場合にも位置決めピン26の効果によりグリップ22A、22Bは周方向にそれ以上に離間することはない。以上から明らかなように、コイルばね25と位置決めピン26とによってグリップ22A、22Bの位置決め手段が構成される。
【0027】
図3に示すように、支点ピン24のそれぞれは、上部スターホイール4の周方向に関してポケット6に挟まれた領域に1本ずつ配置されている。グリップ22A、22Bのシャンク22aは、それらのピン孔22e(図5参照〜)を支点ピン24と嵌め合わせることによりプレート12bにそれぞれ取り付けられる。上述したグリップ22A、22Bの形状から明らかなように、グリップ22A、22Bのシャンク22aはポケット6の半径方向中心線Aを挟んで周方向に対称的に並んだ状態で、反射板16を貫いてポケット6内に突出する。これにより、ポケット6の曲率中心CPからみて、グリップ22A、22Bの傾斜部22dは略V字状に窪んだ溝を形成するように配置される。そして、一つのグリップユニット21において、周方向一方の側Saにてポケット6内に突出する一方のグリップ22Aは、周方向の他方の側Sbにてポケット6に隣接する領域の支点軸線Qの周りに回転可能であり、他方の側Sbにてポケット6内に突出する他方のグリップ22Bは、一方の側Saにてポケット6に隣接する領域の支点軸線Qの周りに回転可能である。つまり、グリップ22A、22Bのそれぞれの支点軸線Qは、それらのシャンク22aのポケット6内における配置に対して周方向に互い違いに設定される。
【0028】
図3から明らかなように、支点ピン24及び位置決めピン26は、隣接する一対のグリップユニット21間でそれぞれ共用される。つまり、一つの支点ピン24には、一つのグリップユニット21の一方のグリップ22Aと、そのグリップユニット21に隣接するグリップユニット21の他方のグリップユニット22Bとがそれぞれ回転可能に取り付けられている。また、位置決めピン26も隣接するグリップユニット21のグリップ22A、22Bのベース22bとそれぞれ接するように設けられる。
【0029】
図7に示したように、位置決めピン26は上部スターホイール4の上部プレート12aを貫いてホイール型12の上方に突出する。位置決めピン26の上端には、位置決めピン26を回転操作するための操作部としてのレバー27が取り付けられている。図3に実線で示すレバー27は、カム部26aの長径部をグリップ22A、22Bのベース22bと接触させたときの状態を示し、同図に想像線で示すレバー27はカム部26aの短径部をグリップ22A、22Bのベース22bと接触させたときの状態を示している。
【0030】
以上のように構成された搬送装置1においては、搬送すべきボトル2の首径d1、d2に応じて容器保持装置20のレバー27を切換え操作することにより、ボトル2のフランジ2eを首径の大小に拘わらず一対のグリップ22A、22Bで確実に保持することができる。すなわち、搬送すべきボトル2の首径がd1の場合、つまり首径の小さいタイプのボトル2を搬送する場合には、各レバー27を図3の実線位置に操作して位置決めピン26のカム部26aの長径部をグリップ22A、22Bのベース22bと接触させることにより、グリップ22A、22Bの爪部22cを図3及び図4に実線で示すようにポケット中心CPに接近させる。一方、首径の大きいタイプのボトル2を搬送する場合には、各レバー27を図3の想像線の位置に操作して位置決めピン26のカム部26aの短径部をグリップ22A、22Bのベース22bと接触させることにより、グリップ22A、22Bの爪部22cを図3及び図4に想像線で示すようにポケット中心CPから後退させる。
【0031】
このような切換え操作をボトル2の搬送に先立って実施することにより、グリップ22A、22Bの爪部22cをフランジ2eの下方に適正な範囲(一例として首径の1/3〜1/4)で差し込んでボトル2を保持できる。グリップ22A、22Bの位置を首径(d1又はd2)に合わせて設定した後は、スターホイール3、4へのボトル2の受け入れ及びスターホイール3、4からのボトル2の受け渡しに同期してグリップ22A、22Bを開閉駆動する必要はない。よって、ボトル2の受け入れ及び受け渡しを簡単かつ確実に行うことができる。搬送装置1との間でボトル2をやり取りする相手側の装置の構造も簡素化され、それらの装置の耐久性を高めることができる。
【0032】
また、本形態の容器保持装置20においては、グリップ22A、22Bの支点軸線Qが周方向に関してポケット6間の領域に設定されている。これらの領域は他の機構部品が配置されない余剰スペースとなっていることが多い。従って、支点軸線Qをポケット6に対して半径方向内側に設定する場合と比較して、支点ピン24の設置スペースを容易に確保することができる。ポケット6の個数が少ない場合にはスターホイール3、4の外径も小さくなり、ポケット6よりも半径方向内側に残されるスペースはさらに減少する。このような場合でも、支点軸線Qをポケット6の内側に設定したならば、支点ピン24等を設置するスペースの確保が困難となり、その設置スペースを生じさせるべくスターホイール3、4の外径をポケット数に適した値よりも拡大する必要が生じることがある。これに対して、ポケット6同士に挟まれた領域には、スターホイール3、4の外径が小さくても比較的大きなスペースが残る。よって、本形態のようにポケット6間の領域に支点軸線Qを設定すればスターホイールの大径化を防ぐことができる。既存のスターホイールに容器保持装置20を適用する場合でも、支点ピン24の設置スペースを確保し易いため、改造が容易である。
【0033】
さらに、容器保持装置20においては、グリップ22A、22Bのそれぞれの支点軸線Qが、それらのシャンク22aのポケット6内における配置に対して周方向に互い違いに設定されている。このため、ポケット6に対して半径方向内側に支点軸線を設ける場合と比較して、支点軸線Qがポケット6の曲率中心CPからみて半径方向外周側に接近し、かつ周方向外側に偏ることになる。これにより、図4に示すように曲率中心CPと各支点軸線Qとを結ぶ線分Rとポケット6の半径方向中心線Aとがなす角度φを略45°に設定することができる。これにより、グリップ22A、22Bを図4の実線位置と想像線の位置との間で回転させる限りにおいて、グリップ22A、22Bの回転角が微小であるがために、曲率中心CPに対して各爪部22cが半径方向中心線Aと平行なx軸方向及びこれと直交するy軸方向に略等しく移動する。従って、半径方向中心線Aに対する傾斜部22dの傾斜角θの変化を抑え、首径の大小に関わりなくボトル2を爪部22cによって略同一の条件で保持することができる。
【0034】
本形態の容器保持装置20において、グリップ22A、22Bの材質は特に問わない。しかしながら、ボトル2を検査する際の照明に対してグリップ22A、22Bが影を形成して検査に影響を与える場合には、ポケット6内の突出部分を照明光に対して透過性を有する材質にて形成することが望ましい。例えば、照明光が波長域750〜950nmの近赤外光である場合には、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂を用いることができ、より好ましくは分子量100〜600万程度(但し、粘度法ASTMD2857で試験したときの値)の超高分子量ポリエチレン系樹脂(UHMW−PE)を用いるとよい。このような樹脂としては、作新工業株式会社が商品名「ニューライト」(商標)を付して提供する樹脂がある。
【0035】
本発明は以上の形態に限らず、適宜の形態にて実施することができる。例えば、上記の形態ではボトル2の首径が2種類であることを前提としてグリップ22A、22Bの位置を二段階に変化させたが、本発明の容器保持装置はそのような形態に限らない。レバー27の位置を図3の実線位置と想像線の位置との間の適宜の位置で保持できるようにすれば、グリップ22A、22Bの位置を三段階以上に変化させることができる。さらに、位置決めピン26のカム部26aの断面形状に応じてグリップ22A、22Bの位置を様々に変化させることができる。つまり、カム部26aの輪郭は楕円状に限らず、非円形であれば適宜に変更可能である。上記の形態では各位置決めピン26を1本ずつレバー27にて操作したが、複数本の位置決めピン26をリンク機構等で連結して、複数のグリップユニット21のそれぞれのグリップ22A、22Bを共通の操作部の操作により一括して操作してもよい。さらに、位置決めピン26をアクチュエータによって駆動してもよい。
【0036】
本発明の容器保持装置はPET樹脂製のボトル2の保持に限らず、グリップ先端の保持部にて保持が可能なフランジが首部に存在する限りにおいて、各種の容器の保持に利用することができる。スターホイール式搬送装置は上下一対のスターホイールを備えた構成に限定されず、単一のスターホイールのみを備えたものでもよい。下部スターホイールを備えている場合、その下部スターホイールにおけるボトルの保持形態はポケットとベルトとの間で胴部を挟み込む例に限らず、ベルトに代えてローラ等で胴部を挟む物としてもよいし、ボトルの底面を支持するものでもよい。反射板は不要であれば省略可能である。ポケットは略半円状のものに限らず、容器を受け入れ可能な凹部として構成される限りにおいて適宜に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一形態に係る容器保持装置が適用されたスターホイール式搬送装置を示す平面図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】上部スターホイールの外周の部分拡大図。
【図4】一つのグリップユニットの平面図。
【図5】一方のグリップの平面図。
【図6】一方のグリップを図5の矢印VI方向から見た側面図。
【図7】位置決めピンの位置における断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 スターホイール式搬送装置
2 ボトル(容器)
2d 首部
2e フランジ
3 下部のスターホイール
4 上部のスターホイール
5、6 ポケット
15 ベルト
16 反射板
20 容器保持装置
21 グリップユニット
22A 一方のグリップ
22B 他方のグリップ
22a シャンク
22b ベース
22c 爪部(保持部)
22d 傾斜部
22f ばね受け部
23 調整機構
24 支点ピン
25 コイルばね(位置決め手段)
26 位置決めピン(位置決め手段)
26a カム部
27 レバー
A ポケットの半径方向中心線
CL スターホイールの回転中心線(回転中心)
CP ポケットの曲率中心(ポケット中心)
Q 支点軸線
R 支点軸線とポケット中心とを結ぶ線分
Sa 一方の側
Sb 他方の側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スターホイールの周方向に並べられた状態で該スターホイールの同一のポケット内に突出し、先端の保持部により、前記ポケット内に取り込まれる容器の首部のフランジを保持可能な一対のグリップと、
前記一対のグリップのそれぞれを、前記スターホイールの回転中心線と平行な支点軸線の周りに回転させて前記保持部のそれぞれの位置を変化させる調整機構とを具備し、
前記一対のグリップのそれぞれの支点軸線が前記周方向に関して複数のポケットに挟まれた領域に存在し、かつ、
前記周方向一方の側にて前記ポケット内に突出する一方のグリップの支点軸線は、前記周方向の他方の側にて前記ポケットに隣接する領域に位置し、前記他方の側にて前記ポケット内に突出する他方のグリップの支点軸線は、前記一方の側にて前記ポケットに隣接する領域に位置する、
ことを特徴とする容器保持装置。
【請求項2】
前記スターホイールの回転中心と前記ポケットの中心とを結ぶ半径方向中心線に対して、前記支点軸線のそれぞれと前記ポケットの中心とを結ぶ線分が略45°の角度で傾斜するように前記支点軸線が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の容器保持装置。
【請求項3】
前記半径方向中心線を挟んで前記グリップ及び前記支点軸線が対称的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の容器保持装置。
【請求項4】
前記一対のグリップのそれぞれの保持部間にV字状の溝が形成されるように、前記一対のグリップのそれぞれの保持部の内側に傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の容器保持装置。
【請求項5】
前記調整機構は、前記一対のグリップのそれぞれを前記支点軸線の周りに位置決めする位置決め手段を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器保持装置。
【請求項6】
前記位置決め手段は、前記一対のグリップのそれぞれを前記保持部が互いに接近する方向に回転させる力を付与するばね手段と、前記スターホイールの前記支点軸線よりも半径方向中心側にて前記周方向の外側から前記一対のグリップのそれぞれに接触し、前記ばね手段に抗して前記一対のグリップのそれぞれを定位置に保持する一対の位置決めピンとを備え、前記一対の位置決めピンのそれぞれの前記グリップに対する接触部分には、前記位置決めピンの中心線の周りに非円形の輪郭を有するカム部が設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の容器保持装置。
【請求項7】
ポケット毎に配置される複数のグリップユニットを有し、各グリップユニットに、前記一対のグリップ及び調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器保持装置。
【請求項8】
前記周方向に隣接する一対のグリップユニット間において、一方のグリップユニットに配置された前記一方のグリップの支点軸線と、他方のグリップユニットに配置された前記他方のグリップの共通軸線とが共通であることを特徴とする請求項7に記載の容器保持装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の容器保持装置を備えたスターホイール式搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−156054(P2008−156054A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346429(P2006−346429)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】