説明

容器入りゼリー飲料

【課題】高カロリーでも瑞々しいゼリーの食感が楽しめ、且つ適度な崩壊性を有し、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するのにも適した、容器入りゼリー飲料を提供する。
【解決手段】デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖、ゲル化剤、及びHLB値9以上の界面活性剤を含有し、その澱粉糖の含有量が澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上であり、タンパク質及び/又は脂質の含有量が0.5質量%以下であり、レオメーターを用いて測定した直径10mmの円柱形プランジャーによるゼリーの破断点におけるゲル強度が1N以下であるゼリーを得、これを密閉可能な容器に充填して容器入りゼリー飲料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りゼリー飲料に関するものであり、更に詳細には、密閉可能な容器にゼリーが充填され、該容器を振ることにより、該容器内のゼリーのゲルを崩して飲食するものである容器入りゼリー飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新規な形態の飲食物を求める消費者の傾向が顕著であり、その一例として、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するものとされた容器入りゼリー飲料が知られている。このようなゼリー飲料に関しては、例えば、下記特許文献1には、キサンタンガム、コンニャク芋抽出物及び/又はローカストビーンガム、紅藻類由来のガム質からなる3成分を含み、ゲル化点が25〜50℃となるように調整されたゲル化剤を含むことを特徴とするドリンクゼリーが開示されており、常温流通でもゲルの性状の保存安定性が高く、なおかつ弾力のある食感を有し、ゼリーの容器への付着が少ないドリンクゼリーであることが記載されている。
【0003】
また、他の一例として、運動後のエネルギー補給や、また、小腹がすいた時、あるいは、腹持ちを良くするために、手軽に喫食することができる高エネルギー補給用の飲食物が知られている。スマートな喫食形態を好む消費者の要請に合致し、市場で良好な支持を得ている。このような飲食物に関しては、例えば、下記特許文献2には、マルトオリゴ糖とデキストリンと酸味料とを含み、糖質組成において、グルコース重合度1〜2の糖質が15質量%以下、グルコース重合度3〜9の糖質が50〜75質量%、グルコース重合度10以上の糖質が25〜50質量%であり、糖度が50〜70、飲料100g当たりのカロリー値が200kcal以上であることを特徴とする高エネルギー飲料が開示されており、非常に高カロリーであるにもかかわらず、適度な甘味を有して飲みやすい飲料を提供でき、マラソンやトライアスロン等の持久力を要するスポーツにおいて、エネルギー源の補給のために摂取するのに適していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125715号公報
【特許文献2】特開2003−169643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高エネルギー補給用のゼリー飲料には、糖質をカロリー源として使用するのが一般的であり、甘みを抑える為、デキストリン等の甘味度の低い澱粉糖等を使用する必要がある。しかしながら、デキストリン等の平均加重重合度の高い糖類と、ゲル化剤とを溶解させて得られるゲル状食品は、液の粘度が高くなる結果、口当りが厚く、ゼリーの瑞々しさが損なわれる傾向があり、良好な食感が得られにくかった。
【0006】
また、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するものとされた容器入りゼリー飲料とする場合、程よくゲルが崩壊し、なお且つ、食べ応えのあるゼリー感を損なわないようなゲル性状を得る要請があるが、ゲル化剤の種類や配合量を調整しただけでは、硬くなってしまったり、ゼリー感が無くなってしまったりして、調整に困難を伴うことがあった。
【0007】
このような課題に鑑み、本発明の目的は、高カロリーでも瑞々しいゼリーの食感が楽しめ、且つ適度な崩壊性を有し、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するのにも適した、容器入りゼリー飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の検討の結果、下記のような技術的特徴のある容器入りゼリー飲料を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の容器入りゼリー飲料は、密閉可能な容器にゼリーが充填され、該容器を振ることにより、該容器内のゼリーのゲルを崩して飲食するものである容器入りゼリー飲料であって、
前記ゼリー飲料のゼリーは、
デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖、ゲル化剤、及びHLB値9以上の界面活性剤を含有し、
前記澱粉糖の含有量が該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上であり、タンパク質及び/又は脂質の含有量が0.5質量%以下であり、
レオメーターを用いて、直径10mmの円柱形プランジャーを、測定品温20℃としたゼリーに押し付けて、移動速度60mm/分で貫入させていったとき該プランジャーによるゼリーの破断点におけるゲル強度、及び該レオメーターを用いた測定においてゼリーが破断するまでに要した破断距離は、前記ゼリー飲料のゼリーに前記界面活性剤を添加しなかった場合の破断距離及びゲル強度に対して、下記式(1)〜(3)を満たす、
(x’/ x) > 1.00 …(1)
(y’/ y) ≦ 1.25 …(2)
y ≦ 1.00 (N)、且つ、y’≦ 1.00 (N) …(3)
(式中、x、yはそれぞれ界面活性剤を配合しないで調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表し、x’、y’はそれぞれ界面活性剤を配合して調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表す。)
ものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の容器入りゼリー飲料によれば、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有しているので、高エネルギー補給用として好適である。そして、HLB値9以上の界面活性剤を配合した上で、ゲル化剤でゲル化してなるので、ゲル化剤の種類や配合量で調整する場合に比べて特有のゲル性状を有するゼリー飲料が得られ、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して飲食するのに適した崩壊性と、瑞々しく食べ応えあるゼリーの食感とを両立させることが容易である。
【0011】
本発明の容器入りゼリー飲料においては、前記界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0012】
また、前記ゲル化剤は、寒天、κ−カラギーナン、ローカストビーンガム、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、及びキサンタンガムからなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
また、前記界面活性剤の含有量が0.01〜0.20質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高カロリーでも瑞々しいゼリーの食感が楽しめ、且つ適度な崩壊性を有し、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するのにも適した、容器入りゼリー飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】処方1、2の配合のゼリーについてレオメーターにより測定した貫入距離−荷重曲線の結果を示す図表である。
【図2】処方3、4、5の配合のゼリーについてレオメーターにより測定した貫入距離−荷重曲線の結果を示す図表である。
【図3】処方6、7、8の配合のゼリーについてレオメーターにより測定した貫入距離−荷重曲線の結果を示す図表である。
【図4】処方9、10、11の配合のゼリーについてレオメーターにより測定した貫入距離−荷重曲線の結果を示す図表である。
【図5】処方12、13、14の配合のゼリーについてレオメーターにより測定した貫入距離−荷重曲線の結果を示す図表である。
【図6】各処方の配合のゼリーについて、界面活性剤の添加の有無又はゲル化剤の増減で比較したときの破断距離の比x’/ xの値を、その合格基準を1.0超と設定したときの合格ラインとともに図示した図表である。
【図7】各処方の配合のゼリーについて、界面活性剤の添加の有無又はゲル化剤の増減で比較したときのゲル強度の比 y’/ yの値を、その合格基準を1.25以下と設定したときの合格ラインとともに図示した図表である。
【図8】各処方の配合のゼリーについて、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度の値を、その合格基準を1.0N以下と設定したときの合格ラインとともに図示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の容器入りゼリー飲料は、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖、ゲル化剤、及びHLB値9以上の界面活性剤を含有し、そのゲル化剤の作用によってゲル化したゼリーを密閉可能な容器に充填して成るものである。
【0017】
本発明の容器入りゼリー飲料のゼリーには、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー中に10質量%以上含有せしめる。澱粉糖は、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー中に10〜40質量%含有せしめることが好ましく、10〜30質量%含有せしめることがより好ましい。澱粉糖の含有量が、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー中に10質量%未満であると、高カロリーのものとすることができないので好ましくない。40質量%を超えると、甘みが強くなりすぎたり、粘度が高くなって喉ごしが悪くなり、飲みにくくなってしまうので好ましくない。
【0018】
澱粉糖は、澱粉に酸や酵素を作用させて製造される糖であり、水飴、ブドウ糖、異性化液糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコールなどに分類されるが、本発明においては、デキストロース当量(DE)が35以下、好ましくは20以下のものを用いる。澱粉糖のデキストロース当量(DE)が35を超えると、高エネルギー補給用のカロリー源としたとき、甘味が強くなりすぎるので、好ましくない。
【0019】
デキストロース当量(DE)とは、澱粉糖類の加水分解度(糖化度)の指標となる単位であり、下式(1)によって求められる。
【0020】
【数1】

【0021】
直接還元糖のグルコース換算質量(還元糖量)を定量する方法としては、レインエイノン法、ベルトラン法、ウイルシュテッターシューデル法などが知られている。レインエイノン法は、硫酸銅溶液に加熱状態で糖液を加え、亜酸化銅を生じさせる反応に基づく方法であり、正確にCu2+量のわかった硫酸銅溶液にCu2+が完全に還元されるまで糖液を加えて、その糖液量から還元糖量を求める方法である。ベルトラン法も、レインエイノン法と同様に、硫酸銅溶液に加熱状態で糖液を加え、亜酸化銅を生じさせる反応に基づく方法であり、生じた亜酸化銅の定量に、モール法を利用する方法である。また、ウイルシュテッターシューデル法は、アルドースがアルカリ性ヨード溶液(NaIO)によって定量的に酸化されてアルドン酸となる反応を利用する方法であり、還元糖の酸化に消費されたI量から還元糖量を求める方法である。なお、本発明では、上記のようにDEの測定方法には種々の定量原理があることにかんがみ、ウイルシュテッターシューデル法で測定したDEを基準にするものとする。
【0022】
本発明において用いられる澱粉糖は、高エネルギー補給用のカロリー源となるものであればその種類・由来に特に制限はない。ただし、糖シラップのように単糖や二糖が比較的高い含有量で含まれている複合的多糖組成物であると、甘みを抑えることができないので好ましくない。よって、好ましくは、そのDEが35以下に調製された澱粉糖を用いる。これにより、澱粉糖自体の甘味を抑えることができ、他の甘味料を配合する余地が広がり、ゼリーの全体の甘味を調節しやすくなる。例えばマルトデキストリン、デキストリン、粉飴などが市販されているので、これらを用いることができる。
【0023】
本発明において用いられるゲル化剤は、食用のゼリーのゲル化剤に用いることができるものであればその種類・由来に特に制限はない。例えば、寒天、κ−カラギーナン、ローカストビーンガム、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガムなどが挙げられる。これらを複数併用して用いてもよい。
【0024】
また、ゲル化剤が種々のカチオンの存在下でゲル形成能を示す場合には、当該カチオンを含む塩を適宜配合すればよい。例えば、ジェランガムは、種々のカチオンの存在下でゲル形成能を示すが、特に二価カチオンの存在下でゲル化が促進される。二価カチオンの原料としては、例えば乳酸カルシウムを挙げることができる。また、κ−カラギーナンは、カチオン等の存在下でゲル形成能を示すが、特に一価カチオンの存在下でゲル化が促進される。一価カチオンの原料としては、例えば塩化カリウムを挙げることができる。
【0025】
本発明の容器入りゼリー飲料のゼリーには、HLB値9以上の界面活性剤を含有せしめる。その界面活性剤は、ゼリー中に0.01〜0.20質量%含有せしめることが好ましく、0.01〜0.10質量%含有せしめることがより好ましい。0.01質量%未満であると、ゼリーのゲル性状を改変する効果がほとんど得られない。また、0.20質量%を超えると特有の風味が出てくるので、好ましくない。
【0026】
なお、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance;親水親油バランス)値とは界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、0から20までの値をとる。0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、これを決定する方法には、アトラス法、グリフィン法、ディビス法、川上法等が知られている。本発明におけるHLB値の決定法は特に限定するものではないが一例を挙げると、アトラス法では、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)で定義することができる。
【0027】
本発明において用いられる界面活性剤は、HLB値9以上であり食用に用いることができるものであればその種類・由来に特に制限はない。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。なかでもショ糖脂肪酸エステルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。界面活性剤は複数種類を併用して用いてもよい。
【0028】
本発明の容器入りゼリー飲料は、通常当業者が行う公知の方法により、調製されたゼリーを容器に充填することによって、得ることができる。すなわち、例えば、上記ゲル化剤を含有するゲル化剤原料を加熱溶解したものに、上記澱粉糖を含有するベース原料を添加し、更に上記界面活性剤を添加して、加熱下に混合溶解して、これを容器に充填し冷却固化することにより得ることができる。界面活性剤はゲル化剤原料またはベース原料に予め混合しておき、そのゲル化剤原料とベース原料とを加熱下に混合溶解するようにしてもよい。また、後述するように他の原料を配合してもよく、その場合、同様に加熱下に混合溶解して、これを容器に充填し冷却固化すればよい。
【0029】
本発明の容器入りゼリー飲料は、密閉可能な容器にゼリーが充填され、容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食するものである。その容器の種類に特に制限はなく、スクリュータイプ、プルトップタイプ、クリンプタイプなど、その容器が備える密閉構造で、容器に充填したゼリーの飲食出口が密閉可能とされていればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、スチール缶容器などを例示できる。そして、例えば、容器を密閉した状態で振ることにより崩したゼリーを、口径(内径)φ20〜50mm程度の比較的狭い飲食出口を通じて直接飲食することや、容器を傾けての飲食出口を通じて別の容器に移してから飲食することなど、独特の喫食形態を楽しむことができる。
【0030】
上記のように容器内のゼリーのゲルを振り崩して飲食する形態に適したゲル性状を達成するため、本発明の容器入りゼリー飲料のゼリーは、レオメーターを用いて、直径10mmの円柱形プランジャーを、測定品温20℃としたゼリーに押し付けて、移動速度60mm/分で貫入させていったとき該プランジャーによるゼリーの破断点におけるゲル強度が1N以下とされている。これにより、ゼリーを充填した容器自体を上下及び/又は左右に5〜10回程度振る等、温和な外力をゼリーに付与するだけでゼリーのゲルを適度に崩壊させることができる。
【0031】
本発明の容器入りゼリー飲料においては、上記容器を密閉したときの内容空隙量に対して、ゼリーが70〜90%の割合で充填されていることが好ましく、70〜85%の割合で充填されていることがより好ましい。これによれば、ゼリーを充填した状態で空隙が十分に存在しているので、容器自体を上下及び/又は左右に振ることによってゼリーのゲルを振り崩すことがより容易となる。
【0032】
本発明の容器入りゼリー飲料においては、上記に説明したゲルの崩壊性とともに、食感に関しても特有のゲル性状のものとするため、そのゼリーは、上記レオメーターを用いた測定において、ゼリーが破断するまでに要した破断距離、及び上記ゲル強度が、ゼリーに前記界面活性剤を添加しなかった場合の破断距離及びゲル強度に対して、下記式(1)〜(3)を満たすように調製されている。なお、ゼリーに前記界面活性剤を添加しなかった場合とは、配合する原料やその割合など、界面活性剤を添加しない以外は全ての条件を同じくしてゼリーを調製した場合を意味する。
(x’/ x) > 1.00 …(1)
(y’/ y) ≦ 1.25 …(2)
y ≦ 1.00 (N)、且つ、y’≦ 1.00 (N) …(3)
(式中、x、yはそれぞれ界面活性剤を配合しないで調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表し、x’、y’はそれぞれ界面活性剤を配合して調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表す。)
上記式(1)〜(3)においてその式(1)は、(x’/ x) > 1.10の条件式であることがより好ましい。
【0033】
本発明においては、上記ゲル性状に支障を来さない範囲で、上記基本原料以外にも他の原料を配合してもよい。例えば、糖類、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、ミネラル、タンパク質、コラーゲンペプチド、果汁、香料、色素等が挙げられる。これらの他の原料は、水等の溶媒に予め溶解、分散させて用いることで、上記基本原料と加熱下に速やかに混合溶解させることができる。ただし、タンパク質及び/又は脂質の含有量は、以下の観点より0.5質量%以下とする。
【0034】
すなわち、高エネルギー補給用のゼリー飲料を、運動中のエネルギー補給を目的として摂取した場合、速やかにエネルギーとなる糖質をカロリー源とすることが求められており、他にも、高エネルギー補給用のゼリー飲料を、一般的にカーボローディングと呼ばれる、試合前に体内組織のグリコーゲン量を増加させる目的として摂取した場合、グリコーゲンとして蓄積されやすい糖質をカロリー源とすることが求められている。このためタンパク質及び/又は脂質の含有量を少なくする必要がある。
【0035】
上記糖類としては、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール等いずれの糖類も使用できる。これらの糖類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0036】
上記酸味料としては、特に限定はなく、種々のものを用いることができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの酸味料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0037】
上記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH、ビタミンK、ビタミンP、パントテン酸、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パラアミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。これらのビタミン類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0038】
上記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は単独又は2種類以上を使用できる。
【0039】
上記ミネラルとしては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらのミネラルは単独又は2種類以上を使用できる。
【0040】
上記タンパク質としては、乳由来のたんぱく質であるホエイたんぱく質分離物(WPI)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、大豆由来のたんぱく質である、分離大豆たんぱく質(SPI)、あるいはそれらの加水分解物等が挙げられる。これらを単独又は2種類以上を使用できる。
【0041】
以上のようにして得られる、本発明の容器入りゼリー飲料は、必要に応じて殺菌処理等が行なわれ、流通、販売される。
【0042】
殺菌方法としては、加熱殺菌しながら容器に充填する方法、容器に充填密封後、加熱殺菌する方法、容器に充填する前に加熱殺菌し、その後無菌条件下で充填する無菌充填等いずれの方法も可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(試験例1)
下記表1に示す処方1〜処方21の配合によるゼリーを調製し、これらのゼリーについてレオメーターを用いて圧縮試験を行い、そのゲル性状を調べた。
【0045】
【表1】

【0046】
[ゼリー]
ゼリーの調製は以下のとおり行った。
【0047】
上記表1に示すゲル化剤原料、ベース原料、界面活性剤を混合し、水で全量を100質量部に補正してゼリー原液とした。95℃達温後に、その80gを100mL容量のプラスチック製円筒容器(直径約40mm)に充填し、蓋をして密閉した後、20℃10分の水冷処理で冷却した。
【0048】
[試験]
レオメーターによる圧縮試験は以下のようにして行った。
【0049】
装置としてサン科学製レオメーター「CR−500DX」を使用し、円柱形プランジャー(直径10mm、高さ10mm以上)を、測定品温20℃としたゼリーの表面に上方から垂直方向に押し付けて、移動速度60mm/分で貫入させていったときのその貫入開始から貫入距離10mmまでにわたるプランジャーにかかる荷重を測定し、貫入距離−荷重曲線を得た。また、プランジャーによる破断点における荷重をゼリーのゲル強度(N)とし、ゼリーが破断するまでに要した距離を破断距離(mm)とした。測定は同一サンプルにつき3回行い、その測定値を平均化した。
【0050】
[評価1]
下記表2上欄に示すように、処方1のゼリーは、ゲル化剤として寒天を用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方2のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方1と同じ配合のゼリーである。これらについて、それぞれの貫入距離−荷重曲線の結果を図1に示す。また、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方1を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表2下欄に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
図1に示すように、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した処方2のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、界面活性剤を配合しない処方1に比べて、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値をほとんど変えずに(y軸)、同じ荷重がかかる地点におけるプランジャーの貫入距離がより長くなって(x軸)、全体の山形状がx軸方向にシフトした形状を示した。そして、処方1を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.22であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.00であった(表2下欄)。したがって、ゲル化剤として寒天を用いたゼリーにおいて、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度を増加させずに破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られた。
【0053】
[評価2]
下記表3上欄に示すように、処方3のゼリーは、ゲル化剤としてκ−カラギーナン及びローカストビーンガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方4のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方3と同じ配合のゼリーであり、処方5のゼリーは、ゲル化剤の配合量を増量した以外は処方3と同じ配合のゼリーである。これらについて、それぞれの貫入距離−荷重曲線の結果を図2に示す。また、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方3を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表3下欄に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
図2に示すように、ゲル化剤としてκ−カラギーナン及びローカストビーンガムの配合量を増量した処方5のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、処方3に比べて、プランジャーの貫入距離が同じ地点における荷重の値が増大し(y軸)、ゼリーが破断するまでに要する破断距離が長くなって(x軸)、全体の山形状を大きくした形状を示した。そして、処方3を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.19であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.72であった(表3下欄)。このように、ゲル化剤の配合量を増量すると、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、破断距離が長くなるとともにゲル強度も顕著に増大してしまった。
【0056】
これに対して、図2に示すように、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した処方4のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値が若干増加しつつ(y軸)、同じ荷重がかかる地点におけるプランジャーの貫入距離がより長くなって(x軸)、全体の山形状がx軸方向にシフトした形状を示した。そして、処方3を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.16であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.09であった(表3下欄)。したがって、ゲル化剤としてκ−カラギーナン及びローカストビーンガムを用いたゼリーにおいて、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度をほとんど増加させずに破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られることが明らかとなった。
【0057】
[評価3]
下記表4上欄に示すように、処方6のゼリーは、ゲル化剤としてκ−カラギーナンとローカストビーンガムと脱アシルジェランガムとを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方7のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方6と同じ配合のゼリーであり、処方8のゼリーは、ゲル化剤の配合量を増量した以外は処方6と同じ配合のゼリーである。これらについて、それぞれの貫入距離−荷重曲線の結果を図3に示す。また、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方6を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表4下欄に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
図3に示すように、ゲル化剤としてκ−カラギーナンとローカストビーンガムと脱アシルジェランガムとの配合量を増量した処方8のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、処方6に比べて、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値が顕著に増加し(y軸)、プランジャーの貫入距離もより長くなって(x軸)、全体の山形状を大きくした形状を示した。そして、処方6を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.23であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.30であった。このように、ゼリーに配合するゲル化剤の量を増やすと、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、破断距離が長くなるとともにゲル強度も顕著に増大してしまった。
【0060】
これに対して、図3に示すように、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した処方7のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、界面活性剤を配合しない処方6に比べて、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値が若干増加しつつ(y軸)、同じ荷重がかかる地点におけるプランジャーの貫入距離がより長くなって(x軸)、全体の山形状がx軸方向にシフトした形状を示した。そして、処方6を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.26であり、ゲル強度の比y’/ yの値は1.06であった。したがって、ゲル化剤としてκ−カラギーナンとローカストビーンガムと脱アシルジェランガムを用いたゼリーにおいて、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度をほとんど増加させずに破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られることが明らかとなった。
【0061】
[評価4]
下記表5上欄に示すように、処方9のゼリーは、ゲル化剤として脱アシルジェランガム及びネイティブジェランガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方10のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方9と同じ配合のゼリーであり、処方11のゼリーは、ゲル化剤の配合量を増量した以外は処方9と同じ配合のゼリーである。これらについて、それぞれの貫入距離−荷重曲線の結果を図4に示す。また、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方9を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表5下欄に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
図4に示すように、ゲル化剤として脱アシルジェランガム及びネイティブジェランガムの配合量を増量した処方11のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、処方9に比べて、ゼリーが破断するまでに要する破断距離がほとんど変わらずに(x軸)、プランジャーの貫入距離が同じ地点におけるプランジャーにかかる荷重の値のみが増大し(y軸)、全体の山形状を大きくした形状を示した。そして、処方9を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.01であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.53であった。このように、ゼリーに配合するゲル化剤として脱アシルジェランガム及びネイティブジェランガムを用いその量を増やすと、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、破断距離はほとんど変わらずゲル強度のみが顕著に増大してしまった。
【0064】
これに対して、図4に示すように、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した処方10のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、界面活性剤を配合しない処方9に比べて、ゲル強度が処方11ほどではないが増大し破断距離も長くなった形状をしていた。すなわち、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値が処方11ほどではないが増加しつつ(y軸)、同じ荷重がかかる地点におけるプランジャーの貫入距離がより長くなって(x軸)、全体の山形状をx軸方向にシフトし且つ若干大きくした形状を示した。そして、処方9を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.29であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.23であった。したがって、ゲル化剤として脱アシルジェランガム及びネイティブジェランガムを用いたゼリーにおいて、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度を抑えつつ破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られることが明らかとなった。
【0065】
[評価5]
下記表6上欄に示すように、処方12のゼリーは、ゲル化剤として寒天、グルコマンナン及びキサンタンガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方13のゼリーは、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル (HLB:11)を配合した以外は処方12と同じ配合のゼリーであり、処方14のゼリーは、ゲル化剤の配合量を増量した以外は処方12と同じ配合のゼリーである。これらについて、それぞれの貫入距離−荷重曲線の結果を図5に示す。また、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方12を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表6下欄に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
図5に示すように、ゲル化剤として寒天、グルコマンナン及びキサンタンガムの配合量を増量した処方14のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、処方12に比べて、ゼリーが破断するまでに要する破断距離がほとんど変わらずに(x軸)、プランジャーの貫入距離が同じ地点におけるプランジャーにかかる荷重の値のみが増大し(y軸)、全体の山形状を大きくした形状を示した。そして、処方12を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.05であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.52であった。このように、ゼリーに配合するゲル化剤として寒天、グルコマンナン及びキサンタンガムを用いその量を増やすと、ゼリーの硬さや粘弾性等のゲル性状の指標となるゲル強度と破断距離のうち、破断距離はほとんど変わらずゲル強度のみが顕著に増大してしまった。
【0068】
これに対して、図5に示すように、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル (HLB:11)を配合した処方13のゼリーの貫入距離−荷重曲線は、界面活性剤を配合しない処方12に比べて、ゲル強度が処方14ほどではないが増大し破断距離も長くなった形状をしていた。すなわち、ゼリーの破断点におけるプランジャーにかかる荷重の値が処方14ほどではないが増加しつつ(y軸)、同じ荷重がかかる地点におけるプランジャーの貫入距離がより長くなって(x軸)、全体の山形状をx軸方向にシフトし且つ若干大きくした形状を示した。そして、処方12を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値は1.34であり、ゲル強度の比 y’/ yの値は1.18であった。したがって、ゲル化剤として寒天、グルコマンナン及びキサンタンガムを用いたゼリーにおいて、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル (HLB:11)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度を抑えつつ破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られることが明らかとなった。
【0069】
[評価6]
下記表7上欄に示すように、処方9のゼリーは、ゲル化剤として脱アシルジェランガム及びネイティブジェランガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方15のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:9)を配合した以外は処方9と同じ配合のゼリーであり、処方16のゼリーは、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:11)を配合した以外は処方9と同じ配合のゼリーであり、処方17のゼリーは、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:10)を配合した以外は処方9と同じ配合のゼリーである。これらについて、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方9を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表7下欄に示す。
【0070】
【表7】

【0071】
その結果、上記評価4に示した、処方9に対する処方10の結果と同様に、処方15のゼリーでは界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:9)を、処方16のゼリーでは界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:11)を、処方17のゼリーでは界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:10)を配合することによって、ゼリーの硬さや粘弾性等の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度を抑えつつ破断距離を長くした、特有のゲル性状のゼリーが得られることが明らかとなった。
【0072】
[評価7]
下記表8上欄に示すように、処方18のゼリーは、ゲル化剤としてκ−カラギーナンとローカストビーンガムと脱アシルジェランガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方19のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方18と同じ配合のゼリーである。これらについて、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方18を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表8下欄に示す。
【0073】
【表8】

【0074】
また、下記表9上欄に示すように、処方20のゼリーは、ゲル化剤としてκ−カラギーナン及びローカストビーンガムを用い界面活性剤を配合しないゼリーであり、処方21のゼリーは、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル (HLB:15)を配合した以外は処方20と同じ配合のゼリーである。これらについて、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度(N)及びゼリーが破断するまでに要した破断距離(mm)の結果、並びに処方20を基準にして比較した破断距離の比x’/ xの値及びゲル強度の比 y’/ yの値を下記表9下欄に示す。
【0075】
【表9】

【0076】
その結果、上記評価1〜4に示した、処方1に対する処方2、処方3に対する処方4、処方6に対する処方7、又は処方9に対する処方10の結果と同様に、基本配合である処方18又は処方20に対して、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB:15)を配合した処方19又は処方21のゼリーは、ゼリーの硬さや粘弾性等の指標となるゲル強度と破断距離のうち、そのゲル強度を抑えつつ破断距離を長くしたゲル性状のゼリーが得られた。ただし、後述する図8にも示すように、処方19ではゲル化剤の含有量が処方7の2倍量であり、処方21ではゲル化剤の含有量が処方4の2倍量であり、いずれもそのゲル強度は1.0Nを超えていた。
【0077】
[評価8]
上記評価1〜7を、任意に定めた合格基準とともに図にまとめた。
【0078】
すなわち、図6には、処方2、4、5、7、8、10、11、13、14、15、16、17、19、21について、界面活性剤の添加の有無、又はゲル化剤の増減で比較したときの破断距離の比x’/ xの値を、その合格基準を1.0超と設定したときの合格ラインとともに図示した。
【0079】
また、図7には、処方2、4、5、7、8、10、11、13、14、15、16、17、19、21について、界面活性剤の添加の有無、又はゲル化剤の増減で比較したときのゲル強度の比 y’/ yの値を、その合格基準を1.25以下と設定したときの合格ラインとともに図示した。
【0080】
また、図8には、処方1〜21について、プランジャーによる破断点におけるゼリーのゲル強度の値を、その合格基準を1.0N以下と設定したときの合格ラインとともに図示した。
【0081】
その結果、いずれもゲル強度1.0N超えないゼリーの基本配合に界面活性剤を追加的に配合した、処方2、4、7、10、13、15〜17のゼリーが上記合格基準を満たしていた。
【0082】
(試験例2)
試験例1と同じ処方1〜処方21の配合によるゼリーについて、それらをボトル缶に充填したものを製造し、(1)缶を振って崩す際の崩壊性と、(2)食感とを評価した。
【0083】
[ボトル缶入りゼリー]
ボトル缶入りゼリーの製造は以下のとおり行った。
【0084】
試験例1と同様にして処方1〜処方21の配合によるゼリー原液を調製し、95℃達温後に、その180gを200ml容量、飲み口の口径φ28mmの金属製ボトル缶「アルミDI缶(53TD28口径)」(武内プレス工業株式会社製)に充填し、蓋をして30秒の転倒殺菌の後、缶口を上方に向けた状態で冷水によるシャワー冷却を行った。冷却処理後は、20℃の恒温室にて一晩静置した。ボトル缶入りゼリーは、容器の蓋を閉めたときの内容空隙量に対するゼリーの充填率は約75%であった。
【0085】
[試験]
下記表10の基準に従い、(1)缶を振って崩す際の崩壊性と、(2)食感とを評価した。
【0086】
【表10】

【0087】
なお、崩壊性の評価は、同一人によって、缶を振って崩す際の振り方が各処方間で同じになるように心がけてもらい、振幅が缶の縦方向に10〜15cm、速度が毎秒2〜3往復になるようにして実施した。また、食感についての評価は、崩壊性の評価を行ったもので実施した。その結果を下記表11に示す。
【0088】
【表11】

【0089】
その結果、処方1に対する処方2、処方3に対する処方4、処方6に対する処方7、処方12に対する処方13、又は処方9に対する処方10、15〜17の結果にみられるように、ゼリーの基本配合に界面活性剤を追加的に配合することによって、崩壊性、食感の向上の効果が得られた。
【0090】
一方、処方3に対する処方5、処方6に対する処方8、処方12に対する処方14、又は処方9に対する処方11の結果にみられるように、ゼリーの基本配合にゲル化剤を増量したものは、食感こそ良好であったが、崩壊性が悪かった。また、処方18〜21の結果にみられるように、ゲル強度が1.0Nを超えものは、崩壊性が著しく悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な容器にゼリーが充填され、該容器を振ることにより、該容器内のゼリーのゲルを崩して飲食するものである容器入りゼリー飲料であって、
前記ゼリー飲料のゼリーは、
デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖、ゲル化剤、及びHLB値9以上の界面活性剤を含有し、
前記澱粉糖の含有量が該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上であり、タンパク質及び/又は脂質の含有量が0.5質量%以下であり、
レオメーターを用いて、直径10mmの円柱形プランジャーを、測定品温20℃としたゼリーに押し付けて、移動速度60mm/分で貫入させていったとき該プランジャーによるゼリーの破断点におけるゲル強度、及び該レオメーターを用いた測定においてゼリーが破断するまでに要した破断距離は、前記ゼリー飲料のゼリーに前記界面活性剤を添加しなかった場合の破断距離及びゲル強度に対して、下記式(1)〜(3)を満たす、
(x’/ x) > 1.00 …(1)
(y’/ y) ≦ 1.25 …(2)
y ≦ 1.00 (N)、且つ、y’≦ 1.00 (N) …(3)
(式中、x、yはそれぞれ界面活性剤を配合しないで調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表し、x’、y’はそれぞれ界面活性剤を配合して調製したときのゼリーの破断距離、ゲル強度を表す。)
ものであることを特徴とする容器入りゼリー飲料。
【請求項2】
前記界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項3】
前記ゲル化剤は、寒天、κ−カラギーナン、ローカストビーンガム、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、及びキサンタンガムからなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項4】
前記界面活性剤の含有量が0.01〜0.20質量%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の容器入りゼリー飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223105(P2012−223105A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91472(P2011−91472)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】