説明

容器入り水系組成物

【課題】アルカリ金属塩等を前記容器入り水系組成物に配合した場合であっても、優れた水分蒸散抑制効果を維持し、経時安定性に優れた容器入り水系組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(D):
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)水溶性高分子
(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)
(D)水
を含有する容器入り水系組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水相から水分蒸散が抑制された安定性の良好な容器入り水系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、医薬品、医薬部外品、食品等の分野においては、基剤として水を含有する組成物が数多く存在し、そのような水系組成物では、組成物中から水が蒸発するのを防ぐため、多くの場合、組成物は密閉容器に保存されている。しかしながら、日々の使用による蓋の開放等により、水系組成物から徐々に水が蒸発していき、物性の変化や、変色を生ずる場合がある。また、スプレー式容器、ポンプ式容器などでは、吐出させた内容物が吐出口に残存し、吐出口付近で乾燥してしまうため、吐出口に付着した内容物が、変色・変臭を生じ、使用感を悪化させるという問題があった。さらに、内容物が乾燥固化してしまい、目詰まりを生じ、場合によっては吐出不能となる問題もあった。
【0003】
かかる、内容物の固化を抑制し、吐出容器の目詰まりを防止するため、25℃以下で固形状の物質及び/又は皮膜形成高分子から選ばれる1種以上に対し、不揮発性の液状油を特定比率で配合することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、内容物の固化を抑制するためには、不揮発性油剤を多く配合する必要があり、剤形に制限があった。また、不揮発性油剤を特定比率で配合しても内容物の固化が生じてしまい、目詰まりを抑制する効果は十分でなかった。
【0004】
一方、エチレンオキシドの平均付加数が5以上のポリオキシエチレンベヘニルエーテルを乳化組成物に配合することにより、高濃度のアルコールを配合した際の乳化系の経時安定性を向上させることが提案されている(特許文献2、3参照)が、これは乳化系の硬度や粘度の低下を防止しようとするものであり、水に対する作用については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−321321号公報
【特許文献2】特開平1−266844号公報
【特許文献3】特表平11−508253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者は、容器入り水系組成物の水分蒸散を抑制することで内容物の固化や性状変化を抑制し、経時安定性に優れ、スプレー式容器、ポンプ式容器に用いた際にでも、吐出口に付着した内容物の乾燥を抑制し、目詰まりを防止することができる容器入り水系組成物を開発すべく種々検討した結果、水溶性高分子とポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルとを組み合せて用いた場合に水系組成物からの水分蒸散を顕著に抑制でき、その効果はポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルとして、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24であり、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4のものを用いた場合に特に優れていることを見出し、特許出願した(特願2010−102160)。
ところが、斯かる水系組成物を化粧料や医薬部外品、医薬品等に応用すべく、種々の生理作用や薬理作用等を有する水溶性成分の配合を検討し、種々のアルカリ金属塩等を配合したところ、前記水分蒸散抑制効果が著しく低下してしまうという問題が生じることが判明した。
従って、本発明の課題は、アルカリ金属塩等を前記容器入り水系組成物に配合した場合であっても、優れた水分蒸散抑制効果を維持し、経時安定性に優れた容器入り水系組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため検討した結果、水系組成物に水溶性高分子と、前記のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルに加えて、エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤を配合することにより、アルカリ金属塩等の水分蒸散抑制阻害物質を配合した場合においても、優れた水分蒸散抑効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D):
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)水溶性高分子
(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)
(D)水
を含有する容器入り水系組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)水溶性高分子
(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)
を有効成分とする水系組成物からの水分蒸散抑制剤を提供するものである。
【0010】
さらに本発明は、水系組成物中に、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、(B)水溶性高分子、及び(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)を含有させることを特徴とする水系組成物からの水分蒸散抑制方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アルカリ金属塩等の水分蒸散抑制阻害物質を配合した場合であっても、水分蒸散抑制効果が高く、長期間保存しても分離等の外観上の変化を抑制できる、経時安定性に優れた水系組成物を提供する。また、少量の前記(A)成分(以下ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)、POEアルキルエーテルということもある)、エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤の添加により、高い水分蒸散抑制効果が発現、維持されることから、剤形の制限がなく、使用感にも影響を与えることがない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における水系組成物とは、水相が連続相である組成物であって、水溶性成分を含む水溶液組成物、連続相に水を含む水中油型乳化組成物、W/O/W型乳化組成物を包含するものである。
本発明における水相とは、水を含有する相である。
【0013】
本発明における水分蒸散抑制阻害物質とは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)、水溶性高分子、水を含有する水系組成物に添加することで、水分蒸散速度が大幅に上がる物質である。例えば、実施例記載の試験方法(試験1)にて、表1の組成物の水分蒸散速度が、試験物質を添加していない表1の組成物の水分蒸散速度に対して、10mg/h以上上がる物質であれば、本発明における水分蒸散抑制阻害物質と言える。
【0014】
【表1】

【0015】
特に、周期表1族の金属(アルカリ金属)、周期表2族の金属、及びこれら金属の水溶性化合物においては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)及び水溶性高分子を含有する水系組成物に添加することで、著しく水分蒸散抑制効果が低下する現象が見られる。
【0016】
特に医薬品、化粧品分野においては、人体への適応性を考慮すると、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びこれらの水溶性化合物に対する水分蒸散抑制阻害の影響が重要となる。具体的には、水溶性有機酸ナトリウム塩、水溶性無機酸ナトリウム塩、ハロゲン化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水溶性有機酸カリウム塩、水溶性無機酸カリウム塩、ハロゲン化カリウム、水酸化カリウム、水溶性有機酸マグネシウム塩、水溶性無機酸マグネシウム塩、ハロゲン化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水溶性有機酸カルシウム塩、水溶性無機酸カルシウム塩、ハロゲン化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0017】
より具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸ナトリウム、グリチルレチン酸二ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸硫酸エステル二カリウム、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸三カリウム、エデト酸四カリウム、エデト酸二カリウムカルシウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸二カリウム、グリチルリチン酸カリウム、グリチルレチン酸二カリウム、グルタミン酸カリウム、コハク酸二カリウム、水酸化カリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、デヒドロ酢酸カリウム、メタケイ酸カリウム、メタリン酸カリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四カリウム、ピロリン酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、チオグリコール酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、チオグリコール酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等、これらの物質を1種又は2種以上含有するものは水分蒸散抑制阻害物質として挙げられる。
【0018】
これら水分蒸散抑制阻害物質の水系組成物中の含有量は特に限定されないが、各種薬効、作用を考慮すれば、0.0001質量%以上含有されておれば良く、好ましくは0.0001〜10質量%含有されていれば、十分な各種薬効、作用が得られる。
【0019】
本発明に用いるポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4である。
【0020】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、その構造を問わないが、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは直鎖のアルキル基である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は20〜24であり、好ましくは炭素数が21〜23であり、最も好適には炭素数が22のベヘニル基である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20未満の場合には、水分蒸散抑制効果が低いため、好ましくない。また、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が24を超える場合には、水相に溶解し難くなるため、製剤上好ましくない。
【0021】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のエチレンオキシドの平均付加モル数は、1.5〜4の範囲であり、好ましくは1.5〜3であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。平均付加モル数が1.5未満の場合には結晶性が高く、水相に溶解し難いため、好ましくない。また、平均付加モル数が4を超える場合は、水分蒸散抑制効果が著しく低下するため、好ましくない。一般的に入手可能なポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)は、エチレンオキシドの付加モル数に関しては、所望の重合度を中心として極めて幅広く分布した混合物であるが、平均付加モル数が上記範囲内であることが本発明においては重要である。
【0022】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)として、主としてポリオキシエチレン(2)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(3)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(4)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(3)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(4)カルナービルエーテル等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテルが挙げられる。尚、用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテルの平均付加モル数が上記範囲内であれば、これら例示されたポリオキシエチレンアルキルエーテル以外のものを併用することも可能である。
【0023】
本発明の水系組成物中のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の含有量は、組成物全量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。当該範囲内であれば、水分蒸散抑制効果が高く、水相へ容易に配合可能であり、好ましい。
【0024】
本発明の水系組成物には、(B)水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を水相中に安定に分散保持させ、水分蒸散抑制効果に寄与する。本発明に用いる水溶性高分子としては、水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子等が挙げられる。
【0025】
カチオン性高分子としては、具体的には、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性ポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体カチオン性ポリマー、または第4級窒素含有セルロースエーテル、またはポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン及び牛脂脂肪酸より得られるタロイルアミンの縮合生成物、またはビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物等であり、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性高分子としては、マーコート100 (Merquat100)という商品名で米国メルク社(Merck &Co.Inc.) から販売されているものなどを挙げることができる。ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体型カチオン性ポリマーとしてはマーコート550(Merquat 550)[米国メルク社(Merquat &Co.,Inc.)]などを挙げることができる。ポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン及びタロイルアミンもしくは、ココイルアミンの縮合生成物の例としては、ポリコートH(Polyquat H)という商品名で、西独ヘンケル社(Henkel International Co.)から販売されているものなどを挙げることができる。第4級窒素含有セルロースは、ポリマーJR-400(Polymer JR-400)、ポリマーJR-125(Polymer JR-125)ポリマーJR-30M(Polymer JR-30M)という商品名で、米国ユニオンカーバイト社(Union Carbide Corp. )から販売されているものなどである。ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物はガフコート755 (Gafquat 755 )、ガフコート734 (Gafquat734) という商品名で米国GAF社(GAFCorp. )から販売されているもの等である。
【0026】
アニオン性高分子としては、具体的には、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カラゲーナン、キサンタンガム、ポリスチレンスルホネート、寒天、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン、アルギネート塩、同じくポリ(アクリル酸)およびアクリル酸、メタクリル酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩などのアクリルまたメタクリル酸誘導体が挙げられる。
【0027】
非イオン性高分子としては、具体的には、セルロースエーテル(ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロール、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、プロピレングリコールアルギネート、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルグアーゴム、ローカストビーンゴム、アミロース、ヒドロキシエチルアミロース、ヒアルロン酸及びそのアルカリ金属塩、澱粉および澱粉誘導体およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0028】
両性高分子又は双極性高分子として、具体的には、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリクオタニウム−47、ポリクオタニウム−43などが挙げられる。
【0029】
これらの水溶性高分子は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。様々な剤形への応用のしやすさから、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ヒアルロン酸及びそのアルカリ金属塩が好ましく挙げられる。
【0030】
本発明で用いる水溶性高分子の含有量は、組成物全量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%である。当該範囲内であれば、製剤の安定性が保たれ、優れた水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0031】
本発明で用いる(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を除く)としては、エーテル型とエステル型が挙げられ、エーテル型としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、エステル型としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールを挙げることができる。これらのうち、使用感、安全性の点から、エステル型が好ましく、特にポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステルが好ましい。
【0032】
エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイドの平均付加モル数は、10以上が好ましく、より好ましくは20〜200、さらに好ましくは30〜140、最も好ましくは40〜120である。当該範囲内であれば、皮膚刺激性が少なく、優れた水分蒸散抑制効果が得られ、経時安定性も高く好ましい。
【0033】
好ましいエチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(40)グリセリルトリオレエート、ポリオキシエチレン(50)グリセリルトリオレエート、ポリオキシエチレン(60)グリセリルトリオレエート、ポリオキシエチレン(45)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(50)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(75)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(90)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(100)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(120)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(40)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(40)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(60)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(120)トリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(40)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(75)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油モノラウレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油モノラウレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油モノラウレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油モノステアレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油モノステアレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油トリステステアレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油トリステステアレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油トリステステアレートなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明で用いる(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤の含有量は、組成物全量に対し、0.001〜15質量%が好ましく、0.005〜10質量%がより好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましい。当該範囲内であれば、皮膚刺激性が低く、良好な水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0035】
エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤と水分蒸散抑制阻害物質の含有質量比は、1:20〜50:1が好ましく、より好ましくは1:12〜20:1、さらに好ましくは1:4〜15:1である。当該範囲内であれば、良好な水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0036】
本発明の組成物には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の水相への溶解性を高めるため、多価アルコールをさらに併用することが好ましい。好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量1000未満)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量:1000未満)、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等を挙げることができる。
【0037】
多価アルコールの含有量は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の含有量に対し、質量比で0.5〜50倍、より好ましくは1〜35倍、さらに1〜20倍併用することが好ましい。当該範囲内であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の溶解性が良好で、良好な水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、前記の必須成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、高級アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ステロール類、ステロール脂肪酸エステル類、炭化水素類、油脂類、シリコーンオイル、保湿剤、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料等を配合することができる。
【0039】
本発明の水系組成物中の水分量は、水溶液又は連続相が水相のO/W系やW/O/W系の乳化系を形成できる量であればよく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
本発明の水系組成物は、製剤の安定性が保たれていれば、粘度(25℃)が100mPa・s以下の低粘度の液状であっても、高い水分蒸散抑制効果が得られる。
本発明の水系組成物の剤形は、水相が連続相であれば、特に制限されず、エマルション、ジェル状、スプレー状、ムース状等のものとすることができる。
【0040】
本発明の水系組成物の用途としては、特に制限がなく、化粧料、医薬品、医薬部外品、食品(健康食品を含む)等が好適に挙げられる。具体的には、シャンプー、リンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料、洗顔料、クレンジング化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料として好適に利用できる。
【0041】
本発明で用いられる容器としては、ある程度の密閉性を有する容器であり、蓋付き瓶、ジャーボトル、チューブ、スプレー容器、ポンプ式容器、ポンプ式フォーマー容器など、上記好適な用途に利用される容器であれば、特に制限されない。これら容器に、前記水系組成物を充填して、用いることができる。
【0042】
特に、スプレー容器、ポンプ式容器、ポンプ式フォーマ容器等の吐出容器に本発明の水系組成物を用いた場合、固化しやすい固体脂質や粉末を含有していても、吐出口での変質(変色、変臭)や目詰まりを防止でき、好適に利用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。尚、各成分の量は、質量%である。
【0044】
〔試験1〕 ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の水分蒸散抑制効果
下記表2に示す成分の試料1〜14を開口面積13.85cm2のシャーレに5g添加し、湿度30%、温度30℃下で1、3、5、7、12、18、24時間経過後の試料の重量変化を測定した。その重量変化の傾きを最小二乗法により算出される(nX+m;Xは時間h)のnを水分蒸散速度(単位:mg/h)とし、絶対値としてプロットした。各試料計3回の平均値を求めた。尚、水分蒸散速度が小さいほど、蒸散を抑制したことになる。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
試験1より、平均付加モル数が5のポリオキシエチレンベヘニルエーテルをはじめ、他のポリオキシエチレンアルキルエーテルに対し、平均付加モル数が1.5〜4、特に2のポリオキシエチレンベヘニルエーテルが優れた水分蒸散性を示すことが分かる。
【0048】
〔試験2〕水分蒸散抑制効果
下記表4及び5に示す成分の実施例1〜5、比較例1〜7及びコントロールを試験1と同様にして水分蒸散速度を測定した。また、コントロール(表5のコントロール)に対する水分蒸散抑制率を下記のように定義した。
【0049】
水分蒸散抑制率(%)={1―(実施例又は比較例での水分蒸散速度)/(コントロールでの水分蒸散速度)}×100
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
(製造方法)
A.成分(1)、(2)と成分(14)とを均一に混合する。
B.成分Aに成分(3)〜(13)、(15)を徐々に加え、均一に混合する。
【0053】
試験2より、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)及び水溶性高分子の併用により(比較例7)、コントロール(122mg/h)に比べて水分蒸散が抑制される(41mg/h)ことがわかる。これに対し、アルカリ金属塩などを添加することにより、その水分蒸散抑制効果は低下する(比較例1〜6)。これに対し、エチレンオキサイド基を有するノニオン界面活性剤を含有させることで、水分蒸散抑制阻害物質による水分蒸散抑制効果の低下が、水分蒸散抑制阻害物質を含有していないレベルまで改善されることが分かる。
【0054】
〔試験3〕 エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤の水分蒸散抑制効果の濃度依存性
下記表6に示す実施例6〜11、比較例8、9を、試験1及び2と同様の条件で試料の重量変化を測定し、水分蒸散速度、水分蒸散抑制率を求めた。
【0055】
【表6】

【0056】
(製造方法)
A.成分(1)と成分(6)とを均一に混合する。
B.成分Aに成分(2)〜(5)、(7)、(8)を徐々に加え、均一に混合する。
【0057】
試験3より、エチレンオキサイド基を有するPOE硬化ヒマシ油を、水分蒸散抑制阻害物質であるグリチルリチン酸カリウムに対し、10分の1程度の配合量で水分蒸散抑制効果が高まり、5分の1程度の配合量で、水分蒸散抑制阻害物質を含有していないレベルまで改善されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D):
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)水溶性高分子
(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)
(D)水
を含有する容器入り水系組成物。
【請求項2】
成分(A)ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルが、エチレンオキサイドの平均付加モル数1.5〜3のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルである請求項1に記載の容器入り組成物。
【請求項3】
成分(C)ノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイドの平均付加モル数が10以上である請求項1又は2に記載の容器入り組成物。
【請求項4】
成分(B)水溶性高分子が、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリルアミド及び(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の容器入り水系組成物。
【請求項5】
次の成分(A)〜(C):
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)水溶性高分子
(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)
を有効成分とする水系組成物からの水分蒸散抑制剤。
【請求項6】
水系組成物中に、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、(B)水溶性高分子、及び(C)エチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤(但し、(A)成分は除く)を含有させることを特徴とする水系組成物からの水分蒸散抑制方法。

【公開番号】特開2011−246398(P2011−246398A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121631(P2010−121631)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】