説明

容器内のガスを非侵入的に評価する装置および方法

【課題】
密封容器(103)を評価する方法および装置を提供する。
【解決手段】
上記容器の外部から上記容器に向けて狭帯域レーザ光源(101)から光が放射される。上記容器内で散乱された上記光の吸収信号(105)が測定され、上記光が散乱されて上記密封容器内を伝わるとき上記吸収は上記少なくとも一つのガスによって生じる。測定は上記容器の外部で行なわれるため、上記評価は上記容器に関して非侵入的である。上記測定された吸収信号に基づいて上記密封容器内の所定の予想されるガス組成および/または上記少なくとも一つのガスの濃度からの偏差が存在するかどうかが判断される。それゆえ、上記ガスに対する上記容器の密封性が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、容器を評価する分野に関し、特に、大量のガスを含む密封容器など、容器内のガス組成を評価する分野に関する。さらに詳しくは、本発明は食品容器内のガスの非侵入的な評価に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、生鮮製品を好む消費者の傾向は、冷蔵食品が冷凍食品および常温食品と次第に競合することにつながっている。生鮮食品や冷蔵食品は、比較的繊細であり、それゆえ、購入して食する食品が安全であると信頼できるものであって欲しいとの食品消費者からの要望を高めている。したがって、常温または冷凍食品から冷蔵食品への移行における一つの重要な問題は、産業界およびマスコミでしばしば強調される、不安が高まっているとして認識される安全性および品質の問題である。
【0003】
生鮮冷蔵食品に対する要望は、年間を通じた生鮮製品の流通の必要性を生み出している。生鮮食品および冷蔵食品は、比較的短い有効期間に起因するより迅速な流通と、消費の時点における安全性および品質の問題に起因するより優れた製品および容器の完全性の両方を要求する。有効期間に関する二つの最も重要な要因は、時間と温度である。食品で起こる劣化の変化の多くは、温度に依存し、低温ではより遅い速度で起こる。時間および温度のパラメータに加えて、食品および包装環境における酸素の自然な存在は食品の化学分解および微生物による腐敗を速める。したがって、従来の包装方法は、多くの場合、酸素以外のガスが容器ヘッドスペースに充填されるより新しい技法に置き換えられる。調整気相包装(MAP)は、酸素含有量を減らして包装が含む製品の有効期間を延ばすために採用されるこのような技法の一例である。
【0004】
食品には劣化の側面があるため、食品の取扱い、保存、および包装は、一般市民の大きな関心と不安の重要な側面になっている。MAP技術は、理論的に、冷蔵製品または生鮮製品に対する長期にわたる有効期間の新たな消費者の要求を満たし、またMAP包装概念は食品包装市場における重要性を増している。MAPの主要な便益は、製品の無駄が減ることによって間接費が削減されことであると主張されている。しかし、品質および安全性の不安が増すにつれて、消費に対するその品質および適合性を確保するために包装食品の状態を評価しうることの重要性も重視されなければならない。多くの検知技術が開発されているが、それらの多くは包装サンプルを破壊し、それによって、製品と容器の両方に無駄が生じる。たとえば、ガスクロマトグラフィーおよびその他のサンプリング法では、ガスを採取するために容器に孔を開ける必要があるが、包装の完全性(完全な状態)を維持してサンプルの無駄を減らすために、測定法が本来は非侵入的(非侵入型)であることが好ましいはずである。
【0005】
調整気相包装
酸素は、空気中に自然に存在する非常に反応性の高いガスである。多くの包装食品は、製品と容器の間に空気のヘッドスペースを自然に伴う。それゆえ、ヘッドスペースには酸素がしばしば存在する。この微量の酸素でも高い活性を有するので、品質を確保し製品の有効期間を増すために分子の濃度を制御することが重要である。一般に、外気中(21%)から数%または完全な無酸素環境までその濃度を減らすことが望ましい。ヘッドスペースの酸素を置換することによって、酸化過程が抑制されて、食品の有効期間が延長される。
【0006】
空気中の酸素の自然濃度を減らすために、食品は調整気相または制御気相で包装される。本開示において採用される調整気相包装(MAP)は、HintlianおよびHotchkissによって「その組成が空気以外であるように調整されている雰囲気中の腐敗しやすい製品の包装」と定義される。MAPでは、容器内の自然酸素含有量は二酸化炭素(CO2)や窒素(N2)などの他のガスで置換される。多くの場合、ガス組成は、包装中にガスを流すか、あるいは製品をまず真空にさらしてから所望のガス混合物の注入口にさらすことによって包装の時点で積極的に変更される。
【0007】
果物や加工肉などの生鮮製品は、調整気相において包装する最も一般的な製品である。しかし、さらに頻繁に、高品質の果汁(フルーツジュース)などの製品は、酸化による劣化を抑制して製品の有効期間を延長するために調整気相において包装される。調整気相は、腐敗細菌の増殖を緩和または阻止するとともに化学的および生化学的な劣化過程を緩和している。高品質果汁の場合、窒素は酸素の置換のためにヘッドスペースで使用される最も一般的なガスである。窒素は、不活性ガスであり、水や脂質に溶けにくく、それゆえ、容器が充填されているように見えて崩壊しないようにする。窒素は、抗菌活性を有しないが、容器のヘッドスペース内の酸素を置換することによって製品の酸化プロセスが遅延される。
【0008】
MAPの場合、容器内部のガスの正確な組成を維持して容器とその環境の間でガス交換が起こらないようにするために、容器の完全性および気密性が必要である。たとえば、高品質のオレンジジュースなど、液状食品の有効期間を延長するために酸素透過性を管理することが重要である。したがって、調整気相を有する容器は、酸素がヘッドスペースに入り込まないようにするためにガスの移動を阻止する包装材料を必要とする。外部環境と交換(意図的または意図的でない)を行なう容器の場合、ヘッドスペースに入る酸素が時間の経過とともに容器の内部と外部の間で平衡に達する。さらに、調整気相容器では、容器内のガス濃度の平衡は、容器内に含まれる製品とガスの相互作用によって起こる可能性がある。包装の密封度を評価するための測定方法および装置が望まれる。このような方法や装置は、たとえば、ダイナミックMAPシステムにおいて、広がりと製品からヘッドスペースまでの交換による同時ガス移動を含むヘッドスペースのガス組成を検出するのに適している。
【0009】
食品容器の非侵入的ガス検知
密封容器内の酸素含有量の測定は、容器のヘッドスペース内のガス組成を監視する最も適切な側面であるかもしれない。酸素評価は、酸素の存在下で色が変化するように作られた小型センサディスクを用いて、光学測定を実施することによって行なわれうる。あるいはまた、より一般に採用されるセンサディスクは、酸素の量とともに減少する蛍光特性を有する、ルテニウムまたはプラチナを含有する染料で作られる。しかしながら、これらの技法は、小型のディスクを密封の際に容器の中に導入しなければならないという視点からは侵入的である。さらに、活性反応剤が製品や消費者に影響を与えないようにするコストおよび安全性の側面がある。したがって、代替的な非侵入的な方法または装置が好都合であることになる。
【0010】
したがって、安全性および消費者意識の側面から、容器の表面または内部にデバイスを取り付けない非侵入的測定が求められる。さらに、すべての追加品目が、追加の処理時間、追加の機械の投資などの直接費および間接費に関する追加コストを発生する。また、非侵入的測定では、その全有効期間中に時間の経過に対して容器の測定が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.Lewander, Z.G. Guan, L.Persson, A.Olsson and S.Svanberg, Food Monitoring Based on Diode Laser Gas Spectroscopy, Appl. Phys.B 93,619 (2008).
【非特許文献2】S.Svanberg, Atomic− and Molecular Spectroscopy - Basic Aspects and Practical Applications, 4th edition (Springer, Heidelberg 2004).
【非特許文献3】Z.G.Guan, M.Lewander, R.Gronlund, H.Lundberg, S.Svanberg, Gas analysis within remote porous target using LIDAR multi−scattering techniques, Appl. Phys.B 93,657−663 (2008).
【非特許文献4】Persson, L.Andersson, M.Cassel−Engquist, M.Svanberg, K.Svanberg, S. Gas monitoring in human sinuses using tunable diode laser spectroscopy, J.Biomed,Opt.2007;12;054001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲による方法および装置を提供することによって、上記に示したように、当技術分野の一つ以上の欠陥、不利益、または問題を単独であるいは任意に組み合わせて軽減し、緩和し、排除しようとすることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によると、密封容器を評価する方法が提供される。当該方法は、容器の外部から容器に向けて狭帯域レーザ光源から光を放射することと、容器内で散乱される光の吸収信号を測定することとを備え、上記吸収は光が密封容器内で散乱されて伝わるときに上記容器内の少なくとも一つのガスによって引き起こされる。測定は容器の外部で行なわれ、評価は容器に関して非侵入的である。評価は、測定された吸収信号に基づいて密封容器内の所定の予想されるガス組成および/または少なくとも一つのガスの濃度からの偏差が存在するかどうかの判断に基づく。
【0014】
本発明の第2の態様によると、密封容器を評価する装置が提供される。当該装置は、容器の外部から容器に向けて光を放射するように適合された二つの狭帯域レーザ光源と、容器内で散乱される光の吸収信号を測定するように適合された光検出器とを備える。吸収は、光が密封容器内で散乱されて伝わるときに少なくとも一つのガスによって引き起こされる。測定は容器の外部で行なわれ、評価は容器に関して非侵入的である。装置は、さらに、測定された吸収信号に基づいて密封容器内の所定の予想されるガス組成および/または少なくとも一つのガスの濃度からの偏差が存在するかどうかを判断するように適合された制御ユニットを含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項において規定され、本発明の第2の態様およびそれに続く態様の特徴は、変更すべきところは変更して第1の態様の場合と同様である。
【0016】
一部の実施形態は、密封容器内のガス濃度、ならびに予想される濃度からの偏差、あるいはガス濃度間または吸収信号間の比からの偏差が存在するかどうかを非侵入的に判断することを提供する。未知のガスの吸収と基準ガス、たとえば、水蒸気の吸収との比は、測定ガスに関する情報を提供する。
【0017】
一部の実施形態は、密封容器の内部のガスを遠隔で評価することを提供する。
【0018】
一部の実施形態は、半透明である密封容器内のガスの濃度を決定することを提供する。当該方法を採用しうるためには、容器またはサンプルは半透明である必要があり、つまり、放射された光がガスの中に入ってガスと相互作用した後に再び出て来ることができなければならない。容器は肉眼では不透明に見える可能性があるが、レーザ光はレーザ光の固有の半透明な波長範囲においてやはりガスの中を伝わることができるかもしれない。これらの実施形態は、不透明ではあるが半透明である材料で作られる容器の内部のガスの情報を評価することを提供する。
【0019】
一部の実施形態は、調整気相包装(MAP)、制御気相包装(CAP)、またはガス固有の組成によって密封されている密封食品容器内部のガスを評価することを提供する。
【0020】
一部の実施形態は、時間の経過に伴う密封容器の密封度を測定することを提供する。
【0021】
一部の実施形態は、密封容器が破壊されているかどうかを判断することを提供する。
【0022】
一部の実施形態は、密封容器内部の製品が密封容器の中にもともと包装されている製品であるかどうかを判断することを提供する。
【0023】
一部の実施形態は、密封容器内の製品の包装用に考案された製品製造チェーンに従って密封容器を評価することを提供する。
【0024】
一部の実施形態は、携帯小型装置内の密封容器を評価することを提供する。
【0025】
ガス吸光分光法は、容器の内部にセンサを加えずに非侵入的に実時間測定を行なうことができるので、興味深い食品容器の代替的なガス検知法である。当該技法は、各分子が光を独特の方法で吸収し、吸光分光法によって容器を識別して定量化することを可能にするという事実に基づくものである。その従来型の実施の制約は、透明な容器とヘッドスペースとを必要とすることである。
【0026】
2001年に、散乱媒質で囲まれたガスの検知を可能にするGASMAS(散乱媒質吸光分光法におけるガス)という名前のガス吸光分光法の代替的アプローチが提示された。GASMASの本質は、スペクトル的に鋭いガス吸収が液体および固体の広帯域吸収と識別されうることである。この結果、GASMAS法では注入光のごく一部しか伝達しないものの、小さいガス吸収信号(1/10000程度)が吸収分散物質を通過する光から抽出されうることになる。しかしながら、GASMASは、本明細書に記載する実施形態によって規定されるような容器の評価の当該分野については今まで知られていなかった。
【0027】
一定の実施形態では、GASMAS法によって、容器の内部の気層または食品を囲んでいる不透明な散乱物質で作られた容器の評価がかくして可能になる。
【0028】
液体飲料包装産業における品質保証のための非侵入的サンプリング法が開示されている。GASMAS法は、強光散乱が多くの場合に従来のガス分光法の適用を困難にしている様々な種類の食品など、天然物の内部のガスを分析する道を開いている。
【0029】
製品内部の空洞にあるGASMASガスを用いると、プラスチックおよび紙などの種々の散乱包装材料だけでなく、種々の食品、たとえば、肉、パン、果実、および液体などが光学的に初めて非侵襲的に分析されうる。つまり、不透明であるが半透明である(すなわち、目には透けて見えないが、光をストレートにではないものの通すことが可能である)容器のヘッドスペース内部のガスが分析されうる。
【0030】
一部の実施形態では、酸素および水蒸気の同時モニタリングが、不透明であるが半透明である調整気相を有する容器のヘッドスペースに対して前述のGASMAS法を用いて提供される。
【0031】
サンプル内に光の散乱によって、GASMAS法を用いて得られる吸収信号の評価における複雑化の要因は、光が遭遇した未知のガス相互作用経路長である。当該経路長は、Beer−Lambertianの法則によって決定されるような濃度定量化のための従来のガス吸光分光法において重要である。
【0032】
未知のガス相互作用経路長を有する難問の解決法は、測定ガスと同じ容積の既知の濃度の基準ガスを同時に調べることである。これは、第1のレーザに近い波長の第2のレーザを採用することによって可能になる。測定ガスと基準ガスのガス吸収信号の比を形成することによって、測定ガスの濃度に比例する量が得られる。水蒸気は、室温におけるその飽和状態に起因して実用性が高い基準ガスであることが示されている。液体水が封入されている状態では、温度のみに依存する水蒸気の濃度が既知である。
【0033】
酸素はこの用途にとって最も重要であり、水蒸気は酸素濃度を評価しうるようにするための基準ガスとして監視される。
【0034】
本明細書において使用される「備える/備えている」という用語は記載される特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を指定するために採用されるが、一つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはこれらの群の存在または追加を除外するものではないことは強調されるべきである。
【0035】
本発明の実施形態が可能である上記およびその他の態様、特徴、および優位性は、添付図を参照した本発明の実施形態についての以下の説明から明らかにおよび明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態によるガス検知機器の略図である。
【図2】(a)は、検討されたオレンジジュース容器のサンプルを示す。(b)は、本発明の実施形態による検出構造の図を示す。
【図3】(a)は、完全な容器からの酸素吸収信号例のグラフを示す。(b)は、その後に孔を開けた容器からの酸素吸収信号例のグラフを示す。(c)は、最後に窒素で洗浄された容器からの酸素吸収信号例のグラフを示す。
【図4】(a)は、有効期限の組の異なる容器に対する酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)と酸素および水蒸気Leqの比との図を示す。(b)は、有効期限の組の異なる容器に対する酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)と酸素および水蒸気Leqの比との図を示す。(c)は、有効期限の組の異なる容器に対する酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)と酸素および水蒸気Leqの比との図を示す。
【図5】異なる有効期限を有する三つの測定の組の完全な容器に対する酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)の比の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで、添付図を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記述される実施形態に限定して解釈されるべきではなく、むしろ、本開示は完全かつ徹底的であり、当業者に本発明の範囲が十分に伝わるようにこれらの実施形態が提供される。添付図面に示す実施形態の詳細説明で使用する用語は、本発明を制限するものではない。図面では、同様の参照番号は同様の構成要素を指す。
【0038】
具体的な実施形態では、容器内部の液体がオレンジジュースである。しかしながら、他の例、実施形態、または用途では、容器内部の液体は、たとえば、りんごジュース、クランベリージュース、ヨーグルトなどの乳製品、ミルク、スープ、野菜、ソフトドリンク、ワイン、加工食品、鳥肉その他の肉製品などの別の食品であってもよく、伝統的に缶詰製品として保存された保存食料は最新の包装技術の進歩のおかげで本明細書に記載するように半透明である多層包装材料で保存されうる。他の例、実施形態、または用途では、容器に含まれる包装材料は、固体であってもよく、かつ/または果実片入りヨーグルト、果肉入りジュースなど、固体粒子を備えていてもよい。一部の実施形態または例では、容器は密封されない。
【0039】
ガス組成に関する情報を非侵入的に評価することができる可能性は、非調整気相、すなわち、空気ヘッドスペースを有するミルク用のゲーブルトップのカートン容器に示されており(非特許文献1)、これはその全体が参照によりあらゆる意味で本明細書に援用される。本開示では、当該方法は、窒素の調整気相で包装された搾りたてのオレンジジュース用の一連のカートン容器で使用される。調整N2気相の下で異なる保管期間で可撓性カートン容器に包装される3シリーズの高品質オレンジジュースは、それらのガス組成面で測定されている。
【0040】
有効期限の異なるオレンジジュース容器の三つのサンプルの組が分析された。各組は20サンプルからなっていた。
【0041】
測定装置セットアップ
使用されたガス検知機器100は、図1に示され、食品容器103内部の酸素および水蒸気を監視する二つのダイオード・レーザ・ドライバ101、102(DFB Nanoplus)からなる。ダイオードレーザ(DL)からの光は、揃えられて二本のファイバに分離され、一本は基準104検出器を有するバックグラウンドの監視に使われ(Ref.)、一本はプローブ105検出器を有するサンプルに送られる(プローブ)。二つのダイオードレーザは、波長760nmおよび935nmで動作し、ここで、食品容器およびオレンジジュースは、半透明であり、GASMAS法を適したものにしている。レーザ光は、光ファイバ106および携帯ファイバヘッド108を経由してサンプル103に導かれる。サンプルから現れる散乱光は、携帯型の10×10mm検出器(浜松ホトニクスS3590−01)によって捕捉され、発生された信号はコンピュータ107によってサンプリングされる。コンピュータは、信号の平均化を可能ならしめる特別なデータ収集カードDAQが備えられる。波長を約10kHzで正弦波変調して発生された高調波を調べることによって、機器の感度を高めるために波長変調法が採用される。水蒸気と酸素の同時検出は、種々の周波数で変調することによって可能にされる。この実施形態では、図1のモニタ109に示した第1オーバートーン(1f)(第1帯)が吸収評価に使用された。詳細な技術説明、システム性能、およびデータ評価は、非特許文献4に提示されており、これはその全体が参照によりあらゆる意味で本明細書に援用される。しかしながら、非特許文献4は、完全に異なる技術分野、すなわち、洞腔内のガスを測定する医療機器に関するものである。光トランスデューサおよび検出器は携帯型であり、完全には固定されないことに留意することが重要である。サンプルのGASMAS完全固定では、導光および検出器は有害な干渉雑音をもたらすことが多い。これを回避する系統だった方法は、レーザビームおよび/またはサンプルのディザリングを含む。
【0042】
得られるガス信号については、空気の1000mmのキャリブレーション測定が参照され、等価経路長Leqと称されるmm単位の量を得る。この量は、光が同じガス吸収跡を経るために外気中を移動しなければならない距離である。吸収はBeer−Lambertianの法則により支配され、種濃度と光がガスと相互作用する距離との両方に依存する。GASMAS法では散乱光を調べるので、ガス相互作用の距離は不明であり、吸収の基準を較正測定値とする必要がある。得られる量Leqは、それゆえ、光路長およびガス濃度の両方に依存する。つまり、たとえば、25mmの相互作用距離を有する20%酸素の信号、あるいは50mmの相互作用距離を有する10%酸素の吸収信号は、同じLeqを与える。しかしながら、水蒸気を測定することによって、サンプリング経路に関する情報が得られうる。液体水を有する閉環境は、飽和して、温度のみによって支配される既知の水蒸気濃度を与える。また、酸素に対しても相互作用距離の量として水蒸気の等価経路長Leqを使用すると、酸素と酸素濃度に比例している水蒸気信号との比が得られる。本発明者らは、ここで、760nmと935nmのレーザ光が同じ容積を調べるとの仮定を利用する。
【0043】
ガス吸収に起因する光強度の低下の観察による光学ガス検出に代わる方法として、音響光学検出が採用されうる(たとえば、非特許文献2参照、これはその全体が参照によりあらゆる意味で本明細書に援用される)。その結果、狭帯域レーザ光源が吸収波長から非吸収波長に周期的にシフトされる。レーザ励起分子の衝突脱励起は、発熱、すなわち、ガス圧の上昇をもたらす。レーザが周期的に広範囲に同調されると、たとえば、音響マイクロフォンによって(変調周波数における「発信音」として)検出されうる周期的なガス圧波を発生する。周波数選択検出および位相選択検出(ロックイン検出)は、信号対ノイズ特性を向上させる。GASMAS法と同様に、光が拡散してガスを通過した後に光強度が低下して検出され正確なレーザ同調に対して吸収されて光検出器に達する場合、光音響検出が拡散光によって起こる累積吸収を積分する。
【0044】
液体飲料容器の測定経験
容器内部のガスの監視については、焼きパン、包装挽き肉、およびミルクのゲーブルトップのカートンに対してGASMAS法を用いて既に説明されており(非特許文献1参照)、これはその全体が参照によりあらゆる意味で本明細書に援用される。これらの初期の測定は、密封容器内部のガスに関する情報を非侵入的に評価することができる可能性を説明するために単一容器で実施された。焼きパンおよび肉容器は、透明または部分的に透明であり、それぞれ、調整CO2気相および非調整気相を有していた。測定は、製品を容器内部に入れた状態で非侵入的に行なわれた。結果は、包装した製品の内部にあるガスに関する情報に取り出すことができる可能性を示した。
【0045】
検討されたミルクは、非調整気相、すなわち、空気のヘッドスペースを有するゲーブルトップのカートン容器に包装された。結果は、容器が不透明に見えるにもかかわらず、ヘッドスペース内部のガスの吸収を非侵入的に判断することが可能であることを証明した。酸素および水蒸気のいずれも測定された。容器に孔を開けると、酸素と水蒸気の吸収信号の比が一定に保たれた。この事実は、ヘッドスペースの酸素濃度が本来は外気と同じであったことを証明している。しかしながら、孔を開けた後では酸素の吸収信号と水蒸気の吸収信号の両方で吸収の増加が観察された。この現象は、孔を開けるとサンプルの移動によって有効な経路長が増加するものと解釈される。観察では、これらのタイプの測定値の基準として水蒸気の同時監視を採用する必要があることが示された。
【0046】
容器に関する測定
食品包装品質管理手段としてのGASMAS法の可能性を分析するために、不透明容器を有する大きいサンプルの組が採用されて統計データが取得された。調整気相ヘッドスペースを有する容器における酸素濃度情報の抽出が検討された。
【0047】
熱可塑性ポリエチレン(PE)頂上部およびねじキャップ開口部を有する250mlの可撓性カートン部分容器201に包装された高品質オレンジジュースの20個の容器の三組が測定のために採用された(図2a参照)。光がプラスチック頂上部の側部に注入され、キャップを取り外した状態で容器の最上部で検出される。キャップを取り外した状態でも、容器は成形プラスチック頂上部によってなお密封されている。プローブ105には、容器頂上部に容易かつ確実に取り付けるために(取り外された)キャップのねじに対応するねじが設けられてもよい。
【0048】
容器201は、ポリエチレンの層と、ポリエチレンの射出成形プラスチック頂上部とでコーティングされた印刷可能な紙で作られたカートンベースのスリーブからなる。容器のヘッドスペースは、ジュースの有効期間を延長するために窒素N2で調整される。
【0049】
目的は、異なる有効期間を有する三組の間のガス組成の差を確認することであった。各組は、2010年1月26日に測定され、以下の異なる有効期限を有していた。
【0050】
組1:2008年10月30日
組2:2009年8月22日
組3:2010年2月23日
レーザ・ファイバ・トランスデューサ108および光検出器105は、容器のプラスチック上層部分の側部および頂上部をそれぞれ手で保持された(図2b参照)。キャップは取り外されたが、容器はプラスチックオブラート(plastic oblate)であるためまだ完全な、食する前に取り除かれる必要のある「不正開封防止付き」であった。ファイバ先端から検出器に直接伝わる漏洩光を検出しないように黒い紙の遮蔽チューブ202が容器頂上部203の頂上部に巻かれた。
【0051】
あるいは、吸収信号は密封容器から離れた非接触モードで測定されてもよい。ある実施形態では、これは非特許文献3に開示された原理に従って行なわれてもよく、非特許文献3はその全体が参照によりあらゆる意味で本明細書に援用される。さらに詳しくは、容器内のガスの測定は、LIDAR多重散乱法を用いてガス分析手順によって行なわれてもよい。
【0052】
各容器は、当該技法の再現性を検証するためにレーザファイバおよび検出器の位置を変えて3回測定された。容器は、保管時間中に冷蔵されたが、実験開始前に一晩室温に置かれた。水蒸気で較正できるようにするために、すべての容器に対して均一かつ既知の温度条件が望まれた。各容器は、サンプルと組の差を識別するために秤量された。容器内部のガスに由来するガス吸収信号を確認するために、また、絶対酸素濃度較正のために、各組につき1個のサンプルに3mmの円形開口部が開けられ、窒素ガスを流し、ヘッドスペースに外気を入れて測定された。
【0053】
結果
各有効期限の組の1個の容器に関する孔開け測定から、吸収信号は容器のヘッドスペース内部のガスのみに由来することが示された。窒素ガスがヘッドスペースの中に流されると、酸素吸収信号がおおむね消失した。さらに、孔開け実験でも、ヘッドスペースは調整気相からなることが確認された。有効期限が2010年2月23日の組の1個の容器からの吸収信号(A)の例は、時間(t)の関数として図3に提示される。酸素吸収301は、最初は完全な容器(a)について示され、つぎに孔を開けた容器(b)について示され、最後に窒素が流された容器(c)について示される。黒色の曲線は測定された信号であり、灰色の曲線は近似理想吸収跡である。完全な容器は、34mmの酸素吸収信号を発した。容器に孔を開けると、外気が容器に流れ込むにつれて酸素吸収信号が増加した。ヘッドスペースに窒素ガスを充填すると、酸素信号が消失し、すなわち、この場合、5mmのLeqに相当するノイズ背景(雑音背景)よりも低い信号が生じた。
【0054】
孔を開けたとき他の有効期限を有する他の二組についても同様の結果が得られた(酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)と、種々の有効期限の組からの三つの容器、すなわち、最初は完全な容器(a)、つぎに孔を開けた容器(b)、最後に窒素が流された容器(c)に対する酸素および水蒸気のLeqの比との図を示す図4参照)。提示された値は、標準偏差とともに各容器に対して実施された三つの測定の平均データである。酸素吸収信号は、容器に孔を開けるにつれて増加し、窒素がヘッドスペースに流し込まれるにつれてノイズレベルまで減少した。完全な容器と孔を開けた容器の酸素吸収信号レベルは、組によって異なっていた。たとえば、種々の充填レベル、光学特性、または測定形状(測定態様)に起因するガス相互作用の変化は、酸素吸収信号のこのような変動原因を明らかにしている。しかしながら、酸素と水蒸気のLeqの比を形成するとき三つのサンプル間の相違は完全な容器に対して残ったが、サンプル容器に孔が開けられて外気がヘッドスペースを充填すると均一になった。それゆえ、種々の有効期限の検討された三つの完全な容器は、種々の量の酸素濃度を有することが明らかにされうる。前述のように、同様の値にすべて等しくされたヘッドスペース内に外気を入れる孔を開けた容器に対する比パラメータは、21%の酸素濃度に対応する。本発明者らの観察によると、酸素と水のLeqの比は酸素濃度量として使用されうることを示唆している。本発明者らは、ここでは、水蒸気信号がガスの中の調査経路(probed path)の量であることを利用しており、これは飽和湿度の条件下で可能である。ヘッドスペースには小さい孔を開けるので、全体にわたり飽和状態が付きまとう。
【0055】
水蒸気信号の増加は、容器に孔を開けたときに観察され、ヘッドスペースのガス容積の変化による影響であると考えられる。容器に孔を開けると、キャップ頂上部が内側に膨化した状態から平坦な状態になることが指摘された。窒素ガスがヘッドスペースに流されるときの水蒸気吸収信号の減少は、窒素の流れによる不飽和ガス容積の影響であると考えられる。酸素濃度量としての酸素と水蒸気飽和信号との比は、このような人工条件下では実現可能でない。
【0056】
種々の有効期限を有する完全な容器間の酸素含有量の差異は、各有効期限についてすべての20サンプルを検討することによってさらに分析された。比パラメータ、すなわち、酸素濃度の量が監視されており、種々の有効期限を有する三つの測定された組の完全な容器に対する酸素および水蒸気の等価経路長(Leq)の比を示す結果が図5に示される。提示されたデータは、各容器に対して実施された三つの測定値の平均値であり、各欄の左側に提示される。全部で20の測定されたサンプルの平均値は、対応する標準偏差とともに各欄の右側に提示される。
【0057】
一つの組の中のサンプル間では大きな変動は全く観察されなかったが、各組の間では顕著な差が得られた。完全な容器の対応する濃度を計算するために21%酸素としての孔を開けた容器からの比の値を使用して、三つの検討された組に対して7〜15%の酸素含有量が得られた。新たに購入した容器では、測定が実施されたときに有効期限が過ぎておらず、20のサンプル間で1%の標準偏差を有する10%の酸素濃度が得られた。有効期限が切れた比較的古い容器の組の場合、それぞれ7±1%および15±1%の比較的低い酸素濃度および比較的高い酸素濃度が測定された。本発明者らは、酸素含有量が保管期間とともに単調に増加しないことに注目している。これは、包装機の密封品質の変動を示している可能性がある。これに代わる説明として、容器による透過および/または製品からヘッドスペースへの交換による透過が異なる含有量に向かって進行しているものと考えられる。各組間の明らかな変動は、比において測定されなかっただけでなく、酸素および水蒸気Leqにおいても測定されなかった(表1参照)。分散特性および吸収特性または各組間の充填変動に起因する異なるサンプリング容積は、この挙動を説明している可能性がある。しかしながら、サンプルの各組は、それぞれ、組1、組2、および組3に対して、重量が275.4±0.9g、272.2±1.0g、および272.4±0.3gであって大きい変動を示していない。
【0058】
表1は、種々の有効期限を有する各組から測定された20サンプルから得られたデータを示す。酸素および水蒸気Leqおよびこれらの比は、平均値±標準偏差として提示される。酸素濃度は、21%の酸素含有量として孔を開けた容器の比を用いて計算される。
【0059】
【表1】

【0060】
各サンプルに対して三つの連続量を有する再現性試験では大きい変動がないことが示された。比パラメータは、測定値間で平均して3%変動した。3%の比の偏差は、0.45%単位の酸素濃度変化に対応する(組1に対して得られるような15%の酸素を用いて)。
【0061】
酸素濃度は、完全な容器に対する吸収信号を測定し(光学的または光音響的に)、続いて、孔を開けた容器(21%の大気酸素濃度を生じる)と容器に孔を開けることによって作られる孔に窒素が流される容器(0%の酸素濃度を生じる)との二つの場合に対して同じ容器を同じ配置で測定することによって評価されてもよい。その後、適正な濃度値を導くために線形補間が適用されてもよい。方法は、この後、水蒸気の正規化と対応する容器温度についての正確な知識とを必要とせずに酸素濃度を非侵入的に評価するために同じ測定配置で同じタイプの完全な容器に適用可能である。
【0062】
さらに、容器内部の温度および圧力は、GASMASに基づいて決定されてもよい。これによって、一定の実施形態における評価がさらに正確かつ有利になる。たとえば、容器内部の測定された温度および圧力によって、容器内部の水蒸気濃度が非常に正確に決定される。
【0063】
本開示は、GASMAS法が半透明であるが不透明な容器内部のガスを監視するのにきわめて適していることを明確に示す。GASMAS法は求められる酸素の還元であるので、酸素は調整気相包装産業にとって大変興味深い。監視するための代替ガスは窒素であるが、このガスはダイオードレーザ分光法を用いて検討されうる吸収線を示さない。
【0064】
GASMAS法によるガス監視の要件は、レーザ光がある程度サンプル中を移動して、ガスと相互作用することができなければならないことである。本開示では、入射レーザ光の約0.1%、すなわち、1μWが容器を通って伝播されて検出された。材料の透光性は、様々であり波長によって変化することに留意されたい。たとえば、金属膜は全く半透明ではなく、液体水は1400nm以下、すなわち、可視および近赤外領域においてのみ半透明である。
【0065】
GASMAS法は、不透明容器の非侵入的な実時間においてガス監視を可能にするので食品包装産業にとって特に興味深い。非侵入的測定を用いる主な利益は、無駄なサンプルの削減であり、しかも追加センサに関する追加コストが個々の容器に加算されないことである。
【0066】
もう一つの意義は、同じサンプルを様々な時点で、すなわち、製品の全有効期間にわたって分析することが可能であるという事実である。
【0067】
調整気相ジュース容器に関する本開示において行なわれる測定は、包装された液体飲料と容器の完全性を非侵入的にかつ有効期間測定の期間にわたって監視することができる可能性を示す。これは、普通の空気ヘッドスペースによってミルクの単一のゲーブルトップのカートン容器で行なわれる初期検査で示されるように、カートンベースの容器にGASMASを使用しうる可能性を裏付けている。本開示は、第1に優れた再現性を示し、第2に不透明容器を採用する調整気相包装への適用可能性を実証することによって、上記の効果をさらに高める。絶対酸素濃度値を得るために水蒸気監視による正規化を採用することも実証される。
【0068】
結果は、さらに、サンプルを無駄にせずに液体飲料および容器の非侵入的品質管理の可能性を示す。非侵入的測定方法では同じサンプルに対して時間とともに反復測定しうるので、このような測定を非侵入的に行なうことができる可能性は、流通網の場合と同様に包装生産ラインに食品の品質測定を導入するための将来の可能性を示す。品質管理では容器の気密性を証明しうるだけでなく、ガス組成の時間的変化を測定することが可能であるので液体飲料の劣化の可能性も評価しうる。
【0069】
食品包装試験のさらなる態様は、誰も食品容器の不正開封も破壊もしていないことを確認することである。実際に、最近では、食品容器の破壊のいくつかの例が報告されている。たとえば、ガラスが鶏肉容器に導入されており、大量の包装製品から回収する必要性につながっている。たとえば、誰かが雑菌を混入させるために容器を不正開封すると、ガス障壁が破られることになり、このような容器は異常なガス組成を呈することになる。たとえMAP法およびCAP法が適用されなくても、封入製品は酸化によって酸素を消費するので、このような不正開封は酸素濃度において明らかであることになる。
【0070】
本発明は、それゆえ、製造業者から流通業者を経由して近くのスーパーまでの全サプライチェーンにおける食品容器の完全性の非侵入的監視の解決法を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
また、MAPまたはCAPを採用する前述の方法は、たとえば、密封容器内部の製品が確かにオリジナル製品であることを保証するために、食品包装以外の他の産業で採用されてもよい。これは、医薬品または薬剤、衣類、衣料品、携帯電話などの移動通信機器、時計、CDまたはDVDなどの光ディスク、メモリ回路、マイクロプロセッサ、集積回路、または医療機器などの偽造品および違法コピー製品に関連する問題を抱える産業ではきわめて有用である。
【0072】
MAPまたはCAPを採用する代わりに、商品および/または製品の製造業者を一意的に検出するために固有のガス組成が採用されてもよい。この固有の組成は本発明の実施形態によって検出可能である。国際商業会議所(ICC)の偽造情報局(CIB)の調査によると、偽造品は国際貿易の5から7%も占めている可能性がある。
【0073】
あるいは、包装品の有効期間は、本発明の実施形態によって検出可能な容器の内部のガスに基づいて決定されてもよい。たとえば、医療機器は、滅菌環境において包装されてもよい。たとえば、手術道具は、相応に埋め込まれたそのプラスチック成形品の中に設置されて滅菌用の特殊なガス雰囲気において包装されてもよい。有効期間は、ガス雰囲気が容器によってもはや確実に保たれないとき、たとえば、6または9ヵ月後に終了する。容器内部のガス組成を測定した結果、滅菌容器内部のガスが測定されてまだ十分なガス雰囲気が本発明の実施形態によって検出されるときは有効期間が延長されてもよい。
【0074】
GASMAS機器は、簡単かつ低コストであることから、インライン測定およびポイント測定の両方の食品容器の品質管理に適した手段となる。将来の「インライン」レーザ分光法では、食品劣化が時間の経過とともに起こっているかどうかと、酸素が気密性調整気相容器内で「消費」されているかどうかとを非侵入的に評価することが可能になる。
【0075】
図1の装置100は、包装用または密封容器内の製品用に考案された製品製造チェーン内にインラインで設置されてもよい。それゆえ、装置100は、食品の充填および密封に続いて食品を輸送する、たとえば、コンベヤベルトと接続して設置されてもよい。その結果、装置100は、食品が充填され、密封され、バルク包装されながら輸送されるときに食品の各々に対する測定あるいは食品の選択のために使用可能になる。装置100は、充填機および/または包装機とともに一体化されてもよく、これらに対して独立していてもよい。
【0076】
装置100は、密封容器と接触せずに容器を評価してもよく、代わりに遠隔から容器内部のガスを検出してもよい(非特許文献3)。こうすると、検出速度が増す可能性があるので有利である。
【0077】
測定の結果は、非侵入的に時間をかけて実施される液体飲料製品とカートン食品包装との品質保証のための手段としてガス組成を調査するための強力な手段としてのGASMAS法の実現可能性を示す。実験は、GASMAS法が包装後の食品供給チェーンおよびその時々において様々なステップで改良された容器または「気密」容器内の液体飲料製品の品質を監視することによって食品の安全性を確保するという重要な問題に利用されうることを示している。調整気相を有する高品質オレンジジュース容器に関する測定は、液体飲料包装内の酸素含有量および水蒸気含有量を非侵入的に時間をかけて監視することができる可能性を示している。さらに、測定は、ガス組成測定に基づいて容器の完全性または気密性を非侵入的に測定することができる可能性を示す。
【0078】
これまで、具体的な実施形態を参照して本発明を説明してきた。しかしながら、本発明の範囲内で上記以外の実施形態も同様に可能である。容器内の製品は液体や固体であってもよい。ハードウェアまたはソフトウェアによる方法を実施する上記のものとは異なる方法ステップが、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で提供されてもよい。本発明の種々の特徴およびステップは、記載したもの以外の組合せで組み合わせられてもよい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封容器を評価する方法であって、
前記密封容器の外部から前記密封容器に向けて狭帯域レーザ光源から光を放射することと、
前記密封容器内で散乱された前記光の吸収信号を測定することを含み、
前記吸収は、前記光が前記密封容器によって散乱されて、前記密封容器に進み、そして、前記密封容器から出ていく間に、前記密封容器内の少なくとも一つのガスによって生じ、
前記測定は、前記密封容器の外部で行なわれ、それによって、前記評価は前記密封容器に関して非侵入的であり、
なおかつ、前記評価は、前記測定された吸収信号に基づく前記密封容器内の所定の予想されるガス組成および/または前記少なくとも一つのガスの濃度からの偏差が存在するかどうかを判断することに基づいていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガスは酸素であり、かつ/または前記密封容器は前記光に対して透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸収信号を測定することは、
前記少なくとも一つのガスの吸収波長と非吸収波長の間で前記レーザ光源を周期的にシフトすることと、
前記吸収信号を音響光学的に検出するために、前記周期的なシフトによって発生する圧力変調信号を音響検出装置を用いて検出することと、
を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記偏差を判断することは、
前記少なくとも一つのガスの第1のガスの第1の濃度を決定することを含み、
前記第1の濃度は、
既知の濃度を有する前記第1のガスを備える周囲の外気内に前記密封容器を備えることと、
前記密封容器から前記第1のガスに対する第1の吸収信号を測定することと、
孔の開いた容器を得るために前記密封容器に孔を開けることと、
前記孔の開いた容器から、前記既知の濃度である前記第1のガスに対する第2の吸収信号を測定することと、
前記孔の開いた容器の中に実質的にゼロ濃度の前記第1のガスを供給するために、前記孔の開いた容器に前記第1のガスとは異なる第2のガスを流すことと、
前記孔の開いた容器から、前記ゼロ濃度である前記第1のガスに対する第3の吸収信号を測定することと、
前記第1の吸収信号に対応する前記第1の濃度を供給するために前記第2および第3の吸収信号に曲線を適合させること
によって決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記偏差を判断することは、
前記少なくとも一つのガスの第1のガスの第1の濃度を決定することを含み、
前記第1の濃度は、
前記密封容器内の水蒸気の第1の吸収信号を測定することと、
前記密封容器内の前記第1のガスの第2の吸収信号を測定することと、
前記第1の濃度を供給するために、前記第1の濃度に比例している前記第1の吸収信号と前記第2の吸収信号の比を形成すること
によって決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記吸収信号を決定することは、
前記少なくとも一つのガスの第1および第2のガスに、それぞれ対応する第1および第2の吸収信号を測定することと、
前記偏差を判断するために前記第1の吸収信号と前記第2の信号の比を形成することと、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記吸収信号を決定するために、
前記少なくとも一つのガスを非接触で評価するために、前記密封容器から離れた光トランスデューサおよび光検出器を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記密封容器は少なくとも部分的に液体飲料または固形食品を含む密封食品容器であり、該密封容器は、ヘッドスペースにかつ/または前記密封容器の内部に包装された材料の内部に、または前記材料と一体となるなどして前記少なくとも一つのガスを含んでおり、かつ/または前記密封容器は調整気相包装(MAP)および/または制御気相包装(CAP)および/または固有のガス組成で密封されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記偏差を判断することは、予想されるものとは異なる前記少なくとも一つのガスの吸収信号を検出することおよび/または予想されるものとは異なる少なくとも二つの吸収信号の比を決定することを含み、
前記少なくとも二つの吸収信号は、前記密封容器内の少なくとも二つのガスに対応することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記評価は、前記少なくとも一つのガスに対する前記密封容器の時間の経過に伴う密封度および/または漏洩速度を測定することを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記評価は、前記偏差が判断されるとき、あるいは偏差が判断されないとき、それぞれ、前記密封容器の不正開封または破壊を判断または除外することを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記密封容器は食品容器であり、
前記方法は、ジュース、ソフトドリンク、ワイン、ミルクまたは乳製品、ヨーグルト、加工食品、鳥肉その他の肉製品などの食品を含む前記密封容器を誰も不正開封または破壊していないことを確認するために前記食品容器を試験することを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記密封容器は、前記密封容器内の製品が最初に前記密封容器に包装された製品を含んでいることを保証するために食品を含まない容器であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記製品は、医薬品または薬剤、衣料品、携帯電話、時計、ソフトウェア、CDおよびDVD、あるいは偽造や違法コピーされるおそれのあるその他の密封製品のリストに含まれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記密封容器内の製品の包装用に考案された製品製造チェーン内においてインラインで実施される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記密封容器の外部から前記密封容器に向けて光を照射するように構成される狭帯域レーザ光源と、
前記密封容器内で散乱される前記光の吸収信号を測定するように構成された光検出器と、を備える密封容器を評価する装置であって、
前記光が散乱されて前記密封容器内を伝わるとき、前記吸収は少なくとも一つのガスによって生じ、前記測定は前記密封容器の外部で行なわれ、それによって、前記評価は前記密封容器に関して非侵入的であり、
前記システムは、前記測定された前記吸収信号に基づく前記密封容器内に前記少なくとも一つのガスの所定の予想されるガス組成および/または濃度からの偏差が存在するかどうかを判断するように構成された制御ユニットをさらに含む、ことを特徴とする装置。
【請求項17】
前記装置は請求項1から15のいずれかの方法を実施するように構成されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記密封容器内の製品の包装用に考案された製品製造チェーン内にインラインで設置されるように構成されたことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記レーザ光源は、圧力変調信号を発生するために前記少なくとも一つのガスの吸収波長と非吸収波長の間で周期的にシフトするように構成され、
前記装置は、前記吸収信号の検出に対応する前記圧力変調信号を検出するように構成された音響検出装置を備えることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記密封容器は、食品容器であり、
前記装置は、ジュース、ソフトドリンク、ワイン、ミルクまたは乳製品、ヨーグルト、加工食品、鳥肉その他の肉製品などの食品を含む前記密封容器を誰も不正開封または破壊していないことを確認するために前記食品容器を試験するように配置されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記密封容器は、食品、医薬品、薬剤、布、衣料品、移動通信機器、時計、ソフトウェア・データ・キャリア、光ディスク、メモリ回路、マイクロプロセッサ、集積回路、または医療機器のリストに含まれる一つ以上の包装材料を含む、組合せとしての、請求項16から20のいずれかに記載の密封容器および装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526973(P2012−526973A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510281(P2012−510281)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056511
【国際公開番号】WO2010/145892
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507324429)
【Fターム(参考)】