説明

容器内の無酸素雰囲気を提供する方法

本発明は、中空注入針を容器の壁の穿刺可能部に通すことにより容器に液体を充填する前に、容器の壁よりも酸素透過性が低いエンベロープ内に空の容器を入れることを含む、容器の内の酸素濃度を減少する方法を提供する。該方法は、穿刺可能なクロージャーを有するバイアルを用いるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部酸素レベルが低い容器を提供する新規方法に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、医薬および化粧品を入れるのに適した容器に関する。本明細書で用いられる場合、「医薬物質」なる用語は、ヒトまたは獣医学的投与用、液体または固体、復元または復元なしでの投与用のいずれであってもよく、予防または治療用化合物および処方およびワクチン、または復元媒体のすべてのタイプを包含する。また、本発明は、いずれの種の酸素感受性物質の格納用容器に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
一般に、種々のタイプの容器が、医薬物質の格納に用いられている。かかる容器の例としては、限定するものではないが、バイアル、シリンジ、カプセルおよびカルプールが挙げられる。
【0004】
かかる医薬物質の格納用の容器の多くはガラスで作られており、より最近ではプラスチック材、具体的にはシクロオレフィンコポリマー(「COC」)、その混合物あるいは他のポリマーとの混合物から作られている。かかるCOCポリマーの例としては、多くの中で特に、US−A−5723189、EP−A−0436372およびEP−A−0556034に開示されているものが挙げられる。製薬工業における使用が認められているCOCプラスチック材の例としては、シクロオレフィンコポリマー「Topas」(Topas Advanced Polymersにより製造されている)が挙げられ、例えば公知のCOCポリマー Topas8007、Topas6013またはTopas6015がTopas Advanced Polymersから入手可能である。また、シクロオレフィンポリマーもまた、Zeon社から入手可能である。
【0005】
医薬物質の格納用バイアルは、一般的には、通常エラストマークロージャーで封じられている開口部を有し、クロージャーは、中空針を通し、これを介してバイアルに液体を導入またはそれを取り出すことができる。かかるクロージャーに適したエラストマーはよく知られており、一般に用いられるバイアルクロージャー用の加硫処理エラストマーの代用としてスチレンブロックコポリマー熱可塑性エラストマーを基礎としている。かかるエラストマー物質の1つは、WO−A−2005/014419に開示されている。
【0006】
シリンジは、一般的には、ガラスで作られているが、最近はプラスチック材、例えば上記したCOCポリマーで作られている円筒状のバレル部を含む。かかるシリンジのバレル部は、通常、ノズルを介して液体内容物を取り出すためにバレルに沿って動かすことが可能なエラストマープランジャーにより閉じられている。かかるプランジャーに適当なエラストマーは、バイアルクロージャーに関して上記したものと同様の熱可塑性エラストマーを基礎とすることができる。
【0007】
かかるバイアルは医薬物質で充填されることが多く、これは開口部から物質を導入し、開口部をクロージャーで塞ぎ、ついで、任意に物質を凍結乾燥する。シリンジは、一般的には、ノズルの反対側のバレル開口部から物質を導入することにより充填され、この開口部にプランジャーを挿入することにより閉じられる。
【0008】
「滅菌充填」と称される別の充填プロシージャは、内部が滅菌され穿刺可能な壁部を有する容器を提供するために開発され、中空注入針を容器の壁部の穿刺可能部に通し、液体内容物を針により導入し、針を抜き、ついで充填針を抜く。ついで、残った穿刺孔は、例えば壁材の弾性により、カバーにより、あるいは加熱シーリングにより塞ぐ(例えばUS−A−5,641,004)。バイアルの滅菌充填に関して、有利には、バイアルは、滅菌された内部およびクロージャーを備えた開口部を有し、中空注入針をクロージャーに通し、そこを通して液体医薬物質を導入することにより充填される。類似の方法において、シリンジは、滅菌した内部、およびプランジャーにより塞がれた開口末端および/または穿刺可能なクロージャーにより塞がれた反対のノズル末端を有し、中空注入針をプランジャーまたはクロージャーに通し、ついで、そこを通して液体医薬物質を導入することにより充填される。ついで、注入針を抜き、エラストマークロージャーまたはプランジャーの弾性により、残った穿刺孔を塞ぐ。ついで、残った穿刺孔を、穿刺孔の周囲のクロージャーを、例えば、集光レーザービームにより部分的に加熱することによりさらに完全に塞ぐ。この方法で充填されたバイアルまたはシリンジは、本明細書において、「滅菌充填バイアル」または「滅菌充填シリンジ」と称する。このプロシージャは、例えば、WO−A−2002064439、WO−A−200407187、WO−A−2004026695、WO−A−2004026735、WO−A−2004076288、WO−A−2005086677、WO−A−2005046755、WO−A−2006/058786およびEP−A−0679574に開示されている。
【0009】
かかる滅菌充填法に適当なバイアルの製造方法、例えば同時に成形し、ついで、別個のバイアルおよびクロージャーを組み立てる方法は、WO−A−2005005128に開示されている。かかる方法での使用に適したバイアルの具体的な型は、WO−A−2004/018317に記載されており、好ましくは、上記したCOCポリマーで作られ、クロージャーは上記したエラストマーで作られる。
【0010】
かかる容器に含有される医薬物質の例としては、上記したように、ヒトまたは獣医学的投与用、液体または固体、復元または復元なしでの投与用のいずれであってもよく、予防または治療用化合物および処方およびワクチン、または復元媒体のすべてのタイプを包含する。
【0011】
医薬物質に共通の問題は、大気中の酸素に対する脆弱性であり、これによりかかる物質は酸化的分解を生じうる。医薬物質の容器のエンベロープに用いられる物質は、しばしば大気中の酸素を透過する。大気中の酸素と種々のタイプの容器に含有されている医薬物質との接触を防止する方法が知られている。
【0012】
この大気中の酸素に関する問題の一の公知の解決法は、医薬物質の内容物を導入する前に、容器、例えばバイアルまたはシリンジ内部に無酸素雰囲気を提供することである。例えば、これは、充填の直前にバイアルのような開口容器を窒素でフラッシシングし、充填後に窒素で第2のフラッシングを行い、さらに栓をする前にヘッドスペースの酸素濃度を低く保持することにより達成することができる。これは、クロージャーを挿入する前にこれらの開口部を介して充填するバイアルの場合、比較的直接的な方法である。しかし、すでに定位置にクロージャーが取り付けられたバイアルに充填する上記の滅菌充填法の場合には、バイアルまたはシリンジに、無酸素雰囲気下でこれらのクロージャーおよびプランジャーを取り付ける必要があるという問題が生じる。組立機械を覆うような無酸素雰囲気を必要とすることは、かなり不便であり、費用もかかる。例えば、WO−A−2005005128に開示されている方法においては、比較的大きな組立ロボットを必要とする。
【0013】
貯蔵期間中の大気中の酸素による長期間の酸化から充填した容器を保護するために、医薬物質を含有する密封容器を取り囲むこと、すなわち、充填後に、外部のエンベローブ内に置き、容器と外部のエンベローブの間の空間に酸素吸収物質を置くことが知られている。これについての多くの例が、GB−A−2208287、JP−A−2002065808、US−A−2003/0106824、US−A−4,872,553、US−A−6,007,529およびWO−A−03039632に開示されている。種々のタイプの酸素吸収物質が知られており、例えば鉄および酸化鉄が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、容器、特に上記滅菌充填法により充填されるバイアルおよびシリンジ内部の無酸素雰囲気を提供することに関する課題の解決法を見出すことが継続して求められている。本発明の一の態様は、かかる解決法を提供することができる。本発明の他の態様および利点は、以下の記載から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、外部雰囲気よりも低い酸素濃度である内部雰囲気を有する密閉容器の提供方法であって:
注入針により穿刺可能な部を有する酸素透過境界により境され、注入針を穿刺可能部に通し、ついで、液体内容物を針を介して導入し、ついで、針を抜くことにより液体内容物を容器に導入する方法に適しており、内容量の50%またはそれ以上が、初期酸素含有雰囲気である容器を提供すること;
壁材よりも酸素透過性が低い物質のエンベロープ壁により境されているエンベローブ内部に容器を入れること;
容器とエンベロープ壁の間の気体を、容器内の気体の酸素濃度が初期濃度以下に減少する時間、酸素吸収物質に曝露すること
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の容器の断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の容器の断面図を示す。
【図3】図3は、本発明の容器の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の容器の断面図を示す。
【図5】図5は容器中の酸素濃度の減少をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、容器の壁および/またはクロージャー物質の酸素透過性を利用することにより作用する。酸素吸収物質は、容器とエンベローブ壁の間のスペースの酸素を吸収する。その結果、容器中の酸素は、酸素吸収物質により酸素が吸収されるこのスペースに拡散し、他の雰囲気ガス、例えば窒素などは、容器の壁および/またはクロージャー物質を通り容器内部に拡散して、外部に拡散した酸素と入れ代わる。
【0018】
理想的には、最終的に、容器内のすべての酸素が除去され、他の雰囲気ガスにより置換される。実際には、本発明の方法は、容器内部の雰囲気中の酸素濃度を1%以下に減少させることができることが見出された。一般的に、これは容器中の医薬物質への酸化ダメージを許容範囲に最小限化するのに適している。
【0019】
境界は、酸素透過性の穿刺可能な物質で製造することができる。さらに、または別法として、境界は、容器の内部に通じ、酸素透過性クロージャー物質、好ましくは穿刺可能なクロージャー物質により塞がれている開口部を有する境界壁を含みうる。
【0020】
容器は、体壁面により境され、穿刺可能なバイアルクロージャーにより塞がれている開口部を有するバイアル体を含むバイアルであってもよい。
【0021】
別法として、容器は、ノズル末端およびその反対側の開口末端を有し、バレル壁により境され、穿刺可能なプランジャーにより塞がれているシリンジバレルであってもよい。別法として、シリンジのノズル末端に開口部があり、酸素透過性穿刺可能なクロージャーにより封がされていてもよい。
【0022】
適当なバイアルおよびシリンジは、酸素透過性プラスチック物質で作られたバイアル体壁またはバレル体壁を有する。特に、上記したCOCポリマー、その混合物または他のポリマーとの混合物、例えば「Topas」、例えばTopas8007、6015または6013を用いることができる。
【0023】
バイアルおよびシリンジは、酸素透過性物質、例えば上記したCOCポリマー、または酸素不透過性物質、例えば酸素不透過性ガラスで作られたバイアル体またはバレル壁を有し、酸素透過性物質で作られるクロージャーまたはプランジャーを有し得る。適当な酸素透過性物質は、その多くが公知の酸素透過性を有するエラストマー物質であり、例えば、WO−A−2005/014419に開示されているエラストマーである。かかる物質で製造される場合、バイアルおよびシリンジに用いられる慣用的な寸法のバイアル、シリンジ、クロージャーおよびプランジャーは、本発明でおいて使用するのに適した酸素透過性を有することが見出された。かかるバイアルは、COCポリマーで作られたバイアル体壁により境されており、穿刺可能なクロージャーにより塞がれる開口物を有しうる。
【0024】
適当には、容器には液体内容物が存在しない。
容器の内部容量の50%以上が初期酸素含有雰囲気である。好ましくは、容器の内部容量の75%以上が酸素含有雰囲気である。より好ましくは、容器の内部容量の90%以上が酸素含有雰囲気である。最も好ましくは、この初期酸素含有雰囲気以外は空である。別として、容器は、容器中に導入される液体物質と混合するための添加剤を含有していてもよい。
【0025】
この場合において、容器は、上記した滅菌充填法により充填するのに適している。例えば、バイアルは、バイアルおよびクロージャーを同時成形し、クロージャーをバイアルに装着し、空の状態にするWO−A−2005005128に開示されている方法により製造される。かかるバイアルは、通常、フィルターで処理した外部雰囲気内で製造され、その結果、酸素含有雰囲気、すなわち空気を含有するだろう。
【0026】
このタイプの容器、すなわち、COCポリマーで作られたバイアル壁と、酸素透過性エラストマーで作られたクロージャーにより塞がれる開口部と、滅菌された内部を有するバイアルは、例えば、Aseptic Technologies,Les Isnes,Belgiumから市販されている。
【0027】
エンベロープそれ自体は、外部雰囲気よりも低い酸素濃度の雰囲気を含んでもよい。例えば、1つまたは複数の容器の周囲のエンベローブを閉じる前に、エンベロープ内の空気を、窒素等の不活性ガスで置き換えてもよい。かかる方法において、酸素吸収物質は、実質的に、エンベロープ内の1つまたは複数の容器から外に拡散した酸素だけを吸収する。
【0028】
本発明の方法は、適当には、開口部を有するバイアルおよびこの開口部用のクロージャーを別個に製造し、バイアル壁またはクロージャーの少なくとも1つが酸素透過性であり;
バイアルおよびクロージャーを一緒に組み立て、これにより酸素含有雰囲気を容器の内部容量の50%以上封入し;
ついで、組み立てたバイアルとクロージャーを、壁およびクロージャー物質よりも酸素透過性が低い物質のエンベロープ壁により境されたエンベローブ内部に封入し;
容器とエンベロープ壁の間の気体を、容器内の気体の酸素濃度が初期濃度以下に減少する時間、間酸素吸収物質に曝露する方法を含む。
【0029】
エンベロープ壁は、可能な限り密閉されるべきであり、適当には、その中にあるエンベロープ壁と容器の間の気体から酸素が吸収され、外部の空気中の酸素濃度が約20体積%であることから、約20%の体積が減少するのに対応するために柔軟な壁であり得る。容器の周囲のエンベロープをシールする前に、エンベロープ内部の空気雰囲気を、低酸素雰囲気、例えば窒素により置換してもよいが、市販されている酸素吸収剤は、典型的にはエンベローブ内の約20%の酸素を吸収する能力がある。別法として、または加えて、吸収された酸素の容量を埋め合わせるために、非酸素ガス、例えば窒素を送り込んでもよい。いくつかの物質は酸素に対して100%不透過性であるが、多くは、酸素吸収物質と組み合わせて用いた場合に、エンベローブ内部の酸素を十分に低レベルにすることができる程度の不透過性を有する。適当な柔軟なエンベロープ壁物質は、当該分野で公知のものであり、例えばアルミ箔またはアルミ箔−プラスチック物質積層材が挙げられる。かかるエンベローブ壁に適したフレキシブルな物質は公知のものであり、例えばWO−A−200303962に開示されている。適当なエンベロープ物質は、典型的には、アルミニウムを保護し、加熱シーリングを促すためのポリマーで積層された、最小7ミクロン、好ましくは9〜12ミクロンの厚みを有するアルミ箔が挙げられる。
【0030】
適当には、容器とエンベロープ壁の間のスペースの容量は、気体中の酸素の急速な除去を促すために最小限であるべきである。
【0031】
医薬、ワクチンおよび他の医薬品において用いるのに適している多くの酸素吸収物質が当該分野で知られている。ある酸素吸収物質は、気体中の酸素レベルをわずか0.1%にまで減少させることができ、エンベロープ内のレベルは、本発明の多くの用途に適している。多くのこのような酸素吸収物質は、大気中の酸素に曝露して酸化し、酸素と化学的に結合し、これにより大気中から酸素を除去する鉄粒子を基礎とする。ある酸素吸収物質は、機能するために水分を必要とするが、あるものは必要としない。ある酸素吸収物質はまた、酸素を吸収する一方で大気中の水分を吸収するが、あるものは吸収しない。ある酸素吸収物質は、酸素を吸収する一方で、非酸素ガス、例えば二酸化炭素を大気中に放出するが、あるものは放出しない。使用する酸素吸収物質の選択は、本発明の適用に依存する。医薬に適用するのに適当し、機能するのに水分を必要としない適当な酸素吸収物質は、Multisorbから市販されている(独占所有権があり、機能は開示されていない)。
【0032】
所望の容器内部の酸素濃度レベルを達成するための、エンベロープ内に入れる容器、例えばバイアルまたはシリンジに必要な条件および時間は、すなわち、物質、容器およびクロージャーまたはプランジャーの寸法、エンベロープの容量および特性、および酸素吸収物質に依存するだろう。多くの公知の酸素吸収物質は、常温で作用する。
【0033】
適当には、容器内の酸素濃度が、本発明の方法の結果、周囲の大気の濃度よりも予定のレベルまで低くなった後、さらに処理するために容器をエンベロープから取り出してもよい。
【0034】
容器内の酸素濃度を周囲の大気の濃度以下に保持するため、容器を、さらなる処理の前までエンベロープ内に貯蔵し、あるいは、低酸素濃度である他の貯蔵環境、例えば窒素雰囲気下で貯蔵する。
【0035】
さらなる処理工程の例として、中空注入針を容器の境界の穿刺可能部に通し、液体医薬物質を導入し、ついで、注入針を抜く、上記した滅菌充填法により容器に充填することができる。上記したバイアルおよびシリンジの場合、容器の穿刺可能部は、バイアルクロージャー、またはシリンジのプランジャーもしくはクロージャーにあってもよい。
【0036】
この方法において、酸素が枯渇した内部雰囲気を有する容器の壁を通した注入針により液体物質を導入することは新規であると考えられる。
【0037】
したがって、本発明のさらなる態様において、容器に液体物質を導入する方法であって:
穿刺可能であり、穿刺可能部に注入針を通し、ついで、針により液体内容物を導入することにより容器内に液体内容物を導入する方法に適した部を有する境界により境される容器を提供し;
容器は、その内部の酸素濃度が外部大気の濃度以下のレベルであり;
中空注入針を穿刺可能部に通し、
液体物質を注入針により容器内に導入し、
ついで、注入針を抜くこと、
を含む方法を提供する。
【0038】
ついで、任意に、境界壁に残った穿刺孔を、例えば公知のカバー手段、例えば集光レーザービームを用いて穿刺孔付近の境界壁を部分的に加熱することにより、より完全に塞ぐことができる。ある場合において、例えばエラストマーで作られている境界壁の弾性は、残った穿刺孔を塞ぐのに適している。
【0039】
適当には、本発明のこの態様において、容器は、上記したバイアル、シリンジまたはカルプールを含み、穿刺可能部は、上記したクロージャーまたはプランジャーにあってもよい。
【0040】
容器内の酸素濃度は、液体物質の酸化による分解を適当に減少させることができる実験的に測定したレベルであってもよい。適当には、容器内の酸素濃度は1%以下である。
【0041】
容器が上記した方法で充填される場合、容器は、好ましくは、充填に適した状態、例えば空の状態、または例えば液体医薬物質と混合するための添加剤を含有した状態でエンベロープ内に封じられている。
【0042】
容器が上記したバイアルまたはシリンジである場合、クロージャーまたはプランジャー物質は、通常、バイアルまたはシリンジバレル壁材、例えばガラスまたはCOCよりも、酸素透過性である。したがって、この充填工程の後、大気に曝露したクロージャーまたはプランジャー物質は、大気の酸素がクロージャー物質を介して容器内部に拡散するのを防止するために、酸素透過性が低い、または酸素不透過性物質で作られるカバー部でカバーしてもよい。
【0043】
例えば、バイアルは、バイアルの開口部に密接してクロージャーを保持するためのクランプを備えうる。かかるカバー部は、例えばバイアルまたはクランプにスナップ式留め具により取り付け可能であり得る。かかるカバー部は、連続して患者に投与するにあたり、クロージャーに通すことができる中空針によりバイアルから液体内容物を取り出すためにクロージャーにアクセス可能なように完全にまたは部分的に取り外すことができる。かかるクランプとカバー部の組み合わせの例としては、WO−A−2004/018317に開示されている。かかるカバー部に適当な物質は、ポリスチレンまたはポリプロピレンを含む。かかるカバー部の酸素不透過性は、酸素不透過性物質、例えば金属箔で積層状にすることにより増強することができる。
【0044】
容器をさらに、上記した滅菌充填工程に付した後、さらに処理した容器を、好ましくは、低酸素濃度環境下、例えば容器内の濃度と同程度の低濃度下で貯蔵する。容器をかかる条件下で貯蔵することにより、酸素が容器内に拡散することにより容器内に再侵入することを防止する。かかる環境は、例えば、酸素不透過性物質により囲まれる外部容器内に容器を入れ、そこに酸素吸収物質を入れることにより提供することができる。かかる外部容器はまた、低酸素雰囲気、例えば不活性ガス下に置いてもよい。
【0045】
他の態様において、本発明は:
少なくとも一部が酸素透過性壁材で作られた容器;
容器壁材よりも酸素透過性が低いエンベロープ物質であるエンベロープ壁により囲まれ、容器が入れられたエンベロープ;
バイアルとエンベロープ壁の間の酸素吸収物質;
充填するのに適当な状態、例えば、空の状態または液体医薬物質と混合する添加剤を含む状態のエンベロープ内の容器;
を含む組み合わせ製品を提供する。
【0046】
容器中の酸素濃度は、外部大気の濃度以下であり得る。適当には、容器内の酸素濃度は1%以下である。
かかる容器は、上記したバイアルまたはシリンジであってもよい。
【0047】
他の態様において、本願発明は、穿刺可能部を有する、および/または穿刺可能なクロージャーにより塞がれた開口部を有する壁により境され、容器内部の50%以上が外部雰囲気の酸素濃度以下の酸素濃度を有する気体である容器を提供する。好ましくは、容器は、75%以上が外部雰囲気の酸素濃度以下の酸素濃度を有する気体である内部容量を有する。より好ましくは、容器は、90%以上が外部雰囲気の酸素濃度以下の酸素濃度を有する気体である内部容量を有する。最も好ましくは、容器は、外部雰囲気の酸素濃度以下の酸素濃度を有する気体を除いて空である。
【0048】
かかる容器は、上記した滅菌充填法に適している。
容器内の気体の酸素濃度は、1%以下であってもよい。
かかる容器は、容器内の気体を外部雰囲気以下の酸素濃度に低減する上記した方法による製造品であってもよい。
かかる容器は、上記したバイアルまたはシリンジであってもよい。
本発明を、図を参照して一例として説明する。
【0049】
図1、2、3および4は、本発明を図式的に示す。
図5は、容器中の酸素濃度の減少をグラフで示す。
【0050】
図1に関して、これは、バイアル10とエンベロープ壁21の間の酸素吸収物質30と一緒にエンベロープ20内に封じたバイアル10の断面図を示す(2つ示してあるが、これは多くても少なくてもよい)。
バイアル10は、WO−A−2004/018317に開示されているタイプであり、クロージャー13により閉じられる開口部12を有し、壁11とクロージャー13の組み合わせが境界を形成する一般的な円筒体壁11を含む境界により境される。壁11は、壁材、COCポリマーTopas8007、Topas6015またはTopas6013で作られており、厚みは約1.0mmである。典型的には、バイアルの容量は1〜100mlである。クロージャー13は、例えば、WO−A−2005/014419に開示されているようなエラストマーの酸素透過性クロージャー物質から製造される。クロージャー13は、バイアル10に、開口部12の縁の周囲にあるフランジ下部のクランプ14の折れた取り付け部分により保持される。クランプ14は、中央開口部15を有し、これにより、クロージャー13の上部表面16が外部に露出する。図1に示されるバイアルは、Aseptic Technologies,Les Isnes,Belgiumから得た。
【0051】
バイアル10の内部の雰囲気17は、微生物を濾過により除去し、かかる雰囲気内でバイアルおよびクロージャー13の組み合わせを組み立てることにより得られる酸素含有空気である。
【0052】
エンベロープ20は、多層アルミ箔−ポリマー積層材の柔軟な壁21により境されており、アルミ箔は酸素不透過性であり、加熱シールによりバイアル10の周囲を囲む(示していない)。エンベロープ20内の容量は、大気を構成する酸素の量である約20%が減少した場合に、壁21が破壊されるリスクがないように、あるいはエンベロープ20内部の気体の移動を妨げないようにバイアル10に貼り付かないだろう容量である。
【0053】
エンベロープ20内には酸素吸収物質30があり、これは透過性壁の袋内部の酸素吸収物質を含む。この物質30は、公知のタイプであってもよい。エンベロープ20内には、バイアル10を配置し、バイアル10が物質30で汚染される可能性を最小限にするために物質30から分離されていてもよい。
【0054】
酸素吸収物質30は、エンベロープ20内の気体から酸素を吸収し、非酸素ガス、例えば窒素をエンベロープ20内に残す。バイアル壁11およびクロージャー13の物質は酸素透過性であり、酸素はこれらの物質を通り、特にバイアル10のクロージャー13を通り、バイアル10内の雰囲気17の酸素濃度が外部雰囲気の濃度以下と推定されるレベルになるまで拡散する。適当なレベルは、実験的に測定することができる。
【0055】
エンベロープ20内の雰囲気が空気である場合、好ましくは、エンベロープ20内の容量は、20%減少した場合に、壁21が破壊されるリスクがないように、あるいはエンベロープ20内部の気体の移動を妨げないように、バイアル10に貼り付かないだろう容量である。別法として、エンベロープ20は、酸素吸収物質30が実質的にバイアル10の外部に拡散した酸素のみを吸収するように、低酸素雰囲気、例えば実質的に酸素不含の不活性ガス、例えば窒素を含む。別法として、壁21は硬く、エンベロープ20の内部を、不活性ガス、例えば窒素により加圧してもよい。
【0056】
公知の酸素吸収物質30は、空気で開始した場合でさえも、エンベロープ20内の酸素濃度を、約0.1%にまで減少させることができる。適当な時間の経過後、バイアル10内の雰囲気17の酸素濃度は同様のレベルにまで低下し得る。
【0057】
バイアル10は、バイアル10内部に大気の酸素が再侵入しないように、エンベローブ20内に封じ込めて貯蔵する。別法として、エンベロープ20から取り出した後、バイアル10を、密閉した容器中不活性雰囲気下で貯蔵する。バイアル10は、エンベロープ20から取り出し、図2および3に示されるようなさらなる加工操作を行えるように、空である。
【0058】
図2に示されるように、空のバイアル10はエンベロープ20から取り出され、中空注入針40がクロージャー13を介して挿入され、液体内容物18が針40によりバイアル10に導入されている。
【0059】
図3に示されるように、針40はクロージャー13から抜かれ、穿刺孔41が残っており、これは、例えば集光レーザービームによる、穿刺孔41の周囲のクロージャー13の外部表面の部分的加熱によりシールされている。
【0060】
図3はまた、クランプ14にスナップ式留め具により取り付けられたカバー部50を示す。カバー部50は、クロージャー13のエラストマー物質よりも酸素透過性が低い弾性プラスチック物質により作られ、クロージャー13の上部表面16の一部を外に曝している中央開口部15を塞ぐ。カバー部50の中央部51は、例えば、壊れやすい接続部(示していない)により除去可能であり、カバー部の残った部分は、バイアル10からクロージャー13を介して液体内容物18を取り出す中空針(示していない)がクロージャー13にアクセスすることを可能にする。
【0061】
図4は、エンベロープ20内に、シリンジ60とエンベロープ壁21の間の酸素吸収物質と一緒に封入された、平行に並んだシリンジ60(図には3つを示しているが、これは多くても少なくてもよい)の断面図を示す。
【0062】
シリンジ60は、COCポリマーTopas8007、Topas6015またはTopas6013から作られ、約1.0mmの厚みである、一般的な円筒バレル壁61を有する。個々のシリンジバレル60は、開口末端62、およびノズル末端64の反対側にノズル63を有する。開口末端62は、WO−A−2005/014419に開示されているような酸素透過性エラストマーのプランジャー65により閉じられており、バレル61の内側に気密的に滑るようにはめ込まれている。ノズル63は、WO−A−2005/014419に開示されているような酸素透過性エラストマーのクロージャー66により塞がれている。
【0063】
エンベロープ20は、多層アルミ箔−ポリマー積層材の柔軟性の壁21により境されており、アルミ箔は酸素不透過性であり、加熱シールによりバイアル10の周囲を囲む(示していない)。エンベロープ20内の容量は、大気を構成する酸素の量である約20%が減少した場合に、壁21が破壊されるリスクがないように、あるいはエンベロープ20内部の気体の移動を妨げないようにバイアル10に貼り付かないだろう容量である。
【0064】
エンベロープ20内には、上記したように酸素吸収物質30がある。エンベロープ20内には、シリンジ60を配置し、バイアル60が物質30で汚染される可能性を最小限にするために物質30から分離されていてもよい。
【0065】
酸素吸収物質30は、エンベロープ20内の気体から酸素を吸収し、非酸素ガス、例えば窒素をエンベロープ20内に残す。バレル壁61、プランジャー65およびクロージャー66の物質は酸素透過性であり、酸素はこれらの物質を通り、シリンジ60内の酸素濃度が外部雰囲気の濃度以下と推定されるレベルになるまでシリンジ60の外に拡散する。適当なレベルは、実験的に測定することができる。
【0066】
シリンジ60は、バイアル60内部に大気の酸素が再侵入しないように、エンベローブ20内に封じ込めて貯蔵する。シリンジ60は、エンベロープ20から取り出し、注入針(示していない)をプランジャー65またはクロージャー66に通す、図2および3に示されるようなさらなる加工操作を行えるように空である。
【実施例】
【0067】
実験例において、図1に示される構造を有し、上記したAseptic TechnologiesS.A.,Belgiumの製品である3個のバイアルを用いた。バイアルは円筒状であり、約2.5cmの長さ、約1.5cm内径を有し、約1.0mmの厚さのTopas6013壁を有し、内容量は約4mlであった。バイアルの開口部は、WO−A−2005/014419の実施例1〜4のいずれかに従って製造されたエラストマーで作られ、約2mmの厚さのクロージャーにより塞がれていた。バイアルはWO−A−2005005128に記載されているような滅菌製造法により製造され、約21%v:vの通常の大気酸素濃度を含む滅菌された内部を有する。バイアルを、プラスチック物質−アルミ箔積層材で作られた柔軟性の気密エンベロープ内に囲んだ。酸素濃度を約0.1%v:vにまで減少させるための市販の酸素吸収剤を、エンベロープとバイアルの間に置き、エンベロープおよび酸素吸収物質の組み立て品をそのままにした。2週間後、エンベロープを開き、バイアル内部の気体の試料を取り出した。バイアル内の気体の酸素濃度は13%v:vであり、すなわち初期濃度以下であることが確認された。
【0068】
図5は、は、バイアル10の内部の酸素濃度の、大気における濃度約22%からの減少をグラフで示す。酸素濃度の減少は実質的に直線的であり、約5週間で0付近にまで減少すると推定される。実際に、エンベロープ内にバイアルを置き続けると、2ヶ月後には、バイアル内の気体の酸素濃度は0.4%であった。
【0069】
ついで、酸素減少工程を経たバイアルを、Aseptic Technologies SAにより提供される市販の充填ラインを用い、従来の注入針等を用いて慣用的な濾過空気の雰囲気下で、慣用的に用いられる容量までバイアルに充填する、上記したような滅菌充填工程に付した。バイアル中の液体の上部スペースは約0.65%の酸素濃度であることが確認された。
【0070】
対照として、実験バイアルを、クロージャーをこれらの開口部に取り付ける前に、慣用的な手段で窒素でフラッシュした。これは、バイアル内の酸素の約5%付近の濃度であることが確認された。したがって、本発明の方法は、従来の方法よりも有益であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部雰囲気よりも酸素濃度が低い内部雰囲気を有する密閉容器の提供方法であって:
注入針により穿刺可能である部を有する酸素透過境界により境されており、注入針を穿刺可能部に通し、ついで、針を介して液体内容物を導入し、ついで針を抜くことにより容器内に液体内容物を導入する工程に適しており、内部容量の50%以上が初期酸素含有気体である容器を提供すること;
壁材よりも酸素透過性が低い物質のエンベロープ壁により境されたエンベローブ内部に容器を入れること;
容器とエンベロープ壁の間の気体を、容器内の酸素濃度が初期濃度以下になるまでの時間、酸素吸収物質に曝すこと;
を含む方法。
【請求項2】
境界が、容器の内部に通じる開口部を有し、これが酸素透過性穿刺可能なクロージャー物質により閉じられている境界壁を含むことに特徴付けられる請求項1記載の方法。
【請求項3】
容器が、体壁により境され、穿刺可能なバイアルクロージャーにより閉じられた開口部を有するバイアルを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
容器が、ノズル末端およびそのノズル末端の反対側の開口部を有し、開口部が穿刺可能なプランジャーにより閉じられているか、シリンジのノズル末端に開口部を有し、酸素透過性穿刺可能なクロージャーにより閉じられているシリンジバレルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
バイアルまたはシリンジが、酸素透過性プラスチック物質で作られたバイアル壁またはバレル壁を有することを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
酸素透過性プラスチック物質がCOCポリマーを含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
容器に液体内容物が存在しないことを特徴とする上記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
容器が、容器内に導入された液体物質と混合するための添加剤を含有することを特徴とする上記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
エンベロープ壁が柔軟な壁であることを特徴とする上記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
容器内の気体の酸素濃度が、1%以下にまで減少されることを特徴とする上記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
開口部を有するバイアルおよび開口部用のクロージャーが別個に作られ、バイアル壁またはクロージャーの少なくとも1つが酸素透過性であり;
バイアルおよびクロージャーを組み立て、それにより、バイアルの初期容量の50%以上の酸素含有気体が封入され;
ついで、組み立てたバイアルおよびクロージャーを、壁およびクロージャー物質の両方よりも酸素透過性が低い物質であるエンベロープ壁により境されたエンベロープ内に入れ;
容器とエンベロープ壁の間の雰囲気を、容器内の雰囲気の酸素濃度が初期濃度以下に減少する時間、酸素吸収物質に曝すこと;
を特徴とする上記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
容器が、中空注入針を容器の穿刺可能部に通し、液体医薬物質を導入し、ついで、注入針を抜く充填法により充填される前記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
注入針により穿刺可能である部を有し、注入針を穿刺可能部に通し、ついで、針を介して液体内容物を導入することによる容器内への液体内容物の導入工程に適した境界により境された容器を提供し;
該容器が、外部雰囲気の濃度以下のレベルである容器内部の酸素濃度を有し;
中空注入針を穿刺可能部に通し、
注入針を介して容器内に液体物質を導入し、
ついで、注入針を抜くこと;
を含む液体物質を容器に導入する方法。
【請求項14】
容器がバイアルまたはシリンジを含み、穿刺可能部がクロージャーまたはプランジャーを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
容器内部の酸素濃度が1%以下であることを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一部が酸素透過性壁材で作られた容器;
容器壁材よりも酸素透過性が低いエンベローブ物質のエンベロープ壁により境され、容器を取り囲むエンベロープ;
バイアルおよびエンベロープ壁の間の酸素吸収物質;
気体以外は空である、あるいは液体医薬物質と混合する添加剤を含有するエンベローブ内部の容器、
を含む組み合わせ。
【請求項17】
容器が穿刺可能なクロージャーを有し、液体物質が存在しないバイアルを含むことを特徴とする請求項16記載の組み合わせ。
【請求項18】
容器内の酸素濃度が1%以下であることを特徴とする請求項16または17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−506802(P2010−506802A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529684(P2009−529684)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060134
【国際公開番号】WO2008/037699
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509088170)アセプティック・テクノロジーズ・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】ASEPTIC TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】