説明

容器内容物を観察するための方法及び装置

容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法が開示されており、方法は、流動材料を収容する容器へ超音波信号を伝えるステップと、超音波信号が流動材料を通過した後に超音波信号の変化を観察するステップと、超音波信号の変化を流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けるステップとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[0001]本発明は、流動材料を観察するための方法及び装置、例えば、超音波を使用して容器内の流動材料における1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法及び装置に関し、特に、超音波を使用して容器内の流動材料における1つ以上のパラメータを監視すること、例えば、流動材料内における凝集体の存在及び/又は形成を決定し及び/又は発酵を監視することに関する。
【0002】
[0002]容器内の流動材料の特性の変化の観察又は容器内で生じるプロセスの監視は多くの産業において重要である。これらの例としては、発酵タンク内の流動材料の特性の変化の測定、又は、製薬合成容器内の反応の進行の監視が挙げられる。
【0003】
[0003]容器内の流動材料の特性は、個々のパラメータを測定する容器内の固定された機械的なセンサを使用することにより監視されてきた。或いは、容器の外面上に紫外(UV)スペクトル測定機器が配置され、容器の壁の窓を通じて測定を行なうことができてもよい。これらの場合のいずれにおいても、容器の内側にセンサを受け入れるために或いは容器の壁の窓又は開口を通じて測定を行なうことができるように、特別に設計された或いは適合された容器が必要とされる。
【0004】
[0004]液体の上面と向き合わせて超音波センサを下向きに配置するとともに、液体の表面と接触した後に戻る超音波パルスの飛行時間を測定することにより、容器内の液体の高さを測定する(温度補正をする)ことも知られている。
【0005】
[0005]しかしながら、これらの手法は多くの欠点を伴ってきた。例えば、一部の手法は特定の種類の流動材料に適用できず、また、一部の手法は不正確な及び/又は遅延された結果を与え、それにより、大きな労力を要する努力が必要となり、及び/又は、特別に設計された機器が必要となる。
【発明の簡単な概要】
【0006】
[0006]一実施形態において、本発明は、容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法であって、流動材料を収容する容器へ超音波信号を伝えるステップと、超音波信号が前記流動材料を通過した後に超音波信号の変化を観察するステップと、超音波信号の変化を前記流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けるステップとを備える方法に関する。
【0007】
[0007]他の実施形態において、容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法は、約100kHz〜約10000kHzの範囲の周波数を有する超音波信号を、流動材料を収容し且つ約10mm〜約6000mmの範囲の横径を有する容器へと伝えるステップと、超音波信号が前記流動材料を通過した後に超音波信号の変化を観察するステップと、超音波信号の変化を前記流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けるステップとを備えている。
【0008】
[0008]好ましい実施形態において、方法は、容器内の流動材料を監視して、凝集体が流動材料内に存在しているかどうかを決定することを含んでいる。これに加えて或いはこれに代えて、方法の好ましい実施形態は、容器内の発酵を監視することを含んでいる。
【0009】
[0009]本発明の実施形態は、様々な容器、例えば金属製容器等の「再利用可能な」容器又はプラスチック製容器等の「使い捨て可能な」容器を使用して実施することができる。
【発明の詳細な説明】
【0010】
[0016]一実施形態において、本発明は、容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法に関し、当該方法は、流動材料を収容する容器へ超音波信号を伝え、超音波信号が流動材料を通過した後における超音波信号の変化を観察し、超音波信号の変化を流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けることを含んでいる。
【0011】
[0017]他の実施形態において、容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法は、流動材料を収容し且つ約10mm〜約6000mmの範囲の横径を有する容器へ約100kHz〜約1000kHzの範囲の周波数を有する超音波信号を伝え、超音波信号が流動材料を通過した後における超音波信号の変化を観察し、超音波信号の変化を流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けることを含んでいる。
【0012】
[0018]幾つかの実施形態において、方法は、容器内の流動材料の2つ以上のパラメータの変化を監視することを含んでいる。
【0013】
[0019]方法の一実施形態において、当該方法は、容器内の流動材料中における、生成物の出現、対象分子の出現、反応物質の消失、汚染物質の濃度の増大、汚染物質の濃度の減少のうちの1つ以上を監視する(幾つかの実施形態では、これらのうちの2つ以上を監視する)ことを含んでいる。
【0014】
[0020]より好ましい実施形態において、方法は、凝集体が存在しているかどうかを決定するために容器内の流動材料を監視することを含んでいる。これに代えて或いはこれに加えて、方法の他の更に好ましい実施形態は、容器内の発酵を監視することを含んでいる。
【0015】
[0021]幾つかの実施形態において、方法は、容器内の気泡及び/又は泡の存在を著しく減少させることなく実行できる。
【0016】
[0022]本発明の実施形態は、様々な容器、例えば金属製容器等の「再利用できる」容器又はプラスチック製容器等の「使い捨て可能な」容器を使用して実行できる。
【0017】
[0023]流動材料を通過した後における超音波信号の変化は、空間にわたる変化、すなわち、同じ時間に測定される容器内の異なる場所での変化であってもよく、経時的な変化、すなわち、異なる時間であるが容器内の同じ場所での変化であってもよく、或いは、これらの両方の組み合わせであってもよい。超音波信号の変化は、容器内の同じ場所で記録された経時的変化であることが好ましい。
【0018】
[0024]超音波信号の変化は、流動材料を通じた信号の飛行時間の変化、或いは、超音波信号の振幅減衰の変化であってもよい。超音波信号の変化は、超音波信号の振幅減衰の変化であることが好ましい。超音波信号の変化が信号の飛行時間の変化である場合には、通常、流動材料の温度を把握するために調整を行なわなければならない。
【0019】
[0025]容器内の流動材料は、液体、気体、液体/固体混合物又は懸濁液、流動固体、或いは、これらの任意の混合物であってもよい。流体は、例えば、溶質、微粒子、沈殿物、凝集体、ゾル、懸濁液、乳濁液、ミセル、及び、これらの任意の混合物のうちの1つ以上を含むことができる。
【0020】
[0026]容器は、例えば、発酵槽、生物反応器又は化学或いは医薬反応容器等の反応容器;例えば油、医薬、濾液、滞留液(retentate)、食料品、水、燃料、水素又は天然ガス等の燃料ガス、薬品、又は、流体廃棄物のための保持容器;混合容器、例えばクロマトグラフィ媒体を作る際に使用される反応エマルジョン;分離容器;結晶化容器;又は、血液分画容器であってもよい。容器は、任意の適当な材料、例えば、金属(例えばステンレス鋼)又はプラスチック(例えば変形可能な材料、例えばバッグを形成するポリプロピレン、ポリエチレン、シリコン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、これらの混合物のうちの少なくとも1つ等)によって形成することができる。一般に、容器がプラスチック材料から成る実施形態において、容器は、バッグ、例えばポリエチレンが裏打ちされたバッグである。例えば流動材料を受ける及び/又は収容するための様々な適切な容器が当分野で公知である。
【0021】
[0027]容器へ超音波信号を伝える形態としては、容器の外面に超音波エミッタ(超音波トランシーバであってもよい)を取り付けて容器の壁を通じて超音波信号を伝送すること、容器内の流動材料と直接に接触する或いは容器内の流動材料から空間的に分離された容器の壁中に超音波エミッタを封入すること、或いは、容器の壁を貫通する超音波透過材料を介して超音波エミッタから超音波信号を伝送すること、を挙げることができる。別個の超音波受信器の使用も含むこれらの実施形態において、受信器は、前述したように超音波エミッタに対して取り付けることができる。
【0022】
[0028]超音波信号は、容器内の流動材料と直接に接触しない超音波エミッタによって容器へ伝えられることが好ましい。超音波エミッタは、容器の外面に取り付けられるとともに、容器の壁を通じて超音波信号を伝えることが更に好ましい。超音波信号は、超音波エミッタから容器の壁へとそれらの間にある超音波透過材料により伝えられることが更になお好ましい。好ましい実施形態において、超音波エミッタ(存在する場合には、超音波受信器)は容器の外面に対して取り外し可能に取り付けられる。
【0023】
[0029]好ましい実施形態において、容器における1つ以上のパラメータ(幾つかの実施形態では、2つ以上のパラメータ)は、圧力、流体中の溶質濃度、流動材料中の固体粒子濃度、流動材料中の固体粒子の構造的特徴、例えば結晶のサイズ及び/又は形態から選択される。本発明の実施形態は、流動材料で行なわれるプロセス、例えば発酵、化学合成、沈殿、凝集、結晶化、食料品の劣化、例えばミルクが酸っぱくなること、或いは、液体又は液体/固体混合物の汚染を測定場所又は容器内の他の場所で観察すること(したがって、処理される流動材料における1つ以上のパラメータを監視すること)を含んでいる。
【0024】
[0030]本方法において、超音波信号が流動材料を通過した後における超音波信号の変化の観察は、超音波エミッタから切り離され且つ超音波信号が流動材料を通過した後に超音波エミッタにより発せされる超音波信号を受けるようになっている別個の超音波受信器によるものであってもよい。或いは、超音波信号の変化の観察は、超音波信号が流動材料を通過した後に超音波信号を受けるようになっている超音波トランシーバによるものであってもよい。
【0025】
[0031]一実施形態において、超音波トランシーバは、超音波エミッタ及び超音波受信器の両方としての機能を果たす。幾つかの実施形態では、超音波パルスが超音波トランシーバから発せられ、この超音波パルスは、超音波反射体によって反射されて同じ超音波トランシーバにより受けられる。この場合、超音波信号が流動材料を通過する。他の実施形態では、超音波反射体を使用することなく超音波パルスが反射される。例えば、容器の壁がパルスを反射する。
【0026】
[0032]他の実施形態において、本発明は、超音波エミッタと、流動材料を収容する容器に対して超音波エミッタを取り付ける手段とを備える超音波エミッタユニットを提供する。
【0027】
[0033]また、本発明の一実施形態に係る装置は、流動材料を収容するための容器を構成する超音波測定容器と、超音波エミッタと、超音波受信器とを含んでいる。
【0028】
[0034]装置の一実施形態では、超音波エミッタが超音波トランシーバであってもよい。様々な超音波エミッタ、トランシーバ、受信器が本発明における使用に適している。一実施形態では、コア及びクラッドを備えるCLAD超音波トランシーバ(コリメータとしての機能を果たす)を使用できる。偽の超音波ノイズを低減し或いは除去するそのようなデバイスは、使い捨て可能なプラスチック(例えばポリエチレン)製の容器と共に使用するのが特に望ましいといえる。この場合、流動材料を収容する使い捨て可能な容器がロッカー又は攪拌器上に配置されることが更に好ましく、また、デバイスのプローブは、経路長の変化が最小である容器の中心の近傍で容器と接触して配置される。CLADトランシーバの1つの例がSynthesarc社(ケベック、カナダ)によって販売されている。
【0029】
[0035]超音波エミッタユニットは、装着ブロックと、装着ブロックのソケット内にセットされた超音波エミッタと、装着ブロックを容器に対して取り付けるための手段とを備えていることが好ましい。様々な装着ブロック及び装着ブロックを取り付けるための手段が本発明での使用に適している。更に好ましくは、装着ブロックはその開口と共に容器界面を有しており、これにより、超音波エミッタからの超音波信号を装着ブロックを通過することなく容器界面から発することができるようになっている。超音波エミッタユニットが容器の表面上の所定位置にある場合には、超音波エミッタと容器の表面との間に超音波伝送空間が存在することが好ましい。
【0030】
[0036]また、超音波エミッタユニットは、超音波エミッタユニットが容器の表面上の所定位置にあるときに超音波伝送空間を超音波透過材料(couplant)で満たすことができるようにする超音波伝送空間へのアクセス穴も備えていることが好ましい。
【0031】
[0037]超音波伝送空間は、例えばプラスチックフィルム等のフィルムを用いて所定位置に保持される超音波透過材料(couplant)で満たされることが好ましい。この材料は、例えば水、他の液体、又は、超音波透過ペースト又はゲルであってもよい。様々な超音波透過材料が適している。超音波透過ゲルは、例えばケトン又はアルデヒド置換基を有する多価アルコールであることが好ましい。超音波透過ゲルはPall Euroflow社からの専売特許製品であってもよい。
【0032】
[0038]この超音波透過材料は、構成要素間の界面を正確に一致させて満たすことにより、ソケット内にセットされる超音波エミッタから、また、ユニットが装着される容器の表面からの超音波信号の効率的な通信を確保する。
【0033】
[0039]この実施形態において、超音波エミッタは、超音波エミッタ中にセットされてソケットの滑らかな壁と接触するシール界面を形成し或いはソケットの壁中にセットされて超音波エミッタの滑らかな壁と接触するシール界面を形成するOリングシールによりソケット内でシールされることが好ましい。このOリングシールは、超音波伝送容積内に挿入される任意の超音波透過材料がソケットの壁とソケット内に挿入された超音波エミッタとの間で抜け出ることを防止する。
【0034】
[0040]好ましくは、容器界面は、超音波エミッタが固定される容器の表面に対してシールするシールを有している。このシールは、装着ブロックが容器と向き合う超音波伝送容積から超音波透過材料が抜け出ることを防止する。シールは、ゴム又は発泡体等の弾性材料から形成されることが好ましい。このシールは、容器と装着ブロックとの間に水密シールを形成することが更に好ましい。
【0035】
[0041]一般に、超音波エミッタユニット(存在する場合には、受信ユニットも)は、様々な異なる形状及びサイズの容器に対して取り付けられてもよい。ユニットが容器界面上に弾性シールも備えている一実施形態において、弾性シールは、様々な表面曲率に適応するように変形し、その結果、多くの異なるサイズの容器に対するユニットの取り付けを可能にする。
【0036】
[0042]装着ブロックを容器に対して取り付けるための手段は、任意の一時的な或いは永久的な手段を備えていてもよい。一時的な手段は、例えば、超音波エミッタユニットを周回或いは貫通し且つ容器の周囲に或いは容器に対して取り付く1つ以上のストラップ、バネ、クランプ又はブラケット、超音波エミッタユニットを貫通し且つ容器に取り付く磁気固定手段、ネジ又はボルト、又は、かぎホック固定具を含んでいてもよい。永久的な手段は、例えば、接着、溶着又は半田付けを含んでいてもよい。
【0037】
[0043]一般に、本発明に係る方法及び装置の実施形態は、約100kHz〜約10000kHzの周波数を有する超音波信号を利用する。より一般的には、大径容器と共に使用する場合には低周波が好ましく、小径容器と共に使用する場合には高周波が好ましい。
【0038】
[0044]例えば、容器が所定の横断寸法、例えば約800mmを上回る直径、例えば約1000mm〜約6000mmの範囲の直径、例えば約1000mm〜約2000mm又は約3000mm〜約6000mmの直径を有する金属(例えばステンレス鋼)製の容器等の再利用可能な容器である幾つかの実施形態において、超音波信号の周波数は、一般に、約100kHz〜約10MHz(10000kHz)であり、幾つかの実施形態では約100kHz〜約500kHzであり、幾つかの他の実施形態では約100kHz〜約250kHzである。一般に、金属製容器が約3000mm〜約6000mmの直径を有する実施形態では、超音波信号の周波数は約100kHz〜約500kHzである。
【0039】
[0045]容器が所定の横断寸法、例えば約1000mm以下の直径、例えば約10mm〜約800mmの範囲の直径を有する金属製容器等の再利用可能な容器である幾つかの更に他の実施形態では、超音波信号の周波数が一般に約500kHz〜約10MHz(10000kHz)である。
【0040】
[0046]容器が所定の横断寸法、例えば約800mmを上回る直径(使用中に)、例えば約1000mm〜約6000mmの範囲の直径、例えば約1000mm〜約2000mm又は約3000mm〜約6000mmの直径を有するプラスチック(例えばポリエチレン又はポリプロピレン)製の容器等の使い捨て可能な容器である幾つかの他の実施形態において、超音波信号の周波数は、一般に、約100kHz〜約1MHz(10000kHz)、幾つかの実施形態では約100kHz〜約500kHzである。
【0041】
[0047]容器が所定の横断寸法、例えば約1000mm以下の直径、例えば約10mm〜約1000mmの範囲の直径を有するプラスチック製容器等の使い捨て可能な容器である幾つかの更に他の実施形態では、超音波信号の周波数が一般に約500kHz〜約10MHz(10000kHz)である。
【0042】
[0048]方法の更に他の実施形態において、超音波信号の周波数は、約100kHz〜約1MHz(1000kHz)、例えば約100kHz〜約250kHzであり、また、容器は、所定の横断寸法、例えば約800mm以上の直径、好ましくは最大で10メートル(10000mm)の直径、おそらく10メートルを越える直径を有している。
【0043】
[0049]或いは、他の実施形態において、超音波信号の周波数は、約250kHz〜約10MHz(10000kHz)、例えば約250kHz〜約10MHzであり、また、容器の横断寸法、例えば直径は12mm〜25mmである。
【0044】
[0050]例えば、一実施形態において、本装置は、約100kHz〜約1MHz(1000kHz)の周波数を有する超音波信号を利用する。例えば約800mm以上の長い経路長の場合、幾つかの実施形態では低周波、例えば100〜250kHzが好ましく、これに対し、例えば12mm、25mm又は400mmの短い経路長の場合、幾つかの実施形態では高周波、例えば約1MHzを越える周波数が好ましい。このように、好ましい超音波周波数は容器のサイズにしたがって異なる。
【0045】
[0051]幾つかの実施形態では、例えば大きい直径の容器における例えば800mmを越える長い経路長の場合、低い周波数の超音波信号が特に有益である。幾つかの実施形態において、例えば約1MHzを越える高周波超音波信号は、約800mmを上回る経路長にわたって良好な応答を示さない。直径が約800mmを越えるスチール容器の場合、100〜500kHzの周波数、幾つかの実施形態では100〜250kHzの周波数が特に有益である。
【0046】
[0052]本発明に係る方法の実施形態によれば、超音波信号の振幅減衰は、超音波エミッタから発せられる信号の振幅と超音波信号が容器内の流動材料を通過した後において超音波受信器により受けられる超音波信号の振幅との間の差として規定される。本発明の方法及び装置の幾つかの実施形態では、超音波エミッタ及び受信器が超音波トランシーバ内で組み合わせられる。一実施形態において、超音波信号は、トランシーバから発せられて、流動材料を通過するとともに、容器の反対側にあってもよい超音波反射体によって反射されて、超音波トランシーバにより受信される。他の実施形態では、超音波信号が超音波反射体を用いることなく反射され(例えば容器のプラスチック壁により反射され)、或いは、超音波受信器が信号を受信する。
【0047】
[0053]また、1つの容器の外面に多数の超音波エミッタユニット(及びオプションの超音波受信ユニット)を配置することができる。これにより、同じ容器の多くの異なる場所で容器内の流動材料のパラメータを測定できる。
【0048】
[0054]前述した方法及び装置において、容器内の流動材料を通過する超音波信号の発生は、超音波エミッタに接続された信号発生装置によって制御される。この信号発生装置は、各パルスの継続時間、パルスの発生頻度、各パルスの出力、超音波信号が通過する容器のサイズ及び形状並びに超音波の周波数に依存するパラメータのようなパラメータを制御してもよい。
【0049】
[0055]容器内の流動材料を通過した超音波信号は、信号処理装置、例えば標準的な信号処理装置によって解析される。この信号処理装置は、観察される周波数の範囲、信号振幅器の利得、経時的な信号の記録の選好、受信信号を様々な出力装置に表示するための選好、警報信号、及び、以下のうちの1つ以上(幾つかの実施形態では、以下のうちの2つ以上)、すなわち、21CFR11、cGAMP、GxP−関連システム(例えば優良試験所基準(GLP)、臨床試験実施基準(GCP)、及び/又は、製造管理規則(GMP))、迅速微生物学的方法(RMM)、例えばプロセスアナリティカルテクノロジー(PAT)に従う搬出プロセス検証のうちの1つ以上にしたがって医薬等の生成物の製造を監視する受信信号をデータロギング装置に記録すること、のうちの1つ以上を選択するための制御を含んでいてもよい。
【0050】
[0056]信号処理装置は、例えばRS232、USB,GPIB、及び/又は、イーサネット接続を介して遠隔的に操作されてもよい。
【0051】
[0057]前述した方法及び装置は、特に、容器内の流動材料の成分の濃度の変化を測定し、より好ましくは監視するために使用されてもよい。これは、生成物の出現、対象分子、反応物質の消失、流動材料中の汚染物質及び/又は所望の生成物の濃度の増大又は減少、生成物の使用適正又は有効性、及び、反応又はプロセスの超音波「フィンガプリント」がその通常の限界(経路)から外れている場合に警報を引き起こす制御経路のうちの1つ以上を監視する(幾つかの実施形態では、これらのうちの2つ以上を監視する)ことを含んでいてもよい。
【0052】
[0058]また、前述した方法及び装置は、負又は正のフィードバック機構を提供してもよく、この場合、限界を有する制御経路を持つコンピュータによって超音波トレースが監視され、前記限界は、それを越えると、バルブ又は他のそのようなデバイスを開いて以下のうちの1つ以上を行なうことにより、すなわち、試薬を加えること、希釈剤(例えば、水)を加えること、緩衝液/酸/アルカリを加えてpHを変えること、反応の温度及び/又は圧力を変えること、のうちの1つ以上を行なうことにより流体におけるパラメータを元の設定限界内に至らせるように作用し、それにより、プロセスが元の制御下に至らされる。
【0053】
[0059]また、本方法及び装置は、流動材料中の固体材料の量の変化、すなわち液体/固体比率の変化を検出するために使用されてもよい。また、前述した方法及び装置は、容器内の流動材料の圧力の変化を監視するために使用されてもよい。気体は液体よりもかなり圧縮できるため、この用途は、容器内の気体を監視するのに特に有益である。
【0054】
[0060]本発明の実施形態は、多種多様な技術分野において用途を見出すことができる。そのような用途の例示は以下のうちの1つ以上である。
(a)容器内のミルク、ワイン又はビール等の流動食品の発酵、成分又は汚染物質の濃度及び/又は圧力の監視。また、本発明は、容器内の流動食品が劣化しているかどうか、例えばミルクが酸っぱくなっているかどうかを示すために使用されてもよい;
(b)油容器内の原油又は他の油の圧力及び/又は成分又は汚染物質の濃度の変化の測定;
(c)例えば発酵プロセス又は連続或いはバッチ反応装置プロセスによる合成前、合成中及び/又は合成後における、例えば合成又は生合成化学物質、医薬又は栄養補給食品の圧力及び/又は成分又は汚染物質の濃度の変化の監視;
(d)容器内の飲用水、廃水等の水の圧力及び/又は汚染物質の濃度の変化の監視、又は、容器内の廃水又は飲用水中の浮遊物の量の変化の測定;
(e)水素生成装置の容器内の炭化水素又は水素の圧力及び/又は濃度の変化の監視;
(f)容器内の血液濾液等の透析流体の圧力及び/又は成分の濃度の変化の監視;
(g)容器内の天然ガス等の任意の気体の圧力及び/又は成分又は汚染物質の濃度の変化の監視;
(h)例えばクロマトグラフィのためのビードを形成するスチレンジビニルベンゼン(DVB)又はポリメタクリレートの形成等の二相合成反応における相挙動の変化の監視;
(i)流動材料中の成分又は汚染物質のサイズ及び/又は形態等の物理的なパラメータの変化、例えば流動材料中の凝集体、例えば容器内の抗体等の蛋白質の凝集物、容器内の懸濁液(例えばインスリン)中の結晶の形成及び/又は存在の監視;
(j)容器内の流動懸濁液の変化又は沈殿反応の監視;
(k)容器内の流動床の物理パラメータの変化の監視;
(l)拡張床濾過(expanded bed filtration)又は捕捉システムの物理パラメータの変化の監視。これらのパラメータは、システムが安定した拡張床状態に達する時期の検出及び/又は拡張床濾過プロセスの捕捉ステップの監視を含んでいてもよい。
(m)容器内の発酵反応の物理パラメータの変化、例えばアルコール(ビール、ワイン等)及び大豆等の幾つかの食品の生成の監視。
【0055】
[0061]したがって、容器は、反応器又は発酵槽、又は、保持容器或いは輸送容器であってもよい。一般に、容器は、充填床クロマトグラフィカラム以外のものである。
【0056】
[0062]前記リストからの用途(c)(i)(l)及び(m)は特に好ましい。これらに加えて或いはこれらに代えて、本発明の実施形態は、プロセスアナリティカルテクノロジー(PAT)等のプロセス検証に特に適している。
【0057】
[0063]より好ましい実施形態では、処理条件を調整して1つ以上のパラメータが設定限界、所定値又は所定の範囲の値に達することができるように2つ以上のエミッタにより2つ以上のパラメータを監視することを含む用途が望ましいといえる。例えば、1つ以上の成分の濃度の変化が望ましくない値に達する場合には、1つ以上の成分の濃度が所望の(例えば、所定の)値又は値の範囲に達し或いは戻ることができるように、1つ以上の他の監視されたパラメータ(例えば、異なる場所及び/又は頻度で監視されたパラメータ)を調整することができる。これに代えて或いはこれに加えて、1つ以上のパラメータを超音波によって監視することができ、また、処理条件を調整して1つ以上のパラメータが設定限界、所定値又は所定の範囲の値に達することができるように、超音波を使用することなく1つ以上の他のパラメータ及び/又は性状(例えば、pH、栄養供給、エアレーション、攪拌速度のうちの1つ以上)を監視することができる。
【0058】
[0064]以下は、本発明の実施形態にしたがった用途の幾つかの更なる例である。
【0059】
[0065]例えば抗体(例えばモノクローナル抗体)、蛋白質、ペプチド、組み換え蛋白質、プラスミド、ウイルスのうちの1つ以上を生成する発酵又は細胞培養時において(例えば、懸濁時、潅流時、又は、細胞付着システムにおいて)、超音波は、容器内の以下のうちの1つ以上、すなわち、懸濁(攪拌)時の細胞の状態、細胞成長速度、生成物(例えば蛋白質)発現レベルのうちの1つ以上を測定し、例えば監視するために使用できる。前述したように、更に好ましい実施形態では、処理条件を調整して1つ以上のパラメータが所定値又は所定の範囲の値に達することができるように2つ以上のパラメータを監視することが望ましい可能性がある。
【0060】
[0066]本発明の実施形態においては、容器内の流動材料を処理することを含むシステムの様々なポイントで超音波を利用できる。例えば、遠心分離、濾過、及び/又は、クロマトグラフィ等を含む精製及び/又は分離プロセスの一環として、及び/又は、他の処理ポイントで、容器内のプロセス流体を測定し、好ましくは監視する(特徴付けも含む)ために超音波を使用できる保持タンク又は監視タンク内へプロセス流体が移されてもよい。
【0061】
[0067]これに代えて或いはこれに加えて、例えば、保持タンク又は監視タンク等の容器内で生物薬剤、対象分子、例えば蛋白質、核酸又は化合物を製造する一環として、以下のうちの1つ以上、すなわち、精製、濃縮、二量化、オリゴマー化、重合、結晶化、酸化、加水分解、変性、一次、二次、三次、四次構造形成のうちの1つ以上が起こり得る。また、容器内の対象分子は、例えば、凝集することができ、リフォールディング触媒と接触して配置することができ、変性することができ、及び/又は、汚染状態となり得る。本発明の実施形態によれば、これらの態様(性状)のうちの1つ以上を超音波によって測定することができ、好ましくは監視することができる。
【0062】
[0068]遠心分離、濾過(デッドエンド濾過、クロスフロー濾過、ダイアフィルトレーション、滅菌濾過、精密濾過、限外濾過のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない)及びクロマトグラフィ(例えば流動床、拡張床、吸着、吸収)のうちの1つ以上の後、超音波を使用して、望ましくない汚染物質(例えば細胞及び細胞残屑)の除去効率及び所望の生成物の伝送レベルのうちの1つ以上を確認し及び/又は制御することができる。幾つかの用途では、超音波を利用することにより得られる迅速な結果により、処理システムを迅速に最適化して、希釈及び/又は細胞損傷/製造損失を減らしつつ細胞濃度を増大させることができる。
【0063】
[0069]濾過を含む用途に関して、本発明の幾つかの実施形態では、受け容器(例えば保持容器)内の濾液/透過水生成物の存在又は不存在を測定し、より好ましくは監視し及び/又は制御するために超音波を使用することができる。クロスフロー濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む用途に関して、本発明の幾つかの実施形態では、受け容器内の滞留液(retentate)生成物の濃度を測定し、例えば監視し及び/又は制御するため、及び/又は、受け容器内の濾液/透過水生成物の存在又は不存在を測定し、例えば監視し及び/又は制御するために超音波を使用することができる。
【0064】
[0070]前述した全ての用途では、1つだけのユニットの代わりに、一連の超音波エミッタユニット(及び、随意的には、一連の超音波受信ユニット)が使用されてもよい。このことは、容器に沿う異なる点で容器内の流動材料の特性が測定されてもよいことを意味している。
【0065】
[0071]そのような超音波ユニットの配列を使用すると、パラメータの変化及び容器を通じたこれらの変化の伝搬を測定し、より好ましくは監視することができる。例えば、高濃度の溶質を有する流動材料が容器内で希釈される際には、希釈後の溶質の濃度と共に、容器内の流動材料を通じた溶質の拡散を監視することができる。或いは、例えば、凝集又は二量化、オリゴマー化、及び/又は、重合、例えば流動材料中の凝集物の形成を測定することができ、例えば検出し及び/又は監視することができる。例えば、凝集体の形成は、減衰を増大させるとともに、信号を降下させる。凝集の開始はノイズを引き起こし、したがって、信号対雑音(S/N)比が小さくなる。更なる凝集が起こると、S/N比が低くなる。つまり、S/N比の降下(例えばノイズの増大)が凝集を示唆する。S/N比の更なる減少(例えばノイズの更なる増大)は多くの凝集を示唆する。例えばS/N比の変化に加えて、粘度増大(例えば、凝集物の濃度は超音波の減衰に比例する)及び/又は凝集に関連する圧力増大を監視するために超音波を使用することができる。
【0066】
[0072]先に記された用途の全てにおいては、変化を経時的に観察することができ、例えば長期にわたって経時的に観察することができる。本発明の実施形態は、容器内のパラメータをリアルタイムで測定し、例えば監視するために使用されてもよく、また、容器内の流動材料において変化が生じる時期を示すために使用されてもよい。所定の容器から記録された超音波信号と、流動材料の特定の特徴が変えられたとき、例えばミルクが酸っぱくなったとき或いは容器内の反応によって形成される化学性生物が汚れたときに記録された前の信号とを比較することにより、これらの変化をそれらが再び起こるときにリアルタイムで検出することができる。これは、容器内の流動材料を品質制御目的で監視するのに特に有益である。流体生成物の品質を監視するのみならず、本発明の方法及び装置の実施形態は、プロセスの進行を監視する場合にも有益である。この状況では、超音波応答を使用して、例えばプロセスが終了に達した時期又はプロセスが特定の段階に達した時期を示すことができる。本発明の実施形態は、PAT、cGAMP、GxP−関連解析及びRMMのうちの1つ以上において特に適している。
【0067】
[0073]流動材料の品質を監視するのみならず、本発明の実施形態は、容器内のプロセスの進行を監視する場合にも有益である。この状況では、流動材料の超音波応答を使用して、例えばプロセスが終了に達した時期又はプロセスが特定の段階に達した時期を示すことができる。例えば、超音波減衰トレースと前の(例えばうまくいった)反応中に記録されたトレースとを比較することにより反応を監視する。
【0068】
[0074]ここで、一例として、添付の例図を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0069】
[0075]図1に示される実施形態は、容器3に取り付けられた超音波エミッタユニット1を示している。装着ブロック2は、当該装着ブロック2を貫通して容器3を周回するストラップ4によって容器3に取り付けられている。装着ブロック2はそれ以外の方法では容器3に何ら取り付けられていないため、装着ブロックを容器3から容易に取り外すことができ、又は、装着ブロックを他の位置へ容易に移動させることができ、或いは、おそらく他の容器上に移動させることができる。また、ストラップ4は調整することができ、ストラップ4により超音波エミッタユニットを異なるサイズの容器に対して取り付けることができる。
【0070】
[0076]図1は、超音波エミッタ5が装着ブロックのソケット内の所定位置に配置された状態の装着ブロック2を示している。
【0071】
[0077]図2は図1のII−II線に沿う断面を示している。装着ブロック2は、容器3の表面に対してシールを形成するために、その上にシールを伴う容器界面10を有している。装着ブロック2は超音波エミッタ5をソケット11内に有している。超音波エミッタ5は、装着ブロック2内に突出する部分にOリング12を保持する凹部を有している。このOリング12は、超音波エミッタ5と装着ブロック2との間でシールを形成する。
【0072】
[0078]超音波エミッタ5と装着ブロック2が取り付けられる容器3の表面との間には超音波透過ゲル13(カップラント(couplant))が配置されている。このゲルは、超音波エミッタ5と容器3の表面との間で超音波信号の良好な伝送を確保する。
【0073】
[0079]図3は、容器の側面上の異なる位置で容器3の外壁に対して一連の3つの超音波エミッタユニット1が縛り付けられた状態の容器3を示している。これにより、容器内の流動材料のパラメータの測定値を容器の異なるポイントで取得することができる。
【0074】
[0080]また、以下の実施例は本発明を例示しているが、無論、この実施例が多少なりとも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0075】
[0081]簡単な酵母・砂糖発酵生物反応が400mm直径の反応容器内で行なわれた。発酵前に、反応容器の内部及び全てのノズル、チューブ、ポンプがVWP滅菌器(B&J Home brew, Stroud, Glos., UK)を用いて10分間にわたって滅菌された。
【0076】
[0082]8kgのサッカロースが反応容器内の21リットルの熱水(80℃)に対して加えられ、それにより、25リットルの溶液が生成された。この反応溶液を一晩中放置して冷やした。この混合物に対して、一袋のAlcotec 48 Turbo Super Yeast粉末(B&J Home brew, Stroud, Glos.)すなわち全ての栄養素及び酵母を与える専売特許の酵母栄養素混合物が加えられ、それにより、25リットルの水中で8kgのサッカロースが発酵された。周囲の気温を約24℃まで高めるために反応容器に隣接してスペースヒータが配置された。
【0077】
[0083]容器の外壁の上部に分布された超音波変換器の配列によって反応の進行が観察された。発酵が非常に急速であることからCOのゆっくりとした解放を行なうことができなかったため、反応容器には空気トラップが取り付けられなかった。したがって、反応容器の上端には蓋を覆うラップのみが位置された。
【0078】
[0084]超音波読み取り値は、8日間にわたって10分毎が記録された後、時間単位で経時的にプロットされた。
【0079】
[0085]超音波読み取り値と共に、実験の開始時及び発酵の全体にわたって反応混合物の比重が測定された。
【0080】
[0086]発酵は、完了するまで、すなわち、酵母菌が死んで溶液から沈殿する時点までそのまま進行され、その結果、培養液の自然清浄が生じた。
【0081】
[0087]16個の1MHz(1000kHz)超音波変換器の配列が反応容器の垂直壁に対して取り付けられた。下部の9個の変換器は液体の表面レベルよりも下側にあり、底部から10番目の変換器は反応液体と反応液体よりも上側の大気との間の界面にあった。
【0082】
[0088]圧電結晶トランシーバに対して電圧を印加することにより超音波パルスが反応容器を横切って発射された。結晶上で反射される任意の超音波信号を監視するために検出器が使用された。検出器は、読み取り値を、反射された音波パルスの振幅の変化として与えた。利得を変えてスクリーン上及び出力80%フルスクリーン上にトレースを形成するために自動利得制御(AGC)が使用された。そのため、y軸は、出力信号を80%最大出力に戻すために必要とされる利得であり、x軸は時間である。したがって、信号が大きければ大きいほど、超音波が大きく減衰される。
【0083】
[0089]約8時間の間隔で、培養液の比重は測定された。このパラメータは、酵母によるサッカロースのエタノールへの変換に直ちに追従するために使用された。超音波値は、発酵が特定のポイントを通過したら比重情報に直接に従うように見出される。発酵の終点、すなわち、比重パラメータが一定のレベルまで下がった時期は、約1時間の範囲内まで、発酵前とほぼ同じレベルまでの超音波振幅減衰データの戻りと相関関係があった。
【0084】
[0090]図4は、下側の10個の超音波トランシーバ(すなわち、反応混合物の上端面の高さ或いはそれよりも下側で反応容器に取り付けられた超音波トランシーバ)の振幅減衰の経時的な変化を示している。そのトレースに参照符号40が付された変換器は、半分は培養液の上端部に合致しており、半分は表面上の空気に合致しており、そのため、その減衰が大きかった。
【0085】
[0091]変換器信号41(70と80との間で超音波減衰を伴う雑音のあるトレース。この場合、変換器は培養液の表面層よりも上側に配置された)は、反応混合物よりも上側の空隙のみに信号を通過させることにより得られた。この信号は、変換器42〜50によって示される超音波応答の変化が反応混合物の発酵の結果であり単なる装置由来のものを表わす制御信号として作用する。
【0086】
[0092]混合物の比重51も図4に示されている。
【0087】
[0093]超音波応答トレースの多くの急なスパイクは、反応混合物の攪拌に起因していた。
【0088】
[0094]図5は、図4からの超音波変換器48(すなわち、反応混合物の上面の高さよりも下側で反応容器に取り付けられた変換器のうちの1つ)の経時的な振幅減衰変化を示している。振幅減衰信号48に対する多項式フィット52も示されている。混合物の比重51も図5に示されている。
【0089】
[0095]図5において、発酵が停止した時間は、比重読み取り値の安定化によって明確に分かる(比重が変化を停止すると、これは、砂糖のアルコールへの変換が止まったことを表わす)。また、図5は、発酵が終了したことを比重測定値が示すとほぼ同時に、すなわち実験から約95時間で、超音波振幅減衰が実験の開始からのそのほぼ当初の値に戻っていることを示している。
【0090】
[0096]図4及び図5における全ての変換器からの超音波応答は、振幅減衰変化が反応混合物全体の一般的なパラメータの変化に従っており局部的なパラメータ変化に従っていないことを示す曲線の同じ一般形状に従う。
【0091】
[0097]比重によって従来から測定される発酵の進行と超音波振幅減衰との間に相関を見ることができる。
【0092】
[0098]このことは、発酵プロセスが完了に達する時期を知らせるための使用との関連で、容器内のプロセスの進行を観察できる超音波信号の能力を実証している。
【0093】
[0099]また、超音波信号を使用して、発酵反応を監視できるとともに、これと前の成功した発酵からの超音波トレースとを比較して任意の違いを示すことができ、もしかすると更に重要なことには、発酵が前の成功した発酵と同じ(すなわち、品質制御技術と同じ)方法で進行したことを示すことができる。
【0094】
[0100]また、最初の立ち上がりの後、発酵が完了すると、安定した読み取り値への比重の減少と共に振幅減衰トレースが減少するのも分かる。
【0095】
[0101]エタノール溶液は、最初の砂糖溶液と異なる程度まで超音波信号を減衰させる。したがって、発酵が進行して砂糖濃度が降下し且つエタノール濃度が上昇するにつれて、信号減衰に対するそれらの影響が組み合わさる−これにより、図4及び図5に示される超音波減衰の最初の立ち上がりが生じる。図4及び図5における超音波トレースのピークにおいて、超音波信号に対する砂糖濃度の影響はエタノール濃度の影響と等しい。その結果、エタノール濃度が増大して砂糖濃度が減少すると、超音波減衰トレースが降下する。そのため、図4及び図5に示される一般的な繰り返し可能なグラフ形状が形成される。良好なバッチの繰り返しによってかつて学んだ成功的な発酵により形成されるトレースと超音波トレースが著しく異なっている場合、このことは、発酵が失敗しており、対策が必要であることを示している。
【0096】
[0102]これは、プロセスの終了を示す場合だけでなくプロセスの経時的な進行を監視する場合にも超音波を使用できる他の用途を示唆している。
【0097】
[0103]なお、発酵プロセス中に反応混合物が活発に泡立ち、また、驚くべきことに、超音波信号のための反射体又は屈折媒体として作用し得る非常に多くの泡を含むシステムの変化を観察するために超音波を使用できた。
【実施例2】
【0098】
[0104]ワイン発酵反応が400mm直径のアクリル反応容器内で行なわれるとともに、超音波変換器の配列によってワイン発酵反応が監視された。使用前に、反応容器の内部及び全てのノズル、チューブ、ポンプがVWP滅菌器(B&J Home brew, Stroud, Glos., UK)を用いて10分間にわたって滅菌された。反応容器には、空気の侵入を許すことなく気体生成物を解放できるように泡トラップが取り付けられた。
【0099】
[0105]急速発酵ワインキットが混合されて反応容器へと圧送された。発酵で使用されるキットは、「濃縮グレープジュース」、「ワイン酵母/栄養素」袋、「安定剤」袋、A,Bのラベルが付された「ファイニング」の2つのパッケージを含んだ「Cantina 5 Day Wine Kit」(B&J Home brew, Stroud, Glos., UK)であった。
【0100】
[0106]21リットルの全容積を形成するためにグレープジュースが温水(30℃)に対して加えられた。ワイン酵母及び酵母栄養素袋が加えられて十分に混合された。その後、この溶液は、ポンプを使用して底部のノズルを介して反応容器へと圧送された。反応容器の上端にはエアロックが取り付けられた。
【0101】
[0107]反応容器の直ぐ近傍に配置された電気スペースヒータを使用して、雰囲気温度が約24℃で一定に維持された。発酵は、完了するまで、すなわち、酵母菌が死んで溶液から沈殿する時点までそのまま進行され、その結果、ワインの自然清浄が生じた。
【0102】
[0108]先の実施例と同様に、16個の1MHz(1000kHz)超音波変換器の配列が反応容器の垂直壁に対して取り付けられた。下部の7個の変換器61〜67は反応液体の表面レベルよりも下側にあった。圧電結晶トランシーバに対して電圧を印加すると、超音波パルスがカラムを横切って発射された。
【0103】
[0109]任意の反射された超音波信号を監視するために検出器が使用された。検出器は、読み取り値を、反射された音波パルスの振幅の変化として与えた。これらのデータは、培養液の組成及び発酵の進行を超音波によって監視できることを示す曲線で表示された。
【0104】
[0110]超音波読み取り値は、5日間にわたって10分毎が記録された後、時間単位で経時的にプロットされた。
【0105】
[0111]図6は、発酵の全体にわたる超音波振幅減衰の変化を示している。なお、反応混合物の上端にある超音波変換器60番は、半分は反応混合物の上端部に合致しており、半分は表面上の空気に合致しており、そのため、その減衰が大きかった。
【0106】
[0112]図6は、多数の構成要素を備える反応混合物における発酵プロセスを観察するために超音波方法を使用できることを示している。
【0107】
[0113]ここで引用された刊行物、特許出願、特許を含む全ての文献は、それぞれの文献が参照として組み込まれるべく個別に且つ具体的に示されるとともにその全体がここに記載されていたかのごとき同じ程度まで、参照として本明細書に組み込まれる。
【0108】
[0114]本発明を説明する上での(特に、以下の請求項との関連での)用語「a」「an」(1つの)及び「the」(その)並びに類似する指示対象の使用は、本明細書において他に示されておらず或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、単数及び複数の両方を網羅するものと解釈されるべきである。用語「備える」「有する」「含む」「包含する」は、他に言及されていなければ、非制限的用語(すなわち、「それを含むがそれに限定されない」ことを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で他に示されていなければ、その範囲内に入るそれぞれの別個の値を個別に言及する簡単な表記方法としての役割を単に果たそうとするものであり、また、それぞれの別個の値は、あたかもそれがここに個別に示されているかのように本明細書中に組み込まれる。ここで説明した全ての方法は、本明細書において他に示されておらず或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、任意の適切な順序で実行できる。本明細書で与えられる任意の例及び全ての例又は典型的な用語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をよりうまく説明しようとするものであり、他に要求されていなければ本発明の範囲に制限をもたらすものではない。明細書中の用語は、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0109】
[0115]ここには、本発明を実行するための本発明者に知られている最良の形態を含むこの発明の好ましい実施形態が記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、前述した説明を読めば当業者にとって明らかとなり得る。本発明者等は、当業者が必要に応じてそのような変形を使用することを予期しており、また、ここに具体的に示された方法以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、この発明は、適用法により認められる本明細書に添付された請求項に記載された主題の全ての改良及び等価物を含んでいる。また、前述した要素のその全ての想定し得るバリエーションでの任意の組み合わせは、本明細書において他に示されておらず或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】超音波エミッタユニットが取り付けられた容器を貫いたスライスの斜視図を示している。
【図2】超音波エミッタユニットが取り付けられた容器を貫いたスライスの図1のII−II線に沿う断面図を示している。
【図3】その外面に3つの超音波エミッタが取り付けられた容器を示している。
【図4】水/グルコース溶液発酵プロセス中における発酵容器内の11個の異なる場所での比重及び超音波信号振幅減衰の経時的変化を示している。
【図5】発酵プロセス中の水/グルコース溶液における比重及び超音波信号振幅減衰の経時的変化を示している。
【図6】発酵容器内の8個の異なる場所でのワイン発酵プロセスにおける超音波振幅減衰の経時的変化を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法であって、
前記流動材料を収容する前記容器へ超音波信号を伝えるステップと、
超音波信号が前記流動材料を通過した後に超音波信号の変化を観察するステップと、
超音波信号の変化を前記流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けるステップと、
を備える方法。
【請求項2】
1つ以上のパラメータの変化を観察することが、前記容器内の流動材料中における、生成物の出現、対象分子の出現、反応物質の消失、汚染物質の濃度の増大、汚染物質の濃度の減少のうちの1つ以上を監視することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動材料中の凝集体の存在に関して前記流動材料を監視するステップを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器内の発酵を監視するステップを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流動材料を収容する金属製の容器へ超音波信号を伝えるステップを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記流動材料を収容するプラスチック製の容器へ超音波信号を伝えるステップを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上のパラメータが所定の範囲の値に達することができるように流動材料処理条件を調整するステップを更に備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記容器内の前記流動材料の1つのパラメータの変化を監視することが、2つ以上の超音波エミッタから前記容器へ超音波信号を伝えることを備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記容器内の前記流動材料の1つ以上のパラメータの変化を監視するステップを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記容器内の前記流動材料の2つ以上のパラメータの変化を監視することが、2つ以上の超音波エミッタから前記容器へ超音波信号を伝えることを備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
超音波信号が約100kHz〜約10000kHzの周波数を有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記容器内の前記流動材料中の泡及び/又は気泡の存在を著しく減らすことなく発酵を監視するステップを備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
容器内の流動材料の1つ以上のパラメータの変化を観察するための方法であって、
約100kHz〜約10000kHzの範囲の周波数を有する超音波信号を、流動材料を収容し且つ約10mm〜約6000mmの範囲の横断径を有する容器へと伝えるステップと、
超音波信号が前記流動材料を通過した後に超音波信号の変化を観察するステップと、
超音波信号の変化を前記流動材料の1つ以上のパラメータの変化に関連付けるステップと、
を備える方法。
【請求項14】
前記容器が約3000mm〜約6000mmの範囲の横断径を有する場合において、約100kHz〜約1000kHzの範囲の周波数を有する超音波信号を前記容器へ伝えるステップを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記流動材料を収容する金属製の容器へ超音波信号を伝えるステップを備える、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記流動材料を収容するプラスチック製の容器へ超音波信号を伝えるステップを備える、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記流動材料が変性蛋白質及び/又はリフォールディング触媒を備える、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
約100kHz〜約500kHzの範囲の周波数を有する超音波信号を前記容器へ伝えるステップを備え、前記流動材料が変性蛋白質及び/又はリフォールディング触媒を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記容器が約10mm〜約1000mmの範囲の横断径を有している、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−528950(P2008−528950A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548765(P2007−548765)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014153
【国際公開番号】WO2006/069797
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】