説明

容器内残存酸素量の低減方法及びその装置

【課題】 置換ガスの無駄がなく少ないガス量で効果的にガス置換ができ、しかも時間経過によるガス濃度の低下が少ない容器内残存酸素量の低減方法及びその装置を提供する。
【解決手段】搬送中の容器1の移動に追従して、回転板18が回転することによって、回転板の置換ガス噴出口23が固定板に形成された置換ガスチャンバの開口面を通過する際にセパレータ15で形成された放射状の置換ガス流出路16に置換ガスが順時供給され、置換ガスの流出方向を容器1の移動に追従して連続的に変化させることができ、容器がガス置換ゾーンを通過する間、容器の開口部に向けて置換ガスを連続的に直接吹き込まれる反面、容器が通過しない位置には置換ガスは放射されないので、置換ガスの無駄がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶やカップ等の容器に内容物充填後にヘッドスペースを不活性ガスに置換して密封するガス置換包装における容器内の残存酸素低減方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の容器包装において内容物の酸化・劣化を防止するために内容物充填後のヘッドスペースのガス(空気)を窒素ガス等の不活性ガス(以下置換ガスという)に置換して包装することが一般に行なわれている。従来のガス置換包装は、内容物充填装置から密封装置への搬送路の上方を置換ガス噴出孔を有するプレート又はフードで覆って、上方又は側方より容器開口部に向けて置換ガスを噴出するか(例えば、特許文献1、2参照)或は搬送路の上方を半密閉型のトンネルで覆って、容器開口部に向けて上方及び側方より置換ガスを噴出することにより行なっている(例えば、特許文献3、4)。これら従来のガス置換装置において、容器開口の上方より置換ガスを吹きこむ場合、あるいは側方より吹き込む場合の何れの場合も、搬送路に沿って単数又は複数の噴出ノズルを配置して、ノズルから直接容器に向けて置換ガスを噴出するか、或は搬送路に面する面に多数のノズル孔が形成されたノズルプレートで囲われた置換ガスチャンバを設けて、該チャンバ内に噴出したガスをノズルプレートを介して容器搬送路に向けて一様に噴出するようにしている。
【特許文献1】特開昭63-125118号公報
【特許文献2】特開平11−157507号公報
【特許文献3】特開2001−58609号公報
【特許文献4】特開2004−123217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のガス置換装置において、例えば搬送路上方から容器に向けて直接噴出する場合、容器はノズルの下方位置を通過する時のみ置換ガスが容器内に吹き込まれる。そのため、搬送路上方をプレート、又はトンネル状に囲っても、容器のガス置換率はノズル対向位置で不活性ガスが吹き込まれる(以下、該方法を対向式という)とその瞬間では置換率は向上し、ほぼ100%に近くまで上昇するが、ノズル位置から離れるにしたがって置換率が低下する。図9のグラフに比較例として示されている線図bは、従来の装置におけるトンネル内で、搬送中の容器に直上から窒素ガスを吹き込みヘッドスペース内のガス置換を略100%行なった場合、その後のトンネル内通過時間に伴なうガス置換率の変化を解析した結果を示している。該グラフに示すように、ヘッドスペースのガス置換率は、トンネル内に入ってからノズル直下に到達するまで急激に上昇し、ノズル直下では略100%に達しても、ノズル位置を離れると次第に置換率が低下していることが分かる。したがって、従来の対向式では置換率向上に限界がある。対向式で置換率を向上させるには、容器の搬送路に沿って多数のノズルを配置して、そこを通過する容器に常に置換ガスを吹き込むことが考えられるが、その場合多量の置換ガスを必要として、コスト高になると共に、内容物が充填された容器は密集状態でコンベヤ上を搬送されることがなく、必ず所定間隔を隔てて搬送されるので、容器が位置してない部分にも置換ガスが吹き込まれることになり、置換ガスに多くの無駄が生じるという問題点がある。置換ガスチャンバから多数の噴射孔を有するノズルプレートを介して容器に噴射する場合は、該プレートが配置されている区間は常時容器内に置換ガスが吹き込まれるが、前記のように容器がない位置にも置換ガスが吹き込まれることになり、置換ガスの無駄が多く、且つ置換率を向上させるにはそれだけ大量の置換ガスを噴出しなければならないので、コスト高になるという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、ガス置換ゾーンでの容器のヘッドスペースの高ガス置換率を維持することができてヘッドスペース内の残存酸素量を低減することができ、しかも置換ガスの無駄を少なくし少ない置換ガス量で効果的にガス置換ができ、置換ガスの流量節減が可能な容器内残存酸素量の低減方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の容器内残存酸素量の低減方法は、充填工程から密封工程へ搬送中の容器のヘッドスペースの空気を置換ガスで置換して容器内残存酸素量を低減させる方法であって、搬送中の容器の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむことを特徴とするものである。
【0006】
前記置換ガスの容器への流入位置の連続的変化は、容器の移動に追従して流入する置換ガスの流入方向を連続的に変化させることにより達成できる。また、他の方法として、容器の移動に追従してノズルの位置を連続的に変化させることにより達成できる。さらに、他の方法として、搬送路に沿って配置した複数のノズルへの置換ガスの供給を容器の移動に追従して順次切り替えることにより達成できる。
【0007】
また、上記課題を達成する本発明の容器内残存酸素量の低減装置は、充填装置から密封装置へ搬送中の容器のヘッドスペースの空気をガス置換ゾーンで置換ガスで置換して容器内残存酸素量を低減させる装置であって、容器搬送路に沿って置換ガス噴出装置を配置し、該置換ガス噴出装置が搬送中の容器の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむ追尾手段を有することを特徴とするものである。
【0008】
前記追尾手段は、容器搬送路に面する側を、搬送方向に沿って複数に区切って先端が開口するように放射状に配置された複数のセパレータ、該セパレータ間に置換ガスを供給する置換ガス供給口を容器の搬送に追従して移動させる置換ガス供給切替手段からなり、容器の移動に追従して容器に流入する置換ガスの流入方向を連続的に変化させるように構成した手段を採用することによって達成される。前記置換ガス供給切替手段は、前記セパレータの両側又は片側に配置された回転板と固定板の組合せから構成され、前記固定板には所定角度範囲の円弧溝からなる置換ガスチャンバが形成され、該置換ガスチャンバは置換ガス源と連通し、前記回転板と接触する側は開口し反対側は閉塞してなり、前記回転板には前記固定板の置換ガスチャンバの開口に沿って移動できるように置換ガス供給口が1個又は等間隔に複数個貫通して形成されている。
【0009】
また、他の追尾手段として、搬送路に対向する面がコンベヤ搬送路に沿って所定間隔に配置された複数のノズルを有するノズルプレートとなっている置換ガスチャンバ本体、該置換ガスチャンバ本体内に前記ノズルのチャンバ側開口を覆うように回転駆動可能に配置された回転板からなり、該回転板には1個又は円周上に等間隔に配置された複数個の置換ガス供給口が形成され、前記ノズルプレートには、前記各ノズルごとに前記回転板の置換ガス供給口の回転軌道に面して所定ピッチで開口するノズル流入口が連通して形成されてなることを特徴とする構成を採用することができる。さらに、他の追尾手段として、搬送路に対向する面が開口して配置された置換ガスチャンバ本体、該チャンバ本体の開口部を覆って容器搬送速度に追従して回転駆動される無端状のノズルベルトからなり、該ノズルベルトには、所定間隔でノズルが配置され、該ノズルが容器と同期して前記置換チャンバの開口面を通過する間だけ、置換ガスが該ノズルから流出するようにしてなることを特徴とする構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器内残存酸素量の低減方法及び低減装置によれば、搬送中の容器の移動に追従して置換ガスが流入する位置を連続的に変化させて容器内に吹き込むので、容器が移動中常に置換ガスがヘッドスペースに吹き込まれるので、高いガス置換率を得ることが可能であり、しかも容器が位置する部分のみに置換ガスを吹きこむので、置換ガスの無駄がなく、効率良くガス置換ができ、置換ガスの節減を図ることができる。さらに、請求項2及び請求項5、6によれば、容器の移動に追従して流入する置換ガスの流入方向を連続的に変化させているので、前記効果に加え容器の置換ガスが吹きこみ難い周壁近傍の隅部まで一様に置換ガスを吹きこむことができ、ガス置換率を向上させることができる。そして、請求項5、6によれば、置換ガス流路が放射状に傾斜しているので、装置を小型化して、搬送路の広範囲にわたって、置換ガスを容器に追従して吹きこむことができるという利点がある。
【0011】
さらに、請求項3及び請求項8の構成によれば、容器の移動に追従してノズルへの置換ガスの供給を順次切りかえるので、容器に追従して噴出するノズルが変化し、しかもノズルを搬送路の中心線に沿って配置可能となり、より確実に容器内に置換ガスを吹きこむことができ、より効率的にガス置換ができる。請求項4及び請求項9の発明によれば、容器の移動に追従してノズルを連続的に移動させるので、ノズルと容器の相対的位置関係を一定に保ったまま、移動中の容器に置換ガスを吹きこむことができ、より安定したガス置換を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、充填装置から密封装置へ搬送中の容器のヘッドスペースの空気をガス置換ゾーンで置換ガスで置換する際、従来の対向式置換トンネルで容器内に吹き込んだ置換ガスが時間と共に減少して、管内の残存酸素量が増えていくのを解消しようとするものであり、時間が経過しても置換率が低下しないで高置換率を、少ない置換ガス量で達成しようとするものである。その目的を本発明では、図1に示す手段を採用することによって達成することができた。図1は、本発明の第1の実施形態の概略説明模式図であり、容器1がコンベヤ2によって図において右側から左側に進む場合を示し、容器のヘッドスペースにはノズルの下方を通過する瞬間だけ噴射するのでなく、ノズル3からの噴射方向(矢印4で示す)を移動する容器に追従して変化させ、容器が置換ゾーンを通過する間、常にノズルから直接容器のヘッドスペースに向けて置換ガスを噴射するようにし、それにより置換効率を高め容器内残存酸素量を従来よりも低減できるようにしたものである(第1実施例及び第2実施例)。
【0013】
また、上記目的は、搬送路に沿って配置した複数のノズルへの置換ガスの供給を容器の移動に追従して順次切り替える手段を採用することにより達成できる(第1実施例及び第2実施例)。さらに、容器の移動に追従してノズルの位置を連続的に変化させる手段を採用することにより達成できる(第3の実施形態)。
【実施例1】
【0014】
図2〜図4は本発明の第1実施例の容器内残存酸素の低減装置10を示している。本実施例は、容器の搬送路の上方に置換ガス噴出装置を配置した場合であるが、搬送路の側方に配置することも可能である。
本実施例に係る容器内残存酸素量の低減装置10は、容器搬送路上方に沿って置換ガス噴出装置11を配置し、該置換ガス噴出装置が搬送中の容器1(本実施例では缶が図示されている)の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむ追尾手段を有している。本実施例の追尾手段は、下端が開口している箱状の装置本体12の搬送方向中央部に左右を横断するように側壁13、13間に円筒体14を固定し、図2、3に示すように、上端が円筒体14の外周面に接触し、下端が側壁13、13下端に位置するように複数のセパレータ15を円筒体14から略放射状に延びるように配置して、後述するように、置換ガスを容器の搬送に追尾して連続して流入する向き変えて放射する置換ガス流出路16を形成している。セパレータ15は円筒体14、又は側壁13、13間の何れか或は両方に固定して配置する。したがって、セパレータ15間は、容器搬送方向に沿って搬送路上方を円筒体14を中心にして略放射状に区切ってその下端が側壁下端に沿って開口する放射状の置換ガス流出路16を形成する。置換ガス流出路16は、コンベヤによって間隔sで搬送される容器の直径dとすると、最外側のセパレータの延長線が容器開口端と交差する位置間の間隔が略d+2sに跨るように区分するのが望ましいが、少なくとも容器の搬送ピッチpの範囲に置換ガスを噴出可能とする。それによって、容器は、1ピッチ進む間連続して置換ガスの供給を受けることができると共に、置換ガス噴出装置はその連続して噴出する置換ガスを、無駄にすることなく、連続して次の容器内に向け流出することができる。
【0015】
セパレータ15の左右側端には、図示のように、一対の回転板18と固定板20の組合せからなる置換ガス供給切替手段が配置されている。回転板18は、セパレータ15の左右側端に直接面するように配置され、左右の回転板18が装置本体に適宜の軸受手段により回転自在に軸受けされた回転軸19によって一体に連結され、適宜の駆動手段により同期して回転駆動するように配置され、その外側には一対の固定板20が、後述する置換ガスチャンバの置換ガスが固定板と回転板の間から洩れないように適宜のシール手段を介して接触配置してある。固定板20は、図4(a)に示すように、円弧状の置換ガスチャンバ21を有し、該置換ガスチャンバ21は回転板18と対向する面が本実施例では120°の範囲にわたって開口し、反対側壁面は置換ガス供給口22が開口している以外は閉塞している。置換ガス供給口22は適宜の配管手段により置換ガス源に連結しているが、本実施例では、置換ガス配管が中央部の軸内部を通過して反対側の固定板の置換ガスチャンバにも同時に置換ガスを供給できるように配管してある。
【0016】
回転板18には、図5(a)に示すように、それが回転するときに、固定板20の置換ガスチャンバ21の開口面を通過する位置に置換ガス噴出口23が貫通して設けられている。本実施例では、置換ガスチャンバ21の開口面が120°の範囲にわたって設けられているので、常に1つの置換ガス噴出口23が開口面に面するように、120°間隔で3個の置換ガス噴出口23が配置されている。
【0017】
本実施例の容器内残存酸素量の低減装置は、以上のように構成され、固定板20の置換ガスチャンバ21に供給された置換ガスは、回転板18が回転することによって、回転板18に形成された置換ガス噴出口23が置換ガスチャンバ21の開口面を通過する際に置換ガス内と連通して置換ガス噴出口23を通って置換ガスが噴出する。置換ガス噴出口は、回転板の回転に伴なって順次セパレータ15の端部を通過していくので、図3に示すように置換ガス流出路16に両側の回転板18を介して上流側から順次置換ガスが供給され、供給された置換ガスは流出路の開口から搬送中の容器開口部に向けて噴出される。したがって、回転板18が容器の搬送速度と同期して回転することによって、置換ガスは容器の移動に追従して置換ガスが噴出する置換ガス流出路16が順次変わり、置換ガス置換ゾーンを通過する間中常時、容器の開口部に向けて置換ガスが直接流入される反面、容器が通過しない位置には置換ガスは放射されないので、置換ガスの無駄がない。しかも本実施例では、置換ガス流出路が放射状に配置されているので、置換ガスの流出方向が容器の移動に追従して変化し、図3に示すように上流側から向かえる方向で噴出し、次第にその角度が小さくなり、回転軸の直下で垂直方向に流入し、その位置を過ぎると次第に反対側の送り方向に傾斜して容器に置換ガスを流入させることができる。したがって、本実施例では、容器の置換ガスが吹きこみ難い容器周壁近傍の隅部まで一様に置換ガスを吹きこむことができ、ガス置換率を向上させることができると共に、装置を小型化して搬送路の広範囲にわたって、置換ガスを容器に追従して吹きこむことができるという利点がある。
【0018】
上記実施例の装置を使用して、次の条件でガス置換を行なった場合の置換利率のトンネル内の変化を測定して、従来の対向式で行なった場合の比較を行なった。
缶搬送ピッチ 95mm
ライン速度 1200缶/分
コンベヤ速度 1900mm/s
置換ガス量 100NL/min
実施例は、前記実施例の低減装置における中央の置換ガス流出路16の下方に缶中央位置に達したときを基準にして、その位置から缶の搬送の2ピッチ分前から置換ガスの吹き込みが開始され(そのときを0秒とする)、容器の搬送に追従して置換ガスの吹き込み方向が変わり、時間が0.1秒のときに丁度置換ガスが吹出す置換ガス流出路の直下を缶が通過し、更に2ピッチ分(時間的に0.1秒から0.2秒まで)吹出口の吹く方向が変わりながら缶を追尾して、容器内に置換ガスを吹き込んでいる。図9のグラフにおける線図(a)は、2ピッチ分前の1つの缶に着目して缶のヘッドスペース中の空気の置換率を調べたものである。また、比較例として、上記と同一条件で窒素ガスを固定位置で噴出した場合のガス置換率の経時変化を調べた。その結果を図9のグラフにおける線図(b)で示す。同グラフにおいて、縦軸はヘッドスペース中の置換ガスを重量%で表示してある。
その結果、比較例はノズルと対向した位置では瞬間的に高置換率を達成したが、その後時間の経過とともに低下し、0.3秒後には86%まで低下した。これに対し、本発明では、ノズル直下位置近傍で高置換率となるが、その後も容器の移動に伴う置換率の低下が少なく、0.3秒後まで90%以上の置換率を維持することができ、本実施例装置の有効性が確認できた。
【実施例2】
【0019】
図6は、本発明の第2実施例の容器内残存酸素の低減装置30を示している。本実施例に係る容器内残存酸素量の低減装置30は、容器搬送路上方に沿って置換ガス噴出装置31を配置し、該置換ガス噴出装置が搬送中の容器1の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむ追尾手段を有している。本実施例の追尾手段は、搬送路に対向する壁面(本実施例では底壁)がコンベヤ搬送路に沿って所定間隔に配置された複数のノズル34を有するノズルプレート39となっている置換ガスチャンバ本体32と、該置換ガスチャンバ本体内に前記ノズルのチャンバ側開口を覆うように回転軸38を介して回転駆動可能に配置された回転板35の組合せで構成されている。前記ノズル34は、前記実施例と同様に、容器に追従して置換ガスを噴出するノズルが変わり、容器が略1ピッチ進む間容器に直接置換ガスを供給できるように、適宜の間隔で複数本が直列に配置されている。該ノズルは実線で示すように、搬送路に向けて垂直であってもよいが、前記実施例のように搬送方向に向けて容器への置換ガスの流入角度を順次変化させるように、破線で示すように順次傾斜させて設けるのが望ましい。
【0020】
置換ガスチャンバ本体33の反対側壁面には、置換ガス供給管(図示せず)が連接している置換ガス供給口36が形成されている以外は、閉塞状態であり回転板35との間に置換ガスチャンバ33を形成している。回転板35は、1個又は複数個の置換ガス噴出口37が形成されている。該置換ガス噴出口37は、図7に仮想線で示すように、円弧状に形成され、後述するように、容器に連続して置換ガスを供給できるように、ノズルプレート39に形成された隣接する置換ガス流入口40間のピッチと同じ円弧長を有するのが望ましい。ノズルプレート39には、各ノズル34ごとに回転板35の置換ガス供給口37の回転軌道に面して所定ピッチで開口する置換ガス流入口40が連通して形成されている。したがって、図において置換ガス噴出口37の回転軌道面に位置する両端側のノズル34は、直接置換ガス噴出口37から置換ガスが供給されるが、内側に位置するノズルは、図7に示すように置換ガス流入口40を介してノズル34に供給され噴出するようになっている。
【0021】
本実施例の装置は、以上のように構成され、回転板35の回転が容器の移動速度とほぼ同期して回転し、容器の移動に伴って、回転板35の置換ガス噴出口37が順次隣接するノズルへの置換ガス流入口40上に移動し、置換ガス噴出口37と一致した位置で置換ガスチャンバ33と直結し、ノズル34に置換ガスが供給され、その下方を通過する容器1内に置換ガスを吹きこむ。したがって、容器の移動に伴なって、置換ガスを噴出するノズルも変化するので、容器が置換ゾーンを移動する間、容器内には常に置換ガスが吹きこまれることになる。
【実施例3】
【0022】
図8は、本発明の第3実施例の容器内残存酸素の低減装置50を示している。本実施例に係る容器内残存酸素量の低減装置50は、容器搬送路上方に沿って置換ガス噴出装置51を配置し、該置換ガス噴出装置は搬送中の容器1の移動に追従して置換ガスを噴出するノズルを連続的に移動して、置換ゾーンを移動中容器内に置換ガスを連続的に吹きこむことができる追尾手段を有している。本実施例の容器内残存酸素量の低減装置50は、搬送路に対向する面が開口して配置された置換ガスチャンバ本体52、該チャンバ本体の開口部53を覆って容器搬送速度に追従して回転駆動される無端状のノズルベルト54からなり、該ノズルベルトには、所定間隔でノズル55が所定ピッチされている。ノズル55は、ノズルが取付けられる位置には貫通孔56が形成され、該穴を囲んでノズルが垂直に固定されている。したがって、ノズルベルト54が回転駆動することにより、ノズル55がチャンバ本体52の開口部に面すると、ノズルベルトの貫通孔56を介してノズル内に置換ガスが流入してノズルから吹き込まれる。したがって、ノズルが容器の開口部に面した状態でノズルベルト54が容器搬送コンベヤと同期駆動されると、ノズルも容器の移動に追従して移動することになり、置換ゾーンを通過する間、常時容器内にノズルから置換ガスが吹きこまれることになり、容器内のガス置換率を従来よりも向上させることができ、容器内残存酸素量を低減することができる。しかも、ノズルと容器が同期して移動する置換ガスは容器開口部に向けてのみ噴出され、置換ガスの無駄が生じない。なお、図8において57は、ノズルベルト54と置換ガスチャンバ本体との間に設けられたガス遮断用のシールである。また、他の実施例においても可動部分と置換ガスチャンバとの間には適宜のガスシール手段が施されている。
【0023】
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限るものでなく、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。例えば、上記実施例は置換ガスを容器の搬送路上方に配置した場合を示したが、必ずしも上方に配置する場合に限定されず、搬送路の側方に配置して、側方から容器の移動に追従して容器に置換ガスを吹き込むようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、容器への内容物の充填密封ラインにおいて、容器のヘッドスペースのガス(空気)を少ない置換ガス量で効率的に高置換率で置換でき、容器内残存酸素の低減手段として有用であり、缶に限らず種々の形態の容器へのガス置換包装に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の容器内残存酸素量の低減方法の実施形態の概念説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る容器内残存酸素量の低減装置の概略斜視図である(実施例1)。
【図3】図2の装置の正面模式図である。
【図4】その固定板であり、(a)は平面図、(b)はその中心縦断面図である。
【図5】その回転板であり、(a)は平面図、(b)はその中心縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る容器内残存酸素量の低減装置の正面断面模式図である(実施例2)。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る容器内残存酸素量の低減装置の正面断面模式図である(実施例3)。
【図9】時間経過と容器ヘッドスペース中のガス置換率の変化の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
1 容器 2 コンベヤ
3 コンベヤ 4 矢印(ノズルからの噴射方向)
10、30、50 容器内残存酸素量の低減装置
11、31、51 置換ガス噴出装置
12 装置本体 14 円等体
15 セパレータ 16 置換ガス流出路
18 回転板 19、38 回転軸
20 固定板 21、33 置換ガスチャンバ
22、36 置換ガス供給口
23、37 置換ガス噴出口
34 ノズル 35 回転板
39 ノズルプレート 40 置換ガス流入口
52 置換ガスチャンバ本体 53 開口部
54 ノズルベルト 55 ノズル
56 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填工程から密封工程へ搬送中の容器のヘッドスペースの空気を置換ガスで置換して容器内残存酸素量を低減させる方法であって、搬送中の容器の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむことを特徴とする容器内残存酸素量の低減方法。
【請求項2】
前記置換ガスの容器への流入位置の連続的変化は、容器に流入する置換ガスの流入方向を容器の移動に追従して連続的に変化させることにより行なう請求項1に記載の容器内残存酸素量の低減方法。
【請求項3】
前記置換ガスの容器への流入位置の連続的変化は、搬送路上方に沿って配置した複数のノズルへの置換ガスの供給を容器の移動に追従して順次切り替えることにより行なう請求項1に記載の容器内残存酸素量の低減方法。
【請求項4】
前記置換ガスの容器への流入位置の連続的変化は、容器の移動に追従してノズルの位置を連続的に変化させることにより行なう請求項1に記載の容器内残存酸素量の低減方法。
【請求項5】
充填装置から密封装置へ搬送中の容器のヘッドスペースの空気をガス置換ゾーンで置換ガスで置換して容器内残存酸素量を低減させる装置であって、容器搬送路に沿って置換ガス噴出装置を配置し、該置換ガス噴出装置が搬送中の容器の移動に追従して置換ガスが容器に流入する位置を連続的に変化させて、置換ガスを容器内に吹きこむ追尾手段を有することを特徴とする容器内残存酸素量の低減装置。
【請求項6】
前記追尾手段が、容器搬送路に面する側を、搬送方向に沿って複数に区切って先端が開口するように放射状に配置された複数のセパレータ、該セパレータ間に置換ガスを供給する置換ガス供給口を容器の移動に追従して移動させる置換ガス供給切替手段からなり、容器の移動に追従して容器に流入する置換ガスの流入方向を連続的に変化させるようにしてなる請求項5に記載の容器内残存酸素量の低減装置。
【請求項7】
前記置換ガス供給切替手段が、前記セパレータの両側又は片側に配置された回転板と固定板の組合せからなり、前記固定板には所定角度範囲の円弧溝からなる置換ガスチャンバが形成され、該置換ガスチャンバは置換ガス源と連通し、前記回転板と接触する側は開口し反対側は閉塞してなり、前記回転板には前記固定板の置換ガスチャンバの開口に沿って移動できるように置換ガス供給口が1個又は等間隔に複数個貫通して形成されている請求項6に記載の容器内残存酸素量の低減装置。
【請求項8】
前記追尾手段が、搬送路に対向する面がコンベヤ搬送路に沿って所定間隔に配置された複数のノズルを有するノズルプレートとなっている置換ガスチャンバ本体、該置換ガスチャンバ本体内に前記ノズルのチャンバ側開口を覆うように回転駆動可能に配置された回転板からなり、該回転板には1個又は円周上に等間隔に配置された複数個の置換ガス供給口が形成され、前記ノズルプレートには、前記各ノズルごとに前記回転板の置換ガス供給口の回転軌道に面して所定ピッチで開口するノズル流入口が連通して形成されている請求項6に記載の容器内残存酸素量の低減装置。
【請求項9】
前記追尾手段が、搬送路に対向する面が開口して配置された置換ガスチャンバ本体、該チャンバ本体の開口部を覆って容器移動速度に追従して回転駆動される無端状のノズルベルトからなり、該ノズルベルトには、所定間隔でノズルが配置され、該ノズルが容器と同期して前記置換チャンバの開口面を通過する間だけ、置換ガスが該ノズルから流出するようにしてなる請求項6に記載の容器内残存酸素量の低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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