説明

容器内面洗浄方法

【構成】上部を開放した容器へ、容器と相似形状の洗浄媒体吐出ノズル付き内蓋を挿入して、容器と内蓋とで出来た洗浄空間で、洗浄媒体を流動する洗浄システム。
【効果】洗浄媒体を保持する容積が従来と比べ少ない為、それに伴い洗浄媒体の使用量を低減でき、ノズルからの噴流で効果的な洗浄が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化学物質,放射性物質等で、内面が汚染された容器における、容器内面洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】容器内面洗浄について従来は、特公昭58−26994 号公報に示すように、洗浄媒体吐出ノズルを用いた、容器内面へ向けての洗浄媒体の局所的噴流によるもの、または容器内部を洗浄媒体で満たし、必要に応じ洗浄媒体を撹拌することで行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】洗浄媒体吐出ノズルを用いた従来の洗浄方法では、洗浄媒体の噴流が容器内に局所的にしか当たらない為、作業に手間と時間を要する。
【0004】また、これに対し容器内部を洗浄媒体で満たす方法の場合、作業は容易であるが、容器の容積とほぼ同等の量の洗浄媒体が必要となり不経済的であると共に、洗浄後の廃洗浄媒体の処理が問題となる。洗浄の原理は、以上二種の方法共、容器の内表面近傍での洗浄媒体の流動が必要である。
【0005】本発明の目的は、容器内部を洗浄媒体で満たす方法を基に、これらの課題を解決する場合、容器中央部へ不要に滞留する洗浄媒体の排除、及び容器内表面近傍での、洗浄媒体の流動特性の向上を行うことが必須であり、これらの条件を改善することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、容器内へ、空間形成部材を挿入し、空間形成部材に洗浄媒体吐出ノズルを取り付け、抵抗体を取り付けた空間形成部材を回転させる。
【0007】
【作用】容器内部を洗浄媒体で満たす方法の利点を利用しつつ、本方法を採用することにより、容器内面の洗浄に直接関与しない容器中央部の、不要な洗浄媒体を排除することができる。これにより、従来と比べ洗浄媒体の使用量の低減、及び廃洗浄媒体発生量の低減ができる他、洗浄性能の向上が図れる。
【0008】
【実施例】
(実施例1)図1に、上部を開放した容器に空間形成部材として、内蓋を挿入した場合の実施例を示す。
【0009】容器1にスペーサ15で支持した、洗浄媒体の洗浄ノズル19の付いた内蓋2を挿入している。容器下部には、洗浄媒体抜出管13及び、撹拌用エア注入管12がある。
【0010】洗浄媒体循環ライン14には、洗浄媒体循環ポンプ6を設置している。尚、内蓋の中へは必要に応じ、容器内での内蓋の浮力とバランスをとる為、水等の液体4を入れる。容器内での洗浄媒体の流動は、ポンプ6による洗浄媒体の循環、それに伴う内蓋に取り付けた洗浄ノズル19からの洗浄媒体の吹き出し、または撹拌用エア注入管12からの、圧縮空気の容器内への吹き込みによる。
【0011】洗浄操作の終了後、洗浄媒体は洗浄媒体抜出管13より抜き出す。
【0012】(実施例2)図2に、上部を開放した開口部の小さい容器に空間形成部材として中子を挿入した場合の、実施例を示す。
【0013】容器1に、スペーサ15で支持した中子3を挿入している。中子3は、折り畳み可能な材質で出来ており、折り畳んだ状態で容器内へ挿入する。
【0014】中子上部には中子を膨らます為の気体、または液体の注入管18,中子内液抜出し管20,中子内気体抜出し管21,中子内気体のベント弁10,洗浄媒体注入管5がスペーサ15と共に設置してある。
【0015】中子内液抜出管20には中子内液抜出ポンプ16が、中子内気体抜出管21には中子内気体抜出ポンプ17が接続してある。容器下部には、洗浄媒体抜出管13及び、撹拌用エア注入管12が設置してある。洗浄媒体循環ライン14上には、洗浄媒体循環ポンプ6を設置している。尚、中子内へは必要に応じ、容器内での中子の浮力とバランスをとる為の水等の液体4を入れる。
【0016】洗浄操作は、中子3へ中子内液体(気体)注入管18から、気体または液体を注入し、中子を膨らませた後、中子3と容器1の空間に、洗浄媒体注入管5から洗浄媒体を注入する。次に、洗浄媒体循環ポンプ6の起動、または洗浄空間へ撹拌用エア注入管12から撹拌用エアを吹き込むことで、容器内部の洗浄媒体を流動させ、容器内面を洗浄する。洗浄終了後、洗浄媒体は、洗浄媒体抜出管13より抜き出す。中子は、内部の液体を中子内液体抜出ポンプ16により抜き出した後(中子を液体で膨らました場合)、続いて内部の気体を中子内気体抜出ポンプ17により抜き出し、縮めて、容器1より取り出す。
【0017】(実施例3)図3に、上部を開放した容器に、空間形成部材として回転する内蓋を挿入した場合の、実施例を示す。
【0018】容器1に、抵抗体11の付いた回転する内蓋2を挿入している。容器下部には洗浄媒体抜出管13を設置してある。内蓋2へは回転用駆動源7が接続している。
【0019】尚、内蓋2の中へは必要に応じ、容器内での内蓋の浮力とバランスをとる為、水等の液体4を入れる。
【0020】洗浄を行う為の容器内での洗浄媒体の流動は、内蓋2の回転によると共に、同時に、内蓋の抵抗体11で容器内面の汚れを掻き落す。洗浄媒体は洗浄操作の終了後、洗浄媒体抜出管13より抜き出す。
【0021】(実施例4)図4に、上部を開放した開口部の小さい容器に、空間形成部材として回転する中子を挿入した場合の実施例を示す。
【0022】容器1に、回転する中子3を挿入している。中子3は、折り畳み可能な材質で出来ており、折り畳んだ状態で容器内へ挿入する。
【0023】中子上部には中子を膨らます為の中子内液体(気体)注入・排出管9,中子内気体のベント弁10、及び中子回転用駆動源7との接続部8,洗浄媒体注入管5を設置してある。容器底部には、洗浄媒体抜出管13を設置してある。尚、中子3の内へは必要に応じ、容器内での中子の浮力とバランスをとる為の、水等の液体4を入れる。
【0024】洗浄操作は、中子3へ中子内液体(気体)注入・排出管9から気体または液体を注入し、中子を膨らませた後、中子3と容器の空間に、洗浄媒体注入管5から洗浄媒体を注入する。次に、中子3と駆動源7の間の接続を、中子回転用駆動源接続部8で行った後、中子を回転させて容器内面を洗浄する。洗浄終了後、洗浄媒体は、洗浄媒体抜出管13より抜き出す。中子は、駆動源7との接続を中子回転用駆動源接続部8で切り離した後、中子内液体(気体)注入・排出管9と中子内液体抜出ポンプ16との接続を行い、中子内部の液体を抜き出す(中子を液体で膨らました場合)。続いて、同様に中子と中子内気体抜出ポンプ17を接続して、中子の内部の気体を、抜出し、中子を縮めて、容器1より取り出す。
【0025】
【発明の効果】洗浄媒体の保持容積低減に伴い、洗浄媒体使用量及び廃洗浄媒体発生量の低減が出来ると共に、洗浄媒体の流動方法の改良により、洗浄性能の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による容器内面洗浄システムの説明図。
【図2】本発明の実施例2による容器内面洗浄システムの説明図。
【図3】本発明の実施例3による容器内面洗浄システムの説明図。
【図4】本発明の実施例4による容器内面洗浄システムの説明図。
【符号の説明】
1…被洗浄容器、2…内蓋、4…液体、6…洗浄媒体循環ポンプ、12…撹拌用エア注入管、13…洗浄媒体抜出管、14…洗浄媒体循環ライン、15…スペーサ、19…洗浄ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】容器内に空間形成部材を挿入し、前記容器と前記空間形成部材とで出来た洗浄空間に洗浄媒体を注入することで、前記容器内を洗浄することを特徴とする方法。
【請求項2】請求項1において、前記空間形成部材は、前記容器より小さく、前記容器と相似形状とし、前記容器と前記空間形成部材との隙間の空間容積を極小とする容器内面洗浄方法。
【請求項3】請求項1または2において、液体または気体により膨張する前記空間形成部材を使用する容器内面洗浄方法。
【請求項4】請求項1,2または3において、前記空間形成部材の外面に一つ以上の抵抗体を設置し、前記空間形成部材を強制回転させる容器内面洗浄方法。
【請求項5】請求項1,2,3または4において、前記空間形成部材へ洗浄媒体吐出ノズルを設置する容器内面洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−173926
【公開日】平成8年(1996)7月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−319763
【出願日】平成6年(1994)12月22日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)