説明

容器包装用フィルム及びそれを用いたシーラントフィルム、積層体、容器包装袋及び容器包装体

【課題】 外観及び抗互着性に優れ、容器内容物への異物混入の恐れのない容器包装用フィルムに好適な樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 プロピレン系重合体90〜40質量%と高密度ポリエチレン10〜60質量%とを含み、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であり、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まないことを特徴とする樹脂組成物、それを用いた容器包装用フィルム、シーラントフィルム、積層体、容器包装袋及び容器包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や薬剤を充填した容器を収納し包装する容器包装袋に用いられる容器包装用フィルム等に関する。特に容器と容器包装袋との高圧蒸気滅菌後の抗互着性(アンチブロッキング性)に優れ、外観にも優れた容器包装用フィルム、該フィルムを用いたシーラントフィルム、積層体、容器包装袋及び容器包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品あるいは薬剤等を充填した容器を容器包装袋に収納し包装する事が行われている。包装の目的は用途によって異なるが、容器表面への傷防止等容器そのものの機械的損傷防止及び酸素透過防止、紫外線透過防止等主に内容物の変質防止などの保護を目的とするもの、さらには印刷等による内容物、取り扱い基準の明示など容器内容物の説明を目的とするものなど多くの目的の為に容器包装袋が使用されている。
【0003】
容器包装袋へ容器を包装した際にしばしば問題になるのは、包装された容器を倉庫等で保管する間に容器と容器包装袋の間、または容器と接触していない容器包装袋の周縁部同士の間が互着(ブロッキング)して、使用する際に容器包装袋から容器を取り出しにくくなることである。近年、安全衛生面から容器包装袋に容器を包装した容器包装体を高圧蒸気滅菌後使用する場合が増えてきている。また、生産性を上げる為に高圧蒸気滅菌温度をより高くし、高圧蒸気滅菌時間を短くすることも行われるようになってきている。互着は高温ほど発生しやすい為、容器包装体には、この互着の問題を解決することが大きな技術課題として要請されている。また、容器が医療用容器の場合には、容器内容物の品質をより安定的に一定の品質に維持する為に容器包装体を減圧にし、医療用容器と容器包装袋との空間の体積を減少させ、容器包装袋と医療用容器とを密着させた状態で高圧蒸気滅菌が行われるため、容器包装体は容易に互着が発生する条件下で使用されるようになってきている。
【0004】
互着を防ぐための一つの方法としては従来、容器と容器包装袋との接触面の素材を選定するにあたって、異なる材質を用いる方法及びその材料の融点またはガラス転移温度が高く耐熱性の高い材質のものを用いる方法などがとられてきた。これらの方法は有効な方法であるが、一方で容器やフィルムの材質、構成等に限定を加えるため問題があった。例えば、容器包装用フィルムを袋状に成形し容器包装袋を得るには、一般の熱融着という方法が最も安価な方法として世の中に受け入れられており、この熱融着に好適な容器包装袋の素材としては、プロピレン系またはエチレン系重合体、いわゆるポリオレフィンが広く用いられている。これに制約を加える事は経済的にも大きな問題があり好ましくない。
【0005】
互着を防ぐ他の方法は、例えばポリオレフィン系容器を、ポリオレフィン系樹脂を熱融着層としたフィルムで包む場合にあるように、フィルムの熱融着層表面を物理的に荒らして、容器との接触面積を減らす方法がある。このような方法の具体例としては、フィルムに凹凸加工を施し粗面化する方法(例えば、特許文献1参照)、フィルムにシボ加工やエンボス加工等により物理的変形を加える方法がある。また、特定の樹脂組成物を用いる方法としては、容器包装袋の内面にポリブテン−1と、ポリプロピレン及び/もしくはポリ−4−メチルペンテン−1との重合体組成物を用いる方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。さらに、フィルムの熱融着面を構成するポリオレフィンに添加剤を添加する方法がある。用いられる添加剤はシリカ、タルク等の無機充填剤、球状の架橋性ポリメタクリル酸メチル等の有機系アンチブロッキング剤、ステアリン酸カルシウム等の金属石けん系滑剤、エルカ酸アミド等のフィルムのスリップ剤として多く使用されている脂肪酸アマイド系滑剤などがある。
【0006】
しかし、これらの方法ではフィルムの外観が悪くなったり、あるいは添加剤がブリードして容器に付着したりするなどの問題があり、十分な方法とは言えなかった。また、高圧蒸気滅菌の温度が121℃以上となると抗互着性が不十分であった。特に容器の材質によっては、容器が容器包装袋と密着した状態で行われる高圧蒸気滅菌等の操作により、容器包装袋に含まれる添加剤が容器壁を通過して異物混入となったり、内容物を変質させたりする恐れがあるため、添加剤を実質的に使用せず外観に優れ、かつ抗互着性にも優れた容器包装袋が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−309124号公報
【特許文献2】特開平5−31156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン系材料からなり、外観及び抗互着性に優れ、容器内容物への異物混入の恐れのない容器包装用フィルムを提供することを主な課題とする。また本発明は本発明の容器包装用フィルムを用いたシーラントフィルム、積層体、容器包装袋及び容器包装体を提供することを課題とする。このような好ましい特性が付与される理由は明らかではないが、本発明に係る容器包装用フィルムは、特定のポリオレフィン系材料からなる樹脂組成物を用いることで、実質的にアンチブロッキング剤を含まずとも表面が均一に粗面化され、容器との接触面積が減少するため互着性が低下したものと推定される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題解決の為に鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオレフィン系樹脂を組み合わせた樹脂組成物を容器包装用フィルムとし、容器と接触する面に用いることによって前記課題が解決できる事を見出し、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明は以下の(1)〜(10)に示される樹脂組成物、それを用いた容器包装用フィルム、シーラントフィルム、積層体、容器包装袋及び容器包装体に関する。
【0010】
(1)プロピレン系重合体90〜40質量%と高密度ポリエチレン10〜60質量%(プロピレン系重合体と高密度ポリエチレンを合わせて100質量%とする。)とを含み、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であり、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
(2)プロピレン系重合体と高密度ポリエチレンとを含み、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まない樹脂組成物からなる容器包装用フィルムであって、125℃、30分高圧蒸気滅菌後の容器包装用フィルム同士の動摩擦係数が0.4以下であることを特徴とする容器包装用フィルム。
(3)樹脂組成物がプロピレン系重合体を90〜40質量%、高密度ポリエチレンを10〜60質量%(プロピレン系重合体と高密度ポリエチレンを合わせて100質量%とする。)とを含み、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であることを特徴とする(2)に記載の容器包装用フィルム。
(4)サポート層とシーラント層からなるシーラントフィルムであって、(2)または(3)に記載の容器包装用フィルムをシーラント層とすることを特徴とするシーラントフィルム。
【0011】
(5)(2)もしくは(3)に記載の容器包装用フィルム、または(4)に記載のシーラントフィルムからなる層と、ガスバリア層、印刷層及び保護層からなる群から選ばれた少なくとも一種の層とを有することを特徴とする積層体。
(6)容器との接触面が(2)または(3)に記載の容器包装用フィルムであることを特徴とする容器包装袋。
(7)(6)に記載の容器包装袋に容器が収納され高圧蒸気滅菌されていることを特徴とする容器包装体。
【0012】
(8)高圧蒸気滅菌の温度が121℃以上であることを特徴とする(7)に記載の容器包装体。
(9)容器が医療用容器であることを特徴とする(7)または(8)に記載の容器包装体。
(10)容器包装袋と接触する容器の外表面がプロピレン系重合体からなることを特徴とする(7)ないし(9)のいずれかに記載の容器包装体。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述した様に本発明の容器包装用フィルムは、安価なポリオレフィンからなりコストも安く、外観及び抗互着性に優れるため、容器包装袋としたときの容器の取り出しが容易である。また可塑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含まないため、容器を汚染する恐れが無く、医療用容器包装などの容器包装分野に利用でき有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられるプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜20個のプロピレン以外のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体である。α−オレフィンとしてはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用される。これらα−オレフィンのうちエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテンが好ましく、エチレンがより好ましい。共重合体の種類としてはランダム共重合体または一般にハイインパクトポリプロピレンと称されるいわゆるブロック共重合体が挙げられ、後述するシーラントフィルムとしたときのサポート層との層間接着強度、柔軟性にすぐれることからブロック共重合体が好ましい。プロピレン系重合体を製造する際に用いられる触媒は特に限定はなく、従来のチグラー・ナッタ触媒のほかにメタロセン系触媒を用いることができる。これらはバルク法、溶液法、スラリー法、気相法等各種の製造プロセスで製造できる。
【0015】
プロピレン系重合体のJIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)は、0.1〜50g/10分が好ましい。MFRがこの範囲未満では成形性が低下する傾向にあり、一方、MFRがこの範囲を超えると強度及び熱融着性が低下する傾向がある。より好ましいMFRの範囲は0.1〜20g/10分であり、さらにより好ましくは0.25〜20g/10分である。
【0016】
本発明に用いられる高密度ポリエチレンはエチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20個のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体である。α−オレフィンとしては好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用される。これらα−オレフィンのうち1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテンがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる高密度ポリエチレンの密度は、通常0.940g/cm3以上であり、好ましくは0.945g/cm3以上、より好ましくは0.950g/cm3以上である。上限については特に限定されるものではないが0.965g/cm3程度である。密度が0.940g/cm3未満では、抗互着性に劣る傾向にあり、特に121℃を越える温度での滅菌処理時の抗互着性の低下が大きくなり易い。
【0018】
高密度ポリエチレンのJIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRは0.05〜50g/10分が好ましい。MFRがこの範囲内であれば樹脂組成物の溶融張力が適切な範囲となりフィルムの成形が容易である。より好ましいMFRの範囲は0.05〜20g/10分であり、さらにより好ましくは0.1〜10g/10分である。
【0019】
本発明の樹脂組成物におけるプロピレン系重合体と高密度ポリエチレンの配合割合は、プロピレン系重合体と高密度ポリエチレンを合わせて100質量%としたときに、プロピレン系重合体が90〜40質量%の範囲であり、好ましくは60〜80質量%である。プロピレン系重合体の配合割合が40質量%未満だと容器包装用フィルムの外観が悪化したり、耐熱性が不足したりする、一方プロピレン系重合体の配合割合が90質量%を超えると抗互着性が低下する。
【0020】
本発明の樹脂組成物におけるプロピレン系重合体のMFR〔MFR(PP)〕と高密度ポリエチレンのMFR〔MFR(HD)〕との比〔MFR(PP)/MFR(HD)〕は5〜200であり、10〜100が好ましく、15〜50がより好ましい。MFR(PP)/MFR(HD)が5未満だと、抗互着性が十分でないことがあり、また200を超えると容器包装用フィルムにゲル、フィッシュアイ等が発生しやすい等成形性の問題やフィルムの外観状の問題などが生じ易くなる。
【0021】
本発明の容器包装用フィルムは、プロピレン系重合体と高密度ポリエチレンとを含み、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まない樹脂組成物からなる容器包装用フィルムであって、125℃、30分高圧蒸気滅菌後の容器包装用フィルム同士の動摩擦係数が0.4以下であるものである。ここで、動摩擦係数はJIS K 7125に準拠して測定した値である。動摩擦係数が0.4以下であると、容器包装袋としたときの開口性がよくなり、さらに容器包装体から容器を取り出し易くなる。また、高密度ポリエチレンの配合割合を下げることにより動摩擦係数は下がる傾向にある。さらに、本発明の樹脂組成物からなる容器包装用フィルムであれば耐熱性に優れ、抗互着性にも極めて優れたものとなる。
【0022】
本発明の容器包装用フィルムを得る方法は特に限定されないが、例えば、本発明の樹脂組成物に用いられる各成分をミキシングロール、バンバリミキサー、ヘンシェル、タンブラー及びリボンブレンダーなどの混合機で混合した後、押出機などを用いて一旦ペレットにし、その後各種フィルム成形法により成形する方法により得ることができる。フィルム成形法としては水冷式又は空冷式押出インフレーション法、Tダイ法などにより製造する方法が挙げられる。また、本発明の容器包装用フィルムの厚みは30〜300μm、好ましくは30〜200μmとすることができる。
【0023】
本発明の容器包装用フィルムは単層のシーラントフィルムとして用いることができるが、容器包装用フィルムをシーラント層とし、サポート層と積層させたシーラントフィルムとしても用いることができ、サポート層と積層させることで透明性が高く、サポート層側の平滑性が高いシーラントフィルムを得ることができる。サポート層としては、特に限定されるものではないが、エチレン系重合体、プロピレン系重合体などの一般のポリオレフィンを用いることができる。これらのうち耐熱性が高い点からプロピレン系重合体が好ましい。プロピレン系重合体としてはホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体が挙げられ、これらのうち耐衝撃性に優れることからプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。またサポート層とシーラント層の厚み比は、サポート層/シーラント層=50〜95/5〜50とすることが好ましい。
【0024】
本発明の積層体は、本発明の容器包装用フィルムまたはシーラントフィルムからなる層と、ガスバリア層、印刷層及び保護層からなる群から選ばれた少なくとも一種の層を有する。ガスバリア層、印刷層及び保護層に用いられる素材としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)、アルミニウム箔、2軸延伸または無延伸ポリアミド、2軸延伸または無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリエチレンナフタレート(PEN)、酸化アルミニウム蒸着PET、シリカ蒸着PETなどが挙げられる。
【0025】
本発明の積層体を得る方法は公知の各種成形法を用いる事ができる。具体的には、水冷式または空冷式(共)押出(多層)インフレーション法、(共)押出(多層)Tダイ法の如く溶融成形で複数の層を同時に成形する方法、ドライラミネート法の如くそれぞれ単層のフィルムあるいはシートを成形しておいて接着剤等を用いて積層する方法、押出ラミネート法の如く一方のフィルムやシートを予め成形しておいて他方をその上に溶融積層する方法などが挙げられる。これらの中でも、水冷式(共)押出(多層)インフレーション成形法、(共)押出(多層)Tダイ成形法を用いるのがより好ましい。
【0026】
本発明の容器包装袋は、本発明の容器包装用フィルムまたはシーラントフィルムを熱融着により袋としたものであり、容器と接触する面が本発明の樹脂組成物からなる容器包装用フィルムとされているものであり、容器を収納し包装した際に容器との互着が発生せず、外観も良好である。容器包装袋を得るためには、本発明の容器包装用フィルム、シーラントフィルムまたは積層体を使用し、熱、高周波、超音波等を用いて融着させ袋状に加工する方法を用いることができる。また、真空成形して容器を得る方法、本発明の樹脂組成物を用いて中空成形法等を用いて最初から容器形状に作り上げることもできる。さらに、用途によっては容器包装用フィルム表面に凹凸加工を施しても構わないことは言うまでもない。
【0027】
本発明の容器包装体は本発明の容器包装袋に容器が収納され高圧蒸気滅菌されたものである。高圧蒸気滅菌はレトルト分野、医療分野などで通常用いられている水没式、スプレー式などの方法が用いられる。特に近年、生産性の向上、食品の風味保持、滅菌性の向上などの点から、従来100〜115℃程度であった高圧蒸気滅菌温度が高くなり121℃以上の高圧蒸気滅菌温度が採用され、容器の材質もポリエチレン、塩化ビニルなどから耐熱性の高いプロピレン系重合体などが使用される様になり、容器を包装して高圧蒸気滅菌することが行われるようになってきている。容器は単一素材からなる単層容器や多種素材からなる多層容器などがあり、いずれの場合でも必要に応じて接着剤層を有していてもよい。容器の素材としては、成形性と経済性の観点からポリオレフィン系樹脂が使用されていることが多い。これら容器を収納した本発明の容器包装体は耐熱性に優れ121℃以上の高圧蒸気滅菌後の抗互着性に極めて優れており、125℃の高圧蒸気滅菌後の抗互着性にも優れている。特に容器が柔軟なポリオレフィン系樹脂製のシートやフィルムからなる場合には容器包装袋と密着して互着が発生しやすいが本発明の容器包装体ではこのような場合にも互着が殆ど起こらない。さらに、容器が高カロリー輸液、腹膜透析用輸液(CAPD)などの医療容器として用いられるフィルムバッグ、ブローバッグ、ブローボトルなどの場合には滑剤、アンチブロッキング剤がブリードする恐れの無い本発明の容器包装体の好ましい態様である。
【0028】
また、本発明の容器の容器包装袋に直接接触する面、即ち容器の外表面がプロピレン系重合体からなるものは、容器に柔軟性を付与するために、エチレンやブテン−1を共重合成分としたプロピレン系共重合体やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどエラストマー成分が添加されたものが使用されることがあるが、プロピレン系共重合体やエラストマー成分を含むプロピレン系重合体はプロピレン単独重合体に比較して互着しやすくなっているため、本発明の抗互着性にすぐれた容器包装体の効果がより明確に発揮される。
【0029】
本発明における特定のピロピレン系重合体及び高密度ポリエチレンならなる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわないかたちで他の重合体を配合することができることは言うまでもない。そのような重合体の具体例としてはいわゆる高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等の各種スチレン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体及びそのアイオノマー等が挙げられるがこの限りではない。他の重合体の配合量は、本発明の樹脂組成物全体に対して、40質量%以下、好ましくは20質量%以下とすることが好ましい。特にスチレン系エラストマーなどのポリオレフィン以外の配合量が増えると容器包装袋の熱融着部のヒートシール強度が低下する傾向がある。
【0030】
また、さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲において、本発明のシーラントフィルム、積層体及び容器包装袋には強度改善、減容化及び燃焼廃棄時の低カロリー化等を目的として、有機または無機充填材を配合したり、その他通常用いられる公知の添加剤、例えば帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、有機あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤などを適宜必要に応じて配合することができる。但し、本発明の樹脂組成物、容器包装用フィルムには滑剤、アンチブロッキング剤を実質的に含まないことが必要である。ここで、実質的に含まないとは、滑剤及びアンチブロッキング剤がブリードしない程度には、含んでいても構わないということであり、具体的には、アンチブロッキング剤が4000ppm以下、滑剤が4000ppm以下であることが好ましく、アンチブロッキング剤が1000ppm以下、滑剤が1000ppm以下であることがより好ましく、全く含まないことが最も好ましい。
【0031】
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
用いたプロピレン系重合体及び高密度ポリエチレンを以下に示す。なお、プロピレン系重合体のMFRはJIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。高密度ポリエチレンのMFRはJIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nで測定した。
(プロピレン系重合体)
A1:MFR 15g/10分のプロピレン単独重合体
A2:MFR 5g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体、エチレン含量4.3質量%
A3:MFR 2.2g/10分のプロピレン・エチレンブロック共重合体
(高密度ポリエチレン)
B1:MFR 1g/10分、密度0.960g/cm3
B2:MFR 0.6g/10分、密度0.955g/cm3
(添加剤)
C1:アルミノシリケート(シリカ系アンチブロッキング剤)
C2:ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系アンチブロッキング剤
【0033】
物性測定方法を以下に示す。
(動摩擦係数)
内寸30×30cmで3方熱融着した容器包装袋に1000mLの水を入れ熱融着により封入して水入り容器包装袋を作製した。この水入り容器包装袋を、スプレー式高圧蒸気滅菌機を用いて125℃で30分の滅菌処理を行った後、開袋して排水させ、その後、風乾させた容器包装袋の内面側同士の動摩擦係数をJIS K 7125に準拠し、23℃×50%RHの環境下で測定装置(東洋精機製、フリクションテスターTR型)を用いて測定した。
【0034】
サンプル作製法を以下に示す。
(容器)
上記A2のプロピレン・エチレンランダム共重合体をTダイフィルム成形装置を用いて、温度230℃で成形し厚さ200μmのフィルムを得た。このフィルムを20cm×20cm角に裁断し、2枚合わせて三方の端部同士を温度180℃、圧力0.2MPa、時間1秒、融着幅10mmで熱融着し容器を得た。この容器に蒸留水を1L充填し、残りの一方を熱融着して、容器サンプルとした。
(容器包装用フィルム、容器包装袋、容器包装体及び高圧蒸気滅菌)
プロピレン系重合体、高密度ポリエチレン及び添加剤を表1に示した組成で、ヘンシェルミキサーにて混合し、Tダイ成形機にて温度230℃で成形し、70μmの容器包装用フィルムを得た。このフィルムを35cm角に切断し、2枚重ねて三方を温度180℃、圧力0.2MPa、1秒間、融着幅10mmで熱融着し容器包装袋を作製した。これに前記容器サンプルを収納した後、内部を真空ポンプで減圧にしながら、フィルムの残り一方を熱融着し容器包装体を得た。
この容器包装体を、スプレー式高圧蒸気滅菌機を用いて125℃で30分の滅菌処理を行った。
【0035】
評価方法を以下に示す。
(外観)
高圧蒸気滅菌後の容器包装体から容器を取り出し、容器包装袋の30cm×30cmの領域を9つの10cm×10cmの領域に区画し、内外表面の荒れの状態を目視で観察し、均一なスリガラス状で良好な外観を有する区画の数と不均一に表面が荒れていて外観が不良である区画の数を数え、次の基準で評価した。
○:良好な外観を有する区画の数が7〜9
△:良好な外観を有する区画の数が4〜6
×:良好な外観を有する区画の数が0〜3
【0036】
(抗互着性)
高圧蒸気滅菌後の容器包装体を開口し、容器包装体から容器を手で取り出すさいに次の基準で評価した。
○:容器包装袋にまったくひっかからず抵抗なく、容易に取り出すことができる。
△:容器の一部と容器包装袋の一部が弱く互着しているが、容易に取り出せる。
×:容器の一部が容器包装袋と強く互着していて取り出しが難しい。
(フィルムインパクト)
動摩擦係数測定時と同様にして高圧蒸気滅菌して作製した容器包装袋を切断したフィルムを用いJIS P8184に準拠し、23℃×50%RHの環境下で測定した。
【0037】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表1に示す種類及び配合量の樹脂組成物を用いて容器包装用フィルム、容器包装袋、容器包装体を作製した。外観及び抗互着性を評価した結果を表1に示す。
(実施例6、7)
シーラント層に実施例1と同じ種類及び配合量の樹脂組成物、サポート層に表2に示すプロピレン系重合体を用いた二層のシーラントフィルムを、多層Tダイ成形装置を用い吐出樹脂温度230℃で成形して得た。フィルムインパクトの評価した結果を表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まない樹脂組成物のフィルム成形材からなる容器包装用フィルムであって、
前記樹脂組成物を、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜20個のプロピレン以外のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体からなるプロピレン重合体と、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20個のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体で密度が0.940g/cm以上の高密度ポリエチレンとの2成分で実質的に構成することで、125℃、30分高圧蒸気減菌後の容器包装用フィルム同士の動摩擦係数を0.4以下にしたことを特徴とする容器包装用フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物の配合割合が、前記プロピレン系重合体を90〜40質量%、前記高密度ポリエチレンを10〜60質量%にし、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であることを特徴とする請求項1に記載の容器包装用フィルム。
【請求項3】
シーラント層と該シーラント層を支持するサポート層からなるシーラントフィルムであって、請求項1又は2に記載の容器包装用フィルムを前記シーラント層とすることを特徴とするシーラントフィルム。
【請求項4】
前記サポート層が、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる請求項3記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
シーラント層及び該シーラント層を支持するサポート層からなる容器包装用フィルムを袋状に加工した容器包装袋であって、
前記シーラント層は、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まない樹脂組成物のフィルム成形材からなり、前記樹脂組成物を、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜20個のプロピレン以外のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体からなるプロピレン重合体と、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20個のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体で密度が0.940g/cm以上の高密度ポリエチレンとの2成分で実質的に構成し、前記樹脂組成物の配合割合が、前記プロピレン系重合体を90〜40質量%、前記高密度ポリエチレンを10〜60質量%にして、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であることを特徴とする容器包装袋。
【請求項6】
前記サポート層が、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる請求項5記載の容器包装袋。
【請求項7】
シーラント層と該シーラント層を支持するサポート層からなるシーラントフィルムと、ガスバリア層、印刷層及び保護層からなる群から選ばれた少なくとも一種の層とを有する積層体であって、
前記シーラント層は、実質的に滑剤及びアンチブロッキング剤を含まない樹脂組成物のフィルム成形材からなり、前記樹脂組成物を、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜20個のプロピレン以外のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体からなるプロピレン重合体と、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20個のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体で密度が0.940g/cm以上の高密度ポリエチレンとの2成分で実質的に構成し、前記樹脂組成物の配合割合が、前記プロピレン系重合体を90〜40質量%、前記高密度ポリエチレンを10〜60質量%にして、プロピレン系重合体の230℃におけるMFRと高密度ポリエチレンの190℃におけるMFRとの比が5〜200であることを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記サポート層が、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる請求項7記載の積層体。
【請求項9】
請求項7または8記載の積層体を袋状に加工したことを特徴とする容器包装袋。
【請求項10】
請求項5または請求項9に記載の容器包装袋に容器が収容され高圧蒸気減菌されていることを特徴とする容器包装体。
【請求項11】
高圧蒸気減菌の温度が121℃以上であることを特徴とする請求項10に記載の容器包装体。
【請求項12】
前記容器が医療用容器であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の容器包装体。
【請求項13】
前記容器包装袋と接触する前記容器の外表面がプロピレン系重合体からなることを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の容器包装体。

【公開番号】特開2007−308203(P2007−308203A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150254(P2007−150254)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【分割の表示】特願2002−335008(P2002−335008)の分割
【原出願日】平成14年11月19日(2002.11.19)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】