説明

容器弁

【課題】各種表示や状態を使用中に容易に認識することができ、簡単な構造で、重量増もほとんどなく、操作性や携行性に悪影響を与えることがない医療用酸素ガス容器用の容器弁を提供する。
【解決手段】医療用酸素ガス容器12に取り付けられる容器弁11において、前記医療用酸素ガス容器から供給するガス流量を調節する流量設定手段15の流量表示部(流量表示板15b)、医療用酸素ガス容器内のガス残存量を表示する残量表示部17、及び、医療用酸素ガス容器からのガス供給路を開閉する供給弁の開閉状態を表示する開閉表示部(開弁表示16b)の各表示を、一方向から認識可能な位置にそれぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器弁に関し、詳しくは、呼吸器系疾患を持つ患者が携帯して使用する医療用酸素ガス容器に取り付けられる容器弁に関する。
【背景技術】
【0002】
肺気腫や慢性気管支炎等の呼吸器系疾患を持つ患者が在宅時や外出時に酸素を吸入するため、小型で携帯可能なFRP製の医療用酸素ガス容器が用いられている。この医療用酸素ガス容器には、カニューラを介して吸入する酸素ガスの圧力や流量を調節するための減圧弁や流量設定手段が設けられ、さらに、残圧(残量)表示部や供給弁も設けられている。
【0003】
従来は、これらの機器をそれぞれ独立した状態で設けていたため、流量設定手段の設定値を表す流量表示部の表示、残量表示部の表示、供給弁の開閉状態を認識するためには、容器を持ち上げたり、傾けたり、回したりする必要があり、また、患者が姿勢を変えて覗き込んだりしなければならず、患者にとって大きな負担となっていた。
【0004】
また、デマンドレギュレータを装着した医療用酸素ガス容器において、デマンドレギュレータを装着することによって外部からの認識が困難となる残圧表示手段の表示を、光学的に屈折又は反射させて患者が俯瞰できる位置に表示する手段を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−105601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1記載のものでは、デマンドレギュレータにおける各表示及び残圧は容易に認識できるものの、流量設定手段の流量表示や供給弁の状態を認識するためには、従来と同様に、容器の位置を変えたり、患者が姿勢を変えたりしなければならなかった。また、デマンドレギュレータに光学的手段を付加するため、構造が一層複雑となり、製造コストが上昇するだけでなく、重量が増加して医療用酸素ガス容器の携行性に悪影響を与えていた。
【0006】
そこで本発明は、各種表示や状態を使用中に容易に認識することができ、簡単な構造で、重量増もほとんどなく、操作性や携行性に悪影響を与えることがない医療用酸素ガス容器用の容器弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の容器弁は、医療用酸素ガス容器に取り付けられる容器弁において、前記医療用酸素ガス容器から供給するガス流量を調節する流量設定手段の流量表示部、医療用酸素ガス容器内のガス残存量を表示する残量表示部、及び、医療用酸素ガス容器からのガス供給路を開閉する供給弁の開閉状態を表示する開閉表示部の各表示を、一方向から認識可能な位置にそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の容器弁は、上記構成の容器弁において、前記流量設定手段が前記医療用ガス容器の軸線と同一又は平行な軸線を中心として回動するダイヤルであって、その流量表示部が前記ダイヤルの反容器側の面に設けられるとともに、前記残量表示部及び前記開閉表示部が前記ダイヤルより容器側の位置で、かつ、前記ダイヤルの外周より突出した状態で設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器弁によれば、医療用酸素ガス容器に対して一方向、例えば、医療用ガス容器の軸線方向から流量設定手段の流量表示部、残量表示部及び開閉表示部の各表示を認識できるように位置させているので、これらの表示を極めて容易に認識することができ、患者の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の容器弁の一形態例を示す正面図、図2は同じく平面図、図3は本発明の容器弁を装着した医療用ガス容器の携行時の一例を示す説明図である。
【0011】
この容器弁11は、医療用酸素ガス容器12に容器弁11を取り付けるための雄ネジ部13を有する弁ブロック14の内部に、減圧弁、逆止弁、流量調節弁、供給弁、圧力計、安全弁、フィルタ等の各種機器を備えたガス流路を形成したものであって、弁ブロック14の外面には、流量調節弁を操作するための流量設定手段15と、供給弁を開閉操作するためのコック16と、圧力計に接続した残量表示部17と、カニューラ18のチューブ19を接続するためのジョイント20と、ガス容器12内に酸素ガスを充填するための充填口21等が設けられている。可搬式の医療用酸素ガス容器12は、FRP製の略円柱状のものであって、その上端部に容器弁11を取り付ける雌ネジ孔が設けられている。
【0012】
弁ブロック14の反容器側の端部に設けられた前記流量設定手段15は、前記医療用ガス容器12の軸線と平行な軸線を中心として回動するダイヤル15aと流量表示板15bとを有している。流量表示板15bは、弁ブロック14の一端に固定された円筒状部材の端面に設けられており、流量表示板15bの表面(反容器側の面)には、流量を表す数値が周方向に等間隔で記載されている。
【0013】
前記ダイヤル15aは、前記流量表示板15bを覆う筒状に形成されたものであって、筒外周面には、ダイヤル15aの操作性を向上させるための凹凸15cが設けられている。また、ダイヤル15aの端面は、前記数値の一つに対応した大きさの透明窓15dの部分を除いて、他の部分は前記数値が認識可能な程度の半透明に形成されており、中央部分には、流量増減方向を示す矢印とガス種が酸素ガスであるとの表示とが設けられている。さらに、ダイヤル15aの回動部分には、前記数値の一つと透明窓15dとが対応した位置にダイヤル15aを保持するためのクリックが設けられている。
【0014】
ジョイント20からカニューラ18に供給する酸素ガスの流量は、ダイヤル15aをクリックさせながら回動することによって調節することができ、そのときの流量は、透明窓15dを通して認識される数値によって確認することができる。
【0015】
弁ブロック14の流量設定手段15より容器側の一側面(正面部)に設けれた前記コック16は、その近傍に設けられた開閉方向表示16aから明らかなように、図1において、医療用ガス容器12の軸線と直交する軸線を中心としてコック16を反時計方向に止まるまで回動させたときに供給弁が全開状態となり、時計方向に止まるまでコック16を回動させたときに供給弁が全閉状態となるように形成されている。コック16には、該コック16を全開位置まで回動させたときに反容器側を向く面に、供給弁が全開状態となっていることを表す着色を施した円形の開弁表示16bが設けられている。
【0016】
また、このコック16の大きさは、少なくともコック16を全開位置まで回動させたときに、開弁表示16bが前記ダイヤル15aの外周より突出し、ダイヤル15aの軸線の反容器側方向から視認可能な状態となるように形成されている。なお、コック16を全閉位置に回動したときに反容器側を向く面には、特に閉弁状態を示す表示を設ける必要はないが、前記開弁表示16bとは異なる色調や形状の閉弁表示を設けておいてもよい。
【0017】
弁ブロック14の流量設定手段15より容器側で前記コック16とは異なる一側面(側面部)に設けれた前記残量表示部17は、医療用酸素ガス容器12内のガス残存量を、圧力値(MPa)や、現時点の圧力を満充填時の圧力と比較した数値(例えば百分率)を表示した目盛部17aと、圧力計の測定圧力によって医療用ガス容器12の軸線と直交する軸線を中心として移動する指針17bとを有するものであって、目盛部17aには、ガス残存量が少なくなったことを強調するための着色、例えば赤色の着色が施された注意表示17cが設けられている。
【0018】
これらの目盛部17a、指針17b及び注意表示17cは、全体が透明カバー17dによって覆われており、前記コック16の開弁表示16bと同様に反容器側を向く方向に配置されるとともに、前記ダイヤル15aの外周より突出し、ダイヤル15aの軸線の反容器側方向から視認可能な状態となるように設けられている。
【0019】
なお、前記コック16や前記残量表示部17における指針17bは、医療用ガス容器12の軸線と平行な方向の軸線を中心として回動するものであってもよく、また、コック16は、開弁時にダイヤル15aからコック先端が突出し、閉弁時にはダイヤル15aの下方に隠れるように形成しても供給弁の開閉状態を反容器側から認識することが可能である。
【0020】
このような容器弁11を装着した医療用酸素ガス容器12を患者が携行する際には、図3に示すような専用キャリア22に収納するようにしている。この専用キャリア22は、一般に、タイヤ23及び把手24を備えたキャリア本体25に、医療用酸素ガス容器12を立設した状態で収納するためのバッグ26を着脱可能に設けたものであって、バッグ26の上部には、ファスナ等を備えた開閉可能な開口部27が設けられ、この開口部27を通して医療用酸素ガス容器12を出し入れしたり、容器弁11の各表示を読み取って流量や残量を認識したりしている。
【0021】
このとき、本形態例に示す容器弁11では、容器弁11における流量設定手段15の流量表示部である流量表示板15b、コック16の開閉表示部である開弁表示16b及び残量表示部17の目盛部17aや指針17bを、容器軸線の反容器側の方向、即ち上方から視認可能な状態としているので、バッグ26の開口部27を開くだけで、これらの全てを容易かつ確実に認識することができる。
【0022】
したがって、医療用酸素ガス容器12を持ち上げて容器弁11部分を開口部27から引き出す必要がなく、また、これらの表示を認識するために姿勢を変える必要もないから、医療用酸素ガス容器12を使用している患者の負担を大幅に軽減することができる。さらに、弁ブロック14に各種機能、各種表示をまとめて設けているので、容器弁11が大型化することもなく、軽量で操作性にも優れたものとなり、この容器弁11を装着した医療用酸素ガス容器12の携行性に悪影響を与えることもない。なお、比較的大型の医療用酸素ガス容器12を立設した状態で使用する場合の容器弁では、前記各表示を容器一側方向(正面側)から認識できるように配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の容器弁の一形態例を示す正面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】本発明の容器弁を装着した医療用ガス容器の携行時の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
11…容器弁、12…医療用酸素ガス容器、13…雄ネジ部、14…弁ブロック、15…流量設定手段、15a…ダイヤル、15b…流量表示板、15c…凹凸、15d…透明窓、16…コック、16a…開閉方向表示、16b…開弁表示、17…残量表示部、17a…目盛部、17b…指針、17c…注意表示、17d…透明カバー、18…カニューラ、19…チューブ、20…ジョイント、21…充填口、22…専用キャリア、23…タイヤ、24…把手、25…キャリア本体、26…バッグ、27…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用酸素ガス容器に取り付けられる容器弁において、前記医療用酸素ガス容器から供給するガス流量を調節する流量設定手段の流量表示部、医療用酸素ガス容器内のガス残存量を表示する残量表示部、及び、医療用酸素ガス容器からのガス供給路を開閉する供給弁の開閉状態を表示する開閉表示部の各表示を、一方向から認識可能な位置にそれぞれ設けたことを特徴とする容器弁。
【請求項2】
前記流量設定手段が前記医療用ガス容器の軸線と同一又は平行な軸線を中心として回動するダイヤルであって、その流量表示部が前記ダイヤルの反容器側の面に設けられるとともに、前記残量表示部及び前記開閉表示部が前記ダイヤルより容器側の位置で、かつ、前記ダイヤルの外周より突出した状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載の容器弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−244705(P2007−244705A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73752(P2006−73752)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)