説明

容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材及びその製造方法

【課題】 耐熱発泡ポリスチレン層と、印刷が施された2軸延伸ポリプロピレンとを有する容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材を安価に提供できるようにする。
【解決手段】 2軸延伸ポリプロピレンフイルム層/アンカーコート層/インキ層/耐熱発砲ポリスチレン層から成り熱貼合によって積層されたものであって、該アンカーコート層及びインキ層は2軸延伸ポリプロピレンフイルム層にグラビア印刷により順次積層されたものであり、かつアンカーコート層が2軸延伸ポリプロピレンフイルム層とインキ層と耐熱発砲ポリスチレン層とに接着する水性のアンカーコート剤からなり、該インキ層は、ビヒクルが耐熱発泡ポリスチレン層と接着する成分からなる水溶性グラビアインキで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で成形加工し易い耐熱発泡ポリスチレン層を主層とする容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材に関し、更に詳しくは、耐熱発泡ポリスチレンに耐油性と光沢を付与するために耐油性と光沢のある2軸延伸ポリプロピレンを積層した容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品を電子レンジで加熱した際、油分を含まない食品は100℃、油分を少量含むものは120℃、油分の多い食品は油分の部分が発熱して160℃位になる。したがって、電子レンジで加熱する容器の食品と接触する層は、耐油性と耐熱性が必要となる。
【0003】
ところで、ポリスチレンシートを主層とした電子レンジ容器は、ポリスチレンに耐油性が無いので、食品との接触層に耐油性のあるポリプロピレンフイルムを用いており、裏印刷したポリプロピレンフイルムにポリスチレンフイルムをドライラミネート加工して積層フイルムを形成し、この積層フイルムのポリスチレンフイルム層と、ポリスチレンシート層とを熱貼合で積層している。
【0004】
すなわち、従来の電子レンジ容器成形用ポリスチレン積層材の層構成としては、ポリプロピレンフイルム層/インキ層/ドライラミネート接着剤層/ポリスチレンフイルム層/ポリスチレンシート層であり、このような積層材を真空または真空・圧空成形機で成形し、耐熱・耐油性のある電子レンジ用容器を成形している。
【0005】
また、主層となるポリスチレンシート層としては、耐熱性を付与するために無水マレイン酸で変性した耐熱ポリスチレン樹脂等が用いられ(特許文献1、2、3参照)、さらにブタンガスや炭酸ガス等で7〜8倍にガス発泡した発泡耐熱ポリスチレンシートが用いられている。また、容器の外側に美粧性を与えるために、裏印刷されたポリスチレンフイルムを発泡耐熱ポリスチレン層に熱貼合している。
【0006】
しかしながら、このような積層材の層構成では、加工工程が長く、余分なフイルムを使用しなければならずコストが高くなる。特に、ポリプロピレンフイルムにドライラミネート加工するポリスチレンフイルムは、主層の耐熱ポリスチレンシートをポリプロピレンフイルムに積層するためにだけに積層しているもので、この工程を省ければ、ドライラミネート材料代、ポリスチレンフイルム代、ドライラミネートの反応硬化に要するエージングのための場所、エネルギー(40℃〜60℃)、時間(2〜4日)のコストが削減でき、大巾なコストダウンとなる。
【0007】
そこで、本出願人は、以上の問題点を解消するために、ポリプロピレンフイルム層/接着樹脂層/インキ層/耐熱ポリスチレンシート層からなり、熱貼合により積層されていることを特徴とする電子レンジ容器成形用ポリスチレン積層材を提案した(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−220140号公報
【特許文献2】特開平11−12418号公報
【特許文献3】特開2001−29472号公報
【特許文献4】特開2006−137044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記本出願人が提供した電子レンジ容器成形用ポリスチレン積層材は、耐熱ポリスチレンシート層を熱貼合するためのポリスチレンフイルムを省いて、ドライラミネート工程を省略することができるので、安価に提供でき好ましいものであったが、より一層安価に提供できるようにすることが望まれていた。
【0010】
本発明は、以上のような要望に鑑みなされたもので、作業工程の簡略化を図ることにより、より安価に電子レンジ容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材を製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、上記課題を達成するために鋭意検討し、ポリプロピレンフイルム層に積層する接着剤層の代わりに、ポリプロピレンフイルム層にアンカーコート剤を積層することにより、接着剤層の場合と同様の機能を発揮しつつ、作業工程を省略することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
請求項1に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層/アンカーコート層/インキ層/耐熱発砲ポリスチレン層から成り熱貼合によって積層されたものであって、該アンカーコート層及びインキ層は2軸延伸ポリプロピレンフイルム層にグラビア印刷により順次積層されたものであり、かつアンカーコート層が2軸延伸ポリプロピレンフイルム層とインキ層と耐熱発砲ポリスチレン層とに接着する水性のアンカーコート剤からなり、該インキ層は、ビヒクルが耐熱発泡ポリスチレン層と接着する成分からなる水溶性グラビアインキで形成されていることを特徴として構成されている。
【0013】
請求項2に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材は、アンカーコート層が、特殊オレフィン系のエマルジョンを主剤としイソシアネート、カルボジイミドの一以上の硬化剤を用いた2液硬化型の水性アンカーコート剤で形成されていることを特徴として構成されている。
【0014】
請求項3に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材は、インキ層が、顔料濃度10〜30%、ヘリオ彫刻(スタイラス角度130度)によるスクリーン線数が200線未満、版深が35μm以上の版胴によって印刷されたことを特徴として構成されている。
【0015】
請求項4に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層が、MD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍、面積延伸倍率が9〜36倍となるように2軸延伸した後、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理を行い、120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向及びTD方向ともに0.5〜15%であることを特徴として構成されている。
【0016】
請求項5に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材の製造方法は、2軸延伸ポリプロピレンフイルムに、水性アンカーコート層及びインキ層をグラビア印刷により順次積層して2軸延伸ポピプロピレンフイルム層、アンカーコート層及びインキ層からなる積層フイルムを作製し、積層フイルムと耐熱発泡ポリスチレン層とを熱貼合により積層することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材においては、2軸延伸ポリプロピレンフイルムにグラビア印刷機で先ずアンカーコート層をベタ印刷で全面にコートし、次いで数色のインキで印刷するので同じ印刷機でアンカーコート層とインキ層とを同時に積層することが出来る。したがって、先に提案した電子レンジ容器成形用ポリスチレン積層材より、作業工程一つ減らすことができる。すなわち、従来においては、まず、ポリプロピレンフイルムと接着剤層とを共押出しにより積層フイルムを作製し、次に、この積層フイルムの接着剤層にインキ層をグラビア印刷により積層し、そして、ポリプロピレンフイルム/接着剤層/インキ層からなる積層フイルムと、耐熱ポリスチレンシート層とを熱貼合により積層するものであったので、共押出工程、印刷工程及び熱貼合工程の3工程が必要であった。しかしながら、本願発明においては、印刷工程及び熱貼合工程の2工程で完成するものであり、共押出工程を省略することができ、その分安価に提供できるものである。
【0018】
アンカーコート層は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層、インキ層及び耐熱発泡ポリスチレン層と接着する水性のアンカーコート剤で形成されているので、インキ層が全面印刷でなく部分印刷であっても、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層と耐熱発泡ポリスチレン層とを確実に接着することが出来る。また、インキ層は、ビヒクルが耐熱発泡ポリスチレン層と接着する成分からなる水溶性グラビアインキで形成さているので、耐熱発砲ポリスチレン層を熱貼合することが出来る。
【0019】
請求項2に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材においては、前記アンカーコート層が、特殊オレフィン系のエマルジョンを主剤としイソシアネート、カルボジイミドの一以上の硬化剤を用いた2液硬化型の水性アンカーコート剤で形成されているので、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層、インキ層及び耐熱発泡ポリスチレン層と確実に接着することができる。
【0020】
請求項3に係る容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材においては、前記インキ層が顔料濃度10〜30%、ヘリオ彫刻(スタイラス角度130度)によるスクリーン線数が200線未満、版深が35μm以上の版胴によって印刷されているので、油性グラビアインキより1.5倍インキ濃度が高く、200線未満の版によってインキの転移量を多くして、容器に成形した時に延ばされる底部コーナー部(角部)の色が薄くなるのを防止することができる。
【0021】
すなわち、容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材を容器に成形した際、容器の底部コーナー部においては、2軸延伸ポリプロピレンフイルムは、耐熱発砲ポリスチレン層の伸びに追従して伸びることになり、その結果、インキ層も伸びる。したがって、容器の底部コーナー部において、色が薄くなって色調が変わるものであった。
【0022】
延ばされた部分の印刷の色が薄くならないようにするためには、インキ中の顔料濃度を高くして多くの顔料を転移させて濃く印刷すれば防げる。しかし、油性グラビアインキは顔料を溶剤に溶解させる方式であるので、顔料濃度が高くなると油性グラビアインキの粘度が高くなり、印刷時の適正粘度からはずれることとなる。したがって、油性グラビアインキの顔料濃度を高くすることは困難であった。
【0023】
これに対し、水性グラビアインキは顔料を水に分散させる方式であるので、顔料濃度を高くしても粘度は高くならず、顔料濃度を高くすることが出来る。
【0024】
今、通常の油性グラビア版であるスクリーン線数175線、版深42μmの版胴を用い、油性グラビアインキの顔料濃度10%、水性グラビアインキの顔料濃度15%で夫々印刷したとすると、印刷物への顔料の転移量は、油性グラビアインキにおいて、6.5g×10/100=0.65g/m2、水性グラビアインキにおいて、6.5g×15/100=0.975g/m2となる。したがって、0.975/0.65=1.5と、水性グラビアインキは油性グラビアインキの1.5倍の顔料の転移量となり、その結果、水性グラビア印刷は油性グラビア印刷の1.5倍濃く印刷することが出来る。
【0025】
請求項4に係る容器成形用ポリスチレン積層材においては、前記2軸延伸ポリプロピレンフイルム層が、MD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍、面積延伸倍率が9〜36倍となるように2軸延伸した後、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理を行ない、120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向及びTD方向ともに0.5〜15%であるので、熱成形時の収縮力が大きくて2軸延伸ポリプロピレンフイルムが耐熱発砲ポリスチレン層から剥れるような問題がなく、また、適度な収縮率でドローダウンをおさえることが出来、さらに、弛緩して熱処理を行なうことにより室温での保管時に収縮することもない。
【0026】
請求項5に係る容器成形用ポリスチレン積層材の製造方法においては、まず、2軸延伸ポリプロピレンフイルムに、水性アンカーコート層及びインキ層をグラビア印刷により順次積層して2軸延伸ポピプロピレンフイルム層、アンカーコート層及びインキ層からなる積層フイルムを作製し、次に、この積層フイルムと耐熱発泡ポリスチレン層とを熱貼合により積層することにより、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層/アンカーコート層/インキ層/耐熱発砲ポリスチレン層からなる容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材を製造することができる。したがって、印刷工程と、熱貼合工程との2工程で製造することができるので、容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材を安価に提供することが出来る。
【0027】
すなわち、従来のポリプロピレンフイルム層/接着樹脂層/印刷層/耐熱性ポリスチレン層からなる積層材においては、ポリプロピレンフイルム層と接着樹脂層からなる積層フイルムに印刷層をグラビア印刷により積層し、この積層フイルムと耐熱性ポリスチレン層とを熱貼合により積層して製造するものであり、前記ポリプロピレンフイルム層と接着樹脂層とからなる積層フイルムは、Tダイ法又はインフレーション法による共押出し等により形成していたものである。したがって、ポリプロピレンフイルム層と接着樹脂層との積層工程を省略することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材の2軸延伸ポリプロピレンフイルムを作製するチューブラー2軸延伸装置の概略図
【図2】本発明による容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材のアンカーコート層及びインキ層を積層する水性グラビア印刷装置の全体概略図
【図3】本発明による容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材のアンカーコート層及びインキ層を積層する水性グラビア印刷装置の第1印刷ユニットの部分拡大図
【図4】本発明による容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材を熱貼合する熱貼合装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層/アンカーコート層/インキ層/耐熱発砲ポリスチレン層から成り熱貼合によって積層されている。2軸延伸ポリプロピレンフイルムは、MD方向(フイルムの流れ方向)及びTD方向(フイルムの流れ方向と直角方向)の延伸倍率が3〜6倍、面積延伸倍率が9〜36倍延伸したものである。延伸倍率が3倍未満であると、フイルムの光沢が劣り、また配向による熱収縮率も小さくなってドローダウン防止に適さないものになる。延伸倍率が6倍を超えると、光沢に優れ、ドローダウン防止にも適しているが、配向による熱収縮率が大きくなり、熱成形した時にシートからのフイルムの剥がれや、熱成形の安定性、金型再現性に劣るものとなる。また、MD方向、TD方向の延伸倍率は、ほぼ同じ倍率であることが好ましい。ほぼ同じ倍率にすることにより、熱成形時のドローダウン防止も成形品の金型再現性も好適に行われる。
【0030】
以上のような延伸倍率で延伸された2軸延伸ポリプロピレンフイルムは、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理を行なうものである。この熱処理は、特に限定されないがテンター(恒温室)内や熱ロールが用いられる。熱処理の条件は、延伸温度より約10℃高めの温度でMD方向、TD方向とも弛緩熱処理される。
【0031】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムは、120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向及びTD方向ともに0.5〜15%であり、好ましくは0.5〜10%である。収縮率が0.5%未満であると、ドローダウンを防止できず、収縮率が15%を超えると、熱成形時のドローダウン防止はできるが、シートからの剥がれや熱成形の安定性、金型再現性が劣ることになる。120℃グリセリン浴は、容器にグリセリンを入れ、加熱して120℃に保ったグリセリンに2軸延伸ポリプロピレンフイルムを5秒間浸漬したものである。
【0032】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムに用いるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン単独重合樹脂、エチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、プロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂の混合樹脂を好ましく用いることができる。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.3〜15.0g/10分が好ましく、1.0〜10.0g/10分がより好ましい。MFRが0.3g/10分未満であると、チューブラー法でフイルムを成形した際表面肌が悪くなり、また成形性も悪いものである。また、MFRが15.0g/10分を超えると、偏肉が起こり易くなり厚み精度の良いフイルムが得られない。
【0034】
エチレン・プロピレンランダム共重合樹脂、プロピレン単独重合樹脂とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂の混合樹脂の場合は、エチレン含有量が2.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下がより好ましい。エチレン含有量が2.0重量%を超えると、光沢は向上するが熱処理温度を低くしなければならず、成形時の収縮率が大きくなり、熱成形した際、シートからの剥がれや、成形の安定性、金型再現性に劣ることになる。
【0035】
これらのポリプロピレン系樹脂には、本来の目的に支障をきたさない範囲で他の樹脂や滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤等の添加剤を適宜使用することができる。
【0036】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムを作製するには、チューブラー法により同時2軸延伸を行なうことが好ましい。チューブラー法で同時2軸延伸するためには、まず、押し出し機にポリプロピレン系樹脂を投入し、丸ダイスより下方にチューブ状に押し出し、チューブの内側は冷却水で冷却されたマンドレルに滑らせながら外側は水槽中の水で冷却しながら引取り、チューブ状の未延伸フイルムを作製する。そして、このチューブ状未延伸フイルムをチューブラー2軸延伸装置で同時2軸延伸する。
【0037】
チューブラー2軸延伸装置の例を図1に示す。図1のチューブラー2軸延伸装置において、未延伸フイルム1は低速のニップロール2でニップされながら赤外線ヒーターからなる予備加熱機3で予備加熱された後、赤外線ヒーターからなる本加熱機4で本加熱される。本加熱機4での加熱温度は、配向可能な温度範囲で、ポリプロピレン系樹脂の融点より10〜40℃以下、好ましくは15〜35℃以下である。10℃より差が小さければ得られるフイルムの配向による熱収縮率が小さくなり、ドローダウンを防止できなくなる。また、40℃より差が大きいと延伸し難くなり得られるフイルムの厚薄差が生じ易くなる。
【0038】
TD方向の延伸はチューブ内の空気圧で行い、MD方向の延伸はニップロール2とニップロール7との速度差で行なう。すなわち、チューブ状の未延伸フイルム1は、本加熱機4で本加熱され、TD方向はチューブ内の空気圧で、MD方向はニップロール2とニップロール7の速度差によって夫々同時2軸延伸されるとともに、リング状のエアーノズル5によって冷風が吹き付けられ冷却される。
【0039】
次いで、折りたたみロール6によって折りたたまれ、ニップロール7を通って2軸延伸ポリプロピレンフイルム8が得られる。そして、この2軸延伸ポリプロピレンフイルム8は、テンター内で延伸温度より約10℃高めの温度でMD方向、TD方向とも弛緩熱処理される。
【0040】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムの厚みは、10〜100μmが好ましく、15〜50μmがより好ましい。厚みが10μmより薄いと熱成形の際、伸ばされた部分に極端に薄い部分ができたり、切れたりする恐れがあり、100μmより厚いとコスト的に割高になり、また全体的な熱収縮力が大きくなるため成形の安定性や金型再現性が劣るようになる。
【0041】
2軸延伸ポリプロピレンフイルム層には、アンカーコート層が積層されており、このアンカーコート層は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム層とインキ層と耐熱発砲ポリスチレン層とに接着する水性のアンカーコート剤で形成されている。したがって、絵柄(インキ層)の無い部分があっても、耐熱発泡ポリスチレン層は2軸延伸ポリプロピレンフイルム層と接触することなく、アンカーコート層と接触するので、熱貼合により確実に積層することができる。
【0042】
このようなアンカーコート剤としては、特殊オレフィン系のエマルジョンを主剤としイソシアネートやカルボジイミド等の硬化剤を用いた2液硬化型の水性アンカーコート剤が挙げられる。
【0043】
アンカーコート層は、グラビア印刷により2軸延伸ポリプロピレンフイルム層に積層される。すなわち、グラビア印刷機の第1色目の印刷ユニットで水性アンカーコート層を積層し、第2色目以降の印刷ユニットでインキ層を施すことにより、一度の工程でアンカーコート層及びインキ層を積層することが出来る。また、水性のアンカーコート剤を用いるので、各種法規制、作業時の悪臭や健康に対する作業環境、爆発の危険性、工場周辺の環境汚染、CO削減、資源の無駄使い等に対応するだけでなく、食品容器として最も重要な残留溶剤による溶剤臭がない。
【0044】
アンカーコート層にはインキ層が積層されており、このインキ層は上述したように、アンカーコート層と同一のグラビア印刷機により積層される。インキ層は、ビヒクルが耐熱発砲ポリスチレン層と接触する成分から成る水溶性グラビアインキを用いて形成されており、これにより熱貼合時に耐熱発泡ポリスチレン層と接着することができる。このようなビヒクルとしては、アクリル系のビヒクルが最適である。また、印刷がベタ印刷ではなく未印刷部が残る絵柄の場合は、上述したように、未印刷部のアンカーコート層が耐熱発砲ポリスチレン層とに熱接着するので熱貼合によって耐熱発砲ポリスチレン層と積層することが出来る。
【0045】
インキ層に用いる水溶性グラビアインキは、水約50%と有機溶剤(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等)約50%との混合溶剤に、顔料(10〜30%)とビヒクル(10〜30%)とを分散させたものである。
【0046】
顔料の濃度(含有量)が10%未満であると、所定の印刷濃度が得られず熱成形によって成形された際、引き伸ばされた容器底部コーナーの色が薄くなる。また、30%を超えると、粘度が高くなり印刷不可となる。
【0047】
水性グラビアインキにおけるビヒクルの含有量は、分散系なので濃度を高くしても粘度は上がらず高くできるが、10〜30%が好ましい。ビヒクルの含有量が10%未満であると、接着に必要なビヒクルの厚み0.5μm以上を確保することが難しくなる。また、30%を超えると、2軸延伸ポリプロピレンフイルムをロール状に巻いた時にブロッキングを起こす場合がある。
【0048】
そして、これらの範囲において、スクリーン線数200線未満、版深35μm以上の版胴で印刷した時に、後述するビヒクルの厚みとなるように含有量を調製する。
【0049】
表1にヘリオ彫刻(スタイラス角度130度)によるスクリーン線数と版深とインキの転移量との関係を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
印刷後のビヒクルの厚みは0.5μm以上の厚みが必要であり、また、凸凹のある熱成形シートの場合は更に厚みが必要である。今、通常の油性グラビア版であるスクリーン線数175線、版深42μmの版胴を用いて、ビヒクル含有量15%の水性グラビアインキで印刷したとすると、前記表1のスクリーン線数と版深とインキの転移量の関係から、6.5g×15/100=0.975g/mとなり、厚みにすると比重が約1として0.975g/10,000cm=0.98μmの厚みとなり0.5μm以上なので充分な接着力が得られる。
【0052】
水性グラビア印刷に用いる版胴は、ヘリオ彫刻(スタイラス角度130度)によるスクリーン線数が200線未満、版深が35μm以上であることが好ましく、スクリーン線数175線、版深42μmであることがより好ましい。以上のような版胴を用いることにより、接着に必要な量のビヒクルを転移することができ、熱成形で伸ばされた部分でも色が薄くならないように濃く印刷することができる。
【0053】
乾燥工程における風量は、油性グラビア印刷の乾燥の風量と同様に40〜70m3/minとし、効率的に熱量を加えるため80℃〜100℃の熱風で乾燥させる。熱風の温度は高ければ高い程熱量を与えられ印刷スピードも上げることができるが、温度が高くなるにつれて装置等に奪われて損失する量も多くなり、またあまり温度が高いと2軸延伸ポリプロピレンフイルムが収縮したりするので印刷スピードに合った適正な熱風温度が必要である。
【0054】
油性グラビア印刷と略同様の120m/minの印刷スピードであれば、熱風温度は100℃位が好適である。乾燥された2軸延伸ポリプロピレンフイルムは熱風の熱で温度が上昇して伸びており、そのまま次の色の印刷工程で印刷すると印刷ズレが起るので、略その印刷ユニット内の印刷時の温度まで冷却工程で冷却する。
【0055】
冷却工程においては、乾燥工程で2軸延伸ポリプロピレンフイルムに付与された熱量を消去し、各ユニットにおける印刷工程での2軸延伸ポリプロピレンフイルム温度を略同一となるようにする。冷却は2軸延伸ポリプロピレンフイルムの印刷層側の面のみ冷却することもできるが、印刷層側の面と同時に反印刷層側の面も冷却することが好ましい。2軸延伸ポリプロピレンフイルムの両面を冷却することにより、効率よく冷却することができ、印刷速度を落すことなく次の印刷工程において2軸延伸ポリプロピレンフイルムの温度を所定の温度まで低下させることができる。
【0056】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムの印刷層側の面と反印刷層側の面とを冷却するには、例えば、印刷層側の面は冷風と冷却ロールにより冷却し、反印刷層側の面は冷却用液体を塗布後、冷風を吹き付けて冷却用液体を気化させ、その蒸発潜熱によって冷却することができる。このように冷却用液体を用いて冷却することにより、簡単な構造で効率良く冷却することができる。
【0057】
冷却用液体は、蒸発潜熱で熱を奪うものであるから、蒸発潜熱が大きいこと、沸点が低く蒸気圧が高くて気化しやすいこと、ムラなく塗布するために表面張力が小さいことが求められ、このような冷却用液体は、1種類又は2種類以上の液体を混合した混合液体で調製することができる。例えば、低級アルコールのメタノールやエタノール単独でも良いが、蒸発潜熱を大きくしたい場合には、蒸発潜熱の最も大きい水を主体とし、水とどのような割合でも溶け合い、水に不足している気化し易さと表面張力とを補う補助液体との混合液体を用いることができる。
【0058】
このような補助液体としては、低級アルコール類、エステル類があるが蒸発潜熱、蒸気圧の大きな低級アルコールが好ましく、エタノールでも良いがコストの点からメタノールが最も好ましい。表2にエステル類と低級アルコールの沸点、気化(蒸発)潜熱、蒸気圧、表面張力のデータを示す。
【0059】
【表2】

【0060】
混合液体の上記物性値は、蒸気圧を除いては、水とメタノール、エタノール、酢酸エチルエステルとの間の値となる。蒸気圧はその場の気相に夫々単独で蒸発するので、両方の合算した値となる。混合液体の割合は、水が多くなれば蒸発潜熱は大きいが気化しにくくなり、メタノール、エタノール、酢酸エチルエステルの割合が多くなれば気化しやすくなるが気化熱は小さくなる。例えば、水とメタノールの割合は、水(10〜90%):メタノール(10〜90%)の中から気化速度、蒸発潜熱の程度を考慮して設定することができる。
【0061】
冷却用液体の塗布は、略均一に塗布できる手段であれば特に限定されず、例えば、霧吹き状に吹き付けても、ロールを介して塗布してもよいが、モルトンロール(金属ロールの全面に布を巻いたもの)の布に冷却用液体を浸み込ませて、冷却ロール上の2軸延伸ポリプロピレンフイルムにモルトンロールを接触させることにより塗布することが、簡単な装置で均一に塗布できるので好ましい。
【0062】
冷却用液体を塗布した面には、冷風を吹き付けて冷却用液体の気化を促進させる。冷風を吹き付けることにより、冷却用液体を塗布した面の周囲の気相から冷却用液体の蒸気を取り除かれるので、気化が促進されるものである。この段階で、多少の塗布した冷却用液体が残っていても、その後の搬送ライン上で気化し、同時にフイルムを冷却しながら次の色の印刷時までには完全に気化が終了し、2軸延伸ポリプロピレンフイルムの温度は前の印刷工程における印刷時の温度まで下がっている。
【0063】
冷却は、冷却すればする程伸びは小さくなるので、冷却する程効果的であるが、第1色目から最終色までの各色の印刷時の2軸延伸ポリプロピレンフイルム温度が略一定であることが重要である。
【0064】
以上のような水性グラビア印刷を行なう水性グラビア印刷装置としては、各冷却部に、2軸延伸ポリプロピレンフイルムの印刷層側の面が巻き掛けられる冷却ロールと、印刷層側の面に冷風を吹き付ける印刷層側の面用冷風吹付け手段と、反印刷層側の面に冷却用液体を塗布する冷却用液体塗布手段と、この冷却用液体塗布手段で冷却用液体が塗布された面に冷風を吹き付ける気化促進用冷風吹付け手段とを設けたものを用いることができる。
【0065】
冷却用液体塗布手段としては、モルトンロール、スプレー等、冷却用液体を塗布できるものであれば特に限定されない。気化促進用冷風吹付け手段は、塗布面の周囲の気体を取り除けるものであれば特に限定されない。前記冷却ロールと印刷層面用冷風吹付け手段とは、従来用いられているものを用いることができる。
【0066】
本発明の2軸延伸ポリプロピレンフイルムにアンカーコート層とインキ層とを施すグラビア印刷装置の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0067】
図2は水性グラビア印刷装置の全体の概略図、図3は水性グラビア印刷装置の第1印刷ユニット部分(アンカーコート層)の拡大図である。
【0068】
図2及び図3において、100は給紙部で、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8を後続の印刷ユニットへ繰り出すものである。200はアンカーコート層の第1印刷ユニット、300は第1色目の第2印刷ユニット、400は第2色目の第3印刷ユニット、500は第3色目の第4印刷ユニット、600は第4色目の第5印刷ユニットとである。
【0069】
アンカーコート層の第1印刷ユニット200は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8にアンカーコート層を施す印刷部210と、コートされた2軸延伸ポリプロピレンフイルム8を乾燥させる乾燥部220と、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8を冷却する冷却部230とが設けられている。印刷部210には、版胴211、圧胴212、ファニッシャーロール213が設けられており、乾燥部220には、多数のコロロール221・・・221が設けられている。
【0070】
冷却部230には、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8のアンカーコート層面に当接して冷却する冷却ロール231が設けられ、この冷却ロール231の上流側(2軸延伸ポリプロピレンフイルム8が搬送されてくる側)の近傍に、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8のアンカーコート層面に冷風を吹き付ける冷風機232が設けられている。また、冷却ロール231に当接してモルトンロール233が設けられており、このモルトンロール233の表面に設けられた布材には、冷却用液体が含まれている。さらに、冷却ロール231の出口側(フイルムが出て行く側)には、気化促進用の冷風ノズル234が設けられている。この冷風ノズル234と冷風機232は冷風の供給源(図示せず)に連結されており、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8のアンカーコート層面と冷却用液体の塗布面に冷風を吹き付けるようになっている。
【0071】
なお、第1色目の第2印刷ユニット300、第2色目の第3印刷ユニット400、第3色目の第4印刷ユニット500、第4色目の第5印刷ユニット600も、アンカーコート層の第1印刷ユニット200と同様に、版胴311、411、511、611、圧胴312、412、512、612、ファニッシャーロール313、413、513、613、コロロール321、421、521、621、冷却ロール331、431、531、631、冷風機332、432、532、632、モルトンロール333、433、533、633、冷風ノズル334、434、534、634が設けられている。
【0072】
以上のような水性グラビア印刷装置でアンカーコート層及びインキ層をグラビア印刷により積層するには、給紙部100から2軸延伸ポリプロピレンフイルム8を繰り出してアンカーコート層の第1印刷ユニット200に送り込む。第1印刷ユニット200に送られて来た2軸延伸ポリプロピレンフイルム8は、まず、印刷部210において版胴211と圧胴212に圧着されアンカーコート層がコートされる。この2軸延伸ポリプロピレンフイルム8は乾燥部220において熱風で乾燥させられた後、冷却部230へ送られる。
【0073】
2軸延伸ポリプロピレンフイルム8は、冷却部230において、まず、冷風機232によりアンカーコート層面11に冷風が吹き付けられた後、続いて冷却ロール231に巻回されてアンカーコート層面11側から冷却される。また、冷却ロール231への巻回された状態において、モルトンロール233が圧接しているので、モルトンロール233に蓄えられた冷却用液体がアンカーコート層面11の反対側の面に塗布される。さらに、冷却ロール231の出口側において、冷風ノズル234から2軸延伸ポリプロピレンフイルム8の液体塗布面12に冷風が吹き付けられる。冷却用液体は気化し易いので、気化により2軸延伸ポリプロピレンフイルム8から熱を奪い冷却する。また、冷風ノズル234からの冷風により、気化した冷却用液体を2軸延伸ポリプロピレンフイルム8の周囲から除去するので、冷却用液体の気化が促進されている。
【0074】
したがって、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8のアンカーコート層面11側は、主として、冷風機232からの冷風と、冷却ロール231とにより冷却され、また、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8の液体塗布面12側は、主として、冷却用液体の蒸発潜熱により冷却され、全体として効果的に冷却されている。そして、この冷却により、印刷部210において印刷された際の2軸延伸ポリプロピレンフイルム8の温度に略同一となるようにしている。
【0075】
そして、第1色目以降の第2〜5印刷ユニットにおいても、同様な動作を繰り返し、4色からなる水溶性グラビア印刷を2軸延伸ポリプロピレンフイルム8に施し、アンカーコート層にインキ層を形成し、グラビア印刷が完成する。
【0076】
このようにしてアンカーコート層とインキ層とが積層された2軸延伸ポリプロピレンフイルムからなる積層用フイルムと、耐熱発砲ポリスチレンシートとを熱貼合するには、図4に示すような熱貼合装置を用いる。
【0077】
図4において21は耐熱発砲ポリスチレンロール、22はアンカーコート層及びインキ層が積層された2軸延伸ポリプロピレンフイルムロール、23はヒーター、24は加熱ロール、25はニップロール、26は容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材ロールである。このような熱貼合装置において、耐熱発砲ポリスチレンロール21より耐熱発砲ポリスチレンシート27を繰り出すとともに、2軸延伸ポリプロピレンフイルムロール22より2軸延伸ポリプロピレンフイルム28を繰り出し、耐熱発砲ポリスチレンシート27はヒーター23で加熱後、加熱ロール24に送られ2軸延伸ポリプロピレンフイルム28と重ねられ熱貼合され、容器成形用耐熱発砲ポリスチレンシート積層材29が形成される。形成された耐熱発砲ポリスチレンシート積層材29は耐熱発砲ポリスチレンシート積層材ロール26に巻き取られる。
【実施例】
【0078】
MFRが7.0g/10分のポリプロピレン単独重合樹脂を押出し機に投入し、連結された下向きの丸ダイス(径90mmφ)から240℃で下向きにチューブ状に押出した。チューブ状フイルムの内側は、ダイス直下に設けられた内部に冷却水が循環しているマンドレルに滑らせるようにして冷却し、チューブ状フイルムの外側は、水槽を通すことによって水槽中の水で冷却し、直径90mm、厚さ400μmのチューブ状未延伸ポリプロピレンフイルムを得た。
【0079】
このチューブ状未延伸ポリプロピレンフイルムを、図1に示すチューブラー2軸延伸装置によって膨張延伸を行った。すなわち、チューブ状未延伸ポリプロピレンフイルム1を、予備加熱機3の赤外線ヒーターの電流を調節しながら予備加熱を行なった後、5ゾーンに分けられた本加熱機4の赤外線ヒーターの電流を調節しながら加熱し、本加熱機4下方よりチューブに沿って流れる空気圧とニップロール2とニップロール7との速度差によってMD方向4.0倍、TD方向4.0倍(面積延伸倍率16倍)に膨張延伸し、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8を得た。この時、放射温度計で測定したチューブ状未延伸ポリプロピレンフイルムの表面温度は130℃であった。
【0080】
次いで、このように延伸したチューブ状の2軸延伸ポリプロピレンフイルム8をテンター(恒温室)(図示せず)内に導き、MD方向に8%、TD方向に5%弛緩させ、150℃で熱処理を行った。そして、このチューブ状2軸延伸ポリプロピレンフイルムを2枚に開いて紙管に巻き取った。厚さは29μmであった。この得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムを120℃のグリセリンに5秒間浸漬させた時の収縮率は、MD方向1.5%、TD方向3%であった。
【0081】
以上のようにして作製した2軸延伸ポリプロピレンフイルムに、図2及び図3に示すグラビア印刷装置を用いて、アンカーコート層及びインキ層を順次印刷積層した。
【0082】
まず、版胴にヘリオの彫刻で彫られた(スタイラス角度130度、スクリーン線数175線、版深42μm)グラビアロールを、富士機械(株)製5色のグラビア印刷機(FM−5Sタイプ)にセットした。
【0083】
また、特殊ポリオレフィンエマルジョンの主剤であるサカタインクス(株)製「CPS−AC剤2」を、サカタインクス(株)製希釈剤「CPS−AC希釈剤」で希釈し、粘度ザーンカップNO.3で17秒に調整した後、主剤100部に対してイソシアネート系の硬化剤であるサカタインクス(株)製硬化剤「CPS−硬化剤」を3部加えて水性のアンカーコート剤を調製した。
【0084】
また一方、ビヒクルがアクリル系エマルジョンである水溶性インキ、サカタインクス(株)製「ST1−1015C」を、サカタインクス(株)製希釈剤「ST1希釈剤C」で希釈して、黒色(顔料濃度10%,粘度ザーンカップNO.3で19秒)、黄色(顔料濃度12%,粘度ザーンカップNO.3で18秒)、赤色(顔料濃度12%,粘度ザーンカップNO.3で18秒)、青色(顔料濃度12%,粘度ザーンカップNO.3で18秒)、の水溶性インキを調製した。
【0085】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムの片面にコロナ処理を施した後、5色印刷の給紙部100にセットし、印刷スピード120m/min、テンション8.0kg/1000m巾でアンカーコート剤(第1印刷ユニット200)、黒色(第2印刷ユニット300)、黄色(第3印刷ユニット400)、赤色(第4印刷ユニット500)、青色(第5印刷ユニット600)の順でアンカーコート層を全面にコートするとともに湯気の立つおでんの図柄(一部インキの無い図柄)と説明文の重ね印刷を行った。
【0086】
乾燥部220、320、420、520、620の熱風は100℃、60m/minとした。冷却部230、330、430、530、630は既存の冷風機232、332、432、532、632から30℃の冷風を印刷層面11側に吹き付け、次いで既存の冷却ロール231、331、431、531、631に30℃の冷却水を通して印刷層面11を冷却した。また、同時に水(70%)とメタノール(30%)の混合液体からなる冷却用液体を布に浸み込ませたモルトンロール233、333、433、533、633を冷却ロール231、331、431、531、631に接触させ、2軸延伸ポリプロピレンフイルム8のアンカーコート層面(印刷層面)11と液体塗布面12に冷却用液体を塗布した。次いで、塗布直後に冷風ノズル234、334、434、534、634から30℃の冷風を0.8m/minの風量で液体塗布面12に吹き付けて、冷却用液体を気化させて冷却を行った。
【0087】
[印刷物の肉眼観察]
アンカーコート層−黒色インキ層−黄色インキ層−赤色インキ層−青色インキ層の順でおでんの図柄と説明文の重ね印刷を行った印刷物2000mを肉眼で観察したところ、最初から最後まで図柄がきれいに印刷されており、色のはみ出しは見られなかった。
【0088】
このようにして印刷された2軸延伸ポリプロピレンフイルムと、ブタンガスで7倍に発泡させた耐熱発泡ポリスチレンシート(厚み2.5mm)とを熱貼合によって積層させた。熱貼合には図4に示す熱貼合装置を用い、耐熱発泡ポリスチレンシートロール21より耐熱発泡ポリスチレンシート27を繰り出すとともに、2軸延伸ポリプロピレンフイルムロール22より2軸延伸ポリプロピレンフイルム28を繰り出し、耐熱発泡ポリスチレンシート27はヒーター23で加熱後、加熱ロール24に送られ2軸延伸ポリプロピレンフイルム28と重ねられ熱貼合され、容器成形用耐熱発泡ポリスチレンシート積層材29が形成される。形成された容器成形用耐熱発泡ポリスチレンシート積層材29は耐熱発泡ポリスチレンシート積層材ロール26に巻き取られる。なお、熱貼合条件は、以下の通りである。
【0089】
加工速度:40m/min
耐熱発泡ポリスチレンシートの予備加熱:90℃(表面温度)
加熱ロールの温度:130℃
耐熱発泡ポリスチレンシート積層材の加熱ロール接触距離:50cm(0.75秒接触)
ニップ圧:6kg−cm
【0090】
[ラミネート強度]
容器成形用耐熱発泡ポリスチレンシート積層材を15mm巾に切断し、接着部分を手で剥離し、剥離した部分の双方を定速引張試験機の上下のチャックに固定するとともに、初期チャック間を50mmとして、300mm/minの引張速度で未剥離部分を水平に保ちながらT型剥離を行った。結果は以下の通りであった。
【0091】
図柄の部分(インキ層/耐熱発泡ポリスチレン層);130g/15mm巾
図柄のない部分(アンカーコート層/耐熱発泡ポリスチレン層);270g/15mm巾
得られた容器成形用耐熱発泡ポリスチレンシート積層材を用い、口径12cm角、深さ4.5cmの角型容器を成形した。成形にはスピーマー(株)製真空成形機「1600D型」を用いて下記の条件で行った。
【0092】
ヒーター温度(片面):270℃
シート表面温度:140℃
加熱時間:8秒
金型温度:80℃
【0093】
[容器の評価]
得られた容器を肉眼で観察し下記の項目を評価した。
<2軸延伸ポリプロピレンフイルムの密着性>
容器からの浮きや剥れもなく充分密着していた。したがって、2軸延伸ポリプロピレン層、アンカーコート層及びインキ層は一体に密着していることが確認された。
<変形>
容器のゆがみや変形もなく金型通りに形状が再現されていた。
<光沢及び底部コーナー部の印刷色濃度>
非常に光沢があり、成形で一番延ばされる容器底部コーナー部の印刷濃度も、比較的延ばされていない胴部上部の印刷濃度と殆ど同じであった。
【符号の説明】
【0094】
1 未延伸ポリプロピレンフイルム
2 ニップロール
3 予備加熱機
4 本加熱機
5 エアーノズル
7 ニップロール
8 2軸延伸ポリプロピレンフイルム
23 ヒーター
24 加熱ロール
25 ニップロール
27 耐熱発泡ポリスチレンシート
210 印刷部
220 乾燥部
230 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ポリプロピレンフイルム層/アンカーコート層/インキ層/耐熱発砲ポリスチレン層から成り熱貼合によって積層されたものであって、該アンカーコート層及びインキ層は2軸延伸ポリプロピレンフイルム層にグラビア印刷により順次積層されたものであり、かつアンカーコート層が2軸延伸ポリプロピレンフイルム層とインキ層と耐熱発砲ポリスチレン層とに接着する水性のアンカーコート剤からなり、該インキ層は、ビヒクルが耐熱発泡ポリスチレン層と接着する成分からなる水溶性グラビアインキで形成されていることを特徴とする容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材。
【請求項2】
前記アンカーコート層が、特殊オレフィン系のエマルジョンを主剤としイソシアネート、カルボジイミド、

の一以上の硬化剤を用いた2液硬化型の水性アンカーコート剤で形成されていることを特徴とする請求項1記載の容器製敬称耐熱発泡ポリスチレン積層材。
【請求項3】
前記インキ層が顔料濃度10〜30%、ヘリオ彫刻(スタイラス角度130度)によるスクリーン線数が200線未満、版深が35μm以上の版胴によって印刷されたことを特徴とする請求項1又は2記載の容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材。
【請求項4】
前記2軸延伸ポリプロピレンフイルム層が、MD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍、面積延伸倍率が9〜36倍となるように2軸延伸した後、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理を行い、120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向及びTD方向ともに0.5〜15%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の容器成形用耐熱発砲ポリスチレン積層材。
【請求項5】
2軸延伸ポリプロピレンフイルムに、水性アンカーコート層及びインキ層をグラビア印刷により順次積層して2軸延伸ポピプロピレンフイルム層、アンカーコート層及びインキ層からなる積層フイルムを作製し、積層フイルムと耐熱発泡ポリスチレン層とを熱貼合により積層することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の容器成形用耐熱発泡ポリスチレン積層材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96458(P2012−96458A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246063(P2010−246063)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(594146180)中本パックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】