説明

容器本体、包装容器、その製造方法および製造装置

【課題】安定した易開封性および密封性を備え、製造工程において手間とコストの低減を図ることのできる容器本体、包装容器、その製造方法および製造装置を提供すること。
【解決手段】包装容器100は、内容物Pが凹部210に収納される平面略円形状の容器本体200を備え、この容器本体200は、その中心部に平面略円形に形成された開口部を塞ぐため蓋材300が開口部の周縁に配設されたフランジ部230にヒートシールされている。このフランジ部230と蓋材300とのヒートシールは環状のシール部240で行われる。容器本体200は、シール層251と隣接層252と基材層253とからなる多層シート250で形成されている。フランジ部230は、外縁部231から内縁部232にいたるまでにその厚みが次第に薄くなるように形成された勾配を有するとともに、フランジ部230のシール層251のシール面は平坦に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体、包装容器、その製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の包装形態としては、当該食品等を収納ないし充填した後、容器本体の開口部周縁に設けられたフランジ部とフィルム状の蓋材とをヒートシールして密封包装した包装容器がある。この包装容器では、収納された食品等を取り出す際にあっては蓋材を容器本体から剥離する。
このような包装容器では、開封前の密封性が重要である一方、開封時の易開封性も求められている。そこで、樹脂材質を変えるなどして容器本体のシール層のシール強度を制御し、蓋材と容器本体の界面を剥離する技術が一般的に知られている。
【0003】
例えば、フランジ部の容器開口部側の内装に切り込みを設けた簡易ピール容器が特許文献1に記載されている。
また、容器本体の側壁からフランジ部へかけての変曲点における最内層を薄肉化し、最内層の剥離強度を調整した形態が特許文献2に記載されている。
さらに、容器本体の容器側面とフランジ内縁との境界位置に局所的にシール層の欠落部を形成し、剥離強度を調整した形態が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−251363号公報
【特許文献2】特公平5−79587号公報
【特許文献3】特開平7−309368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シール強度を制御する方法は、シール条件の影響を受けやすく、強度のばらつきが生じやすい。
また、特許文献1では、切り込み部を形成するために手間と時間がかかるため、コスト機能面に負担がかかるという問題がある。また、容器のシール部と切込み部の距離が一定以上離れていないと密封性を保つことが困難になるという問題があり、シール部の位置制御が重要となるため、技術的難度が高く、容易に生産しづらいものとなる。
さらに、特許文献2および特許文献3では、容器の最内層の厚みが不安定となったり、欠落部を安定して形成することができないため、開封が困難となる場合や密封性が損なわれるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、安定した易開封性および密封性を備え、製造工程において手間とコストの低減を図ることのできる容器本体、包装容器、その製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器本体は、開口部の周縁にフランジ部が形成された容器本体であって、前記容器本体は、シール層と基材層との少なくとも2層を備え、前記シール層は、前記フランジ部の内周側に薄肉部または欠落部を有し、前記フランジ部は、外縁部から内縁部に向けてその厚みが薄くなるように形成された勾配を有し、前記フランジ部は、その外縁部の厚みに対し、内縁部の厚みが20%以上98%以下であることを特徴とする。
【0008】
この発明では、フランジ部の内縁部は、外縁部の厚みに対して20%以上98%以下の範囲内の厚みを有している。すなわち、フランジ部が外縁部から内縁部にかけて薄く形成されている。これにより、フランジ部の内縁部付近では、シール層に薄肉部または欠落部が形成される。
したがって、この容器本体と蓋材とを備えた包装容器を開封する際には、シール層とシール層に隣接する層との間で剥離し、シール層の薄肉部が破断または欠落部でシール層が分離することにより、包装容器が開封される。このように、シール層に薄肉部または欠落部が設けられているので、容易に開封することができる。
なお、フランジ部の内縁部の厚みが外縁部の厚みに対して20%未満であると、内縁部の厚みが薄すぎるため、容器としての剛性が不足するおそれがある。また、フランジ部の内縁部の厚みが外縁部の厚みに対して98%を超えると、フランジ部の内縁部と外縁部の厚みにほとんど差がでないため、薄肉部または欠落部が形成されない。
したがって、フランジ部の内縁部の厚みが外縁部の厚みに対して20%以上98%以下となっていることにより、フランジ部の内縁部において薄肉部または欠落部が形成され、優れた易開封性と密封性とを備えた包装容器を提供することができる。
また、フランジ部が内縁部に向けて薄くなるように形成されていることで、蓋材と容器本体をシールする際、シール部の位置制御がいらなくなる。つまり、容易に易開封と高密封を両立した容器を製造することが可能となる。
本発明の容器本体において、前記フランジ部の前記シール層のシール面が平坦に形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の容器本体は、開口部の周縁にフランジ部が形成された容器本体であって、前記フランジ部は、シール部が形成される平面状のフラット部と、このフラット部の外周縁に延設される延設部と、を有し、前記容器本体は、シール層と基材層との少なくとも2層を備え、前記シール層は、前記フラット部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に、薄肉部または欠落部を有するとともに、他方に容易に分離可能な易分離手段を有し、前記フラット部は、その中央部の厚みに対し、前記薄肉部または欠落部を有する側の厚みが20%以上98%以下であることを特徴とする。
【0010】
この発明では、フランジ部が、平面状のフラット部とフラット部の外周縁から延設された延設部とによって構成されている。延設部は、例えば、スカート状やカール状に形成されている。スカート状とは、例えば、フラット部の端縁から斜め下方に向かって延設された形状である。カール状とは、例えば、フラット部の端縁付近から容器本体を形成する壁部に向かって連続して曲面状に形成された形状である。
また、シール層の外周側および内周側のうち少なくとも一方が薄肉化した薄肉部または欠落した欠落部を有するとともに、この薄肉部または欠落部の厚みが、中央部の厚みに対して20%以上98%以下の範囲で形成されている。ここで、外周側とはフランジ部の外縁付近を示し、内周側とはフランジ部の内縁付近を示し、中央部とはフランジ部の内縁部と外縁部との中間に位置する部分である。そして、フランジ部の外周側および内周側の他方のシール層においては、容易に分離可能な易分離手段が備えられている。易分離手段は、シール部でシールされた蓋材と容器本体が容易に分離される構成であれば特に限定されない。例えば、シール層に切欠部を設けた構成としてもよい。
したがって、この容器本体と蓋材とを備えた包装容器を開封する際にはフランジ部の外周側においてシール層が容易に破断または分離して剥離開始位置となり、フランジ部の内周側においてシール層が容易に分離して剥離終了位置となる。このように、フランジ部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に薄肉部または欠落部が設けられ、他方に易分離手段を備えているので、包装容器を容易に開封することができる。
【0011】
本発明の容器本体において、前記易分離手段は、薄肉部または欠落部であり、前記フラット部は、その中央部の厚みに対し、前記易分離手段を有する側の厚みが20%以上98%以下であることが好ましい。
【0012】
この発明は、フランジ部に前述の延設部が延設された形状の容器本体において、フランジ部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に薄肉部または欠落部を有するとともに、他方に設けられた易分離手段が薄肉部または欠落部となっている。易分離手段を有する側の厚みは、中央部の厚みに対して20%以上98%以下の範囲で形成されている。すなわち、フランジ部の内周側および外周側が欠落または薄肉化している。したがって、包装容器を開封する際にはフランジ部の外周側がシール層の剥離開始位置となり、フランジ部の内周側が剥離終了位置となってシール層とシール層に隣接する層との間で剥離し、シール層の薄肉部が破断または欠落部でシール層が分離することにより、包装容器が開封される。このように、フランジ部の外周側と内周側に薄肉部または欠落部が設けられているので、容易に開封することができる。
易分離手段の厚みは中央部の厚みに対して20%以上98%以下であり、易分離手段が中央部の厚みに対して20%未満であると、易分離手段の厚みが薄すぎるため、容器としての剛性が不足するおそれがある。また、易分離手段の厚みが中央部の厚みに対して98%を超えると、易分離手段と中央部の厚みにほとんど差がでないため、薄肉部または欠落部が形成されない。すなわち、易分離手段の厚みが中央部の厚みに対して20%以上98%以下となっていることにより、易分離手段において薄肉部または欠落部が形成され、優れた易開封性と密封性とを備えた包装容器を提供することができる。なお、フランジ部の内周側と外周側の厚みは同一の厚みでもよいし、異なる厚みであってもよい。
【0013】
本発明の包装容器は、上述の容器本体と、前記開口部を塞ぐとともに前記フランジ部との間をシール部でシールする蓋材とを備えたことを特徴とする。
本発明の包装容器において、前記シール層のメルトインデックス(MI)値は、前記シール層に隣接する隣接層のMI値より大きく、かつ、前記シール層のMI値と前記シール層に隣接する層のMI値との差が3g/10min以上であることが好ましい。
【0014】
ここで、シール層に薄肉部を設けた場合、開封時にはこの薄肉部が破断されることによって開封される。このとき、シール層のMI値と隣接層のMI値との差が3g/10min未満であると、薄肉部が破断されにくくなるため、破断された後のシール層が目立ってしまい、見た目が美しくない。したがって、シール層のMI値と隣接層のMI値との差を3g/10min以上とすることにより、開封口の美しい包装容器を提供することができる。
【0015】
本発明の容器本体の製造方法は、前記フランジ部を押さえる押さえ面を有するフランジ押さえと、前記容器本体を成形する金型と、を用いて、前記フランジ部に勾配を設ける容器成形工程を実施することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、従来の容器成形工程と手順は同じであるが、金型とフランジ押さえを用いて容器を成形する際に、成形時の材料シートの延伸条件やフランジ押さえで押さえるタイミングを調節することにより、フランジ部に勾配を設けることができる。したがって、従来の手順を変えることなく、簡単に目的の形状の容器本体を成形することができ、手間と製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
本発明の容器本体の製造方法において、前記フランジ押さえは、1.5kg/cm以上20kg/cm以下の圧力で前記フランジ部を押さえることが好ましい。
【0018】
フランジ押さえの圧力が1.5kg/cm未満であると、フランジ部の内縁側において薄肉部または欠落部を形成することができない。また、フランジ押さえの圧力が20kg/cmを超えると、シール層を薄肉化または欠落化するのみならず、隣接層にも影響を及ぼすおそれがある。
したがって、フランジ押さえの圧力を1.5kg/cm以上20kg/cm以下の範囲とすることにより、フランジ部に薄肉部または欠落部を形成することができ、易開封性を実現することができる。
【0019】
本発明の容器本体の製造方法において、前記フランジ押さえは、前記押さえ面に勾配を有することが好ましい。
具体的には、フランジ押さえの押さえ面に、金型の平面部の面に対して勾配を設ける。そして、この勾配を有する押さえ面で多層シートを押さえることにより、フランジ部の外周側と内周側とで厚みが異なり、勾配を有するフランジ部(シール層)を成形することができる。
この発明によれば、従来の容器成形工程と手順は同じであるが、従来とは異なる形状の押さえ面を有するフランジ押さえを用いて容器成形工程を実施する。したがって、従来の手順を変えることなく、簡単に目的の形状の容器本体を成形することができ、手間と製造コストの低減を図ることができる。
【0020】
本発明の容器本体の製造方法において、前記フランジ押さえは、前記押さえ面に0.1°以上25°以下の勾配が設けられていることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、フランジ押さえの押さえ面の勾配を0.1°以上25°以下とすることにより、フランジ部に勾配を形成し、フランジ部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に薄肉部または欠落部を簡単に形成することができる。
押さえ面の勾配が0.1°未満であると、フランジ部に勾配を形成することができない。したがって、フランジ部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に薄肉部または欠落部を形成できない。また、押さえ面の勾配が25°を超えると、フランジ押さえで多層シートを押さえた際に、シール層を巻き込むなどして欠落部ができなくなるおそれがある。
なお、押さえ面の勾配のより好ましい範囲は3°以上15°以下、さらに好ましい範囲は6°以上10°以下である。
【0022】
本発明の容器本体の製造方法において、前記フランジ押さえおよび前記金型は、10℃以上160℃以下の温度で前記フランジ部を押さえることが好ましい。
【0023】
フランジ押さえおよび金型の温度は10℃未満でも成形は可能であるが、高温であるほど、より安定して薄肉化または欠落化することができる。ただし、温度が160℃を超えると、シール層の融点に近づくため、成形が不安定となってしまう。
したがって、フランジ押さえおよび金型の温度を10℃以上160℃以下の範囲とすることにより、フランジ部の内縁部に薄肉部または欠落部を安定して成形することができる。なお、フランジ押さえおよび金型の温度のより好ましい範囲は100℃以上120℃以下である。
【0024】
本発明の容器本体の製造装置は、前記容器本体を成形する凹部と前記フランジ部を成形する平面部とを有する金型と、前記平面部に対して勾配を有するフランジ押さえと、を備えたことを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、金型の平面部とフランジ押さえとで多層シートを押さえることにより、前述の形状のフランジ部を成形することができ、前述と同様の作用効果を奏することができる。
【0026】
本発明の容器本体の製造装置において、前記勾配は、前記フランジ部を押さえる押さえ面に0.1°以上25°以下の範囲内で設けられていることが好ましい。
この発明によれば、フランジ押さえに0.1°以上25°以下の勾配が設けられているので、前述と同様の作用効果を奏することができる。
本発明の容器本体の製造装置において、前記フランジ押さえおよび前記金型が10℃以上160℃以下の範囲に調温可能な温度調節手段を備えたことが好ましい。
本発明の容器本体の製造装置において、前記フランジ押さえの前記多層シートと接する面とは反対側の面に連結され、1.5kg/cm以上20kg/cm以下の範囲に圧力調整可能なスプリングを備えたことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる包装容器の密閉された状態を示す斜視図。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる包装容器の一部が開封された状態を示す斜視図。
【図3】図1のIII−III断面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる包装容器の製造装置の概要の一部を示す断面図。
【図6】本発明の第二実施形態にかかる包装容器の密閉された状態を示す斜視図。
【図7】図6のVII−VII断面図。
【図8】図6の包装容器の一部が開封された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
図1は第一実施形態にかかる包装容器の密封された状態を示す斜視図である。図2は第一実施形態にかかる包装容器の一部が開封された状態を示す斜視図である。図3は、図1のIII−III断面図であり、図4は図2のIV−IV断面図である。
【0029】
〔包装容器の構成〕
図1において、包装容器100は、内容物Pが凹部210に収納される平面略円形状の容器本体200を備え、この容器本体200は、その中心部に平面略円形に形成された開口部220を塞ぐため蓋材300が開口部220の周縁に配設されたフランジ部230にヒートシールされている。このフランジ部230と蓋材300とのヒートシールは環状のシール部240で行われる。
包装容器100は、図1および図2に示すように、蓋材300の一部が突出した把持部310を把持してシール部240でシールされた蓋材300をフランジ部230から剥離して開封されるものである。
【0030】
容器本体200は、図3および図4に示すように、シール層251と隣接層252と基材層253とからなる多層シート250で形成されている。
シール層251は、容器本体200の最内層であり、蓋材300側のシール面251Aがフランジ部230において蓋材300にシールされてシール部240が形成される。なお、フランジ部230の内縁部232付近では蓋材300はヒートシールされていない。
フランジ部230は、外縁部231から内縁部232にいたるまでにその厚みが次第に薄くなるように形成されている。フランジ部230の内縁部232の厚みY、外縁部231の厚みをXとすると、Y/Xの値が20%以上98%以下の範囲内となるようにフランジ部230は形成されている。
フランジ部230が内縁部232に向けて薄くなるように形成されていることで、蓋材300と容器本体200をシールする際、フランジ部230の内縁部232付近では蓋材300はシールされない。また、このとき、シール部240の位置制御がいらなくなる。つまり、容易に易開封と高密封を両立した容器を製造することが可能となる。
【0031】
本実施形態では、フランジ部230の内縁部232に沿ってシール層251が欠落した環状の欠落部251Bが形成されている。これにより、フランジ部230の内縁部232の厚みは、フランジ部230の外縁部231に対して、例えば、Y/X=50%である。
【0032】
また、凹部210は、容器本体200の底を形成する底部211と、底部211から立ち上げられて形成された壁部212と、壁部212の開口部220側に形成された段差部213と、を備えている。段差部213は、壁部212の外周よりも外側に向けて突出した外周を有している。
【0033】
次に、各層について詳述する。
シール層251は、蓋材300とシールされる一方、隣接層252から剥離可能に設けられている。シール層251と隣接層252との剥離強度は、0.5kg/15mm以上2.5kg/15mm以下の範囲内に設定されるのがよい。シール層251と隣接層252との剥離強度が0.5kg/15mm未満であると、密封性が損なわれるおそれがあり、また、2.5kg/15mmを超えると、シール層251を隣接層252からなかなか剥離できず開封しづらくなる。剥離強度の好ましい範囲は、0.5kg/15mm以上1.3kg/15mm以下である。
【0034】
また、この多層シート250が容器本体200に成形される前のシール層251の厚みは、10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、容器の大きさ、用途によって適宜調製することができる。成形前のシール層251の厚みが10μm未満であると、蓋材300とシールしたときにシール層251が安定しないため、隣接層252から剥離しづらくなる。また、シール層251の厚みが100μmを超えると、必要以上に厚くなるため実用的でない。
このようなシール層251を構成する樹脂としてはヒートシール性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)などのポリプロピレン系樹脂や、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン系樹脂、非晶性ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0035】
隣接層252は、シール層251と剥離可能に設けられる。
隣接層252を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)系樹脂とポリエチレン(PE)系樹脂とを所定の割合で配合した混合樹脂を用いることができる。PPとPEとの配合割合は特に限定されず、シール層251を構成する樹脂と、剥離強度に応じて100:0〜0:100の範囲内で配合される。
隣接層252の厚みは特に限定されないが、10μm以上の範囲に形成するのが好ましい。隣接層252の厚みが10μm未満であると、基材層253と隣接層252との間で剥離する恐れがある。
なお、隣接層252の厚みのより好ましい範囲は、50μm以上である。
【0036】
また、シール層251に用いられる樹脂としては、そのメルトインデックス(MI)値が、シール層251と隣接する隣接層252に用いられる樹脂のMI値よりも大きくなるとともに、これらのMI値の差が3g/10min以上となる樹脂を選定する。MI値の差が3g/10min未満であると、開封時にシール層251の破断部がフランジ部230上に露出して見た目が美しくない。
【0037】
基材層253は、容器本体200の外表面に現れる層である。
基材層253を構成する樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂等の材料、エチレンビニルアルコール共重合体及びこれらのブレンド材料の単層シートまたは積層シートを使用することができる。
これらの積層シートには、層の間に接着層や酸素吸収樹脂層を設けてもよい。接着層の構成材料としては、例えば、ウレタン系またはスチレン系のエラストマー、無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよびエチレン酢酸ビニル(EVA)などが挙げられる。また、酸素吸収樹脂層としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などが挙げられる。
【0038】
上記の樹脂を、共押出し、ドライラミネーション、押出ラミネーション、押出コーティングやこれらの組み合わせで、シール層251/隣接層252/基材層253からなる多層シート250を作製できる。なお、各層の厚み、樹脂選定や配合比率等により、各層の接着強度を調節することができる。
【0039】
蓋材300は、複数の層からなる積層体であり、例えば、PET12μm/ONy(二軸延伸ナイロン)15μm/L−LDPE(低密度ポリエチレン)60μm、PET12μm/ONy15μm/CPP(無延伸ポリプロピレン)60μmなどの層構成が挙げられる。
これらの積層シートの製造は、共押出し、熱ラミネーション、ドライラミネーション等で行うことができ、さらには、これらを段階的に組み合わせることでも行うことができる。
【0040】
〔包装容器の製造装置〕
次に、第一実施形態の包装容器100を製造する製造装置について説明する。
図5は、第一実施形態にかかる包装容器の製造装置の一部を示す概略構成図である。
容器本体200は、プラグアシスト真空成形、プラグアシスト圧空成形等の公知の方法で多層シート250に熱成形を行うことで形成されるが、ここでは、その一部である容器本体成形装置について説明する。
【0041】
図5において、製造装置400は、容器本体成形装置500を備えている。
容器本体成形装置500は、多層シート250から容器本体200を熱成形する装置であり、多層シート250の開口部220が形成される側とは反対側に配置される金型510と、この金型510のフランジ部230を挟んで反対側に配置されたフランジ押さえ520と、容器本体200の開口部220を形成するプラグ530と、を備えている。
【0042】
金型510は、容器本体200の開口部220を形成するための凹部511が中央部に形成されており、この凹部511の上端縁にはフランジ部230を形成するための平面部512が形成されている。
金型510は、本実施形態では、φ80mmのカップ用の金型である。
【0043】
フランジ押さえ520は、金型510の平面部512とともに多層シート250を押さえることにより、容器本体200のフランジ部230を成形するものである。
フランジ押さえ520は、金型510の凹部511の開口部の外縁に沿った環状の平板状に形成され、金型510の平面部512と対向する押さえ面521を有している。押さえ面521は、環状に形成されたフランジ押さえ520の外縁522から内縁523までに金型510の方向に突出するような勾配を有するとともに、押さえ面521全体としては平坦に形成されている。
【0044】
この押さえ面521は、金型510の平面部512に対して、0.1°以上25°以下の範囲の勾配をもって形成される。勾配が0.1°未満であると、フランジ部230の内縁部232付近にシール層251の薄肉部または欠落部を形成することが困難となり易開封性が得られない。また、勾配が25°を超えると、シール層251がフランジ押さえ520に巻き込まれるなどして作業が困難となるおそれがあり好ましくない。なお、勾配のより好ましい範囲は3°以上15°以下であり、さらに好ましい範囲は6°以上10°以下である。このようにフランジ押さえ520が押さえ面521に勾配を有していることにより、フランジ部230を成形する際に、フランジ部230の内周側に応力が集中して、シール層251を部分的に薄肉化または欠落化することができる。
【0045】
また、フランジ押さえ520は金型510とともに10℃以上160℃以下の範囲で調温可能とされている。フランジ押さえ520および金型510の温度は高温であるほど、シール層251をより安定に薄肉化または欠落化することができる。また、温度が160度を超えると、シール層251を構成する樹脂の融点に近づくため、扱いが困難となるおそれがある。フランジ押さえ520の温度のより好ましい範囲は100℃以上120℃以下である。
また、フランジ押さえ520はスプリング540に連結されており、ばね定数の異なるばねに交換することによって圧力が調整可能となっている。
【0046】
プラグ530は、金型510の凹部511よりも小さい径で略同形状に形成され、多層シート250を挟んで凹部511に嵌合する。
【0047】
以上のような容器本体成形装置500により、多層シート250を金型510とフランジ押さえ520及びプラグ530との間に送り、この状態でフランジ押さえ520及びプラグ530を金型510側に移動させることで、内容物を収納するための凹部210とフランジ部230とが多層シート250に一度に成形され、容器本体200を成形することができる。
【0048】
〔包装容器の製造方法〕
次に、第一実施形態の包装容器100を製造する方法について説明する。
容器本体200は、プラグアシスト真空成形、プラグアシスト圧空成形等の公知の方法で多層シート250に熱成形を行うことで形成されるが、前述の容器本体成形装置500がその一部を担っている。
まず、加熱されて軟化した多層シート250が容器本体成形装置500に導入される。
多層シート250が金型510の上面側に到達したところで、プラグ530を多層シート250に接近させる。この場合、プラグ530と多層シート250とで囲まれた空間は密閉状態となる。そして、多層シート250を予備成形するとともに、プラグ530の多層シート250と面する側に設けられた図示しない圧空チャンバーにより高圧空気を注入して圧空状態にしながら凹部511に押しつけ、プラグアシスト圧空成形を行い、容器本体200の形状に成形される。
【0049】
また、この工程と同時に、フランジ押さえ520を金型510の平面部512に押しあて、フランジ部230を形成する。
フランジ押さえ520は、圧力が1.5kg/cm以上20kg/cm以下の範囲となるようにスプリング540にて調製される。圧力が1.5kg/cm未満、または20kg/cmを超えると、シール層251を薄肉化または欠落化することが困難となり、開封しづらくなる。
【0050】
また、フランジ押さえ520の温度は10℃以上160℃以下の範囲となるように調製される。温度が10℃未満であっても、シール層251を薄肉化することは可能であるが、温度が高くなるほどより安定して目的形状の容器本体200を製造することができる。また、温度が160℃を超えると、シール層251に使用されている樹脂の融点に近づくため、成形自体が不安定になってしまう。
【0051】
次に、容器本体200の形状に成形された多層シート250には、内容物Pとなる液体が注入・充填される。
そして、容器本体200のフランジ部230に蓋材300が載せられ、これらがヒートシールされる。ヒートシールの強度は、多層シート250のシール層251と隣接層252との接着強度より強い。ヒートシールの接着強度は、温度、圧力、時間等のヒートシール条件、各層の厚み、樹脂選定等により調節できる。
ヒートシールはシールバーが蓋材300の上からフランジ部230に押し当てられて行われ、ヒートシールされた容器本体200と蓋材300との間には環状のシール部240が形成されることになる。
【0052】
〔包装容器の開封方法〕
このような構成の包装容器100を開封する方法を図3および図4に基づいて説明する。
まず、図3に示す密封された包装容器100の把持部310を把持する。そして、把持部310を把持したまま蓋材300を開封する方向へ引っ張ると、容器本体200のシール層251と隣接層252との間で剥離する。
そして、剥離位置が容器本体200のフランジ部230の内縁部232まで達すると、図4に示すように、シール層251の欠落部251Bにおいてシール層251が分離される。そして、この分離位置から順に、環状の欠落部251Bに沿ってシール層251が分離され、包装容器100は開封される。
【0053】
したがって、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)容器本体200は、フランジ部230の内縁部232における厚みが外縁部231における厚みの50%の厚みに形成されており、内縁部232に沿って欠落部251Bを有している。
このため、フランジ部230に蓋材300がシールされた包装容器100を開封する際、シール層251と隣接層252との間で剥離し、欠落部251Bでシール層251を容易に分離することができる。すなわち、易開封性に優れている。また、開封前は、フランジ部230におけるシール層251と蓋材300とがシールされるので密封性に優れている。
【0054】
(2)また、フランジ部230が勾配を有するとともに、フランジ部230のシール層251のシール面251Aは平坦に形成されている。
このため、この容器本体200を成形するには、フランジ部230を成形するフランジ押さえ520の押さえ面521に勾配を設けるだけでよい。勾配を設けたフランジ押さえ520を用いて、従来と同様の成形工程を実施することにより、勾配を有するフランジ部230を簡単に成形することができる。したがって、フランジ押さえ520と金型510の平面部512とで多層シート250を押さえる一回の処理で、易開封性に優れた形状の容器本体200を製造することができる。すなわち、成形工程が簡単、かつ従来の容器本体200の成形加工能力を維持することができる。
また、蓋材300と容器本体200をシールする際、シール部240の位置制御がいらなくなる。つまり、容易に易開封と高密封を両立した容器を製造することが可能となる。その結果、全体の製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
(3)そして、フランジ部230に勾配を設けただけの構成であるので、製造方法を大きく変える必要がなく簡単に製造でき、包装容器100の安定した供給を提供することができる。
【0056】
(4)フランジ押さえ520の押さえ面521は、金型510の平面部512の面方向に対して6°の勾配を有している。
このため、このフランジ押さえ520と金型510とによりフランジ部230を形成した際、フランジ部230の内縁部232の厚みは、外縁部231の厚みの50%程度の厚みとすることができる。すなわち、フランジ部230の内周側にシール層251が欠落した欠落部251Bを簡単に形成することができるので、手間がかからず、製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
(5)また、容器本体200の開口部220に段差部213を設けたので、フランジ部230の内周側にシール層251の薄肉部または欠落部を形成しやすくなるとともに、開封時に応力が集中しやすくなり、易開封性に優れている。
【0058】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について図6、図7および図8を用いて説明する。
図6は本発明の第二実施形態にかかる包装容器の密閉された状態を示す斜視図である。図7は図6のVII−VII断面図である。図8は図6の包装容器の一部が開封された状態を示す断面図である。
【0059】
〔包装容器の構成〕 第二実施形態では、包装容器のフランジ部の形状が異なる以外は第一実施形態と同様の構成であるので、フランジ部の形状のみを説明する。第二実施形態における易分離手段は、シール層251が欠落した欠落部である。
図6において、包装容器600は、フランジ部260がスカート状に形成されたものである。フランジ部260は、シール部240により蓋材300とシールされる略平面状のフラット部261と、フラット部261の外周縁から下方に向かってスカート状に形成されたスカート部262と、スカート部262の外周縁からフラット部261の平面方向と平行に延設された端縁部263と、を備えている。ここでは、スカート部262および端縁部263が本発明の延設部に相当する。フラット部261において、シール層251が蓋材300にシールされてシール部240が形成されるものである。
【0060】
フラット部261は、容器本体200の開口部220を形成する最内周縁である内縁部261Aと、フラット部261の最外周縁である外縁部261Bと、内縁部261Aと外縁部261Bとの中間に位置する中央部261Cを有している。
フラット部261は、中央部261Cから内縁部261Aおよび外縁部261Bにいたるまでにその厚みが次第に薄くなるように形成されている。内縁部261Aの厚みA、外縁部261Bの厚みB、中央部261Cの厚みCとすると、A/CおよびB/Cの値が20%以上98%以下の範囲内となるようにフラット部261が形成されている。
第二実施形態では、フラット部261の内縁部261Aおよび外縁部261Bに沿ってシール層251が欠落した環状の欠落部251Bが形成されている。これにより、内縁部261Aおよび外縁部261Bの厚みは、中央部261Cに対して、例えば、A/C=50%およびB/C=50%である。なお、内縁部261Aと外縁部261Bの厚みは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
〔包装容器の製造装置〕
次に、第二実施形態の包装容器600を製造する製造装置について説明する。
図5に示された第一実施形態の製造装置において、フランジ押さえ520の形状が異なるのみである。
第二実施形態におけるフランジ押さえの押さえ面は、環状に形成されたフランジ押さえの中心環部から内縁側または外縁側までに金型510の方向に突出するような勾配を有する。この勾配は、金型510の平面部512に対して、0.1°以上25°以下の範囲でそれぞれ形成される。勾配が0.1°未満であると、フラット部261の内縁部261Aおよび外縁部261B付近に欠落部251Bを形成することが困難となり易開封性が得られない。また、勾配が25°を超えると、シール層251がフランジ押さえに巻き込まれるなどして作業が困難となるおそれがあり好ましくない。なお、勾配のより好ましい範囲は3°以上15°以下であり、さらに好ましい範囲は6°以上10°以下である。このようにフランジ押さえが押さえ面に勾配を有していることにより、フラット部261を成形する際に、フラット部261の内縁部261Aおよび外縁部261Bに応力が集中し、シール層251を部分的に薄肉化または欠落化することができる。
【0062】
〔包装容器の製造方法〕
第二実施形態におけるフランジ押さえを用いること以外は、第一実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0063】
〔包装容器の開封方法〕
次に、第二実施形態における包装容器600を開封する方法を図7および図8に基づいて説明する。
まず、図7に示す密封された包装容器600の把持部310を把持する。そして、把持部310を把持したまま蓋材300を開封する方向へ引っ張ると、フラット部261の外縁部261Bにおける欠落部251Bを剥離開始位置として、容器本体200のシール層251と隣接層252との間が剥離する。
そして、剥離位置がフラット部261の内縁部261Aまで達すると、図8に示すように、欠落部251Bにおいてシール層251が分離される。そして、この分離位置から順に、環状の欠落部251Bに沿ってシール部240が剥離され、包装容器600は開封される。
【0064】
したがって、第二実施形態の構成の包装容器においても、前述と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0066】
例えば、前記実施形態では、フランジ部230(フラット部261)の内縁部232(261A)に沿ってシール層251が欠落した欠落部251Bを形成したが、欠落部251Bの代わりに薄肉部としてもよい。この場合も、フランジ押さえの押さえ面の勾配を調整することにより簡単に形成することができる。なお、薄肉部とする場合には、欠落部251Bを形成したフランジ押さえよりも、フランジ押さえの押さえ面の勾配を小さくするか、フランジ押さえの圧力を小さくするか、フランジ押さえの温度を低く設定することによって実現することができる。所望の厚みにできるように適宜調整すればよい。
【0067】
また、前記実施形態では、容器本体にシール層251を設けたが、蓋材300にシール層を設けてもよい。このような構成の場合、蓋材300をフランジ部にシールする際のシールバーのシール面に勾配を設けることで、蓋材300のシール層を部分的に薄肉化または欠落化することが可能である。
【0068】
さらに、前記実施形態では、蓋材をフランジ部にシールする手段としてヒートシールを用いたが、超音波や接着剤等を用いてもよい。
そして、前記実施形態では、包装容器の形状を平面円形状としたが、これに限られず、平面矩形状やその他の形状でもよい。
【0069】
また、第二実施形態では、フランジ部をフラット部261、スカート部262、端縁部263によってスカート状に形成される構成としたが、これに限られない。例えば、フラット部の外縁部付近からカール状に延設された構成でもよいし、端縁部263のみがカール状に形成されていてもよい。このように、様々な形状のフランジ部を有する包装容器に対応することができる。
【0070】
さらに、第二実施形態では、フラット部261の内縁部261Aおよび外縁部261Bを薄肉化したが、外縁部261Bのみを薄肉化させ、シール層251の易分離手段として内縁部261Aにおいてシール層251に切欠部を形成した構成としてもよい。
また、フラット部261の外縁部261Bにおいてシール層251に切欠部を形成し、内縁部261Aを薄肉化してもよい。
【実施例】
【0071】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制約されるものではない。
【0072】
[試験1]
<容器本体の製造>
一般的に使用されているディストリビュータ方式共押出多層シート製造装置により、容器本体に使用するシートを製造した。シートは、以下に示す8層の多層シートである。
1.シール層:HDPE(高密度ポリエチレン、プライムポリマー株式会社製「1300J」)または PP(プライムポリマー株式会社製「J3021GR」)
2.隣接層1:PP(プライムポリマー株式会社製「E−105GM」)または PP(プライムポリマー株式会社製「E−105GM」)/PE(日本ポリエチレン株式会社製「HE30」)ブレンド(配合比5:5)
3.基材層1:PP(プライムポリマー株式会社製「E−105GM」)
4.接着層1:無水マレイン酸変性PP(三菱化学株式会社製「モディックAP P502」)
5.EVOH層:株式会社クラレ製「エバールJ」
6.接着層2:隣接層1と同じ
7.基材層2:基材層1と同じ
8.隣接層2:隣接層1と同じ
【0073】
上記の多層シートを用いて、実施形態で用いたプラグアシスト+フランジクランプ真空圧空成形により、図1に記載の包装容器(フラットフランジ型)を成形した。各種条件は以下の通りである。
成形金型:内周側輪郭φ78、外周側輪郭φ84の丸型、3mm幅のフランジを有するカップ型。
フランジ押さえ:圧力、テーパー、温度の条件をそれぞれ変えて容器本体を作成した(表1および表2参照)。
【0074】
<蓋材のシール>
蓋材としては、以下の2種類の層構成を有するラミネートフィルムを使用した。
A:ポリエチレンテレフタレート(PET、12μm)/二軸延伸ナイロン(ONy、15μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、60μm)
B:ポリエチレンテレフタレート(PET、12μm)/二軸延伸ナイロン(ONy、15μm)/無延伸ポリプロピレン(CPP、60μm)
【0075】
得られた容器本体のフランジ部に、上記ラミネートフィルムのLLDPE面またはCPP面をあて、温度195℃、シール圧力150kg/個、シール時間1.2秒の条件で、PET面からシールバーを押し当ててヒートシールを行い、接着した。なお、シールバーは、外周側の輪郭がφ86、内周側の輪郭がφ76の環状に形成されており、全面にわたってフラットな当たり面を有している。
【0076】
<評価>
上記の方法で、以下の表1および表2に示す実施例1〜13、比較例1〜4、および以下の比較例5および6の包装容器を作成し、内圧強度測定と、開封部でのピール強度測定と、開封感の評価を実施した。その結果を表1およびに表2に示す。
ここで、容器本体のフランジ部の最外周の厚みをXとし、最内周の厚みをYとする。また、容器本体のシール層とその隣接層とのメルトインデックスの差をMI差とする。
【0077】
[比較例5]特開昭62−251363(特許文献1)で得られた容器
【0078】
[比較例6]特開平7−309368(特許文献3)で得られた容器
【0079】
<1.内圧強度測定>
(株)サン科学製の破裂強度測定器を用い、「JIS−Z0238」に準拠して行った。具体的には、蓋材の面に粘着性ゴムシート片を貼り付け、ここに針を差し込み、エアーを送り込んで容器が破裂するときの数値を測定した。
【0080】
<2.ピール強度測定>
(株)IMADA製のデジタルフォースゲージを用い、「JIS−Z0238」に記載の包装袋用シール強度測定方法と同様に、シール後の容器本体を蓋材ごと15mm幅にカットし、開封側蓋材を容器フランジ面に対し135°で引張強度を測定した。
【0081】
<3.開封感の評価>
◎:全くきれいに表面層が欠落し、開封も良好である。
○:2mm以内の表面層の伸びが確認できるものの、欠落が発生し開封が良好である。
△:2mm以上の表面層の伸びが発生し、開封は可能だが易開封感は損なわれる。
×:表面層の欠落がない、または不十分等の理由で開封が困難である。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
表1および表2からわかるように、実施例1〜13では、フランジ部の最外周の厚みXに対して最内周の厚みYの割合が所定範囲内であるので、良好な結果が得られた。
また、実施例2および実施例4では、フランジ押さえ圧が所定範囲内であるため、比較例1に比べて良好な結果が得られた。なお、比較例1では、フランジ押さえの圧力が小さすぎたため、薄肉部または欠落部を形成することができず、易開封性を得られなかった。
実施例5、実施例6および実施例2では、フランジ押さえテーパーを所定範囲内としたため、比較例2および3に比べて良好な結果が得られた。
【0085】
実施例7および実施例2では、シール層と隣接層とのMI差を所定範囲内としたため、良好な結果が得られた。実施例8ではMI差が所定範囲内ではないため、実施例7よりは劣るが、実用的に問題ない程度であった。
実施例9〜13では、フランジ押さえの温度を所定範囲内としたため、比較例4に比べて良好な結果が得られた。また、実施例9〜13を比較してみると、フランジ押さえの温度が高くなるほどより安定して成形することができることがわかる。実施例11では、Y/Xの値が80%と高めであったが、フランジ押さえの温度が120℃と比較的高温であるため安定して成形でき、良好な開封感が得られた。なお、比較例4では、フランジ押さえの温度が高すぎてシール層の融点に近いため、成形自体が不安定となり評価が悪かった。
【0086】
また、従来技術により作成された比較例5は、内圧強度、開封強度および開封感の全てにおいて本発明に比べて劣るものであった。比較例6は、内圧強度、開封強度および開封感には優れるものの、その生産性に問題があり、手間とコストがかかった。
【0087】
[試験2]
次に、試験1で用いた多層シートを用い、図6に示す包装容器(スカートフランジ型)における容器本体を成形した。
容器本体成形時の各種条件は以下の通りである。
成形金型:フランジ部の内周側の輪郭φ78、外周側の輪郭φ84の丸型、3mm幅のフランジを有するカップ型。
フランジ押さえ:圧力、テーパー、温度の条件をそれぞれ変えて容器本体を作成した(表3および表4参照)。テーパーは、フラット部の中央部からフラット部の内縁部および外縁部に向けて落ち込むようにかけられる。
そして、成形した容器本体のフランジ部に試験1で用いた蓋材を載置し、試験1で用いたシールバーを押し当ててヒートシールを行い、接着した。また、フランジ部の内周側である欠落部251Bにおける易分離性を向上させるために、外周側の輪郭がφ86、内周側の輪郭がφ76の環状に形成されたシールバーを押し当てて、欠落部251Bに隣接する位置をヒートシールした。このシールバーは、幅5mmで全面にわたってフラットな当たり面を有している。
【0088】
<評価>
上記の方法で、以下の表3および表4に示す実施例14〜27および比較例7〜13の包装容器を作成し、内圧強度測定と、開封部での開封強度測定と、開封感の評価を実施した。測定方法は、試験1と同様である。その結果を表3および表4に示す。
ここで、容器本体のフランジ部の最内周および最外周の厚みは同一でYとし、フランジ部の中央部の厚みをXとする。また、容器本体のシール層とその隣接層とのメルトインデックスの差をMI差とする。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
表3および表4からわかるように、実施例14〜27では、フランジ部の中央部の厚みXに対して最内周および最外周の厚みYの割合が所定範囲内であるので、比較例7および8に比べて良好な結果が得られた。
また、実施例17および18では、フランジ押さえの圧力が所定範囲内であるため、比較例9に比べて良好な結果が得られた。なお、比較例9では、フランジ押さえの圧力が小さすぎたため、薄肉部または欠落部を形成することができず、易開封性を得られなかった。
実施例19〜21では、フランジ押さえテーパーを所定範囲内としたため、比較例10および11に比べて良好な結果が得られた。
【0092】
実施例22および23では、シール層と隣接層とのMI差を所定範囲内としたため、比較例12と比べて良好な結果が得られた。
実施例24〜27では、フランジ押さえの温度を所定範囲内としたため、比較例13に比べて良好な結果が得られた。また、実施例24〜27を比較してみると、フランジ押さえの温度が高くなるほどより安定して成形することができることがわかる。なお、比較例13では、フランジ押さえの温度が高すぎてシール層の融点に近いため、成形自体が不安定となり評価が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えば、レトルト食品等の各種食品や薬品、化粧品等に包装容器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
100…包装容器
200…容器本体
230…フランジ部
231…外縁部
232…内縁部
240…シール部
250…多層シート
251…シール層
251B…欠落部
252…隣接層
253…基材層
260…フランジ部
261…フラット部
262…スカート部
263…端縁部
300…蓋材
P…内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁にフランジ部が形成された容器本体であって、
前記容器本体は、シール層と基材層との少なくとも2層を備え、
前記シール層は、前記フランジ部の内周側に薄肉部または欠落部を有し、
前記フランジ部は、外縁部から内縁部に向けてその厚みが薄くなるように形成された勾配を有し、
前記フランジ部は、その外縁部の厚みに対し、内縁部の厚みが20%以上98%以下であることを特徴とする容器本体。
【請求項2】
請求項1に記載の容器本体において
前記フランジ部の前記シール層のシール面が平坦に形成されていることを特徴とする容器本体。
【請求項3】
開口部の周縁にフランジ部が形成された容器本体であって、
前記フランジ部は、シール部が形成される平面状のフラット部と、このフラット部の外周縁に延設される延設部と、を有し、
前記容器本体は、シール層と基材層との少なくとも2層を備え、
前記シール層は、前記フラット部の外周側および内周側のうち少なくとも一方に、薄肉部または欠落部を有するとともに、他方に容易に分離可能な易分離手段を有し、
前記フラット部は、その中央部の厚みに対し、前記薄肉部または欠落部を有する側の厚みが20%以上98%以下であることを特徴とする容器本体。
【請求項4】
請求項3に記載の容器本体において、
前記易分離手段は、薄肉部または欠落部であり、
前記フラット部は、その中央部の厚みに対し、前記易分離手段を有する側の厚みが20%以上98%以下であることを特徴とする容器本体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の容器本体と、
前記開口部を塞ぐとともに前記フランジ部との間をシール部でシールする蓋材とを備えたことを特徴とする包装容器。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の容器本体の製造方法であって、
前記フランジ部を押さえる押さえ面を有するフランジ押さえと、前記容器本体を成形する金型と、を用いて、前記フランジ部に勾配を設ける容器成形工程を実施することを特徴とする容器本体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の容器本体の製造方法において、
前記フランジ押さえは、1.5kg/cm以上20kg/cm以下の圧力で前記フランジ部を押さえることを特徴とする容器本体の製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の容器本体の製造方法において、
前記フランジ押さえは、前記押さえ面に勾配を有することを特徴とする容器本体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の容器本体の製造方法において、
前記フランジ押さえは、前記押さえ面に0.1°以上25°以下の勾配が設けられていることを特徴とする容器本体の製造方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載の容器本体の製造方法において、
前記フランジ押さえおよび前記金型は、10℃以上160℃以下の温度で前記フランジ部を押さえることを特徴とする容器本体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の容器本体の製造装置であって、
前記容器本体を成形する凹部と前記フランジ部を成形する平面部とを有する金型と、
前記平面部に対して勾配を有するフランジ押さえと、を備えたことを特徴とする容器本体の製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載の容器本体の製造装置において、
前記勾配は、前記フランジ部を押さえる押さえ面に0.1°以上25°以下の範囲内で設けられていることを特徴とする容器本体の製造装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の容器本体の製造装置において、
前記フランジ押さえおよび前記金型が10℃以上160℃以下の範囲に調温可能な温度調節手段を備えたことを特徴とする容器本体の製造装置。
【請求項14】
請求項11から請求項13までのいずれか一項に記載の容器本体の製造装置において、
前記フランジ押さえの前記多層シートと接する面とは反対側の面に連結され、1.5kg/cm以上20kg/cm以下の範囲に圧力調整可能なスプリングを備えたことを特徴とする容器本体の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−100138(P2013−100138A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24782(P2013−24782)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2008−259509(P2008−259509)の分割
【原出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】