説明

容器用キャップ

【課題】破断筒の下端縁の傾斜角度を増加させることなく、容易に閉塞板部を破断することができる容器用キャップを提供する。
【解決手段】容器用キャップ1は、円筒部31とカバー部33とからなる中栓3と、注出口41を有し中栓3に下降可能に嵌合する注出口部材4と、注出口41を閉塞する注出口キャップ5とを備える。円筒部31には流路を閉塞する閉塞板部37が破断可能に形成され、注出口部材4には、注出口部材4の下降に伴い閉塞板部37を破断して円筒部31を開口するための破断筒44が、注出口41に連通して形成されている。
破断筒44の下端縁は、斜めに傾斜すると共に、閉塞板部37を破断する刃部44aと、最上端部分に位置する非刃部分とを有し、非刃部分に隣接する刃部44aの部分には、下方に突出する突刃部分44cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソースやドレッシング等の内容物を収容する容器に用いられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器用キャップとして、容器口部を閉塞する中栓と、注出口を有し中栓に下降可能に外嵌される注出口部材と、注出口を閉塞する注出口キャップとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
中栓は、容器口部に内挿され内容物の流路を形成する円筒部と、円筒部の上端縁から径方向外方に向かって張り出す肩部と、肩部の周縁から垂下し容器口部に外嵌するカバー部とからなる。肩部の上面には切除可能な帯状部が形成され、円筒部には流路を閉塞する閉塞板部が破断可能に形成されている。
【0004】
注出口部材は、注出口を有する天板部と、天板部の周縁から垂下する筒状の周壁部と、周壁部の上端部外周面から径方向外方に張り出す張出部と、張出部の外周縁から径方向外方に延びる一対の翼片とを備えている。天板部の内面には、注出口部材の下降に伴い閉塞板部を破断して円筒部を開口するための破断筒が注出口に連通して形成されている。破断筒の下端縁は、斜めに傾斜すると共に、閉塞板部を破断する刃部を有する。
【0005】
又、注出口部材の張出部が帯状部の上端縁に当接することにより、注出口部材の下降を規制し、破断筒が不用意に閉塞板部を破断することを防止している。容器に収容された内容物を取り出す際には、帯状部を肩部から切除した後、注出口部材を押圧して下降させることにより破断筒が閉塞板部を破断して開栓される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−341866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
閉塞板部は、破断筒の下端縁の傾斜角度の増加に比例して破断し易くなり、破断不良を防止できる。しかしながら、破断筒の下端縁の傾斜角度を増加させると、その分だけ閉塞板部の破断を完了させるまでの注出口部材の下降ストロークを大きく確保する必要があり、容器用キャップの材料費の増加及び大型化が避けられない。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、破断筒の下端縁の傾斜角度を増加させることなく、容易かつ確実に閉塞板部を破断することができる容器用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、容器に収容された内容物の流路を形成する円筒部と円筒部の外周に肩部を介して連設し容器口部に外嵌するカバー部とからなる中栓と、注出口を有し中栓に下降可能に嵌合する注出口部材と、注出口を閉塞する注出口キャップとを備え、円筒部には流路を閉塞する閉塞板部が破断可能に形成され、注出口部材には、注出口部材の下降に伴い閉塞板部を破断して円筒部を開口するための破断筒が、注出口に連通して形成された容器用キャップにおいて、前記破断筒の下端縁は、斜めに傾斜すると共に、前記閉塞板部を破断する刃部を有し、前記破断筒の傾斜した下端縁のうち、最も上方に位置する最上端部分には、前記閉塞板部の破断を阻止する非刃部分が形成され、該非刃部分に隣接する前記刃部の部分には、下方に突出する突刃部分が形成されていることを特徴とする。
【0010】
閉塞板部は、破断筒の下降に伴い、破断筒の下端縁の最下端部に対応する一端部分から破断されていく。ところが、従来の突刃部分を備えていないものでは、閉塞板部の破断が他端部分に近づくにつれて閉塞板部も徐々に傾斜していき、破断筒の押圧力が一端側に逃がされ、且つ閉塞板部の他端部分が破断されることなく伸びが発生する。このため従来のものでは、破断筒の傾斜角度を増加させなければ、閉塞板部の他端部分を適切に破断することができなくなっていると考えられる。
【0011】
本発明では、突刃部分により、比較的早めに他端部分が破断されるため、破断筒の押圧力が一端部分側に逃げてしまう程度に閉塞板部が傾く前に、且つ破断が阻害される程度に他端部分の伸び変形が発生する前に他端部分を破断することができ、従来のように傾斜角度を増加させることなく、容易に閉塞板部を破断できる。
【0012】
[2]本発明においては、突刃部分の先端を、破断筒の下端縁のうち、最も下方に位置する最下端部分よりも上方に位置させることが好ましい。破断筒の最下端部分よりも突刃部分の先端が先に閉塞板部を破断すると、閉塞板部の他端部分に押圧力が加わり易くなり、破断筒の傾斜した下端縁の最下端部に対応する閉塞板部の一端部分の破断が困難となり、開口が不十分となる虞がある。上述の如く構成することにより、閉塞板部をより確実に開口させることができる。
【0013】
[3]本発明においては、非刃部分に、下方に突出する突片を形成することが好ましい。開栓後に容器を傾けて内容物を取り出す際に、内容物に押されて閉塞板部が再び円筒部を閉塞しないように押さえる必要がある。破断筒の外周面で閉塞板部を押さえることも考えられるが、これでは、破断筒の外周面で閉塞板部が押さえられるように注出口部材の下降ストロークを大きくとる必要がある。この場合、上記の如く構成すれば、閉塞板部が他端部分を残して切断された際に、突片が閉塞板部を押さえるため、更なる注出口部材の下降ストロークを小さくすることができる。
【0014】
[4]上記突片を設ける場合、突刃部分は、その先端が突片よりも下方に位置させることが好ましい。これにより、突片が閉塞板部に当接する前に突刃部分が閉塞板部を破断するため、閉塞板部の破断が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の容器用キャップを示す断面図。
【図2】本実施形態の注出口キャップを取り外した状態を示す説明図。
【図3】本実施形態の図2を注出口側(上方)から示した断面図。
【図4】本実施形態の開栓した状態を示す説明図。
【図5】本実施形態の破断筒の下端縁を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図1から図5を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の容器用キャップを示す断面図、図2は注出口キャップを取り外した状態を示す説明図、図3は図2を注出口側(上方)から示した説明図、図4は開栓した状態を示す断面図、図5は破断筒の下端縁を示す説明図である。
【0017】
本発明の実施形態の容器用キャップ1は、図1に示すように、容器2の口部21に外嵌される軟質の合成樹脂で成型された中栓3と、注出口41を有し中栓3に外嵌され中栓3よりも硬質の合成樹脂で成型された注出口部材4と、注出口41を閉塞する硬質の合成樹脂で成型された注出口キャップ5とからなる。注出口キャップ5は、容器口部21に螺着されている。
【0018】
中栓3は、内容物(図示省略)の流路を形成する円筒部31と、円筒部31の外周から径方向外方に張り出す肩部32と、肩部32の周縁から垂下し容器口部21に外嵌するカバー部33とからなる。肩部32の上面には、切除可能なスコア34aを介して環状の帯状部34が接続されている。図2及び図3に示すように、帯状部34の外周面の一箇所には、上下方向に亘って破断可能なスコア34bが形成されており、このスコア34bの近傍にタブ35が形成されている。
【0019】
又、図1に示すように、肩部32の上面には、内筒部31の外周に隣接するように環状溝部36が形成されている。円筒部31の内面には、破断可能なスコア37aを介して閉塞板部37が形成され、これにより円筒部31の流路を閉塞している。円筒部31の外周面には、上下方向に所定の間隔を存して2箇所に環状の嵌合溝31a、31bが形成されている。
【0020】
注出口部材4は、天板部42と天板部42の周縁から垂下する筒状の周壁部43とを備える。天板部42の外面には注出口41が形成されている。又、天板部42の内面には、注出口41と連通する破断筒44が形成され、円筒部31に内挿されている。
【0021】
破断筒44の下端縁は斜めに傾斜しており、且つ閉塞板部37のスコア37aを破断するために鋭角に尖らせた刃部44aが形成されている。破断筒44の傾斜した下端縁の最上端部分には刃部44aを有しない非刃部分が形成され、この非刃部分には下方に延出された突片44bが形成されている。
【0022】
刃部44aには、突片44bに隣接する個所に位置させて一対の突刃部分44cが形成されている(図5参照)。
【0023】
周壁部43の下端部内周面には、径方向内方に突出し、円筒部31の嵌合溝31aに嵌合する環状の突条43aが形成されている。周壁部43の上端部外周面には径方向外方に張り出す張出部45が形成され、帯状部34の上端縁に当接している。これにより、注出口部材4の下降が規制される。張出部45の外周面には、図2及び図3に示すように、径方向外方に張り出す一対の翼片46,46が形成されている。
【0024】
本実施形態の容器用キャップ1を開栓する際には、まず、タブ35を把持して周方向に引張りスコア34b、34aを破断させながら、帯状部34を肩部32から切除し、帯状部34による注出口部材4の下降規制を解除する。そして、翼片46、46を介して注出口部材4を押圧して下降させ、突条43aと嵌合溝31aとの嵌合を解除し、破断筒44によりスコア37aを破断する。
【0025】
破断筒44の下端縁は傾斜しているため、この下端縁の最下端部分から最上端部分に向かって刃部44aにより徐々にスコア37aが破断される。破断筒44の下端縁の最上端部分には、刃部44aが形成されていないため、閉塞板部37は、その一部と円筒部31とが接続したままの状態となる。そして、突片44bが閉塞板部37を押さえるため、容器2を傾けて内容物を取り出す際に、内容物に押されて閉塞板部37が円筒部31を再び閉塞することを防止できる。破断筒44により閉塞板部37を破断して開口させると、周壁部43の突条43aは円筒部31の嵌合溝31bと嵌合する。
【0026】
注出口部材4の周壁部43の下部は、図4に示すように、環状溝部36に入り込むため、環状溝部36を形成していないものと比較して、肩部32よりも上方に突出させる円筒部31の突出量を短くすることができ、容器用キャップ1の上下方向の長さを短くすることができる。特に、実施形態のように、破断筒44の下端縁を傾斜させている場合、破断筒44がスコア37aを破断して閉塞板部37を押し開くために必要な注出口部材4の下方への移動する量は更に多くなるため、有利である。
【0027】
尚、注出口キャップ5を介して注出口部材4を押圧して下降させるようにしてもよい。注出口キャップ5は容器口部21に螺着するため、注出口キャップ5を回転させながら、少ない力で容易に注出口部材4を下降させることができる。この場合、注出口キャップ5は、注出口部材4の下方への移動量分だけ少なくとも下方に移動できるように、ゆとりを持たせて容器口部21と螺着させればよい。
【0028】
本実施形態の容器用キャップ1によれば、破断筒31の下端縁の傾斜角度を増加させることなく、閉塞板部37を容易に破断することができる。これは、従来の突刃部分を備えていないものでは、破断筒の下降に伴い、破断筒の下端縁の最下端部分に対応する閉塞板部の一端部分からスコアが破断されていくが、スコアの破断が破断筒の下端縁の最上端部分に対応する他端部分(突片44bの周辺部分に対応する部分)に近づくにつれて閉塞板部も徐々に傾斜していき、破断筒の押圧力が一端側に逃がされ、且つ他端部分のスコアが破断されることなく伸びが発生するために、破断筒の下端縁の傾斜角度を増加させなければ閉塞板部の他端部分を適切に破断できなくなっていると考えられる。
【0029】
本実施形態の容器キャップ1では、突刃部分44cにより、他端部分が従来に比べて早めに破断されるため、従来と比較して、破断筒31の下端縁の傾斜角度を増加させることなく、容易に閉塞板部37を破断できるものと考えられる。
【0030】
又、本実施形態の突片44bを設けることなく、破断筒の外周面で閉塞板部を押さえることも考えられるが、これでは、破断筒の外周面で閉塞板部が押さえられるように注出口部材の下降ストロークを大きくとる必要がある。本実施形態の如く突片44bを設ければ、閉塞板部37が非刃部分たる突片44bに対応する部分を残して切断された際に、突片44bが閉塞板部37を押さえるため、注出口部材4の下降ストロークを更に小さくすることができる。
【0031】
又、本実施形態においては、突刃部分44cの先端を、破断筒31の下端縁のうち、最も下方に位置する最下端部分よりも上方に位置させている。破断筒の最下端部分よりも突刃部分の先端が下方に位置すると、突刃部分が先に閉塞板部を破断することとなり、閉塞板部の他端部分に押圧力が加わり易くなって、破断筒の最下端部に対応する閉塞板部のスコアの破断が困難となり、閉塞板部の開口が不十分となる虞がある。本実施形態の如く構成すれば、閉塞板部37をより確実に開口させることができる。
【0032】
又、本実施形態の突刃部分44cは、その先端が突片44bよりも下方に位置するように構成されている。これにより、突片44bが閉塞板部37に当接するよりも先に突刃部分44cが閉塞板部37を破断するため、閉塞板部37の破断が容易となる。
【0033】
尚、実施形態の容器用キャップ1においては、注出口部材4として周壁部43を有するものを説明したが、これに限られず、注出口部材4は、周壁部43を有しなくてもよい。この場合、例えば、円筒部31の上端部内周面に径方向内方に突出する環状の突条を形成し、破断筒44の外周に上下方向に所定の間隔を存して2箇所に環状の嵌合溝を形成し、天板部42の外周縁に径方向外方に張り出す張出部45を形成する。そして、帯状部34の上端縁が張出部45に下方から当接して注出口部材4の下降を規制しているときには、円筒部31の突条と破断筒44の下方の嵌合溝とが嵌合するようにし、規制が解除されて注出口部材4が下降し閉塞板部37を破断して開口させたときには、円筒部31の突条と破断筒44の上方の嵌合溝とが嵌合するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0034】
1…容器用キャップ、21…容器口部、3…中栓、31…円筒部、32…肩部、33…カバー部、34…帯状部、36…環状溝部、37…閉塞板部、4…注出口部材、41…注出口、42…天板部、43…周壁部、44…破断筒、44a…刃部、44b…突片、44c…突刃部分、45…張出部、5…注出口キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された内容物の流路を形成する円筒部と円筒部の外周に肩部を介して連設し容器口部に外嵌するカバー部とからなる中栓と、注出口を有し中栓に下降可能に嵌合する注出口部材と、注出口を閉塞する注出口キャップとを備え、円筒部には流路を閉塞する閉塞板部が破断可能に形成され、注出口部材には、注出口部材の下降に伴い閉塞板部を破断して円筒部を開口するための破断筒が、注出口に連通して形成された容器用キャップにおいて、
前記破断筒の下端縁は、斜めに傾斜すると共に、前記閉塞板部を破断する刃部を有し、
前記破断筒の傾斜した下端縁のうち、最も上方に位置する最上端部分には、前記閉塞板部の破断を阻止する非刃部分が形成され、
該非刃部分に隣接する前記刃部の部分には、下方に突出する突刃部分が形成されていることを特徴とする容器用キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の容器用キャップにおいて、
前記突刃部分の先端は、前記破断筒の傾斜した下端縁のうち、最も下方に位置する最下端部分よりも上方に位置することを特徴とする容器用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の容器用キャップにおいて、
前記非刃部分には、下方に突出する突片が形成されることを特徴とする容器用キャップ。
【請求項4】
請求項3記載の容器用キャップにおいて、
前記突刃部分の先端は、前記突片よりも下方に位置することを特徴とする容器用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−214235(P2012−214235A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79525(P2011−79525)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】